ダンジョンに赤いゲノセクトがいるのは間違っているだろうか? 作:競馬好き
メガシンカした猿は、先程よりも素早い動きでゲノセクトに襲いかかる。ゲノセクトはチャージをやめ、高速飛行形態に変形し、ギリギリのところで攻撃を交わす。神速を発動し、攻撃を避け始める。先程から戦っているモンスターと同じとは思えない攻撃の数々をなんとか避けるが、炎がゲノセクトの体力をじわじわと削っていく。
(メガシンカに対抗できるのは伝説のポケモンを除いてメガシンカのみ。対して私、ゲノセクトはメガシンカを持っておらず、タイプ相性も最悪。万事休すか!!)
ゲノセクトは、歯を食いしばり、猿をどう倒すかを模索するも、テクノバスター以外、倒す方法が無い事実は、変わらない。しかし、テクノバスターを撃つには、チャージが必要である。先程は神速による体当たりでスキを作れたが、メガシンカしたやつの隙を作るのは至難の業である。
ゲノセクトは、あくのはどうを撃つが素早い身のこなしで避けられてしまった。
(やつに隙を作るとしたら、先程と同じ方法か、トライアタック、あくのはどう、でんじほうで怯みか麻痺を取る以外にないだろう。しかし、当たらなければ意味がない)
やつがメガシンカすると、攻撃と素早さの種族値が上がるのだろう。そのため、ゲノセクトが放つ技が当たらない。誰かの協力が必要だ。すると、幸運なことに、強力な助っ人が来てくれた。
「ゲノセクト!大丈夫!!」
剣姫の二つ名を持つブロンドのレベル5冒険者。
(アイズ・ヴァレンシュタイン!!良いところに来てくれた!!)
アイズは自慢の風魔法で猿を攻撃する。
「なんか、いつも見てる姿と違う」
アイズもあのモンスターの異変気づいているようだ。アイズと協力して、猿の攻撃を捌いていく。
「ゲノセクトのあの技なら、このモンスター、倒せる?」
アイズがそう聞いてくるので、ゲノセクトがうなずくと、エアリアルを発動させる。
「
風の力で宙に浮かびながら、斬撃を放つアイズ。ゲノセクトは、全力のテクノバスターを撃つために、チャージを行う。
「ふっ!!」
アイズは、風圧で炎を吹き飛ばし、なんとか攻撃を避けつつ、攻撃を加えていく。しかし、ダメージには至っていない。初めてのメガシンカにより半ば暴走状態であるため、アイズが対処できているがもし、メガシンカの力に慣れてしまえば、アイズ一人では対処できなくなってしまう。その前にやつを倒しきらなくてはならない。
「大丈夫か!!アイズたん!!って、なんやこのモンスター!?」
「ロキ、下がってて!!リル・ラファーガ!!」
ゴァアア!?
ロキが現れたと同時に、アイズ最大の必殺技が炸裂。ロキは慌てて物陰に隠れる。そして、魔法が直撃した猿は体をのけぞらせてしまった。それが、命取りとなる。
「今!!」
とてつもない光を放つ、ゲノセクトの砲台。これまでで、最大のテクノバスターが放たれる。
(発射!!)
水のエネルギーが発射される。直撃を受けた猿は吹き飛ばされ、壁に激突する。爆発が起こり、砂煙が舞い上がる。砂煙が晴れると、壁にめり込んだ猿が横たわっていた。すると、光と共に元の姿に戻っていく。
「んでゲノセクト、今のモンスターはなんなんや?なんか知ってそうやなぁ?」
ゲノセクトが何かを考えているような過去をしているのに気づいたロキは、ゲノセクトの砲台を掴んで聞いてくる。
「クルル・・・」
唸るゲノセクト。メガシンカのことを話すには、ポケモン世界についてを話す必要がある。そして、ゲノセクトが普通のモンスターではないことも。
(どうする?嘘をついても、ロキに見破られてしまう。教えられる範囲でのことを教えるか・・・)
ゲノセクトはうなずくと、ロキ・ファミリアのホームを指さした。
「みんなに話すんだね?」
アイズの問にゲノセクトは頷き、モンスターの脇腹の傷の奥にあったものを取り出すと、高速飛行形態に変形し、ホームへと向かった。
「それでロキ、なぜ急に集まってくれと?」
「さっき、異常なモンスターをアイズたんとゲノセクトが倒したんやけどな、なんでモンスターがそうなったのか、ゲノセクトが知っとるそうなんや」
「異常なモンスター?」
「どういうことなんじゃ?」
「モンスターの姿が急に変わったの」
「モンスターの姿が変わっただぁ?」
「まるで退化みたいになぁ」
「退化・・・」
「とりあえず、ゲノセクトの話を聞きたいなぁ」
ティオナの言葉で、皆がゲノセクトの方を見る。ゲノセクトは、ティオナとアイズから習った文字を黒板に書いていく。
『まず、モンスターの異常に関して話す前に、別の世界のことを話す必要がある』
「別の・・・」
「世界・・・」
『その世界には、ポケットモンスター、縮めて、ポケモンと呼ばれるモンスターと人間が共存して生きる世界』
「モンスターと共存・・・」
「そんな事が可能なんか?」
ファミリアの皆が驚愕の表情をする。ベートだけが不快な顔をする。ゲノセクトは、黒板にピカチュウの絵を描き、これがポケモンだと示す。
「なんじゃ、可愛らしい見た目じゃのう」
『昔からポケモンは、人間と高め合い、絆を結んで成長していくモンスターだ。ポケモンを持つ人間はポケモントレーナーと呼ばれている。そして、私も、ポケモンのうちの一匹だ』
突然の告白に、皆は驚き、立ち上がる者まで現れる。
「だから人間を助けまわっていたのか・・・」
「ダンジョン時代の謎の行動に納得いくわい」
「続けてくれ」
フィンの言葉を聞いて、説明を続ける。
『私は、幻のポケモンに位置されるポケモンであり、数に限りがある。それ故か、ポケモン界の中でも、伝説のポケモンを除けば、強者の部類に入る。古代のポケモンであることも関係しているのかもしれないが。私のことはもう良いだろう。モンスターの異変についてだ』
「それが聞きたかったんや。あれは一体何なんや?」
『あれは、ポケモン世界のカロス地方のみに伝わる現象。特定のポケモンにしか現れない、進化を超えた進化』
「進化を超えた進化・・・」
『名を、メガシンカと呼ぶ。メガシンカは、特定のアイテムと、ポケモンとトレーナーの強固な絆が必須なものとなる現象。例外は、伝説のポケモンのメガシンカのみ』
「メガシンカ・・・」
「なぜその現象がこの世界に?」
わからないとゲノセクトは首を振る。
『だが、なぜメガシンカがモンスターに起こったのかはわかる』
「それは?」
ゲノセクトは猿から取り出した石を机の上に置く。
『これはメガストーン。メガシンカに必要なアイテムの一つ。これが猿の脇腹に埋め込まれていた。そして、おそらくだが、ダンジョンとの親子としての絆が、メガシンカを引き起こした可能性が高い』
「ダンジョンとの親子の絆・・・」
『これから、ダンジョン内でこのような現象が確認される可能性が高い。気をつけてくれ』
「わかった。遠征の準備を進めているが、どうやら、物資を今の倍集める必要がありそうだ。ダンジョンに潜る回数を増やそう。それからー」
フィンが団員に指示を出し始めたので、ゲノセクトは、黒板の文字を消しながら、石を凝視する。
(なぜここまで惹かれるのか・・・。このメガストーンは、あの猿のメガストーン。それに、ゲノセクトにメガシンカ形態は存在しないはず・・・なぜ・・・)
出自不明のメガストーンに疑問が生まれて、この事件は幕を閉じた。