ダンジョンに赤いゲノセクトがいるのは間違っているだろうか?   作:競馬好き

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白兎

蟲モンスターの軍勢に襲われている人々を救援してからしばらくたった。ゲノセクトは、上層に来ていた。

 

(やはり、地上に行けば行くほど、モンスターは弱くなっていくようだ)

 

彼はダンジョンの性質について調べていた。このダンジョンに住むからには、ダンジョンがどのような性質をしているのかを理解しておかなければいけない。そして、ダンジョン全体の構造を理解しておかなければ、人間と遭遇時に、逃げた先に回り込まれる可能性がある。そのためにも、まずは上層を探索し、上層全体の構造と出現モンスター、そして、どのようなフィールドが存在するのかをメモすることにしたようだ。

 

(この層は湿地フィールドで、出現モンスターは蛙型とあとは前の階層とほとんど同一・・・)

 

木の板に爪で文字を書きながら、トコトコと歩いていく。時折襲いかかってくるモンスターをシザークロスなどの物理技で倒し、魔石を回収している。

 

(もうそろそろ、攻略者が多くなってくるだろう。次の階層で帰るとしよう)

 

次の階層に続く階段を登り、5階層に到達するゲノセクト。ここまで来ると、下級の冒険者が多くなってくるため、人間との遭遇確率が跳ね上がる。これより上の階層に行くのは断念したゲノセクトは、最後の木の板を取り出した。

 

(ここからは、ゴブリンや狼型のモンスターが主要のモンスターとなるのか。やはり、1階層から5階層は初心者の攻略者がダンジョンでのモンスターとの戦闘に慣れるための階層なのだな)

 

ゲノセクトは、冒険者がこの世界にいることを知らない。そのため、この塔に来ている人間を、攻略者と仮に呼んでいる。

 

(ここまで、この塔についてわかったことは、下層になっていけばなっていくほど、モンスターは強くなっていき、それに合わせて、攻略者も強くなっていき、遭遇時の危険が倍増する。階層それぞれにフィールドが異なり、階層によっては、水没した場所も存在し、ゲームのボスのようなモンスターも存在する。そして、稀にモンスターを倒すと、特殊なものを落として消えていく。とくにボスモンスターはその確率が高いようだ。あの金髪の攻略者が攻略時に黒く、分厚い皮を持っていっていたな)

 

これまでも階層であったことを思い出しながら、ダンジョンの総評を板に記していく。すると、この階層では珍しい光景を目撃した。牛型の二足歩行モンスター。ミノタウロスがいたのだ。

 

(なせこんな上層にミノタウロスがいるんだ?ん?あれは・・・)

 

ミノタウロスは何かを追いかけていた。見ると、白髪に赤目、防具は胸当てのみの青年であった。

 

 

(あの装備では、ミノタウロスの攻撃を受けてしまえば、一溜まりもない。どこかに助けとなる者はいればいいが・・・)

 

キョロキョロと辺りを見回すゲノセクト。しかし、彼とミノタウロス、そしてあの青年以外には誰もいない。

 

(助けに行きたいが・・・いや、助けるのに、モンスターや人間などのしがらみは関係ない。助けに行くとしよう)

 

ゲノセクトは、高速飛行モードに変形すると、神速を使用して、ミノタウロスに体当たりを食らわす。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

ベル・クラネルは危機に瀕していた。なぜか、5階層に現れたミノタウロスに追いかけられているからである。

 

ブモォオオオオ!!

 

ミノタウロスの咆哮が、彼の恐怖を掻き立てる。走るスピードを上げるベル・クラネル。しかし、そんなことをすれば、スタミナ切れで追いつかれる確率が高くなる。どんどんどん、彼の命が刈り取られる瞬間が近づいてくる。

 

「だ、誰か・・・」

 

走りすぎて、助けを呼ぶ声も出なくなってしまっている。そして遂に・・・。

 

どしゃっ!

 

行き止まりに到達し、その場に崩れ転ぶ。

 

ブルルルルルル!!!

 

唸り声を上げながら、ジリジリと近づいてくる。

 

「あ・・・あ・・・」

 

恐怖のあまり、ブルブルと体を震わせるベル・クラネル。そんな彼にミノタウロスは自身の持つ武器を振り上げた。そして、振り下ろされたその時。

 

ゴォオッ!!

 

鈍い音ともに、ベル・クラネルの目の前にいたミノタウロスが消え去った。驚いていると、奇妙な音とともに、何かがベル・クラネルの目の前に赤い何かが降り立った。

 

「モン、スター?」

 

そのモンスターは、奇妙な姿をしていた。自然に産まれたとは思えない人工的な赤い体色、それでいて、虫の爪や足、複眼。しかし、それ打ち消すかのように背部に取り付けてある、砲台。そのモンスターは、ベル・クラネルを一瞥すると、怒り狂い、そのモンスターに武器を振り上げながら突進してくるミノタウロスを確認すると、爪が緑色に光り輝くと、ミノタウロスをX字に切り裂いた。それにより、ベル・クラネルに血しぶきが降りかかり、血でびしょびしょになる。それを見たモンスターは、大砲に差し込まれている黄色の無機的な正方形のモノを、水色のモノに変えると、砲身をベル・クラネルに向けてくる。

 

「はっ!?」

 

すぐに逃げ出そうとするが、いま、彼が座り込んでいる場所は行き止まり。逃げること叶わず、彼は、腕で顔を覆い、目をつむる。

 

(すみません神様、僕、死んじゃうみたいです・・・)

 

しかし、その考えは杞憂に終わる。

 

バシャッ!

 

「わぷっ!?」

 

モンスターの砲身から水が出てきて、ベル・クラネルにかかってしまった血を洗い流した。

 

「え?」

 

モンスターの行動に困惑し、へたり込むベル・クラネル。

 

「あっ!」

 

女性の声が聞こえ、一人と一匹が振り返ると、金髪美少女冒険者、アイズ・ヴァレンシュタインがいた。

 

「あのモンスターだ」

 

「待ちやがれ!!!」

 

怒号とともに、グレーの髪の毛の獣人、ベート・ローガが猛スピードでモンスターに向かってくる。アイズがその後を追う。モンスターはそれを見ると、変形し、超スピードで逃げていった。

 

「そこの君ー!!」

 

声をかけられたベル・クラネル。見ると、アマゾネスの冒険者、ティオナ・ヒュリテが走ってきていた。

 

「大丈夫!?あのモンスターになにかされたの!?」

 

「い、いえ、ミノタウロスに襲われていたところを助け、られた?のでしょうか?」

 

ベル・クラネルは、先程あったことを正直に話した。

 

「そうなの?でも、さっき、背中の大砲向けられてたよね?」

 

「いえ、その、あのモンスターが倒した血しぶきがかかって、それを、洗い流してくれたんです」

 

「そうなんだ・・・。やっぱりよくわからないモンスターだなぁ・・・」

 

「あのモンスターのこと知ってるんですか?」

 

「ええ、まぁ、知ってるというか・・・」

 

話していいのかわからず、唸るティオナ。

 

「ちょっとだけなら教えてあげるけど、あのモンスターにうちら、50階層で助けられてるんだよね〜。なんでこんな上層まで上がってきたんだろう・・・?」

 

「そうなんですか!?あのモンスターすごい強いじゃないですか!!」

 

「そのとおりなんだ。なんか、人間みたいにモノを考えるみたいだし、調べるためにうちで捕獲しようってなってて・・・。でも、さっき見たとおり、すごい逃げ足が速いんだよね〜」

 

「どこかに行っちゃった・・・」

 

「クソッ!!」

 

「アイズとベートでも捕まえられないんだもんねぇ〜」

 

見失ってしまったのか、トボトボと戻ってきたアイズと怒りでダンジョンの壁を蹴るベート。

 

「あの・・・」

 

そんな二人に、ベル・クラネルはある提案をする。

 

「捕まえようとするから逃げられるんじゃないんですかね?誰でも、自分に危害を加える相手には近づきたくないですから」

 

「そうだね・・・後で団長に言ってみるよ!!君はもう帰ったほうがいいんじゃない?」

 

「そうですね、そうします。失礼しました」

 

「このこと、誰のも言わないでねぇ〜!!」

 

「わかりました」

 

ベル・クラネルは、のそのそと立ち上がると、帰路についた。

 

「強かったなぁ、あのモンスター・・・」

 

さっそうと現れ、ミノタウロスを倒してしまったあのモンスター。

 

「僕も、あんなふうに強くなりたいな・・・」

 

モンスターでありながら、放浪する英雄のような不思議な雰囲気を持ち、その姿をかっこいいと感じたベル・クラネル。

急にワクワクとした感情が溢れ出してきたベル・クラネルは駆け出した。

 

「絶対に、追いついて見せる!!」

 

ベル・クラネルに目標ができた。あのモンスターに追いつく。それを叶えるために、彼は、冒険に出る。

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