ダンジョンに赤いゲノセクトがいるのは間違っているだろうか? 作:競馬好き
ロキ・ファミリアに追いかけられながらも、ダンジョン内で飲水や食べ物に困らず生活することができつつあるゲノセクト。驚異となるのはロキ・ファミリアのみである。
(追いかけられるのは当然だが、他にもモンスターがいるというのに、なぜ、私だけを狙うのだろうか?あのとき助けたのが影響しているのか?)
ロキ・ファミリアの目的がわからず、首を傾げるゲノセクト。しかし、本人たちではないため、そんな事を考えていても、彼らが追いかけてくるのを辞めることはないため、ゲノセクトは考えるのをやめた。とりあえず、減ってしまっているオレンの実の収穫と残り少なくなった飲水を補充するため、水瓶とそこら辺で拾った袋を持って穴を出た。
森林エリアでオレンの実を収穫していると、巨大な気配を感じた。振り向くと、巨大な竜のモンスターが唸り声を上げてゲノセクトを睨みつけていた。ゲノセクトは砲台にフリーズカセットを差し込んだと同時に、竜は口から炎を発射してきた。すぐさま高速飛行モードに変形し、神速で回避する。
(まったく!よくも貴重な食料の実る木を燃やしてくれたな!)
オレンの実の木を燃やされてしまい、怒り心頭のゲノセクト。通常の姿に戻ると、竜に冷凍ビームを放つ。竜の体は凍りついていき、変温動物である竜は、動きが鈍っていく。
グォオオオオオオ!!
苦しみの声を上げる竜は、腕を振り上げ、その鋭い爪でゲノセクトを切り裂こうとする。しかし、ゲノセクトは、アイアンクローを発動し、その爪を逆に切り裂いてしまう。竜は怯み、一歩後退する。しかし、それが命取りとなる。彼の最強の技であるテクノバスターの弱点は、チャージの時間があること。そのため、ゲノセクトと戦う際は、手数で押し切るか、テクノバスターを撃った後を狙うしかないのだが、そもそも、ポケモンは技のバリエーションが非常に豊かであるため、手数で押し切るのは非常に困難であり、どんな攻撃からも身を守れるまもるを取得している。そのため、接近戦で彼を倒すのは不可能に近い。また、テクノバスターを撃った後を狙う方法も、殆どの者はテクノバスターを撃たれた場合、その命はないと判断したほうがいい。また、イナズマカセット時のテクノバスターは余波として、あたりに電気が流れ、ブレイズカセット時は熱波が、フリーズカセット時は吹雪が、アクアカセット時は水流で足を取られるため、発射後のスキを狙うのも、相当の手練でない限り不可能ある。
キュイイイン・・・
チャージが始まり、砲身に冷気エネルギーが溜まっていく。
(発射)
そして解き放たれ、竜を飲み込んでいく。そして、竜は全身氷漬けとなり、煙となって消えていった。残ったのはとても大きい魔石のみ。
(終わったか・・・)
安堵したのもつかの間。竜が放った炎が木々に燃え移り、森林火災を引き起こしている。さながら竜の置き土産である。それを見たゲノセクトはフリーズカセットをアクアカセットに交換し、砲身から水流を発射。消火していく。
森の消火を完了し、生き残っていたオレンの木からオレンの実を収穫し、水瓶に水を汲んで帰路につく。この階層で、ゲノセクトは実質的な階層主である。そのため、先程の竜のような愚か者以外は、ゲノセクトに近寄ってこなくなった。そのため、安全に収穫と水の確保ができるようになったのだ。
(これだけあれば、しばらくは困ることはないだろう。次にこの階層に来るのは一ヶ月後で大丈夫であろう)
蓄えが十分であることを確認しながら、オレンの実を一つかじる。様々な風味が口の中に広がる。独特な味であるが、とても美味である。オレンの実を楽しみながら、角を曲がると・・・。
あ!ロキ・ファミリアが飛び出してきた!!
「あ!?あのモンスターだ!!」
ティオナがすぐさま反応すると、メンバーはゲノセクトを取り囲むようにすぐさま移動した。
「こいつがリヴェリアたちが遭遇したモンスターか!」
「なるほどねぇ〜、たしかに強そうだわ」
取り囲まれたゲノセクトを見て、ガレスとティオネが笑みを浮かべる。ゲノセクトは、持っていた荷物を遠くに置くと、ひたいに汗を垂らしながら、この状況を突破するための技を選んでいた。
(ギアチェンジを行い、攻撃力とスピードを上げ、神速で一点突破を試みるか?もしくは、まもるを使用し、全員を消耗させてからテクノバスターで一気に蹴散らすか・・・。ん?あの人は)
「おい!!お前たち!!」
すると、ゲノセクトが見覚えのある人物が、ゲノセクトを中心に展開されているゲノセクト包囲網の中に入ってきた。
「お前たち!何をやっている!!フィンの言っていたことを忘れたのか!?武器を下ろせ!」
リヴェリアが全員の武器を降ろさせると、ゲノセクトの方を向いて謝罪してきた。
「すまない、君にはあのとき助けてもらったというのに」
(この人は、あのとき蟲モンスターに襲われていた人か)
ゲノセクトは首を横に振ると、ロキ・ファミリアは驚いた表情をした。
「ま、まさか、言葉が通じるのか?」
ゲノセクトが首を縦にふると、更に驚いた顔をした。
「ほう、こいつはなんとまぁ・・・」
「そこまで賢かったなんて・・・」
すると、リヴェリアの後ろから小柄で金髪の槍を持った男が現れた。
「団員が失礼をしたな。僕はフィン・ディムナ。ロキ・ファミリアの団長をしている。君は・・・。言葉は通じてもさすがにしゃべれはしないか」
(どうやら、危険はなさそうだ)
ゲノセクトは戦闘態勢を解き、荷物を持ち直す。
「その果物、君が食べるの?」
ティオナが興味津々にゲノセクトが持つ荷物を覗き込み、オレンの実を取り出しながら効聞いてきた。ゲノセクトがうなずくと、美味しいのかな?と、オレンの実の匂いをかぐ。
「やめておきなさい。モンスターが食べる実よ?」
「でも美味しそうだよ?」
(オレンの実は、料理でも使われる実だ。人間が食べても大丈夫なはず)
それを見たゲノセクトは、連続斬りでオレンの実をくし形切りにして差し出した。
「くれるの?ありがとう!!」
「ティオナ!」
ティオナはそれを口に放り込んだ。
「ん〜!美味しいよこれ!!」
(やはり大丈夫だったか)
他のメンバーにも渡していく。ティオナの反応を見て、おずおずとオレンの実を口に運ぶ。
「確かに美味いなこれは」
「モンスターが食べるってのが癪だがな」
「そんなことよりも本題に入ろう。単刀直入に言おうモンスター君。僕達についてきてくれるかな?」
フィンがそう言ってくる。ゲノセクトは顎に手を当てると、どうしようかと考える。
「悪いようにはしない。自慢ではないが、我々はオラリオでも強豪に入るファミリアだ。危険はないと言える」
(危険はないといえど、他の人間が受け入れてくれるとも限らん。行くべきではないか?)
「君が懸念してるのは、他の人間が受け入れてくれるかであろう?君の存在は、各地で噂となっている。それに不信感を抱く者もいる。その不信感の標的が、ギルドに向けられているのも事実だ。そして、それを解決するために、ギルドから直接、君の討伐依頼が、君と遭遇した後に来た。しかし、我々は君に一度助けられている。君を倒したくはない。そのため、我々は君を捕獲することに決めた。もし、このまま君が逃げ続ければ、大規模な討伐隊が派遣されてしまう。その前に、君が危険ではないという証拠をギルドに提出したい。そのために、君には僕達のホームまで同行してほしい」
(確かに、大規模な討伐隊が来たら、とても面倒である。それに、もし、外の世界に行くことができるのであれば、食べ物や飲水の確保をしなくても良くなる。まぁ、それを手に入れるためのお金が必要にはなるが。モンスターの力を欲しがる者はたくさんいるだろう。ついていくのもやぶさかではない。そのためには、一度住処に帰り、荷物を取ってこなければなるまい)
ゲノセクトはうなずき、少し待ってほしいという合図を送る。
「それは待ってほしいという意味か?」
なんとか通じたようで、ゲノセクトはついてこいと、鎌を振って歩き出す。ロキ・ファミリアの面々は、ゲノセクトの後に続いて歩き出す。数階層上がり、住処に到着する。
「ここに住んでいたのか」
「未開拓領域に住んでいたのか。道理で見つけられないわけだ」
「安全領域を見つけて棲み着いたというわけじゃな。賢いモンスターじゃのう」
「わぁ!?すごい量の魔石!!」
「豪邸が建つ量だな」
その反応を見たゲノセクトは、魔石を地面に置き、矢印とハテナマークを地面に記した。
「これはなにかという意味か?これは、魔石と呼ばれているもので、様々なものに使われている。我々冒険者は、これを主な収入源としているんだ。ギルドで換金ができる」
(集めておいて正解だったな)
何に使うかわからず、とりあえず集めていた魔石。そのおかげか、当分の食料や飲水の確保は大丈夫なようで安心するゲノセクト。魔石とカセット、オレンの実に水が並々入った水瓶を持つとフィンに合図を送る。
「準備できたようだな。では、帰るとしよう」
次回
ゲノセクト、オラリオに降り立つ