十二話を始めたいと思います。
吸血姫アレーティアが仲間になった!
今回は皆さんが待っていたりいなかったりしたであろう卓弥の過去を語るところです。
それでは、第十二話をどうぞ。
卓弥達がアレーティアの封印の真実を知ってから、それぞれの時間を過ごしていた。
卓弥はサソリもどきを解体し、肉と鉱石を分けており、ルチアはこれまでで使ってきた弾や手榴弾などの消耗品の補充。
そしてアレーティアはルチアの手伝いをしていた。
「ねぇねぇティアちゃん!」
「……ん?ティアって、私のこと?」
「そうだよ!正直な話、アレーティアって名前、呼ぶにしてはちょびっとだけ長いからね。呼びやすい名前で呼びたいんだけど……ダメ?」
「……ん。構わない。呼びたいように呼んで」
「ありがと〜!」
どうやら、ルチアとアレーティアは随分と仲良くなったみたいだった。
そんな2人の話し声を聞きつつ、卓弥は作業を黙々と続ける。
「それでね!ティアちゃんのこと、も〜っと教えてくれないかな?ご主人様も知りたいですよね!」
「まあ、仲間のことじゃしな」
「……わかった。教える」
そう言って、アレーティアは過去のことを話し始めた。
吸血姫として長い間国を守るため、敵国に対し前線で戦っていたこと。
叔父ディンリードに叱られつつも、それでも楽しい毎日を過ごしていたこと。
近衛の騎士団とも、部下と上司というよりも家族のような繋がりがあったこと。
前は裏切られた悲しみの記憶だったのだろうが、真実を知った今では、宝石箱のような大切な記憶に戻ったのだろう。
……この時、話を聞いていた中で、卓弥が『つまりアレーティアは300歳は歳を食っておるということか?』と考えていたが、院長夫人や、孤児院の女子達から『レディーに年齢を聞くのはマナー違反!』とよく言われていたので、口には絶対に出さなかった。
「……それにしても、吸血鬼族とやらはお主みたいに長寿なのかいな?」
「……私が特別。"再生"で年もとらない……」
話によれば、12歳になって魔力の直接操作や"自動再生"の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。
普通の吸血鬼族も他者への吸血行為により他の種族よりは長生きするが、それでもせいぜい200年が限度らしい。
ちなみに、前にルチアから聞いた種族の平均寿命については、人間族が70歳、魔人族が120歳、亜人族は種族によるが、地球で言うエルフに近い森人族の中には、何百年も生きているものがいるとのこと。
ユエは先祖返りで力に目覚めたから僅か数年で当時最強の一角数えられていたらしく、17歳の時に吸血鬼族の王位についたらしい。
魔法に関しては全属性に適性があり、アレーティアの得意戦法は、身体強化で逃げ回りながら、あるいは自動再生によるダメージ無視により魔法を相手に叩き込むもののようで、接近戦は不得意らしい。
「……それで、ここはどこら辺で、ここの出口について知っていることとかはないのかいな?」
「……わからない、でも、この迷宮は反逆者の1人が作ったと言われている」
「あー、それについては知っとるんじゃ。ルチアがそうゆうことに詳しかったからな」
「そうですね〜、情報的には完全に無駄足だったみたいですね。ティアちゃんがいたから戦力的にはプラスだったんですけど」
そんな話をしている中でも2人はテキパキと作業を行い、食料の確保や消耗品の補充を完了させ食事の準備をしていた。
そんな中、アレーティアが2人に質問してきた。
「……2人は、どうしてここにいる?」
アレーティアは2人から聞きたいことがたくさんあった。
なぜ魔境である奈落の底にいるのか。
なぜ魔力を直接操れるのか。
なぜ固有魔法らしき魔法を複数扱えるのか。
なぜ魔物の肉を食べても平気なのか。
そもそも2人は人間なのか。
ルチアが使う武器は一体なんなのか。
マシンガンのように繰り出される質問攻めに、2人は丁寧に1つづつ質問に答えていく。
卓弥がこのトータスに召喚されてから始まり、ベヒモスとの戦いで誰かの裏切りにあい奈落に落ちたこと、神水のこと、卓弥の知識をもとにルチアの武器を作ったことなどツラツラ話していると、いつのまにかアレーティアが涙をポロポロこぼしていた。
「ほえぇ!?」
「いきなりどうした?」
「……ぐす……2人とも……つらい……私もつらい……」
どうやら2人のために泣いてくれているらしい。
それにお互い顔を合わせると、苦笑してアレーティアの頭を撫でたりして慰め始める。
「気にするな。我もそんなことは気にしておらんし、復讐するつもりもない。そんなことをする価値は奴らにはこれっぽっちもないしの」
「そうですよ。正直私自身もこの先に用事があったので、むしろ感謝してるんですよ?『私達を奈落に連れて行ってくれてありがとう。人を殺した罪悪感を味わい続けてね。プギャァ!』っておちょくりたくはありますけど」
「まあこやつが言うことは置いといて、あとは元の世界に帰る方法や友人を帰す方法を探さんといかんからのぉ」
撫でられて気持ちよさそうにしていたアレーティアだったが、卓弥のその言葉にピクリと反応する。
「……帰るの?」
「む?そりゃあ帰りたいわな。今頃孤児院の子供達が泣いてるだろうからな。早く帰って安心させたい」
「……そう」
アレーティアは沈んだ表情で顔を俯かせる。
そして、ポツリと呟いた。
「……私にはもう、帰る場所……ない……」
「は?何言っとるんじゃ?お主も一緒に来るのじゃぞ?」
「………え?」
アレーティアは、卓弥のそのあまりにもさらりと出た言葉に驚愕をあらわにして目を見開く。
卓弥はそんなアレーティアを見返して、もう一度告げる。
「じゃから、お主も地球に来るのじゃぞ?まあ、お主のような存在が来るには窮屈であろうが、戸籍の問題とかは兄の1人が政治家じゃからそう言うのにも細工できるじゃろうしの」
「………」
「それに、まあ、うちの孤児院には一兆度の火球を出せる奴や鉄だろうと何だろうと食い尽くす奴、後はまあ、暗殺者の末裔とか、地球では暮らしにくい奴らもたくさんおるしのぉ」
「あの、1番最後のはともかく、前の2人は本当に人間ですか?」
「とにかくあれじゃ。お主の叔父と約束までしたのに、お主だけこの世界に置いて行くなんぞあり得ん。と言うわけじゃ」
そう聞いたアレーティアは、「いいの?」とおずおずと、しかし隠しきれない期待と一緒に訪ねる。
卓弥はそれに首を縦に振って答えると、アレーティアは花が咲いたような笑顔を見せた。
そして、今度はルチアが卓弥に対して質問してきた。
「あの、すみませんご主人様。ご主人様の過去って、教えてもらってもよろしいですか?」
「ん?なんじゃ藪から棒に」
「すみません。でも、前から気になってたんです。魔物がいないはずの世界で過ごしていたはずのご主人様が、魔物みたいな生き物を食べたことがあると言ったり、魔力も平然と使っていたり、それに、あの時ティアちゃんに対して「自分も名前を捨てたことがある」って言ってましたよね?」
「………」
「……私も気になる。タクヤ。教えて?」
卓弥は口を固く結び、下を向いて考え込んでしまう。
数秒、いや十数秒後、卓弥は頭をガシガシ掻きながら顔を上げる。
「……まあ、そうじゃな。いつまでも隠すつもりもなかったが、言うようなことでもないからな。じゃが、聞きたいのなら、話すかのぉ」
そう言いながら、卓弥は語り始めた……
「まず、我は元から地球に居ったわけではない。我の本当の故郷は『ヴァルマキア』という、まあ、トータスとは異なる異世界なんじゃ。ヴァルマキアでは地球のものを超える科学力と、トータスのものを超える魔法技術を持つ世界での。恐らく他のどんな世界よりも発展してあったと思う」
「それで、まあそんな世界にも、敵の土地を奪うためなどを理由に戦争が起こっておった。そんな時は機械仕掛けの兵隊人形『メタルロイド』や魔法使いが戦うことが主じゃった。しかし、科学者『エニー・レクサス』が戦争を変える可能性を持つ一つの計画を思いついたのじゃ。それが、我にも関係のある計画【エニーズ計画】じゃ」
「エニーズ計画と言うのは、まあ簡単に言えば『『対象を喰らうことで喰らった対象の力を手に入れる能力』と、『人が持つことが叶わない超常的な異能』を持たせた人型兵器を造る』というものじゃ。そうして、それぞれ、無機物、哺乳類、鳥類、魚介類、爬虫類、両生類、昆虫類、植物、魔物をそれぞれ喰らうことで力をつける9体の人型兵器【エニーズ】が造られた」
「それで、まあ、我が最初の、無機物を喰らうエニーズ、『
それを聞いたルチアとアレーティアは驚いた。
卓弥が普通の人間ではなく、元は生物兵器として人工的に誕生した存在だったと知ったからだ。
2人の驚きに気づいていたが、それでも、卓弥は話を続けた。
「エニーズは、反逆することを防ぐために短命に設計、そして戦闘に出る際に自爆装置を体内に埋め込むようにしておった。それでも良かった。他の8人の弟妹達と一緒に研究所内に広がる森の中の白い家で暮らしていけたのじゃからな。いつか戦場で死ぬかもしれんが、それでも、ここでの楽しい思い出があれば良い。そう思いながら生きていた………………あの日までは」
「その日はちょうど、我の9歳の誕生日の日じゃった。他の弟妹が我にプレゼントを用意するために我を家から追い出してのお。よっぽどプレゼントを秘密にしたかったのじゃろうなぁ。釣りをして食料を確保したり、果物を採集したりして、家に戻ったのじゃ。……じゃが、そこにあったのは………」
「外壁が赤く染まった白い家と、その家の前で息絶えた弟妹達の遺体じゃった」
「何故そうなったのかはよくわからん。じゃが、きっとエニーズ計画はうまくいかなかったのじゃろうな。我らエニーズは不要と判断され【殺処分】されることになったみたいじゃ」
「そして次は我の番となった。じゃが、この時、我の頭の中には自分がこれから殺されるという考えは一切浮かばんかった。『何故殺されなければならなかった』『何故幸せを奪う』『俺たちが何をした』そんな考えで頭がいっぱいじゃった」
「そして、我を殺しに近づいてきた職員に気づくと、前に見た『エニーズの短命を解消する方法』を思いついたのじゃ。それは、
我は、職員の1人の首元を噛みちぎっとった」
「そこから先はあまり覚えとらん。覚えがあるのが、噛みちぎった職員を放置して、2人目の職員を、自分の腕を刃物に変えて首から上を縦に切り裂いたこと。そして、最後の1人を殺す寸前のところぐらいじゃな」
「意識を取り戻した時、大体15?いや20はおったかのお、その数の職員の死体が落ちていて、最後の生き残りも両手両足を削ぎ落とされた状態で倒れて命乞いをしておった。我は、其奴に『生きたいか?』と言ったんじゃ。そしたら職員は『死にたくない!』と何度も叫んでおっての……じゃが、我には何にも響かんかった。何故こんな奴等に弟妹が殺されたのかと思った。生かす理由もないゆえに最後の職員を生きたまま頭を踏み砕いて殺した」
「そのあと、弟妹達の遺体一つに集め、その心臓を喰らった。我自身、忘れることを恐れたんじゃろうな。いつか弟妹達の死が過去のものとなって、ひっそりと記憶から消え去っていくことが。弟妹達の心臓を喰らったことで、偶然にも我は、弟妹達が扱える『捕食したものを再現できる力』を手に入れた」
「その後はもう、壊れた機械のようじゃったのお。それ以外何もできないかのように魔物や生き物を狩り、そして喰らい力をつけていった。死にかけても、傷を癒して、再度挑戦し、獲物を殺し、そして喰らい続けた。この喋り方も、心が壊れてから話すようになったんじゃ。その前は自分のことを『俺』と呼んでおったし、こんな老人くさい話し方はしとらんかったのじゃぞ?」
「そんなある日、異世界へ渡ることができる一方通行のゲートが発生したという情報を手に入れ、我は顔を隠しながらそこへ向かい、ゲートを渡った。」
「ゲートを渡った先が、今の我の住まう世界『地球』じゃった。その時は夜で、土砂降りの雨じゃったのぉ。なんのあてもないまま彷徨っていると一組の夫婦に呼び止められた。それが後の父と母……まあ、院長と院長の妻じゃった」
「冷たく固まっていたはずの心が、父達と会って過ごしていく中でほぐれていった。弟妹達のことを忘れたわけではないが、弟妹達が生きていた頃のように生きられた。そんなことがあり、その後、我は白崎と出会い、そして同じ高校に上がり……」
「トータスに召喚され、現在に至る。と言ったところじゃろうな………ん?」
自分の過去を語り終えるが、あまりにも声が聞こえなかったため2人の方を見ると、ルチアの目からは川のように涙が流れていて、アレーティアもひとすじの涙を流していた。
「いや、マジでどうしたんじゃ?」
「あ"、い"え"、ずびばぜん。あばりにも"
「……ん……ぐす……私も……悲しい。心が……痛い」
まさかここまで悲しんでくれるとは思わず動揺したが、卓弥は気を取り直して話をした。
「もうとっくに過ぎた話じゃ。割り切ったとは言わんが、それでも、あの過去があったから今の我がおる。とにかく飯じゃ。食って今回はもう休むぞ」
そう言いながら、切り分けたサソリもどきの肉を焼き始める。
そのあと、アレーティアは2人の血を飲めればそれで良いと言い、2人から血を分けてもらった。
ちなみに、ルチアの血の味は『たくさんの野菜と上質な肉をコトコト煮込んだスープ』。
卓弥の血の味は『極まった辛味の中に芳醇で爽やかな甘味がある。神のお酒みたい』とのこと。
そして食事が終わったあと、卓弥は警戒のために周囲の見回りに行った。
ルチアが新たなアーティファクトを造る中、アレーティアがルチアに声をかける。
「……ねぇ。少し聞きたいんだけど」
「はい?何ですか?」
「……ルチアって、タクヤのことが好きなの?」
「ほあ!?」
作業中にも関わらず素っ頓狂な声を上げるルチア。
ルチアはアレーティアに向き直り話し出す。
「ちょちょちょ!待ってくださいよティアさーん。ご主人様を好きってそんな、そんな感情よくわかんないし」
「……でも、好意はある、でしょ?」
「………」
ルチアは顔を赤くしながら下を向く。
そして、ボソリボソリと話し出す。
「……でも、私は、ご主人様を利用したんですよ?戦うことを嫌ってたご主人様に無理言ってここに来させたんです。それで、私の不注意のせいで奈落に落ちて……本当に好きだとしても、私にはご主人様を好きになる資格なんてないんです………」
そう、ルチアは卓弥が奈落に落ちてしまったことに罪悪感を抱いていた。
本当なら今はここよりずっと安全な場所で帰るための手掛かりを探していたはずなのに。
その原因になった自分に卓弥を好きになる資格はないと言う。
しかし、アレーティアはそれを否定する。
「……それでも、好きになったのならそれでいいと思う」
「……ティアちゃん」
「……好きになる資格なんて必要ない。好きなら好きで押し通せば良い。……それに、タクヤはそんな事を気にするような人じゃない。きっと、ルチアが頼まなくても着いてきてたと思う。タクヤは、とっても優しいから」
そう励まされると、ルチアはどこか納得したような、吹っ切れたような表情になる。
「……そっか……ねぇ、ティアちゃん」
「……ん」
「私、まだよくわかっていないけど、多分、ご主人様が好きなんだと思います」
「……ん」
「ご主人様はいっつも他人の事ばかり気にかけて、自分を蔑ろにするような人です。多分、死んでも誰かを助けるような人です」
「……ん」
「ここから先、絶対ご主人様は無茶をします。きっと、死ぬまで無茶をし続けます。だから………」
そこで言葉を区切り、アレーティアを見て……
「一緒に、無茶するご主人様を止めましょ。私たち2人でならご主人様を止められるだろうし。それに、帰りを待ってるだろう白崎様にも絶対会いましょう」
「……そのシラサキって人も、タクヤのことが好きなの?」
「そうです。そして、多分ご主人様を1番よく知っている人です」
「……ん!それなら、絶対タクヤを守れる。……それまでは、私たちで、タクヤを助ける。」
「はい!」
こうして決意を新たにした少女達。
その後も、卓弥が戻ってくるまで、ガールズトークが弾んだという。
第十二話、完!
いかがだったでしょうか。
今回は今まで引っ張ってた卓弥の過去を書きました。
正直もっと上手く説明したかったんですけど…自分のレベルだとこれが限界です。
必要があったら書き直すつもりもありますが、よければその辺の感想もよろしくお願いします。
次回は、香織サイドに戻りたいと思います。