第十四話を始めたいと思います。
過去の悪夢を乗り越えた勇者一向。
一方その頃奈落組も再び攻略を再開する。
それにしても、こんなに長い間待たせてすみませんでした。
……タグに『不定期更新』とか入れたほうがいいですかね……?
それでは、第十四話をどうぞ。
勇者パーティーがベヒモスを打倒したその頃奈落では……。
「よーし、完成!!」
ルチアが試験管のような形の容器に、神結晶から滴る神水を詰めていた。
容器の数は約20本。
それをアレーティアは不思議そうに見つめている。
「……ルチア。何してるの?」
「え?神水をストックしてるんですよ。神結晶から勝手に溢れるから零すのも勿体無いし、いつでも手に入るものでもないですし…」
「………ん。」
説明するルチアだったが、それを遮るようにアレーティアが、何故かジト目をしながらある方向を指差す。
その先には………
ジョボボボボボボボボボボ………
……神結晶の欠片を握りしめ、そこから滝を思わせる量の神水を出し、その神水を水筒ぐらいの大きさの容器十数個につめる卓弥の姿があった。
トータスの世界の人間が見たら、何処かの猫と鼠のアニメのように目を飛び出させながら驚きそうな光景を卓弥がなんでもないかのように行えるのは、卓弥に
"永久魔力機関"。
言ってしまえばそれは『尽きることなく永遠に魔力を生み出す力』と言ったところだ。
卓弥の故郷『ヴァルマキア』では『魔力を尽きることなく扱える生命体は、人間はもちろん、魔物や悪魔、精霊、神ですらも存在しない。使えば必ず魔力はなくなり、再び使いたいなら休息が必要だ』とされている。
しかし、【エニーズ計画】を実行したエニー・レクサスは、科学と魔法を一つにして作り出した、『永久に魔力を創り出す機関』を生物に埋め込み、創り出した魔力を扱うことができるよう改造を施すことで、後天的に『永遠に尽きない魔力を扱える生命体』を造れるのではないかと考えた。
結果的にそれは成功。
その成功例こそ、最初に生み出されたエニーズである『
"永久魔力機関"を持つ卓弥の魔力量は正しく『∞』。
どれほど魔力を使っても、卓弥の魔力は決して無くなる事はない。
なので、大量の魔力を神結晶に注ぎ込み続けることで、神水をすぐに生成することができるのだ。
「……ん?どうかしたのか?」
「……イエ、ナンデモ」
「何故片言なんじゃ?」
人としての枠組みから完全に逸脱した卓弥を見てジト目をするルチアとアレーティアを見て、何故そんな目をしているのかと首を傾げる卓弥であった。
そんなこんなで、卓弥とルチアは、吸血姫アレーティアを連れて攻略を再開する。
接近戦最強の卓弥、魔法チートのアレーティア、兵器によるルチアのサポートにより10階層ほど順調に攻略に成功した。
アレーティア曰く、回復系や結界系の魔法は得意ではないと言っていたが、回復なら、卓弥によって量産された神水でどうにでもなるので問題なかった。
しかし、60階層ぐらいのところで彼らが遭遇したのは……
「うっひゃぁぁあああ!こんなにたくさん
「余計なこと口ずさむ暇あるなら足を動かせ!」
「……2人とも、ファイト……」
「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」
……もちろんファンなんかではなく、200体近くの魔物の軍団である。
どうしてそうなったのか。
それを説明するために、その階層に突入したばかりの時間まで遡る……
その階層には樹海が広がっていた。
10メートルを超える木々が鬱蒼と生い茂り、空気も湿っぽい。
地面からも160cm以上ある雑草が生い茂っているが、以前通った密林の階層よりは暑くない。
階下への階段を探して探索している時、彼らの前に、地球で言うティラノサウルスにそっくりな特徴を持つ魔物が姿を現した。
………頭に一輪の花を咲かせた、どこか緊張感が薄れる見た目をしていたが。
鋭い牙と迸る殺気から、このティラノサウルスは強力な魔物であると理解できた。
……頭の上でふりふりと揺れる向日葵に似た可憐な花のせいで、それら全てが台無しになっていたが。
それでも、ティラノサウルスが咆哮を上げながら襲い掛かってきたため、卓弥は腕をバリスタのような形に変化させ、ルチアも双黒銃を取り出し………2人が行動する前にアレーティアが手をスッと掲げる。
「"緋槍"」
アレーティアの手元に現れた円錐状の炎の槍"緋槍"が、ティラノサウルスの口内に一直線で飛び込み、そのまま貫通して一瞬で絶命させる。
そこに残ったのは、射線上の肉を溶かされた状態で死んだティラノサウルスと、そのティラノサウルスの頭の上に咲いていた花だけだった。
そんな光景を見て、卓弥とルチアはアレーティアを見る。
そんな2人にアレーティアは振り返り、無表情ながら何処か得意げな顔をする。
「……私、役に立つ。……仲間だから」
アレーティアは、「頑張るぞいっ!」と言いたげにムンっ!と擬音が出そうなポーズを取る。
それを見て卓弥とルチアは互いに顔を見合わせ、苦笑いをしながらアレーティアに話しかける。
「……お主が役に立つのはわかっておる。じゃからお主は後衛をやっておくれ。少しは動かんと、我の体が鈍ってしまう」
「……タクヤ……でも……」
「ティアちゃんが優秀なのはわかってますよ。だから、ティアちゃんにしかできないことをティアちゃんが、私にしかできないことを私が、そしてご主人様しかできないことをご主人様がすれば、私達に敵なしです。だから、少しは私達を頼って欲しいです」
「……ルチア……ん」
2人に注意され、アレーティアはシュン…とする。
そのあと卓弥が労いとして頭を撫でてやるとほっこりした表情になって機嫌を直したので、2人は顔を見合わせて再び苦笑した。
そうしていると、ルチアの"気配感知"や卓弥の様々な感知系固有魔法に新たな魔物が10数体ほど接近するのを感知した。
アレーティアを促して陣形を取る。
卓弥が前衛、残りの2人が後衛を陣取り、魔物の包囲を回避するため自分たちから魔物のうちの1匹の方に突進する。
生い茂った木の枝を払い除いて飛び出した先には、体長2mほどの、例えるならラプトル系の恐竜のような魔物がいた。
……頭からチューリップのような花を咲かせた状態で。
「……何故彼奴の頭にはチューリップが咲いとるんじゃ?ここの魔物達の流行りなのかいな?」
「……かわいい」
「流行りでは…無いと……思いたい……です、ね」
アレーティアのほっこりした言葉や、卓弥のありえない(?)考察を否定するようにルチアが話そうとするが、否定材料が少ないため断言できず、徐々に言葉の勢いが無くなっていた。
ラプトルは、そんな空気や頭上の花を無視するように飛び掛かる。
「シャァァアア!!」
強靭な脚にある20cmほどの鉤爪を突き刺そうとするが、3人は三角の陣形を取り、相手を包囲できるように回避する。
回避してすぐルチアは、さっきからずっと気になっていたラプトルのチューリップを撃ち抜く。
ラプトルは一瞬痙攣し、着地に失敗しもんどり打ちながら地面を転がり、樹にぶつかって動きを止めた。
「……死んだ?」
「いえ、まだ生きてるみたいですけど……」
「………これは?」
ルチアとアレーティアがラプトルの生死を確認する中、卓弥は今のラプトルの反応に既視感を感じた。
何故そんなものを感じたのか思考の海に沈もうとしたが、沈む前にラプトルが動き始める。
ムクッと起き上がり辺りを見渡し始め、先程まで頭に咲いていたチューリップを見つけると、それを親の仇だと言わんばかりに踏みつけ始めた。
「え〜、何ですかその反応、どういうことですか?」
「……イタズラされた?」
「いや、そんな子供のイタズラじゃ無いんですから……」
『………やはり、これは………』
ラプトルが一通りチューリップを踏みつけ、満足したのか満足げに天を仰ぎ「キュルルル〜!」と鳴き声を上げる。
卓弥はそんなラプトルに一瞬で近づき、指先から伸ばした、まるで恐竜で言うテリジノサウルスのようなとても長く鋭い爪でラプトルの首を切り飛ばす。
「えちょっとご主人様。流石にそれは」
「……イジメられて、首切られて……憐れ」
「そんなことはどうでもいい!早く場所を移すぞ!」
卓弥は少し焦った様子で2人に移動するよう促す。
卓弥がここまで焦るのには理由がある。
今まで、
2人は卓弥の態度に戸惑いながらも追随する。
訳を聞こうとすると、"気配感知"にかかっていた他の魔物が視認できる範囲に近づいてきた。
2人はその方向に視線を向けると、足は止めなかったが、何処か気の抜けたような、呆れたような表情をする。
なぜなら………
「なんで魔物全部にお花が咲いてるんですか!?」
「……ん、お花畑」
「やはりか…!」
ルチアとアレーティアが言ったように、現れた10数体のラプトル全ての頭にに花が咲いていたからだ。
おまけに、個体によってそれぞれ色も変わっている。
そこで、卓弥は逃げながら自論を2人に話し始める。
「ルチア!アレーティア!これ以上此奴等と戦っても意味はない!
「お、大元?どう言うことですか?」
「あの時の魔物達の反応、どこか妙じゃ。
「……寄生?」
「可能性は高い」
なるほど、確かにその可能性は高い。
何しろ、今わかるだけでも100を超える魔物の気配がこちらに対して向かっているからだ。
いくらなんでもそんな状況は異常すぎるが、その魔物達全てを操っている存在がいるのだとすれば、その謎にも説明がつく。
つまり………
「……本体がいるはず」
「そうじゃな。この空間全てに存在する殆どの魔物がこちらに向かっとる。その中でこちらにこようとしない魔物の反応がある方向に向かえば確実じゃな」
「それじゃあ、ひとまず後ろの魔物達は無視で、親玉がいる方向に直進しますか?」
「うむ。それが良かろう」
「そうですよね!今更後ろが鬱陶しいからって殲滅しよう!なんてなりませんよね………」
話している時点で、今現在自分達を追いかけている魔物の数は100を越えようとしていた。
ルチアは後ろを絶対見ようとせず、走り続けてバテ始めたアレーティアを、卓弥が猫を掴むように掴み上げ、おんぶしている光景を見ながら、
そして冒頭。
卓弥達は今現在200体近くの魔物に追われていた。
アレーティアは既に体力を回復させることができたが、周りの草木が鬱陶しいと考えて卓弥から降りようとはしないし、卓弥も降ろすつもりはなかった。
今現在、数多の魔物達が地響きを立てながら追いかけてきている。
そして追いつき飛びかかってくる魔物を、時に卓弥が"爪弾"で撃ち落としたり爪で切り裂いたり、ルチアが双黒銃で撃ち抜いたり、アレーティアが魔法で牽制したりして完全な包囲を回避していた。
そして卓弥達は、魔物達の動きや気配から、魔物達を操る親玉がいる場所に目星をつけ、そこに向かっている。
そして、とうとうその場所である、迷宮の壁にある縦に割れた洞窟に到着する。
卓弥は急いで2人を洞窟の中に入れ、その場を振り返る。
見渡す範囲全てに存在する魔物達に向け掌を向けると、その掌…いや、それどころか腕そのものが変形し始め、まるで鰐の頭を思わせる形状に変化した。
そして、鰐の口内に魔力が溜まり………
「……"
鰐の口内から灼熱の龍が飛び出し魔物達を襲い始める。
"
それは《ヴァルマキア》に存在した魔法の1つ。
《ヴァルマキア》には、レベルが低い順に、『対人級』『対集団級』『対軍級』『対国級』『対界級』の5つの階級に分けられているが、この
炎の龍に焼き尽くされる魔物達を尻目に卓弥も洞窟内に飛び込み、待っていたルチアが"錬成"で洞窟の穴を塞ぐ。
「ふぃ〜。これでひとまず大丈夫なはずです」
「このまま大元を叩けば、魔物達も何処かへ行くはずじゃ」
「……お疲れさま」
「とにかく、周囲の警戒を怠るなよ」
3人は洞窟の先へと歩き出す。
しばらく道なりに進むと大きな広場に出た。
広場の奥には洞窟の入り口の時のような縦に割れた洞窟がある。
その先に階下への階段があるのかもしれないが、その可能性を考え頭が浮かれるのを抑えながら、周囲を警戒しながら進む。
そして部屋の中央辺りに来たときに、それは起きた。
全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできた。
3人はそれぞれ迎撃するが、その数は優に100を超える上に激しく撃ち込まれるため、ルチアが"錬成"で石壁を作りそれらを防ぐ。
「これ本体の攻撃ですよね?ご主人様、どこに本体いるかわかりますか?私の"気配感知"にはかからなくて……」
「我も同じじゃ。よほど隠密性に長けておるのか、そもそもここに居らんのか………アレーティアはどうじゃ?」
「……」
「アレーティア?」
「ティアちゃん?」
2人の質問にアレーティアは答えない。
訝しみ2人がもう1度声をかけると、その返答は……
「……逃げて!」
悲痛な叫びと、殺意の篭った風の刃だった。
卓弥とルチアは難なく避けるが、風の刃は石壁を綺麗に両断してしまう。
何事かと2人はアレーティアを見るが、アレーティアの頭上を見て全てを悟る。
アレーティアの頭の上には、この階層の魔物達と同じ花…しかし、高貴な印象を持つアレーティアに合わせたかのような真っ赤な美しい薔薇が咲いていたからだ。
「ティアちゃん!」
「くっ、さっきの緑玉か!」
「タクヤ……ルチア……うぅ……」
アレーティアはまんまと敵の術中に嵌り、2人に危害を加えていると言う事実に悲痛に顔を歪めている。
やはり、あの花は体の自由を奪うだけで思考は本人のままのようだ。
ルチアが双黒銃でアレーティアの頭の薔薇を撃ち落とそうとするが、それは大元にバレているようで、アレーティアに飛び跳ねさせたり左右に大きく体を動かさせ、花を庇うような動きを取らせている。
そこで卓弥がアレーティアの懐に飛び込み直接切り落とそうとすると、今度はアレーティアの掌が自分の首に向けられた。
『余計なことをすれば、この少女を殺す』と伝えようとでもしているのだろうか……
「クソ面倒じゃのぉ……」
そう卓弥が悪態をつくと、奥の縦割れの洞窟から1体の魔物が現れる。
その姿に1番近いのは、植物系の魔物として有名なアルラウネやドリアードだろう。
もっとも、その見た目は美しい女性の様な姿では無く、中身の醜悪さが溢れたような、嫌悪感が湧き上がるものをしていたが。
そんな魔物…エセアルラウネは何が楽しいのかニタニタと笑っている。
2人はすぐさまエセアルラウネに攻撃を仕掛けようとするが、アレーティアが攻撃の射線上に入ってしまい、攻撃できない。
「タクヤ……ルチア……ごめんなさい……」
敵の良いように操られている。
自分が足手まといになっている。
そんな事実がよほど悔しく、耐え難いのだろう。
彼女の口元から、鋭い犬歯によって唇が傷ついたのか血が滴り落ちていた。
『……ご主人様。どうしましょう?いくらティアちゃんに"自動再生"があるからって、攻撃なんて………』
『………とにかく、我らには奴の寄生が効かないだけでも良かった。』
『ええ。アイツの緑玉は神経毒の1種みたいですね。"毒耐性"があったから大丈夫でしたけど、無ければ完全に全滅……今回のティアちゃんには何も非はありませんからね………』
アイコンタクトで会話をする2人。
正直このまま攻撃を仕掛けても、アレーティアは魔力が尽きぬ限り死なないためエセアルラウネを殺すことはできる。
しかし、それをすれば間違いなくこの先の攻略でギクシャクしてしまう。
故に、どうするべきかと考えていると……
「2人とも!……私はいいから……
覚悟を決め、アレーティアが叫ぶ。
2人の足手まといになるぐらいなら、自分ごと魔物を倒して欲しい。
そんな意志がこもった紅い瞳が2人を見つめる。
「タクヤ……ルチア……早く!!」
目尻に涙を浮かべながら、アレーティアは言い切った。
そんな想いを無碍にするわけにはいかないと、ルチアは双黒銃をエセアルラウネに向け………
「いや?必要ない」
卓弥のそんな言葉が聞こえ、ルチア、アレーティアは勿論、エセアルラウネすら「えっ?」と卓弥を見る。
その数秒後………
ボガァン!!
「シャァァァァァアアア!!」
ガブリ!ブシャァ!
「ギャアアアアア!?」
……エセアルラウネの足元から巨大な蛇が姿を現し、エセアルラウネの腕一本を噛みちぎった後、胴に食らいつき洞窟の壁にエセアルラウネをぶつけ磔にする。
エセアルラウネが操作したのか、アレーティアがその蛇を狙うが、その瞬間に卓弥は近づき、アレーティアの頭の薔薇を切り落とす。
何が起こったのかわからないルチアとアレーティアは卓弥を見る。
そして視線を下ろすと、卓弥の
卓弥は、エセアルラウネが現れた時から右足を蛇に変化させ地面にめり込ませ、それを地面の下からエセアルラウネに近づけていたのだ。
生物という存在は、ほとんどの情報を視覚から得る。
いくら気配を察知するのが得意だったとしても、地面の下の状況を感知するのは、よほど感知が得意な生物でもないと不可能だ。
「さて、ではくたばれ」
蛇の口の間でバタバタと暴れていたエセアルラウネだが、蛇の口から吐き出された火炎によって、醜い悲鳴を上げながら灰燼となった。
エセアルラウネの生命活動が完全に停止したと判断してから、卓弥は足を元に戻し、アレーティアを見る。
「……無事だったか?」
「………ん………ごめんなさい」
「気にするな。あの寄生は神経毒によるもの。我らが効かなかったのは毒に耐性があったから。お主に非は何も無い」
「そうですよ!それに言ったでしょ?ティアちゃんに出来ることをやればいいって、出来ないことは私達を頼ってって。もう少し私達を頼ってくださいよ!それに、『ごめんなさい』って言われるよりも、『ありがとう』って言われるほうがずっと嬉しいんですよ?」
「……ん。………ありがとう」
こうして、なんとかエセアルラウネを攻略することができた卓弥一行なのだった。
第十四話、完!
いかがだったでしょうか?
今回はエセアルラウネとの戦いを書きました。
残念ながら原作でもあった問答無用ドパンッ!は無くなりましたが、この方が卓弥らしいと思ったのでこうさせていただきました。
次回はヒュドラ戦に入りたいと思います。