最後に投稿したのは、36万……いや、1万4000年前だっただろうか………遅れてごめんなさい(泣
第十五話を始めたいと思います。
無限の魔力を持つ卓弥の力に2人はジト目になりつつ、順調に攻略を進め、ついにエセアルラウネの階層を攻略する。
その後も迷宮を攻略し続けるが、そんな卓弥達に最後の試練が………
それでは、第十五話をどうぞ。
エセアルラウネがいた階層を攻略してからかなりの時間が経った。
その後の階層を休憩を挟みながらハイペースで攻略していき、遂に卓弥達がいた階層から100階層目になる階層に来ていた。
その一歩手前の階層で、卓弥は備品の整理を、ルチアは装備の確認と補充を、アレーティアはせっせと2人の手伝いをしていた。
「2人とも……いつもより慎重……」
「ん?そりゃそうじゃろ。次で100層目。一般に認識されておる上の迷宮も100層あると言われてあるから、次の階層で何か大きな進展があるはずじゃからな。準備するに越したことはない」
「ええ、それにしても、ここってなんなんでしょうね?80階層超えた時点で、私も知る【オルクス大迷宮】ではないことは確実ですし……」
卓弥はもちろんのこと、ルチアも銃技、体術、固有魔法、兵器、そして前まで唯一の武器であった錬成を相当に極めた。
しかし、階層を降りる度に比例的に強くなっていく魔物のことを考えるとそれでも大丈夫とは言えない。
出来るうちに最大限の準備はしておくべきだ。
ちなみに、今の2人のステータスはこうなっている。
ルチア 17歳 女 レベル87
天職:錬成師
筋力:2010
体力:3150
耐性:1980
敏捷:4560
魔力:4000
魔耐:4000
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話
天喰卓弥 17歳 男 レベル:20
天職:捕食者
筋力:802000
体力:2050000
耐性:1602000
敏捷:10020000
魔力:∞
魔耐:100010000
技能:捕食[+胃酸強化][+毒無効]・捕食再現[+哺乳類再現][+鳥類再現][+魚介類再現][+爬虫類再現][+両生類再現][+昆虫再現][+魔物再現][+固有魔法模倣][+植物再現][+無機物再現][+肉体負担低下]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇]・気配操作[+気配察知][+気配遮断]・全属性適正・複合魔法・永久魔力機関[+魔力吸収][+魔力譲渡]・言語理解
ルチアの方は魔物を食べる度にステータスは上昇していっているが、固有魔法の方は増えなくなっていった。
その階層の主レベルの魔物ならば話は別だが、その階層に普通に存在する魔物を食べても、もう増えないようだ。
卓弥の方も、元のステータスと比べると変化はしたが、正直あってもなくても良い程度の変化しかない。
固有魔法の方はルチアと違い、食べれば食べるほど増えていっているが、卓弥のお眼鏡に叶う固有魔法はなかったようで、そう言った固有魔法は使われることはなさそうだ。
しばらくして、全ての準備を終えた卓弥一行は、階下へと続く階段へと向かった。
その階層は無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。
柱の一本一本が直径5メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が施されている。
柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。
天井までは30メートルはありそうだ。
地面も荒れたところはなく平らで綺麗になっており、どこか荘厳さを感じさせる空間だった。
卓弥達がその空間に足を踏み入れると、全ての柱が淡い輝きを放ち始めた。
それは卓弥達を起点に奥の方へ順次輝いていく。
それはまるで卓弥達を誘導しているようだった。
3人は顔を見合わせそれぞれ頷き合うと、周囲を警戒しつつ奥へと歩み始める。
200メートルほど進んだ頃、美しい彫刻の彫られた全長10メートルは超える巨大な扉が見えてきた。
彫刻の中でも、七角形の各頂点に描かれた紋様が印象的だ。
卓弥はその紋様の中に、アレーティアが封印されていた部屋にあった紋様がある事に気づいた。
「うわぁ〜、凄いですね。この美しい彫刻。流石は私の先祖のお師匠様ですね」
「……この感じ、もしかして……」
「もしかしなくとも、反逆者オスカー・オルクスの住処じゃろうな」
感知系技能を持っていなくとも、戦闘経験者ならわかるであろう危険な気配が、3人の反応が警笛を鳴らす。
しかし、ここで引くなんていう選択肢はない。
「では、行くぞ。……言いたいことは一つ。死ぬなよ?」
「当たり前ですよ。私たち3人は生きて地上に帰るんですから」
「……んっ!」
3人は覚悟を決め、扉の前に行くために最後の柱の間を変えた時……
扉と卓弥達の間に巨大な魔法陣が出現した。
赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。
卓弥とルチアはその魔法陣に見覚えがあった。
自分達が奈落に落ちたあの日、クラスメイト達を窮地に追いやったトラップと同じものだった。
しかし、あの時ベヒモスが出現した魔法陣が直径10メートルほどだったのに対して、この魔法陣はその3倍ほどの大きさがあり、構築された式もより複雑で精密なものだった。
「……最後の門番、と言ったところじゃろうな」
「今までの魔物の中でもダントツでヤバいやつでしょうね……武者震いが止まんねぇです」
「……大丈夫……私達、負けない……!」
卓弥とユエは冷静に、そして自信を持ってそう口にする。
ルチアも、弱音を吐き、体を少し震わせてはいるものの正気を失ったりはしていない。
そして、魔法陣の光が最高潮に達し、弾けんばかりの光を放つ。
3人は手や腕で光を遮り、目を潰されないようにする。
そして光が止んだ後、そこに現れたのは……
体長30メートルの巨体に、それぞれ異なる色の紋様が刻まれた6つの蛇を思わせる頭と長い首。
それぞれの口から鋭い牙を覗かせ、6対12個の眼は今までの魔物の特徴でもある赤黒い色をしていた。
それは、地球で言う、ギリシア神話の怪物'ヒュドラ'を連想させる姿をしていた。
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
不思議な音色の絶叫を上げながら、
それと同時に、常人なら浴びただけで心臓を止めらそうなほど凄絶な殺意を卓弥達に放ち、赤の紋様の頭が口から炎の壁と言っても過言ではない火炎放射を放つ。
常人なら殺意を浴びせられた時点で心停止を起こしてしまうだろうが、今ここにいるのは、強さこそ多少の強弱があるが、全人類の中でもトップクラスの実力を持った猛者達だ。
すぐさま三方向に飛び退き炎の壁を避け、反撃を開始する。
卓弥は"爪弾"を、ルチアは双黒銃に紅色のスパークを迸らせて電磁加速させた弾丸を、それぞれ赤の紋様の頭、青の紋様の頭、そして緑の紋様の頭にぶち込む。
それぞれは見事命中し、その頭を吹き飛ばす。
ルチアはそれを見て小さくガッツポーズをするが、卓弥は目を鋭くしてヒュドラの様子を見る。
すると「クルゥアン!」と白の紋様の頭が叫ぶ。
すると、吹き飛ばされた3つの頭が逆再生をするように復活した。
『赤は火属性、白は回復……青と緑はそれぞれ水属性と風属性と言ったところか?』
『残りの首……黒と黄色も別の属性を使うと考えて良いですかね?』
『じゃな。まずは回復を封じるぞ』
『んっ!』
"念話"で作戦を立てつつ、青紋様の頭が放つ氷の礫や緑紋様の頭が放つ風刃を躱し、回復役である白紋様の頭を狙う。
「うぉりゃ!」ドパンッ!
「"緋槍"!」
紅の閃光と炎の槍が白紋様に迫る。
が、直撃すると思われた瞬間、黄色の紋様の頭が射線上に割り込み、その頭をまるでコブラのように一瞬で肥大化させる。
黄色の紋様に2種の攻撃が直撃するが、その身を持って、無傷で受けきってしまった。
「盾役もおるか。なんともバランスの取れた怪物じゃな」
そう言いながら、卓弥は背から生やした腕を爪で引き裂き血を出す。
そしてその血を球状に固め、それを頭上に投げつつ、卓弥は爪を長く鋭くして白紋様の頭を直接狙いに行く。
当然、黄紋様の頭がそれを阻むように割り込み、その身で盾に爪の攻撃を防ぐ。
卓弥は連続で切りつけるがその防御を破り切ることはできない。
が、黄紋様の頭も無傷とは行かなかったのか、その体には無数の傷ができる。
その直後、白紋様の頭が再び叫び、黄紋様の頭が開けた傷を回復させる。
……が、その直後、突然白紋様の頭の頭上が爆発し、炎の雨が白紋様の頭を焼き始める。
爆発したのは卓弥が球状に固めた血液だった。
卓弥が以前ヴァルマキアで捕食した、"血液が燃える鳥型の魔物"と、"死の間際に、自身の血液を沸騰させ自爆する蟻型の魔物"の特性を融合させた血液による焼夷手榴弾のような働きがある。
爆発した血液は白紋様の頭に降り注ぎ、その身を焼いていく。
その身を焼かれる苦痛に白紋様の頭が悲鳴を上げ悶えている好きに2人に"念話"で合図を送り同時攻撃を仕掛けようとする。
………が、
「いやぁああああ!!!」
「!?…アレーティア!?」
「ティアちゃん!?」
アレーティアが突如絶叫を上げ、その場に膝をついてしまう。
ルチアが咄嗟に駆け寄ろうとするが、それを邪魔するように赤紋様の頭が炎弾の雨を、緑紋様の頭が風刃の嵐をルチアに放つ。
どうにかそれらを迎撃するが、ルチアはアレーティアに近づけない状況に歯噛みする。
卓弥はヒュドラに気づかれないようにアレーティアに近づきつつ、アレーティアの異常の原因を考える。
そして、膝をついて今なお絶叫するアレーティアと、そのアレーティアをジッと見つめている、今のところ何もしていないと思われる黒い紋様の頭が目に入り、全てを理解する。
(……そうか。黒紋様の固有魔法か!黒紋様がやっているのは恐らく洗脳や悪夢の想起の類……つまり闇属性!)
そう結論付けしつつ、黒紋様の頭を"爪弾"で狙い撃つ。
その一撃で黒紋様の頭は頭を吹き飛ばされ、それと同時にアレーティアはその場に倒れ込む。
今なお顔を青褪めているアレーティアは、自分を飲み込もうと青紋様の頭が大口を開けて近づいてくるのに気づいていない。
「させぬわ」
卓弥は一瞬で青紋様の頭に近づき、その頭を縦に分断する。
そのままアレーティアを抱き上げるが、他のヒュドラの頭がそれは許さないと迫り来る。
卓弥は口から、様々な魔物を喰らったことで手に入れた、超音波を放つ固有魔法をヒュドラに向かって放つ。
それと同時に、後方の柱に向かって跳躍する。
「ルチア!お主も一旦下がれ!」
「りょーかいです!」
卓弥の声を聞き、ルチアも卓弥のある方向へ避難する。
ヒュドラは卓弥の超音波を真正面から浴びたことで混乱している。
その隙に柱の影に隠れ、2人でアレーティアの様子を見る。
「アレーティア?アレーティア!しっかりせい!」
「ティアちゃん!?聞こえますか!?返事してください!!」
「……」
2人が呼びかけるが、アレーティアは青褪めたまま震えるだけで反応しない。
ルチアが懐から出した神水を飲ませ、卓弥はアレーティアの頰をペシペシ叩く。
2人がかりの"念話"で激しく呼びかけたりもし、それをしばらく続けると、虚だったアレーティアの瞳に光が宿り、その2人が卓弥とルチアを映す。
「……タクヤ?……ルチア?」
「ティアちゃん!!」
「やっと気づいたか?何をされたかは想像できるが、何が起こったのじゃ?」
パチパチと瞬きしながら、アレーティアは2人の存在を確認するように、その小さな手を伸ばし2人の手に触れる。
それでようやく卓弥とルチアがそこにいると実感したのか、安堵の吐息を漏らし目の端に涙を溜め始めた。
「……よかった……見捨てられたと……また暗闇に一人で……」
「へ?それってどう言う?」
「やはり、黒紋様は闇属性魔法を使うか……」
アレーティアの様子に困惑するルチア。
しかし、アレーティアがこうなった原因を予測できていた卓弥の言葉に、すぐに理解した。
アレーティア曰く、突然、強烈な不安感に襲われ気がつけば卓弥とルチアに見捨てられて再び封印される光景が頭いっぱいに広がっていたという。
そして、何も考えられなくなり恐怖に縛られて動けなくなったと。
「全く、本当にバランスのいい怪物じゃな」
「……タクヤ……ルチア」
敵の厄介さに悪態をつく卓弥に、アレーティアは不安そうな瞳を向ける。
よほど恐ろしい光景だったのだろう。
2人にに見捨てられるというのは。
何せ自分を300年の封印から解き放ってくれた人物であり、吸血鬼と知っても変わらず接してくれるどころか、過去の真実すらも解き明かしてくれて、日々の吸血までさせてくれるのだ。
心許すのも仕方ないだろう。
そして、アレーティアにとっては2人の…卓弥の隣が唯一の居場所だ。
一緒に卓弥の故郷に行くという約束がどれほど嬉しかったか。
再び1人になるなんて想像もしたくない。
そのため、植えつけられた悪夢はこびりついて離れず、アレーティアを蝕む。
ヒュドラが混乱から回復した気配に卓弥は立ち上がるが、アレーティアは、そんな卓弥の服の裾を思わず掴んで引き止めてしまった。
「……私……」
泣きそうな不安そうな表情で震えるアレーティア。
卓弥は何となくアレーティアの見た悪夢から、今アレーティアが何を思っているのか感じ取った。
そして、普段からの態度でユエの気持ちも察している。
どちらにしろ、日本に連れて行くとまで約束してしまったのだ。
今更、知らないフリをしても意味がないだろう。
慰めの言葉でも掛けるべきなのだろうが、今は時間がない。
それに生半可な言葉では、再度黒頭の餌食だろう。
卓弥がやられる可能性も、万が一にでもあるのだから、ルチアがフォローできない時はアレーティアにフォローしてもらわねばならない。
そんなことを一瞬のうちに、まるで言い訳のように考えると、卓弥は行動に移す。
「ルチア。悪いが先に行って相手をしていてくれ」
「りょーかいですご主人様」
まず先に、ヒュドラがこちらを見つけて不意打ちされないようにルチアに相手をさせるために向かわせる。
ルチアが行った後、卓弥はガリガリと頭を掻きながらアレーティアの前にしゃがみこむ。
そして……
「?……!?」
首を傾げるアレーティアを抱き締める。
「落ち着け。30秒だけでも心音を聞け」
あたふたしかけたアレーティアだが、卓弥の力強い言葉を聞いて、つい従ってしまう。
ドクン、ドクン、ドクン……
服越しとはいえしっかり伝わってくる鼓動。
その鼓動が、さっきまでアレーティアを蝕んでいた悪夢を、不安を掻き消していく。
そして、体の底からホワホワした、温かい"ナニか"が込み上がってきて………
「……ジャスト30。行くぞ」
「……タクヤ」
30秒後に卓弥は抱き締めていたアレーティアを解放する。
解放された後のアレーティアの顔には、不安も、恐怖もなかった。
「ヤツを殺して生き残る。そして、地上に出て故郷に帰るんじゃ。……我ら3人、全員でな」
そう卓弥は、不敵に思わせる微笑を浮かべながらそう言い切る。
アレーティアはそんな卓弥を呆然と見つめていたが、いつかのように無表情を崩しふんわりと綺麗な笑みを浮かべた。
「んっ!」
その返事に卓弥はニッと歯を覗かせながら笑みを浮かべる。
そして、ルチアが手傷を負うことなくヒュドラを引きつけているところを見ながら、アレーティアに作戦を告げる。
「我が撃てる最高火力を奴にぶつける。援護を頼む」
「……任せて!」
いつもより断然やる気に溢れているアレーティア。
静かな呟くような口調が崩れ覇気に溢れた応答だ。
先程までの不安が根こそぎ吹き飛んだようである。
ヒュドラは先ほど以上の咆哮を上げ、ルチアがいる場所や、卓弥達のいる場所に炎弾やら風刃やら氷弾やらを撃ち込んできた。
二人は一気に柱の陰を飛び出し、3人で力を合わせ、今度こそ反撃に出る。
「"緋槍"!"砲皇"!"凍雨"!」
矢継ぎ早に引かれた魔法のトリガー。
有り得ない速度で魔法が構築され、炎の槍と螺旋に渦巻く真空刃を伴った竜巻と鋭い針のような氷の雨が一斉にヒュドラを襲う。
攻撃直後の隙を狙われ死に体の赤紋様の頭、青紋様の頭、緑紋様の頭の前に黄紋様の頭が出ようとするが、白紋様の頭の方を卓弥とルチアが狙っていると気がついたのかその場を動かず、代わりに咆哮を上げる。
「クルゥアン!」
すると近くの柱が波打ち、変形して即席の盾となった。
やはりと言うべきか、この黄紋様の頭は土属性魔法を使えるらしい。
アレーティアの魔法はその石壁に当たると先陣が壁を爆砕し、後続の魔法が三つの頭に直撃した。
「「「グルゥウウウウ!!!」」」
悲鳴を上げのたうつ3つの頭。
黒紋様の頭が、魔法を使った直後のアレーティアを再びその眼に捉え、恐慌の魔法を行使する。
アレーティアの中に再び不安が湧き上がってくる。
しかし、アレーティアはその不安に押しつぶされる前に、先ほどの卓弥の抱擁で感じた温かさを思い出す。
すると、体に熱が入ったように気持ちが高揚し、不安を押し流していった。
「……もう効かない!」
卓弥は、2人を援護すべく、更に威力よりも手数を重視した魔法を次々と構築し弾幕のごとく撃ち放つ。
回復を受けた赤紋様の頭、青紋様の頭、緑紋様の頭がそれぞれ攻撃を再開するが、アレーティアはたった1人でそれと渡り合った。
尽く相殺し隙あらば魔法を打ち込む。
一方、卓弥は3つの首がアレーティアに掛かり切りになっている間に、一気に接近する。
万が一外して対策を取られては困るので、文字通り一撃必殺でいかなければならない。
黒紋様の頭がアレーティアに恐慌の魔法が効かないと悟ったのか、今度は卓弥にその眼を向ける。
そして、卓弥に恐慌の魔法をかけようとしたのだが……
「させませんよ!」
それは読んでいたと、ルチアの狙い撃ちにより黒紋様の頭を吹き飛ばす。
白紋様の頭がすかさず回復させようとするが、その前に卓弥が空中に向かって跳び上がり、右腕を振り上げる。
嫌な予感を感じた黄紋様の頭が白紋様の頭を守るように立ち塞がるが、そんな事は想定済み。
「……"
そう卓弥が呟いた直後、卓弥の真横に黄金色の巨大な槍が現れる。
それは、ヴァルマキアにおいて『対軍級』に分類される、光属性の攻撃魔法。
その実態は、超巨大な光の槍を生み出し、それを投げつけるだけのシンプルなものだが、それが光なだけに速度が異常に速く、
そしてそれが、卓弥が腕を振るったことで放たれる。
その光景は極太のレーザー兵器を思わせる。
光の槍を大木と見るなら、かつて、勇者の光輝がベヒモスに放った切り札が、まるで小枝に見えてしまう。
射出された光の槍は真っ直ぐ周囲の空気を焼きながら黄頭に直撃した。
黄紋様の頭もしっかり"金剛"らしき防御をしていたのだが……まるで何もなかったように弾丸は背後の白紋様の頭に到達し、そのままやはり何もなかったように貫通して背後の壁にぶつかる。
階層全体が地震でも起こしたかのように激しく震動する。
後に残ったのは、頭部が綺麗さっぱり消滅しドロッと融解したように白熱化する断面が見える2つの頭と、周囲を四散させ、どこまで続いているかわからない深い穴の空いた壁だけだった。
一度に半数の頭を消滅させられた残り3つの頭が思わず、アレーティアの相手を忘れて呆然と卓弥の方を見る。
卓弥はスタッと地面に着地し、掌をグッパッグッパッと繰り返していた。
最後にグッと握りしめ、卓弥が自分達の方に視線を向けることでやっと我に返る3つの頭。
ハジメに憎悪を込めた眼光を向けるが、彼等が相対している敵は眼を離していい相手ではなかった。
「"天灼"」
かつての吸血姫。
天性の才能を持ち、神すらも己が器にしようと狙った存在。
その力が、己と敵対した事への天罰だとでも言うかのように降り注ぐ。
3つの頭の周囲に6つの放電する雷球が取り囲む様に空中を漂ったかと思うと、次の瞬間、それぞれの球体が結びつくように放電を互いに伸ばしてつながり、その中央に巨大な雷球を作り出した。
ズガガガガガガガガガッ!!
中央の雷球は弾けると6つの雷球で囲まれた範囲内に絶大な威力の雷撃を撒き散らした。
3つの頭が逃げ出そうとするが、まるで壁でもあるかのように雷球で囲まれた範囲を抜け出せない。
天より降り注ぐ神の怒りの如く、轟音と閃光が広大な空間を満たす。
そして、十秒以上続いた最上級魔法に為すすべもなく、3つの頭は断末魔の悲鳴を上げながら遂に消し炭となった。
いつもの如くアレーティアがペタリと座り込む。
魔力枯渇で荒い息を吐きながら、無表情ではあるが満足気な光を瞳に宿し、卓弥とルチアに向けてサムズアップした。
卓弥も頬を緩めることはないが、アレーティアにしっかりとサムズアップで返す。
卓弥はヒュドラの僅かに残った胴体部分の残骸に背を向けアレーティアの下へ行こうと歩みだした。
その直後、
「タクヤ!」
アレーティアの切羽詰まった声が響き渡る。
何事かと見開かれたアレーティアの視線を辿ると、音もなく7つ目の頭が胴体部分からせり上がり、卓弥を睥睨へいげいしていた。
7つ目の銀色に輝く紋様を持つ頭は、卓弥からスっと視線を逸らすとアレーティアをその鋭い眼光で射抜き予備動作もなく極光を放った。
極光は瞬く間にアレーティアに迫る。
アレーティアは魔力枯渇で動けない。
極光がアレーティアを飲み込むと思われた瞬間、
ヒュッ!…
アレーティアの体を一陣の風が掻っ攫う。
そして、極光は誰もいない地面を抉る。
その事実に銀紋様の頭が目を見開いて、風の吹いた方向を見る。
「……まあ、そう来るじゃろうな」
「タクヤ!」
その先には、アレーティアをお姫様抱っこする卓弥がいた。
はっきり言えば、あの時ヒュドラが絶命していなかったのはとっくに理解していた。
故にもうひとアクション何かが起こると考えていたが、その考えは見事的中したと言ったところだ。
一撃で1人仕留められるせっかくのチャンスを不意にされてしまったことに銀紋様の頭は怒りを覚える。
そして、もう一度極光を放とうと力を溜め始めるが、卓弥はそんなヒュドラを見て呆れをあらわにする。
「おいおい、お主の敵は2人ではないのだぞ?」
そう卓弥に言われ、1つの大きな力を感じて、ヒュドラはつい溜めた力を霧散させその方向を見る。
その先には、今まで以上に銃身をスパークさせた双黒銃を持つルチアがいた。
そして、それに今まで気づかなかった時点で、この戦いの勝者は決まっていた。
「終わりです♪」
そして、引き金を引かれ、2つの弾丸は銃身を粉々にしながら放たれ、それは銀紋様の頭の額に命中し、『中身』をぶちまけながら貫通する。
そして、額を打ち抜かれた銀紋様の頭は、糸が切れたように倒れ、もう2度と動き出すことはなかった。
卓弥とルチアは、改めて感知系技能から気配を探るが、ヒュドラの反応は消えていた。
「……やっと終わりか。手間かけさせおって」
「いぃぃよっしゃぁぁぁあああ!!私たちの勝利です!!」
「……んっ!!」
いつも通りクールな卓弥、とてもオーバーなリアクションをとるルチア、そしていつも通りに、しかしいつも以上に強い返事を返すアレーティア。
3人は、ついに真のオルクス大迷宮を攻略したのだった。
第十五話、並びにオルクス大迷宮攻略、完!
いかがだったでしょうか?
やっとオルクス大迷宮を攻略させることができました。
それから、ここまで延びて、本当にすみません。
最近本当に時間がなくて、取り掛かることができなかったんです……
次回は、一旦神の使徒視点に戻りたいと思います。