ありふれない捕食者は世界最強   作:ギアス

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ギアスです。
第1章最終話となる、第十八話を始めたいと思います。
解放者オスカー・オルクスの住処に辿り着き、トータスの歴史を知ることができた卓弥一行。
卓弥は、アレーティアの為、孤児院の家族達の為、そして己の我儘のため、エヒトを殺す事を決意する……!
それでは、第十八話をどうぞ!


世界を超える旅路へ

その日の晩、天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、卓弥は風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。

奈落に落ちてから、卓弥がここまで緩んだのは初めてである。

風呂に入る風習はヴァルマキアにもあったが、毎日入ることはなく、1週間に1、2回ぐらいしか入らなかった。

故に卓弥も以前は風呂に対して関心はなかったが、日本に来てからほぼ毎日風呂に入るようになり、最終的には風呂や銭湯の虜になってしまった。

 

「むふぅ〜〜」

 

普段の卓弥を知っているものなら想像もつかないほど気の抜けた声が風呂場に響く。

全身をだらんとさせたままボーとしていると、突如、ヒタヒタと足音が聞こえ始めた。

完全に油断していた卓弥は戦慄する。

 

「……1人……いや2人か?まさかここまでするとは………だが甘い……このような事態を想定しないわけがないだろう?」

 

卓弥はルチアとアレーティアが近づいてくるのを感じながら透明になる。

常人の魔法使いなら、そうやって隠れてもお湯に浸かっている部分に穴が空いてしまいバレてしまうことが多い。

しかし卓弥は抜かりがなかった。

お湯に浸かっている部分をお湯と同じ色に変化させ、誰がどう見ても穴が空いていないように見える

しばらくすると2人が入ってきた。

 

「ご主人様〜!早速私たちと裸の付き合い…っていない!?」

「……どういうこと?お風呂から上がる気配はなかったのに……一体どこに……!」

 

アレーティアはなにかに気づいたのか、ルチアに耳打ちをする。

それでルチアは納得したのか、2人は無言でタオルを浴槽の横に置き、卓弥がいるところの両隣に座り、卓弥を拘束するように自分達の腕を卓弥の片腕に回す。

見えていないはずなのに、だ。

 

「(……馬鹿、な……!?何故だ、何故バレておる……?隠蔽は完璧なはず……!)」

「透明になる固有魔法を使っているんですよね?お湯に浸かってる部分もお湯の色に変化させて、すごい隠蔽ですね。私は騙されちゃいましたよ」

「……けど、甘い。タクヤがいる場所の()()()()()()()()()()()()()からすぐにわかった」

「しまった」

 

そう、卓弥は自分がいるところのお湯には意識を回せていたが、自分がいるところの湯気には頭が回らなかった。

故に、卓弥がいるところには湯気が集まらず、人型の空間ができてしまい、それでアレーティアに見破られてしまったのだ。

卓弥はアレーティアの指摘につい声を出してしまい、これ以上は隠せないと魔法を解除してしまう。

そして、ルチアとアレーティアは卓弥に顔を向け、同時に1つの言葉を話す。

 

「「私は、ご主人様/タクヤのことが好き(です)。」」

「………」

「……タクヤがいなかったら、私は奈落から2度と出ることができなかった。叔父様のことも知ることができなかった。もう私は、タクヤ以外の男と一緒になるつもりはない。」

「私も、きっと貴方だけのメイドになると決めた時から、私は貴方のことが好きだったんだと思います。貴方がいたから、私はここまで頑張れた。貴方がいたから、私は世界の真実を知れた。……もう貴方以外の男を伴侶にするつもりはありません。だから……私たちの想いを、受け取ってはくれませんか?」

 

2人の少女の想い。

それは確かに卓弥に届く………

 

「……すまん」

 

しかし、卓弥の答えは『否』だった。

 

「………どうしても、ですか?」

「ああ、どうしてもだ」

「……私達の思いに応えないのは、それは弟妹達の事を思い出すから?弟妹達のように自分の大切なものを失いたくないから?」

「それもある。……だが、それだけじゃない………」

 

そう言いながら、卓弥は2人の腕を離させ、少し2人から離れながら、溜息を吐いて仮初の月を見上げる。

 

「我は、『愛』がよく分からんのだ」

「「……」」

「生まれた時から、我の周りには弟妹しかおらんかった。施設を脱走した(出た)後も、『生きる事』に必死で、そんなことは考えたこともなかった……」

 

卓弥の言葉を、2人は静かに聞く。

 

「……確かに、我はお主らのことが大切じゃ。弟妹達と同じ…いや、下手するとそれ以上に大切かもしれん。失いたくないという独占欲もある………だが………」

 

 

 

 

「それが親愛からなのか、恋愛からなのかが、よく分からん」

 

 

「……だから、そんな曖昧な考えで、答えを出したくない」

 

そう言いながら、卓弥は2人に振り返り、迷子の少年のような悲しげな笑みを浮かべた。

そんな卓弥を見て、2人は微笑み、ルチアは卓弥の肩に腕を回し、背中から覆いかぶさり、アレーティアは卓弥の前に回り込み、正面から抱きつく。

大好きな人を、もう2度と孤独にしない為に

 

「大丈夫ですよ。今すぐじゃなくても構いません。これからずぅぅぅぅぅっとご主人様と一緒にいますから、いつか答えを出してくれればいいです」

「……だから、一緒に答えを出そう?タクヤが答えを出すまで……タクヤが答えを出した後でも、私は……私たちは、絶対に死なない。絶対に」

 

そう言う2人に卓弥は、自分にも分からない、暖かい感情を感じ、涙をこぼすのを必死に耐えていた………

 

 

 

 

 

その日から3人はそれぞれ己のできることをやり続けていた。

新たな装備の製作、魔法の練習、更には卓弥による地獄の特訓が、ルチアやアレーティアを更に強くした。

この二ヶ月で3人の実力や装備は以前とは比べ物にならないほど充実している。

例えばルチアのステータスは現在こうなっている。

 

ルチア 17歳 女 レベル:ーーー

天職:錬成師

筋力:11550

体力:15900

耐性:12050

敏捷:18060

魔力:20010

魔耐:20010

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法

 

レベルは100を成長限度とするその人物の現在の成長度合いを示す。

しかし、魔物の肉を喰いすぎて体が変質し過ぎたのか、ある時期からステータスは上がれどレベルは変動しなくなり、遂には非表示になってしまった。

ちなみに、勇者である天之河光輝の限界は全ステータス1500といったところである。

限界突破の技能で更に3倍に上昇させることができるが、それでも約3倍の開きがある。

しかも、ルチアも魔力の直接操作や技能で現在のステータスの3倍程上昇を図ることが可能である。

おまけに、卓弥の拷問(特訓)により、知覚機能を拡大し、"天歩"の各技能を格段に上昇させる、"天歩"の最終派生技能[+瞬光]に頼らなくとも、空間把握能力や思考速度が人のそれを大幅に超えてしまっている。

如何にルチアがチートな存在になってしまったかが分かるだろう。

 

卓弥の場合はと言うと……

 

天喰卓弥

17歳 男 レベル:---

天職:捕食者

筋力:---------

体力:---------

耐性:---------

敏捷:---------

魔力:∞

魔耐:---------

技能:捕食[+胃酸強化][+毒無効]・捕食再現[+哺乳類再現][+鳥類再現][+魚介類再現][+爬虫類再現][+両生類再現][+昆虫再現][+植物再現][+無機物再現][+肉体負担低下]・魔力操作[+精密操作][+効率上昇][+遠隔操作][+魔力放射][+魔力圧縮][+魔力範囲拡大][+魔力変換][+効率上昇][+治癒力上昇][+魔力感知][+魔力変質][+身体強化]・気配操作[+気配察知][気配遮断]・全属性適正[+発動速度上昇][+全属性効果上昇][+効率上昇][+魔力消費減少][+イメージ補強上昇]・複合魔法・永久魔力機関[+魔力吸収][+魔力譲渡]・言語理解

 

……ステータスプレートは、卓弥のステータスを表示することすら諦めてしまったようだ……

 

……新装備についても少し紹介しておこう。

まずは、ルチアが所有することになった"宝物庫"という便利道具。

これはオスカーが保管していた指輪型アーティファクトで、指輪に取り付けられている一センチ程の紅い宝石の中に創られた空間に物を保管して置けるというものだ。

要は、勇者の道具袋みたいなものである。

空間の大きさは、正確には分からないが相当なものだと推測している。

あらゆる装備や道具、素材を片っ端から詰め込んでも、まだまだ余裕がありそうだからだ。

そして、この指輪に刻まれた魔法陣に魔力を流し込むだけで物の出し入れが可能だ。

半径1m以内なら任意の場所に出すことができる。

物凄く便利なアーティファクトなのだが、ルチアにとっては特に、武装の一つとして非常に役に立っている。

というのも、任意の場所に任意の物を転送してくれるという点から、ルチアはリロードに使えないかと思案したのだ。

結果は成功。

始めたばかりの頃は、直接弾丸を転送するほど精密な操作は出来ず、弾丸の向きを揃えて一定範囲に規則的に転送するので限界だった。

しかし、卓弥の拷問(特訓)により、空間把握能力が上昇したことで、銃の中に直接、しかも高速に転送することができるようになった。

これにより、今までも隙のない戦いを見せていたルチアは、弾丸の装填(リロード)の隙すら見せないガンナーになった。

 

次に、ルチアは、卓弥の知識を元に魔力駆動二輪と四輪を製造した。

これは文字通り、魔力を動力とする二輪と四輪である。

車輪には弾力性抜群の隠密に優れたサメの魔物(仮称:タールザメ)の革を用い、各パーツはタウル鉱石を基礎に、工房に保管されていたアザンチウム鉱石というこの世界最高硬度の鉱石で表面をコーティングしてある。

おそらく卓弥の"爪弾"でも貫けないだろう耐久性だ。

エンジンのような複雑な構造のものは一切なく、ルチアや卓弥の魔力か神結晶の欠片に蓄えられた魔力を直接操作して駆動する。

速度は魔力量に比例する。

更に、魔力駆動車は魔力を注いで練成が発動するようになっており、これで地面を整地することで、ほとんどの悪路を走破することもできる。

 

(タカ)()"というアーティファクトも開発した。

ルチアは銃を使うので、出来るだけ幅広い範囲を索敵できるようにと開発した片眼鏡(モノクル)型のアーティファクトだ。

生成魔法を使い、神結晶に"魔力感知""遠見""先読"を付与することで通常とは異なる特殊な視界を得ることができる片眼鏡を創ることに成功した。

鷹ノ目を付けることで、通常の視界だけでなく、魔力の流れや強弱、属性を色で認識できるようになった上、発動した魔法の核が見えるようにもなった。

魔法の核とは、魔法の発動を維持・操作するためのもの……のようだ。

発動した後の魔法の操作は魔法陣の式によるということは知っていたが、では、その式は遠隔の魔法とどうやってリンクしているのかは考えたこともなかった。

実際、書物や教官の教えに、その辺りの話しは一切出てきていない。

おそらく、新発見なのではないだろうか。

この世界にいたルチアどころか、魔法のエキスパートたるアレーティアも知らなかったことから、その可能性が高い。

鷹ノ目によってルチアは、相手がどんな魔法を、どれくらいの威力で放つかを事前に知ることができる上、発動されても核を撃ち抜くことで魔法を破壊することができるようになった。

ただし、核を狙い撃つのは針の穴を通すような精密射撃が必要な為、使い勝手は悪いが、強力な手札だ。

 

新兵器については、いつかのサソリ型の魔物の甲殻を覆っていた鉱石であるシュタル鉱石をベースに、アザンチウム鉱石などの硬い鉱石を使い強度を増し、バレルの長さも持ち運びの心配がない為3mほどの長さを誇る対物ライフル"(ナガ)(ボシ)"を作った。

流レ星にはライフルに取り付けられるはずのスコープが存在しないが、ルチアの鷹ノ目によって、射程範囲は10kmにも迫る。

 

また、とある階層でラプトル系の魔物の大群に追われた際、ルチアは大人数に対する手数の足りなさを考え、電磁加速式機関砲"(ハガネ)(アメ)"を開発した。

口径は30mm、回転式六砲身で毎分18000発という化物だ。

銃身の素材には生成魔法で創作した冷却効果のある鉱石を使っているが、それでも連続で5分しか使用できず、オーバーヒートしてしまったら、再度使うには10分の冷却期間が必要になる。

 

さらに、面制圧の為にロケット&ミサイルランチャー"流星群(リュウセイグン)"も開発した。

直方体の箱のような銃身をしており、そこから一度に最大20発のミサイルを発射することができ、しかもそれを4台作った。

 

そして、それらの重武装を効率よく使えるようにする為に、計8本の人の腕のようなアームがついたバックパック"蜘蛛(クモ)乙女(オトメ)"も開発した。

アームは、オスカーが開発した義手をモデルに製作されており、魔力を注ぐことでアームの手の部分で錬成を行うこともできるようになっていたり、他にも様々な機能を使えるようになっている。

 

あと、ヒュドラとの戦いで大破したルチアの代名詞とも呼べる武器"双黒銃"もアザンチウム鉱石による硬度の強化などの改良を加えられ復活した。

ルチアの基本戦術は双黒銃によるガン=カタに落ち着いた。

典型的な後衛であるアレーティアとの連携を考慮して接近戦が効率的と考えたからだ。

最強たる卓弥は接近戦は当然ながら、遠距離も"爪弾"や魔法で対応できるのでその時その時で変えていくスタイルだ。

 

他にも様々な装備・道具を開発し、神水も卓弥の無限の魔力によって数えるのも面倒になるぐらいストックが完成している。

それらのストックは、非常時にすぐに取り出せるよう試験管程の大きさにしている。

他にも神結晶の膨大な魔力を内包するという特性を利用し、卓弥はルチアに、神結晶の一部を錬成でネックレスやイヤリング、指輪などのアクセサリーに加工させ、それをアレーティアに渡した。

アレーティアは強力な魔法を行使できるが、最上級魔法等は魔力消費が激しく、一発で魔力枯渇に追い込まれる。

しかし、電池のように外部に魔力をストックしておけば、最上級魔法でも連発出来るし、魔力枯渇で動けなくなるということもなくなる。

そう思って、卓弥はルチアに作らせ、アレーティアに"魔晶石シリーズ"と名付けたアクセサリー一式を渡したのだが、そのときのアレーティアの反応は……

 

「……プロポーズ?」

「戯け」

 

アレーティアのぶっ飛んだ第一声に卓弥は呆れた声をこぼす。

それに合わせるようにルチアもワイワイ騒ぎ出す為、卓弥は2人の頭に拳骨を叩き込み、2人が頭を押さえながら悶絶する事態が起こったりもした。

 

そんなこんなで準備を終えてから10日後、ついに3人は地上へ出る。

3階の魔法陣を起動させながら、卓弥は2人に静かな声で告げる。

 

「ルチア、アレーティア……我等の力や武器は、地上では異端。聖教教会や各国が黙っているということはないじゃろう」

「ん……」

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

「ですねぇ」

「教会や国だけではない。アレーティアのことをいまだに狙っている可能性がある神とも敵対するじゃろう」

「ん……」

「世界を敵にまわす旅じゃ。今まで以上に過酷なものじゃろう。命がいくつあっても足りないぐらいに、な」

「今更……」

「そうですよ。まさか、ここまできて弱音を吐きたくなっちゃったんですかぁ?」

「それこそまさかじゃ」

 

アレーティアやルチアの言葉に思わず苦笑いする卓弥。

卓弥は一呼吸を置くと、2人のキラキラと輝く紅眼を見つめ返し、望みと覚悟を言葉にして魂に刻み込む。

 

「我ができぬことをお主らがする、お主らにできぬことを我がする。それで我等は最強だ。数多な障害を薙ぎ倒し、神を殺し、そして………」

 

卓弥の言葉に、ルチアは『望むところだ!』と言いたげな不敵な笑みを浮かべ、アレーティアは卓弥の言葉を抱き締めるように、両手を胸の前でギュッと握り締める。

そして………

 

「世界を、越えるぞっ!」

「イエッサー!」

「んっ!」

 

3人の高らかな声が、オスカーの住処に響き渡った……




第1章、完!
いかがだったでしょうか?
遂に、遂に!!
遂に第1章を終わらせることができました!
これからの卓弥、ルチア、アレーティアの旅を、これからもどうか見守っていてほしいです。
第1章『始まり』はこれで終わり!
次は第1章の番外編を少しだけ出し、その後第2章である………

『ウサギと樹海と峡谷と』

を始めたいと思います!
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