第二回番外編を始めたいと思います。
今回も遅れてすみません。
ここ最近やることが多くて手がつけられなくて……
これからもこれぐらいの投稿頻度だと思いますが根気よく待っていてくれると嬉しいです。
今回は、今まで話にだけ出ていた孤児院の院長や院長夫人、孤児院育ちの人物達を書いていきたいと思います。
それでは、第二回番外編を、どうぞ。
卓弥達が異世界に召喚される前、卓弥の暮らす孤児院でのこと……
「朝じゃぞお主ら。早く起きい!」
卓弥がベルを片手に持ち、チリンチリン!とベルの音を響かせながら声を張り上げる。
それを待っていたかのように次々と扉が開き、子供達がわらわらと出てくる。
「にいちゃんおはよう!」
「おはよう」
「おはようお兄ちゃん!」
「うむ、おはよう」
「おはよーにいに」
「おはよう。早く食堂に行きな」
子供達1人1人が卓弥に挨拶をする。
孤児院では卓弥は人気者で、年下の子供達はみんな卓弥のことを『兄』と呼び慕っている。
すると、たくさん開いていた扉の中で唯一開いていなかった扉がゆっくりと開き、中から黒髪の12歳ほどの少女が出てきた。
「……おはよう。兄さん」
「おはよう絶。相変わらず朝に弱いのう」
少女の名は『
子供達の中でも年長者の少女。
頭には『へ』の形の角のような飾りが2つ付いたカチューシャを付けており、胸元には黄色い菱形の形をした結晶体のネックレスが輝いている。
彼女は普通の人は持たない、一兆度にも迫る炎を出したり、瞬間移動ができるといった【異能】を持ち、それが原因かどうかはわからないが、孤児院の前に捨てられていたところを拾われたという過去がある。
その為、孤児院でも大人はもちろん子供達にも怯え孤立することが多かった。
卓弥と初めて会った時も、卓弥に怯えまともに会話ができなかったが、卓弥が歩み寄って話をしたことにより、今では卓弥に1番懐いている子供達の1人である。
そして、卓弥と話をしたことで自信を持ち、今では孤立することなく子供達と一緒に遊ぶことが多くなっていた。
卓弥はそんな絶と一緒に食堂に向かう。
「あ!天喰くんやっときたね!絶ちゃんもおはよう!」
「おはよう……」
「………じゃないんじゃが?すごくナチュラルにおるが、なんでおるんじゃ白崎」
卓弥達が食堂に着くと、香織が真っ白なエプロンをつけて、ホテルのバイキングで見るような大きな皿を持って、子供達が座るテーブルに置いては、キッチンに行き新しい大きな皿を持ってテーブルに置いていた。
香織は早朝からよく孤児院の手伝いに来ており、朝食もたまに香織が手伝っていることもあるらしい。
「香織ちゃんには私が連絡したのよ。ちょっと手伝って欲しいことがあるからね」
「……そうじゃったか。それはそうと、おはよう母」
「ええ、おはよう。毎朝悪いわね」
「構わんよ。やりたくてやっとるだけじゃからな」
香織のことを説明しながらキッチンから出て、エプロンや頭巾を外しながら卓弥に近づいてくる女性が、卓弥が『母』と呼び慕う、孤児院の院長夫人『
茶色の長髪を指で弄りながら、太陽のような笑顔を浮かべて卓弥に返事をする。
そして、香織も含めた全員が席につき……
「……では、いただきます」
『いただきます!!』
全員で朝食を取り始める。
子供達は周りの子供達とお喋りをしながら食事を取っていく。
卓弥もしっかりと食事を取りながら、香織が話しかけてくるとその話にも対応していた………
朝食を食べ終わった後、卓弥は楓に話しかける。
「ところで母。父はどうしたのじゃ?」
「ああ、お父さんは昨日夜遅くまでゲームのバグ潰しをしてたらしいから今日は昼過ぎまで起きないらしいわよ。なんでも「明日提出の予定なのに今日になって『ヒロインとモブおじさんの入れ替わりバグ』が見つかった」とかなんとか……」
「それは、大変じゃったな……」
卓弥が『父』と呼ぶのはこの孤児院の院長『
院長という偉い立場のはずなのだが、とても楽観的で威厳のない性格をしている。
しかし、そんな人でも日本どころか世界でも有名なゲームを制作している人物で、ゲーム会社では『鋼さん』の愛称で呼ばれている。
そんな話をしていると……
「あ!兄ちゃん!」
「おにーちゃん!」
「ん?ああ遠呂智。鋏。今日も元気じゃな」
「「うん!」」
遠くから走ってくる2人の子供がきた。
1人は『
青髪に赤のメッシュが入った男の子。
孤児院の誰よりも大食いで、放っておくと建物の柱やコンクリートも食べようとしてしまうのでこの孤児院に捨てられてしまったらしい。
今では皆んなで彼がいろんなものを食べてしまわないように見張っている。
そんな彼の今日の見張り役は一緒に走ってきた少女『
鋏はかつて存在したとされる殺人鬼の末裔の少女らしい。
鋏の両親は、裏社会において『名を出してはいけない』と言われるほど恐れられている暗殺者で、いつも任務で家を開けてしまうから、その間この孤児院で預かっているのだ。
鋏の両親もたまにこの孤児院に来て、鋏や他の子供達と一緒に遊んでくれている。
……ちなみに鋏がよく使うのは名前の通りハサミで、今ではハサミを投擲して当てると
「兄ちゃん!お腹すいたー」
「さっき食ったばかりじゃろが。昼まで我慢せい」
「ぶー」
「おにーちゃん!さっき
「そうかそうか……ってなんでそれなんでもないみたいに言った!?今すぐ案内せい!!母、我今から行ってくる!!」
「ええ、行ってらっしゃい」
そして卓弥は2人を連れて走り去ってしまった……
そんな卓弥を見て楓は……
「……卓弥。たとえあなたがどんな過去を持っていようが、何をしようが……私たちは貴方を信じてるから」
そう、誰にも聞かれないぐらい小さな声でそう言ったのだった……
窓から月の灯が差し込む寝室で、楓は軽い呻き声と共に目が覚めた。
それに釣られ、鋼慈郎も目が覚める。
「……はぁ………」
「………また、卓弥のことか?」
「……ええ。あの時、いつまでも続くと思ってた幸せな時の夢だったわ………」
そう言いながら泣きそうになる楓に鋼慈郎はそっと寄り添う。
「大丈夫だ。あいつは強い子だ。それに
正義とは、昔孤児院で生活しており、今では自立し刑事をしている『
卓弥達が姿を消した事件は、今や『現代に起きたメアリー・セレスト号事件』として日本のみならず、海外などあらゆるニュース番組で取り上げられるほど有名な事件になった。
警察も正義を筆頭に必死に捜査をしているが、なにも出てこない。
しかし、正義も、鋼慈郎も、そして楓も信じている。
卓弥は無事だと。
いつか必ず帰ってくると。
「……そうね。そうよね」
クラスメイト達と突然姿を消してしまった、孤児院の子供達の中で唯一自分達と同じ苗字をつけた
いつも明るかった孤児院の空気は、卓弥も想像がつかないほど冷え切った、寒々しい雰囲気に覆われていた………
同じ頃、
「……どうしたんですか、ご主人様?」
「………いや何、少し思い出しただけじゃよ。孤児院でのことを………まさかここまでクるものだったとはな………」
そう言いながら、2人を寝かせたベッドの近くにある椅子に腰掛け自嘲気味に笑う卓弥。
今すぐ立ち上がって慰めてあげたいが、
「……大丈夫。私たち全員が一緒ならなんだってできる。世界を越えることも。神を殺すことも。……だから、頑張ろ?」
「………そんな芋虫みたいな格好で言われてもカッコがつかんぞ?」
「……むう」
真面目に言ったのにそんなふうに卓弥にあしらわれてアレーティアは『不満です!』と言わんばかりに頬を膨らませる。
しかし、そのアレーティアの言葉で卓弥はいつもの不敵な笑みを浮かべる。
「……そうじゃな。神を殺し、世界を越え、帰ろう。全員でな」
その決意の言葉を聞いて、ルチアも、アレーティアも笑みを浮かべる。
そんな時、不意に卓弥の頭にイメージが浮かぶ。
みんなで悲しむ子供達と両親の姿だった。
今の今まで悲しんでいたのに、卓弥が決意を口にした瞬間、その声が聞こえたかの様に顔を上げる。
幻視した孤児院のみんなの顔は、最後に少しだけ、記憶通りの笑みを浮かべて頷いた様に見えた………
番外編、完!
いかがだったでしょうか?
卓弥の親の楓と鋼慈郎は原作でのハジメの両親をモチーフに書いてみました。
今回書いた孤児院のみんなの出番は、恐らく最終回やその後の特別編まで出番はもうないと思います。
完結後の特別編で彼らをもう一度書くのを楽しみにして、これからも投稿頑張ります。
さて、そろそろ第二章に入りたいと思うので、これからもどうぞ『ありふれない捕食者は世界最強』をよろしくお願いします。