第2話を始めたいと思います。
結局戦争に参加することになった卓弥。
そんな中、一つの影が彼の元に近づき……
今回はオリヒロ登場回です。
それでは、第2話をどうぞ。
戦争に参加することが決まった後、卓弥達は聖教教会本山である神山の麓にあるハイリヒ王国の王城に移動することになった。
卓弥達は聖教教会の建物から外に出る。
外は高山のようで雲海が広がっている。
そのまま歩いていき、円形の柵に囲まれた白い台座にみんな乗る。
そこには魔法陣が描かれている。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、"天道"」
そうイシュタルが唱えた瞬間、魔法陣が輝きだした。
その後、滑らかに台座が動き出し、そのまま地上に向かって斜めに下っていく。
どうやらこれはロープウェイと同じようなもののようだ。
初めて見る魔法に生徒たちははしゃいでいるが、卓弥は険しい表情で周囲を睨みつける。
周囲の情報をほんの少しでも手に入れるために、少しでもわかることを読み取ろうと考えていたのだ。
雲海を抜けると眼下に山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町が見える。
恐らくあれがハイリヒ王国の王都だろう。
卓弥はそれを見てすばらしい演出じゃなと冷めた目をしつつ皮肉っぽく鼻で笑う。
雲海を抜けて天より降りたる神の使徒と言う構図そのままである。
この世界は神の意志を中心に回っている。
卓弥は政治と宗教が密接に結びついていた戦前の日本を思い出した。
それは後々様々な悲劇をもたらした。
卓弥はこの世界の『神』とやらに言いようのない不快感と嫌悪感を感じたのだった。
そしてたどり着いた王宮で卓弥たちを出迎えたのはこのハイリヒ王国の国王、エリヒド・S・B・ハイリヒ、王妃のルルリアナ、第一王子のランデル王子、王女のリリアーナだった。
ここで問題なのは国王であるエリヒドが玉座に座らず、
そしてイシュタルが隣に進むと国王はその手を恭しく取り、軽く触れない程度のキスをする。
それだけでこの国は王ではなく神を中心に動いていることを理解した。
その後、晩餐会が開かれたのだが、その際ランデル王子が香織に積極的に話しかけてきて、隣の卓弥をにらみつけたりしていたが、卓弥は目の前の異世界らしい見た目の料理に意識を向けていたので気づかなかった。
王宮では卓弥たちの衣食住が保証され、訓練における教官たちの紹介もされた。
そして今、卓弥は各自に一室与えられた部屋の中でベッドに腰掛けていた。
大多数の生徒はは天涯付きベッドに愕然としたのだが、卓弥はそんなことなく、今回の事を振り返り、何をすれば良いのかを何重にも考えていた。
思考を重ねても、これ以上の進展は望めないと判断し就寝しようと判断した時、コンコンコンとノックが聞こえ、卓弥は扉の向こう側の誰かに意識を向ける。
「……誰じゃ?入ってこい」
「…失礼します、使徒様」
そう言いながら入って来たのは、教会で卓弥の事を見つめていたあのメイドだった。
部屋に入ってすぐに卓弥の前に立ち、腰の前で手を組み、お辞儀をする。
「ルチアと申します。今後、神の使徒である天喰卓弥様の専属のメイドとしてお世話をさせていただきます。以後、お見知りおきを」
その、あまりにも
「…そんなヘタクソな演技をするでないわボケ」
「……え?」
初対面の相手にとてつもなく失礼な言葉を返す。
これにはさすがに礼儀正しく接していたルチアも思わず呆けてしまう。
「我に何か聞いてほしいことがあるようじゃが、聞いてほしいならその演技をやめるんじゃな。我はそう言うのは好かん」
「な、何をおっしゃっているんですか…?演技なんて、そんな」
「誤魔化すな。我にはわかるぞ?主には真面目なところはあるが、
「………」
卓弥の言うように誤魔化そうとしていた彼女だが、卓弥の確信をつく言葉にルチアは沈黙し、表情が完全に抜けてしまう。
そして、顔を少し下に向けてしまい、再び顔を上げた時には……
「………
いやぁ〜〜バレちゃってたのかぁ〜〜。もうちょ〜〜とマジメなチルチルちゃんを見せた後にこの姿を見せて、『え?誰この人?超絶真面目系美少女メイドルチアちゃんはどこへ?』って反応させたかったんだけどなぁ〜〜。」
……さっきの真面目な雰囲気は何処へ。
そこにいたのは、腹正しいほど『ウザさ』をその身に纏い、ムカつくほどの明るい性格をした少女だった。
……て言うか、自分で『美少女』って言うなし。
「それじゃあ改めて自己紹介!『錬成系
「そうかい。それでルチア。我に何のようじゃ?」
卓弥はルチアの言葉をサラッとスルーして、本題に入ろうとする。
そしてそう返されることも予想していたのかルチアは表情を引き締め、真剣な雰囲気で話し出す。
「…実は、貴方にお願いがあって、こうして話をしに来たんです。」
「ほう?お願いとな?戦争に賛同的に協力しろ言うことか?」
「そんなことじゃありません……と言うより、
「まあそうじゃな。あの
卓弥は昔から光輝の『思考しない行動力』を好ましく思っていなかった。
見た際の状況証拠だけで行動し、口だけの約束を被害者と交わし、『一生守る』などとほざいたりしておきながら一度解決したと思えばはいおしまい、とその後は何もしない。
実際にその場面を見たことはないが、そんな彼の言動に傷ついた女子生徒も少なからずおり、そんな少女達のメンタルケアなどをしていたので、光輝の悪癖は卓弥も把握していたのだ。
「あやつは世界を『自分の人生という物語』、自分以外の人間は『自分の
「……だろうね。彼は戦争の意味を理解していない。でも、貴方は理解している。命を奪うという意味を。命を奪われるという意味を。だから、私は貴方に協力をお願いしたいの」
「……それで?要件は?神の神託とやらを『そんなこと』で片付けるようなことじゃ、大層な理由なのじゃろうな?」
卓弥は改めてルチアに話をふる。
そして、ルチアは一度軽く深呼吸をして話し出す。
「明日から戦争に参加するための戦闘訓練が始まります。そしてしばらく王城の訓練場で魔法や戦闘方法を学び、早くて二週間後、戦闘技術がある程度形になって来たら、冒険者たちの宿場町【ホルアド】にある【オルクス大迷宮】で実戦訓練を行うはずです。」
「…まず、その【オルクス大迷宮】とやらは何じゃ?」
「…遥か昔、『反逆者』と呼ばれる7人の神の眷属がいたらしいです。彼らは仲間を募り、神であるエヒト様に反逆し、世界を滅亡に導こうとしたとされています。ですが、エヒト様によって『反逆者』達は敗走。反逆した神の眷属7人を残して仲間は全滅。7人も世界の果てに逃走したと言われています。その果てと言うのが七大迷宮の事で、その七大迷宮の一つが【オルクス大迷宮】なんです。」
そう言われ、卓弥は考え込む。
この世界の神への信仰はどこか歪んでいる。
それも『神の言うことは絶対』『神を否定することは万死に値する』などと言うのも、この世界ではおかしくないだろう。
………もしかすると、
「そこからが、私の本題です。」
思考の海に沈みかけた卓弥だったが、ルチアのその言葉で急浮上させる。
そして、ルチアは卓弥に頭を下げて…
「お願いします!私を、【オルクス大迷宮】に連れていってください!!」
とても、とても悲痛な声でそう言ったのだ。
だが、だからといって、卓弥もはいそうですかと頭を振るわけにはいかない。
「あのなぁ、我はそんなもの興味がないのだが?しばらくすれば勝手にここを出て、帰還のための手掛かりを探したいと思っていたのじゃが」
「それなら、大迷宮に連れていってくれれば、その後に私を連れていってくれても構いません!家事も料理もできるし、私の天職は《錬成師》ですから武器の手入れもできるし、わ、わわわ、私も初めてですけど、夜の営み、知識としてはありますし………」
最後は顔を赤らめ、モジモジしながら声を窄ませるが、その覚悟はとてつもない。
ダメと言われても、きっと強引についてくるだろう。
こう言われれば、バッサリと切り捨てるわけにはいかない。
「……なぜそこまでする?何がお主をそこまで掻き立てさせるのじゃ?」
「………」
そこでルチアは口を閉じてしまう。
が、しかし、覚悟を決めたのか、ルチアは再び口を開く。
「……貴方を信じて、この事を話します………
実は私、『反逆者』の1人にして、錬成師である『オスカー・オルクス』の最初にして最後の弟子、『ルース・オルクス』の子孫なんです。」
「……なに?」
予想のひと回り上を行く返答。
流石の卓弥も、その事に驚きを隠せなかった。
そしてルチア…『ルチア・オルクス』は話を続ける。
「私の先祖ルース・オルクスは、ハイリヒ王国を影から支えたとされる錬成師なんです、この国にあるアーティファクト……いわゆる今では作ることができない特別な魔法道具に更なる改良を加え強化したと言われています。この国の宝物庫に眠るアーティファクトのほとんどは、彼が改良を加えたものだと言われているんですよ。」
「ほぅ、それで?」
「……残されたルース・オルクスの手記には、オスカー・オルクスや他の反逆者のことが記されていました、所々が破れたりしていて解読できない部分もあるんですが、とても優しい人達だったと、オスカー・オルクスは、ルース・オルクスにとって兄のような存在だったと書いてありました………」
そこまで言い切ると、右手を握り締め、力を入れていく。
「………そんな、そんな人たちが、反逆者なんて納得できないんです。もしかしたら、誰かが歴史を改悪して、彼らを悪者に仕立て上げたのかもしれない。もしそうだとしたら……それを、私がどうにかしたいんです。」
「………」
「全ては、おそらく大迷宮にあるはずなんです…大迷宮を攻略すれば、この世界の真の歴史を知ることができるかもしれないんです!お願いします!自分の身は自分で守ります!だから、だからどうか連れていってください!!」
目尻に涙を浮かべながら、とても力を込めて頭を下げる。
そんなルチアの、とてつもない覚悟を見せられて、卓弥は沈黙………その後、はぁ、と面倒臭そうに溜息を吐き、頭を手でガシガシしながら、
「……仕方がないのぉ。勝手にせい」
「………え、良いんですか!?」
「しょぼい理由なら拒否させてもらったが、そこまで強く言うなら、我も拒否できんわな。ただし、自分の身は自分で守れ。死んだら自己責任。そして我の特訓にお主も付き合う。弱音を吐いたら即この話は無し。それで良いな?」
そう聞くと、ルチアは瞳をキラキラと輝かせ、まるでパァァァァァ……!と擬音がつきそうな雰囲気を出し始める。
「ありがとうございます!
「何、気にする………なに?」
礼を返そうとするが、最後に聞こえた不穏な言葉に口を止めてしまう。
「私、決めました!今日から私は、真の意味でご主人様専属のメイドです!!早速、辞表を提出して来ます!!」
「は!?いや、ちょ、待て!我メイドなんてそんなのいらな
「ご主人様の身の回りの世話は、この天才美少女メイドのチルチルちゃんにお任せあれ!これからよろしくお願いしますね、ご主人様!では、また明日!!」
卓弥が引き止めようと立ち上がるが、卓弥が止める暇もなくルチアは出ていってしまい、卓弥はらしくなく呆然とした状態で突っ立っていた。
その後、再びベッドに腰掛け、『面倒な事になりそうじゃ』とさっきまでとは違うベクトルの問題に頭を抱えながらベッドに横になった。
第二話、完!
いかがだったでしょうか。
今回登場したヒロインは、『錬成系天才美少女メイド』の『ルチア・オルクス』です。
彼女のモデルは、まあ、気づいている人もいるでしょう、某天才美少女魔法使いさんです。
原作でハジメがやっていた事を、今作は大体彼女にやってもらいます。(……ん?つまり、と言うことは………)
今回は長くなってしまったので、次回、ステータスプレートの話に入りたいと思います。