私は、テレビシリーズしか見てないので…
ゲームとか、外伝とか、その後のストーリーを全く知りません。
その前提で読んで頂ければ…。
と、お願いしておきます。
☆☆ 終わりと始まり ☆☆
** 呪い(ギアス)と願い(ギアス) **
皇暦はゼロの活躍によりもたらされた、皇帝ルルーシュの死により終わりを迎えた。
その陰でルルーシュとスザクの『ゼロレクイエム』計画が行われた事を知るものは少ない…。
残された者達は、ルルーシュが刻んだ呪い(ギアス)に導かれ、対話による平和な世界を願い(ギアス)、未来へと手探りで進む。
だが…。
人のDNAに刻まれた本能は戦いを忘れさせる事は出来なかった。
一部の既得権益の所有者達による小競り合いが世界各地で頻発していた。
そこに群がる蟻の如き人達も、また自らの欲望に忠実だった。
その為に割かれる労力は、戦いであったのは言うまでもない。
今だ、訪れぬ平和な世界に苦悩する自動車椅子の少女…。
だが、決して諦めない…。
その手が兄の残した未来を掴むまで…。
例え、その身を代価としても…。
** ナナリーとラクシャータ **
ある日…。
自動ドアが開き、自動車椅子の少女が部屋の中へと進む。
煙管(キセル)を指で遊ばせながら、
「悪いね。こんな所まで来てもらってさ。」
迎えるラクシャータ。
それに笑顔で、
「いえいえ。先生のお手伝いが出来るなら、私(わたくし)も嬉しいです。」
答えるナナリー。
少し照れながら、
「先生はよしとくれよ。ラクシャータでいいさね。」
訂正する。
続け、
「ナナリー…。今、肩書は何だっけ?」
上目遣いで思い出そうとする。
その返しに、
「私(わたくし)もナナリーで…。ラクシャータさん。」
微笑みで返した。
楽しそうに、
「じゃ。そう言う事でナナリー。」
浮かべる笑顔。
同じく、
「はい。」
笑顔を浮かべる。
手にした煙管で、
「時間も無いし、とっとと始めるさね。」
肩を二、三度叩く。
受ける方は、優しい笑顔で、
「はい。用意しますね。」
だが、その瞳に強さの輝きを秘める。
二人は、それぞれの準備を行う。
奥から、
「お待たせしました。」
Tシャツに短パンのナナリー…。
その姿は、我々の知る運動服と呼ばれていた。
ベット兼作業台の横で、何やら準備していたラクシャータは、
「こっちも準備OKさ。」
背中で答えた。
自動車椅子が、
『ウィィィィィ…。』
ラクシャータに近付き、
「あらっ…。」
その背中越しに、
「今度のはすっきりしてますね。」
手元のモノを確認した。
首を巡らせ、
「この前のは、テストだとしても情けないかぎりさね。」
答えた。
斜め上に視線を送り、
「ハハハッ…。」
乾いた笑いと共に思い出すナナリー。
前回、装着したのは…。
ラクシャータも首を左右に振り、
「あれじゃ、中世の甲冑だったよ。」
否定しながら思い出す。
確かに…。
そう思いながらも、
「そんな事ありませんよ…。」
気遣いしてしまう。
音が聞こえる程に、
「だからね!今度は美しくさね。」
握りしめる右手が否定した。
そのままの勢いで、
「ささ。ここへ。」
ベット兼作業台へ促した。
ナナリーは自動車椅子を近付けると、器用にベット兼作業台へスルりと上がった。
煙管を加え直し、
「じゃ、着けるよ。」
気合を入れた。
暫く、無言の作業が続く…。
脚に器具を装着したナナリー…。
と。
器具を装着し終えたラクシャータ。
ナナリーのその姿は、厚手の黒タイツ…。
いや、黒のレザーパンツ。
そこに、ケーブルが絡み付いていた。
タブレット端末のスタートボタンを、
「じゃ、いくよ。」
振りかぶった右人差し指が、
『ポチッ!』
押すラクシャータ。
その言葉に、
「はい。」
身構えるナナリー。
それに、黒のレザーパンツも答える。
つま先から腰の辺りへかけ、あちらこちらに色とりどりの光が点り、起動したと視覚にも伝えた。
タブレット端末の数値を確認し、
「OK。動いていいさね。」
言葉に変える。
コクリと顎で返事をしたのは、緊張の証であった。
集中する意識…。
初めは、微かに…。
やがて、微動に…。
さらに、震えとなった。
レザーパンツの先端のつま先が、
『ピクリ!』。
擬音を出し動いた!
母の死に直面したあの日から動かなかったナナリーの脚が…。
そして、ゆっくりと自らの力で脚が、ベット兼作業台から持ち上がる。
その姿は、鎌首を持ち上げる様でもあり…。
ただし、白鳥が水面下より擡(もた)げる首の様に優雅であると付け加えておこう。
産まれたての子鹿が立ち上がろうとする命の輝きの様でもあった。
次にとばかり、両手を使い上半身を起こすと、向きを変えベット兼作業台に脚を投げ出し座る形をとった。
そして…。
ゆっくりと…。
ゆっくりと…。
震える脚を床へと下ろしていく。
まるで、暗闇の中で歩く様に慎重に、慎重に脚を出す…。
最初は、つま先が…。
次に、足の裏が…。
床の感触をナナリーに伝える。
一瞬の間は、決断の時間であった。
気合は、
「ふんっ…。」
口から小さく溢れる。
体重を脚に移していき、重心を正中線を乗せる…。
と!
一気に、立ち上がる。
代償に、
『よろり…。』
ふらつきを払って。
久々の感覚に、
「立てました!」
笑顔で反応する。
その姿を見守るラクシャータは、
「うん。うん。」
楽気であった。
ただし、自らの研究の成果に対してである。
不意に、上げた右脚が、
『スーッ。』
前へと踏み出す。
再び、足の裏が床を捉える感触を返す。
それは、次は左足だと催促していた。
頭では、左脚に指示を出してだが、反応はゆっくりであった。
だが、確実に左脚は前へと踏み出された。
一歩…。
二歩…。
歩くナナリー。
突然!
バランスを崩し、よろめく…。
驚きよりも早く、
「大丈夫かい?」
体を受け止めるラクシャータ。
向ける笑顔で、
「はい。」
答えるナナリー。
心の中で、
「無理は禁物さね。」
胸を撫で下ろす。
見返す瞳に宿るのは、
「早く、これを完成させ苦しむ人を救いたいのです。」
決意の輝きであった。
これ…。
ラクシャータが開発している外部からの筋肉コントロール。
その名は、神経ダイレクトリンクシステム。
これは、その実験である。
ラクシャータには、見覚えがあった…。
その瞳の奥の決意の輝きに…。
そう…。
ゼロ…。
ルルーシュと同じだと…。
そして、諦めた。
まだ少しだけ残っていた。
「ああ。判ったよ…。」
趣味の気持ちを。
湧き上がるのは…。
あの兄にして、この妹だと…。