SASUKE逆行伝   作:koko22

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24.ルーキー

 

 

「おはよう!サスケ君、ナルト」

「おはようだってばよサクラちゃん!」

「来たか、サクラ」

 

 

 待ち合わせにやってきたサクラの姿に、サスケは満足げに口端を上げた。

 元気に手を振って駆けてくる姿は程よい緊張感を持ちつつ、待ちきれないといったような興奮も伝えてくる。

 

 一昨日の夜、ナルトはずぶ濡れの身体で夕食会にやってきた。無論、すぐさま風呂に叩き込んだが、どうやら水面歩行のコツを早くも掴みかけているらしい。湯船を立ってみせた。

 一方のサクラは並外れたチャクラコントロールによって、水面歩行は完璧にマスターしたようだ。

 

 それが自信に繋がったのか、二人共に士気は充分。

 それぞれ握りしめているのは、夕食会でカカシから『推薦しちゃった☆』とウインク付きで渡された志願書だ。

 

 

「これで揃ったな。……行くぞ」

「ええ!」

「やってやるってばよ!」

 

 

 いよいよ、中忍試験が始まる。

 

 

 

 

 木の葉や砂を始めとして様々な隠れ里の額当てをつけた下忍達が、試験会場となるアカデミーに集結していた。

 周囲の視線の中を進んでいけば、ピリピリした殺気があちらこちらから飛んでくる。

 

 

(懐かしいな……)

 

 

 飛び交う言葉なき恫喝にサスケは目を細める。

 平和だった前でも中忍試験は開催されていた。しかし、内容が内容だ。平和な世でのクイズやらハンティングやら、ゲームじみたものではない。これはれっきとした殺し合い、命を賭けて挑む試験だ。

 

 怖くない、といえば嘘になる。

 一度寿命を迎えた身だ。死への恐怖こそないが、その後にこの世界がどうなってしまうのか、ただただそれが不安だった。

 

 この世界は、前の世界と似ているようで似ていない。

 行動の結果として、うちはでの祭りや出逢った兄弟といったなかった筈のことが起きていることの納得は出来る。

 だが。先日の我愛羅との遭遇然り、卒業試験でのナルトの躓き然り───波の国任務の消失然り。

 大筋は似通っているものの、説明の出来ないことが多々起きていた。

 

 そんな些細な偶然が積み重なり、いつの日か大惨事を起こしかねない。

 それだけじゃない。未来を変えることで、生まれる筈のなかったうちはの兄弟の命が灯ったように、今後生まれる筈の命をも奪うことになる可能性を無視はできなかった。

 

 誰かを生かし、誰かを殺す。その影響はどこまでも波及するだろう。

 未来を変えた、その責がある。だからこそ、この世界を、より良い結果に導かなくては死ぬに死ねない。

 

 向けられる殺気を受け流し、サスケはただ静かに前へ進んだ。

 アカデミーで育ったサスケ達は、迷うなんてこともなく三階を目指して進んでいると、ふとざわめきが廊下の先から耳に届いた。

 

 

「そんなんで中忍試験受けようって?やめた方がいいんじゃない、ボクたち?」

「お願いですから……そこを通してください」

 

 

 人波の向こう側、姿は見えないが誰かが殴られる音がする。

 そうして近づくほど、感じ取れる気持ち悪さに思わず顔を顰めた。幻術だ。それもかなり粗雑で、違和感ばかりで酔いそうになる。

 

 

「なんだぁ?さっさと行きてーのに何やってんだってばよ?」

「何か揉めてるみたいね……」

「気持ち悪ィな……さっさと抜けるぞ」

 

 

 ナルトとサクラを引き連れて人波を抜ければ、嘗てと同じ光景が繰り広げられていた。

 倒れているリー、テンテン。立ちはだかる二人の忍。

 記憶どおりの展開だが……あの時とは違い、気づくことがある。

 

 

「中忍試験は難関だ……かくいうオレたちも三期連続で合格を逃している」

「どっちみち受からないものを、ここでフルイにかけて何が悪い?」

 

 

 扉の前で仁王立ちをする二人組。

 だが、下忍にしてはあいつらのチャクラは中々多く、精錬されている。身のこなしにもそれなりで、あれが三期連続で落ちている忍のものだとは到底思えなかった。  

 恐らくは中忍レベル───試験官だ。だとすれば、ここから試験は始まっているということか。

 

 あの頃は幻術を見破りいい気になっていたが、まだまだ青臭いガキだった。嘗ては知り得なかった背景に、それを思い知らされやや悔しさが残る。

 

 まぁそれはともかく、結局のところここは二階。

 ここでモタモタしている必要性はない。サスケ達は遠巻きに様子を伺っていた奴らを掻き分け前に出た。

 

 

「正論だが……オレたちは通してもらう」

「ここって二階だろ?なー、先に行こうぜ?」

「馬鹿ね、よく見なさいよ。結界あるじゃない。解いてもらわないと先に進めないでしょ」

 

 

 ナルトもサクラもしっかり気づいていたのだろう。

 ただしナルトは幻術の修行に付き合わせていたから幻術耐性は上がったものの、やはり不得意な分野らしく見切れてはいない。

 このまま進んでもメビウスの輪、また同じ場所に戻ってきてしまうだろう。

 試験が終わったらまた特訓だな、とナルトが悲鳴を上げそうなことを考えていれば、ニヤリと下忍モドキが口角を上げた。

 

 

「ほう……貴様ら、気づいたのか」

 

 

 その瞬間、ぐにゃりと空間が歪み、301と書かれた教室が201に変わった。

 この感覚はどうしても好きにはなれない。そもそも他人の幻術結界とわかっていて、わざとトラップにかかったようなものだ。

 分かるやつ用に抜け道でも作っておいたほうが振るい落としが出来るだろうに。

 

 

「ふぅん、なかなかやるねェ。でも……見破っただけじゃあ……ねぇっ!!」

 

 

 振るい落とし効果の是非に疑問を抱いていれば、下忍モドキが攻撃を仕掛けてきた。

 そこそこ速いなとは思うが、こちらは忍界最速と謳われる雷影と手合わせを幾度か積んだ身だ。写輪眼なしでもその動きは十分見切れたし、蹴りをかわすのも訳はない。

 だが敢えて、サスケはその場を動かなかった。

 

 

「っ!」

 

 

 サスケと試験官の間へ割り込んだ影。リーは先程ボコボコに殴られていた姿とうって変わり、やすやすと下忍モドキの蹴りを受け止めていた。

 ヒュウ、と口笛を吹けば、チラリとその特徴的な太い眉の下から何か言いたげな視線がこちらへ向けられる。

 丸い下まつげの生えた目で見詰められるのは何だか居心地が悪いものだ。相変わらずキャラも眉毛も濃い奴である。

 

 

「おい、約束が違うじゃないか。下手に注目されて警戒されたくないと言ったのはお前だぞ」

 

 

 そんなリーを睨みつけるのは同班の日向ネジ。

 奴との接点は少ない。歳は違うし、直接戦うこともなかった。

 だが、里抜けの際にサスケを連れ戻すべく組まれた小隊の一人ということは聞いていた。そして何より、あの大戦で散った犠牲者だ。一度敵側にいた身として、多少の負い目は拭えなかった。

 

 そんな奴が生きていると思うと何だか嬉しく、ついジッと見ていれば眉がキツく潜められた。

 不審に思われたかとも考えたのだが、どうやら違うようでまっすぐ近づいてくる。

 

 

「おい。そこのお前、名乗れ」

「俺か?俺の名はサスケ。……アンタは?」

 

 

 正直に答えると、拍子抜けしたようにネジは眉をピクリと動かした。

 そういえば、昔は自分から名乗れと喧嘩を売っていたのだったか。自分で言うのも何だが、随分丸くなったものだ。

 

 

「……日向ネジだ。お前、何故さっきの蹴りを避けなかった」

「さあ、何の話だ?とっさのことで動けなかっただけだろ」

「とぼけるな。お前……リーの動きを読んだな?注目をあいつに集め、自分はマークを外させた……見かけによらず抜け目のない奴だ」

「フン……随分な評価だな」

 

 

 とはいえ、実際狙いはその通りだったりする。ルーキーというだけでも目立つのだから、これ以上の衆目はいらない。

 まぁ、ナルトがいる時点で無理なことだとは思うが、気休め程度にはなるだろ。

 ニヤリと意味ありげに笑みを深めたサスケに、ネジもまた人の悪い笑みを浮かべた。

 

 

「フ……まぁいい。お前、今年のルーキーだろう。後輩だとしても手は抜かん。───お前と戦えることを楽しみにしておこう」

 

 

 そう言い置いて、ネジは背を向けた。

 何やらリーがサクラに告白し玉砕していたが、それも一区切りついたようで、俺たちも三階へ向かうことにした……のだが。

 

 

「待ってください!いえ、君ではなく殺風景な白黒の、目つきの悪い君です!」

 

 

 悪かったな、目つきが悪くて。生まれつきだから放っておけ、と声の方向を睨みあげれば、リーが階段を飛び越えて降り立った。

 

 

「今ここで───僕と勝負しませんか?」

「今ここで、か?」

「ハイ!ボクの名前はロック・リー。君はサスケ君でしたね」

「ああ、よろしく頼む」

「……よろしくお願いします。ボクの動きを見切っていた……君と、闘いたい!」

「断る」

 

 

 ばっさりと切り捨てたサスケに、リーはぱちくりと瞬きした。

 ………いや、驚かれても困る。血気盛んだった昔はともかく、普通は断るだろう。

 

 

「これから戦うかもしれねぇのに、技を明かすのか?」

「うっ………そこを何とか……!」

「受け付けの終了時間まであと30分だ。さっさと行ったほうがいいだろ」

「分かっています。でも………君は強い。下忍の中でどちらが一番強いか、ここで決めましょう。それとも、逃げるんですか?」

「どちらが強いかと言われてもな……」

 

 

 チャクラは著しく落ち写輪眼は諸事情から使えないとはいえ、まず生きた年数……つまり場数が違う。八門を開くならばともかく、下忍に負ける程腕は鈍っていない。

 だが、ここで力を見せ、回り回って上層部にバレれば何かしら利用されるか良くとも警戒、最悪消される可能性もあった。替え玉くらい簡単に用意する奴らだ。

 だからといって、手を抜いて勝たせたとしてもきっとリーは喜ばないだろう。むしろ、このまっすぐ過ぎる奴のこと、敵対されかねない。

 様々な事情を考えれば、逃げたいのが本音である。

 

 

「悪いが───」

「何言ってんのよ!サスケ君に決まってるじゃない!」

「おいサスケェ!こんな奴、コテンパンにしちまえってばよ!」

 

 

 断ろうとしたサスケだが。それまで黙って傍観していたナルトとサクラが騒ぎ出した。

 怒りと期待の混ざった、キラキラと光る翠と蒼の瞳にジッと見詰められる。

 

 

「サスケ!」

「サスケ君!」

 

 

───俺はその眼に弱いわけで。

 

 

(試験場までがやけに遠いな……)

 

 

 こうして頷く羽目になったサスケは、まだ試験どころか会場にさえ着いていない事実に、深々とため息を落とすのだった。




SASUKE 2022 応援中!祝40回記念!
ヽ(〃∇〃)ノ
端々、泣かせてきやがるぜぃ……。
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