SASUKE逆行伝   作:koko22

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もしかしなくても修羅場。注意。


39.分かれ道

 

 サイと別れて数分後。塔をぐるりと北側へ回ったサスケと香燐は、轟々と落ちていく滝を見上げていた。

 

 水の流れは途切れることなく、撥ねた飛沫が白い煙のように水面を隠している。

 その幅、おおよそ60メートル。里の水脈を担うこの川の支流を辿れば、木の葉の中心部やうちは地区付近を通る川へと続いている。更に上流へと遡れば、ナルトと戦った終末の谷へ行き着くだろう。

 

 その滝の一角。大岩が少し突き出て、水の流れがやや緩やかな所を香燐が指差した。

 

 

「あそこだ」

 

 

 その先へ目を向けるが、水の勢いにかき消されるのか気配はほとんど感じ取れない。

 上手い場所を見つけたものだ。そして、それをいとも容易く見つける香燐は流石というべきだろう。

 

 落差もそれなりにあり、辿り着くためには水面歩行は無論のこと、その流れや重力に逆うチャクラ吸着の精度が要されそうだ。

 時間はかかるものの、滝の上流へ回った方がいいだろうか。

 

 そんな分析をしていたサスケの隣。クイ、と眼鏡を押し上げた香燐はジッと滝を、そしてその奥を見詰めていた。

 

 

 

「奥にいるのは五人、ナルトもいる───けど一人、危ない。チャクラがかなり弱ってるみたいだ」

「……!!」

 

 

 ハッとサスケは滝を見上げた。

 心当たりは二人。しかし、香燐の口調からナルトでないことは察せられた。

 そして、もう一人だとするならば。

 

 

「急ぐぞ」

「へ?え、うわああっ!!?ちょ、サスケ!?」

「時間が惜しい、掴まっていろ!」

 

 

 サスケは香燐を担ぎ上げ、背後の悲鳴を無視して滝を駆け上った。

 

 

 

 

「サスケ!!」

「サスケ君!!」

 

 

 滝の裏側には、大人一人が楽に通れる程の空洞がぽっかり空いていた。

 水の覆いを隙間から潜り抜け、香燐を降ろし微かに残る狭い足場を辿って洞へ足を踏み入れると同時。二人分の重みが抱きついてきて、サスケは滝に落ちぬようにぐっと堪えた。

 

 

「サスケェ!お前、遅ぇってばよ!!俺ってば滅茶苦茶心配したんだかんな!?後で試験終わったら一楽のラーメン大盛りだってばよ!!!」

「サスケ君……よかった……」

 

 

 どこかで聞いた台詞を喚くナルトと、ほたほたと涙を流すサクラ。

 本当に心配をかけていたのだろう。ナルトの顔色は悪かったし、サクラの目など真っ赤に充血していた。

 それに罪悪感を抱くものの、その想いが嬉しく頬が緩む。二人に答えようと口を開きかけるが、ふと、洞窟の奥で身動いだ影に唇を引き結んだ。

 

 

「……サスケ」

 

 

 やや遠慮がちにかけられた暗い声に、ナルトとサクラの腕がそろりと外れた。

 サスケもまた意識を切り替え、奥へ足を進めれば血と肉の生臭さが鼻をつく。

 何を言われずともしゃがんでその巻き直された包帯を解くと、その臭いは更に色濃く洞窟内を満たした。

 

 

「これは……」

 

 

 痛々しい惨状にサスケは言葉を失った。

 血こそ止まってはいたものの、その開いた傷口は化膿し、その縁は赤黒く変色している。

 呼吸は浅く荒い。発熱しているのか、傷口に触れた痛みに顔を僅かにしかめたカンクロウの額から、濡れた手ぬぐいが落ちた。

 

 広がる死の臭いに鼻が麻痺していくのを感じながら、サスケは傷口に手を翳し、その状態に歯を噛み締める。

 送るチャクラが細胞を活性化させるよりも、死滅していくスピードが早い。毒素が回り、内臓まで動きを鈍らせている。

 

 ナルトの影分身はこのことを話していなかった。それはつまり、影分身が発動された後、この一日の間に急激な悪化があったということだろう。

 普通ならば、例え二日三日でもこれほど酷くはならない。

 ただ、この森が普通ではなかった。この森は未知数で、独特な生態系を築いている。これほどの悪化をみせるとは、菌もまた相当にたちが悪いらしい。

 

 あの場に残ったことに後悔はない。しかし、もっと早く着いていればと思わずにはいられない。

 そんな過ぎる思いを振り捨てて、サスケは翳していた手を離すと、黙り込んだまま虚ろに座るテマリと俯きがちで顔色の窺えない我愛羅へ真剣な顔を向けた。

 

 

「棄権しろ」

「なっ……!!?」

 

 

 静かに告げた言葉に、テマリが声を上げる。予想はしていたのだろうか、我愛羅は身じろぎ一つしなかった。

 テマリはしばし呆然としていたが、ハッと我に返るとサスケの胸ぐらを掴み上げた。

 

 

「ふ、ふざけるな!!お前、医療忍術が使えるんだろう!!?だったら……!!」

「……テマリ。お前も、気づいてるんだろう」

 

 

───手遅れだ。

 

 

 無情に告げられたその一言にテマリの瞳が見開かれていく。サスケの胸元を掴んでいた腕から力が抜けて、かろうじて引っかかった爪先から、震えが伝わってくる。

 それを知りながらも、サスケは言葉を続けた。

 

 

「感染を起こしている。悪化の速度が早すぎて、俺の力ではもうどうにもならない。だが、木の葉の医療班なら───」

「棄権はしない」

 

 

 もしかすると。

 その可能性を、我愛羅が遮った。

 

 

「我愛羅……」

 

 

 それは、カンクロウの命を切り捨てることと同義だった。テマリが信じられないと言うように、唇を戦慄かせる。

 どうして。そんな視線へ目を合わせないまま、我愛羅は低い声で答えた。

 

 

「棄権など、認められない」

「お前っ……!仲間が、兄弟が死にかけてんだぞ!!試験がどうのなんて言ってる場合かよ!!!」

「ナルト、やめろ」

「何だよサスケまで!!カンクロウ見捨てる気───!!」

「やめろ!!」

 

 

 たまらず口を出したのだろうナルトを遮り、軽く顎をしゃくった。

 

 

「お前や俺より………我愛羅の方が、苦しいに決まってるだろうが」

 

 

 我愛羅は俯いたまま。

 だが、その手はカンクロウの服の裾を固く握りしめていた。俺がこの洞窟に入ってきてから、ずっと。

 

 

「……木ノ葉に借りは、作れない」

 

 

 ぽつりと呟かれた言葉が、重く心に沈む。

 砂隠れの忍。それも、里長の子。だから、木の葉に借りは作れない。助けを求めるなど、あってはいけない。

 

 それをくだらないとは言えなかった。

 今の砂と木ノ葉の力関係は歴然だ。木ノ葉崩しもそれを覆さんと企てられた。足を引き合い、互いに生き残りを賭ける中、弱みにつけ込まれれば里が苦しむことになる。

 

 それを杞憂と一蹴できたなら良かったが、サスケ自身信じることが出来ないのだ。

 確かに、三代目はそうしないだろう。だが、上層部は───あの男は。

 

 

「わかんねぇよ……そんなのが、命より大切なのかよ……!!!」

 

 

 涙を溢れさせる、そんなナルトの純粋な言葉が痛かった。

 木ノ葉に助けを求めれば、必ず助かると言うなら、それも決断できたかもしれない。

 しかし、手遅れだった。ここから動かすだけでも体力の尽きた身体には毒で、例え医療班を呼びに行くにしてもあと半日はかかる。

 

 助かる可能性は低い。だからこそ、余計な借りは作らない。それが我愛羅の答えだった。

 

 

「……行け。契約は終わりだ」

 

 

 ぱしりと投げ渡されたものを咄嗟に受け取る。

 契約の対価である地の書。カンクロウを助ける、その対価として提示したものだった。

 

 

「蛇から逃がされた。お前の仲間も、カンクロウをここまで守り運んだ。あのままなら全滅だっただろう。だから……もう、いい」

 

 

 そう言って、我愛羅は目を閉じた。

 

 

「そんな訳にいくか。契約は───約束は、果たす」

 

 

 投げ返した書が絶対防御に弾かれ、洞窟の隅へ転がっていく。それに目を留めることもなく、サスケは再びカンクロウの傷口へ手をあてた。

 周辺の組織は壊死し始め、内臓までその毒素は及んでいる。

 助かる可能性は低い。だが、だからといって諦めはしない。見捨てるものか。例え僅かでも、可能性があるならば賭けるしかないだろう。

 

 

「ナルト、サクラ。水を汲んできてくれ。テマリ。諦めるな、声をかけ続けろ。我愛羅、お前は───」

「な、なあ……!!ウチ、ウチなら、そいつを助けられる!!!」

 

 

 か細くも、何かを決意した強い声が洞窟に響いた。

 その声の主、香燐をサスケは振り返った。

 

 そうだ、なぜ忘れていたのか。嘗て、幾度も死にかけたサスケを救ったのは。

 

 

「香燐……」

 

 

 思いがけぬ救いの手に、サスケの瞳に光が宿る。

 しかし、唐突にその視界を走った影に、サスケは香燐を地面に引き倒した。完全には避けきれず、擦った肩に痛みが駆け抜けると同じく、サクラの悲鳴が聞こえた。

 

 

「……なぜ、あの蛇の仲間がここにいる……!!まさか、裏切ったのか!!?」

 

 

 我愛羅が声を荒らげ、それに呼応するように砂が舞う。

 睨み付ける先には、香燐の額宛てがあった。額宛てに刻み込まれたのは、大蛇丸が化けた忍と同じ草隠れの紋。

 大蛇丸は一人だった。ならば仲間がもう二人。そう考えるのは、当然のことだった。

 

 

「違う!!こいつの仲間は、二人とも死んだ。それに、あいつは大蛇丸といって───」

 

 

 木の葉の抜け忍だ。

 

 その一言が、出てこない。息が詰まる。舌が動かない。

 何故。何故、伝えられない。何故、話せない。

 

 あいつは大蛇丸。木の葉の抜け忍で、かつて木の葉崩しを企み、三代目や我愛羅の父、風影を殺した奴で。知っているのに。否、知っているから。

 話せない───本来なら、知り得ない知識だったから。

 

 突然詰まった言葉に訝しげだった我愛羅だったが、その後ろ、テマリがその名にピクリと反応した。

 

 

「大蛇丸?そいつは……確か、木の葉の三忍の……?」

「フン……三忍がこの中忍試験に参加したとでもいうのか」

「お前も、あいつの化け物みたいな強さは知ってる筈だ!」

「……ならば、何故お前は五体満足で生きている。俺たちを餌に見逃されたか」

「ちょっと!サスケ君があんなに頑張ってくれたのに、それはないでしょ!!」

「そうだってばよ!!お前ら、ずっと───!」

 

 

 仲間が侮辱されては、サクラやナルトも黙ってはいない。疑心が疑心を、不信が不信を生む。

 

 何故、こうなってしまったのか。

 考えが至らなかった。俺のミスだった。

 しかし……この間にも命の灯は尽きていく。止まってなどくれない。尽きた命は、取り戻せない。

 

 

「サスケ……ウチ、何か……」

「お前のせいじゃない。……香燐。頼む、力を貸してくれ」

 

 

 サスケは、突如始まった喧騒におろおろと狼狽えていた香燐の手を取った。

 

 

「我愛羅!説明は後だ、これを見ろ」

 

 

 袖をめくり、先ほどの我愛羅の攻撃で抉られた傷を見せれば、サクラとナルトの顔が泣きそうに歪む。

 我愛羅も罰が悪そうに口篭もったのを確認し、サスケは香燐の腕に歯をたてた。

 

 香燐の小さな悲鳴が耳に届いた瞬間、濃いチャクラが一瞬で身体を巡り、傷ついていた筈の細胞が瞬く間に修復されていくのがわかる。

 そっと香燐の腕を放した時には、傷口の痕すら消え失せていた。唖然とする我愛羅の翠の瞳を、サスケは真っ直ぐに見詰めた。

 

 

「時間がない。敵であれ、味方であれ……カンクロウの命を助けられるのはこいつだけだ」

「……だが、そいつは……」

「誰だっていい!!誰だっていいから……カンクロウを助けてくれ……!」

 

 

 迷うような我愛羅の背を押すように、喧騒にすら加わっていなかったテマリの悲痛な声が洞窟に木霊した。

 

 

「我愛羅……信じてくれ」

「………わかった」

 

 

 ついに折れた我愛羅が足を引く。

 その前を恐る恐る通り抜け、カンクロウの傍らへ膝をつけた香燐は、慣れたようにそのぐったりした顎を開いて手のひらを噛ませた。

 

 

 

 

「───そうして、うずまき一族は各地へ散った。利用されないよう姓を捨てたり、国から国へと彷徨ったり。血のつながりもとうに薄れ、散り散りになった血族がどこでどうしているのかは……もう誰もわからない。ただ、この赤髪と膨大なチャクラが一族の証って言われてるんだ」

「じゃあ、ナルトは……」

「チャクラの質からすると、きっと母親がうずまき一族だと思う。父親は木ノ葉の忍だったんじゃないか?」

「へええ。俺、母ちゃんの名前貰ってたのかあ……」

「うずまき……確か、うちにもいたはずじゃん?」

「ああ、あいつか」

「えっ?砂にも?」

「忍ではないがな……」

 

 

 初めて知る己のルーツに、ナルトはきらきらと目を輝かせていた。

 先ほどから質問責めされている香燐はといえば、そんなことも知らないのか、と呆れながらも満更でもなさそうに答えており、何気にサクラやテマリ、そしてすっかり回復したカンクロウまで加わり、国際色豊かに盛り上がっている。

 

 それをサスケは岩壁へ背を預けながら、ぼんやりと眺めていた。

 香燐の力で大なり小なり負っていた傷は全て癒えたものの、疲労自体は抜けないものらしい。

 時間も残り少なく、すぐに出立しようとしていたのだが、ナルトに香燐から話を聞きたいと押し切られた。あれで意外と目敏いのだ、サスケの状態を見破っていたのだろう。

 

 

(まあ……半々ってとこか)

 

 

 だが、話を聞きたかったのも事実なようで。嬉しそうな横顔を見れば、仕方ないかと目を瞑るしかない。

 内心で苦笑しつつ賑やかな声に耳を傾けていると、紛れるように名を呼ぶ小さな声が聞こえて、サスケはそちらへと頭を向けた。

 

 

「……悪かった」

 

 

 洞窟の入口側、見張りをしていた我愛羅がぼそりと呟くように言った。

 じっと見詰めているのは俺の肩だ。もう傷一つないが、それでも罪悪感があったのだろう。

 ……罪悪感。かつての我愛羅にはなかった筈のそれ。芽生え始めた心の機微に、胸が温かくなってくる位だ。

 

 

「もう治ったんだ、気にするな」

 

 

 そう笑って肩をぐるりと回せば、ホッとしたように表情が柔らかくなった。

 一時はどうなることかと思ったが、香燐によってカンクロウの傷は完治。説明を重ね、大蛇丸と香燐の関係性も否定し、納得してもらうことができた。

 もはやゴールするのみなのだ、気負いすることもない。それに。

 

 

「ナルト達のことを、守ってくれたんだろう?」

「…………」

 

 

 照れたようにそっぽを向いた我愛羅にやはりな、と笑みを浮かべる。

 そう。あの時、香燐から最も近くにいたのはナルトとサクラだった。

 砂は俺の肩を抉ったが、その後我愛羅のもとに帰ることなく、ナルトとサクラを庇うように遮っていた。

 

 もしも、香燐が敵であれば。もしも、俺が変化であれば。

 我愛羅は最悪を想定し動いた。カンクロウやテマリだけでなく、ナルトとサクラまでも守ろうとしたのだ。

 大蛇丸を引き受けた時に二人を頼む、そう言った。契約ではない、ただの口約束にすぎなかったのに。

 

 

「我愛羅……ありがとう」

 

 

 我愛羅はそれに答えなかった。

 それでも、ちょうど水を通して差し込み始めた光が、赤く染まった頬を照らしていた。

 

 

 朝日が昇りきった頃、サスケ達は洞窟を出た。

 とはいえ、この七人に及ぶ大所帯を襲う気概のある敵はおらず、陽の下ではトラップを避けるのも訳はない。

 元々さほど距離もなかったものだから、すぐさま塔へ辿り着いてしまった。この濃密な五日間を思えば、酷く呆気ないゴールだ。

 そう思ったのはサスケだけではなかったのか、皆しばらく無言で塔を見上げていた。

 

 

「サスケ。約束のものだ」

「ああ、確かに」

「………世話になった」

 

 

 落ちた沈黙を破ったのは我愛羅だった。

 差し出されたその手には地の書が握られており、約束の果たされた今、サスケは今度こそしっかりと受け取る。

 そして、どちらともなく手を握った。

 それを見ていたサクラは、浮かない顔で眉を下げた。

 

 

「何だか……寂しくなっちゃうわね」

「馬鹿言うな、あたしらはライバルなんだぞ?これから嫌でも顔を合わせるだろうさ」

「そうだけど……でも、」

「………あんたらといるのは、中々悪くなかったよ」

 

 

 皮肉げに笑うテマリが最後にポツリと呟く。

 サクラはその言葉に嬉しそうに笑った。

 

 

「お前、これからどうするんじゃん?」

「ウチ?ウチは……不合格だし、明日には……」

「えええ!!行っちまうのかよ?つうか、そんな里やめてうちに……ってぇ!!」

「お前、里抜けさせる気かよ!ったく……中忍試験はさぁ、他国に力を示す……代理戦争ってのは知ってるだろ」

「……うん」

「え?え?どういうことだってばよ?」

「はあ……きっとこれから説明あんだろ。で、負けた里がそのまま帰っちまったら、その里の戦意を失わせられねぇじゃん。だから、申請さえあれば試験が終わるまでは観戦できんだよ。補助も降りる。そいつから里の戦力を伝えて……って訳だ。まあ、里のプライドがどうのってあんま使う奴はいないけどな」

「じゃあ……試験中は、ここに……?」

「ああ。お前の里から申請は来てねえだろうけど……親父にかけあってやってもいいじゃん。お前んとこには上手く言っておいてやるよ」

「ほんと!!?」

「やったってばよ!!お前、根暗そうとか思ってたけど、意外といい奴じゃん!!」

「あ゛ぁ!!?つうか、人の口癖真似すんじゃねえじゃん!!」

「サスケの試合観戦……むふふ」

 

 

 カンクロウとナルトの言い合いを始めたが、パアッと笑顔を浮かべた香燐には聞こえていないようだ。

 沈黙から一転、賑やかな空気になってきたが、それでも終了時刻は刻々と迫っていた。

 

 香燐は我愛羅達と共に行くことになった。残った時間で近くに落ちているだろう傀儡を探しに行くらしく、それを手伝うとのことだ。

 一足先にゴールすることになったサスケ達は、ついに扉の前に立つ。

 

 

「……行くか」

 

 

 錆びた扉に手をかける。

 ギ、ギ、と重い音を立てて扉が開いていく。

 その中へと足を踏み入れ、前を進んだ。

 

 

「同盟は終わった。次に会うときは───敵だ。それを忘れるな」

 

 

 扉の奥へ消える背に、どこか悲しげな声が届いた。

 





『”第二の試験”終了です。通過者、総勢十八名を確認。中忍試験規定により、”第三の試験”は五年ぶりに予選を予定いたします』


【烈伝記念投稿】
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