第二回戦、サクラちゃんはいのと引き分けになった。
二人は相打ちでどっちも気絶している。まだ目は覚めていないけど、それでも予選は次の試合へ移っていった。
続いて発表されるだろう掲示板を見詰める。
次は第三回戦。心臓は発表の度にドキドキだ。次は誰だろう。オレはいつ、誰と当たるのかな。
絶対に負けねぇって思うけど、緊張するもんは緊張するんだ。
手に汗を握りながら、オレは浮かび上がった名前を辿る。
『テマリ』vs『テンテン』
それが自分の名前ではなかったことに、ホッとしたような、残念なような、微妙な気持ちになる。
それでも見知った名前にちらりと横を伺えば、大きな鉄扇を軽々肩に担ぎ上げて、テマリが一階に飛び降りていく所だった。
その後ろ姿はもう見慣れたものだ。二次試験の途中で出会って、その後ゴールまでずっと一緒にいたんだから。
最初は感じの悪い奴だったけど、一緒に過ごしてるうちにその印象はちょっと変わっていった。
根は優しい。そんでもって、凄く弟思いな奴なんだ。つい昨日まで死にかけのカンクロウを前に、こっそり隠れて泣いていたのをオレは知ってる。顔を青ざめさせて、テマリだって今にも死にそうだった。
今は余裕げで気の強そうな雰囲気だったけど、そんな奴だって知ってるからちょっと心配になっちまう位だ。
木の葉と砂、お互い里は違う。これが代理戦争だって言うなら同じ木の葉のテンテンを応援するべきなんだろうけど、正直名前しか知らない先輩よりさ、そうやって一緒に過ごした奴の方が応援したい。
だから、心の中でだったけど、負けんなよってエールを送ったんだ。
「第三回戦、テンテン対テマリ。前へ────開始!」
でも、そんな心配なんていらなかった。
試合はものの数分で終わった。結果は、テマリの圧勝。テンテンは頑張っていたけど、相手が悪すぎたんだろう。テンテンの忍具は風で全部吹き飛ばされちまって、一個もテマリに届かなかった。
サスケも相性が悪すぎた、きっとオレとかサスケとかみたいに接近戦得意な奴だったら違っただろうな、って複雑そうなため息をついていた。
でも、組み合わせはランダムだから仕方がない。そんな、相手が都合のいい奴ばっかじゃねえんだし。
テンテンはテマリの鉄扇の上で気絶している。
身体中切り傷だらけ、落ちてきた時に内臓もちょっとやられたのか口からは血が伝っていた。もう戦えないことは誰から見ても明らかだ。
「第三回戦───勝者、テマリ!」
あの病人っぽい審判もそう判断したんだろう。ゴホゴホ咳しながら宣言すると、それを聞いたテマリが口端を上げて……何か、嫌な予感がしたんだ。
だって、その笑顔はオレが二次試験で見たのとはまるで違ったから。
テマリが鉄扇を掴みあげた。ぐっと鉄扇が浮いて、テンテンが高く跳ね上げられる。
巻き上げられた風が空中に投げ出された身体を二階へと吹き飛ばして、ちょうどそこにいた同班の激眉が慌ててテンテンを受け止めるのを呆然と見てるしかなかった。
「何をするんです! それが、死力を尽くして戦った相手にすることですか!!」
「うるせーな……試合は終わったんだ、扇の上に乗られたままじゃ迷惑なんだよ」
リーが叫んで、テマリはそれに鬱陶しそうに返している。まるで、人を何とも思ってないような口振り……テマリ、だよな。本当に?
ほんの数時間前のあいつと同じ奴に思いたくなくて、目をこすったけど光景は何一つ変わらない。
当のリーはその言葉にキレそうになったんだろう。
テンテンをもう一人の仲間に預けて柵を乗り出そうとしてたけど、劇眉よりもっと劇眉な担当上忍に止められて渋々引いたみたいだった。
「勝ち名乗りは受けたんだ。テマリ、早く上がれ」
そんなやりとりをどう思ったのか、表情一つ変えないで見下ろしていた我愛羅が冷たく告げ、それに肩をすくめてテマリが二階へと戻っていく。
さすがにあれは無いんじゃねえの、そう思ってじっとり睨もうとしたんだけど、ちょっとそこで何だかテマリの様子がおかしいことに気がついてあれ?って首を捻った。
何だか……ばつが悪そうな顔をしてる、ような。
「……素直じゃねえな」
柵へ頬杖をついていたサスケが、呆れたように小さく呟く。どういう意味か聞こうとする前に、サスケは場内を顎でしゃくった。
サスケが示した方、場内はテンテンが撒き散らした忍具でいっぱいになっている。足の踏み場もないって奴?
それを片付けている試験官達も、中には隠しトラップのあるやつもあるみたいでかなり慎重そうだ。
そこで、テマリは二階へとテンテンを飛ばしていたことを思い出した。それも、同じ班の奴らの所に。
偶然って訳じゃないよな。もしかしたら、運んでやった……のかもしんねぇ。凄く暴力的っつうか、雑だけど。
だとしたら、サスケが言うように本当に素直じゃない奴だ。
でも、応援して良かったってばよ、そう思ってニマニマとにやけていたら、サスケに肘で小突かれて顔を上げる。
「次、お前だぞ」
サスケが指差した方をパッと見れば、掲示板にはいつの間にか次の対戦者の名前が書かれていた。
『ウズマキ ナルト』vs『イヌヅカ キバ』
オレの名前だ。
反射的に感じた緊張に、ごくりとつばを飲み込む。それを誤魔化すみたいにその文字をじっと凝視していたら、ふと“ウズマキ”へ意識が吸い寄せられるのを感じた。
“うずまき”……二次試験の香燐って奴と同じで、そんで母ちゃんからもらったもんかもしれねぇ一族の名前。
何度も見て、書いてきた筈なのに、改めて自分の名前をこうして出されたら、何だか母ちゃんに見られてるような気がしてくるのが不思議だった。
母ちゃんが見てる。そう思った途端にさっきまでの緊張が全部消えていった。
「よっしゃー! やっとオレの出番だってばよォ!」
ぐっとガッツポーズを取って、気合いを入れる。相手が誰でも負ける気がしねェ。
審判に名前を呼ばれて行こうとしたら、バン、と突然強く背を叩かれて体勢を崩した。この容赦のなさはサスケだ。
いきなり何すんだって言おうとしたけど、黒い瞳がまっすぐオレを映していて出かかった文句を飲み込んだ。
言葉にはしてなかったけど、行ってこい、そう言われた気がする。サスケなりの激励だったみたいだ。
だからオレも何も言わないで、任せろってニヤリと笑い合った。
「行ってくるってばよォ!」
「頑張れ、ナルト! やっちゃいなさい!」
「頑張れー」
テマリ達の試合が終わった頃にちょうど目を覚ましたらしいサクラちゃんと、気の抜けたようなカカシ先生の声援を受けながら柵を跳び越える。
対戦相手のキバと向かい合えば、キバは馬鹿にしたようにオレを鼻で笑った。
「相手がお前じゃ、勝ったも同然! ラッキーだぜ、赤丸!」
キバの言葉に答えるみたいに、犬っころが吠えた。なんつうか、ムカつく奴らだってばよ。
でも……オレでラッキーとか言うけど、この後どうせ他の合格した奴と戦うんだろ?お前、そんなんじゃ勝ち上がっても負けそうじゃねぇ?
ま、オレが負けるなんて事、ぜってー無いけどさ。
そんな事を思いながら余裕綽々のキバを観察してたら、さっきからキャンキャン鳴く赤丸に目が止まる。
アレ、いいの?そう審判に言ったけど、動物は忍具と同じ扱いらしい。何の問題もありません、そう答えられた。
そういうもんなのか。相棒って言ってるのに、忍具ってみられるのはいいのか。
よく分からないペットと飼い主の関係に疑問符が浮んだけど、元々ややこしいことを考えるのは苦手で、まあいっかと一人頷いた。
別に子犬一匹増えたって、そんなに変わりはないしな。
「まあ、ちょうどいいハンデだってばよ」
「ハン、強がりやがって……ならこうしてやるよ! 赤丸、お前は手を出すな、俺だけでやる」
どっちなんだよとつい心の中で突っ込む。さっきまで赤丸と戦うって言い張ってた癖に、とムッと口を尖らせる。
でも、油断してくれるっていうなら文句はない。
代わりにコテンパンにしてやればいいだけだ。後で吠え面かいたって知らねえぞって言おうとしたけど、審判が身動いだのを受けて口を噤んだ。
「では……始めてください!」
審判の合図で、オレは床を蹴ってパッと距離を取った。最初は出方を伺って、相手がどんな奴か、どんな術使うか確かめろって試験前にサスケに口酸っぱく言われてたのを思い出しながら、キバの動きへ集中する。
キバは警戒するオレを、さっきみたいに馬鹿にしたように笑いながら、ばっと見たことのない印を組んだ。
「擬獣忍法、四脚の術!」
練り上げられたチャクラがキバの身体を覆っていく。
四つん這いになった両手両足に急激にチャクラが集まったのを感じて、その場を急いで飛び退いた。
速かったけど、ギリギリ躱せた。……でも、速い分急に止まれなかったのか、躱すとすら思っていなかったのか。
キバは壁に頭から突っ込んでいった。
ゴンって凄い音がする。壁にひびが入って、キバは倒れた。自爆したみたいだ。
「……え、終わり?」
「ん……なわけ、あるかァ……!」
キバが吠えながらふらふら立ち上がったのを見て、ホッと胸をなで下ろした。
よかったってばよ、試合数秒で自滅終了とか勝っても嫌すぎる。
オレは中忍になることが目的じゃねえし、自分の力を試したいんだ。だから簡単に勝ったり、運で勝ったりなんてしちゃ、意味ねぇもんな。
「フッ……ナルトの癖に、中々やるようになったじゃねえか」
「何もしてねえってばよ?」
「うるせー!」
キバがまた走ってくるのを感じて、オレも印を結んだ。二体の影分身が現れて、バラバラに散らせる。
何でか本体が分かったみたいで向かってくるけど、影分身はがら空きだ。その攻撃が届く寸前に一体がオレとキバの間に割り入って、後の一体と本体のオレはその直線距離から左右に分かれてクナイを握った。
「ワン!」
「くそっ……! 邪魔すんなってばよ、この犬っころ!」
クナイを投げようとした時、握った手にさっきまでキバの言うとおり待機していた赤丸が噛みついてきた。
それを振り払おうとしていたら、腹に激痛と衝撃が走ってオレは思いっきり吹っ飛ばされた。
「ナイスだぜ赤丸!」
「アン!」
「ちょっと、卑怯よ! 犬は使わないって言ってたじゃない!」
「へっ!忍に卑怯もへったくれもあるかよ! 勝てばいいのさ、勝てば! ……試験官さんよ、もう当分目を開けることはねーぜ。俺の──」
勝ち。
その言葉を言う前に、キバはひくりと鼻を動かす。
ハッと振り返り、むくりと起き上がった影に目を見開いた。
「キバ……オレを、ナメんなよ」
「何ィ!?」
「ハンデやるっつったろ。強がってねえで、犬でも何でも使いやがれ! てめぇがどんなやり方しようと──オレは正々堂々、お前に勝つ!」
ビシッとキバを指差して、そう言い放った。
やった、決まったってばよ!
そんなことを思いながら、キバの顔が悔しげに歪んでいくのに満足していれば、ギリッと強く歯を噛み締める音が聞こえた。
「……後悔すんなよ! 行くぜ、赤丸!」
「ワン!」
犬と一緒に駆けるキバ。その手がポーチへ伸びる。クナイかと身構えたけど、掴んでいたのは丸い玉だった。
投げられたそれをとっさに躱したら、玉が床へ落ちると同時に白い煙が勢いよく吹き出した。
何も見えねえ。まずい、そう思った時には、キバと赤丸の攻撃が身体を打ち付けていた。
見えなきゃ躱そうにも躱せない。煙から出なきゃ一方的にやられるだけだ。
そう考えて、攻撃の隙を縫って煙を飛び出した。
「ワン!」
「……っ! くそ!」
でも、それは罠だった。待ち構えていた赤丸が、オレの腕に噛みついた。さっきの傷を抉るみたいに、同じ場所へ。
ちっと舌打ちをしながら、その勢いに負けて煙の中へ倒れ込んだ。
でも、やられてばっかじゃいられない。赤丸を引き剥がしながら印を組む。抵抗する赤丸を押さえ込みながら、引いていく煙の奥へと潜んだ。
「やったぜ! いいぞ、よくやったな赤……」
赤丸に化けていたオレの影分身が、キバの腕に飛び込む、と見せかけて思いっきり噛みついた。
キバは凄く動揺してたけど、変化してただけ。
さっき本体が見破られたみたいにばれるかも、っていう賭けみたいなもんだったけど嵌まってくれたみたいで、捕まえた赤丸をプランと吊してニシシと笑う。
「くそ、油断しちまったぜ。……だが、もう終わりだ。次はマジでいく!」
「ふーん。負け犬の遠吠えにしか聞こえねえってばよ?」
「こっのォ……落ちこぼれがァ!」
キバが拳を引く。でも、こっちにはキバの大切な赤丸がいんだ。盾にするように突き出したけど、キバは攻撃しなかった。何かを指で弾いたみたいだ。
赤丸がその何かを飲み込んで、いきなり唸り出す。ガルル、と噛まれそうになって手を離せば、赤丸の毛が赤く染まっていた。その赤丸に続いて、キバも何かを口に放り込んだ。
「いくぜ赤丸! 擬獣忍法、獣人分身!」
キバが二人になった。赤丸が化けたんだろうけどさ……何か、目がヤバい。瞳孔かっ開いてるってばよ。
ドーピングじゃねえのって審判に抗議するけど、兵糧丸も忍具の一つだと……アンタ、そればっかじゃん!
そんな突っ込みを入れていれば、ふとキバが動いて意識を戻す。
二人になった位なら。そう思っていたんだけど明らかにさっきとは動きが違った。速すぎて、目で追えない。
……ヤバいかも。そう直感的に感じて、身体中のチャクラを足に集めた。
すんでの所で避けたけど、腕をキバか赤丸の爪が切り裂いていった。でも、相手は二人だ。次々に攻撃が加えられて、逃げ回るのが精一杯、印を組む間もない。
傷が確実に増えている。このままじゃ──やられる。
そう分かって、背中に冷や汗が流れた。何発目かを躱した時、ついた腕に噛まれた時の傷へ痛みが走って動きが一瞬止まっちまった。
本当にヤバい。そう思ったけど、キバだってその隙を見逃してくれる程甘くはない。
「くらえ、獣人体術奥義……牙通牙!」
渦を巻いた二つのチャクラを、オレは避けられなかった。
身体中が切り裂かれて、映った天井に自分の血が舞っていた。
「……この辺が実力の差ってやつだ」
地面に叩きつけられ、その衝撃に呻く。
全身が痛かった。血が流れてる。息がしづらくて咳き込んだら、そこでも真っ赤な血が吐き出された。
だけど、起き上がらなきゃ。こんな所で立ち止まってられねぇ。だって、俺は火影になる。サスケを越える。そう約束したんだ。
つい口から出ていた言葉を、耳聡く聞き取ったキバが嘲笑った。
「サスケなんて、俺様が本戦で伸してやるさァ! しかも……お前が火影? この俺より弱いのにかァ? お前、本心じゃ火影になれるなんて思ってもねーくせに、強がってんじゃねー! クク……火影ならなァ、俺がなってやるよ!」
その言葉に、瞑りかけていた目をカッと開いた。腕に力を込める。全身痛くて、血があふれ出すけど、構わねえ。
立ち上がれば頭がふらふらして転びそうになるのを耐えキバを睨み付けた。
その言葉だけは、許せねーんだ。俺の夢を嗤う奴は、絶対に許さねぇ。
オレはサスケを超す。火影になる。
オレを認めてくれた仲間がいるから、オレは自分を信じるんだ。
「サスケにおめー如きが勝てるわけねえってばよ。オレと火影の名を取り合った……負け犬にはなァ!」
「はっ……何度も何度もしつけー野郎だな。赤丸、あれやんぞ!」
まただ。あれが来る。その場を蹴って今度はちゃんと躱した。でも、さっき見たとはいえ、そう何度もよけれる技じゃねえ。
やるにしても、キバをやらなきゃ意味がねえけど、どっちもそっくりだ。どっちがどっちだか───。
その時、ピンと閃いた。それを、利用できるんじゃねえかって。
「変化!」
キバの動きが止まる。三人のキバが互いに見つめ合った。
一人は本物。もう一人は赤丸。それで最後の一人はオレだ。
「……一つ忠告しとく。前は油断して気づくのが少し遅れたが、もう変化の術は効かねー……どうしてかってぇと!」
本物のキバが拳を迷いなく振りかぶり、キバの一人がその攻撃に床へ転がっていく。
「臭うんだよなぁ……オレ達の嗅覚をナメるなよ、ナルト」
そして、転がっていった先でキバの変化が解けた。
煙から現れたのは───赤丸。倒れた相棒の姿に、キバの余裕げな表情が一瞬で崩れた。
「赤丸!? くそっ……じゃあ、てめーがナルトかぁ! なめやがって……!!」
キバが、残るもう一人のキバを殴りつけた。
変化が解ける──それも、赤丸だった。
「何ィ!? どうなって……っ!」
動揺に動きを止めたキバの腹へ、スピードを乗せて足をめり込ませた。
腹を抱え蹲るキバにさっきのお返しだってばよ、とにんまりほくそ笑む。
「術はよく考えて使え! だから逆に利用されるんだってばよ、バーカ!」
キバに化け、次に赤丸に化ける。ただの変化でも、使い方一つで変わるんだ。
キバに殴り飛ばされた赤丸は、もう動けない。さっきの連携技っぽい牙通牙とかいう技はもう使えないんだ。
それさえなければ、後はどうにでもなる。
「クソがァっ……!」
キバは両手に手裏剣を構え、それを投げると同時に走り出して、こっちに向かってくる。さっきまでの速さはそこにない。
飛んでくる手裏剣に、オレは嗤った。
陽動のつもりだったんだろうけどさ……無駄な動きは利用されるだけなんだぜ、キバ。
──角度よぉし! 速さよぉし! んでもって、位置もよぉし!
こっちも距離を詰めながら、同じく手裏剣を取り出す。ジッと見極めながら、キバの手裏剣へとぶつけた。真正面からじゃない、少し当たる角度を変えて。
ぶつかり合った手裏剣が、本来なら描かないはずの軌道で狙い通りキバをめがけて襲いかかる。
それを慌てて避けようとスピードを緩めたキバの懐へ入り込み、その顎へ渾身の一撃を加えた。
キバが宙に浮き上がる。そして、落ちた時には、その目は固く閉ざされていた。
「キバ。オレは確かに忍術は下手くそだったけどさァ……これだけは、お前よりすっげー上手かったの忘れたのかってばよ? つっても……もう聞こえてねぇか」
得意げに話すけど、キバは起き上がらない。
その様子を確認していた審判のハヤテが一つ頷いた。
「犬塚キバ戦闘不能。勝者、うずまきナルト!!」
わっと二階から歓声が聞こえてきて、それにやっと実感がじわじわ湧いてくる。
荒くなった息を整えながら、豆だらけ、傷だらけの手を見詰めた。
───勝った。
オレってば、強くなってる。
その確信にぐっと手のひらを握って、そのまま二階へ──サスケへと向けた。
それに気がついたサスケは、ふっと笑うと同じように拳を軽く突き出した。
喜びでもなく、安堵でもなく。
好戦的な視線が交わされる。
これは勝利の証じゃない。
いつかお前を越す、その証だ。
ナルトは体術や手裏剣術が得意。実は卒業試験や鈴取り合戦でも少し触れてるんですけど、覚えてた方はいらっしゃるかしら(゜-゜)