SASUKE逆行伝   作:koko22

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久しぶりに開いたら、まだ見ていてくださる方がいてびっくり……!慌てて投稿……!((((;゚Д゚))))
月1くらいは投稿頑張ります〜>⁠.⁠<


木ノ葉動乱編
67.道しるべ


 

 

「サスケのボーヤ、開けるフニィ」

 

 

 猫バアからの返信が来たのは、里を出てから五日めの真夜中のことだ。

 修行で草臥れたナルトはグースカいびきをかいて眠っていて、自来也はいつもの如く夜遊びで戻っておらず。躊躇いなくサスケは窓から忍猫達を部屋に招き入れ、猫バアからの書簡を受け取ることができた。

 

 しかし、急いで読み進めるも書かれていた内容に顔を顰め、用意していたマタタビボトルをさっそく味見しているデンカとヒナへと目を移す。

 不機嫌というよりも不可解、そんな表情を隠すことなく二匹へと向けた。

 

 

「どういうことだ?」

「書いてある通り、ここ一ヶ月の綱手の目撃情報をまとめ上げたものだ」

「信憑性は?」

「どれも確かな情報筋だフニィ」

「フン……だったら、綱手は複数人存在することになるな」

 

 

 書簡には幾つもの街名が記されていた。その時期、その距離、その証言、いずれも一つ一つの情報は確かに詳細なものであるにも関わらず、それらを列挙してみればその異常さが浮き彫りとなる。

 内一つを例に取るならば、雷と霜の国境での目撃情報と風の国での目撃情報のあった日付が一日差であるなど。時空間移動でもしたのでなければ、忍の足でさえ一週間はかかる距離だった。

 綱手がそうした移動術を使うなど聞いたこともなく、他の足取りもバラバラで一貫性がまるでない。そして特筆すべきは、目撃情報が数日前を境に急増していることだろう。

 

 

(俺が木ノ葉病院を退院した日───ハヤテの襲撃された翌日から、か……)

 

 

 決して見間違いなどとは言えない明らかな人為的工作の跡に、サスケはチッと舌を打ち紙面を睨みつけた。

 目撃談全てを確認して回る頃には、本戦どころか夏さえもが終わっている事だろう。

 

 

「情報筋が確かなら変化か。それも複数人が動いてるようだな」

「ウム、誰かが意図的に情報を撹乱させておる。一見すると規則性は無いように見えるが、何れか一つの情報を鵜呑みにした場合、違和感もなく各地を歩き回らせる。随分と周到にゃやり口だ」

「サスケのボーヤ。相手は間違いなく忍、どこかに潜んでいる可能性も高いから用心するフニィ」

 

 

 居住まいを正したデンカとヒナの言葉に頷く。ハヤテを狙った敵は、既に医療スペシャリストである綱手の捜索を踏んでいたのだ。

 ただ、ハヤテが救助された情報を手に入れてから、こうして偽情報を拡散するまでの期間がどうにも短い。それを考えるに、木ノ葉内部の犯行である可能性が高かった。

 それも、この五大国に及ぶ規模を考えるに単独ではなく複数人。それほどの人員を人知れず動かすなど、一介の忍には不可能なことだ。

 

 

(できるとすれば、それこそ砂隠れか暁、或いは……)

 

 

 浮かび上がったシルエットに、肩口の呪印を押さえつける。

 中忍試験が始まってからというものその影を端々に感じ取ってはいたが、しかし、奴が木ノ葉崩しに加担する意図が見えない。

 何しろ里への思いは奴の最後の瞬間を思い出しても明らかだ。今更心変わりでもした、そういうのだろうか。

 ズキズキと痛みだす頭を押さえて黙り込んでいれば、スッと一枚の紙面が広げられた。

 

 

「───けどにゃ、我らの情報網を甘く見てもらっては困る」

 

 

 誇らしげに尾をピンとたて、デンカとヒナは同時に肉球をバンと置いた。

 

 

「空区は忍のような追跡はしないフニィ」

「我ら商人が辿るのは、金の流れ。金は嘘も偽りも言わんからな」

 

 

 その言葉に目を瞬かせる。畳の上に広げられたのはこの時代には珍しい五大国の詳細な地図だった。そこに乗せられた二匹の爪先が、それぞれ二つの街名を示していた。

 

 

「あの蛞蝓姫は方方から金を借りてるから、その流れを辿ってみたフニィ」

「綱手は賭け事に弱い。その動く金も毎回膨大なものだ。それを考えるに───このどちらかの街に、本物の綱手がおる」

「空区の名をかけるフニィ」

 

 

 自信たっぷりな二匹の言葉に頷いて、その離れた街名に目を落とした。

 綱手探索の期限まであと二日。正反対の方向にあるその二つを巡る時間は残っていない。

 

 どちらか、二つに一つ。過去には忍術を使いチンチロに勝利したこともあったが、そんなイカサマは通用しない。サクラのように記憶力を使っての攻略も不可能だ。だからといって当てずっぽうに選ぶにはハヤテの命が、そして里の行末がかかっていた。

 

 

「もう猫バアは空区に帰った。できることはここまで、地図は餞別にやるにゃ」

「後悔しない方を選ぶフニィ」

「「また遊びにおいで、サスケのボーヤ」」

 

 

 そう言って、マタタビボトルを咥えてデンカとヒナは夜闇に去っていった。

 残された地図に目を凝らすも、答えが乗っている筈もない。

 一睡もせず───日の出と共に、サスケは決断を下した。既に日を跨いだ、六日目の朝のことだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「あ〜〜!かってーってばよ……!なーサスケ、またコツなんかさ……?」

「やり方は水風船と変わっていない。お前のチャクラコントロールの問題だ、集中しろ」

「集中しろって言ってもよ~」

「……チャクラを練る所から流れを作ってみろ」

 

 

 螺旋丸の修行も第二段階に入り、室内では危険である為に町外れの雑木林に来ていた。ゴムボールを手に息を切らすナルトに何だかんだとアドバイスをしてやっていたサスケは、ふと視線を町内に続く道先へと向けた。

 やっとるのォ、と片手をあげて現れたのは予想通り自来也だ。その手につままれた綱手の写真が、風にひらりと揺れていた。

 

 

「綱手の情報が手に入った。出発するぞ!」

「やった!これでサスケの腕、治してもらえんだな……!よかったってばよサスケェ!」

 

 

 ナルトと共にその言葉に喜色を浮かべる、そのフリをしながらも、サスケは細めた目でジッと自来也を見つめる。

 決断してすぐにサスケは行動した。つまりは、自来也の通い詰めている夜の店に行って店員に頼み、酔っ払った自来也へ囁いてもらったのだ。

 

 

『綱手姫の所在は───という話よ』

 

 

 ベロベロに酔い潰れていた自来也はその情報にすぐさま目を覚まし、気づかれる前にその場を去った。

 それから既に数時間。ようやく現れた自来也に胸を撫で下ろすも不安は拭えない。

 

 

「なーエロ仙人、ゴムボール全然割れねぇんだってばよ。サスケもお手上げみたいだし?ちょっとくらいさぁ、アドバイスとかさぁ〜?」

「ったく、誰かさんは随分お前を甘やかしておるようだのォ……ワシは術は教えるとは言ったが、手取り足取り教える義理はない!一人でできなきゃそれまでだ。いつまでもガキみたいに……もっと忍らしく居ろ!!」

「……橋」

「ッ!?」

「誰かに言っちゃおーかなぁ、三代目の爺ちゃんとかーカカシ先生とかーイルカ先生とかーイタチの兄ちゃ」

「祭りの小遣い三百両、口止め料として払ったろうが!!」

「あれはサスケの分じゃん、オレってば言わねーとは約束してねーもん」

「うぐッ……!」

 

 

 三代目に知れてみろ、九尾の人柱力を橋から突き落としたなど大問題になることは明白。そして、カカシやイルカに知られたら何と嫌味を言われるか。イタチに知れたら………?

 途端によぎる怖気に、後ろめたさのある自来也はガックリと肩を落とした。完敗である。

 

 

「わかったわい……。しゃあねえ、ヒントをやる。お前、どっちをイメージしてチャクラを回しておる?」

「え?うーんと……左?ただ、色んな方向からやらねーと割れねぇってばよ」

「フッ、やっぱりのォ。しかしそれで水風船を割ったか……」

「???」

「お前は右回転型だ。チャクラを練るには精神エネルギーと肉体エネルギーを混ぜ合わせる……その回転の向きが右か左かは、人によって異なる。自分の回転型と逆のイメージでは、チャクラの流れが分断・反発しあってうまく勢いに乗らんのだ」

「へえ~。何でオレが右タイプって分かったの?」

「頭のつむじ!髪の生え方ですぐわかる、右巻きならなら右回転、左巻きなら左回転」

「へえ~、じゃあオレってば右巻きなんだな!」

「ああ。だから回すんなら右回転をイメージしなきゃのォ。ま、飽くまでも意識の問題だからな、乱回転は続けねばならんぞ」

 

 

 ナルトと話しつつ、のんびりとペース変わらず進む男をサスケは背後からこっそり見上げた。

 チャクラの回転方向とは頭になかった。腐っても三忍ということだろう。

 決断は間違っていなかったようだと安堵していれば、続く道先に二股の分かれ道が見えてくる。

 

 

(アンタは、どちらを選んだ?)

 

 

 昨夜、考えに考えを重ねた末、サスケは自来也に選択を委ねた。

 サスケ自身は過去を含めて綱手の人となりに詳しくもないし強運がある訳でもない。そんな危険な賭けよりは、綱手をよく知っている自来也が選ぶ方がまだ可能性があるからだ。

 

 左の道はデンカが示した街に、右の道はヒナが示した街に繋がっている。

 万一辿り着いた先に綱手がいなかったとしたら、自来也に止められようと単身でもう一つの街に戻るつもりだが、その後の諸々を思えば正解を選んでほしい所ではあった。

 左か右か、自来也はどちらを選んだのか。ギュと掌を握った時、自来也がピタリと足を止めた。

 

 

「さて……ナルト!」

「……?何だってばよ、エロ仙人。早く行こーぜ!」

「ナルト、お前───どちらの道を選ぶ?」

「あ゛?」

「え?んなこと言ったってさ、どっちがどこに続いてんのか知らねーってばよ?」

 

 

 サスケの口元が引き攣った。自来也は何処吹く風で耳をほじっている。

 ナルトはそんな二人に首を傾げながら、うーんと両方の道を見比べた。

 

 

「おいアンタ……まさか道を決めてなかった、とか言うんじゃねェだろうな!?」

「まあそう言うな。勝算がない訳じゃねぇ、ナルトの奴あっちの才能はあるんでのォ……?」

 

 

 写輪眼がうっかり出てしまいそうになるのを堪えてギロリと自来也を睨みあげれば、流石に自来也もたじろいだのか人差し指をあわせそう口籠る。いい年したおっさんがやっても欠片も可愛くない。

 確かに二つに一つ。どちらを選んでも責めはしないと決めたが、まさかナルトに選択権を譲るとは考えもしなかった。

 

 

(だが、納得できるか………!!)

 

 

 昨夜の決断は間違っていたのか。やはり自分で───と後悔の念に襲われていたサスケの手が、不意にくいと引かれた。

 体勢を崩したサスケの頭上を、背伸びをして覗き込んでくるナルトに虚をつかれる。

 

 

「サスケのつむじ、左向きなんだな!」

「……それがどうした」

「オレ決めた。左の道行くってばよ!」

 

 

 そんなナルトの答えに目を見開く。お前もか、と眉を潜めてその肩を掴んだ。

 この間にも、ダンゾウは動いている。ハヤテの命も狙われている可能性が高い。あと二日しかないのに、どうしてそう楽観的に考えられるのか、理解ができなかった。

 

 

「ばッ……わかってるのか?人の命がかかってるんだぞ!?」

「───じゃあさ、もしいなかったら右の道に戻ろうぜ!」

「だが……探索の期間はあと二日だろ……」

「んじゃ、一緒にエロ仙人にお色気の術で頼むってばよ!あとちょっとくらい、一日二日伸びたっていいじゃん!」

 

 

 間違えたなら、途中からでもやり直せばいいのだと。

そう言ってニッと笑うナルトの言葉にぐうの音も出なかった。

 ちらりと自来也を伺えば、彼は面白げに口角を上げていた。

 

 

「ま。ナイスバディなねーちゃんに頼まれたら、考えてやらんこともねーのォ?」

『人間っつうのは、一人でできることなんぞたかが知れとる───あまり抱え込むな』

 

 

 巫山戯た物言いでありながらも、その声音にかの日の言葉が思い起こされる。

 どこかこの男を信じきれなかった。だが、同じ木ノ葉の忍であり今や仮にも師───頼っていいのだと、そう言われた気がした。

 

 溜め込んでいた息を吐き出せば、夏日に温められた熱気が肺に届いた。

 決して清々しいとは言えないのに、肩が軽くなって───そうしてようやく、視野が狭まっていたことに気が付かされる。

 

 

(余裕がなかった?いや……そういう訳でもなかった筈だが……)

 

 

 飛雷神の術の巻物も、その術に至る視界も手に入れた。命の危機も乗り越えてナルトは螺旋丸の修行に入り、猫バアに奇跡的に遭遇して綱手の情報を得た。

 こうして順に並び立ててみれば、幸運といって差し支えないだろう。

 

 

 だが、なぜ、いつから───?

 

 

 

【   】

 

 

 視界を、白い手が真っ黒に塗りつぶした。

 その手を、その声を、俺は知っていた。

 まるで、自分が自分でないような。自分の体が自分のものでなくなったかのような、奇妙な感覚。

 

 

 そう、それはまるで、あの───六年前の───。

 

 

 

 

 

「あっち〜!ちょっと休憩しようってばよ……!」

「大暑も近いからのォ、だから夏旅は嫌なんじゃ……干からびる……水着のおなごをくれ……」

「エロ仙人、またそれかってばよ……。おい、サスケ?サスケってば!」

「目を開けて寝るとは。熱にやられちまったかのォ?」

「……煩い。暑い。離れろ」

「あああ!!オレの水筒空っぽ……水入れてくんの忘れたーー!!」

「ウスラトンカチが」

 

 

 木陰に倒れ込むナルトに分けてやりながらも、サスケもその隣に座って一口水を含んだ。こくりと飲み込んだそれが、どこか石のように重く身体に落ちていくような心地がした。

 

 しかし、サスケがそれを意識することは、もうなかった。

 






【……  。       】


 焼け爛れた掌を抑え、彼は毒づき舌を打った。
 指先を伝い落ちて水面に滴る、ぴしゃりと音を立て底なしの闇に沈む赤を、同じ色の瞳がただ静かに見下ろした。
 そこに映された相貌は見慣れぬ者で。その空間には温度が無い筈なのに、額には汗が滲んでいる。


【     】


 残された時間は───あと、僅かなのだと。
 『うちはサスケ』は、まだ知らない。
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