SASUKE逆行伝   作:koko22

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第三回戦:サスケvs我愛羅
解説員はカカシ先生&サスケさん

1月の投稿を逃してしまいました、大変申し訳ありません(汗)
支部の佳境も越えたので、2月は週一投稿をさせていただく予定です。どうぞお楽しみ頂ければ嬉しいです(*´ω`*)

NARUTO新作の情報がほしい……待つ時間も楽しみにできるので、せめて進捗だけでも……!
飢える前に頼みます(・人・)


79.覚悟

 

 

「キャー!サスケくん、頑張って〜〜!!」

「……」

「あら?どうしたのよ、サクラ。サスケくんのこと応援するんじゃないの?」

「あ……うん」

 

 

 我愛羅の登場を受けて、控室から降り立ったサスケ。その姿に黄色い声を上げていたイノは、隣に座るやけに静かなサクラに首を傾げた。

 対戦者二人を見詰めたまま生返事を返すサクラの表情は、イノの言葉通りどこか浮かないもので。

 そんな彼らを横目で見ていたカカシは、ぽん、とその肩を軽く叩いた。

 

 

「サスケは心配ないよ」

「カカシ先生……」

 

 

 にっこりと笑ってやれば、サクラの祈るように組まれた両手から力が緩む。

 その憂いを完全に晴らせた訳じゃなくとも、少しは緊張が解けただろうか。

 

 

(サスケへの心配ってだけじゃなさそうだね……ま、この会場の空気を感じ取ってるのかもしれないけど)

 

 

 微笑みを浮かべる傍らでちらりと背後を伺えば、ちょうど砂隠れの担当上忍が出入り口から顔を覗かせる所だった。

 その後ろから距離をおいて、監視役の暗部も観戦席へと戻ってくる。

 

 

(一、二……配置された暗部は二十人、五小隊。戦力としては十分すぎる位かな)

 

 

 観客らに紛れている暗部装束を、目だけで見回して数え上げる。

 里の主要部の防衛は警務部隊に任せて、こちらに暗部の戦力を集中させたのだろう。

 それに加えVIPである大名達には“芽”が護衛についており、その徹底ぶりに舌を巻くばかりである。

 

 

(芽に警務部隊、うちはの主力総動員って所か。彼らの全面的協力があってこその厳戒態勢……相手の出方が分からない以上、警戒はしすぎたって足りない)

 

 

 つい先日、極秘で打ち合わせされた里の防衛体制をつらつらと思い返していると、砂の上忍に続いて会場に入ってくるガイとリー君に気がついた。

 軽く片手を上げれば、杖を付くリー君に合わせてゆっくりとこちらへ歩いてくる。

 

 

「カカシ!お前が遅刻していないなんて珍しいな、空からクナイが振ってきたって俺は驚かんぞ!」

「あー……今日はサスケに叩き起こされちゃったからさ、仕方なくね」

 

 

 いつものように英雄碑へと向かう間もなく、サスケに引きづられるようにしてここへ来た訳だが、サクラ達にも同じような反応をされたのが数時間前のことだ。

 ちなみにカカシの髪先が少しばかり焦げているのは察して欲しい。目覚めの千鳥は効いたとだけ言っておこう。

 そんな今朝のアレコレを、頭を振り記憶から追い払ったカカシは、快活に笑うガイに次いでリーへと視線を移した。

 

 

「やあ、リー君。手術はうまくいったようだね」

「……!どうしてそれを……」

「んー、ちょっと小耳に挟んでさ。おめでとう」

 

 

 そう心から祝いを伝えれば、リーは少しばかり怪訝そうにしながらも『ありがとうございます』とはにかんだ。

 全身を包帯で覆われ杖をつくその姿は重症者そのものだ。しかし、復帰をかけ死のリスクを負ってまで手術を受けたリーがこの場にいる、それこそが成功の裏返しでもあった。

 

 

「なんだカカシ、お前知ってたのか?フハハ、当然の結果だ!」

「その節はご心配をおかけしました。ナルト君は勝ったようですね。本戦に出られなかったことは残念ですが、僕だってすぐに追いつきますよ!」

 

 

 まだまだ完治には遠いものの、瞳に闘志の炎を燃やすその顔は晴れやかだった。

 ライバル達に置いていかれる失念も呑み込み、既に再起を志しているのだろう。

 

 

「手術って……」

「リーさん、大丈夫なんですか!?」

「あ……ハイ。一週間前に、忍として復帰できるかもしれないと綱手様から手術を受けて。まだリハビリ中ですが、もう少しで軽い修行くらいならできるようになります」

「そっか……よかったぁ……!」

「ところで、綱手様って?」

「伝説の三忍の一人、里に並ぶ者無しと言われたくノ一ですよ。どんな傷も立ちどころに治してしまう凄い医療忍者です!」

 

 

 初耳だとばかりに目を見開き心配する彼女らに、照れたリーは頬をかく。

 手術に命をかけたということは伏せられながらも、簡単に語られた経緯にサクラ達の目がキラキラと輝いた。

 くノ一達の憧れを欲しいままにしていたあの女傑は、どうやら世代を超えても健在らしい。

 

 

(しかし綱手様をもってして成功率五割……他の医療忍者ではまず命は無かっただろうな)

 

 

 内心でそう独り言ちるカカシが、手術を含めそうした事情を知っているのは、リーとガイの会話を偶然にも聞いてしまったが為だ。

 

 

『万が一……いや、一兆分の一、失敗するようなことがあったら───オレが一緒に死んでやる』

 

 

 サスケとの修行の帰り道、聞こえてきたそんなガイの言葉に目を瞠った。

 ガイ程の上忍が、弟子とはいえ下忍のために命をかける。

 里に属する者としてはそんな馬鹿なことを言うなと止めるべきだったのかもしれないけど、同じ弟子をもった師匠としてその思いが分かってしまったから見て見ぬふりをした。 

 綱手様は少年の未来だけでなく、カカシの友の命も救ったのだ。改めて無事に手術が成功してよかったと、そう心から安堵した。

 

 

「カカシ、お前が彼にどんな修行をしてきたのかバッチリとチェックさせてもらうぞ……永遠のライバルとしてな!」

「……ん?なんか言った?」

 

 

 何か言っていたようだが聞き逃し、キランと歯を輝かせたガイに首を傾げる。

 そんなカカシの反応にがっくりと膝を付いたガイの奇行はさておき、一際大きく沸いた声援に会場へとカカシは視線を戻した。

 

 

「さて……いよいよか」

 

 

 対峙する二人に、開戦を待ち侘びた観衆の期待が注がれる。

 やけにゆっくりとした歩調にアイツも緊張してるのかと思いきや、予想外にも険しい顔つきのサスケにカカシは目を瞬いた。

 その中にはサクラのものと似た、どこか痛みのような眼差しが混じっていた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「ルールは───」

「もう聞いた、『予選と同じ』だろう。早く始めろ」

「……へいへい。両者、前へ」

 

 

 開幕時の不在へ配慮してか、再度のルール説明を当の我愛羅が遮る。

 渋い顔で促すゲンマに従い歩みを進めながらも、その言葉にどこか違和感を感じたサスケは眉間に皺を寄せた。

 

 

(『聞いた』……あの砂の上忍からか?)

 

 

 だが、行方知れずの奴を急いで会場に連れてこようという時に、そんな呑気に説明が出来るものだろうか。

 些細な疑問にちらりと観戦席へと目を凝らせば、件の担当上忍はカンクロウと何やら言い争っているようだった。

 彼らの口の動きへと集中すれば、『どこへいった』『わからない』『きえた』、そんな会話が読み取れる。

 何の話なのかという思考は一瞬だった。

 カンクロウの隣、ぽっかり空いた空席に話の焦点を悟った。

 

 

(香燐が、いない?)

 

 

 急いで観客席をぐるりと見回すがそれらしい姿は見当たらない。彼らの監視に付いていた暗部達も、突然消えた香燐に動揺しているようだった。

 いったい何が起きたのかと思考するよりも先、『始め!』と開戦が告げられる。

 咄嗟に飛び退くと同時に、先程まで立っていた地面が砂によって抉られていた。

 

 

「フフ……そんなに怒らないでよ。さっきは不味い血を吸わせたねぇ……ごめんよ……でも、今度はきっと美味しいから……!」

 

 

 額を抑えながらくつくつと不気味に笑う我愛羅には、同盟を組んでいた時のような穏やかさは微塵も感じられない。

 目があったら皆殺し。そんな憎悪に生きていた過去とまるで同じ姿に身構えながらも、サスケはジッと我愛羅を見据えた。

 

 

「我愛羅……香燐は、どうした」

 

 

 消えた我愛羅が戻ってきたかと思えば、それと代わるように香燐がいなくなった。これがただの無関係とは思えない。

 問いかけたその名に、我愛羅の歪な笑みが抜け落ちるように消えた。

 

 

「あの女なら死んだ」

「何……?」

「大方、何か感じ取ったんだろう。影分身を置いて逃げ出した奴を追い───俺が殺した」

 

 

 感情の籠もらない淡々とした言葉に息を呑む。

 木ノ葉病院で出会った折り、『我愛羅が抜け出すの手伝ってくれてさ』と照れたように話していた香燐を思い出す。

 あの香燐が死んだ?我愛羅に殺された?

 まさか。そんな筈がない。そう否定したいのに、我愛羅が投げ捨てるように地面に放ったのは、真新しい血が染み込んだ草隠れの額当てだった。

 

 

「裏切り者は殺さねばならない。そして、敵であるお前も……殺す!」

 

 

 我愛羅が手を振るうと同時に砂が畝り、サスケへと押し寄せる。

 波のようなそれを躱すも、次から次へと襲いくる砂から本気の殺意が感じられた。

 

 里の為に友を殺す。

 我愛羅はその覚悟を決めていたのだ。

 

 ギリ、と歯を噛みしめたサスケは、攻撃を避けざま、チャクラを脚へと集めた。

 地面を蹴ると同時に我愛羅の後ろを取る。

 我愛羅はサスケが背後にいることも、消えたことにさえもまだ気づいていない。砂もサスケの鍛え上げられた体術と雷遁による肉体活性には反応できず、そのガードを軽々と抜けた。

 

 そして、その無防備な背を千鳥で貫く、ことはせず。

 サスケは固く握りしめた拳を、砂の鎧をも砕いて我愛羅の頬へとめり込ませた。

 殴り飛ばされた先、何が起こったか分からぬまま呆然と頬を押さえた我愛羅を置いて、サスケは額当てを拾い上げてそっと瞼を閉じた。

 

 

(香燐……俺は、お前を救いたかった)

 

 

 そもそも香燐はこんな所で殺される筈ではなかったし、我愛羅が友を殺すことも無かった。

 これは、俺が過去を変えたその結果でしかない。

 

 里と里の軋轢、香燐を利用した上忍、そいつに情報を与えたカンクロウ達、香燐を我愛羅達の所へ連れて行った俺の判断。

 因果を辿れば果てがなく、己の無力さに矛先が向くばかりだ。

 

 俺は、救えなかった。

 だが、憎しみも復讐心も、その虚しさも。とうに捨て去ったものだ。俺はそんなことの為に、過去に戻った訳じゃない。

 彼奴を救えなかったからといって、我愛羅、お前を救わない理由にはならないんだ。

 

 

「言った筈だ、俺はお前に生きてほしい。……たとえお前が俺の死を望もうともな」

 

 

 お前が殺す覚悟を決めたというなら、俺は救う覚悟を決めてやる。

 

 目を上げて我愛羅をまっすぐに見つめれば、瞼から頬へと流れた涙がぽたりと額当てに落ちていった。

 弾けた雫の小さな音にバツの悪そうに顔をそらした我愛羅は、そんな己の行動に苛立ったように舌を打つ。

 

 

「綺麗事を……!香燐を殺した俺にそんなことを言うとはな、奴の想いも浮かばれん……!」

「復讐をすれば香燐は報われるのか?たとえお前が死んだところで何も変わらない。それどころか、カンクロウやテマリ、お前を愛する奴らが悲しみ恨むだろう。新たな憎しみの連鎖が生まれるだけだ」

「フン……俺がここにいる奴らを皆殺しにしたとしても、お前はまだそんな戯れ言を言うつもりか?」

「殺させない。お前を止める。だが……俺は口下手だからな、説教なんてガラじゃない」

 

 

 フ、と息を吐き出してチャクラを全身へと巡らせる。

 パチリと青い雷光がサスケの身体から弾けた瞬間、サスケは我愛羅の視界からかき消えた。

 

 

「今も昔も、拳で分かり合うしかねェんだよ!」

「っ!」

 

 

 反対の頬を殴られて尚、我愛羅に捉えられたのはサスケの残した残像だけだった。

 重りを外したリーと同等か、それ以上の速さをもってサスケは高速体術を打ち込み、我愛羅を空中へと蹴り上げる。

 

 

「獅子多重連弾!」

 

 

 最後に我愛羅の鳩尾へ踵落としを叩きつけ、その強打に我愛羅を打ち付けた地面がヒビ割れる。

 痛烈な連打に誰の目にも勝負はついたとそう見えた。

 審判であるゲンマが勝敗を宣告する寸前、倒れ伏した我愛羅の身体がさらさらと砂と化すまでは。

 

 

「砂分身……!?いつの間に……!」

 

 

 地表を割るようにして生えた砂が蔦のようにサスケの足を絡め取る。

 返答は地面の中から響いてきた。ハッと足元を見やれば、蟻地獄のように細かな砂が両足を飲み込んでいく。

 砂へと沈み込んでいくサスケとは反対に、背後で盛り上がった砂から我愛羅の姿が現れた。

 

 

「お前は強い。あの蛇と戦って生きて戻った程だ。最初から、一瞬たりとも油断する気はなかった」

 

 

 砂に全身を捕らえられ藻掻くサスケを、冷たい眼差しで見下ろしていた我愛羅は。

 ほんの一瞬、くしゃりと泣き出しそうに顔を歪めた。

 

 

「俺は砂瀑の我愛羅……所詮、殺す為に生まれた存在だ」

 

 

 差し伸ばされた手を、巻かれていく包帯を、向けられた微笑みを。

 全ての迷いを断ち切るように、我愛羅の掌が一息に閉じられた。

 

 

 

 

 我愛羅の手が握られ、静まり返っていた観客らが勝負の結末に歓声を上げる。

 その狂わんばかりの熱気に、サクラ達の悲鳴が飲み込まれていく。

 

 

「そんな……嘘よ、サスケ君!」

「ま、落ち着け」

「カカシ先生!でも、このままじゃサスケ君が!」

 

 

 駆けつけようと立ち上がりかけたサクラをカカシが抑える。

 微塵も動じた様子のないカカシを涙目で睨み上げたサクラの肩に、そっと置かれる傷だらけの手があった。

 

 

「大丈夫ですよ、サクラさん」

「リーさん……」

「大丈夫です。だってサスケ君は───」

 

 

 聞こえていた歓声がどよめきへ変わっていく。

 異変を感じとって会場内を再度見つめたサクラとイノの瞳がハッと瞠られた。

 そこに傷一つないまま立つサスケの姿に、驚くこともなくリーは口角を上げた。

 

 

「彼は───強者(天才)ですから」

 

 

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