SASUKE逆行伝   作:koko22

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副題:ナルトを救え!共闘・サスケと我愛羅
まんまです(笑)逆だったかもしれねェでお送りします。

※アニナル疾風伝262話あたり(大蛇丸VS人柱力)を視聴してからの読了をオススメ。腕が伸びて伸びて伸びて、こういう人外の戦闘って描写が難しい……。

ちなみに香燐ちゃんはサスケの噛み跡が消えて残念そうにしてたとか。
HENTAI香燐ちゃんが大好きです( ー`дー´)キリッ


85.共闘

 

 

「サスケ……!?おい、しっかりしろ!!早くうちの腕を噛め!!」

「香、燐……?」

 

 

 意識の薄れゆくサスケの前に現れたのは、我愛羅に殺された筈の香燐だった。

 呆然としながらも促されるまま腕を噛めば、尾獣玉によって負った瀕死の重傷が急激に癒えていく。どんなに信じ難くとも、この能力だけは香燐本人でなければあり得ないものだ。

 香燐が、生きている。その事実をじわじわと理解すると共に、安堵が胸の内に広がってフッと口角が上がった。

 

 

(そういう事か……我愛羅)

 

 

 考え出される答えは一つ、我愛羅が香燐を逃がしたということだ。

 観戦席で見た香燐も恐らくは我愛羅の影分身だったのだろう。感じた違和感にも納得がいく。考えてみれば、香燐があんなに表情乏しく静かに観戦席に座っていられる筈もない。

 

 

『あの女なら死んだ』

『大方、何か感じ取ったんだろう。影分身を置いて逃げ出した奴を追い───俺が殺した』

 

 

 会場での我愛羅の言葉を思い返す。

 しかし、我愛羅の心の内を思えば胸が暖かくなるが、影分身や変化、草隠れの額当て、そしてあの宣言だ。

 ただ砂の上忍から逃すにしては、随分と手が込んでいる。

 

 

(いや……むしろ、証拠を揃えていた、のか?)

 

 

 念入りに、周到に。誰から見ても、我愛羅が殺したと、そう納得ができるように───香燐の死を偽装した。

 そうしなければならない、理由があったのだ。

 

 

「……草隠れの忍が、うちを殺しにきた」

 

 

 サスケの予想を裏付けるように、香燐は目を伏せ、ぽつぽつと今朝の出来事を語った。

 草隠れの忍に、香燐を連れ出した我愛羅。そして彼らの会話と最後の別れ。

 

 我愛羅から、里から、逃げた所で行く宛もなかったのだろう。森の中を彷徨っていたところにチャクラを感じ取り、こうして俺は命拾いをしたという訳だ。

 話される情報は辿々しく、余りにも少なかった。木ノ葉崩しのことさえ知らされていないようだ。それだけに、香燐の混乱も恐怖も尚の事増したと知れる。

 

 

(伝えるべきか?しかし……)

 

 

 砂隠れと手を組んでいた草隠れは、ダンゾウの捕縛によって風向きが悪いと砂隠れを裏切った。香燐は草隠れからすれば加担の証拠でしかなく、木ノ葉崩しが起きる前にと命を狙われた。

 つまりは、己の里から切り捨てられたということだ。

 

 このまま木ノ葉にいても利用された挙げ句、砂隠れもろともに殺されるだけ。

 たとえ運良く生き延びたとしても、草隠れから犯罪忍者として手配された以上はこれからも命を狙われ続ける。

 

 だから、我愛羅は死んだと偽ったのだろう。

 あの額当ては会場にいた草隠れの忍への証拠であり、宣言でもあった。

 全ては香燐を守る為の、優しい嘘だった。

 

 

『失せろ。俺の前に、二度と顔を見せるな。次に会うときは───お前を殺す』

 

 

 伝え聞いた、我愛羅の突き離すような言葉に。その痛みと葛藤へ思いを馳せながらそっと歯を離す。

 自分のつけた赤黒い歯型に顔を顰めて、なけなしのチャクラで医療忍術を施せば傷が薄れていった。それを確認して、ふらふらと立ち上がる。

 

 この戦いを止めなければならない。

 その方法も分からぬまま、ただ強くそう思った。

 

 

「サスケ、まだ休んでおけって!」

「そんな暇はない。香燐……ここから更に北、湯隠れとの狭間にどの国や里にも属さない空区という場所がある。そこにいる忍猫達に俺の名を伝えるんだ。頭目である猫バアに会って事情を話し、情報を対価に匿ってもらうように頼め」

「え……?」

「砂が木ノ葉を裏切り、同盟はもはや意味を為していない。五大国のバランスが崩れ、他里にも攻め込まれる可能性が高い。中立地帯であるあそこなら、草隠れの追手も来れない筈だ。大戦の前触れなら、情報料としても十分だろう」

 

 

 香燐の目が丸くなる。

 やがてその言葉の意味を理解したのか、ザッと顔が青褪めた。

 

 

「大戦って……じゃあサスケは……我愛羅達は、どうなるんだよ!?」

「お前が我愛羅につくなら俺と、俺につくなら我愛羅と敵対する。……我愛羅はお前をこれ以上巻き込みたくなかったんだろう。そして友だからこそ、味方としても利用することを拒んだ」

「……」

「あいつの想いを無駄にするな」

 

 

 デンカとヒナから餞別に貰った地図を香燐の手に握らせた。命の対価としてはちっぽけなものだが、それでも無いよりは役立つだろう。

 そうして、戦禍にあるだろう木ノ葉へと戻ろうと香燐に背を向けようとして。

 くい、と握り締められた裾に引き止められた。

 

 

「うちも行く」

「……!?」

「うちも行くから、連れてってくれ!……我愛羅にもう一回会いたい。あんな別れ方、嫌なんだ!!」

 

 

 ジッと見上げてくる赤い瞳の強さに、そして何よりそこに写る後悔の色に、危険だと止めようとした口を噤んでしまった。

 

 もう一度、もう一度でいいから話をしたいと。

 自身の言葉と態度を恥じ、後悔に何度も過去を振り返った。そんな切実な願いには覚えがあったからだ。

 

 我愛羅は生きていて、まだやり直せる。いつか再び機会があるかどうかなど、誰にも保証できはしない。

 そう思えば、そんな香燐の思いを切り捨てる事ができなかった。

 

 

「……好きにしろ」

「っ!うん!」

 

 

 そんな香燐の手を取った、その時だ。

 突然、香燐がハッと森の奥を見詰めた。何かに怯えるかのように、その身体がガタガタと震えだす。

 

 

「これってナルトの……いや、でも」

「どうした、香燐」

「……ナルトのチャクラが、どんどん大きくなってる。チャクラの気配も獣みたいに荒々しくて……」

「何?」

 

 

 まさか。そんな嫌な予感を肯定するかの如く、地響きに森が揺れた。

 鳥が群れをなして飛び去っていく。それはまるで黒黒とした雷雲の如く、空を埋め尽くしていった。

 

 

「ナルトが、何かに喰われてくみたいだ。でもあんなチャクラ、人間が耐えられる筈ないぞ……!」

「あの、ウスラトンカチ……ッ!!」

 

 

 その言葉に駆け出す。ナルトの居場所は、香燐の感知能力を頼るまでもなかった。少し高い木の上から見下ろせば一目瞭然だ。

 その場所を中心に森が吹き飛んで、クレーターの如く、すり鉢状の更地になっているのだから。

 

 

「ナルト……」

 

 

 その中心にナルトがいた。

 禍々しいチャクラに四本の尾。もはやナルトの身体をした、小さな九尾といった方が正しいだろう。

 遠目に見ても皮膚は全て溶け、爛れた血に塗れている。親友の変わり果てた姿にサスケはくしゃりと顔を歪めた。

 

 そして、そんなナルトに立ち向かっているのは、半尾獣化した我愛羅だった。

 その瞳は一尾のものでありながら、確かな理性と決意が見て取れた。

 

 けれど、力の差は歴然としている。無尽蔵な九尾のチャクラの前に叩きのめされる我愛羅は、それでも決して逃げようとはせずに食らいついていた。

 攻撃を避けることもできるだろうに、どうしてか全てを受け止め、その行く手を阻んで押し止めている。

 

 

「サスケ!あっちだ、テマリ達がいるぞ!」

 

 

 今すぐ加勢したい気持ちを押し殺す。我愛羅が守ろうとしているのは彼らだろう。

 香燐の先導した先には、死の森で身を潜めていた頃を彷彿とさせる洞穴があった。

 

 

「サスケに……香燐!?生きていたのか……!」

 

 

 洞穴を覗き込んだサスケ達に、テマリが驚いたように目を見開く。

 その傍らにはカカシの忍犬であるパックンが、そして地面には伏せているサクラとカンクロウがいた。呼吸は安定しており軽症のようだが、爪痕が深々と残る傷に誰にやられたのか簡単に予想がついた。

 駆け寄った香燐がすぐに二人の治療に取り掛かるのを横目に、テマリ達へと向き直る。

 

 

「状況は?」

「……砂隠れは木ノ葉崩しを始めた。でも、最初から戦力差は明らかだ。アタシ達は逃げ出したんだが、ナルトが追いかけてきたんだ」

「拙者は小娘と共に、ナルトを止めにきた。……が、小娘もこの通りだ。一時休戦という所だな」

 

 

 テマリから一連の経緯を聞きつつ、パックンから里内の状況なども含め確認したサスケはすぐに身を翻した。

 どこに行く、と呼び止めたのはパックンだ。

 テマリも香燐も、行き先が分かっているのか不安げに黙り込んだまま、けれど縋るような視線を背に感じた。

 

 

「ナルトは俺が連れ戻す……必ずな」

 

 

 サスケはチャクラを両眼へと集中させた。

 閉じた瞼の裏側で、悲しげに微笑んだシスイの、イタチの顔が過った。

 

 

『サスケちゃん……“眼”は絶対に使うなよ。バレた時点で暗部の即時入隊が決定する』

『写輪眼は、使うな』

『頼む……』

 

 

 懇願するような声音が耳に蘇って、すまないと小さく呟いて目を開いた。

 瞳が紅に染まり、黒い瞳孔が渦を巻いて巴を形作っていく。

 

 暗く淀む己の心とは裏腹に、久方ぶりに発動する写輪眼は、まるで使われることを心待ちにしていたかのように煌々と赤く輝いていた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 一歩近づくごとに増していく、轟音と爆風。

 小さいものとはいえ、ゆうに数百メートルを吹き飛ばす尾獣玉モドキが飛んできては地形を変える。立ち込める煙に視界は悪く、無造作に飛んでくる飛礫は人の拳程もある。何より厄介なのは、近づく敵を排除しようと地面を伝って無数に伸びてくるチャクラの腕だ。

 まるで戦場のようなその地を、写輪眼の動体視力を使って躱し潜り抜け、サスケは前へと進んだ。

 

 

「サ……スケ……!?」

「馬鹿、そいつから目を離すな!」

「ぐっ!」

 

 

 最初に気がついたのは我愛羅だった。

 ボロボロな化狸扮する我愛羅は、近づくサスケの姿に溢れんばかりに目を見開く。

 だが、その隙をナルトが見逃してくれる訳もない。瞬く間に取り押さえられた我愛羅にサスケは舌打ちを落として、千鳥光剣を振りかざした。

 

 

(ッ!?なんて再生力してやがる……!)

 

 

 ナルトの片腕が落ちた。が、それも一瞬で、再び生えた腕がゴキリと関節を回して方向を変えると、サスケへと襲いかかってくる。

 叩き切っても、次の腕が、それを叩き切っても次の腕が。本戦での暴走した我愛羅以上の再生力だった。

 それに加えて九尾のチャクラは猛毒そのもの、触れるだけで致命的だろう。

 

 しかし、それはナルトも同じだ。うずまき一族とはいえ子供のあいつが、九尾の毒にどこまで耐えきれるだろう。

 きっと長くはもたない。その前にどうにかして暴走を止めなければならないのに、これでは近づくこともままならなかった。

 我愛羅との戦いによるダメージも蓄積しており、身体活性化による高速移動も今の身体じゃ使えない。

 

 

(クソッ、どうすれば……!)

 

 

 そんな焦りが隙を生んだのか、背後から伸びたチャクラの腕に気がつくのが一瞬遅れた。

 

 

「砂漠大葬!」

 

 

 振り返るよりも先、その腕を阻んだのは砂だった。

 ナルトがサスケに気を引かれている間に、拘束を逃れた我愛羅が砂の大波でナルトを押し流し、巨大なチャクラが砂の下に沈んだ。

 荒くなった息を整えるサスケの傍らに、本来の姿をした我愛羅がどこか躊躇いがちに歩み寄ってくる。

 

 

「サスケ……生きていたのか」

 

 

 見つめる視線には一切の敵意がない。

 むしろ驚愕の中に悔いるような、喜ぶような、複雑な色合いを宿した瞳に苦笑した。

 

 

「お陰さまでな。それに言っただろ、俺は俺自身もお前の心も殺させねェ」

「……そうか。そうだったな」

 

 

 我愛羅の眼差しが緩まって、スッと差し出された掌を取って立ち上がる。

 互いの口端には小さな笑みが浮かんでいた。交わした言葉は少なくとも、それで充分だった。

 それを嬉しく思いながらも、盛り上がってくる砂に視線を戻す。

 

 

「とりあえず、今は共闘ということでいいか?」

「異論はない。その眼は……写輪眼か?」

「ああ。色々と事情があってな」

「ほう、本物を見るのは初めてだが綺麗なものだ。それで、ナルトはどう助ける」

「……十秒でいい。動きを止められるか?」

「俺を誰だと思ってる。数分でも作ってやろう」

「そりゃあ頼もしい……!」

 

 

 コツリと拳を合わせると同時に、砂の海が真っ二つに割れた。

 現れたナルトの尾は、五本に増えていた。

 

 

「ナルト……」

 

 

 ひたりと瞳の無い双眸を見つめる。ナルトの弱点は幻術だが、どうやら九尾のチャクラの衣によって術が跳ね返されてしまっている。

 ならば、そのチャクラの衣を貫いて直接幻術をかけるしか道はない。

 

 

「来るぞ!」

 

 

 ナルトが軽く腕を振り下ろしただけで、地面が割れて先程の足場を砕いていく。

 飛び退いたサスケは、警告にも動かぬままナルトを見据える我愛羅に目を瞠った。

 

 

「ナルト……今のお前を見ていると、何故だかここが酷く痛む」

 

 

 我愛羅はそう呟いて、胸に手を置いた。

 理由なんてそれだけでいいとそう語った友の言葉を思い出しながら、我愛羅は一筋の透明な涙を流した。

 

 

「だからこそ……俺は友として、お前を止めよう」

「我愛羅……!?何してる、逃げろ!!」

「グオオオオオ!!!」

 

 

 咆哮したナルトは駆け出し、我愛羅へとその爪を振り下ろす。

 自動防御の砂が切り裂かれても、我愛羅は逃げなかった。堪らず叫んだサスケの声をかき消すように、ナルトの咆哮が轟いた。

 

 

「……!」

 

 

 我愛羅の身体に纏った煌めく砂が、先程とは打って変わってその攻撃を易易と受け止めていた。

 そこから這うようにナルトの腕へ、身体へと伝い流れていく砂が、やがて全身を絡めとりながら巨大な狸の如き形を成していく。

 

 

───最硬絶対防御『守鶴の盾』。

 

 

「地中にある硬度の高い鉱物を集め、チャクラで圧力をかけ砂に混ぜ込んだ。お前が地面を割り砕いてくれたからな、手間が省けた」

 

 

 這い出そうとナルトは藻掻くが、九尾のチャクラでさえも容易くは破れない、まさに最強の盾だった。

 

 

「今だ、やれ!」

「わかってる───千鳥!!」

 

 

 身動きの取れないナルトのチャクラの衣を貫き、その胸を拳で叩いた。

 ありったけのチャクラを瞳に込めてナルトの両眼を、その更に奥を覗き込む。

 

 

「戻って来い、ナルトォ!」

 

 

 ぐるりと巴が回って───世界から色が消えた。

 

 





 自分の身体と意識が切り離され、瞳の奥に吸い込まれていく。
 そんな覚えのある感覚を思い出すよりも先に、ピチャリと足元の水面が揺れてサスケは目を瞬いた。

『ここは……』

 我愛羅の姿も、滅茶苦茶に荒れていた森もそこにはなく。
 人工的な光に照らされた薄暗い廊下、天井には何処かへと幾筋も伸びるパイプが走り、漏れ出た水滴が踝まで覆う水面を規則的に打つ。


 以前と寸分違わない、ナルトの精神世界がそこに広がっていた。
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