SASUKE逆行伝   作:koko22

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兄さん誕生日おめでとう!(祝いたい気持ちはあるの……ホントですから怒らないで……)


前話に続き、閲覧注意
オビト視点


94.見果てぬ夢

 

 

『行きなさい、サスケ』

 

 

 血の雫が落ちると同時、ふらりと立ち上がった子供の虚ろな瞳がゆっくりと背を向けた。

 古ぼけた扉がパタンと軽い音を立て閉じていく。

 約束通り、その家紋を持たぬ背を追いかけはしなかった。運が良ければ生きるだろう。死んだとしても代わりはいくらでもある。

 それよりも貴重な代物を前にしては、あの子供の生死など些細なことだった。

 

 

(幻術に長けた万華鏡のようだな。まさか、今際の際に開花するとは……先に片目を抉ったのは惜しかったか)

 

 

 倒れた女から無造作に刀を引き抜き、用済みになったそれを投げ捨てればカシャン、と硬質な音をたてて床へと落ちていった。

 まだ息があったのか女が微かな悲鳴を漏らしたが、それに構わず残された目を抉る。

 ポチャリ。そんな水音に沈むように落ちた培養液の中、浮かぶ五枚花を写す万華鏡がオビトを見つめていた。

 

 もうこれ以上、用はない。

 神威空間へ去ろうとチャクラを練り上げた時だ。

 

 がしりと足が掴まれた。

 足元に蹲る女の窪んだ眼窩が、オビトを見上げていた。

 

 

【一緒に、地獄へ落ちましょう】

 

 

 まるで耳元で囁かれたような声に、ゾワリとした悪寒が駆け抜けた。

 その手をすぐさま振り払って、ドクドクと脈打つ鼓動を抑え込む。

 見下ろす女は既に事切れている。それに知らず安堵の吐息をつき、女から目を逸らすように身を翻した。

 

 

『父さん……母さん……!!』

 

 

 その背後、バタンと音を立てて扉が開いた。

 まさかあの子供が戻ってきたのかと振り返れば、そこにはありえないはずの光景があった。

 

 少年が女を抱きしめている。

 死んだはずのその女は、ハアハアと荒い息を吐き出している。

 今しがた抉ったはずの右目が薄っすらと開いて、驚愕するオビトの姿を写し出した。

 

 

『これは……まさかッ……!』

 

 

 手に持っていた筈の培養液は、いつの間にか血に染まった刀に代わっていて。

 刀を振り払うように投げ捨てれば、カシャン、と硬質な音をたてて床へ跳ね返る。

 取り出した培養液の中、色を失った瞳がオビトを見つめていた。

 そして、再び扉が開かれる。

 

 

 間違いない。これはうちはの中でも禁術にされていた瞳術『イザナギ』───それを、止めるために編み出されたもう一つの禁術。

 

 

【イザナミよ】

 

 

 その混じり気のない真実を、囁きが答えた。

 

 

 

 扉が開く。

 悲鳴が上がる。

 瞳を抉る。

 血飛沫が頬を濡らす。

 ポチャリと水音と共に落ちていく。

 色を失った瞳が俺を見ている。

 その視線から、逃れられない。

 

 何度それを繰り返しただろう。

 早く抜け出さねばならない。既に火の手は回っており、現実世界ではとっくにこの部屋は炎に包まれている筈だ。 

 見える世界は何一つ変わらないのに、腕に痛みを感じる。焼けるような、熱さを感じる。

 全身へ広がっていく熱は視認すらもできずに、地獄のような世界に焼かれていく。

 

 

 そのループから抜け出す方法は知っていた。

 本来の己の結果を受け入れ逃げなくなった時、おのずとイザナミの輪廻は解ける。

 

 知っている。だが、それができなかった。

 

 

『もう一度……もう一度、君のいる世界を創ろう』

 

 

 そう約束したんだ。

 

 

 

 

 扉が開く。

 悲鳴が上がる。

 瞳を抉る。

 血飛沫が頬を濡らす。

 ポチャリと水音と共に落ちていく。

 色を失った瞳が俺を見ている。

 瞳を抉る。抉る。抉る。抉る。抉る。抉る。

 

 

 何十、何百と繰り返した。

 気づけばこの両手は血で溢れかえっていた。

 

 

 解ってるんだよ。

 間違っていることなんて最初から。

 それでも、止められなかった。諦められなかった。

 

 

 どこで、何を間違えた?

 いつからだ?

 いつから俺は────俺は、ただ。

 

 ただ、もう一度。

 もう一度だけでいい。ひと目だっていいから。

 

 

 

『もう一度………会いたかったんだ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 柔らかな手が、頬を撫でた。

 

 

【待ってたよ、オビト】

【ずっと……ずっと、見てたんだから】

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 夏の終わりを知らせるような、冷たい風が吹いている。

 日が昇ってそこそこの時間がたった朝方、集合場所までの道のりを俺は急いで駆けていた。

 

 べつに寝坊したわけじゃない。リンに会うならとヘアスタイルをバッチリ決めて、大事な両目に目薬をさして、珍しく余裕ぶって出たのに忍具一式を忘れ取りに戻っただけだ。

 でも、気づけばもう時間はギリギリで。カカシに嫌味を言われるな、と渋く思いながら土手を走った。

 

 

(………あ〜、クソッ!どうしてこう任務前ばっか見つけちまうんだよ!)

 

 

 何も見なかったフリで走り去ろうとして。

 だけど、通り過ぎた後で足が止まった。

 

 時間がないというのに、路肩にはしゃがみこんで口元を抑えている女の人がいる。

 見て見ぬふりはどうしたってできなくて、俺は来た道を駆け戻っていた。

 

 

「なぁ、アンタどうかしたのか?って……と、頭領の奥さん!?」

「あら……あなたは、オビト君、だったかしら」

「えっ?お、俺のこと、知って……?」

 

 

 そうして声をかけた人物には見覚えがあった。

 長い黒髪に澄んだ大きな黒目、顔色が悪いながらもその美貌を一欠片も曇らせない。つい数年前に代替わりしたうちはの頭領、その妻であるうちはミコトだった。

 

 年末年始とか一族の集まりでは何度か挨拶はしていたけど、正直ひよっ子の俺を覚えてるなんて思ってもいなくて。

 どもる俺に優しく微笑みながら、「もちろんよ、未来の有望株だもの」なんて返す彼女はさすがうちはのマドンナと呼ばれるだけある。

 だけど立ち上がろうとして、すぐにふらついた彼女を慌てて支えれば、少し熱っぽい体温に気がついた。

 

 

「っていうか、大丈夫か……なんですか?病院へ……!」

「いいえ、すぐに治まるわ。それに、今病院から帰る所なの」

「病院って、何か病気なのか……なんですか?」

「フフ、気にしないから普通に話してちょうだい。悪阻って、聞いたことある?ここにね……赤ちゃんがいるのよ」

「赤ちゃん……ッ、え!?子どもォ!?」

 

 

 予想打にしなかった言葉を聞かされて目を剥く。だって、子どもがいるとかこの美人に考えられないだろ。

 だけど、本家の天才児の噂を思い出してもう一児いるんだったと思い直した。その優秀さ故に、戦争にも駆り出されるんじゃ、なんていう物騒な噂話だったっけ。

 

 そんな彼女に、うちは本家に、第二子が!?

 そんな大スクープの話は一つも聞いたことがなかった。

 興味が抑えきれなくて、ついジッっとそのお腹を見つめてしまう。そんな俺に、クスクス、と彼女は笑った。

 

 

「まだ妊娠初期だから、見た目には分からないけどね。もう少ししたらだんだんお腹が大きくなるわ」

「へえ〜すっげー……なあ、男の子?女の子?」

「まだ分からないけど……そうね、私の勘だと男の子かしら」

「男!絶対、男の子だって!」

「あら、オビト君もそう思う?」

 

 

 うんうんと何度も頷く。

 別に根拠があるわけじゃないし、男でも女でも、きっと彼女か頭領に似た強い子が生まれるだろう。

 でも、母親である彼女の勘が外れるなんて、どうしても思えなかったから。

 

 ぺたんこのお腹をジッと見つめていれば、それを肯定するかのように少し動いたような気がした。

 まだ初期だって話だし、きっとただの気の所為だったんだろうけど。

 でも、そこにいるんだって思ったら、なんだか声を掛けてやりたくなったんだ。

 

 

「あのさ、触ってみてもいい?」

「ええ、もちろん」

「……元気に育てよ。それでさ、お前も立派な木ノ葉の忍者になるんだ!ま、その頃には俺は火影になって──」

 

 

 そんな俺の盛大なる夢を語ろうとした所で、近くの店頭から柱時計の鐘が聞こえてパッと手を離した。

 

 

「いっけね!もうこんな時間じゃん!あ、でも家まで送るくらいだったら……」

「大丈夫、もう何ともないわ。オビト君が背中を擦ってくれたおかげね」

「本当の本当に?」

「ええ。本当の本当よ。ほら、いってらっしゃい。気をつけてね」

「……おう!!」

 

 

 彼女は迷う俺の背を押すようにポンと軽く叩いた。確かに顔色も戻っていて、その手の力強さにホッと胸を撫で下ろす。

 これは絶対にカカシに自慢してやろう、そんなことを思いながら、俺は仲間たちの元へと駆け出した。

 

 

 

『名前さ、決まったらさ!絶対、教えてくれよな〜〜!!』

 

 

 

 手を振りながら、駆けていく己の背をぼんやりと眺める。

 夢を追いかけていた頃の、遠い、遠い、記憶だった。

 頭の底に埋めていたそれを、何故だか鮮明に思い出す。

 

 

(うちはサスケ、か……カカシ。賭けは、俺の勝ちだったな)

 

 

 炎に包まれた唇が微かに動く。

 色褪せた思い出の欠片は、地獄の業火に黒く焼け落ちていった。

 





そして始まる、オビト救済ルート。

イザナミはイザナギの術者を止めるため編み出された術。現実(自分自身)を受け入れてもうイザナギを使わない、そう選択した時そのループは終わる。

オビトの場合、
リンが存在する世界を創る≒リンの死を受け入れたくない。
誰でもいたくないからマダラを名乗る≒今の自分を否定している。
つまり、リンの死を、今の闇落ちした自分自身を受け入れ、そして無限月読を諦める。それが解呪の鍵となる。

救済ポイントは『リンとの再会』。サスケもイタチと出会えたからこそ前に踏み出せたのだろうなと。
リンは死者であり、ミナトさんと同じく原作軸の記憶を持っている(転生後、二人は恋仲となったとかいう裏設定がある)

無限月読の中には新しい命は生まれず、そこに未来はない。『オビト、お願い……私たちの未来を奪わないで』『絶対、オビトに会いに行くから』『約束だよ』とリンに説得され改心に至る。
ミコトさんとのやりとりを思い出したのも、未来に生まれる命を考えたためだったり。唇が動く、というのは解術の表れ。

その後死にかけてる所をゼツに助けられるも、暁に離反。黒ゼツに乗っ取られそうになって致命傷負いながら逃亡→うちはの血筋を感じ取った香燐ちゃんに助けられる。
名を尋ねられマダラと名乗ろうとして、仮面がもうないことを思い出して小さく笑った。

『俺は───うちはオビトだ』

狭められることなく広がる青空を見上げたその表情は、ぎこちなくも清々しいものだったことをここに書き記しておく。
名を取り戻すも木の葉には罪悪感から戻れず、狙われている香燐ちゃんを守りながら放浪することに。
第二部ではとある組織に身を寄せていたが、諸々があってカカシの前に姿を現した。なんやかんやと巻き込まれながら、第四次忍界大戦で功績を残し、罪を裁かれ、原作サスケポジのカグヤ探索&贖罪の旅へ。
その過程でカカシとも和解しており、出立の前には二人で英雄碑へ花を手向けている。


誰か書いてくださいm(__)m
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