浮遊城に生きた者へ感謝を込めて。   作:あおい安室

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色々と展開の調整してたら投稿予定時間を過ぎてしまい申し訳ない……


歌姫はくたびれた酒場で男と出会う。

 

 2023年7月XX日

 

 バチン、と指先で何かがはじける感触に悲鳴が漏れて指先が止まる。周囲の人々もどよめく。

 

 何が起きたのかと戸惑いながら手元を見れば原因はそこにある。音楽を奏でていた白と水色の小さなギターの弦がプッツリと切れていた。九本あるうちの三本が中心で真っ二つだ。その状態でも指を躍らせれば音を奏でてくれるが、使えなくなった音の範囲が広く満足できるとは言えない。

 

「ごめんね、この子が壊れちゃったから今日はお開き!この子が直ったらまた演奏しに来るから、聞きに来てくれるかな?」

 

 皆に呼びかけるとギャラリーは口々に言葉を交わしながら散っていく。ここまででもいい曲だったよ。次の演奏も楽しみにしてる。これ、ギター修理に使ってよ。温かい言葉を浴びせる人もいれば、冷たい言葉を投げつける人もいる。つまらない演奏だった。ギターのメンテもできないのか。

 いろいろな声があるけれど、それは当たり前のことだ。たくさんの人に私の歌を聴いてもらえたら、と思うことはあるけど皆に受け入れてもらうのは難しいのはわかってる。でも、いつか。

 

 そんな人たちにとっても、私の歌がいい思い出になってくれたら、それでいいと思うんだ。

 

 ギターを背負って立ち上がる。ぐぐっ、と背伸びしてみれば心地よい脱力感が訪れた。うーん、肩が少し凝ってるかも。ちょっと歌いすぎたかな?そういえば幼馴染が言ってたっけ。ここの村には気持ちいいだけじゃなくてリーズナブルな銭湯がある、って。

 

 

 幼馴染が話してくれたアインクラッドの冒険譚を思い返しながら歩き出す。

 

 

 ここはアインクラッドでも穏やかなところで村の雰囲気ものどかなところだ。こういうところはギターの音色がよく響くし、キミの歌声を聞いていると眠りに誘われる。あ、ち、違う!眠くなるって意味じゃなくて、えっと、眠りたくなるくらいに心地よいっていうか!なーんて。

 

 慌てて否定しなくてもわかるよ。ここはいいところだよ、空気が澄んでて歌ってると気持ちいい。肝心の本人は団長に特別任務だとかで呼ばれたからしばらく顔を出せないみたいだけど。

 

 あーあ。いつも一緒にいるのにこういう時だけ離れ離れなのはもどかしいなー。

 

 彼のコトを思い浮かべていたら銭湯の元へたどり着いた。

 

 小さな街頭がチラホラと照らす町並みで、ここにあるぞと言わんばかりに柔らかくも沢山の光を放つ建物。建物の意匠はどことなく和風なお城の雰囲気があって好みだ。

 

 ヒヒーン。

 

 馬のいななきが通りに響いた。なんだろう、と建物のそばに馬車が停まっている。そのあたりにはちらほらと人影があるけど、何か出し物をしているのかな。見に行ってみよう。

 

 老若男女問わずに色々な人が馬車の周りにいた。肩に乗せた竜と馬にニンジンを食べさせている子供がいたり、馬車の前で棒立ちしている鎧を見ている桃毛の少女がいるが、人々のお目当てはその近くでカーペットを広げている老人だった。

 あれはベンダーズ・カーペット。いろんなところで商売ができるようになるアイテムと聞いたことがある。なるほど、出店ということか。

 

「おや、いらっしゃい。お嬢さんも何か見ていくかね?」

 

 老人が私に気づいて挨拶した。お言葉に甘えてカーペットの上には広げられている品物に目を通してみる。鞘入りの無骨な剣や装飾が施された短剣、モンスターを模した彫刻に騎士団を描いた絵画、見るからに高そうな宝石があるかと思えば用途がわからないガラクタがちらほら。

 

「なんだかすごい品揃えですね。どういうお店なんですか?」

 

「在庫処分セール、かな。友人とダンジョンアタックして最深部まで踏破!見事にお宝ざっくざくだ。だけど私たちは根無し草の家無し宿暮らしだから嵩張るブツばかりあっても置く場所がない。温泉帰りの客狙いの土産として売りさばいて金に換えたいのさ」

 

「お土産かぁ。そういわれるとちょっと欲しいかも」

 

「ゆっくり見て言ってくれ。値札はついてないが、応相談だ。それなりに勉強させてもらうよ。おっと、そこのお嬢さんはハンマーを購入かい?」

 

「ええ。これ、A級品のスミスハンマーよね。ダンジョンドロップで市場にもあまり出回らないレア物かつ消耗品だからいくらあっても困らないし。で、お爺さん。値段は?」

 

「ふーむ……三万五千コル。相場よりは多少安いはずだがいかがかね」

 

「うーん、四万切ってるのはなかなかないけど最近出費が多いのよね……」

 

「鍛冶屋は辛いな。ならこの鉱石とセットでどうかな、お嬢さん?天水石といって加工すれば高耐久高品質な研ぎ石になると聞いたことがある。そこは自分でやってもらうことになるがね」

 

「いいわね、買った!ありがとね、お爺さん。これでいい武器が作れそうね」

 

 ニコニコしながらハンマーと鉱石を抱えたお客さんがお一人様お帰り。現実だと割と危険人物な姿だよね、あれ。武器が商品に並んでる時点で今更か。さて、私はどれにしようかな……おや?

 

「お爺さん、これなんですか?猫のお鬚みたいですけど、長すぎません?」

 

「素材アイテムの古龍の髭だな。布製品の補修や強化に使える素材でそこそこ需要は高いし、君にとってなかなか便利な品だと思うがね」

 

「ふむ?」

 

「背中のソレ。弦楽器だろう?加工は必要だが古龍の髭は弦として使えるのさ」

 

「へえー、ちょっと欲しいかも。実はさっき弦が切れちゃったんですよ」

 

「それはお気の毒に。少し見せてもらってもいいか?」

 

 ギターをお爺さんに渡す。タップして鑑定したり弦を確かめると口元に手をやって考え始めた。どこで買った品物なのか、いつから使っているのかといった簡単な質問が飛んでくる。それらに答え終わるとお爺さんは大きく頷いてギターを私に返した。

 

「本体の状態がなかなかいいな。丁寧に使っているし、性能ランクも悪くない。古龍の髭で作った弦は性能が高くて下手なギターに使うといまいち音が乗らないと聞いたことがある」

 

「私のギターなら大丈夫、ということですね」

 

「多少は調整が必要になるが君でも十分できる範囲だな。楽器の演奏は専門外だが同じ弦を使っている知り合いの評判はいい。良かったら君が入浴している間に弦に加工しておくが、どうだ?」

 

「あはは、サービスいいですね。でもお高いんでしょう?」

 

「そうだな。素材がそこそこレアなのと加工の工賃を入れて……二万コル。ここが最低ラインだ」

 

 ウィンドウを開いて手持ちのお金を確認する。うーん、二万はちょっとお高い。買えなくはないけど今後の生活も考えるとちょっと辛いかも。苦い表情を見たお爺さんが苦笑する。

 

「流石に厳しいか。それなら修理が終わったら一曲演奏してもらえないか?それでお代にしよう」

 

「えっ。それでいいんですか?」

 

「それでいい。なんなら弦を交換して初めての試し演奏で構わない。個人的に音楽が好きだから、というのも理由ではあるがね」

 

 とっておきだぞ。背後に置いてある宝箱みたいなチェストからお爺さんは宝物を取り出した。装飾が施された小さな鉄の箱。SAOとはどうも世界観がズレているようなそれを宝物と呼ぶことに首をかしげたけれど、隣で商品を見ていたスキンヘッドの黒人はそれをみてアッと驚いた。

 

「初代WALKMAN!?なんでアインクラッドにそんなものが!?」

 

「うぉーくまん?なんですか、それ」

 

「そうか、嬢ちゃんの年頃だと見たことはないか。俺がガキの頃、嬢ちゃんが生まれる前に人気だった携帯型音楽プレイヤーだよ。爺さんが持ってるやつはそれの初代にそっくりだ」

 

「見た目だけ模造品だよ。私の父が愛用していたのが懐かしくてね」

 

 ガキの頃には初代は既に骨董品だったが、ブルーのボディにオレンジのボタンのカラーリングは心惹かれるものがあるな。そういった黒人さんに話が分かるじゃないか、なんて言いながらお爺さんは黒人さんと数人の大人とウォークマン談義に花を咲かせている。

 

「こいつを初めて手のひらに収めた時のことは忘れられん、たった400g程度のそれが私の手にはどれだけ重かったことか。これも同じくらいの重さにするのは大変だったんだ」

 

 初めて収めた時。腕の中のギターをじっとみる。このギターを初めて手にした時は使いこなせる自信はなかった。中世のギターをモデルにしているから弦の数がちょっと多いのだ。今ではこの子が奏でてくれる広い音域のおかげで沢山の曲が演奏できるし、私の声についてきてくれる。

 

「こっちの世界に機械なんてものはないからな。それって見た目だけの模型なのか?」

 

「まさか。それだけじゃもったいないと思ってちょいと工夫してあるのさ」

 

 お爺さんが箱の横にあるボタンを押す。カチン、とロックが外れてカバーが開いた。中身はがらんどうで小物入れ程度に使えそうだ。指を振ってウィンドウを呼び出し、ストレージから一つのクリスタルを取り出した。結晶アイテムはあまり使わないけど、これは見覚えがある。

 深みのある色の小さな立方体を囲む形で装飾が施されている。この色は録音結晶だ。高級品は八面体だけど、低級品はお爺さんが持ってる小さな立方体だ。なるほどなるほど、そういうことか。

 

「入るんだね?」

 

「入るのさ。イヤホンや外部スピーカーはないが、こればかりはどうにもならん。音楽を持ち歩けるだけマシ、ということだ」

 

「それは仕方ないよ。現実のモノがファンタジーの世界にあったら世界観台無しだし」

 

「だな。まあいい、とりあえず一曲かけるとしよう」

 

 クリスタルを操作すると穏やかなヴァイオリンの旋律が鳴り始める。NPC楽団の曲だ。ウォークマンの空きスぺースにクリスタルをパチンとはめて蓋を閉じる。それでも音はほぼそのまま。

 

「これをベルトに固定すれば好みの音楽とどこにでも行ける。音楽をお供に釣りしたり、工芸品を作る時間がたまらないのさ。老人の道楽かもしれんが、あんたらもわかるか?」

 

「同感だ。録音結晶を持ち歩くプレイヤーはそれなりにいるがバッグに入れるとどうも音が曇る。クリアな音楽を持ち歩けるのは魅力的だな」

 

「私も音楽を持ち歩くのは好きだよ。ギター演奏もいいんだけど、サックスやピアノの演奏があればもっといい歌が作れるからね。ちなみにこれ、おいくら?」

 

「残念ながら非売品。作るのになかなか手間がかかるからまだ一台しかない。量産体制が整ったらおまえさんのところに卸すよ」

 

「そいつはありがたい。必要な素材があれば連絡してくれ、割安で提供するぜ」

 

 そこは無償にしてくれると嬉しいんだがな。こっちも商売なんだよ。黒人さんは商人らしい。そういえば情報屋が出してる新聞で見たことがある気がする。攻略組でありながら商人と兼業してる黒人プレイヤーがいる、って。新聞の写真と見た目も似ているような。えっと、名前は……

 

「そうだ、お嬢さん。せっかくだし紹介しておこう。こいつは「そいつはエギル」」

 

 背後から少年の声が飛び込む。黒い浴衣に身を包んだ少年。

 

「両手斧にバリトンボイスなナイスガイで、とっても頼もしい男だぜ。商人としても品ぞろえ豊富でいい店をやってる。ただ、値段に関しては色々と容赦ないのがたまにキズだけどな」

 

「褒めてるんだかけなしてるんだかよくわからない紹介ありがとよ、キリト」

 

 キリトと呼ばれた少年はエギルさんと拳を交わしあう。気心の知れた戦友、って感じだ。こういう人を題材にした曲を今度作ってみようかな。そして、少年はお爺さんと指さしあう。

 

「帰ってきたな、長風呂少年」

 

「長風呂で悪いかよ。爺さんが早すぎるんだって」

 

「ちょっとでも宝を売りさばかないと今後の活動もしにくいんだ、仕方ないだろうに。そういや卓球勝負してくるとか言ってたが。どうなった」

 

「ここにいるってことはそういうことだよ。いい勝負だったぜ」

 

 そう言って笑いあう少年とお爺さんが銭湯の入り口の方を見る。そっちの方から誰かが歩いてくるのが見えたけれど、薄暗くてよく見えない。けれど、なんとなく知ってる気がして。

 

 目を凝らして見えた誰かの姿に微笑みがこぼれる。

 

 誰かは私に気づいて目を見開いた。どうしてここにいるの、なーんて言いたいんでしょ。

 

 

「こんばんは、ノーくん。浴衣似合ってるよ」

 

「な、なんで君がここにいるんだよ、ユナ」

 

 

 幼馴染の男の子。ノーくん。ノーチラス。エイジ。エーくんは白い浴衣に身を包んでる。貸し出しサービスしてるのかな。私もお風呂出たら借りてみようかな。

 

 

「……爺さん。これどういう状況?」

 

「ノーチラスが彼女に浮気現場を見つかった」

 

「え?ノーくん浮気してたの?」

 

「してないしてない!適当なことを言うな、爺さん!」

 

 


 

 

 村の中心地には大きな洋館がある。銭湯に負けない規模のここはかつてこの辺りを統治していた貴族の館。今では酒場兼宿屋として用いられているのだとか。石畳の大広間にはいくつものテーブルが並べられていて、食事を取るプレイヤーの姿がちらほら見える。

 

「ユナです。いつも幼馴染のノーくんがお世話になってます」

 

「いつもじゃない。こいつらとは今日会ったばかりの付き合いだよ」

 

 その中の一つを使っているのが私たち。私もお風呂に入ってきたし、みんなで夕食タイム。大きな丸テーブルは私とノーチラス、出店のお爺さんにキリトの4人だとちょっと持て余し気味だ。

 

 ウェイターを呼び止めて晩御飯を注文している出店のお爺さんはゴロー。ゴロー爺さんと呼んでほしいとか。ゴロー爺さんとキリトは血盟騎士団の団長の知り合いで、ノーチラスは団長からの指示で彼らとダンジョン攻略してたとか。そういうことにしてほしい、と念を押された。

 

「今日会ったばかりにしては、すごく仲がいいよね。ずっと前から友達だったみたい」

 

「冒険者という生き物は肩を並べて一度戦えばかけがえのない絆が生まれるのさ……だよな?」

 

「どうしてそこで俺に聞くんだよ。こういうのは張本人のノーチラスに聞くべきだ」

 

「あれか?僕に君たちは友達だ!とでも恥ずかしいことを叫べと?」

 

「もう言ったじゃないか。つまりはそういうコトだよ、お嬢さん」

 

 おまちどうさまー、とウェイターの声がかけられる。注文してから料理が出るまで爆速なのはゲームのいいところかな。私は焼き魚に汁物、そして白米と懐かしい和食定食。エーくんも同じ定食を注文して、キリトは塩ラーメンを注文していた。

 

「あれ、お爺さんの分は?」

 

「時間がかかるメニューを注文したからな。一足先に食べてくれ」

 

 ゴロー爺さんは手際よくコップに水を注ぐ。コップを掲げた爺さんの真似をして、みんなでカチンと乾杯の音を鳴らす。ゴクゴクと飲み干せばすーっとさわやかだ。

 

「そうだ、話の流れで言いそびれた。ユナ、だったな。噂の歌姫に会えて光栄だよ」

 

「あら、噂で聞いてくれてたんですか?」

 

「下層で生きていれば耳に入るさ。君はいろいろなところで路上ライブをしているからな、ふとした時に耳をすませば美人がギターをならしてる、ってか。いい歌だよ、ユナ姫様?」

 

「あはは、ありがとうございます。しばらくはこの辺りで演奏してるので聞きに来てくださいね」

 

 リクエストも聞いてくれるのか?できる曲であれば。先ほどのおばちゃんNPCがもう一皿料理を持ってきた。待ってました!と言わんばかりにゴロー爺さんは料理を受け取る。これは……天丼?

 

「んん?そんなものメニューにあったか?」

 

「ない……よな?」

 

 男の子二人がメニューを開いてぺらぺらとめくってる。ずるいよ、私にもみーせて。

 湖で様々な魚が釣れると話題になってる村だから、この酒場では色々な魚料理が食べられるだけでなくメニューのほとんどが和食系。日本人の血が流れている身としてはこのほくほくの白米だけでもたまらないのだ。でも、丼物なんてメニューにはどこにもないよね。あれ?

 

「ふっ、裏メニューだ。すまんがこれは教えてやれんなぁ」

 

「ずるい!よく見ればここで食える天ぷらほぼ全種類乗ってんじゃねぇか!」

 

「おい、この天ぷらA級素材のライジンだぞ。釣りスキルを育てないと連れないレア魚だし、メニューには載っていなかった天ぷらだ」

 

「NPCの釣り人は時々釣るらしい。たまに市場にも流れるがちょいとお高くてね。うーん、ちょっとばかり痺れる食感は不思議食材だが、つるんとした魚独特の甘み!たまらん。実にうまいぞ」

 

 ゴクリ、と私たちは喉を鳴らした。焼き魚をかじってみると脂がのっていてふっくらジューシーで美味しい。けれど目の前の美味しそうに食べているお爺さんを見ていると霞む。

 

「いいなあ、いいなぁ……お爺さん、私にも一口ください」

 

「ライジンの天ぷらは食べきったぞ」

 

「そんなぁ……」

 

「んぁ……そんな目で見ないでくれ。あとおまえらの目は殺気走ってて怖い」

 

 店を出たら闇討ちされないよな、とか頭を抱えるお爺さんだけど、目の前であんなに美味しそうに食べるのはずるいですよ。かーっ、ってなんですか、かーって。お行儀悪いけどちょっとだけ憧れる食べっぷりですよ。おばちゃんNPCに何かを聞いているけど、駄目だったみたいだ。

 

「残念だが裏メニューは品切れだ。数量限定なんだよ、あれ」

 

「時間か?一日か?一週間か?」

 

「在庫復活したら私に注文させる気だな?一か月だ、一か月」

 

「長すぎだろ、おい。どんだけレア物なんだよそれ」

 

「注文するためのキークエストが厄介な代物なんだ。料理スキルと工芸スキルが共に高熟練度じゃないと受けられないし、受けたところで求められるプレイヤースキルも高いときた」

 

「料理に……」

 

「工芸か……」

 

 男の子二人の目がこっちに向けられる。ぶんぶんと首を横に振った。料理スキルは女の嗜みとして取ってるけど熟練度は高くないし工芸スキルなんて持ってない。そういう君たちは持ってないの。

 

「何か物を作ろうと思ったことはあるけど、職人か爺さんに頼んだ方が速い」

 

「ギルドで弁当は出るし、コルはそこそこあるから食事処には困らない」

 

 男の子って……男の子って……。

 

「仕方ないな。好きな天ぷら一つずつ持ってけ、それでチャラだ。OK?」

 

「OK。じゃあ遠慮なく」

 

「さらばだ、貴重な肉、かしわ天……おまえはもうちょい肉以外を食え」

 

「大人げないな、キリト。僕は小さい魚をもらうぞ」

 

「それB級だけど通の間では知られてるやつじゃないか」

 

「え、えっと……これ!かき揚げ半分もらいますね!」

 

「男連中と違って女は癒しだなぁ……」

 

 お返しにそっと焼き魚を一切れ乗せる。涙流れてますけど大丈夫ですか。

 

「男連中は容赦がないな、とね……おまえら見習えよ、こういうところ」

 

「今日の冒険の終わりが地獄じゃなければ見習うさ。なんで黙ってたんだ」

 

「新人にもあの地獄を味わってほしかった」

 

「涼しい顔で言うことか!?」

 

 ノーチラスは叫ぶけれど、キリトは黙々と魚を食べるしゴロー爺さんは目を逸らして誤魔化している。何があったの、ノーチラス。ふてくされながらも彼は口を開く。

 

「……僕たちが行ったダンジョンは古い水路だったんだ」

 

「ふむふむ」

 

「すでに放棄されている水路だから中身はスライムまみれ。液体のあいつらはダンジョンを縦横無尽に移動するから、いろんなところから湧き出してくるし精神的にキツかった」

 

 どんな感じなのかな、想像してみよう。洗面台の蛇口や排水溝、洗濯機とかいろんなところからスライムが湧き出してきて、私めがけて襲ってくる。うーん、これは怖い。

 

「一体一体のレベルは大したことはないが、あまりにも数が多かった。だが、こいつは噂の黒の剣士だからな。実力は折り紙付きでいくつもの敵をズバズバと切って助けてくれたよ」

 

「ほうほう。君があの黒の剣士くんなんだ」

 

「そう。かつては美しい細剣使いの少女と共に戦場を駆けていたが、フロアボスとの戦いで彼女を失ってからは一人で戦い続けている孤独な黒の剣士。それがここにいるキリトだ」

 

「ちょっと待てよ、それほぼほぼデマじゃないか。細剣使いの少女も生きてるぞ」

 

 なるほど……下層での黒の剣士はそういうコトになってるのは言わないでおこう。キリトが事実を知ったら結構ショックを受けるだろうし。あ、ゴロー爺さん苦い顔だ。同じこと考えてる?

 

「それはともかく。ダンジョンの敵をいくつもねじ伏せて、待ち受ける罠はゴロー爺さんが瞬きする間にバラす。多少は苦戦しながらもなんとか最深部にたどり着いたんだ」

 

「おい、私についてもっと言うことはないのか」

 

「語り始めたら話が終わらないくらいに爺さんは働いてただろ。ユナ、とにかくこの爺さんはすごいということで納得してくれ」

 

「うん。スーパーお爺さんなんだね」

 

「納得いかない……スーパーお爺さんは納得いかない……」

 

「納得してくれ。で、いくつもの困難を乗り越えた僕たちは最深部へたどり着いた。そこにあったのは錆びてボロボロの扉で、しかも鍵はダンジョン内にはない意地悪な設計だった」

 

「ないの!?」

 

「ない。錆を落とせば多少の紋章と古代文字が読み取れたんだが、解読してみたところ四層上の街のマークだった。この水路を建てた貴族の行方が分からないだとか、最終的に借金まみれでマフィアが森に埋めてたり、財産全部カジノに売りさばかれていたりで鍵を探すのは苦労したよ」

 

「うわぁ、意地悪だね。それでも鍵を見つけ出したんでしょ?」

 

「老いぼれの道楽ついでにな」

 

 お爺さんはテーブルの上にアイテムを転がした。錆びた金属板に宝石が輝いているこれが鍵らしい。でも、こんな形の鍵なんてあったっけ?

 

「刺す部分がぽっきりと折れたんだ。残った持ち手だけが素材アイテムとして手元に残ったのさ」

 

「なるほどなるほど。今日の冒険の思い出ということだ」

 

「ただ、開いた先は天国の面を被った地獄だったけどな」

 

 キリトがポツリと放った言葉に男性陣が皆うつむいた。何があったの。

 

「……その。金属製のスライムがいたんだ」

 

「金属のスライム。あっ、もしかしてメタルなんとか?」

 

「メタルなんとかだ。やっぱり経験値が高くていいレベル稼ぎになったんだけどなぁ」

 

「罠が最悪だった。程よく狩りつくして探索していたら突然巨大なスライムが津波みたいに襲ってきて全員流されたんだよ。多分、経験値が美味しい代わりに時間制限付きだったんだ」

 

 ノーチラスが食べ終わってからになった皿の上で橋を滑らせる。

 

「全ての方向から押し寄せてきたそれに僕たちは抵抗できなくて流されるしかなかった。一分だったか、二分だったか。流され続けて気が付いたら全身ベトベトでダンジョンの入り口だったよ」

 

 息できなかったな。前も見えなかった。声も聞こえなかった。何よりも?匂いがきつかった。三人そろって頷けば乾いた笑い声をこぼしている。大変だったんだね、三人とも。

 

 

 ……匂い、か。ふーん。

 

 

 油断してるノーチラスの頭のぼふっ、と鼻先を突っ込んでみた。

 

「はっ!?ユ、ユナ!?何をしてるんだ!?」

 

「匂いの確認。うん、大丈夫。いい匂いとは言えないけど、変な匂いはしないよ」

 

「そ、そうか……あ、ありがとう?」

 

 頭を放してちょっと乱れ気味な髪形を整えてあげる。ほら、じっとして。くしくし、くしくしと。全てが終わる頃になっても困惑しているノーチラスに微笑みを返した。

 

 お疲れ様。いっぱい、いーっぱい冒険したんだね。冒険譚、聞かせてよ。

 

「……あ、ああ。たくさん話すよ」

 

 普段は大人っぽいけれどこうして話していると、子供の頃に戻った気がするんだ。どことなく可愛げがあるエーくんも好きだよ、なんて言ったら怒るかな。

 

「そ、それはそれとして冒険の締めくくりにライジンが食べられなかったのは残念だがな」

 

「照れ隠しの方法が雑すぎるぞオウムガイ。おまえらのイチャつきで胸焼けしそうなのになぜ話を戻したオウムガイ。おまえがそんなに食い意地張ってるとは知らなかったぞオウムガイ」

 

「オウムガイオウムガイうるさいな。仕方ないだろう、口の中にあの不味いスライムが残ってる気がしてうまいものでも食わないと気が晴れん」

 

「うえっ、嫌なことを思い出させないでくれよ……俺もなんだか食べたくなってきたな」

 

「食い意地の張ったガキどもめ。そうは言われても裏メニューをもう一度注文する方法なんてあったか?注文クエストは受けられないことはないが、おまえたちではクリアできないし……」

 

 わしゃわしゃ、と髪を乱しながらお爺さんは考え込んでいる。考えながらも店のメニューをひっくり返したり店の様子を確認したりで何かを探しているようで。せわしく動く視線が固まった時、私たちもお爺さんにつられてその方向を見た。

 

 くたびれた雰囲気の店の中で、がらんどうのステージが一つ。

 

 ステージの端、カーテンで隠されているのは埃まみれの楽器がちらほら。ギターにピアノにバイオリン、ドラムとサックスかな。ニヤリと笑ったお爺さんが私を指さす。

 

「歌姫さん。依頼変更だ。一曲演奏してもらうつもりだが、訳ありになりそうだ」

 

 ついてきてくれ。ステージに向かって駆けだすお爺さんをキリトとノーチラスは追いかけて、私もついていこうとしたけど食べ終わった食器を片づけてから。礼儀よろしくしないとね。

 

 一足先にステージに上がった男性陣は楽器の様子を確かめていた。お爺さんは粗方見終わったらしく、投影型キーボードに何かを打ち込むとメモを一枚出現させてノーチラスに渡す。

 

「ギターは修理不可能だ。それ以外は手入れすれば使えるがちょっとばかり道具が足りん。エヴァに、馬車の御者NPCにこのメモを渡して材料をもらってきてくれ」

 

「あ、ああ。それはいいんだが何をするつもりだ?メモの最後にエヴァ、ってあるんだがあいつもつれて来いと?」

 

「当たり前だ。ギターにピアノにバイオリン、ドラムにサックス。演奏者は五人必要なんだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ爺さん。まさかとは思うけど……」

 

「まさかだよ。安心しろ、ここはゲームの世界。演奏は未経験者でもできる」

 

 そこまでして食べたいんだったら付き合ってもらうぞ。お爺さんはウェイターを呼ぶとここで演奏したい、と伝えた。ウェイターの頭上にクエスチョンマークが浮かんでクエストが幕を開ける。

 

 私たちの前にもクエスト内容が記されたウィンドウが表示される。

 

『くたびれた酒場に歌語を』

 

「報酬は例の天丼らしいが、生憎と歌も演奏も苦手だから受けられなかったんだ。幸いここには美人な歌姫がいる、やってみればどうにかなるかもな。やるか。やらないか。どうする?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 203X年4月10日

 

「……キリト?キリト。起きてください。解析は終わりました。もう、起こしてもまた寝るんですから。寝坊助な男はあまり好ましくないですよ」

 

「ん……ああ、ごめん、アリス。懐かしい夢を見てたから。続きを見たくなる、懐かしい夢だ」

 

「懐かしい夢ときましたか。どんな夢でしたか?」

 

「SAOをプレイしていた頃の夢だよ。ノーチラスにユナと、そしてゴロー爺さん達でバンドを組んだことがあるんだ。即席バンドで必死にユナの歌を応援する感じだったっけ」

 

「検索キーに使ったデータですね。膨大なデータの海から彼女を探すためには道しるべが必要でしたし。私も聞いてみましたがなかなかいい曲でしたよ。初めて聞いた曲のはずなのに、聞き覚えがあったような気がします」

 

「アインクラッドのNPC楽団の名曲がベースだからな。ALOを遊んだ時にどこかで聞いたのかもしれない。それで、解析の結果はどうだった」

 

「バージョンが古かったのと通電されていない期間が長かったこともあって復旧には手間取りましたがデータは無事でした。間もなく彼女は目覚めるはずですよ」

 

「ありがとう……長かった。この日が来るまで、本当に長かった」

 

 ――瞳を閉じる。そして、過去を思い返す。手がかりをつかんだのは五年以上前。

 

 

 

 

 2026年4月10日

 

『ナーブギアのアップデート履歴を確認しました。ノーチラスさんのナーブギアはパパが使っていたナーブギアよりも一回分アップデートが多いですね』

 

 ゴロー爺さんを見つけるための手がかりとしてノーチラスが持ち込んだナーブギア。それをPCに接続してユイにローカルメモリーを調べてもらった。元々SAOのMHCPであったためか解析はあっさりと終わり、ここにはない俺のナーブギアのデータとの比較もすぐに済ませてくれた。

 

「SAOは僕たちがとらわれていた間も幾度となくアップデートが繰り返されて変質していたことがわかってる。ナーブギアも同様だった」

 

「その上で正体不明のアップデートがノーチラスのナーブギアだけに行われていた?」

 

「見つかった限りでは僕だけだが、他にもいるかもしれない。詳しいデータを確認したいがプロテクトがちょっと古くて特殊な形をしていて難航中でな」

 

『その解除を私に頼みたい、と。任せてください、現在同時進行で行っているんですが懐かしい感じがしてて……っ!開きました!詳細データを出します』

 

 PCのディスプレイに一枚のウィンドウが表示される。表示されたアップデートパッチの詳細データの項目をユイが指さしている。アップデートパッチ実装日。

 

「やっぱりか。アップデートがあったのは2023年7月末。この頃から足が止まらなくなってFNCの症状が直ってきた節があったんだ」

 

「7月……7月……っ、ノーチラスと俺たちが出会った頃か」

 

「そうなるな。……成長して恐怖を乗り越えられたのかもしれないと思ったけど、機械の後押し付きだったのかよ。僕は今も昔も弱いまま、か」

 

「それは違う。第七十五層でスカルリーパーの一撃に怯える攻略組で最初に切り込んだのは俺やアスナやクラインじゃない、あんただぜ、ノーチラス。あんたが弱いなんて絶対に言わない」

 

 そう言って肩を叩けば、ノーチラスの表情は苦悩から笑みへと変わってくれた。

 

「……ありがとう、キリト。だが……これはどういうことなんだ?」

 

『アップデート実行者、ですね』

 

 ユイがウィンドウを操作して表示するデータを変える。Evangeline。

 

『エヴァンジェリン……そういえば、この名前はMHCP002……私の妹の開発コードと同じ名前です。でも、MHCP002は完成時にストレアという名前に変わったはずです』

 

「ストレアという女は知らない。だが、エヴァンジェリンなら知ってる名前だな、キリト?」

 

「え?……そうか、爺さんについてた御者NPC!あいつはエヴァと呼ばれていたはずだ!本名はもう少し長いとか言っていた記憶がある」

 

「グレーだな。怪しい。あのNPCは今どこにいる?ALOのアインクラッドにはいないのか?」

 

「見たことはない。いたとしても多分別人だぞ。ALOのアインクラッドでキズメルっていうダークエルフのNPCに会ったんだけど、俺とアスナのことは覚えていなかった」

 

『ALOのアインクラッドは厳密には古いバージョンの別物です。パパやノーチラスさんが生きていたアインクラッドは既に解体されてデータの海に消えました。NPCのデータも同様に消えてます』

 

『望みがあるとすれば……SAOのサーバーでしょうか。私以外のMHCPはあそこに保存されているはずですから、ストレアが、エヴァさんがいるとすればそこです』

 

 

 

 

「だが、当時調べることはかなわなかった」

 

 ノーチラスが訪ねてきてから数日後。彼はAR型情報端末オーグマーとSAOサーバーを用いた大規模な事件を起こした。事件は解決できたが、これが原因でSAOサーバーの管理が厳しくなる。

 誰にも触れることはできなくなり、一時期は廃棄処分寸前も検討されたが色々な人が尽力してくれたおかげでSAO事件の証拠品としてサーバーを存続させることに成功した。それからも時は流れてゆき、いつしか俺が仮想現実方面の技術者として名が知れてきた。

 

 そして、今日。事件の調査としてSAOのサーバーに触れている。

 

「当事者ともいえるユイがここにいれば楽だったのですが、政府からの要請で来れないとは。妹に会いたがっていたというのに」

 

「事実を知らない人からしたら怖いんだよ。俺はSAOサバイバーであると共に茅場晶彦に幾度となく関わってきた。ユイはSAOのシステムの根幹に触れている。それらが合わされば事件に発展するんじゃないか、とな」

 

「……最悪の場合、キリトを捕縛するように、とも言われています」

 

「わかってる。そんなことはしないさ。そろそろ起きたかな?」

 

「ええ。オーグマーをどうぞ」

 

 アリスからサーバーとケーブルでつながれたオーグマーを受け取る。少し時間を駆けながらも起動すると、俺の目の前に深紫色の鎧をまとった騎士が現れた。

 

『―――』

 

 エヴァだ。あの御者NPCが目の前にいる。だが、騎士の言葉は聞こえない。何かを言っているような気がするが、かすれたノイズ程度にしか聞こえない。

 

「彼女のアバターは発声機能が封印されていました。かなり高度なプロテクトがかかっていたため解除はできませんでしたが、データとしては言葉を発しているので、私の発声装置を使わせます」

 

「頼む。えっと……久しぶりだな、エヴァ。キリトだ。覚えてないかな?」

 

 アリスが深紫色の鎧の隣に並ぶ。アリスの体は機械だ。目の色がほんのり赤く変化したのはエヴァさんが制御しているからか。そして、口を開く。

 

「キリト……キリト?あなたが?」

 

 普段のアリスの声よりも声のトーンが少しだけ変わっている。ほんの少し高く、どこか柔らかい女性の声のように思える。これがエヴァの声だったのか。

 

「ああ。SAOが稼働してた頃から十年以上経ってるから大分見た目も変わったけどな」

 

「……うん。外見適合率は七割くらいだね。髭も生えてるんだ、クラインみたい」

 

「あははっ、そうだな。でもゴロー爺さんには負けるよ。なかなかいい髭をしてた」

 

「私、実は何度かこっそりと切ろうとしたことあるよ。髭剃ったらだいぶかっこいいと思うんだよ。お爺さんも、いまのキリトもね」

 

「みんなそういうんだよな……剃った方がいい?」

 

 アリスの目が青く染まると頷いた。やっぱりか。アスナにも不評だし、帰ったら剃るかな。アリスの再び赤く染まったのを確認してから本題を切り出す。

 

「単刀直入に聞く。アリスのデータと同期したのなら今の時間もわかるよな」

 

「うん。聞きたいことがあるんだよね。そうでないと何年も経ってるのに私を起こす理由がないもの」

 

「……ゴロー爺さんがどこにいるのか、知らないか」

 

 

 

「生きている爺さんと俺は、俺たちは。一度も会ったことがない。会えなかった」

 

「俺のナーブギアから回収されたデータには爺さんが写っている写真データがある。それを頼りにあの手この手で探したが、見つからなかった。現実世界で見つからないんだ」

 

「ログインデータも調べてみたが、爺さんがSAOにログインしていた痕跡は見当たらない。だが、プレイヤー『ゴロー』の活動痕跡は確かに残っていたしバイタルデータもあった。AIじゃない」

 

「そんな時だ。ノーチラスのナーブギアから見つかったアップデートパッチの実行者があなただということが分かった。アップデートされたのは爺さんとあんたがノーチラスに出会った頃だ」

 

「エヴァは何らかの形でSAOの運営に……茅場晶彦に関わっていたんじゃないか?」

 

「だとしたら。それを連れていた爺さんもただのプレイヤーだったとは思えない」

 

「頼む、エヴァ。爺さんについて知ってることを教えてくれ。君だけが頼りなんだ」

 

 

「ゴロー爺さんは何者なんだ。爺さんは、どこにいるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこにもいないよ。ゴロー爺さんは、もう、どこにもいない」

 

「ゴロー爺さんはあの城に。浮遊城に、夢を見るためにやってきたんだ」

 

「ログアウト機能が搭載されていない、未完成のナーブギアで」

 

 

 

 

 

 

 

私はあの城に生きることを許された。とある男の夢を飛び続ける城に。

 

だからこそ。あの『浮遊城に生きた者たち』に会いたかった。

 

君たちが私に見せてくれた夢を、もう一度見たかったんだ。

 

 

 

そして、今。2024年11月7日。

 

浮遊城に生きた者へ感謝を込めて。言葉を紡いでいる。

 

 

 




ちょっと指摘されそうなので補足。

ストレアといえばゲーム版SAOのオリジナルキャラですが、
彼女がエヴァンジェリンと名乗っているのはおかしいですよね。

この部分に関しては公式の没設定から流用しました。
インフィニティモーメントのムービー絵コンテ等で確認できる
開発段階でのストレアの名称が『エヴァンジェリン』なのです。

余談ですがこの頃のストレアは一人称がボクだった模様。
そういえば紫色で一人称ボクの子がSAOにはいましたねぇ。

……当初は読者にストレアと誤認させながらも正体はその子、
という伏線として使う予定でしたがこのプロットは早期に没りました。

本作のエヴァンジェリンはその名残です。
喋ってないのもその関係ですが、この辺は次回。

そしてこの辺の設定を大幅に調整してたら投稿予定時間オーバー。
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