自由のための関門
「なんだ、もうバテたのか?」
「バテてない……」
「なら寝転がってねェで早く起きろい」
太陽は高く、真上まであとわずかで腹の虫が鳴り始める時間帯。おれはお父様によってゴロゴロと甲板に転がされていた。
なんてことはない、修行をつけてもらっているだけだ。今は組み手の時間であり、次は筋トレの時間だ。
エレジアにいたのはもう一月以上前だ。赤髪海賊団と別れて直後から、おれは体力が尽きるまでトレーニング漬けの毎日となった。
切っ掛けは、おれが前世で習得している気配の察知。実はこれが見聞色の覇気だったということが判明したことだ。
おれとしては前世で得た感覚だと思っていたのに、実はまったく違う技術だったと知ってそれはもう驚いた。
正確には、おれの前世の感覚が呼び水となって、見聞色の覇気が目覚めたのかもしれないけれども。
おじい様曰く、子どもが覇気に目覚めることは珍しいことではなく、見聞色なら生まれつき使用できる者もいるそうだ。
しかし、そうして目覚めた覇気は得意な見聞色しか使わないため、また覇気についての知識が不足しているがために、それに特化してしまうことが多いらしい。
本来、バランス良く鍛えなければ、得意な見聞色といえども成長率は低くなる。
おれはいつから見聞色が使えたのかはわからないけれど、ちょうど単独行動を禁じられている今の内に、ガッツリ鍛えようということが皆の話し合いで決定したらしい。
なお、おれは決定を通達されただけなので、話し合いには参加していない。このおれの外側で教育方針が決まる感じ、懐かしささえ感じるぜ。
まあそれはそれで、だ。覇気の操作については何も困難はなかった。見聞色は勿論のこと、武装色だって見本を示してもらえれば、再現することができた。
これは皆に驚かれたけれど、おれが天才とかそういう訳ではない。先に波紋法を覚えて体内のエネルギー操作に慣れていたおれにとっては、武装色の使い方がとても馴染みがあっただけである。
問題は、覇気を鍛える上で重要な身体能力のところにあった。通常、覇気の量と強さは肉体の強さに比例するらしい。おれ自身の感覚では、お父様達には到底及ばないけれど、結構動けるつもりでいた。
過去形なのは、お父様に指摘されたからである。
同世代に比べて身体能力が低い、と。
おれの持っている基準は前世で培ったものであり、今生の世界のそれとは驚くほどかけ離れていたことをそのとき知った。
例えば、身体が数メートル吹っ飛ぶ程の威力で、顔を殴られたとする。
まさにマンガのようなこの状況、特に鍛えていない素人なら、首の骨を折るなど命の危険すらあるというのがおれの認識だ。
だが、この世界では衝撃で気絶したとしても、意識が戻ればピンピンしているという。
それも何も鍛えていない、運動したことも無いような一般市民がだ。強すぎるだろこの世界の人類。
貧弱と認定されたおれではあるが、今の年齢から丁寧に鍛えていけば、一般的な海賊程度には動けるようになるだろう、とのお父様達の見立てだった。
その一般的、お父様達の基準なのでどの程度かおれにはわからないのが難点だ。目標が遠すぎて霞んで見えないぞ?
「おわっ、たぁー……腹攣りそう」
「腹筋五十回でなに言ってんだよい」
「一月で十回から増えたんだからいいでしょ」
基礎と覇気の総量は地道なトレーニングで作り上げるしかない。幸いと言っていいのか、波紋法によって傷ついた筋肉が治療できるため、お父様がおれに言い渡す一日にこなすべき量は日に日に増やされている。お父様の鬼コーチめ。
他にもモビー・ディックの船上を使用した立体鬼ごっこで隊長格のみんなから追いかけられたり、船内で手が空いた船員VSおれのかくれんぼをしたり、近接格闘の手合わせをしたりと、みっちり鍛えられている。
勝敗?
かくれんぼは兎も角、他はおれの負けに決まってるだろう。
たまに絵を描く時間や曲を弾く時間を取ってくれるため、おれもなんとかめげずに続けられている。
なんか、みんなに完全におれの生態を把握された気がするな。
「お、休憩か?」
「休憩はまだ先だ、後百回」
「うぇー、増えた」
「もうハモンで治してンだろい。後百回すれば今日の分は終わりだ」
イゾウさんが甲板で寝転がるおれを見つけてからりと笑う。
あっさり回数を追加するお父様は本当に鬼コーチだと思う。確かに波紋で既に回復しているけど。
おれが腹筋をひいひい再開するところを眺めていたイゾウさんは、徐にお父様に話しかけた。
「マルコ、午後の訓練時間をおれが貰ってもいいか?」
「えっ、また追加くるの?」
「今度は座学だな。銃について教えようと思ってなァ」
更なる追加におれが文句を言うと、安心しろとばかりにイゾウさんは笑うけど、追加されている事実に違いはないんですが。
おれは前世でギャングのボスだった時期もあるから一通り銃は触ったし学んだけど、この世界で普及しているのはフリントロック式。
あの時代だと骨董品すぎて、現存している物はほぼ博物館か美術館のガラスの向こうだ。おれが触れる機会は当然なかった。
「ヘーマの身体能力が育つまで船から出さないのもな。覇気は実践で使えるレベルなんだ、銃が使えれば弾に覇気を纏わせて攻撃できる」
「あ、それなんだけど」
腹筋運動を止めたおれにお父様の視線が刺さるが、とりあえず話を聞いてほしい。
「おれの能力で出した弾というか武器、覇気を纏った状態に近いみたい」
「「……は?」」
言葉を理解できていない二人に、赤髪海賊団から回収したピクテル製の武器を取り出して渡す。
彼等にあげようと思ったんだけど、この武器に頼っていては強くなれねぇ、って返却されたものだ。
ピクテルから武器を受け取った二人は、みるみるうちに険しい表情になっていく。うわ。
「──ヘーマ、これを知ってンのは?」
「赤髪海賊団だけだよ。いらないって返されちゃった」
「そうか。これ以上知るヤツを増やすな、この船の家族でもだ」
え、と声を漏らしたおれの傍にお父様は座り込む。イゾウさんも同じように座り、声を潜めて言った。
「ヘーマは変態過ぎるスピードで覇気を習得したからわからねェかもしれねェが」
「ひどくない?」
「いいから聞け。本来、覇気は秘匿された技術だ」
「使える奴は軒並み新世界の住人、海軍でも中将に昇格する条件らしいよい。非常に有用性が高いにも関わらず、広まらない理由の一つに習得の難易度がある」
お父様は三本の指を立てた。
「覇気を覚える方法は三つ。一つ目は先天的に目覚めていた場合。二つ目は強い精神的なショックで目覚めた場合。最後は長い年月をかけた修練だ」
「どんなに才能がある奴でも、目覚めたばかりはコントロールができねェ。安定して覇気を使えるようになるには年単位……下手すりゃ数十年単位の修行が必須だ」
「そっか……おれの出した武器は、覇気の習得に必要な時間と技術を上げ底できる」
「そういうこった。お前が創る武器や防具さえあれば、覇気を使えねェ兵士でも数を集めりゃ脅威になる」
知ったのが赤髪達でなけりゃ、早々に始末にいかなきゃいけねェところだよい。
真顔でそんなことを言う二人の声に嘘はなかった。おれは友だちをまた意図せず窮地に陥れていたらしい。今度あったときは土下座して謝ろう。
「でも家族でもダメなの?」
「勿論オヤジには報告するけどな。
家族を売る奴はこの船にいねェが、全員が覇気を高度に使えるほど強くはねえよい。捕まればあっさり見聞色で読み取られる可能性がある」
あ、なるほどその可能性が。怖いな見聞色の覇気、尋問にも使えるってことか。
内心の言葉まで正確に読み取れる使い手は多くはないけど、出くわさない可能性がゼロでは無い以上、秘匿する必要があるとのことだった。
おれに高値が付く理由がまた増えたなァ……。
改めて今生のおれ、前よりハードモードだなあ、とおれの目も遠くなるというものだ。
「まあ、どちらにしろ銃の知識はあった方がいいな。覇気を纏わせる訓練と併せてやるか」
「どんどんトレーニング量が増えていくぅ……」
「言っておくが、自業自得だよい」
ほら腹筋残ってンだろい、とトンと正面から胸を押されておれは床に転がった。
***
「まったく、自覚がないのもある意味問題だよなァ」
昼食の後、イゾウに担がれて連れていかれるヘーマの姿。丁度食堂に居合わせた海賊達は、それをそれぞれニヤニヤと笑いながら見送っていた。
サッチは自身の食事に手を付けながら、隣に座るマルコに声をかける。
「あの新しい技術を習得するセンスと身体の動かし方の巧さは天性のもんだ。
いまは平均以下の身体能力しかねェとはいえ、ヘーマはまだ九歳。鍛えれば鍛えるほど強くなれる年なうえに、ハモンってやつによる回復からの戦闘継続力。
──将来確実に化けるぜ」
「本人がやる気になればな」
顎の髭を擦りながらヘーマを思い浮かべて笑うサッチに、マルコは手に持っていたコップを机に置きながら否定した。
「アイツは相手に勝つことに拘らねェ。闘争心ってやつが欠けてンだよい」
「そうか? 前に海獣に向かって行っただろ」
「あれは相当感情が振り切れていたからだな。逆に言えば、そこまで怒らねェと殴ることすらやらねェよい」
「……トラウマか?」
マルコが拾ったばかりのヘーマの姿を思い浮かべて、サッチは顔を顰めた。
意識を失ったヘーマがイゾウに抱えられて医務室に来たとき、サッチも偶々その場にいたから知っている。
執着すら感じ取れるほど執拗に殴られていた小さな身体は、痣で肌の色も判らないほどだった。
ガリガリの子どもを殴る輩に同意は出来そうにないが、ヘーマは覇王色にさえ耐えた子どもだ。その片鱗を感じ取ってその野郎は脅えたのかもしれねぇな、とサッチは仮想の男の小ささを哀れんだ。
「いや、違ェだろい。力で押さえつけられた奴が解放されたとき、反発で攻撃的な性格になるか、萎縮した性格になるかのどっちかになりやすいが……あれは元々の性質だろうねい」
だがその経験がヘーマの枷になっているかと口にすれば、違うとマルコは首を横に振る。
争いを嫌う性質は、この海では生きづらいだろうと。
「でもよ、それでも真面目に鍛錬はしてんだろ? ならいざというときに困らねェようにおれからも仕込んでおくか」
「ナイフか?」
「いや料理」
「……また時間がかかりそうなもンを」
重くなった空気を祓うようにサッチは声を明るくする。まだまだヘーマのレベルが低いため、鍛練の日々は続くと予想される。
しかしそれを踏まえても学習内容が長期を見据えた内容であることを、マルコに呆れた顔で指摘され、サッチは頬を掻いて誤魔化した。
***
天気は晴。無風ではなく嵐でもない航海には丁度良い風。そんな海の上をおれは一人で目的地を目指していた。
ある程度の身体能力と荒事対応能力をテストされ。
手配書から学ぶ避けるべき海賊知識についてテストされ。
海軍の有名海兵についてテストされ。
野外料理の使用できる食材の知識と調理の手際をテストされ。
……テストばかりだが、それだけ心配をかけたということなのでおれは黙々とこなした。
自由にさせた途端、鉄火場に巻き込まれていれば、おれだって心配するし外に出そうとしないだろう。
ならもっと知識と技術を付けさせようとしてくれるだけ、白ひげ海賊団の皆は本当に優しいと思う。
そんな関門をくぐり抜けて、晴れて再外出の許可を得たおれは、意気揚々と目的地に向かっているのだった。
「良い天気だなぁ、ピーコ」
「ピィ」
おれが座っているのは、人力車の車輪を無くしたような宙に浮かぶ座席。返事をしたのは前におれをさらった大鳥をモデルにしたゴーレムのピーコ。
バサバサと力強く飛ぶピーコに引っ張られて、おれ達は大空を移動していた。
これを作り出すことになったのは、おれが今後定期船を利用することが難しいと判断されたことだった。
一人で行動していた時の画家としての活動が一部の富裕層で有名になったそうで、裏でおれの捜索がされていたらしい。
この裏というところがポイントな。
真っ当な理由で探されておらず、かつ強引な手段でおれを捕まえるために情報を集めていたということだ。
つまり、絵を評価されて軟禁して描かせるために探しているか、おれの容姿が評価されて欲しがられているかという二択。
またおれの人生の難易度が上がっている。とうとう一般市民として生きる道がなくなったな。
もはや定期船で一人乗船するのは人攫いを呼び集めるようなもの。しかし一人で船を操って行けるほどの航海術を身につけるには、更なる時間が必要となる。
このままでは大人になるまで外に出られないかもしれんと、おれはなにか方法は無いかと必死に考えた。
その結果が今の空飛ぶ人力車、もとい鳥力車チェーロ・リベルタ号である。いまは車輪は付いてないけど後付けは可能です。
素材に強化プラスチックを使用しているので軽く、かつ覇気を纏った状態と同等という特性により、内部が空洞にも関わらず強度は充分に保てている。
座席の下にキャンバスを差し込む場所があり、それで浮力を得ているのだが、推力も自力となるとおれの消耗が激しくなる。
なら動物型ゴーレムをと考えて、子ども一人を軽々とさらって、かつ北の海から新世界まで飛ぶ体力を持つあの大鳥が最適ではないかと思いついた。
実際に準備して飛んでみたところ、とても速くそして力強く飛んでいくことが確認でき、ピーコに決定したのだった。
最初にネコ〇スなら色々快適じゃないかと考えて、出せるかと試そうとしたがピクテルに止められた。やっぱり特殊な能力を持った生き物は、ゴーレムとしても出せないらしい。
スケッチブックから出したリンゴを埋めてみても芽は出ないもんなァ。ダメかぁ……。
泣く泣く諦めて移動手段を作り上げたおれの実験を見学していた皆が、おれも乗りたいと次々に言い出した。気持ちはわかる。流石に重量制限と人数制限をかけさせてもらったけど。
いまのおれに百キロ超えは浮かせられないです。おじい様がちょっと気落ちしていたから、後々頑張るけども。まだ待ってね。
そんなこんなで移動方法についてもクリアし、ようやくおれは外出できるようになったのである。よく半年でクリアしたものだと思う。
そして、いまおれが向かっている場所は、見応えがある景色があるような場所じゃあない。なのに行き先に決めた理由は、前々世のミーハー心によるものだ。
原作主人公の故郷、東の海にあるフーシャ村。
この世界に生まれたからには、一度は目にしておきたい、そして絵を描きたい。主人公の幼少期を描けるって貴重すぎる。
期待に胸を膨らませながら、フーシャ村があるゴア王国を目指して空を進むチェーロ・リベルタ号の上で、おれは当の王国についての資料を取り出して読む。
街並みは綺麗に整っているが、評判はあまりよくない。身分の上下が非常に厳しく、階級が下の者は上位者に絶対逆らってはいけないという。
さらには王都を囲むようにゴミ捨て場があり、そこには街に住めない貧しい者やならず者の住処となっているらしい。ようはスラムだろう。思ってたより主人公の故郷が治安悪そう。
うん、おれは王都には近づかない方がいいな。貴族がらみで面倒なことになるのが目に見えている。絶対にフーシャ村から出ないようにしよう。
固く決意して資料をスケッチブックにしまう。段々近づいてくる島の、王都側ではない方へ回り込むようにチェーロ・リベルタ号は進んだ。
「あ。見覚えがある船だと思ったら、レッドフォース号か」
回り込んだ先、村の建物らしき建築物が並ぶ前に、ドラゴンをデフォルメした船首の船が停泊していた。ちょうど赤髪海賊団が休んでいる時期に被ったみたいだ。
いいタイミングだったと自画自賛しつつ、船着き場に近寄っていくとなにやら建物が集まっている辺りで、シャンクスさん達が慌てているのがわかった。
はて、と高度を下げていくと陸地の方からなにやら走ってくる人影がいる。
ダボッとした服を着たその人物は、焦った顔で抵抗している子どもを小脇に抱え、その口を押さえて──あ?
おれはチェーロ・リベルタ号から飛び降り、男の進行方向である桟橋の端に着地する。
突然現れたおれに男が驚いて足を止めた隙に、一気に接近して男の腹に手を当てた。
「ギャッ!?」
「いてっ!」
男はビクンと身体を跳ねさせ、その場に崩れるように背中から倒れた。男に抱えられていた子どもは、そのまま落下して尻もちをつき、声を上げている。
あ、受け止めればよかったな。
「ごめん、配慮が足らなかった。大丈夫?」
「うん、ちょっと痛かったけど」
座り込んだ子ども、少年に手を伸ばすと首を横に振ってからおれの手を掴んだ。そのまま引き揚げてやると、少年はジッと気絶して白目をむいている男を見下ろしている。
少年の扱いがひどかった為、咄嗟に波紋で意識を飛ばしたけど、まさか保護者とかそういうのじゃあないだろうな?
「気絶させたのは拙かったかな?」
「いいや! コイツ山賊だからいいんだ! 賞金首だって言ってたし」
「おっと思ったより悪党」
問答無用で意識を飛ばしたので、これで勘違いだったら謝り倒そうと思っていたけど、良心の呵責に苛まれることは防げたらしい。
土塗れの少年の服をはたき、濡れたハンカチを取り出して顔を拭く。擦り傷が染みるのか、いてて、と涙目になっている。
ごめんな、傷口を綺麗に洗ったら治してやるからな。
「よし、ある程度綺麗になったけど、後でちゃんと消毒しような」
「しみるのはいやだ!」
「バイキンが入ると傷口から食べられちゃうぞ」
「え~~!?」
例えに怯えた少年におれは笑い、彼の小さい手を繋ぐ。キョトンとした顔を浮かべた少年だったが、すぐにニカッと笑った。
笑顔が無邪気で眩しい。
「たすけてくれてありがとう!」
「いいえ、どういたしまして。あのまま海に出てたら大変なことになってたしね」
「たいへん?」
首を傾げる少年に見えるように、海の向こうを指差す。
しばらく二人で海を見ていると、離れた場所の海面から大きな影がザバァ、と水飛沫を上げて出てきた。
あれは海獣かなぁ?
「なんだアレ!? デケェ!」
「多分、この近くをナワバリにしてるんじゃないかな。
島の近くには来ないみたいだけど、あの辺りまで行ったら船が大きくないと丸ごと食べられちゃうね」
「丸ごと……」
「痛いだろうし、怖いだろうし、無傷で丸呑みされたとしても、息が出来なくて苦しいと思うよ」
「息ができねぇのか!?」
やっべ、反応が良すぎてやり過ぎたかもしれん。涙目でプルプル震え出した少年の頭を撫でる。
「まあ、食べられたらの話だよ。少年がアイツを倒せるほど強くなれば問題ない」
「! そっか!」
おれの言葉に嬉しそうに笑う少年。いやこの子可愛いな?
反応が素直、喜怒哀楽がハッキリしているタイプだろう。
「ルフィ~~!!」
「あ、シャンクス」
「見つけたァ~~!!」
遠くからドドドドと音を立てて走ってくる見知った顔の叫んだ内容に、おれは顔が引きつりそうになった。
「少年……きみ、ルフィっていうの?」
「うん、おれルフィだ」
「そう……おれはヘーマだよ」
「ヘーマだな!」
ルフィ少年とのんびりと会話しながら、おれは自分のやらかしたことに冷や汗を流していた。
そうか、そうだったな。あの赤いベストが印象に残っていたけど、小さい頃からその服ってわけはないよな。よく見ると目元に縫った傷がある。
原作で主人公の原点となるだろうキーイベント、無自覚に潰したっぽいんだけど。
どうしよう。