群青色を押し花に   作:保泉

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隠されたルーツ

 

 

 結局昼食を食べ終わった後、おれ達はその場でエースくんと別れた。捕まえているイノシシの処理のこともあったしね。

 残念ながらエースくんは最後までおれの提案に首を縦に振らなかったから、日付の変わった今日はお家に突撃しようと思っている。

 

「エースくんのところに行くけど付いてきたい人!」

「はい!」

「はーい!」

「ハーイ」

 

 楽しそうに手を上げる子どもたちに、なんでか一人大人が混じっているんだけど。おれが胡乱な目を向けると晴れやかに笑い返してくる。

 

「シャンクスさんも来るの?」

「おう、もちろんだ」

 

 そんなに船を離れていていいのか船長と思ったが、航海の間の休憩期間であるし暇なのかもしれないと納得した。

 

 同行メンバーは決定したけれど、彼に会いに行くにあたっていくつか問題点があったりする。

 

 一つ目、エースくんから了承を取れていないこと。

 二つ目、前日会ったばかりの人間から家を特定される恐怖を与えること。

 三つ目、海賊が知り合ったばかりの子どもの家に押し掛けること。

 

 問題点を並べるとこう、完全にアウトな雰囲気が出てくるな。ここが前世だったら確実に警察を呼ばれる事態である。

 一応、手土産のクッキーを持っていくつもりではあるが……それがどれだけ緩衝材になるかはわからない、というか焼け石に水レベルで効果がないと思う。不審者が持ってきた飲食物ってだけで危険な香りがするし。

 

 だが、おれは毛頭諦めるつもりはない。待ってろ未来のおれの弟。

 

「今回は山の中を結構歩くよ。エースの住処の当たりは付いているから、頑張って付いてきてね。そんなに道は荒くないから」

「えっ、ヘーマはエースの家知ってるのか?」

「コルボ山にある炊事の煙が出ている家なら」

 

 ルフィくんの疑問におれは頷く。昨日思い出したんだけど、おれがこのドーン島付近に到着したとき、コルボ山の山中からうっすらと煙が出ていたんだよね。

 エースくんがコルボ山に住んでいるなら、無計画に山を歩き回るよりもまずその家に行ってみようかと思い立ったわけだ。

 

「でも、あてが外れたらコルボ山探索になるぞ。各自配った水筒はちゃんと持っているね。水は計画的に飲むようにな」

「はい隊長、計画的にってつまりどういうこと?」

「良い質問だ、ウタ隊員。喉が渇いたなって思ったら一口分だけ口に含んで、ゆっくり飲み込むように」

「ジュ~~~、ゴク。わかった!」

「飲み過ぎだアホ」

「なんでもう飲んでるの……」

 

 出発前に既に水を飲み始めていたルフィくんの頭を、シャンクスさんが軽くチョップする。この分だと早々に彼が持つ水がなくなりそうだな、とスケッチブックの中に水の入った小樽を用意した自分の判断を褒めた。

 

 そして山道を歩くこと数十分、今は見つけた山の中の家の前に立っている。なんとフーシャ村からとても行きやすい道が出来ていた。もしかして交流があったりする?

 

 いやしかし、これどうやってエースくんを呼ぼうかな。家の立地を見るに、完全に隠れるように建っているんだがこの家。知らない人間がノックしたら、ドアが開いた瞬間に撃たれたりするかもしれない。

 ここまで来て悩んでいるおれの隣をすり抜けて、ルフィくんがコンコンとドアをノックする。躊躇は。

 

「こんにちは、おれルフィ! エースいますか!」

 

 元気な挨拶だな。大変よろしい。

 

「……何だこのガキは」

「ルフィだ」

「さっき聞いたよ! なんでガキがこんな山奥の家を訪ねてきてんだって言ってンだよ!」

「エースいるか?」

「会話を成り立たせるつもりあんのかい!? 話を聞けこのクソガキ!!」

「まーまー、お頭落ち着いて。相手はガキですよぅ」

 

 中から出てきたのは大柄な中年女性と、苛立つ彼女をなだめる髭の男性と小柄な男性。第一印象は一般的な職業じゃないな、というものだった。やはり隠れ住んでいるのか、ちらりとおれ達の身なりを確認している。

 そろそろ話しかけてもいいかな?

 

「コント中すみません」

「コントじゃねェよ!!」

 

 おっと失礼。つい本音が漏れた。

 

「エースくんはご在宅ですか?」

「……アイツに一体何の用だ」

 

 ルフィくんとは打って変わって警戒を露わにする女性にはて、と首を傾げる。この場にはシャンクスさんもいるのに、どうしておれに対して警戒をするのか。

 

 おれにとってこの世界で悪人を見分けるわかりやすい方法として、初対面の時の反応がある。大抵の人間はおれの顔に見惚れてぼーっとする。報道やファッション関係だと見惚れながら凄い熱量で話しかけてくる。美人だなと笑い飛ばす人が少しと、後は何に利用できるかと値踏みをしてくる奴ら。

 人さらいはその中でもっともわかりやすい。不快なことに、高く売れそうだと欲で目が輝くからね。

 

 この家の住人の反応は、その中のどれでもないレアケースだ。珍しすぎる。

 

「昨日イノシシを追っている彼と出会いまして。話の流れで身体の動かし方を教えると伝えたのですが……不在でしょうか?」

「ああ居ねェよ。この家に寄りつくのは寝るとき位だ」

 

 つっけんどんな女性の応対に、なんというか、こう、言葉を切り捨てられていると感じる。とっとと帰れと全身で意思表示されていて、おれとしては初対面でここまで敵意を向けられることが珍しいから、どういう反応すればいいのか困惑するな。

 

 そんなおれの背後に近づいていたシャンクスさんが、首根っこを掴んで宙づりにした。いったい何事。

 

「あー、すまんな、警戒させてしまったみたいだ」

「おわ、ちょ、揺らすのはタンマ」

「一旦引くぞ、ヘーマ。アポイントも取ってないんだ、これ以上は無礼だろう」

 

 おれを宙吊りにしたままシャンクスさんは、そのまま来た道を戻ろうとしている。まって、せめてこのクッキーは謝罪で渡させてほしいんだけど!

 どうにかクッキーの包みをアピールして地面に降ろしてもらい、おれはお頭と呼ばれた女性にそれを差し出した。

 

「あのお姉さん、突然訪問してすみませんでした。よろしければこのクッキーを召し上がってください」

「お姉さん!?」

「お頭が!? 目がおかしくニーか!?」

「蹴り飛ばすぞ」

 

 ああ、おれの一言でまた余計な被害が。宣言通り蹴っ飛ばされて地面に伏せる小柄な男性に黙祷する。でもレディだと堅苦しいからお姉さんにしたんだが、そんなに驚くことか?

 ……あっ、おれの年齢だと珍しいか。

 

「あとエースくんに伝言をお願いしたい」

「……言うだけ言ってみな」

「明日、伝説の海賊について聞きたいなら、昨日会った場所までおいで、と」

「「「!?」」」

 

 息を飲んだ彼等に一礼し、おれはルフィくん達の後に続いた。後頭部にめっちゃ視線を感じるけど、振り返らない方が良さそう。なんか更に警戒される気がする。

 

 

 山を降っている最中、シャンクスさんから何か言いたげな感情が刺さってくるのが正直鬱陶しい。振り向いたら負けな気がしてフーシャ村まで耐えていると、子ども達の保護者がヤソップさん達に交代していた。

 

 対しておれはまたシャンクスさんに襟首を吊られてレッド・フォース号へ連行されている。おれが無視していたから強硬手段に出やがった。わざわざ場所を変えるなんて、子ども達には聞かせたくない話なのだろうか。

 だが、おれにジュースの入ったコップを渡すなり、ベックさんも席を外した。一体何を聞かれるんだと戦々恐々としていると、山での話だがとシャンクスさんが口火を切った。

 

「ヘーマが言っていた伝説の海賊ってのは」

「おじい様だけど」

「だよなァ……」

 

 おれが答えるとシャンクスさんは頭を抱えてしまった。一体どうしたっていうんだ。おれが話せる海賊なんて白ひげ海賊団か赤髪海賊団だけ。

 将来エースくんが入るかもしれないから、おじい様についてプレゼンしておこうと思ったんだが、なにかまずいことでもあるのだろうか?

 

 ──いや、そうではない。

 おれがエースくんに話す人物がおじい様以外である可能性があるから、シャンクスさんは確認したのだ。それはつまり、その人物についてエースくんが関連しているとシャンクスさんは確信をもっているということ。

 

「シャンクスさん、エースくんについて何か知ってるの」

「……」

 

 問いに返ってきたのは沈黙だった。言いたくないのか言えないのかはわからないけど、今シャンクスさんはエースくんを『気遣って』いる。

 コミュニケーション能力の高い気さくな彼とはいえ、これは明らかに不自然だ。昨日会ったばかりの初対面の相手を、おれから守ろうとしているのだから。

 

 それくらい、エースくんに関連する何かはシャンクスさんにとって重要であり、それに関連する単語が『伝説の海賊』だと。

 

 伝説と呼ばれる大海賊は複数存在するが、おじい様に匹敵する海賊となれば数は減る。その中でも世界に大きな影響を与えた者と言えば、頭を悩ます必要すらない。

 

「ゴールド・ロジャー。それがエースくんに──」

「ヘーマ」

 

 関係することなのかと続けようとしたおれの口を、シャンクスさんは手の平で物理的に塞いだ。

 

「それ以上はだめだ」

 

 声を小さく抑えたシャンクスさんに、おれはこくりと頷いた。

 

 おれが一人旅を始める前、世界の常識を学んでいるときに十年ほど前に海軍が起こした悲劇を教わった。処刑されたゴールド・ロジャーの血を絶やすため、彼が処刑される前に目撃された南の海で『妊婦狩り』が行われたらしい。

 投獄から十か月以内に生まれた赤ん坊とその母親は調べられ、父親の証明ができない者が命を奪われた事件は、南の海以外では伏せられているという。

 

 もしエースくんがゴールド・ロジャーに縁があるとしたら、それだけで命を奪われる可能性がある。だからこそ、あの家の人達はおれを警戒していたのだろう。身なりや所作の整ったおれが、貴族である可能性があったから。

 

「まいったな、おれ警戒される言動しかしてないや。丁寧な所作で悪印象を持たれたのは初めてだよ」

「……そうだな」

「こりゃ伝言も伝えてくれないかもなァ。まあ、おれは待ってるけど」

 

 おれは絵を描いていればいいから、時間つぶしはできるし、着色でなければ周囲を警戒しておける。待つことのデメリットは無いに等しい。

 気楽に明日からの計画を立てていると、随分と肩入れをするなとシャンクスさんは目を細めて言う。それはシャンクスさんも同じだろうに。

 

「いいや、おれは恩を返すため──つまりは自分のためだ。ヘーマは初対面の相手だろう」

 

 彼の指摘におれは目を伏せた。そうだな、昨日はじめてエースくんに会ったのは間違いない。ずっと前から、それこそ生まれる前から知っていたけれど。

 でも、彼があんな目をしているなんてこと、おれは知らなかった。

 ルフィくんに笑いかける兄としての姿が全てじゃないことを、あの漫画のシーンの最中も彼を構成する大部分は、子どもである今と変わらないことをおれは気づいてしまったから。

 

「自分はいらないものだったと思い知る絶望を、おれは知っている」

「……」

 

 おれの今生の記憶は、みんなに話していないだけで少し思い出していることがある。

 例えば穏やかに笑う母親らしき人と、それを蕩けるような目で見つめる父親らしき人物の光景。

 例えば縋るように手を伸ばすおれを一瞥すらもせず、アタッシュケース片手に歩き去る父親らしき人物の後ろ姿。

 

 そして、父親に売られたと理解したときの、信じていたものが崩れ去る感覚。

 

 旅に出て一人で行動している時に思い出してよかった。泣き叫びながら起きたおれの姿を、家族にだって知られたくはない。

 

「そしておれはエースからその感情を読み取った。だからこそ、放っておけない」

 

 隠されて育ったのなら、血縁者についてなんてエースにも伏せるのが当然だ。だがもしかしたら彼は、自分のルーツについて知ってしまったのかもしれない。

 世間に蔓延しているのは犯罪者としての姿だけで、海賊王の人となりなんて話題に上がるはずもない。ましてやこの格差社会のゴア王国ならより偏見に晒されるに違いない。

 

 誰もが心無い言葉を平気で発言するだろう──ああ死んでよかった、と。

 それを耳にした誰かが傷つくなんてこと、想像すらしない筈だ。

 

「止められてもおれはエースをかまうよ」

 

 気付いてしまえば、知ってしまえば目を逸らすなんてできなかった。かつての時は何も出来なかったからこそ、手を伸ばしてやりたかった。代償行為だからなんだ、おれがエースにやってあげたいと思って何が悪い。

 睨みつけるおれを、シャンクスさんは無言で見返していたけれど、すぐに口元を緩めて微笑んだ。

 

「別に止める気はないさ。ただ、気を付けてくれと言いたかっただけだ」

「そう?」

 

 うそつき、とおれはシャンクスさんを内心でなじる。もし興味本位で近づいたのなら、力づくでもおれを止めたくせに。

 おれの視線を受けてシャンクスさんはコップを手に取りニコッと笑う。追及させるつもりはないらしい。本当にこの人は、とてもわかりやすいと同時に内心を読ませようとしない。ふん、そっちがそういうつもりなら、おれにだって考えがある。

 

「で、シャンクスさんは海賊王の隠し子とか?」

「ぶふっ!?」

 

 彼が飲み込むタイミングを見計らって聞いてみれば、イイ感じに気管に入ったのかシャンクスさんは盛大に噎せた。やったぜ。

 

「処刑されたときは五十三歳だったらしいし、シャンクスさんって確か二十七だっけ? 当時十五歳くらい? 三十八のときに出来た子どもと考えたら不自然じゃないよな」

「ゴホッ、ゲホッ……どうして隠し子なんて思ったんだ」

「どうしてって、あれだけ家族を思う顔をしていれば気づくよ」

 

 昨日から今日まで、シャンクスさんがエースを見る熱量の正体が解らなかったけど、ようやく確信したのはさっき沈黙していたとき。

 

 前世でギャングのボスなんて職業に就いていた時、実地研修で現場に乗り込まされたことがある。その時は口を割らない敵対組織に対する尋問を見学していただけだったが、その時のそいつの表情にそっくりだった。

 何があっても身内の秘密を守ろうとする、覚悟を決めている顔。まあ、多分シャンクスさんもおれと同じようなんだろう。

 

「まあ、隠し子は冗談だけど。それならもっとエースにがっつりかまうだろうし」

「お前の見聞色はこわいなァ……」

「そう? 心の中が全部わかる程じゃないし、機嫌がいいとか悪いとかくらいだぞ」

「そこから分析していくだろうが」

「観察ってそういうもんだろ」

 

 絵を描くときは大抵そうしてると告げれば、お前は本当に絵が中心だなと笑われた。何を今更。

 さて、明日にまた山に行くとしてだ。流石に三日連続でルフィくんを連れ出すことは、村長さんが許さないかもしれない。

 

「時間がかかるだろうし、明日は一人で行こうかな」

「やめとけやめとけ、絶対後から付いてくるぞ」

「そーだね……」

 

 置いてくなんてずりぃ! ……とぷんすか怒るルフィくんが目に浮かぶようだ。あの子下手すれば迷子になる可能性がある、連れていった方が簡単かもしれない。

 ウタもルフィくんが行くなら付いていくだろうし、ならシャンクスさんも一緒になるな。

 結局メンバー全員参加することになるため、おれは暇つぶしのプランを練ることになった。

 

 

***

 

 

「賞金額十億の海賊に会ったァ!?」

「おい、声がデケェって!」

「あ、悪ィ」

 

 ゴア王国のゴミ捨て場である『不確かな物の終着駅(グレイターミナル)』。その端からそれほど離れていない巨木の上に、二人の少年がいた。一人はエース、もう一人はサボという帽子を被った短髪の少年で、今はエースが持ってきた手配書を二人で覗き込んでいる。

 

 待ち合わせた場所には現れたものの、様子が可笑しいエースをサボが問いただした結果、ポケットから取り出した手配書と話の内容に、サボは思わず声を大きくした。 すぐにエースに注意されて声を潜め、キョロキョロと辺りを見回して誰もいないことを確認する。

 胸を撫でおろし、枝に腰を下ろした二人はあらためて手配書に視線を戻した。

 

「ダダンの新聞を漁って見つけた。……やっぱり間違いねェ、コイツだ」

「会ったのはコルボ山だろ? なんで海賊が山に来てるんだよ」

「ハイキング」

「それこそ海賊がやることじゃねェ……」

 

 手配書に印刷された赤い髪の男を凝視するサボだったが、いくら見ても海賊とハイキングはイコールで繋がらない。困惑する親友にエースも重々しく頷くが、重要なのはそこじゃないと昨日の出来事の続きを話し始めた。

 

「──そこでおれは身体の使い方を教えてやろうかとテイアンされた」

「ツッコミどころがありすぎて逆にわからねェ。初対面の相手にやけに親切だけど……罠じゃねェのか?」

「だから悩んでんだ」

 

 ぼんやりしていたら全て奪われる場所に生きる少年たちは、無償の善意など触れたことがない。だからこそ見知らぬ海賊の言葉を、何が狙いなのかと彼らは訝しんでいた。

 

「十億の海賊が言ってることだからな、流石に鵜呑みにはできねェか」

「ん? あー、違う。言ったのは俺らと変わらねェ年のヤツだ」

「は?」

「ソイツも海賊らしい。十億のヤツとは別の海賊団らしいけどよ」

 

 エースに手配書を返したサボは、口を丸く開けたまま固まる。同い年くらいの子どもがすでに海賊となっていることは、彼に大きな衝撃を与えていた。

 いや、とサボは子どもの海賊はありえるとすぐに考え直した。仮に親が海賊であったのなら、その船で見習いをしていることはおかしくない。だが、そんな相手から指南を受けたとして、どれだけの事が教われるのかとサボは疑問に思い、エースにそれを指摘する。

 

「おれもそこが引っ掛かってたんだが、話がウソじゃねェならアイツは一人で海に出てこの国まで生き延びてる。その程度の強さは持ってる筈だ」

「なるほど……少なくとも知識はおれ達よりはあるってことか」

 

 それは罠だと一蹴するには魅力的すぎる話であると、エースが悩んでいた理由が分かったサボは、ニカッと笑った。

 

「よしわかった、おれも付いていく」

「サボ」

「エースひとりじゃ丸め込まれそうだしな」

「……助かる」

「気にすんなって。それに、おれも海賊の知識に興味があるし」

 

 このゴミ山で聞きかじった話と実際の海賊の話は、それこそ天と地ほどの差があると少年達も理解している。

 千載一遇のチャンスを掴むため──もし騙されるような事があれば報復する決意も抱いて、彼らは伝言で受けた場所へ向かった。

 

「おっ、ルフィくん上手いな。そうそう、芋の大きさが揃うように切ってね」

「おう!」

「シャンクスさん、火が付いたら鍋にこの油を入れてニンニク炒めてほしい」

「まかせとけ」

「ウタは……玉ねぎ刻んでくれてありがとう。はい、おしぼり」

「涙が止まらないよ……!」

 

 向かった先の開けた場所で、テントまで立てて暢気にキャンプを始めている奴らを見つけ、ここに来たのは早まったかとエースとサボは悩んだ。

 

「──何してんだ、お前ら」

「あっ、エース!」

「こんにちはエース!」

「よお、きたか」

「もうすぐ昼飯できるから食べるだろ?」

「……食うけどよ」

 

 結果、無駄足になることを嫌がったエースが声を掛ければ、全員にこやかに返事をしてきたため、エースは妙な圧力を感じて思わず怯む。親友がガッツリペースを握られている様子を見て、サボは押しが強い奴らだなと絡まれるエースを憐れみの目で見た。

 そんな彼に気づいた子ども──どう見ても貴族の息子にしか見えない少年が、美しい顔に柔らかくも華やかな笑みを浮かべるのを見て、本当に海賊なんだろうなと親友を疑ったサボであった。

 

「君はエースの友人かな? 一緒にどうだ?」

「…………わかった、もらう」

 

 まあ、付いていくと言ったのはおれだしなぁ、とサボは何故か素直に手を引かれているエースの後に続いた。

 

 

 

 

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