群青色を押し花に   作:保泉

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視界いっぱいの脅威

 

 

「じゃあ、今はこの海の森に住んでるんだ」

「ああ。元々研究の為に住んでるヤツがいてな。同居こそしていねェがご近所さんってやつもいるから、会話相手に困りはしねェな」

 

 再会直後に間抜けなやりとりはしたものの、海の森の一角にシャボンを設置して、その中にテーブルと椅子をスケッチブックから取り出して置いていく。

 大きな丸いテーブルを囲むように座って、おれ達はお菓子を摘まみながら久しぶりの会話を楽しんでいた。まだ昼だし、お子様のおれがいるからアルコールなしのお茶会だけど。夜になったら宴会する予定だ。

 

「そうそう新聞でさ、ジンベエさんが七武海に就任したって書いてあって驚いたよ。タイヨウの海賊団船長ってなってるしさ、タイガーさんどうした、って」

「ま、そう思うわなァ」

「やっぱりよ、世界政府からリュウグウ王国へ来る圧力が強くなったか?」

 

 ドーン島に滞在していた時に、ダダンさんが購入している世界経済新聞に載っていた内容は、おれ達の針路を魚人島に設定することになった。

 世界政府に対する抵抗勢力として目の敵にされていたタイヨウの海賊団が降った理由は、それこそリュウグウ王国自体に悪影響を及ぼしたからだろう、と予想はできていたけど。

 

「その通りだ。おれが船長である限りこの悪化は止められねェ、そこでおれは引退して後をジンベエに継がせたんだ。おれじゃなければ世界政府に所属することもできるからな」

 

 タイガーさんは世界政府から狙われ続けることはきっと構わないんだろう。ただ優しい人だから、リュウグウ王国の国民が巻き込まれるのを嫌がったんだろうな。

 

「一部の奴らは政府の下に付きたくねェって出て行っちまったが……」

「アーロンとか?」

「元々アイツと一緒に海賊をしていた連中もだ。どうやら元気でやってるらしい、こんな手紙がきた」

 

 彼が懐から取りだした手紙を見せて貰う。なになに、東の海(イースト・ブルー)でコノミ諸島の住人達と意気投合し、ある村の近くに拠点を作って漁や木工の仕事で暮らしていると。

 ミカンが美味い果樹園の主によく仕事を手伝わさせられると書いてあるけど……なあ、これってどう考えても原作のナミの故郷じゃないの。彼らがあの村に辿り着くのは、どんだけ強固な運命だというのか。

 

「なんだ、元気そうじゃねェか!」

「うん、偏見の少ない場所を見つけたのかな」

 

 でもなんか住民と仲が良さそうっていうか、エレジアで資金稼ぎにやってたことをそのまましてるような。……音楽狂がいない分、大分過ごしやすいんじゃないだろうか。

 朧気なマンガの知識だけど、悪魔の実の能力者であるルフィに優しかった筈だから、うん、他の地域より包容力はありそう。

 

 この手紙を書いたのは……はっちゃんか。ううん、これは信憑性が高くなってきたぞ。

 

「アーロンが人間と仲良くだってよ……誰もが変わるもンだ」

「元々優しかったよ?」

「ああ……アイツは本当に優しいヤツなんだ。今でこそジンベエの方が落ち着いたが、昔はやり過ぎるジンベエを抑えるのはアーロンの役目でな」

「アイツ不器用そうだしな」

「わかる、貧乏くじを引くタイプだよねアーロンも」

 

 おれとソルの会話にタイガーさんは笑っていたけど、目は何かを羨んでいるように見えた。きっと変わることができた弟分を喜びつつも、ということかもしれない。

 

「よーし、そのうち遊びに行こう」

「ああ、そうしてやってくれ。アイツラもきっと喜ぶ」

「タイガーさんも会いに行こうよ」

 

 おれはじっとタイガーさんの目を覗き込んだ。タイガーさんは息をのみ、けれどすぐに「おれはダメだ」と首を振った。

 わかっている。今すぐに行こうなんて言うつもりはない。

 

「ずっと未来でも良いんだ。いつか、アーロン達が作った日常を見に行こう」

 

 たとえ『いつか』がおじいさんになるまでかかるとしても、きっとそれはタイガーさんに必要な事だと思うから。

 

「そうか……いつか、か」

「そう、いつか。タイガーさんの気が向いたときにね」

 

 いつか、彼の恐怖と憎しみが薄れ、擦り切れ、色褪せることができたときには。

 

「わかった……来ると良いなァ、いつか」

 

 僭越ながら、おれが先導するよ。

 

 

 

***

 

 

「やあ、君達がタイガーの友人かい?」

 

 タイガーさんにおれが描いたスケッチブックとその絵に関する話をソルと一緒にしているとき、人魚の男性が声をかけてきた。

 

「本当にこの国まで来るとはね、いやいや若いって凄いな」

「おう、おかえりデン」

「うん、ただいま。はいこれ」

「ありがとよ」

 

 彼は抱えていたシャボンに包まれた布バッグからいくつかの小包をタイガーさんに渡している。

 

 あ、なるほどご近所さんはこの人か。タイガーさんの代わりに買い出しに行っていたのかな。見た感じ…………なんの人魚なんだろう?

 くそ、承太郎なら即答できただろうに。今度地上に戻ったら海洋生物の図鑑でも買いに行こうかな。

 

 ご近所さん、デンさんはオオカミウオの人魚で船大工兼海の森の研究者だそうだ。ごめんなさい、オオカミウオを存じ上げませんでした。

 

「魚人島でも船大工の仕事があるんだ」

「主に観光客相手だよ。行きの航路で船が破損することは多いし、この国を離れる時はもう一度コーティングをしないといけないからね、仕事はそこそこ来るんだよ」

 

 魚人や人魚の皆が工作が得意な理由がちょっとわかった気がする。海賊相手に真っ当に稼ぐのに最適なんだな、手に職というか。

 

「デンさんもグラマンおひとついかがですか」

「えっ、いいのかい?」

「食え食え、いっぱいあるからな!」

 

 とりあえずひと仕事終えたらしいデンさんにも椅子を用意して茶菓子を勧める。喜色を浮かべて席に着いた彼にお茶を淹れて、一息ついて貰うことになった。

 

「船を修理するとしても、この魚人島で木材を調達することは難しそうですね」

「まあ、かなりの高値だな。小せェ部品はここの廃船から多少材料を取れるらしいがなァ」

「その分しっかり料金が割高になっているさ。なにせ踏み倒そうにも、船が直らないと彼らは水面上に帰れない。渋れば船自体を差し押さえられると知れば、大人しいものだよ」

「かなり逞しいな魚人島の船大工」

 

 必要経費となればそうなるか、とおれは湯飲みから煎茶を啜る。

 

「君達もこの国を出るときは僕がコーティングを請け負おうか?」

「うーん」

「いま別行動しているダチがコーティング職人でよ、ちと相談してからになるな」

「ああ、それはそうだろうね。僕としてはこの国にいる時くらいは、仕事を離れて満喫していってほしいけど」

 

 職人さんによっては自分以外の手を加えられることを嫌がる場合もある。でも、レイリーならすんなりオーケーを出すような気がする。だって仕事していたら、若くて綺麗な人魚さんと接する時間が減るだろ。

 

 ……これはほぼ確実にデンさんに頼むことになるのでは?

 

 半目になって横を向けばソルと目がバチッと合う。

 

 ──頼んどく?

 ──何も訊かねェのもマズイと思うぜ。

 ──拗ねるよね。

 ──拗ねるなァ。

 

 もうここで頼んだ方が良いのではないかとおれ達は確信していたが、一応本人にも聞いてみることにした。一応ね。

 

「ま、まあ……職人は芸術肌の人も多いからね、その時はよろしくお願いします」

「わかったよ」

「おれの知り合いに魚人の船大工がいるけどよ、ソイツもやりたいことに妥協は絶対しねェ男だったぜ。会ったのは地上でなんだが」

 

 地上にも魚人が住んでいるのか。確かに腕っ節があれば人攫いに対抗できるからな、万が一でも海に逃げれば逃走も容易い。それでも人攫いに捕まっているということは、何かしら捕獲道具があるのかもしれないけど。

 

「へぇ、魚人が地上で船大工をなァ」

「トムっていうフグの魚人なんだが、船大工繋がりで知らねェか、ウォーターセブンにいるんだ」

 

 タイガーさんとデンさんがハッと驚きを顔に表した。ただの知り合いだけじゃない反応、というよりもショックを受けたようなそれに、おれは嫌な予感を覚える。

 

「トムは僕の兄だよ」

「兄ィ!? 本当か!?」

「本当さ……それよりも、君は知らないんだね」

「──トムに何かあったのか?」

 

 ソルは眉を顰めて真剣な顔になり、声を潜めた。デンさんは目を伏せ、悩み……意を決してソルを見返した。

 

「兄はいま──裁判の執行猶予中だ。海賊王の船を作った罪を問われてね」

 

 ゴーグルに隠れたソルの目が見開かれたことに気付いたのは、やっぱりおれだけだろう。

 

 

 

***

 

 

 

 おれは色彩豊かな海の森を目の前にして、シャボンの中で丸い珊瑚に腰掛けてスケッチをしていた。

 

 ソルはレイリーの様子が気になるということで、ピクテルとトットムジカを連れて魚人島へ戻った。おれは付いていかずに、一人この海の森に残っている。

 タイガーさん達は、デンさんが買ってきた品を片付けたりするために家へ帰って行ったから、本当に久々のひとりだった。

 

 あの後、ソルは「そうか」と言ったきりしばらく黙り込み、気遣わしげに見やるデンさんに事の詳細を尋ねていた。

 聞き終わった彼は最後の方は笑ってこそいたが、それが空元気なのは易々と見て取れるほど、気落ちしていた。

 

 デンさんのお兄さん──トムさんは、海賊王の船を作った罪と相殺するため、造船の島ウォーターセブンと他の島を海上に浮かぶ線路で繋ぎ、走る海列車というものを作り上げた。

 既に車体は完成しており、今は各島を繋ぐ線路を建設中だという。

 

 その功績をもって免罪されるとのことだが、果たしてどうだろうかとおれは訝しんだし、ソルも同じだからこそあの態度だったのだろう。

 

 しかし妙な話だった。わざわざ優秀な船大工を囲い込むこともなく、処刑する命令が出るなんて。

 海賊王の船を作った罪が存在するのなら、海賊王の糧となった食料を生産した罪も存在することになる。そんな話は耳にしたことはないし、そんなことがあれば海賊に食料を売る者がいなくなって、略奪者が増えて世界はもっと荒れているだろう。

 

 だからきっと真の目的が違うんだ。海賊王の、という修飾語は万人に納得させるためのもの。

 本当は「船を作った罪」。世界一周を成し遂げるほどの質の良い船を作れるからこそ、トムさんは罪に問われた。

 

 つまり、だ。世界政府が行いたいのは、情報の封鎖であり現状維持なのかもしれない。

 

 優秀な船大工がこれからも船を造りだせば、偉大なる航路(グランドライン)も新世界も航海の危険を減らすことができる。

 近くの島同士を安全に移動できるようになれば、交流は増え、文明は良くも悪くも発展していく。

 

 だが、ここでトムさんを排除する方針に世界政府は出ている。おそらく彼らは人類の発展なんて望んでいないと推測するのに十分だ。そもそも天竜人以外を人と認識していないのかもしれないが。

 

 何かを知っているだろう海賊王の血族が根こそぎ狩られたことも、現状維持のためかもしれない。政府として陰湿で執拗すぎるし、権力に反して余裕がなさ過ぎるが。

 

 なんだろうなぁ、あまりにも自浄作用がなさ過ぎないか世界政府。

 普通、何百年も組織が在れば、自分がトップに立ちたい輩がポコジャカ内部から湧くもんだが……ずっと同じ制度が続くなんて、それこそ柱の男達みたいな長命種が頂点にいなければ……ん?

 

 はた、と鉛筆を動かす手を止める。

 

 まさか、いるのか。天竜人よりも上に何者かが。

 人と異なり何百年も寿命がある、それこそ柱の男達のように長い間生きていられる種族の者が。

 

「あー……そりゃあ、いつまでたっても世界の仕組みが変わらない筈だよ」

 

 これは、おれの単なる連想の結果であり、事実と整合している確証はないに等しい。

 でも、もし。そうであったのならば。

 

「どっちが年上かな──鶴を超え、亀の半分を数えた“俺”と」

 

 はてさて、この世界の頂点に立つ存在は一体どんな奴なのかな。性格はおれと合わなそうだけど。

 よし、いつか会いに行ってみよう……一発殴るかもしれないけど、そこは甘んじて受け止めてほしい。

 

 おれは『上』を見て目を細める。途端、近くを泳いでいた魚達が逃げるように散り散りに泳ぎ去った。……野生動物は反応が早いなぁ、ちょっと“俺”に戻りすぎたか。

 

 誰かが来る前に収めておこうと、おれは体内に波紋を巡らすために呼吸を深めた。

 

「ヘーマ!」

「あ」

「……よかった、無事か」

 

 異変に気付いたのか、慌てて泳いできたタイガーさんにおれはへらりと笑う。まずい、言い訳を考えてなかった。

 おれの五体満足の姿を見て安堵した顔のタイガーさんに、チクチクと罪悪感が心を突く。考えなしでごめんなさい。

 

「ヘーマ、お前何かやらかしたか。魚達が全部いねェ」

「やらかしを断定された。あー、ちょっと野生に返ったら魚達が逃げちゃった」

「なんだ、腹でも減ってんのか」

 

 うん、そうじゃないけど、そう言われると小腹が空いたような気がする。長いこと描いていたし、スケッチは少し休憩してお茶でも飲もうかな。

 

「……ん?」

 

 スケッチブックを閉じて荷物を纏めていると、ピクテルが仮面姿のまま此方に急いで向かってきている。あれ、お前それ、珍しく全力で動いてないか。それと一緒にいた筈のソル達はどうした、もしかしてキャンバスの中か?

 

 おれの問いに答えず、彼女はキャンバスを出して中から何かを取りだした。

 

 そう──胸元を赤く染めてぐったりした女性を。

 

 おれは状況を認識すると同時に彼女に飛びついて波紋エネルギーを流し込んだ。

 

 おいピクテルー!? お前、出す前に言えよ、瀕死じゃねぇかこの女の人!?

 治療が遅れたら死に直結するんだぞ……なんでこの人魚さんこんなに身体が弱いの!? 儚い、いや、おれよりは強いんだけど、根本の生命力がおれ並なんだが!?

 

「オトヒメ王妃!?」

「王妃様ァ!? ナンデ!?」

 

 タイガーさんの驚愕の声におれの声がひっくり返る。すごく上品な格好されていると思ったけど、王妃様とは思わなかったよ。ピクテル、なあ、どういう状況なら死にかけの王妃様を拾ってくる事態になるんだよ。

 ひょっとしてこれ王族の誘拐罪じゃないかと気付いてしまい、おれは血の気が引く思いですよ。

 

 おれの動揺を気に留めず、ピクテルは違うキャンバスを取り出して手を突っ込んでいる。ああ、そこにソル達が入っているのかと事情を聞くため目を向けていれば、出てきた影は四つ…………よっつ?

 

「母上!」

「母上様!」

「母上~!」

「お母様!」

 

 友だちが出てくると思っていたら、なんか違うお子様達が出てきた。母上ですか、そうですか……つまりこの子ども達は王子様や王女様と。そしてピクテルは彼らを連れて来たと。

 ははは、現行犯でお縄につく可能性が高まったなぁ。

 

 いや、その問題は先送りして後で考えようと放り投げて、おれは治療中の王妃様をチラリと見下ろす。

 

 タイガーさんと比べては当然だが、普通の人魚と比べても身体が弱い彼女は、波紋エネルギーを送ってもジリジリとしか治癒できていない。

 生命維持はなんとかできているから死にはしないものの、意識を失っていることが一番痛い。

 

 王妃様自身が『死んだ』と思っている限り、この身体はいくら手を尽くしても死に傾き続けてしまう。

 

「王子様方!」

「きさま母上に何を──」

「現在治療中です! けれど王妃様の意識が戻らなければ助かりません!」

「な……!?」

 

 おれはだからこそ不審者を見る目でこっちを睨む王子様達に協力を願った。

 

「呼んでください、あなた方の母上を! 呼び続けてください目を覚ますまで!」

「なにを言って──」

 

 誘拐犯であるピクテルとよく似たおれに対する信用は全くなく、傍目には手当もせず胸に手を当てている変質者に見えるだろう。

 ……ちょっと信用される要素なさすぎて泣きそうだけど、ここは絶対に彼らの助けを得なくてはグッドエンドに辿り着けないんだ。

 おれは『お母様』が助からない光景は見たくない。でもこのままでは身体は生きても心は死んでしまい、植物状態になってしまう。

 

「……お母様!」

「しらほし!? 近づいてはダメだ!」

 

 どうやって協力を得られるか悩んでいると、大きな人魚の王女様が止める兄王子を振りきっておれの近くに寄ってきた。

 

「おきて、お母様! ぐすっ、わたくしをおいていかないで!」

 

 お母様、お母様と泣くのを堪えて呼びかけ続ける少女に、兄王子達も顔を見合わせて頷きあった後、彼らもおれに近づいた。

 

「母上……起きてください、もう少し頑張ってください!」

「誓ったけど、まだおいら達母上と一緒にいたいよ!」

「母上、地上に行くのに母上がいないのは嫌だよ~!」

 

 横たわる母親に呼びかける子ども達は、必死に声を出している。

 おれは波紋治療を続けながら、王妃様の右肩を叩き、右手の平を叩く。同じように左肩を叩き、左手の平を叩く。続いて脚を、お腹を、額をと、順に触れていく。

 ほら、身体の感覚はもうわかるはずですよ王妃様。傷はもう痛くないでしょう?

 

「こんなに子どもが泣いていては、眠るに眠れませんね。大丈夫、貴女はまだ生きている、ちょっと目を開ければまた起きられます」

 

 ピクリと王妃様の指先が動く。

 

「さあ、オトヒメ王妃様。貴女の宝物を見てあげてください」

 

 おれの言葉が最後の後押しになったのかはわからない、けれどその時、彼女の睫毛が震えた。

 

 そして。

 

「──夢かしら」

 

 寝惚けたような蕩ける甘い音の声が、僅かに開いた口から溢れる。

 

「わたくしの、可愛い天使達が見えるわ……!」

「母上様~!」

「お母様~~!! うえ~~ん!!」

「あっ、まってしらほし泣いては……!」

 

 涙を流して抱きしめ合う母と子におれが頬を緩ませていると、なにやら王子達が慌てていることに気付いた。

 いや、なんか凄い勢いでクジラが逃げてって、代わりに強い覇気の持ち主がこっち来て……あ。

 

「わあ、すっげぇ海王類の群れ」

 

 瞬く間に視界いっぱいに集まってきた海王類の群れに、おれは意識を飛ばしそうになった。おれ、海王類見るの初めてだよ。

 

「しらほし~! アッカマーンボ、アッカマーンッボ♬」

「ほら一緒に歌おう~♬」

「うわ~~ん!」

「しらほし、大丈夫だぞ!」

 

 王子達が王女様を必死にあやしているけど、もしかして王女様が泣いていると海王類が来る感じ? セコム強いな。

 

 覗き込むようにシャボンを囲む彼らは、徐々に近づいてきて……いや、待ってそれ以上近づくとシャボンが割れ──たな。

 

 おれはシャボンが弾けて迫り来る海水と、おれを回収しようとする仮面のピクテルを見て、視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

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