群青色を押し花に   作:保泉

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二つのルーツ

 

 

 アメステーラ家が前世の息子であり父親でもあるウンガロの末だと気付いた途端、『俺』が思いっきり力尽くで表に出てきた。

 さて、ちょっと顔を出しただけの海の森では近くにいた魚達は一斉に逃げ出したのだが、ガッツリ表に出てきた今回はどうなったかというと。

 

 おれは部屋に乗り込んできた険しい顔をした使用人達に襲われ、つい反撃し全員床に転がしてしまった。すまん。

 

「わははは! なっ、大丈夫だったろ!」

「アチャー……」

 

 おそらく異変を察知してこの場に駆けつけた先で、床に転がる使用人の一人──フットマンのアベロを足で踏むおれを見たソルは大笑いし、額に手を当てて天を仰いでいる庭師のウルンの肩を親しげに抱いている。仲良くなるのが早いな、とおれは目を丸くした。

 

「ハァ……すまんが、使用人達を解放してくれないか」

「いいよ」

 

 一連の目撃者となり、頭が痛そうにため息をついたF・Fの要請を受けて、おれが抵抗を封じるため背中を踏んでいたアベロから離れると、彼は素早く立ち上がっておれから距離をとった。うん、ひどい怪我はないみたいだな。よかったよかった。

 

「そういやさっきのデケェ覇気はなんだったんだ?」

「レトイスと混ざってない『俺』かな」

「ほう?」

 

 なるほどなァ、とレイリーは目に理解の色を浮かべ、愉しげに目を細めている。あ、やっぱり薄々気付いていたな、おれの人格が複数あること。

 

「良い塩梅に混ざったな」

「人の世を渡るには丁度良いだろ?」

「もうちょい増えても大丈夫じゃねぇか?」

「ピクテルの制御が出来なくなるからダメ」

「「あーなるほど」」

 

 レトイスと『俺』、今はユーインとしようか。二人の人格を混ぜて出来たのが今のおれこと『ヘーマ』である。

 ユーインの配分を増やすことは可能だが、ハッキリ言って前世の末期は人から外れた思考回路だったから、レトイスの持つホリィ並の善性で中和しているからこそ、おれの人格は破綻してないんだぞ。

 

 起こりうる危険性を訴えれば、ピクテルの悪癖を大分把握してきた彼等はあっさり納得した。わかってもらえてなにより。

 

 さて、とおれは気を取り直して顎に手を当てる。

 判明した内容が内容だけに仕方ないこととはいえ、ユーインがやらかして警戒されたことだし、ここはさっさとこの島から退去しようかね。

 先ほどからおれに転がされた使用人達の視線が突き刺さって痛いこと痛いこと。でもちょーっと敵意がバレバレ過ぎるのはいただけない、な?

 チラリと視線を家令のルーガスに向けると、真顔で使用人達を見ていた彼はおれに目礼した。あらま、後が怖そう……頑張れお兄さん達。

 

「目的は果たせたし、おれ達はこれでお暇するよ」

「待て……これを持っていけ」

 

 鍵の掛かったデスクの引き出しから取り出されて渡されたものは、濃紺のベルベット生地の小さな小箱。なんだこれ、アクセサリーでも入っているのか?

 

「これは?」

「いらなければ処分するがいい。だが、決してお前以外には渡らないようにしろ」

「えっ、なんか怖いな。何が入ってるんだこれ……」

 

 おれは渡された小箱の蓋をパカッと開け──即座に閉めてピクテルのスケッチブックに放り込んだ。

 

 おれは何も見なかった。

 

「何が入ってたんだ」

「黙秘します」

「えー、ちょっとくらい見せてくれてもいいだろ」

「却下します」

 

 ストンと落としたかのように表情を無くしたおれの様子に中身が気になったのか、レイリーとソルがおれを肘でつついてくる。おれは何も見てないのでよくわかりませんね。

 死んだ目をF・Fに向けると然もありなんとばかりに頷いている。これが何か知ってる反応だなぁ。

 

「使うかどうかはお前次第だ」

「因みに使ったことは?」

「ない」

「デスヨネ」

 

 あー、これもこの世界に一緒に来ちゃってたのかぁ……とんでもない劇物を渡された。

 

 『スタンドの才能を目覚めさせる矢』なんてもの、おれなんかに渡していいのだろうか。

 

 いや、第三者に渡って悪用されるよりはいいとは思うけど。致死率が高いから知らなければ毒矢扱いだろうが、本来の用途を知られることが一番怖い。

 

「数十年前、この島に世界貴族が来たことがある」

「……あっ、待ってそれ以上言わないで」

「この島には補給での立ち寄りだった。当時の当主だったラトナの母が見初められ、身籠もった」

「やっぱりかくそったれ!」

 

 嫌な予感に制止したおれに構うことなく、つらつらと記録を読み上げるような平坦さで彼は言った。言うなっていったでしょF・Fのバカ野郎。

 つまりなんだ、お母様が天竜人のハーフでおれはクォーターってか。

 

 いや、知りたくなかったなぁー!? 出来れば知らないまま今後を生きたかったなー!!

 そうだよ、ジョースター一族程の美形揃いなら天竜人も目をつけるよな!

 

「幸い、向こうのベタ惚れでな。世界貴族らしからぬ下手で熱烈に口説いてきて、当主が根負けした。決して妻にもならず、この島からも出ないと誓わせて相手をしていたから、噂に聞くような無理矢理という訳でもないがな」

 

 それは本当に珍しい。まさか天竜人が本気で貴族とはいえ一般人に惚れたのか……ジョースター一族の女性ならあり得ると思えるのは、彼女達を知っているおれだからかな。

 ん、一部の使用人達も目を剥いているけど、本当に言って良かったのかなこの事実。

 

「すでに向こうにこちらの能力は知られている。妾だった彼女も没している今、いつ“気まぐれ”を起こされるかわからん。あれはこの島には無い方がいい」

「……そういう理由ならわかったよ。預かる」

 

 この矢は悪用しようとすれば、際限なく悪用できることは過去に実証がされている。

 まあ、スタンド使いになるためには強い精神力と闘争心が必要だから、殆どの天竜人には素質があっても制御出来ずに自滅しそうだけど。自分達で試さなくても奴隷達には躊躇なく試すだろうし、見つからない方が世界にとって良いだろうな。

 

「じゃあ、これで。アメステーラ家の健勝を祈っているよ」

 

 元々歓迎されないことは想定していた。まさか天竜人まで巻き込んで島の安全を確保しているとは思わなかったけど、ナワバリでもない海賊との繋がりは出来るだけ排除した方がいいからだ。

 

 あまりこの島におれが近づかない方が良い理由もあるようだし。執務室に集まった性別の偏った使用人達、彼等を見て気付いたことから目を逸らす。

 

 止め止め、追及しても誰も幸せにならないことだ。今回の目的も達成したから早く次の旅へ行こう。あ、その前にこれだけは渡しておかなければ。

 おれはピクテルから受け取ったものをハッとした顔のF・Fに見せた。

 

 

***

 

 

「良いのですか、このまま彼等を帰しても」

 

 窓から遠ざかっていく馬車を見送る主人に向けて、執事のウルペは不敬だと自覚しつつも問いかけた。

 アメステーラの特異な能力は一族の血を持つだけで力を振るえる類いのものではない。しかも素質がなければ習得することすら不可能であり、その素質をレトイスは持っていた。

 

 本来のレトイスではない彼が、その希少な能力を悪用しないとウルペには確信できなかった。その血を外に出していいのかと言外に伝えられて、F・Fは振り返って問題ないとウルペの懸念を否定する。

 

「お前達は彼を悪者にしたいようだが、アレは我等にとって一番の味方だ。心に留めておけ」

「一番の、ですか……次期当主の身体を奪っておいてそれはないのでは」

「次期当主“候補”だ。だからこそ彼はこの島からの退去を早めた」

 

 元より過失はあのろくでなしを婿に迎えたことが始まりであり、その動向を監視しておかなかったアメステーラ家にある。

 あの男の手引きで人買いなどに売られることさえなければ、今もまだあの身体はレトイスだけが動かしていたことだろう。

 

 はるばるレトイスの心残りを解消しようとこの島に来たあたり、元々ヘーマからある程度の関心をレトイスは向けられていた。緩く結ばれた紐のようだったそれが、この家の成り立ちを知って鎖のように強まったことを、彼の変貌を見ていたF・Fは確信できた。

 故に彼は隠された秘密に気づき、見つけられたくない存在を守るために、この島から早々に旅立つことにしたのだろう。

 

 五年間という彼の人生の大半の時間、レトイスは当主教育を受けていない。その空白期間となった点はアメステーラ家を継ぐ為には致命的であった。

 この島を十全に管理するには、この世界の一般的な貴族よりも高度な学習が必要となる。彼がこれから本来の目標に追いつくにはあまりにも時間が足りない。

 

 故にレトイスはもうアメステーラ家当主にはなれない。なる必要も無いからこそF・Fは彼を引き留めない。他の次期当主候補は既にいるのだから。

 

「……彼があの方に気付いていると」

「気付かぬ訳がない。波紋法に加えて高度な覇気使い、元CPのお前達をも軽くあしらえるとはな」

 

 アメステーラ家の使用人達は、殆どが元CPかその子孫である。なお、はじめからそうだったわけではない。最初期は屋敷に使用人を雇う余裕すらなかった。

 居住に向かない無人島の開拓を成功させたため、動向を探りに世界政府から彼等が送られてきた。最初は任務に忠実にスパイをしていたようだったが、そのうち大半がアメステーラ家の誰かに忠誠を誓い、自分の死亡を偽装してこの島に戻ってくるようになった。

 なお、偽装云々については、元々CPの死亡率が高い為に今でも気付かれていない。

 

 なお、使用人に収まった今でも自主鍛錬は欠かしていない彼等があっさり制圧されたことは、「コイツは守らなくて大丈夫だ」とF・Fがヘーマを放置する方針を固めるのに十分な材料となっている。

 

「お前もまだまだ血の気が多いな。彼に弟子達があしらわれて不快だったか」

「我が身の未熟さゆえに醜態をお見せし申し訳ございません。使用人一同、基礎から鍛え直しをいたします」

「まあ、無理はするな。ルーガスからも絞られるだろうから」

 

 最初からアメステーラ家を見守るF・Fにとって、使用人の彼等が未熟な頃から見知っている。すました顔のウルペだが、昔に先代の執事に絞られている姿をF・Fに見られたと知り、ショックで青ざめた姿を今でも思い出すことができる。

 今では家令のルーガスも、家政婦長のハリマも、密偵としてはそこそこ優秀でも使用人としては落第点だった。クツクツと笑う姿に何かを察したのか、ウルペは器用にも目だけで雇い主に抗議をしている。

 とうとう耐えられなくなって吹きだしてから、F・Fはヘーマから連絡用だと渡された鳥籠の住人に向きなおる。

 

「レトイスをよろしく頼む。我らが父祖」

 

 まるで返事をするように、ホウとフクロウはひとつ鳴いた。

 

***

 

 

 真っ昼間に出港するとなるとおれの船は目立ちすぎるので、沖合までアメステーラ家の買い出し用の船に同乗させて貰うことになった。ありがたい。

 

 ただ乗っているだけも退屈なため、船の操作を手伝いながらの世間話で、庭師のウルンがロジャー海賊団の船員だと判明するとは思わなかったけど。

 おれ以外既に知ってたとか、言えよおれにも!

 

「いやー、仲間はずれにされて癇癪を起こしてるレトイス様の姿が新鮮すぎる」

「最初は貴族らしく表に出さなかったらしいぜ。あ、それと順調におれの悪影響を受けてるってニューゲートのお墨付きだ!」

「そうかー、前と差分がデカくなったのはアンタのせいかー……」

 

 確かにソルと出会ってからイタズラするようになったけど、そこまで変わったつもりはないぞ。ま、良くも悪くもこの世界に慣れてきたということだろう。

 ある程度船が進んで速度が出てきた頃、「そうだヘーマ」と突然片手を上げてレイリーがおれを呼んだ。

 

「そろそろ私は帰るとするよ」

「………………え」

「待て待て泣くな、寂しいのはわかったから泣くな」

 

 なんだろうと話の続きを待ったところに、あっさり旅の終了を告げられておれは呆然と彼を見上げた。

 そのまま一気に潤んだ視界に苦笑するレイリーが映る。待って、今回はレトイス側じゃなくてユーイン側の感情制御が効いてない。

 ジョースター一族を思い出して生き別れる寂しさを思い出してしまったからか、溢れるものを止められなくなっているんだけど。

 

「もう誘ってくれないつもりなのかね」

「む」

「あまりコーティングの腕を錆び付かせるわけにもいかん、帰りはするが二度と旅行に行かんとはいっとらんぞ?」

 

 ぐしぐしと手拭いで目元を拭われながら、レイリーの言葉を反芻する。えっと、誘われれば旅行に行くけど、コーティングの腕を鈍らせることはしたくない、と。

 つまり、また一緒に旅行できる。

 

「多くて年に一度くらいなら──」

「参加してくれるんだな!?」

「切り替えが早いな」

「返事は!」

「ふふ……はい、だ」

 

 ガシッとレイリーの手を取って顔を近づける。されるがままに手を引かれて、レイリーはコクリと頷いた。……頷いた!

 

「やったあ~~!! ソル~~! ヘーイ!」

「ヘーイ、やったな! 言った通りだろ、レイリーは割と押せばいけるってよ」

「うん!」

「おいこらそこの二人」

「「あっやべ」」

 

 ソルとハイタッチを決めたおれだが、彼につられてつい余計なことを口走り、レイリーの不興を買ったことに気付いた。

 

 二人して目配せして船の上を逃げ回ったが、モビーよりもかなり小さい船ではあまり逃げ場もなく。おれは早々に捕まり小脇に抱えられて、ソルを追いかけるレイリーに振り回されることになった。

 自分じゃ到底動けない速度で移動するのがちょっと楽しいが、身体にかかる遠心力がとても気持ちが悪いです。

 

「レイリー、レイリー、そろそろおれの胃がリバースする降ろして」

「耐えろ」

 

 そんな殺生な。おれを抱える手を離すだけで済むのになぜ断るんだ。

 

「ソル早く捕まれよぉ」

「よしレイリー賭けをしようぜ、今から三十分でおれが捕まるかどうか。酒を一瓶でどうだ」

「のった」

「先におれを降ろせってぇ……うぷ」

 

 興が乗ったのか賭けまで始めた二人に辟易していると、限界が近づいたのか胃の方から迫り上がってきた。やばい。

 

「おっといかん。ウルン、パスだ」

「投げるな副船長この野郎!? ヘーマ坊大丈夫か」

「うぷ」

「ダメそう! ほらこれに吐いちまえ」

 

 レイリーはウルンに向かっておれを放り投げた。なにすんだこの野郎。慌てて受け止めてくれたウルンに感謝したいが、如何せん口を開けたら出るので何も言えない。

 差し出された洗面器に顔を突っ込み、嘔吐いているおれの背中をしばし撫でられる。すまんな。

 どうにか出し終わって涙目のおれの前に、ずいと水の入ったコップがつき出された。

 

「口の中をすすげ、気持ち悪いだろう」

「オルガイ……ありがとう」

 

 むっすりとした顔で仁王立ちする強面な料理長のオルガイは、おれが口をすすぎ終わると吐瀉物が入った洗面器を持ち上げた。捨てに行ってくれるつもりらしいが、それ位自分で始末をつけるよ。

 

「あの」

「どこまで乗っていくんだ」

「え? ……ああ、そろそろもういいかな」

 

 洗面器に手を伸ばしたところで声を掛けられ、虚を突かれた。

 船が進んできた先を振り向けば出発したナジュム島は既に小さくしか見えず、ここまで離れれば島からの視認も難しいだろう。おれはそう結論付けて、未だ鬼ごっこ中の旅仲間に向かって声を張った。

 

「ソル~、レイリー! 後五分で決着付けてね、代わりにおれからも景品付けるよ! 好きな酒とつまみを選べ!」

「そりゃあいいな!」

「ほう、了解だ」

 

 おれの商品、つまりはあの世界の高級酒の味を既に知っている二人はやる気のギアを数段階上げて、その攻防はじゃれ合いのレベルを外れている。船は壊すんじゃないぞー。

 後はここまで送ってくれたお礼をしなくては、とピクテルから用意しておいた包みを受け取る。

 

「はいこれ、オルガイに」

「……これは、ブランデーか? 見たことがねえラベルだが」

「おれ特製の非売品だからな、あげる」

「いや今どこから出した?」

 

 スケッチブックから出したブランデーの瓶を、ニッと笑ってオルガイに押しつける。オルガイだけで飲んでもいいし、料理に使ってもいい。餞別としていくつか酒の瓶を出した後、おれはチラリと左上に浮かぶピクテルを見上げた。

 

 おれの意を汲んだピクテルは、おれを素早くキャンバスに放り込む。次に出されたときはレトイスとしての姿ではなく、白薔薇の髪飾りを付けた不本意ながらも慣れているいつもの姿。

 海風に靡いた格段に長くなった髪を押さえるおれへ、驚愕の視線が突き刺さった。

 

「その姿は、手配書の」

「驚かせないようにあの姿でいたん──」

「ウルン、カメラ出せ!」

「おう、ヘーマ坊動くなよ。こっち向いて笑え」

「いやどういうこと?」

 

 いそいそと準備を始めた彼等におれはツッコミをいれざるをえない。この反応は想定外なんだが。

 どうして突然おれの撮影会がはじまるのか。あれ、他の使用人達も操舵を放り出して機材用意してきて、なんで反射板まであんの!?

 

「大旦那様からその格好の写真を取ってこいと命じられている」

「アメステーラ家一族の写真の間に飾るそうだぜ」

「さっきまでの姿じゃダメだったんです!?」

 

 なんでわざわざ女性的な姿のやつを撮影するんだよ。はっ、手配書の写真がそれだったからか、いやでもこの格好の写真がアメステーラ家に継承されるのは嫌なんだけど。確実におれの性別が誤解されて伝わるだろうが。

 

「あれはレトイス様の姿だろ。『ヘーマの写真を取れ』が命令なんだ」

 

 どうしたら思い直して貰えるかと悩み始めたおれに、オルガイが三脚を組み立てる横でウルンはカメラを構えつつ軽く笑って言った。とりあえずシャッター切るの止めてもらえます?

 

「レトイス様はいなくなったんじゃなくて、混ざったんだろ? なら、アメステーラ家は今もレトイス様の帰る場所のままだ。ヘーマ坊にとってもな」

「特に構えることはない、母方の実家だと思えばいい」

 

 ポカンと口を開けているおれに「そろそろ口を閉じろ」とカメラを準備し終えたオルガイが睨めつけ、おれの口にドライフルーツのオレンジを放り込んだ。おいしい……思考がズレた。

 

 おれは深々と息を吐く。

 二度と、島に足を踏み入れるつもりは無かった。いない方がむしろ喜ばれると思ってた。

 レトイスであってレトイスだけではないおれは、これからも世界政府に目を付けられて身柄を狙われる。一般人に親しい者がいれば、人質にされる可能性が高くなる。

 

 アメステーラ家は表だって支援しないが、こっそり繋がりは残しておくつもりらしい。その強かさがおれには小気味よく、ハハッと笑顔と共に声が漏れた。

 

「かっこよく撮ってくれよ!」

「すまん、おれの技量じゃどう頑張っても可愛いか美しいにしかできねえ」

「……」

 

 流石に真顔で即答されると、おれだって心に傷を負うんだぞ。

 

 

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