「お、オヤジ~~! ヤベェことになってる!!」
モビー・ディック号の甲板で昼食後の胃を休めていた白ひげ海賊団面々のところに、ドタドタと足音を立てて一人の船員が駆け込んできた。
「い、いまリュウグウ王国の国王さんから連絡があって!」
「おい落ち着け、何があった」
あまりにも興奮した様子に三番隊隊長のジョズが駆け寄る船員の肩に手を乗せて勢いを止めると、荒く息をしていた彼は「ヘーマが」とこの場にいない子どもの名前を出す。
「ああ? ヘーマがどうした?」
「ヘーマが、金獅子に喧嘩売りに行ってるって!」
「「「…………はァ~~~~!?」」」
数拍の沈黙の後、言葉が聞こえた全員から裏返りそうなほど大きな叫び声が上がり、モビー・ディック号付近の鳥や魚は速やかにその場から逃げ出した。
*
『──というわけじゃもん』
「そういうことか、そりゃあ止まらねェな」
船室でネプチューン王から事の次第を聞いたニューゲートは、仕方ねェなと笑う。友を傷つけられて拳を振り上げないような性格であれば、あの孫は賞金首となっていないからだ。
「教えてくれてありがとうよ、友よ」
『なに、我が国の民を思って怒っておるのだ。礼などいらん。それに、友を心配して必死に伝えてきたジンベエの頼みだ、これくらい当然なんじゃもん』
「ああ、七武海に就任したっていう。そうか、そいつもヘーマの友だったか」
あいつ中々顔が広いな、とニューゲートが感心していると、『それに』と少し呆れを含ませた声音でネプチューン王は言う。
『あの馬鹿が止める筈がないんじゃもん』
「ヘーマを育てることを楽しみにしてやがるからなァ、あの馬鹿」
二人の脳裏に満面の笑みでゴーサインをする旧知の顔が浮かび、揃ってため息をついた。
その頃、ニューゲートが去った甲板では最年少が伝説に殴り込みをかけようとしていることに戸惑い、ざわめいていた。
「やっぱりよ、やんちゃ坊主を放り出し過ぎたな」
「いやいや、まさか金獅子に喧嘩売りにいくとは思わねェよ」
「それもあのヘーマが」
「ちょっと前までギャン泣きしてたンだぞ」
「クマのぬいぐるみを抱えてぐずってたのに」
「泣き疲れて寝落ちしたりよォ」
「寝惚けながら飯も食ってたなァ」
「オヤジの膝でプルプル震えて怯えてたぜ」
「「「懐かしいなー」」」
(((三億の賞金首なのに……?)))
「次々とあいつの黒歴史が暴露されてやがる」
「かわいそうに……」
拾われた当初のヘーマを知る面々による犯行、手配書でしか少年を知らない新入りへ隠したいだろう過去がぼろぼろ漏らされていく。
その無自覚な行為にサッチは苦笑いし、イゾウはこの場にいない少年に向けて同情した。
いつの間にやら話が脇にそれて、彼等が持ち出したヘーマの面白エピソードのランキングを付け始めていると、ギィと船内に繋がる扉が音を立てて開いた。
「集まってんな」
「オヤジ」
のっそりと姿を見せたのはマントを肩にかけたニューゲートで、船長の登場に甲板に出ていた男達は黙り、彼に視線が集まる。
全員自分を見ていることを確認してから、ニューゲートは「結論から言う」と口にした。
「今回おれ達は動かねェ」
「──!?」
驚きを隠せない者、平然と受け止める者、顔を顰める者と反応は分かれたが、それでも彼等は黙ってニューゲートの続きの言葉を待つ。
「シキの野郎からは当然連絡はねェが、うちの関連だとわかって襲ったわけじゃねェことはわかる。むしろ手を出そうとしてんのはヘーマの方だ、ならおれの方からあの野郎に連絡を入れンのが筋だろう」
「……」
白ひげ海賊団のナワバリはリュウグウ王国であって、魚人や人魚といった種族が保護対象というわけではない。あくまで、あの国に住む者が白ひげの名の下に、結果的に庇護されるだけだ。
母船から離れたヘーマの単独行動は、海軍相手ではよくやったと見逃せることでも、同じくナワバリを持つ海賊相手では許すことが出来ない。下手に許せば白ひげ海賊団も傘下の海賊団も、新世界に広がるナワバリの島々を巻き込むことに同意することとなる。
もう子どものイタズラで済まされない──そう、当のヘーマが理解しているからこそ、ニューゲートは子どもを庇うことはない。
「で、でもよオヤジ、金獅子に連絡すりゃヘーマは……」
「当然、待ち構えられる。それはヘーマも覚悟してンだろうよ。甘えがあるならとっくに泣きついてきているだろうさ……てめェで解決するつもりだからこそ、本船の関与を否定するために何も連絡してこねェんだろう」
前回のやらかしでしこたまヘーマが叱られたこともあり、流石に連絡忘れというわけではないはずだ。ちょっと不安になりつつもニューゲートは断言する。
実際、ヘーマは故意に連絡を入れていないためこれは正解であった。
「それにな、ヘーマが一度決めたらテコでも動かねェことはわかりきってらァ。たとえ首根っこ捕まえたとしても止められねェよ」
「「「あー」」」
呆れ顔の船長の言葉に、男達は歳を重ねる毎にアグレッシブさを増す子どもの花のかんばせを頭に浮かばせ、一斉に同意の声を漏らした。
「絶対、捕まえても逃げ出すよな」
「隊長達が直に抱えておくくらいじゃねェと。部屋に閉じ込めてもピクテルがいっからな」
「待て待て、隊長達ごと逃げ出す可能性は」
「ありうる。その時は隊長達も金獅子のシキ襲撃メンバーの仲間入りか」
「やめろやめろ、ありそうで笑えねェよ!?」
「ククッ、本当に拘束が意味を成さねェよなァあいつ」
少年を無理に閉じ込めようとすれば確実に起こりかねない想定に、サッチは額に手を当て、ビスタはクツクツと笑う。
甲板にはまだざわめきが残りつつも、息子達がある程度納得した顔になったことを確認して、最初から黙ったままの息子──子どもの父親に目を向けた。
「マルコ」
「なんだよい」
「白ひげ海賊団としては動かねェ……が、おめェは行け」
「オヤジ?」
「ヘーマが負けてタマを取られそうな時によ、バカタレ共をかっ攫ってこい」
一番隊隊長である責任感の強いこの息子は、自分から子どもを助けに行きたいとはけして言わないだろう。だからこそニューゲートはマルコの背中を押す。
「……いいのかよい」
「グラララ……子どもを心配する父親が動いて何が悪いってンだ。アイツがいるから万が一にもねェと思うが、念の為だ」
「……わかった、行ってくるよい」
ニッと笑みを浮かべたニューゲートの促しにマルコは目を伏せた。他の船員達とは違い、ヘーマの隣にいる少年の正体をマルコは知っている。今までのヘーマへの庇護を考えれば、命をみすみす喪わせることはさせないだろう。
だが、それも絶対ではない。金獅子の強さは統率力、物量で圧されたら如何にソルであってもヘーマを庇いきることは出来ないだろう。
マルコは焦燥を内に押し込めたまま、腕を青い炎を纏った翼に変えて空へと飛び上がる。
「スゲー速ェな」
「あいつ我慢なんかしやがってよォ……水くさい」
一目散に飛んでいく青を見送って、男達は小さくなる炎に向かって激励で手を振った。
*
「突然お伺いしたというのにタオルとお湯を貸して頂いた上、ご馳走にもなっちゃってすみませんマダム」
きつめのパーマをかけたような髪型の中年女性に向かって、おれは食器から手を離してから頭を下げる。彼女は手をひらひらと動かし、「なんだいマダムなんて」とからからと笑った。
「いいんだよ、こちらこそ碌なもの出せなくて悪いねぇ」
「そうか? スゲーうめェぞこのスープ」
「あらやだ、おかわりいるかい?」
「頼む!」
「ソル……いや、食いしん坊で申し訳ない」
「ふふ、良い食いっぷりだね」
ズズーッと音を立てて茶碗のような器からスープを啜るソルを窘めるが、当然ながら全く効果はない。いや、マダムが嬉しそうだからいいんだけどさ、ちょっとは遠慮しろよ。素振りでもいいから。
いま、おれ達は浮いた島のひとつ、湖の畔にあった集落にお邪魔している。
正面から乗り込む予定だったのだが、島全体を支える量の島雲ゴーレムを出すのに時間がかかり日が暮れてしまったため、一旦何処かに身を隠そうとしている最中に、ソルが湖に落ちた。
島雲ゴーレムの上で飛び跳ねて、空の上で耐久性を確かめたソルが全て悪いんだけどな。
下が湖とはいえそのまま素直に落下するものだから、当然ながら全身水浸しだ。お前どうして空を走らなかったのかと聞けば、なんとなくその方がいい気がしたとのこと。だからといってわざわざ水に落ちなくても。
「あんた達も災難だね、あのシキに知り合いが攫われるなんてさ」
「おれ達は直接面識はないんだけどね、友だちの大切にしている子だったんだ」
「そいつ自身はシキに抵抗して重体でな、代わりにおれ達が来たってわけだ」
「そうなのかい……」
湖に落ちたガタイの良い男であるソルを心配して引き上げてくれた、この村の人達の傾向がわかったのは良かったけどさ。
初対面なのに監視用電伝虫から匿ってくれたし、一人暮らしの家にも上げてくれたし……なんというか、もうちょっと疑わないとダメだぞ?
村人の純朴さが心配になってきた頃、マダムはふっと目を伏せた。
「この村も同じさ、若い働き手の男も娘も王宮に連れていかれてしまってね」
「王宮ってあの一番上に浮いてる島の建物のこと?」
「そう、この島に来たときに見たのかい? 人手も食料も巻き上げられて、この村に残されたのは年嵩の女と子どもだけ。十二年の間に抵抗した奴もいたよ、みんな見せしめで殺されてしまったけどね」
最初に見た大きな建物がやっぱり拠点だったらしい。そうだろうなぁ、高いところという場所は支配欲が強い奴ほど好きだからな。
しかし、食料は兎も角人手も、ねぇ……村人達が随分と痩せているなと思ったけど、作物を作る人手すら足りてないならそうなるか。おれはマダムの脂肪の薄い腕を見て目を細めた。
「食料は湖の魚と農業かな?」
「ああ、海と違って獲る量は制御しないといけないからね……シキが来る前はたまに海の魚も食べられたんだけど」
「え?」
海の魚も食べられた? この浮いた島でどうやって……いや、シキが来る前は浮いてなかったのかな。
少し言葉に引っかかりを覚えたおれがマダムを見ると、明らかにしまったという顔をしている。素直~、もっと隠しましょう?
「もしかしてその腕、本当に飛べるのか?」
「……」
「ごめんなさい、もう聞かないよ。誰にも言わない、約束する。そうだ、このスープの──」
「……この島はね、雲まで到達する高い塔のような島だったんだ」
ソルの指摘に黙り込んでしまったマダムに、まずい地雷を踏んだとおれは焦った。この世界には奴隷制度があって、珍しい種族は高値で売れる。彼女達が未だ見つかっていない希少種族だとしたら、この島から情報が漏れることすら確実にマズイ。
どうにか話題を逸らそうとしたおれの目をしっかり見て、マダムは口を開いた。
「海から侵入するには崖を雲の高さまで昇らなきゃいけないから、外敵は島の中にいる猛獣くらいだった。華やかさはないけど自給自足には充分で、時折来るニュース・クーの新聞が楽しみだったよ」
「商売意欲が強いな世界新聞社……」
「シキが支配するようになってから来なくなったけどね、多分追い返されているみたいだよ」
んん、もしかして前に見た怪我したニュース・クーって、この島に訪れていたからだったりして。
「そしてもうひとつの楽しみが、空を飛ぶことだったんだ」
「……だから海の魚も釣りに行けてた、ってか」
懐かしそうに遠くを見つめるマダム。空を飛べる人種なんて、おれは殆ど聞いたことがない。いてもそれは歴史の中に消えていったはず、そうなるとマダム達は相当レアな枠に入ってしまうだろう。
「淡水の魚とはまた違った味わいでね……これはあんた達も知ってるか」
「もちろんだ、うめェよな海の魚も」
「おれ逆に淡水の魚食べたことないかも」
「そうかい、そういうもんなんだねぇ」
食べ物の話に移ったからか、マダムの顔が少し明るくなる。
おれはシキは彼女達の特性を知っているのだろうかと考えて、知らないなと即座に否定した。もし既に知っているなら、マダムはおれ達に話すかどうか躊躇しなかっただろう。
この島から飛んで逃げ出さない理由は、長距離を飛べないからか、人質がいるからか、はたまたシキから逃れるほど速さがでないのか……全部かもしれないな。
そんなおり、ピクテルがキャンバスから電伝虫を取り出した。おれが受け取った途端に鳴き始めるそれに慌てて、テーブルの上の皿を除けて置いた。
「プルルルルル、ガチャ」
「もしもしヘーマで」
『ようやく繋がった! いま何処におるんじゃヘーマ!』
「うわっ」
受話器を上げて繋がると直ぐにジンベエさんの声が耳に刺さった。非常にうるさい。耳を押さえて嫌そうに顔を顰めたおれを電伝虫がトレースしたのか、『なんじゃあその顔は!?』とジンベエさんがヒートアップしてしまった。やべ。
「ジンベエさんこっち夜だから声小さくしてくれる?」
『何処にいるんじゃ!? 答えんかい!!』
「シキのお膝元だけど。もう一回言うけど声を小さくして。監視用の映像電伝虫が動き回っているから見つかっちゃう」
『もう潜入しておるんか……』
一転して疲れたような声に、おれも流石に罪悪感が湧く。でもごめんな、今回ばかりはおれも止まるつもりがないんだ。
『ぶわっはっはっ! えらい手際がいいのう!』
沈黙してしまった電伝虫から、ひどく場違いな楽しそうな笑い声が聞こえて来た。誰だろうこの人、声の感じでは受話器から離れているようだけど。
「……どちらさま?」
『む、わしか?』
『ちょ、受話器を取らんでくれんかガープ中将』
『代われ、いいじゃろちょっとくらい』
いまなんつった?
聞こえてきた単語にたらり、と汗がこめかみを一筋流れる。き、聞き違いかなぁ~、聞き違いだよなきっとうん、まさか海軍の英雄がいるなんてそんなはず──
『わしはモンキー・D・ガープ! 海軍中将じゃ! お前さんが白薔薇か?』
「……ソウデス。ヘーマといいます」
力強い堂々とした名乗りに、おれは言葉が少し片言になった。わあ、凄くルフィにテンションが似てるぅ。
『そうか。後で一発殴らせろ』
「嫌ですけど!?」
なんでだよ。海兵のお兄さんが言ってた、おれを殴ると公言しているのってマジだったんだな?
大砲の弾を楽々投げるような大男に殴られたら死ぬわ! 武装色の覇気を使えって? 向こうも使ってくるだろ当然!
『わしは殴ると決めた! なので絶対に殴る!』
「ええ……」
やっぱりこの意志を曲げない感じ、なるほどルフィの血縁者だと納得するしかない。長い付き合いをしてるらしいダダンさん達、相当苦労してんだろうなぁ。
「わっはっはっはっ!」
「ソルうるさい……はあ、もう切っていいよな」
『良くないわ! ガープ中将、もういいじゃろ!』
『むう……仕方ないのぉ』
しぶしぶ代わるガープ中将だが、本来の電話の主はジンベエさんなんですが。色んな圧が凄いなこの人。強引さがなければ海軍中将なんて務まらないのかもしれないけど。
「それでジンベエさん、村の方は」
『アラディン達に向かわせておるわい。もう一度金獅子が来ない限りは大丈夫じゃろ』
「よかった」
アラディンさん達ならアーロン達も村の人達も安心できる。色々フォローも出来るだろう。汚職海兵は帰ったかな、さっさと現場の証拠隠滅して帰ってると思うけど、残ってたらアラディンさん達がなんとかするだろう。
『お前さんが既に現地にいるなら丁度良い、わしらも向かうからそれまで待機しておれ。戦力が必要じゃろう』
「あー……」
これは海軍の作戦におれ達が組み込まれた感じかな。白ひげ海賊団も動くかもしれないと考えて、これを機に不穏な動きをする伝説の一角を堕とすつもりなんだろう。
それは大変助かるし、手を借りたいのはおれとしても山々なんだが。
「ごめん、ありがたいけど無理かな」
『なっ、事はお前達だけでは済まん! お前さんの家族の白ひげ海賊団も世界も巻き込むことになるんじゃぞ!?』
「そうじゃなくてさ」
ジンベエさんの焦る声を余所におれは耳を澄ませる。遠くから聞こえていたザッザッと土を踏む音が、今いる家の前で止まった。六人、か。
「迎えが来たみたいだ」
次の瞬間、バンと扉が勢い良く開け放たれた。
*
部下がトレーに載せて持ってきた電伝虫の受話器を男は手に取った。
「──おう、珍しいじゃねェか、おめェからかけてくるのは」
『ふん、流石に知らぬ存ぜぬするには筋じゃねェなと思っただけだ』
聞こえてきた旧知の声に、男はニヤリと笑みを浮かべる。性格としては全く合わないが、認めた強さを持つ相手とのやり取りはこの数年凪いでいた心をざわめかせた。
「で? おれに何の筋を通すって?」
『……おれの孫がな、てめェの本拠地を襲撃するらしい』
「は?」
疲れを滲ませた声に怪訝な顔をした男は、続けられた孫という単語に呆けた後、大声で笑い出した。
「ジハハハハ! なんだ、孫がいたのかニューゲート! ガキはいつ作った、やっぱりステューシーか? え?」
『違ェ、息子の子なら孫だろうが』
「そっちかよ。……まあ、いい。それでその孫がなんでおれを狙うんだよ」
『孫のダチに手ェ出されたかららしい』
「ほー、おめェのところらしい反応だな」
船員を息子と呼び家族とする旧知らしいといえばそうだが、件の孫は甘ったれだなと判断し、男の興味は薄れ気味となった。
「それでおめェの所を飛び出したってか」
『元から飛び出してンだがな、すでに手配書も出てる』
「金額は?」
『三億』
配下の統率が出来てない旧知が衰えていないかと量りつつ、計略を組み立てながら男は会話を続ける。
「なんだ、まだまだヒヨッコじゃねェか」
『当たり前だろうが、あいつは十一歳の坊主だぞ』
楽園でわんさか居るレベルの額に完全に興味を失う直前、十一歳の子どもというワードが男の心に引っかかった。
「十一歳……おい待て、それは確か二年ほど前に」
『当時は九歳でな、ちっとヤンチャして初頭手配で三億をかけられた方がおれの孫だ』
ああ、と男はようやく腑に落ちた。二年前、子どもとは思えない初頭手配の金額だと、男は部下の報告によって手配書を見た。その写真にひどく既視感を覚えた男は、ある可能性に気づいて腹を抱えて笑ったものだ。
「一緒に連んでいた奴も来るのか?」
『まあ、そうだろうよ』
「ジハハハ……そうかそうか」
最期を侮辱で終わらせられた奴の落とし胤、そいつが向かって来ているのならば男がやることはひとつだけだ。
「なら歓迎してやらねェとなァ!」