群青色を押し花に   作:保泉

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認識を揃える

 

 壊れるかと室内の全員が思うほどの勢いでドアを開けたのは、数人のスーツ姿の男達だった。反動でドアがギィギィと軋む。

 男達の纏うスーツはそこそこ質の良い生地のようだけど、おれを見る欲を隠せない鼻の下がのびた顔でそれらは打ち消され、上品さは皆無だ。

 ……あ~、これ性別間違えられているやつだな、何処とは言わないが後で潰そう。

 

「若鬼のソルと白薔薇のヘーマだな」

「おう」

「そうだけど」

「大親分がお呼びだ。我等についてきて貰おう」

 

 気を取り直したのかキリッと顔を整えた男が言うには、連行ではなくあくまで同行依頼のつもりらしい。侵入者に対してだというのに扱いが丁寧なのは、もしかしたらおじい様から金獅子のシキに連絡がいったのかも。

 多分、ジンベエさんから回ったかなぁ、出来れば知られる前に奇襲したかった。島雲ゴーレムの準備に時間がかなりかかって、無理だと殆ど諦めていたから別にいいんだけどさ別に。

 

「いいよ。……ではマダム、お世話になりました」

「あ、あんた達……」

「実は賞金首なんだ、おれ達」

 

 なるべく酷薄な笑顔になるように表情を作る。おれを見たマダムの肩がビクリと跳ねたことで、罪悪感がチリチリと心を炙るなぁ。いやいや仕方ないんだ、彼女が襲撃者に加担したなんて報告されたら、どんないちゃもんを付けられるか。

 

「騙して悪かったね」

「あ……」

 

 海賊に丸め込まれて良いように利用された、そういう印象をシキの配下達に持たせられれば、すぐに彼女の身が脅かされることはないだろう。武力など持たない一般の女性だし。この世界の海賊はすぐ戦闘力で判断しがち。

 先にドアを潜って外に出たソルに続く直前、おれは眉を下げて彼女に謝罪する。ハッとした顔になったマダムの横を通り過ぎてバタンとドアを閉めた。……恨まれる覚悟すらないのか腰抜けめと、自分の八方美人さに苛立った。

 

 

 男達に連れられていった先は村の外では、草原の上に浮かぶ島があった。これが話に聞いた空を飛ぶ島船だろう、砦がそのまま浮いたような見た目のそれは、相当な人数が乗り込むことが出来そうだ。

 どうやらそれに乗って上の島に上がるようだが、本来の港ではないからか梯子を使って乗り込むらしい。流石に無理がないか。建物の五階まで登るようなもんだぞ。

 はあ、とため息をついて、おれはイオンオーデー号を取り出した。

 

「なっ、船が出てきた!?」

「これが、収納の能力……この大きさすら持ち運びができるのか!」

「全員乗って。あの船までは乗せてくから」

 

 なんか能力を勘違いされてるけどいいや、おれにとって都合がいい。あながち間違いではないしな。降りてきたタラップに乗って手招きすると、慄いていたシキの部下たちはおそるおそる乗ってきた。

 

 同じ高さになった島船に乗り込んでからおれが船をしまうと、ゆっくりと上昇していく。おれはちらりと船を見渡す。この船には金獅子のシキは乗っていないだろうに、遠隔操作も可能とか……なるほどこれが悪魔の実の能力を使いこなすということか。

 

 浮かび上がって近づいた一番上の島は冬島のようで、雪吹雪の向こうに和式──この世界でいうならワノ国風となるのか、瓦屋根の城が建っているのが見えた。どちらかというと寝殿造りのようだから屋敷と言った方が正しいのかもしれないが。

 

 根元が太いバオバブに似た白い幹の木々が囲む城の前の広場を通り、大きな金色の門を潜る。うわ、実際に寝殿造りだ。今でなければ描きたいくらいの立派さにおれは内心で感嘆する。なんてタイミングが悪い。

 冷たい空気の中で靴を脱ぎ、冷え切った板張りの床を踏みしめる。板の音を鳴らして引き続きシキの部下たちに囲まれながら通されたのは、何十畳もある大広間だった。

 

 煌びやかな金の襖、その最奥に設置された椅子。それに腰掛けた毛量の多い金髪の男──金獅子のシキはじっとおれ達を見据えていた。

 

「よくきた。まあ、座れ」

 

 ニヤリと笑ったシキに促されて進む。手に持っていた木刀を左側に置き、用意された座布団にあぐらを掻いて座る。隣にソルが座った後「手配書は見たが」とシキは顎を擦りながらまじまじとおれ達を見回した。

 

「これまた随分と整った面だな」

「よく言われるよ」

「ニューゲートの奴から連絡があってな、孫がこのおれを襲撃するってことだったが……その目、どうやら冗談じゃねェらしい」

「冗談でここまで来るほど吞気じゃないんで」

「ジハハハハ、生意気なガキだ」

 

 知り合いの身内だからか、想定よりも金獅子は気安く笑う。気安いと言ってもあからさまに値踏みをしてくるわ、なんならおれよりソルの方ばかり見ている。とても露骨。

 言葉にしてこないということは、まだ海賊王本人だとバレてなさそうだが、海賊王の息子の可能性は大海賊の興味を引いてやまないらしい。

 

「これはあの野郎、かなり手ェ焼いてんな。……で? 隣の坊主と二人がかりならおれを獲れるとでも思ったのか?」

「ん? 違うぜ」

「ソルは見届け人だ」

 

 でもアンタが興味を持つのは自由だが、今回の相手はおれだ。なんか横でうずうずしてる奴がいるけど、おれの番だからダメだぞ。あれだけ念押ししたのに足りなかったか。

 

「襲撃するのはおれだけだ」

 

 おれがそう宣言した瞬間、前方の殺気が膨れ上がった。金獅子からではない、シキの配下達のものだ。それぞれが胸元に手を差し入れたり剣の柄に手が伸びたりと剣呑な空気が大広間に広がる。

 

「──小僧共、イキがるのもいい加減にしろ!」

「よせ、別にいい。なに、若ェ頃は誰でもこうなるもんだ。別に血気盛んな奴は嫌いじゃねェ」

 

 今にも発砲しそうな部下を止めたのはシキだった。……ふーん、これくらいじゃあ感情はあまり揺るがないか。実際、おじい様と同世代だから、おれのことなんて子犬がキャンキャン吠えてる程度にしか思われてないんだろう。

 

「坊主、随分と自信があるみてェだが……例えばこうなったらどう対応する?」

 

 金獅子がパチンと指を鳴らす。その合図で両サイドのふすまが大広間側に倒れ、武装した海賊達が姿を現した。数名二階にもいるようで、うっすらとふすまが開いて銃口が覗いていた。

 

「へへへ……」

「クックックッ」

 

 おれのどんな反応を期待したのか、ニヤつく部下の海賊達に視線も向けずに、おれはじっとシキの姿だけを見続けた。

 

 だからこそわかった。このクソジジイはおれに興味を殆ど持っていない。

 

 金獅子のシキの興味はソルが大半で、むしろソルの実力を試したいと思っていることが。

 おれが白ひげ海賊団所属で、ソルは無所属ってことが影響しているのだろう。ロジャーの身内らしき青年を、自身の海賊団に引き入れたいのかもしれない。

 

「やる気いっぱいなのはいいが、戦力差を認識することも大事なことだぜ。意地張ってねェで二人でかかって──」

「さっきからさァ、チラチラとなにソルばっかり見てンだよ」

 

 海賊王の息子。その存在を重要視する気持ちはわかる。シキは無意識にソルの正体に気づいているのかもしれない。ロジャーへの関心の強さが根底にあるのなら、あまりにもそっくりな存在に引き寄せられるのも無理はない。

 

 それは理解はできるが──ケンカを売りに来た相手からこうも眼中に無いということが、こんなにも、腹の奥底から湧き上がるほど腹立たしいとは思わなかった。

 

「てめェの相手は──おれだって言ってンだろうが」

「!?」

 

 おれはそれまで頑張って抑え込んでいた覇気を解放する。方向性を考えずに放たれたそれは、おれを嘗めて無警戒だった海賊達の意識を容易く刈り取った。

 

 ……なんだ、これで気絶するようなヤツしかいないのか。

 いや、こんな場所に隠れているなら当然かとおれは落胆した心を宥める。安全な拠点と慎重な計画は荒くれものの海賊とは相性が悪い。実力があるなら尚更、集団で動こうなんてしないやつらばかりだ。

 勢力の維持のため徒党を組む、つまり数を強みとするなら個々の実力は低い傾向にあるだろう。

 

「どれだけ数がいようが変わらねェよ。全部落とせば──ゼロだ」

「……覇王色の持ち主か。ジハハハ、あの野郎が目をかけるはずだな、見所はあるってことか」

 

 ”見える”限り、大広間付近にいる海賊達は昏倒している。だが、近くにいない奴らはまだ元気そうだな。走り回っているそれらを見つけて、おれは隣に座るソルを見上げた。

 

「ソル」

「範囲外の奴らは相手しといてやる」

「ありがと」

 

 立ち上がって剣を片手にソルは大広間の出口に向かって歩いて行く。これは事前に話し合って決めたことだ。この場に残ればソルはロジャーとしての仕草を隠せない。絶対そわそわうずうずして、耐えきれずに交ざりたがるだろう。

 

 そう、交ざる。

 おれの代わりに戦うとかじゃあなくて、おれとシキの両方と戦う為に交ざる。

 

 どうして伝説の二人を同時に相手しなきゃいけない可能性が出てくるんだよ。話し合いの時に絶対にやるなよとソルの頬を抓れば、笑って誤魔化されたので現場から離すことになった。

 

 金獅子は出ていくソルを引き止めなかった。後で勧誘するつもりだろうな、ま、そんな時間は与えるつもりは毛頭ないけど。

 

「そうだ、建物を壊したくないなら外に出てやるけど?」

「いらねェ気遣いだな。旧知の孫と遊んでやるのも先達の務めってもんだ」

 

 さて、どう騙すかね。木刀を握り締めて、おれはゆっくりと腰を上げた。

 

 

 

 

「これは」

「建物が揺れてる……?」

 

 窓に填められたガラスが震えている。自身に課せられた勉強を終えたナミは、机から離れてベッドに横たわる母にぴたりと引っ付いた。怖がる娘の肩を抱き寄せたベルメールは、じっと部屋の外から聞こえる音に耳をすませている。

 走る足音に怒号。悲鳴は聞こえないが何かのトラブルは起きているのだろう。

 

 バンとドアが開け放たれた。

 

「──まだここにいたか! おいお前達もすぐに避難しろ!」

「なにがあったの!?」

「襲撃だ! 海賊が乗り込んできた!」

 

 ドアを開けたのは気象予報士の男だった。シキ直々の勧誘とあって遠巻きにされていたナミ達をなにかと気にかけていた男は、焦ったようにトラブルについて端的に説明し、すぐに同じ勢いで部屋を出て行った。他の人間にも声かけをするのかもしれない。まだ入って日が浅いのか、海賊に染まりきれていないのだろう。海賊に搾取される民間人の姿に、ベルメールの気が沈む。海兵として感じていた無力さは、退役しても変わらないものらしい。

 

「乗り込むって、ここ空に浮いてるのよ……あたた」

「ベルメールさん!」

「大丈夫大丈夫、ちょっと変に力入れちゃっただけ。さ、コートを着て逃げようか」

 

 立ち上がった拍子に呻いたベルメールは、眉を八の字にしたナミにニコリと笑いかける。娘にコートを羽織らせて自分のコートを手に取った。

 

 ふらつきそうな足に気合いを入れて彼女は廊下を踏みしめる。そんな母を気遣いながら、ナミはベルメールを引っ張るように手を引いて進んでいった。

 

「うっ……」

 

 だがその速度は極めて遅かった。ただでさえ血が足りない上に、身動きする度に激痛が全身にはしる。海兵としての過去がなければ、到底歩くことなど耐えられない身体。意地と根性で進めた足も時間が経つほどに力が抜け、ついに膝が折れて地面に身体を打ち付けそうになった彼女を、横から支える腕があった。

 

「大丈夫ですか!?」

「あなたは……」

 

 そこに居たのは男女二人、簡素な衣服を着た男がベルメールを抱え、給仕のような恰好の女が駆け寄って来た。

 

「ひどい怪我だ、おれが背負いますから乗って」

「えっと」

「いいから早く!」

「さあ、あなたも!」

 

 見知らぬ人間に戸惑うベルメールとナミを強引に背負い、しっかりつかまってと声をかける。おそるおそる首に腕を回されたことを確認してから、二人は屋敷の更に奥へと走りだした。

 

「ねぇ、海賊の襲撃はよくあるの!?」

「ハァ、ハァ……いや、初めてだ!」

「この島は、空に浮かんで、いますから……ここまで来ることなんて!」

 

 揺れで痛む傷を意識の外に押しやって、出来る限り今の情報を得ようと彼らに話しかけると、あっさりと答えてくれたことにベルメールは拍子抜けした。海賊の仲間だと思っていたが、もしかしたら違うのかもしれないと、少しだけ警戒のレベルを下げる。

 

「……おかしい」

「えっ」

「さっきから誰ともすれ違わない」

「どうして私たち以外いないの……?」

 

 立ち止まり、周囲を伺う男につられてベルメールが周りを見回す。四人はすでに屋敷の奥にまでたどり着いているのに、先に逃げていただろう者達が一人も見当たらず、僅かなささやき声すら聞こえない。

 

「えっ、お姉ちゃんは誰?」

「ナミ?」

 

 キョトンとした娘の声にベルメールが振りむけば、そこには輝くような金の髪の、女神のような美貌の女がいた。彼女はにっこりと微笑むと、そっと呆然と自身を見る少女に手を伸ばす。

 

「わぁ!?」

「ナミ!!」

 

 白い板のようなものに押しこまれて吸い込まれる娘に声を荒げた直後、ベルメール達も同じように迫る白に意識が暗転した。

 

 

 

 

 

 大海賊であるシキは苛立ちを抑えられなかった。

 

「……おいおい」

 

 シキと気は全く合わないが、昔同じ船に乗った仲であるニューゲートの孫だ。わざわざ空に浮かぶこの島まで乗り込んでくる度胸といい、先程の発した覇気の強さといい、どんな面白いことになるだろうかと期待していた。

 

「小僧、てめェいい加減にしろよ」

 

 それなのにだ。

 

「なんでさっきから防ぐだけで攻めてこねェんだ。やる気あンのか!?」

 

 あれだけの覇気をぶつけてきていながら、ヘーマは全然向かってこない。子どもはシキの攻撃を防ぐばかりで……まあ掠ることもなく防ぎ続けていることは評価できるが、たった一太刀もぶつけてこない。

 

 亀のように防御にまわっている少年に、一体お前はここに何しに来たのかと、シキが苛立つのも当然だった。

 

 一方、ヘーマは澄ました顔でジッとシキの様子を窺ったままでいた。彼はただ待っているだけだった。

 

 不意に、子どもの横に金髪の女が現れた。攻撃の手を止めたシキは眉を顰める。それを気にとめず、ヘーマは隣に現れた半身の姿に「よし、避難が終わったな」とにっこりと嬉しそうに笑った。まるで楽しみにしていたプレゼントを貰ったような、無邪気な笑み。

 

「これで思いっきり戦える」

「あ?」

 

 誰が見ても楽し気な顔になった少年に気づいたシキのこめかみに、くっきりと筋が浮かび上がった。鋭い目つきで剣呑な表情のままスッと右手を前に突き出せば、周囲に散らばる剣や銃が浮かび、ヘーマに剣先や銃口が向けられる。

 

「おいてめェ、まさかおれ相手に手加減したとか、ふざけたことをぬかすつもりじゃねェだろうな……?」

「んなことするか。手加減してたのはあんたにじゃあない、この建物だ」

 

 向けられた銃口に怯むことなく、ヘーマはピクテルに先ほどまで使用していた木刀を渡し、代わりに本物の刀を受け取る。

 彼が家族達から金獅子についていくらか聞いていた話と実際に会った印象を合わせると、シキは海賊らしい海賊で手段は選ばないタイプだとヘーマは推定していた。

 そのため、少年は人質になりえるこの屋敷にいる人間すべてを、ピクテルに回収するように頼んだのだ。

 

 全ては思いっきり、気を散らすことも咎めることもなく、心置きなく目の前の野郎をぶっ飛ばすために。

 

「おれはこの形だからな、筋力が足りないなんてよーく身に染みてるよ。だからこそ──覇気だけは自信がある」

「──ッ!」

 

 子どもが刀を構えた。たったそれだけの動作でシキは“見えた”結果を防ぐべく、突き出していた手を握り締める。

 次の瞬間、浮き上がっていた武器のすべてが、一斉に引き金を引かれた。発砲音と金属の高い音色がいくつも重なり合い、不協和音が響くなか、投げられた煙幕によって煙が広がる。

 

「ふん」

 

 煙の中から飛んできた剣閃を、一歩下がることでシキは避けた。避けたそれが背後の柱を切り裂くのを目撃して、金獅子はつい舌打ちする。

 

 煙が収まったそこには、無傷のヘーマが抜き身の刀を手に佇んでいた。周りには細切れとなった銃や剣などの武器の数々、ヘーマは塞がれた視界の中で、四方から迫るそれらを全て切り落としたのだ。

 

「コイツ、全部切り捨てやがっただと……それに柱を切って天井を落とす気か?」

 

「あ、やっべ。つい勢い余って天井切っちゃった」

「失敗してんのかい!」

 

 しまった、と顔に出したヘーマにシキがツッコミを入れた。

 

 ヘーマはいつも通りに刀を振るったつもりだったが、想定よりもかなり威力が出て柱と天井をへし折ってしまった。「おっかしいなァ」と思うように覇気の量が調整できなかったヘーマは首を傾げる。

 彼は絵の題材とするべく出来るだけ建物を綺麗に残そうと思っていたが、やりすぎた結果崩落の危険性が高くなってしまった。ヘーマは残念そうに息を吐く。

 

「油断している内にスッパリいく予定だったんだけどなァ……ドンマイおれ」

 

 体躯の大きさの違いと宙に浮かんでいるためヘーマを見下ろすシキは、すり、と己の首をさする。先程の一斉射撃がなければ、油断しきっていたこの首は目の前の『海賊』に落とされていただろう。

 

 十年の潜伏は大海賊の勘を大いに錆び付かせ、危うくひよっこに仕留められるところだった。

 

 覇王色の持ち主、そう知っているにも関わらず弱者とシキは錯覚させられていた。友の為に喧嘩を売りに来たこと、正々堂々と乗り込んで来たこと、さらにあのニューゲートの孫だから搦め手は使わないだろうと、人となりを何一つ知りもしないのに思い込まされていた。

 

 それら全ては目の前の『海賊』の仕掛けた、シキを仕留めるための罠だった。

 

 此処に来て二人の海賊はようやく互いを敵と認識し、戦意を獰猛な笑みに変えて敵意の込めた視線を向け合うことになる。

 

「そりゃ残念だったな、もうチャンスはない……が、まだまだやる気みてェだな」

「当然だろ、勝つのはおれなんだから」

「よかったぜ、おれもてめェを殺したいと思い始めたところだ」

 

 

 

 

 

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