群青色を押し花に   作:保泉

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大切なおれの

 

 

 二週間という日数を赤髪海賊団の船「レッド・フォース号」に居候することが決まった後から、おれは大抵ウタちゃんと行動を共にしていた。

 これはおれの身の安全を確保するため。赤髪海賊団でも狙われやすい子どものウタちゃんと一緒にしておくことで、まとめて守ることができるからだ。

 まあ、効率よく護衛をするならそうなることは納得するし同意もする。

 おれも絵を描いていて動かない間、誰かひとり傍でぼーっとさせておくのは心苦しい。だから居候し始めてからは船の中で人物のデッサンしかしていない。

 

 つまり日中は音楽の勉強に来国したウタちゃんと行動することになり、そして流れでおれも一緒にレッスンを受けることになる。

 その時間、彼女の非凡な音楽の才能を目の当たりにして、おれは場違いじゃないかなと慄くことも多かったのだけど。

 

「今日はなんて素晴らしい日だ。こんな才能溢れる若い蕾たちに出会えるなんて」

 

 まさかウタちゃんと行動を共にしたからって、国王に謁見することになるとは思わないじゃない。

 それとたち、って複数形にされたけど、おれは年齢詐称しているようなものなので、どうぞ含めないでください。

 

 エレジア王国国王、ゴードン様の前でおれは表面上は笑顔を繕いながら、頭の中でどうしてこうなったとツッコミの嵐だった。

 

 

***

 

 

「ヘーマも一緒に歌おうよ!」

 

 そんなウタちゃんの誘いにのったのが切っ掛けだったと思う。

 

 最初の頃は、彼女の歌にあわせてバックミュージックに勤しむくらいだったんだ。いつもはパンチさんが伴奏していたみたいで、同年代のおれが一緒にセッションするのがウタちゃんはとても嬉しかったらしい。

 

 そんな彼女に請われて歌も一緒に、ということでおれは楽器をヴァイオリンからピアノやアコーディオンに切り替えた。

 でも、想像してみてほしい。

 九歳の子どもがヴァイオリン、ピアノ、アコーディオンと複数の楽器で正確極まりない演奏をしたら、周りからはどう思われるかを。

 

 はい、傍から見ても将来有望ですね。

 

 あれよあれよとおれまで呼び出された。くっそ、自業自得で国王に謁見とかそんなの想定できるかってんだ。まあ、おれはオマケなんだろうけど。

 

 歌についてはおれは自前のカラオケ程度の歌唱力しかない。前世では歌には手を伸ばさなかったからな。

 ちなみに、前世で一番歌が上手かったのは承太郎だ。あいつ、父親が世界的なミュージシャンだからか、ジョースター一族で一番音楽に長けていた。殆ど発揮する場面はなかったけど、身内のカラオケで子どもたちがねだりにねだって歌わせていたなぁ。

 

 そんな明らかに一般的な技能しか持ってないおれまで、ウタちゃんと一緒にレッスン参加させなくてもいいじゃないの。

 一部の講師はウタちゃんの才能に目の色を変えてるみたいだけど、そんなことしなくても彼女楽しそうに歌ってるだろうに。

 

 んんー、ちょっと気にして見ておくかぁ。レッスン室にはシャンクスさんたちも入室していないから、講師たちのウタちゃんを見る熱の大きさに気付いていないはず。

 海賊の娘なんて可哀想とかなんとか言って、余計な気遣いをする輩がいないとも限らない。強引な手を使ってきたら、ウタちゃんを抱えて逃げれるようにしておこう。

 

 幸いなのは、国王であるゴードン様がウタちゃんの才能を喜びこそすれ、何が何でも磨きたいと思ってなさそうなことか。エレジアに残るように厳命したり、無理矢理親元から引き離すようなことはしないと思う。

 一部の他の人はなぁ、ちょっと怖いんだよなぁ……。

 

 そんな寛容と優しさ溢れる国王様とはいえ、謁見自体はストレスがすさまじいんだがな。明日もあんだぜ、たすけて。

 

「白ひげと対面できるのに、国王にはビビるのか」

「おじい様は強いからおおらかですけど、ゴードン様は普通の戦闘力だから周りが威嚇するでしょう」

「なんだ、面倒が嫌なだけか」

 

 椅子に腰掛けて肩に銃を担いだまま、たばこの煙を吐き出すベックマンさんは、テーブルにでろんと垂れるおれを見て喉で笑う。

 行動を共にするウタちゃんとおれだが、互いの興味の先が異なるときは別行動することもある。その際、おれのお守りはベックマンさんが担うことが多かった。

 画材屋や本屋に行ったり、船でベックマンさんの本を借りて読んだりと、ウタちゃんに比べておれが大人しかったこともあるだろう。あまり行動を制限されずに、ゆったりおれの傍をベックマンさんはついてきていた。

 わざわざ副船長をお守りに付けたのは、白ひげ海賊団に対する配慮かな。

 

 なお本日の謁見後、レッド・フォース号に戻ってへばっているおれとは違い、ウタちゃんは元気に街に繰り出している。

 

 国王との謁見に緊張していない、とかではなくて、あの子が地位とか身分とかを全然理解してないんだろうなぁ。海賊しているとそういう枠にはまったく触れないから仕方ないけど。

 

「いつか、ウタちゃんにも世界貴族について説明した方がいいですよ」

「……ヘーマも説明された口か?」

「うわ怖っ、察し良すぎる……そうです。お父様に拾われた後に聞きましたね」

 

 助詞の使い方で察する程度には、共に過ごしておれを知られたということかもしれないけど、いや、なるほど。赤髪海賊団の頭脳はベックマンさんか。奔放な船長の右腕ということにとても納得した。

 

「聞いてろくでもないと思ったし、おれが狙われやすいという危険も理解しました。事前に聞いて良かったとも。

 もし教えてもらわないで知らずにいつも通り振る舞って……その結果お父様たちや親しくなった人が傷つくことになれば、おれは後悔していた」

「……」

「目隠しして満足するのは本人以外ですよ」

 

 手厳しいな、と目を伏せるベックマンさんからおれは光が揺れる波に視点を移した。おれもみんなに目隠しをされて、しかもそれを受け入れているから、強くは言えないんだけどな。でもいつか、おれの奥底に刻みつけられたトラウマと向き合う日は来るんだろう。

 

 ウタちゃんはきっとまだ傷もなくてまっさらだ。明るい赤髪海賊団の大人たちに大事に守られている。

 知らなければ先入観なくその人を見ることができるだろうが、天竜人の場合は知らないことが致命的だ。

 

 彼女が、希代の音楽の才能を持っているのなら猶更のこと。

 

「伝え方に困っているなら、おれから話してもいいですよ?」

「フゥー……いらねェな。子どもに押しつける気はねェよ」

 

 気を遣わせて悪いな、とぬっと大きな手が伸びてきておれの頭をガシガシと撫でる。ううん、まるでゴールデンレトリバーのような大型犬を撫でる手つき……少し心に掠めるものがあるけど、いっそこういう撫で方するのはベックマンさんだと上書きするのもいいかもな。

 お父様は、丁寧に撫でるから。

 

「最初に本気で描くの、ベックマンさんにしようかなぁ」

「おれか? それはお頭が拗ねそうだ」

「ふふふ、だって描きたいと思ったときにいないんだから、しょうがない」

 

 かばんからスケッチブックを取り出す。そうだな、水彩画にしよう。下絵を描いて、色をのせる。まだ太陽は高いところにいるから、夜になるまでには完成するだろう。

 

「じっとしてりゃあいいのか?」

「動いても席を立っても大丈夫。ただ、完成するまでおれは返事をしなくなるだろうから、夕飯の時間になっても続けてたら、おれの手を止めてほしいな」

 

 こうやって強制的に、とペンを持つ形にした右手を左手でガッツリ捕まえる様を見せると呆れた顔をされた。

 まあ、うん。殺気を向けられても止めないことは前世で実証済みだ。

 

「いつもは船に戻ってから描いてますよ?」

「今回は?」

「友達の船だからいいかなって」

 

 おれの言葉にベックマンさんがいつも鋭い目を丸くして。確実にレアだろうその表情に、おれは声を上げて笑う。

 

「ははっ! いまの顔で描いちゃおうかな」

「……やめろ。折角の絵を破りたくはねェ」

「おれも破られたくはないよ。うそうそ、やらないって」

 

 眉間の谷をくっきり刻んでいる彼に、おれは両手を上げて降参する。やらないから銃を持つ手に込めた力を抜いてほしい。

 

「所属の違いを気にするのは止めたのか」

「やめた」

 

 立場を気にしとくの面倒くさくなったと頬を掻くおれに、ベックマンさんは不死鳥も大変だなとぼやくように口にする。

 でも顔が笑いを耐えてるから、ご愁傷様と言いたいのかもしれない。

 

 うん、ごめんなさいお父様、これからも気苦労を掛けそうです。

 

「おれの友達一号はベックさんね」

「ハァ……ウタとお頭が騒ぐのが目に浮かぶ」

「ウタは友達二号が内定してる。シャンクスさんはどうしようかな」

 

 一回スルーしたほうが反応が面白い気がするんだよな。その悪戯心を悟られたのか、面倒くせえことになるから止めろと頭を小突かれた。

 結構な痛みを伴ったそれにテーブルに突っ伏しながら手のひらで負傷部分を覆っていると、わぁわぁと騒ぐ賑やかな声が近づいてくる。あ、ウタたちが帰ってきたっぽい。

 

 起き上がって靴を脱いで椅子の上に立つと、紙袋を抱えた親子と後ろに続く木箱を抱えた男たちが見えた。

 

「ウター!」

 

 大声で呼んで手を振れば、気付いたウタが同じように手を振り返してきた。

 

「ウタはおれの友達二号なー!」

「……! うんっ……って二号ってなにー!?」

「一号はベックさんだからー!」

「「「なにィーッ!?」」」

 

 にこやかに言い放てば、返ってくる驚愕の声が複数。楽しくなって大笑いするおれの後頭部を、ガシリと掴んだ誰かの手。あ、やべ。

 

「わざわざ騒ぎをデカくすんなって意図は通じなかったか……?」

「スミマセン」

 

 よく響く低音の声音とギリギリと力を込められるこの感じ、とても懐かしい思いでいっぱいだ。よーし、やっぱりおれが乱雑に扱われるのは自業自得ってことだな。理解しました。

 

「どうしてベックが一番目なの!?」

「ヘーマおれは!? おれは三番目か!?」

「えっ……シャンクスさんは友達のお父さん」

「!?」

「嘘です。ちゃんと友達です。揶揄ってごめん待って泣かないですみませんでした!?」

 

 雪崩れ込むように船に乗り込んできたウタとシャンクスさん。ガクガクとおれを揺するウタとは違って、俯いた彼に焦る。……少しとぼけただけで泣くとは思わなかったよ本当にどうしたシャンクスさん。

 

 慌てて駆け寄るとガシッと両手を掴まれた。んん?

 

「つかまえたぞ」

「……泣きまねっ!?」

 

 伏せた顔を上げてにんまりと笑うシャンクスさんに、涙の跡はない。嘘泣きかよ。つーか、どうしておれの両手が拘束されてるんですかね!?

 

「いまだウタ、全力でこしょぐれ!」

「ラジャー!」

「まっ、あひゃひゃやめはははは!?」

 

 こっそりおれの背後をとったウタが、無防備な横腹を容赦なく擽ってきた。ちょ、擽るの上手いっていうか慣れてんな!?

 身体をひねって抗っても手の拘束と脇腹の手は外れず、おれはしばらく呼吸に難儀することになった。

 

「ふ、二人がかりは卑怯……」

 

 息も絶え絶えなおれに向かって、シャンクスさんとウタは口の端を吊り上げて笑う。うわ、悪い顔。

 

「何言ってるのヘーマ」

「おれたちは海賊だぜ?」

「大人気ないって意味だっての」

 

 なにを格好つけて堂々と言ってるのか。くすぐりで出てくる台詞じゃないだろう。明るく笑う二人の頬を立ち上がってから軽くつねって、おれもにっかりと笑った。

 

「ウタ」

「なに……え」

 

 あまり背の高さが変わらないウタをギュッと抱きしめる。左頬を合わせてリップ音を鳴らし、右も同じようにする。

 

「なにこれ?」

「親しい人にやる挨拶だよ。知らない?」

「知らない! 私もやる」

 

 ニコニコしながらおれの真似をして挨拶を返してくれるウタ。うーん、やっぱりこの挨拶って一般的じゃないのかも。みんな驚くし。

 

「……っておい! ヘーマおまえウタになにして」

「シャンクスさんも挨拶ー」

 

 突然大声を出したシャンクスさんに抱きつく。しゃがんだままだったから抱きつきやすいな。

 ウタにしたのと同じように挨拶をして手を離すと、整った顔の美丈夫が唖然とした表情で固まっているのが可笑しかった。

 

「これからもよろしく、おれの友達」

「うん!」

「「「いやいやいや!」」」

 

 笑いながら言葉で挨拶をしめれば、おれたちのやり取りを見ていたみんなが揃ってツッコミをいれた。

 

「まてまて、今のなんだヘーマ」

「挨拶ですけど」

「挨拶……あのものすごく距離が近いやつがか」

 

 うそだろ、ってヤソップさんが言うけど、嘘じゃないって。おれの前世で普通にやってたし、今生でもおれお父様とおじい様にしたからな。

 少し憤慨しながらベックさんに近寄れば、おれもかと呟かれて頷く。ベックさんだけじゃなくて、みんなにもするよ。

 

「不死鳥は何も言わなかったのか」

「本当に親しい人以外には絶対にするなって言われたよ」

「……するつもりだったのか」

「初めましての挨拶だからね」

 

 答えてからベックさんに挨拶しようとしたときに、手を前にかざされて止められる。おれの犬扱いが止まらない。

 

「子どもとはいえ野郎と頬をくっつけるのはな」

「あー、確かに」

 

 なるほど、確かにこの挨拶はイタリアでは子どもから大人へ、または男女でするものが一般的だ。女好きだろうベックさんなら拒否するか。

 

 でもやりたいなぁ、おれのこの世界の初めての友達なのになぁ。

 

 ……ん? ピクテル任せろってどういうこと?

 いつの間にか出てきていたピクテルが、自信ありげにキャンバスを出している。……なるほど?

 でもキャンバスは更に混乱させるだろうから、やめとこっか。

 

「へ、ヘーマ……それ、なに? おばけ?」

「あ。そうかウタは能力者だっけ。ピクテルが見えるのか」

「うん、お面と手袋が浮いてキャンバスを持ってるよね?」

 

 先ほどよりちょっと離れた位置にいるウタが、ピクテルを指さして怯えている。ごめん、初見はどう見ても幽霊なんだけどおれの分身なので怖がらないでほしい。

 

 先日知ったことだけど、ウタウタの実を食べた彼女は、歌うことで聞いた相手を夢の世界に連れていく能力がある。

 初見殺しで、制圧に優れた能力だよなぁ。現実世界の身体は眠ってしまうようだから、歌いながら歩いたりスピーカーで広範囲に響かせれば、無血開城すら出来てしまう。

 だからこそ色んな勢力に狙われるだろう彼女に、おれとしてはできる限りの知識を付けてほしい。

 

「そこになにかいるのか」

「ちょっと待ってね、いま能力者以外にも見えるようにするから」

 

 背筋を走る悪寒に顔が引きつりそうになった。突然の威圧感ヤメテ。表情が変わらないのが本当に怖いんだよ。

 

 ピクテルー、はやく仮面外してピクテルー!

 ウタが怯えたからか、シャンクスさんたちからの圧力がメッチャ強くなってきたから早く!

 

 慌ててピクテルも仮面を外し、ふわりと彼女の豪奢な金色の髪と紺色のドレスが揺れる。突然視界に現れた彼女に目を瞬かせるみんなを余所に、おれは気付かれないように小さく息を吐いた。ふう、間に合った。

 

「おれの分身のピクテルです。自我はありますがおれと感覚を共有しています。絵のためなら手段を選ばないこともあります」

「わあ、綺麗な人だね!」

「んん、反応し辛いけどありがとうウタ」

 

 仮面よりは怖くなくなったのか、ウタがおれの傍に戻ってきた。キラキラとした目でピクテルを見ている。お姫様みたいだそう。ドレスだからかな。

 とりあえずピクテルにスケッチブックからリンゴを出して貰う。それをポンと渡されて、シャンクスさんはまじまじと手の中のリンゴを回した。

 

「おれの生命力で作っているから、病気の時に食べると回復の助けになるよ!」

「よし、あまり多用するなよ」

「あれ?」

 

 シャンクスさんは神妙な顔でおれにリンゴを返した。食べないの?

 おれの疑問顔にシャンクスさんはグシャグシャと頭をかきむしった。

 

「あのなァ、聞くが次々絵から出したらおまえはどうなる?」

「やり過ぎると死ぬね」

「おい」

 

 美丈夫にこいつまじかという顔をされた。まことに遺憾である。

 

 うーん、これは心配してくれてるんだろうな。この件についてはイゾウさんにやんわりと窘められたから、それ以降は誓って無理はしていない。

 前世のスタンドが発現したばかりの頃とは違って、ちゃんと制限してるから大丈夫だ。むしろ初めてスケッチブックから出した時点ですでに生命力は消費しているから、このリンゴは気にせず食べてほしい。

 それに普段使うのは大抵倉庫代わりだからな。絵になってる間は劣化しないから、食料入れておけば腐らないという便利さ。これのお陰でおれはほぼ手ぶらで旅ができている。

 

「子どものうちは頻繁にはやらないよ。それにこれ、現実から物を入れることもできるんだ。……ほら」

「うわ、ウチの椅子がスケッチブックに飲み込まれた」

「おお……すげェな、絵になってる」

 

 スケッチブックに吸い込まれる椅子に盛り上がる面々。おっと、破くと出せなくなるのでおさわり禁止ですよ。

 

 向こうでベックさんが頭が痛そうに額に手を当ててるけど、ピクテルを紹介した目的を達成しなくては。

 おれの意を汲んだピクテルがふわりと近寄る。彼女の接近に手を下げて様子見しているベックさんに、ピクテルは首に腕を回して抱きついた。──後は同じ流れである。

 

「おれだけど、女の子のピクテルだったらいいかなって」

「美女を拒むのルウくらいしかいねェだろ、これは」

 

 おれの時とは違って、まったく抵抗しなかったなベックさん。流石第一印象シーザー並の女誑し。比べて、ルウさんって女性苦手なんだ。チラリと周囲を見回してみれば、ピクテルから一番遠いところに彼はいた。そんなに苦手なんだ……。

 

 怯えてるようなルウさんに気を取られていたおれを小脇に抱え、ホンゴウさんが船内へ歩き出す。

 突然の手荷物扱い。あの?

 

「不死鳥のマルコから、ヘーマがやらかしたときは検診しろって伝言受けててな。これのことだろ?」

「お父様の中でおれがやらかすことが前提になってる!?」

 

 あっれぇ、おれそんなに問題行動してたかなぁ!?

 スタンド能力を話すことは予想されてたみたいだけど、問題を起こすと思われているのは心外である。おれから何か起こすのは珍しいよ、ほぼ外的要因だよ。

 

「こんなに大人しくしているのに……あっ、なら自重しなくても同じでは?」

「同じじゃねェしそれは大事なもんだからちゃんと理性を握っておけ」

「はい」

 

 抱えている腕をキュッと締められた。潰れる、中身漏れちゃうからそれ以上力を入れるのは止めてほしい。

 ぷらんと手足を揺らしながら、おれは医務室へ運搬されていった。

 

「ホンゴウさんが友達四号ね!」

「えー」

「えー!?」

 

 そこまで嫌なのかと衝撃を受けていると、おれを見下ろしたホンゴウさんが冗談だとニヤニヤしていた。

 よかった、冗談か……本当に冗談なんだよな?

 拒否されると結構心のダメージが大きい。これほどまでにショックを受けるなんて、おれは後でシャンクスさんに平謝りしようと決めたのである。

 

 

 

 

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