魔法少女に襲われています   作:ガラン・ドゥ

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05:絡みつく不穏

 ご飯を食べ終えて教室に戻っておいたら、午後の授業が始まる5分程前に芹達が帰ってきた。

 彼女に話を聞くと、美化委員会のメンバー全員を招集して仕事をさせてたらしい。

 環境美化月間とか始まるのかな?

 芹は魔法少女の活動もあるから両立が大変そうだ。

 同じ委員会に入ってフォローすれば良かっただろうか? 今更言っても遅いんだけどさ。

 

 その後、午後の授業も終え学校から帰る途中、ボクは芹から魔法の話の続きを聞いていた。

 マナの実がこっちの世界に落ちてきたのは一昨日の夜。その衝撃で住宅街の道路が一部陥没したりしたらしい。

 昨日の朝にやってたニュースを思い出し、なるほどそれが原因だったのかと妙に納得した。

 ドリルで削岩したとかならまだしも、コンクリートを削るなんて相当な力が掛からないと無理だしね。

 そんで果実への対処をする為に、夜遅くに芹が動いてたから眠たそうだったと。

 

「でもさ、そのマナの実がこっちの世界に落ちてきた原因って結局なんなの? そういう大事なものってしっかり保管されてたりするものだと思うんだけど……」

「うーん、それがね……」

 

 困り顔で、ちょっと罰が悪そうに芹が話を続けた。

 

「……分からない?」

「うん。妖精が住む『妖精圏(ようせいけん)』の中心部には神殿が建てられてて、そこに祀られてたらしいんだけど、誰かが無くなってたことに気付いて大慌てしてる内に現界(こっち)に落ちてたって分かったの」

「それって、誰かがマナの実を盗み出したってこと?」

 

 誰が? 何のために?

 

「……マナは妖精圏だけじゃなく全部の世界で重要なものだから、そんなことするメリットってないんだよね。。すぐに枯渇するわけじゃないけど、マナの実がないと供給が需要に追い付かなくなっていずれ全部の生物が死んじゃうよ」

「意味分からないじゃん……。何が目的なんだろう……」

 

 なんか一気にきな臭くなったなあ。

 マナの実が落ちてきた、じゃあそれ全部集めれば解決だね。とはならないのがまた……。

 

「でもマナの実を集めないといけないのは変わらないよ。バラバラになったマナの実を揃えていくとその人の願いが叶うんだって」

「なんじゃそりゃ。すごい便利なものじゃん」

 

 どこの竜の玉の物語だよ。

 

「だから集め切っちゃって、マナの実が落ちてきた原因を教えてって願えば事件も解決すると思うよ」

「意外と簡単な解決方法なんだね」

「そう。見つけるのが大変なんだけど……そんな明日葉ちゃんに朗報です」

 

 芹が急に足を止める。振り向くと耳に手を当てて誰かと通話でもしているようだった。

 

「今ディナから連絡が入ったよ。幽界の商店街の近くで特徴的なマナを感知したって」

「ホント? ひょっとしてボクが最初に見た方の実かな?」

 

 そういえばディナは日中から果実を探してるのか。

 それにしても、魔法を使えば離れた位置同士でも会話ができるのか。便利すぎる。

 

「それはどうだろう。マナの実が動く可能性の方が低いし……。ナンバリングでもされてれば別なんだけどね」

「そっかあ……」

 

 家の近所で魔物が実体化するなどの悪夢を見る前に、早急な駆除をお願いしたいところである。

 

「でも近いうちに必ず見つけるから明日葉ちゃんは安心してね。──それじゃあわたしはディナと合流するからここでお別れだね。バイバイ」

「うん、気を付けてね?」

 

 芹は手を振ってボク達の住む家とは別方向に走り出した。

 それにしても、芹は笑っていたけれど学校と魔法の両立って相当大変だな、と思ってしまう。

 クラスメイトに怪しまれないように、それでいて緊急時には授業を途中で抜け出してなんてやってれば相当疲弊することだろう。

 それを何でもないようにこなしてきた芹は、それはもうとんでもない精神力の持ち主だ。

 ボクが同じ状況になったら、昨日みたいにただ叫んで逃げ回ることになるのが目に見えてる。

 すごいなあ、とは思ってたけどここまでとは。

 何も気付くことなく、平和な日常を過ごしてきた自分がなんだか情けなくなる。

 

 ボクにできることって何かないかな?

 真っ先に浮かんだのは芹の笑顔だった。

 嫌なことがあっても笑顔を絶やさず、自分のできることを精一杯やるのが彼女の長所だろう。

 それが逆に危ういということでもあるが。

 自分の本心を隠すためではない、心からの笑顔を作ってあげることがボクの使命ではないだろうか。

 その為にはどうすればいい?

 日常生活での疲れを少しでも軽減できるサポートしてあげればいいのかな?

 

「それじゃあなんかもの足りないなあ」

 

 芹は下手すれば死と隣り合わせの生活を送っていると言える。

 だったらもっと直接的に癒やしを提供してあげた方が良いだろうか。

 昨日チラッと話題に出てたウェイトレス姿で出迎えする、とか?

 ……うーん、ボクのそんな姿見たい人いるのか疑問だな。

 そんな誰得なことしなくても、魔法を使えればこんなに悩む必要もないんだけどなあ。

 昨日芹が発してた魔法は何と言ってたっけ?

 

「――そうそう、『リバーサル』だ」

 

 別に魔法を唱えたかったとかそんな気は全然無く、ただパッと思い出した単語を口にしただけだった。

 ところがその瞬間、足元が消えるような感覚を覚え、辺りの景色がグニャリと曲がる。

 

「え」

 

 光はすぐさま収まったが辺りの景色に変化はない。

 でもボクはすぐに異変を察した。

 鳥の鳴き声や遠くに響いていた車のエンジン音などの、耳に入る情報がすべて消えたのだ。

 ここはボク達の住む世界ではなく、『幽界』と呼ばれる場所であった。

 

「え」

 

 なんで?

 ディナの話では、ボクには魔力は無いんじゃなかったの……?

 じゃあ偶然近くで芹が魔法を使ったのだろうか。試しに大声で呼びかけてみた。

 

「おーい、せりーー?」

 

 一切の生き物の気配が無い中、ボクの声だけが木霊している。

 しばらく待ってみても、一向に反応は返ってこなかった。

 ヤバんじゃないの、これ。

 

「落ち着け、落ち着け……。もしボクが魔法を使えたのならもう一回呪文を唱えれば戻れる筈……」

 

 わざと声を出すことで自分を落ち着かせながら、もう一度頭の中に魔法名を思い浮かべた。

 

「えっと、『リバーサル』!」

 

 しかし何も起こらない。

 相変わらず喧騒は消えてままだし、特に体に変化も訪れない。

 さっきのは一体なんだったの、とどんどん不安感が心の中から這い出てくる。

 

 ――1人は嫌だ……。怖い……。

 

 前世でのトラウマを思い出し掛けるが、ハッとなって頭を振ることでネガティブな思考を消し去る。

 何度か深呼吸をしながら時間を掛けて冷静さを取り戻すことにした。

 ……そうだ。幽界に来てるのであれば芹達もいる筈。魔法のことは彼女らに頼もう。

 たしか商店街の近くと言っていたし、そこを目指すことにする。

 

「とりあえず、鼻歌でも歌っておこう……」

 

 自分を落ち着かせようと、自分の好きな曲のメロディを口ずさみながら進んでいく。

 商店街まで十数分もあれば到達できるし、不安感も段々薄れてきた。

 ……ここがどんな場所かも忘れて。

 

 

 

 10分程して商店街の近くまで来ることができた。

 もう少しで芹と合流できそうだ、と考えれば自然と心も明るくなってくる。

 少し早歩きになってきた瞬間──ドンッという衝撃が道路の下を走った。

 

「ん?」

 

 始めは気の所為かとも思った。

 でもどこかにぶつかるような音は止まらず、段々とボクに近付いてくるかのように大きくなっていく。

 何かヤバさを感じて逃げようかと考えた時にはすでに遅かった。

 衝撃音がボクの真下まで来たかと思うと、突然目の前の道路に穴が開き、『何か』がボクの足に絡みつく。

 

「な、なに!? って、うわああああ!?」

 

 ソレに勢いよく引っ張られたかと思うと、上空で逆さづりにされてしまった。

 このままではパンツが白日の下に晒されてしまうので、必死にスカート抑える。

 ってそんなこと考えてる場合じゃなくて!

 一体何が起こっているというのだろうか、と足を掴んでいるものの正体を確かめる為にどうにか上に目をやる。

 

「タコの、足……?」

 

 ボクが目にしたのは、空いた地面の穴から続く細長くて赤黒いタコ足のような物体。

 いや吸盤がないので、単に触手と言うべきか……。

 とにかくその触手がボクを宙づりにした犯人らしい。

 これどう考えても魔物じゃん!

 

(はやく逃げないと!)

 

 段々と頭に血が上ってしまうし、何されるのか分かったもんじゃない。

 昨日のスライムの件を見れば、殺されてもおかしくないだろう。

 どうにか足にへばりついた触手を取ろうと手を伸ばすが、宙づりのためどうにも力の入れ方が分からない。

 どうすれば良いのか焦りを抑えながら考えていると、触手が次の行動に移ってしまった。

 地面の方から再び異音がしたのでそちらを見たら、無数の触手が穴の中から出てきたのだ。

 ギョッとしてる内にうようよと上昇してきて、こちらに段々と近付いてくる。

 

「こいつらまさか……」

 

 前世で、とあるイケナイ本を見た時の記憶が蘇り、めちゃめちゃ嫌な予感がしたと思ったら……。

 

「待って……ひゃあっ! く、くすぐったい……!」

 

 数本の触手が制服にまとわりつき、さわさわとボクの体を這っていく。

 不快な感触に抵抗しようと触手を捕まえようとしたのだけれど、ヌメってうまく掴めなかった。

 こちらの意図を察したのか、触手はすぐにボクの腕を縛り上げて身動きを封じられてしまう。

 なんとかしなければ、という思いとは裏腹に、体は完全に触手の意のままとなってしまっていた。

 宙吊り状態から半回転して、頭が上を向くようにはなったが、そこから更なる恥辱を受ける羽目に……。

 

「ちょ……、こいつら服の中にぃ……!」

 

 しばらく表面を這いずっていた触手達だったが、やがて制服の隙間を見つけ、先っぽから更に細い触手を出して侵入してきた。

 直接肌に触れられている為か、先ほどよりもすごい不快感だ。

 しかも、触手の表面はヌルヌルとした液体に覆われているので、摩擦も気にすることなくボクの身体を弄んでいる。

 とにかくもう気持ち悪い。

 どれだけもがこうとも、すでに全身に触手が行き届いているため全く意味がなかった。

 

「んうぅ! ちょっと、変な声でるから、やめてぇ……」

 

 その声が触手に届く筈はないけど、声を出さずにはいられない。

 数分間全身をまさぐられて、抵抗できない程疲弊したボクの前に、一本の触手が姿を現した。

 それは今までの触手とは違い、螺旋を描くように玉状の模様がついている。まるで穴を開けるために用意されたかのようだ。

 疲れ切って虚ろな目でその触手を見ていたけれど、少ししてから螺旋状の触手は段々高さを下げていく。

 ちょうどボクの足の高さまで来ると、股の間に狙いをつけて止まった。

 その触手の狙いが分かると、サーッと顔から血の気が引いていく。

 それだけはさせる訳にはいくまいと、必死に足を閉じようとしたが足を他の触手にガッチリホールドされているため、びくともしなかった。

 その間も例の触手はこちらに狙いを定めて徐々に近付いている。

 もはや抵抗する術はない。

 初めては好きな人。

 そんなピュアなこと言ってられる精神年齢ではないとはいえ、やっぱりそういう憧れは持っていた。

 まさか触手に奪われることになるとは夢にも思わず、涙が勝手に出てくる。

 グッバイ、ボクの初めて。

 触手はもう下着のすぐそこまで迫ってきている。最早猶予はない。

 諦めて覚悟を決めた瞬間、一筋の光がボクの真下を通過していった。その余波で螺旋状の触手が蒸発する。

 

「――え?」

 

 上空を見上げると、大量の光の弾がボクの元へと降り注いでくる。

 ギョっとしたけれど、全ての弾がボクの横を通り抜け、周りの触手にだけ当たった。

 腕と足を縛っていた触手も撃ち落とされたことで、体が宙に浮いてそのまま落下することに。

 地面にぶつかるかと思わず目をつぶってしまったが、フワリと柔らかい感触に包まれる。

 恐る恐る目を開けて上を見ると……そこには芹の顔が。

 

「芹……!」

「大丈夫……じゃないよね。ごめんね明日葉ちゃん。もうちょっと早く来れれば良かったんだけど」

「ううん。来てくれてありがとう」

 

 どうやら芹にお姫様だっこされているようで、その温かさに安心すると、また涙が零れ落ちてくる。

 

「うぅ、グス……」

 

 芹の胸元をギュッと掴むと、彼女はポンポンと頭を撫でてくれた。

 なんだか情けないが、そんなことを言ってられる場合ではない。とにかくもう芹の存在を感じられるだけで安心してしまう。

 

 芹はボクをあやしながら地面にゆっくり下ろしてくれた。

 

「魔物退治しちゃうから、明日葉ちゃんはわたしの後ろを動かないでね?」

 

 二コリと笑った芹は、こちらに背を向けて触手が出てきた穴と対峙する。

 ゴゴゴッと何かがせり上がるような爆音がしたかと思うと、穴はどんどん広がっていき巨大な化け物が這い上がってきた。

 『ソレ』は人程に太い触手が重なりあって、さながら樹の幹のようになっている。樹と違うのは数えるのが億劫になるほどの無数の触手が生えていること。

 どうやらアレの中の数本がボクを捉えていたらしい。

 その不気味さに怖気が走る。

 しかし、芹には一切の動揺がないらしく、悠然と立っていた。

 触手の魔物は声を上げることもなく、自分に生えた触手を一斉にこちらに伸ばしてくる。

 それに対し、芹は巨大なシールドを自分の前に形成し、触手がそれに触れるとたちまち蒸発していった。

 芹は飛び上がり、10メートルはある魔物を追い越して上空で停止する。

 

「わたしの――」

 

 芹が杖を上に掲げると、その先に超巨大な魔法陣が現れた。

 

「明日葉ちゃんに――」

 

 魔法陣が危険だと感じたのか、魔物は全ての触手を向かわせ芹を捕まえようとするが、芹の作る壁の前には無力だったようだ。

 

「何してくれてるのかなあ!?」

 

 芹の怒号と共に、魔法陣から光が降り注ぐ。

 ……いやその表現は生易しすぎるだろう。

 正しくはとんでもない太さの光熱が、レーザーのように魔物へ襲い掛かったのだ。

 触手の化け物は一瞬で蒸発し、それでも魔法の威力は削れることなく、そのまま直下に落ちていく。

 あんぐりと口を開けているボクの目の前には、直径数十メートルはある巨大なクレーターができていた。

 魔物が消えたのを見計らって芹が降りてくる。

 

「ふう、お待たせ明日葉ちゃん」

「う、うん。お疲れ様……」

 

 若干ドン引きしているが、兎にも角にも助かった。芹がいなかったら今頃ボクはどうなっていたことか。

 芹は近付いてくると、右手でボクの頬に触れた。

 

「平気? 怪我とかしてない?」

「大丈夫だよ。芹のおかげでなんともなかったし。ホントにありがとね。……ただ体は気持ち悪いかも……」

 

 自分を見下ろすと、制服の前ははだけて乱れまくっており、ヌルヌルとした粘液がボクの身体を覆っている。

 破れてないだけマシと言ったところか。

 試しに手で触ってみるとヌチャリとしていて、そのままでは落ちそうにもない。

 

「あ、そうだよね。あんまりわたしの心情的にも良くないし……じゃあ『リフレッシュ』」

 

 芹が魔法を唱えた途端、ボクの身体が光り、一瞬でヌルヌルが消えてしまった。

 

「え、すごい! どういう原理なの!?」

「うーんとね、わたしの服が代わるのと似たような魔法、かな? 服を分子レベルまで分解して、衝撃に強くなるように再構築するんだけど、今回はそのローションみたいなやつを分解だけしたの」

「便利すぎ……。掃除なんてしなくてもよくなるじゃん」

「でも、普段は使わないように心掛けてるんだよ。世界の理を捻じ曲げちゃうのが魔法だから、よっぽどのことじゃないと使っちゃいけないってディナから言われてるし」

 

 たしかにそうだよな、と思う。

 特定の物質だけを分解したり、離れた場所に一瞬で到達したり。

 そんな物理法則を無視した現象を世界の人々が目の当たりにしたら、魔法を巡った戦争が起きてしまうことだろう。

 きっと芹も無事では済まない。それは嫌だ。

 

「気を付けなきゃね……。ところで、そのディナは?」

 

 芹は真っ先に来てくれたらしいけど、白いぬいぐるみのような妖精の姿が見当たらない。

 

「ここにいるヨ~」

 

 声が聞こえてきたと思ったら、芹が開けた穴からディナが出てきた。

 その手は果実を掴んでいる。

 

「あまり本気を出しちゃいけないって言ってるだロ? マナの実まで消滅したらどうするつもりだったんダ」

「えへへ、カッとなってつい」

 

 舌を出して笑っている姿は大変可愛らしいのだが、やってることは相当えげつなかった。

 ……あまり深堀はしない方が良いのだろう。

 

「まったく……。それで、何故ここに明日葉がいるんだい? 転移してくる要因はもう無い筈だけド」

「あ、そうそう! 商店街で戦ってたら急に魔物が逃げちゃって、追った先に明日葉ちゃんが掴まっててビックリしたよ!」

 

 2人に詰め寄られて若干後退する。

 

「えっと、自分でも分かんないんだよね。『リバーサル』って単語を口にしただけだもん」

「え……。それで、こっちに来てしまったのかイ?」

「多分だけど……」

「簡単な魔法ならその単語を発するだけでも発動するけど、魔力は使う筈だヨ? 明日葉には魔力は無い……ってちょっと待って」

「え、どうしたのディナ」

「芹、これ持っててくれ」

 

 ディナの動きがピタリと止まり、芹にマナの実を預けてこっちに近付いてきた。

 そうしてボクの胸の前に手をかざすと、その先から魔法陣が現れる。

 その表情は読めないが、何か動揺したような雰囲気を感じた。

 

「魔力がある……?」

「え、でも昨日はないって言ってなかった?」

「ああ。ワタシがしっかり検査したヨ」

「どういうこと?」

「分からない……」

 

 ディナは手を顎に当てて考えている。

 しばらく黙っていたが、こちらを振り向いて口を開けた。

 

「1つだけ心当たりがある。ただ確信がある訳じゃないから詳しい話は待ってほしい」

 

 え、なに? 何が起きてるの?

 

「えっと、ボク大丈夫なの……?」

「ああうん。死んだりはしないヨ。ちょっとワタシは妖精圏へ行ってきて相談してくる。明日葉は心配しないで待っててくれ。でも芹には話しておかなきゃいけないから、ここで解散かナ」

「え、良いの? 明日葉ちゃんから離れても危険なんじゃ?」

 

 芹の言う通り、1人でいる時に何か異変があったら対処できない。

 下手したらまた幽界に飛ばされるかも。

 しかしディナは首を横に振った。

 

「ワタシの推察が正しければ、明日葉が魔法を口にしなければ平気な筈サ」

「まあ、ディナがそう言うのなら……」

 

 話は終わりということで、解散することになった。

 芹の『リバーサル』によって元の世界に帰り、それぞれ帰路につく。

 芹は最後の最後まで心配してたけど、ボク達でどうしようもないのなら対処のしようもない。

 漠然とした不安を心に残したまま、ボクは自分の家の玄関を開けた。

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