TS暗殺者、異世界で冒険する   作:布団から出られない

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勇者にだって悩みはある

四天王オニンニクとの死闘を終え、勇者一行は休暇に入った。

 

それに伴って、俺も休日を大いに楽しもうと、町をフラフラと歩いていたのだけども……。

 

「はぁ………」

 

そこには、なんだか少し元気がない優斗(ゆうしゃ)がおりました。

 

「優斗、どうしたの?」

 

流石に無視というわけにも行かないし、どうせ何か目的があったわけでもない。

だから、とりあえず優斗には声をかけてみることにした。ノエルとアルトも、なんか用事があるみたいだったし、丁度いいかもしれない。

 

「ああ、クロエか………。いや、別に、なんでもない」

 

そう言う優斗は、やっぱりどうみても疲れた顔をしているし、絶対何か悩み事があるだろうなって雰囲気も感じた。

無理に聞き出すのも良くないし、でも、放っておくわけにもいかない。だったら、たまには優斗のことを連れ回してみるのもいいかもしれない。

 

「優斗って、今日何か予定ある?」

 

「いや、特に何もないけど……」

 

「じゃあ、私に付き合ってよ。アルトもノエルも、付き合い悪いから」

 

半ば強引に優斗の手を引っ張り、町中を連れ回す。

優斗は俺の強引さに、流石にちょっと困惑してるのか、「え?」とか「あ」とか、少し間の抜けた声を出したりしている。

 

「ここ、武器屋か?」

 

「うん」

 

ヤベェ……。出かけるって言っても、正直どこに行けばいいのか分からなかった。普通の女の子なら、服を買いに行ったり、美味しいスイーツでも食べに行ったりするんだろうが、生憎俺の前世は男。今世でもその意識を引っ張っているせいか、あんまり女の子女の子してない。

 

だから、前にアルトと来たばかりであるのにも関わらず、また同じ武器屋に来てしまった。

 

今度エレナさんとかアンジェ辺りに、服屋とかそういうの教えてもらおうかな………。

ノエルは多分オタク趣味に走ってとんでもないコーディネートを要求してきそうだし、マコは厨の二のニオイを漂わせてるからダメだろうし……。

 

「おっ? 嬢ちゃん、前も他の男とこの店来てなかったか?」

 

「そうなのか?」

 

「うん。アルトの慰めデートで、一回」

 

しかも店主のおっちゃんにも前に来たことを指摘されてしまう始末。別に彼氏とかそういうわけじゃないから別にいいんだけど、優斗に前に行ったのにわざわざなんで来たんだって思われそう。

 

まあ、行ってしまったものは仕方ない。

とりあえず俺は武器屋の中に入って行き、前に見た大剣やらそこらとは別の、小さい子供でも扱いやすい、小型のナイフや小物を見ることにした。

 

幸いなことに、この武器屋はかなり大きめの店で、武器一つ一つを見ていけばそれなりに時間を潰せそうな雰囲気はあった。

 

「そういえば、前から思ってたんだが……」

 

「ん、何?」

 

「アルトとクロエって、付き合ってるのか?」

 

「え、何で?」

 

「いや、アルトって、まあ、その、中々女性と遊ぶことってないから、そのアルトと仲良さそうにしてるし、もしかしたらそうなのかなって」

 

まあ確かに、アルトは女性から異様に避けられがちだし、そんなアルトと付き合いのある女の子って、俺かノエルくらいなものだし。

 

一応マコもアルトとの仲はそこまで悪くないけど、多分マコは恋愛とかどうでもよさそうだし。

 

「別に付き合ってないよ。お互い仲良い友達だと思ってる。それに、今は分からないけど、ちょっと前まではアルトってノエルのことが好きだったみたいだから」

 

「そうなのか、デートって言ってたから、てっきりそういう関係なのかと」

 

まあ、でも確かに一回告白はされてるし、お互いに恋愛のれの字もなかったかって言われると微妙な気もするが……。

あと一応、アルトから告白されたことは伏せておく。受け入れたならともかく、振ってしまったわけだし、アルトの名誉のためにも、あまり言いふらさない方がいいだろう。

 

アルトはほとんどの女性からの信用を既に失っているので、もう遅いかもしれないが……。

 

俺と優斗は、しばらく武器屋でふらふらとしながら、どうでもいい世間話を交えて話す。

気づけば、もう夕暮れ時。結構な時間を、武器屋で潰せたらしい。

 

「そろそろ出るか」

 

「そうだね」

 

俺と優斗は、武器屋から出る。

 

「優斗、気は紛れた?」

 

優斗の表情からは、迷いや憂鬱さはもう感じられない。ただ、感じられないだけで、まだ悩んでたりするのかもしれない。そう思った俺は、ついつい優斗にそう尋ねてしまう。

 

「ああ、もう大分。ていうか、やっぱりクロエ、俺のこと気遣ってくれてたんだな」

 

「まあ、そうだね。でも、特に予定もなかったし。私は私で楽しかったから」

 

「そっか。わざわざ武器屋を選んだのも、やっぱり俺に気を使ってくれてたんだな。そりゃそうだよな、女の子なら、服屋とか、そっちの方が興味あるだろうし……」

 

「あ、うん、ソダネ」

 

店のチョイスに関しては、単純に服屋とか、そういう女の子らしい場所に興味がなかったからなんですけど……。

でも流石に、「服屋とか興味なかったから武器屋行ったわw」はダメだと思う。多分アンジェ辺りに聞かれたら、女の子とはなんたるものか、徹底的に教え込もうとしてくるだろう。多分ノエルも悪ノリで介入してきてカオスなことになったりしそう。いやなる。絶対になる。

 

だから俺は、適当に相槌を打つ。嘘をついたことにちょっぴり罪悪感を感じたりもするけど。

 

「もし私でよければ、いつでも悩み、聞くけど」

 

「今、話してもいいか?」

 

「? うん。別にいいけど」

 

まだ時間はあるし、悩み事があるなら全然付き合う。同じ仲間な訳だし。

 

「そっか。ありがとう。皆には、中々言えなさそうな内容だから」

 

「そうなんだ。言いたくなかったら、無理に言わなくてもいいよ」

 

「ああ、そうだな。本当は、言わない方がいいのかもしれない、けど、思うんだ。俺なんかが勇者で、本当にいいのかって」

 

「うん」

 

「確かに、勇者としての力は貰ったよ。だから、勇者として、活躍はできる。でも、思うんだ、俺。皆のリーダーとして振る舞ってるけど、俺は本当に、この立場でいいいのかなって」

 

「少なくとも、私は優斗がリーダーだから、あのパーティがあるって思うけど」

 

「そうなのかな。でも、エレナは、小さい頃から教会で過ごしてきて、聖女としては前代未聞って言われるくらいに努力してる。セリカだって、貴族のいいとこの娘さんなのに、周りの反対にも負けず、小さい頃からずっと体を鍛え続けたらしいし、カカエも、家の事情とかしがらみとか、全部乗り越えて今俺についてきてくれてる。マコもアンジェも、それにクロエも、まだ小さいのに、勇者パーティの一員として、よくやってくれてる。皆、凄いんだ」

 

「そうだね。皆、確かに凄いと思う。誰もがあんな風になれるかって言われたら、正直無理かなって思うくらいには、眩しい人達だと思う」

 

「そうだよな。だから、思うんだ。あんなに凄い人達を、俺なんかが偉そうな顔して連れ回してもいいのかって。俺は確かに、勇者に選ばれた。だから、それに伴って力も得た。努力もした。でも、それで彼女達に釣り合えるのかって考えても……正直、釣り合えない気がしてならないんだ」

 

「そんなこと、ないと思うけど」

 

「どうかな。俺は、ただ与えられた役目をこなしてるだけなんだ。自分で、望んで勇者になったわけじゃない。こんな俺で、いいのか………」

 

そっか。今まで、あんまり優斗と深い関わりを持ってなかったから分からなかったけど、優斗も優斗なりに、悩んでたんだな。ただのハーレム系主人公勇者じゃなかったわけだ。

 

「私は、それでいいと思うけどな」

 

「そう、かな」

 

「優斗は、凄く頑張ってる。勇者って役目からも逃げないし、皆の前では、頼れるリーダーとして、良くやってくれてると思う。でも、一つだけ文句を言わせて欲しい」

 

「何を?」

 

「優斗は、周りの人の事を考えすぎてる。ちょっとは自分のことにも、目を向けた方がいいんじゃないかって、そう思う。だって、今の悩みだって、結局は皆のためを思ってのことでしょ? 自分が責任持たないととか、どうしてもそっちの方向性で考えちゃってる。優斗は、よく頑張ってる。皆と釣り会えるくらいに。それは私が保証する。優斗は、偉い。いい子」

 

俺はそう言いながら、少し背伸びをしながら、優斗の頭を撫でる。

 

「く、クロエ……?」

 

「だから、たまには周りを頼ってみてもいいんじゃないかな。優斗だって、普通の男の子なんだし。皆のリーダーだって、誰にも頼らずに、1人でなんでもできちゃう方が異常だよ。だから大丈夫。むしろ私は、優斗が思ったより人間らしくて、好感持てた。誰にも頼らずに、1人で何でもできるっていうのは凄いけど、でも、私は、優斗には、もっと皆を頼るってことを覚えてほしいって思う」

 

「クロエ…………」

 

「私だったら、勇者って役目放り出してどこか遠くに逃げてるかも。でも、それくらいでいいんだ。優斗だって、辛かったら逃げてもいいと思う。逃げることは、恥ずかしくない。皆を守るのと同じように、逃げるって言うのは、自分を守ることなんだから」

 

「そっか。ありがとうクロエ、少し気が楽になった」

 

「ううん。こちらこそ、ごめんね、偉そうなこと言っちゃって」

 

少し説教じみたことを行ってしまった気がする。俺はちょっとだけ後悔するも、優斗の表情を見て、やっぱり言ってみて良かったのかなとも思う。

 

だって、優斗の表情からは、悩みだとか、そんなもの全部吹っ飛んでいて。

清々しいほどにスッキリしたかのような顔をしていたから。

 

 

 

 

 

ところで、優斗の頬が少し赤くなっている気がするんだけど、もしかして熱でもあったのかな?




距離近いよ………。
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