TS暗殺者、異世界で冒険する   作:布団から出られない

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前から思ってたんだ、なんで四天王は1人ずつ戦ってるんだって

 

優斗達と合流した後、依頼者である西の国の貴族と顔合わせをし、今回の依頼内容の確認をした。そして、その内容なのだが、西の国トスェウの首都、クローネにある王城で、社交パーティーが開かれるらしく、その社交パーティーに対して、魔族から襲撃を行う旨の手紙が、依頼者の貴族宛に送られてきたらしい。

 

なるほど確かにこれは勇者パーティ案件だなと、そう思いつつ聞いていたが、まとめると、社交パーティーに勇者一行として参加して魔族襲撃に備えて欲しい、というのが今回の西の国の貴族の依頼だった。

 

ということで、現在俺はレャシオで購入したドレスを着て、社交パーティーに参加しているわけなのだが。

 

「お嬢さん、私と一曲踊ってくださいませんか?」

 

そう、貴族のやんごとなきお方に、ダンスのお誘いを喰らってしまっていたのだ。

俺の隣にはアルトもいるのだが、見えていないのだろうか、ガン無視である。

 

「ま、待て……待ってください。クロエは俺が……」

 

「先程クロエ嬢の様子を伺っていましたが、貴方は一度クロエ譲と踊っていたではありませんか。これほど魅力的なお方だ。一度だけでは満足できないのも理解できましょう。ですが、ここは私めに譲ってくださりませんか? クロエ嬢に不快な思いはさせないと約束しましょう。私なら、共に踊っているご令嬢の足を踏みつけるなどという失態も致しませんし、ね」

 

そういやさっきアルトと一緒に踊った時、足踏まれた覚えがあるな。まあ、あれに関しては俺が踊るの下手だったっていうのもあるけど。てことは、嫌味か。

 

まあ、アルトは女性に対して不誠実っていう噂が流れてしまっているし、そんな相手に対して嫌悪感を示してしまうのも無理はないのかもしれない。アルトは可哀想だけど、貴族の方が悪いという話でもないのだろう。

 

にしても。

相手は俺が勇者パーティの一員ということを知っているのだろうか? 

でなければ、わざわざ隅っこでひっそりとしている華やかさのない女などに声をかけようとは思わないだろう。

 

社交パーティに参加している貴族の女性方は、どの方も魅力的な方ばかりだ。

 

前世の俺なら、一瞬で心を奪われていたであろうと、そう思えるような容姿の整った、あるいは努力をして容姿をよく見せているであろうご令嬢方がわんさかいるのだ。

 

まあ、誘われたなら受け入れるしかあるまい。仮にも相手は貴族。いくら勇者パーティといえど、貴族の男性の申し出を断るとなると失礼に当たる。だから、俺は目の前の貴族の男性に返事をしようと、口を開いた。

 

「はい、喜んで」

 

俺は男性に手を取ってもらい、共に踊る。

 

「申し訳ありません、私が至らぬばかりに、恥を欠かせてしまうかもしれません」

 

「大丈夫ですよクロエ嬢、私に身を委ねて。完璧にエスコートして差し上げますから」

 

緊張する。仮にも相手は貴族である。何か粗相をしてしまわないかと、心臓バックバックだ。

 

でも、さすがは貴族様。エスコートがお上手である。

ばりくそ下手っぴな俺のダンスにも、しっかり合わせて、完璧にエスコートしてくれている。有言実行というやつだな。

 

……きっと俺が殺した貴族も、こうして誰かと社交ダンスを行っていたのだろう。

大切な、誰かと。

 

目の前の貴族は、知っているんだろうか。

 

俺が貴族を殺し回っていた、暗殺者だということを。

 

 

………多分知らないだろう。勇者パーティの一員であるということぐらいは認識しているだろうが、まさか貴族を大量に殺害した暗殺者だとは夢にも思わないんだろうな。

 

 

「クロエ嬢、ありがとうございました。こんなにも美しい貴方と共に踊れて、私は幸せでした」

 

「こちらこそありがとうございました。完璧にエスコートしてくださって、とても楽しく踊らせていただくことができました」

 

なんて、少し物思いに耽っていたら、貴族の男性との社交ダンスは気付けば終わってしまっていた。

相手の方は名残惜しそうにすることもなく、別の令嬢に話しかけに行っている。

やはり、俺が勇者パーティの一員と知っていて、関わりを持つために声をかけたというのが経緯っぽいな。

 

さて、アルトの方は……。

 

なんだ、マコと踊っているのか。

まあ確かに、王族であるアンジェはともかく、マコはこういう場に不慣れだし、貴族の男性に声をかけられてまともに応対できるとは思えない。

誰かしらついておかないと心配だし、アルトは噂のせいで女性人気がないから、アルトとマコが一緒にいるのは合理的かもしれない。

 

にしても、やっぱり気をつかうな。貴族っていうのは。

また踊りに誘われても面倒だし、かといって男除けのアルトはマコと踊ってるみたいだし。

 

……まあ、この場にはセリカ達もいるんだ。勇者パーティの1人や2人会場から抜け出したところで、大した問題にはならないだろう。

 

そもそも、依頼の目的は護衛なのだから、別に社交ダンスを行う必要だってないのだ。

 

俺はそう言い訳を頭の中で思い浮かべながら、少しバルコニーに出る。

 

優斗とか、今頃貴族の女性にキャーキャー言われて囲まれているんだろうな。ハーレム勇者だし。またアルトの嫉妬が加速しそうだ。

 

「クロエ」

 

なんて、ぼーっと思考を巡らせていたら、後ろから声をかけられた。

誰かが来るなんて想定していなかったから、姿勢も崩してだらけていたので、少々慌てながら身嗜みを整え、後ろへ振り返る。

 

そこにいたのは、今頃たくさんの女性に囲まれていたであろうはずの、東の国の勇者その人。すなわち、優斗だった。

 

「あれ? 優斗、なんでここに……」

 

「抜け出してきたんだ。女性に囲まれるのって、あんまり好きじゃなくて」

 

「勇者パーティでいつも囲まれてるのに?」

 

「いや、エレナやセリカ達は、また別なんだよ。気心が知れてるっていうか……」

 

まあ、そういうものか。日頃から一緒にいるセリカ達と、今日初めて出会った貴族のご令嬢とでは、関係値が異なるし、相手も貴族令嬢で邪険には扱えないから、やりにくいことこの上ないのだろう。

 

その点セリカは雑に扱ってもよく吠えてくれるし、問題にもならないからね。貴族の令嬢だけど、扱いやすいことこの上ない。

 

「アルトに隣にいてもらって、声かけられないようにしてたんだけど、やっぱり勇者パーティって肩書きは凄いんだね。アルトが隣にいるのに、声かけられちゃって」

 

「見てたよ。正直……ちょっとモヤっとしたけど」

 

「モヤっとって……」

 

そっか。優斗は俺のことが好き、なんだった。

好きな子が、他の男と踊ってる。……確かにそれは、モヤっとするかもしれない。

 

「クロエ……いや、お嬢さん」

 

「へ……?」

 

「俺とも……一曲、踊ってくださいませんか?」

 

優斗は真剣な眼差しで、片膝をつき、こちらに手を差し伸べるようにしながら、俺の顔をまっすぐと見つけてくる。

 

……流石に、断れない。

偉いとか、偉くないとかじゃなくて。

 

優斗は俺の、恩人だから。

 

優斗の気持ちに応えれるかどうかは別として。

俺にとって優斗は大切な人だから。

 

「……喜んで」

 

だから俺は、優斗の手を取る。

どこか熱を感じてしまうのは、月夜に照らされているからか。それとも夜風にあてられて、少し気分が高揚しているからか。

 

「この場でいい」

 

優斗がそう言うので、少し広めのバルコニーで、静かに2人、誰にも邪魔されることなく、踊る。

 

優斗のエスコートは完璧だ。勇者だから、こういう場に呼ばれたこともあるのだろうか。

 

知っている相手だからか、さっき貴族の男性と踊った時よりも、気は楽だった。

 

……でも、緊張は解けない。

 

だって、さっきからなんだか顔が熱いのだ。

 

理由はわかる。照れているんだ、俺は。きっと。

自分のことを好きだといってきた相手の顔が、目の前にある。そんなの、意識するなという方が難しい。

 

「クロエ、さっき、貴族の人と踊っている時………。もしかして、昔の事を思い出したりした?」

 

「………した、けど…」

 

どうして優斗にそんな事が分かるのだろうか。この場には、心をよめるノエルはいないはずなのに。

 

「どうしてって顔してるね。分かるよ、好きな人の事だから」

 

「っ……」

 

平気で、そういう事をいうのは心臓に悪いからやめてほしい……。

面と向かって好きと言われると、その気がなくてもその言葉に惑わされてしまいそうになる。

 

「その件は、勇者の役目を終えてからって話じゃ……」

 

「クロエからの返事は、ね。でも、俺から気持ちを伝えることについては、禁止されてない」

 

……確かに、それはそうなんだけど……。

これから、面と向かって好きだと言われ続けると?

パーティ内恋愛はコミュニティ崩壊の元なんですよ、と言いたいところだが、悲しいかな、勇者パーティの殆どは優斗に惚れているし、セリカとかと話している感じ、ハーレム許容だし誰か1人と優斗が結ばれてもそれはそれって姿勢っぽかったから、パーティ内恋愛しても普通に受け入れられそうな空気感なのだ。

 

「お手柔らかにお願いします………」

 

「照れてる姿もかわいい」

 

「こまるぅ……」

 

なんでそんなセリフを平然と吐けるのか、疑問だ。対応に困る。俺はなんて返せばいいのだ。貴方もかっこいいですねとか言えばいいのか。

 

このままじゃ流される。優斗と真剣に向き合おうとは決めたが、やっぱりまだ心の準備が……。ええい、メス堕ちするのはまだじゃ! まだ嫌なのじゃ!

 

「優斗、そろそろ戻らないと……。依頼もあるし、あんまりバルコニーで長居するのもよくないかなって」

 

「……セリカ達がいるから大丈夫だって思ってたけど……まあ、仕方ないか」

 

割とあっさりだった。名残惜しそうにはしていたけれど、でも俺がやめようといえば、優斗はすぐにやめてくれた。迫られるのは困るけど、でも俺が本当に嫌だって言ったら、そこで優斗は止めてくれるんだよな。

 

優しい、けど、今の俺は、そんな優斗の気持ちに応えれるような状態じゃない。

薄情なのは分かってる。けど、もう少しだけ、猶予を与えてもらう事を、許してほしい。

 

そんな風に言い訳がましい思考を巡らせながら、俺と優斗はバルコニーから会場へと戻ろうとする。

 

「愛、ですね。愛とはいいものです。相手を想う気持ち、それは何よりも変え難いものだと、僕は思いますから」

 

瞬間、誰もいなかったはずの背後から、1人の少年の声が聞こえた。

 

え、誰……。

 

思わず振り返る。そこにいたのは、燃えるような赤い髪を持ち、いかにも魔導書と言わんばかりの本を手に持った、ローブ姿の少年が、宙に浮くようにして存在していた。

 

「誰だ!」

 

優斗が声を荒げながら問いかける。

不信感はmaxだ。無理もない。こんな現れ方をされれば、誰だって警戒はするだろう。

 

「僕としたことが、自己紹介が遅れてしまいました。魔王様直々の精鋭『十拝臣』が一員。ネクロマンサーのベルと申します。誰よりも家族愛に溺れ、誰よりも家族愛を憎む、真実の愛の探究者です。そして今宵、東の国の勇者パーティ全員の絶命の任をこなすために、こちらにやって参った次第です」

 

『十拝臣』。四天王よりは格下、か。1人くらいならなんてことはない。だが、目の前の少年の余裕そうな表情を見るに、何か裏があると見た方が良さそうか。

 

「『十拝臣』なら問題ない。クロエ、俺がこいつの相手をする。その間にセリカ達を」

 

「わかった。すぐに呼んで…」

 

「行かせなーいよ♪」

 

………聞き覚えのある少女の声が、耳元に響く。

 

そんな、ありえない。だって、あの子は………死んだはずで……。

 

「ああ、そうですそうです。確かに、僕じゃ勇者御一行にはとても敵いません。ですが、僕はネクロマンサー。僕では戦えないのならば、勇者御一行と戦える者を、死者の中から使えばいいだけのこと。そう、例えば、四天王、とか」

 

「久しぶりだね、クロエちゃん」

 

「セツナ……」

 

同じ元暗殺者の少女、セツナ。

俺が殺したはずの少女は、どうやら目の前の少年の手によって、再びこの世に呼び戻されることになったらしい。

 

「死体が腐食していなくてよかったですよ。勇者御一行の気遣いか、丁寧に遺体が保存されていたので。死者としてではなく、生者として、この世に存在させることができました。ああ、安心してください。暗殺者として働いていた、という記憶は消していますので。自殺でもされたら困りますから」

 

……セツナは、暗殺者を殺す暗殺者だった。でも、今はその記憶も持っていないのだろう。でも、俺のことは覚えている。

……辛い記憶だけ、忘れさせたのだろう。

 

俺も、人を殺した事を、何度も忘れてしまいたいと思っていた。

忘れてしまえれば、幸せだと。

 

きっと、人を殺した記憶を持ったまま、この世に蘇っていたら、セツナは、あそこで終われていたはずのセツナは、もっと苦しむことになっていただろう。だから。

 

「そっか。ありがとう。セツナはもう、苦しまなくていいんだね」

 

「……どうしてそんな言葉を吐けるのか、疑問だね。僕は結構悪っぽく振る舞ったつもりなんだけど……。まあいいや。そんな口が聞けるのも、今だけだよ。さあ、上空を見上げてごらん」

 

「あれは……」

 

上空を見上げる。漆黒に染まった空。しかしそれは、陽光が届かないからではない。夜空にあるはずの星も、雲も、月も、その何もかもが見えないのだから。

 

そう。竜が。漆黒に染まった巨大な竜が、大空を覆い隠しているのだ。

 

「四天王が1人、キングドラゴン。最強の竜種の彼に、果たして勇者はどれだけ抗えるのかな?」

 

「……優斗、一旦皆と合流しよう! これは、優斗1人で対応できる範囲を超えてる」

 

ネクロマンサーの少年は、単体で見れば脅威ではないのだろう。だが、おそらく死者の使役ができる。そして、セツナは、優斗と同じ勇者であるアルトでも勝てない存在だ。暗殺者としてのレベルが段違いだし、俺でも前に勝てたのは、セツナが心の奥底、そのどこかで、死にたいと、そう考えていたからだった。

 

それに加えて、あんな竜まで相手にしなければいけないとなれば、流石に優斗1人では荷が重すぎる。すぐに皆と合流して、一緒に戦ってもらわないと……。

 

「ああ、そうですね。それが賢明だ。だけど、言ったでしょう。今日この場で、勇者パーティ全員を絶命させると。この場にやってきているのは、何も僕達だけではないんですから」

 

ネクロマンサーの少年が何か呟いているが、それを無視して、俺と優斗はすぐにパーティ会場の中へと入る。

 

そこには……。

 

「皆さん逃げてください! ボク達勇者パーティが、魔王軍の相手をします! すぐに避難を!」

 

貴族達の避難を促しているカカエねえさんの姿。それだけならまだいい。でも……。

 

「ほう、女子でありながら、そのような得物を持っているとは。お主、なかなかやり手のようだな」

 

「ちょっと助平勇者、あんたもっと何かないの? 優斗と同じ勇者なんでしょ?」

 

「んなこと言われたって、俺はあのチーレム勇者とは違うんだよ。ノエルちゃんにも聞いてみてよ、あいつがおかしいんだって」

 

……また、四天王だ。

セリカとアルトが、四天王であるオニンニクの相手をしている。

 

「はわわっ! クロエちゃん、マコちゃんを見ていませんか!? トイレがしたいと言ってからそれっきりで……」

 

どうやらマコも行方不明らしい。

どうする? 四天王の数はセツナを含めて3。『十拝臣』……ネクロマンサーもいる。

 

「だから言ったでしょう。今日ここで、勇者パーティは絶命すると」

 

ネクロマンサーの少年が、バルコニーから会場へと、俺たちが居る場所へと入り込んでくる。隣には、セツナもいる。

 

………やるしかない。大丈夫だ。この前オニンニクと戦った時は、セリカ達が洗脳されてしまっていた。けれど、今は違う。皆いる。エレナさんも、セリカも、カカエねえさんも、マコもアンジェも。アルトだっている。それに、優斗も。

 

どこぞの厨二病は、トイレで不在だけど。

 

とにかく、優斗に判断を仰ごう。彼が1番勇者パーティのことを理解しているし、誰を誰とぶつけるか、その判断もできるだろう。

 

「優斗、セツナはアルトでも勝てない。よく知っている俺……私じゃないと、多分対抗できないと思う。だから…………」

 

「わかった。クロエはセツナと。セリカとアルトはそのままオニンニクと戦ってくれ。あの赤髪の少年は、エレナとアンジェにお願いしたい。黒い竜は……俺とカカエでなんとかする」

 

優斗は即座に、それぞれのメンバーに指示を下す。その言葉に、皆それぞれ頷き、優斗に指定された通りの相手と対峙し始めた。

 

「分かった。無理しないでね」

 

「ああ、告白の返事を貰うまでは、死ねないからな……」

 

「……すぐそういうこと言う……」

 

それフラグになりかねないって分からないのかね? いや、まあ、優斗なら大丈夫だろうけど。

 

「カカエねえさん、優斗を……」

 

「クロエ、ボクを信じなよ。ボクだって、勇者パーティの一員。それに、大空に浮かぶ漆黒の竜だなんて、そんなでかい的、外すわけがない。ボクの魔法で、瞬殺してあげるよ。だから安心して、愛しの優斗の帰りを待つといい」

 

「いっ……愛しなんかじゃ……」

 

「安心しなよ。ボクは優斗が好きだけど、勇者パーティだって同じくらい大好きなんだ。だから、皆と一緒、というのも、悪くないかなと思っているよ」

 

そう告げながら、逃げるようにカカエねえさんはバルコニーの方へと向かう。別に俺はまだメス堕ちしてないのに…。

 

「クロエちゃん、楽しそうだね」

 

「セツナ」

 

俺も俺で、与えられた役割をこなそう。セツナの相手は、多分俺しかできないだろうから。

 

「でも、駄目なんだよ、クロエちゃん。クロエちゃんは私の隣にいないといけないんだから。私と同じように魔族になれば、もう争わなくていいよね。安心してよ。怖くないから。それに、クロエちゃんのあとはサツトも魔族にしようって思ってるから。寂しくはないよ。また3人で一緒にいよう?」

 

俺たちは、元々暗殺者という地位のおかげで繋がった存在だ。3人また一緒に、それは、記憶のないセツナにとって、果たして良い関係と言えるのだろうか。

 

それに、俺はもう、勇者パーティの一員なのだ。前みたいな関係には、もう戻れない。

 

せっかく蘇れたんだ。セツナにも、新しい関係を大切にしてほしいと思う。けど、今はそんなこと言えるような状況じゃないみたいだ。

 

「もう殺さない。でも、もう殺させもしないから」

 

「クロエちゃんは殺さないよ。だって、これから仲間になるんだから」

 

これ以上罪を重ねさせない。記憶がない今のセツナは、清らかに、誰も殺さずに。後悔することなく、生きていてほしい。

 

それは俺のわがままだ。けど、それがセツナにとって、一番の幸せだと思うから。だから、俺は戦う。勇者パーティの一員として。




tips:『十拝臣』は将軍として魔王に認められた存在だが、四天王ほど地位は高くなく、魔王と直接話す機会もない
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