TS暗殺者、異世界で冒険する   作:布団から出られない

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閑話4 行こう!伝説の剣を探しに!!

 

 

伝説の剣。伝承によれば、それは大地に亀裂を入れ、海を割り、山をも砕く、強靭で荘厳な、最強の剣であるらしい。

前世が男の俺としては、そんな伝承、興奮しないわけがない。というわけで、俺はその伝説の剣を求め、とある街へとやってきていた。

 

そう、この街の名は、ノーモセニハンケ。古くから、伝説の剣が眠るとされている伝説の地で、観光地ともなっている場所だ。

 

そしてこの街、ノーモセニハンケでは、毎年の恒例行事がある。

伝説の剣の継承者を探すための、試練。その名も、『ソードオブレジェンド』。

 

毎年数々の戦士達が参戦し、しかし、その誰もが最終試験を突破することなく散っていったという、この世界でも最難関に位置する過酷な試練だ。

 

しかーし。一応俺は世界一の殺し屋の弟子。少なくとも殺しの技術はこの世界でトップレベルではあるし、冒険者としてもそこそこ活動してきている。それに、転生者だしワンチャン特典とかあるかもしれない。そういうわけで、俺はこの難関な試練、『ソードオブレジェンド』に挑戦してみることにしたのだ。

 

にしても………。

 

ふむ。やっぱり参加者は男性が多いね。ちょこちょこ女性も見受けられるけど、おそらくよっぽど実力に自信のある人しか参加していないだろう。それだけこの試練は過酷ってことで有名だからね。

 

「おっ、私達と同じ女性参加者だ。試練が始まったらライバルだけど、同じ女性同士、仲良く行こう! あ、ちなみに私はニカ。こっちの子はマコって言うらしいよ」

 

「あ、ども……」

 

「私はクロエです。よろしく」

 

数少ない女性同士だからか、同じ参加者の女性に声をかけられる。

 

ま、前世男の男女ですけどね。少数派同士、多少なりとも仲間意識が生まれるものなのだろうか。とりあえず俺はニカさんとマコちゃん、それぞれと握手を交わす。マコちゃんは人見知りなのか、差し出す手は震えていたし、どこか声が小さかったように思うけど、まあ、別に俺が生理的に受け付けないとか、そういうわけではないだろう。

 

「ッケ。ガキが……」

 

…やっぱり俺みたいな見た目少女が『ソードオブレジェンド』に参加することをよく思わない層も一定数いるらしい。まあ、ここにいる男達は本気で伝説の剣をとりに行こうとしているわけだし、仕方ないのかもしれない。噂じゃ、もはや都市伝説となっている勇者だけが伝説の剣を手に入れる資格を持っているんじゃないか、だから今まで誰も伝説の剣を入手したことがなかったんじゃないかって話もあるらしいけど、まあ、やってみるだけならタダだ。

 

「おっ、そろそろ始まるみたい」

 

ニカが言うのと同時、マイクを持った司会らしき存在が、お立ち台に立ちながら高らかに宣言する。

 

「これより! 第27回! 『ソードオブレジェンド』を開催いたしますッ! 野郎どもォ!! 覚悟はいいかァ!?」

 

ウォオオオオオオオッ!!! と、会場は盛り上がる。俺も俺で、会場の雰囲気に呑まれたのか、興奮が鳴り止まない。

 

「あ、そうそう。最初の試練は3人1組で行う試練なんだけど、良かったら一緒に組まない? 数少ない女性同士だし、気が合うと思うんだ」

 

 

 

先程話しかけてくれた女性が、再び俺に声をかけてくれる。最初の試練を行うためには、3人でつるむ必要があるらしい。俺としても、周りに知り合いがいない現状で、しかも俺のような小娘と一緒に試練を受けたいと思う輩はいないと思うので、ありがたい提案だった。

 

「わかりました。一緒に受けましょう」

 

「マコちゃんも、それでいいよね?」

 

「へ? ……あ、はい……」

 

ニカさんは快活な女性だけど、それに反してマコちゃんは控えめな子らしい。

とにかく、ニカさんが良い人で助かった。おかげで最初の試練の参加資格すらない、なんて事態に陥らずに済んだし。

 

「最初の試練はね、3種類の魔物との戦闘なんだけど、魔物によって、対処法が変わってくるから、それぞれがどの魔物と戦えばいいのか、その配役を適切に考えて、見事魔物を3種類討伐できたらクリアって種目なの。だけど、君達はまだ子供だし、無理しないでもいいからね。危なくなったらすぐに辞退していいから」

 

ニカさんは大人として、優しい表情を向けてきながら、俺とマコちゃんにそう告げる。なんていい人なんだ。善性の塊である。

まあ、確かにマコちゃんのようなオドオドした子が魔物と戦うというと、ちょっと想像がしづらいというか、心配になってしまうのもわかる。

 

けど。

 

「いいんですか? ニカさんも伝説の剣が欲しいんじゃ……」

 

「伝説の剣? いやいや、そんなんじゃなくてさ。私は自分の実力試しに来てるんだ。腕に自信のある男どもがわんさかやってくるこのイベントで、女の身である私でどこまで行けるのかってね。けど、君達みたいな小さい子を、命の危険を晒させてまでやりたいもんじゃないし」

 

ああ、そっか。別に伝説の剣そのものを求めてやってきてる奴らばかりではないのか。なら、マコちゃんがどこまでやれるかはわからないし、危なそうだったら棄権することも考えておこう。

 

「さて……私達が戦うのは………。ステルスウルフとビッグベア、デスナイトね」

 

「す、ステルスウルフは素早さと気配を殺すのが上手い魔物だけど、耐久がそこまでない。一度攻撃を当てさえすれば何とかなる。ビッグベアは体毛のせいで剣が全然通らないけど、魔法に弱い。デスナイトは剣技が凄くて、ある程度撃ち合えないとちょっと相手するのは大変かも」

 

意外にも、マコちゃんはペラペラと魔物の特徴を喋ってくれる。基本無口だけど、必要な時は話してくれるんだね。

俺も知らなかった情報だったから、普通にありがたい。冒険者でも活動地域によって遭遇する魔物は変わってくるからね……。

 

「よく知ってるねマコちゃん。私はデスナイトくらいしかまともにやり合ってなかったから、知らなかったよ。クロエちゃんは?」

 

「ステルスウルフくらいしか。ビッグベアは遭遇したこと自体はありますが、基本逃げてたので」

 

冒険者はギルドに受付をして、依頼を受け取ってそれをこなす、という職種だ。その関係上、冒険者っていうのはギルドの受付の人とよく話す機会が多く、そのギルドの受付嬢の人に、クロエちゃんは多分ビッグベアと戦うのは向いてないから、逃げた方がいいよ〜って教えてもらった。以降その教えに従って、ビッグベアとは一度も戦わないようにしてきた。

 

「じゃあ、どれと戦う?」

 

「ステルスウルフは、私がやります。こう見えて、元あんさ……結構隠密性にはたけてますし、気配を捉えるのは得意なので」

 

さらっと元暗殺者であることを暴露しそうになったけど、あんまり人に言うようなことでもないだろう。物騒だし、ニカさんやマコちゃんを怖がらせてしまうかもしれないし。

 

「私は剣士だから、デスナイトとやり合おうかなって考えてるんだけど、マコちゃんは大丈夫そ? ビッグベアって図体でかいし、マコちゃんみたいな子が戦うにはちょっと荷が重いかなって思うんだけど……」

 

確かに、マコちゃんは小さいし、気も弱そうだから、ビッグベアなんて巨体を持った魔物とやり合うとなると心配ではある。一応、魔法に弱いみたいだけど、マコちゃんは魔法を扱えるのだろうか。聞いておくか。

 

「マコちゃんって、魔法を扱えるの?」

 

「んあ……闇魔法を、少々………」

 

随分と自信がなさげだ。

本当に大丈夫なのかなぁ……。

 

まあ、危なそうだったら棄権しよう。伝説の剣はロマンの塊だが、命には変えられない。まあ、『ソードオブレジェンド』の運営側も、ある程度危なそうだったら止めてはくれるだろうけどね。ただ、あらかじめ怪我を負ったりしても当大会は一切の責任を負いません的な誓約書を書かされてるし、念には念を、だ。

 

「マコちゃん、無理はしないようにね」

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

「私に逆らおうなんて……馬鹿生物め……」

 

「ま、マコちゃんすっごい………」

 

結論、全部杞憂だった。

 

マコちゃん、想像以上に強かった。何だあの闇魔法? めちゃくちゃ火力高いじゃん。ビッグベア瞬殺されてたよ?

闇魔法を少々とか言ってたけど、少々どころじゃなかったよ?

もうエキスパートレベルだったよ?

 

……まあ、『ソードオブレジェンド』に申し込むくらいなんだ。実力がなけりゃそもそもこの場にやってきていない、ということだろう。

 

さて、次は俺がステルスウルフと戦う番だ。

ま、暗殺者としての技術は今でも持ち合わせているし、余裕だろうな。

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

「君達、何者?」

 

ニカさんが困惑しながら聞いてくる。うん、よくよく考えたら、俺の暗殺者としての技術も普通じゃなかった。マコちゃんのこと言えないや。

これでも結構過酷な環境に置かれていたからね。失敗すれば体罰なんて当たり前どころか、四肢欠損させてやるなんて脅されてビクビクしながら仕事をこなしてたわけだし、そりゃ他の同世代の子と比べればとんでもない実力にはなってるはずだ。

 

「あはは、まあ、色々経験してきたというか……」

 

「どんな経験したらああなるのよ!? 私でも無理なんだけど?」

 

「私はジョブ盗賊なので………」

 

「魔法使いじゃなかったの!? 盗賊なのに闇魔法使ってるの!?」

 

マコちゃん盗賊なんかい。てっきり魔法使い系かと思ってたのに。さっきの戦闘、どこにも盗賊要素なかったよ…?

 

「まあ、いいか。すごいな最近の子。才能の塊じゃん……。ま、これで晴れて私達は第1試練突破。次の第2試練に進めるってわけね。そんで、第2試練の内容は……」

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

広大な森の中を駆け回って、30個しか配置されていないお宝を取り合うゲーム。

それが、第2試練の内容だ。

第1試練の突破者は全部で90名。つまり、3分の1がここでふるいに落とされることになる。

 

ニカさんとマコちゃんとは別れた。第2試練以降は、おそらくソロプレイになるだろうから。

それに、今回はお宝を手に入れないと試練クリアにならない。

確かにこの森には魔物が出るし、仲間がいた方が安全ではある、が、お宝は一箇所に固まっているわけではなく、全て別々の場所に配置されている。

 

一緒に行動したとして、宝を手に入れることができるのは1人だけだ。なら、別々で行動して、各々でお宝を発見する方がいい。

 

しばらく走る。他の参加者に見つかると、攻撃を仕掛けられる可能性もある。が、見つかったらその時に撒けばいい。だから今は全力疾走でお宝を探す。早くしないと、30個全部なくなってしまうからな。

 

周囲に目を凝らす。すると、不自然に人の手入れの入ったような場所を見つけた。

おそらく、宝を配置した時に残った痕跡なのだろう。

 

「見つけた」

 

ビンゴだ。見ると、わかりやすく宝箱に入った『お宝』が、そこに配置されていた。

 

「よし。それじゃ、これを手に入れて……」

 

「そ、それは……わ、私が先に見つけた宝だ!」

 

宝を入手しようとしたその時、横から1人の少女の声が飛んでくる。

この声には聞き覚えがある。確か………。

 

「マコちゃん」

 

そう、先ほどともに第1試練を突破した、マコちゃんだ。

うーん。ビッグベアには俺じゃかなわなかっただろうし、第1試練を突破できたのはマコちゃんのおかげだ。なら。

 

「わかった。見つけるのが遅かったみたいだし、ここはマコちゃんに譲るよ。私は別のを探すから」

 

そういって、俺はこの場を去ろうと思い、宝に背を向ける。

仕方ない。実際、マコちゃんが先に見つけたんなら譲るべきだし、魔法の扱いに長けてても、魔法が効かない魔物とかと遭遇したら危険だろう。なら、宝を入手して、早々に第2試練を突破してもらって、安全な場所で待機してもらった方がいい。

 

そんな風に考えていたんだが。

 

「ま、待って! た、確かに先に見つけた。け、けど、私は見つけただけで、まだ触れてない。だから………しょ、勝負しよう! 勝負。正々堂々勝負して、勝った方が宝を手に入れる………どう?」

 

………なるほど。俺が素直に引き下がるのを見て、申し訳なく思ったんだろう。いい子だな、この子。

 

さて、断ってもいい。けど、俺だって伝説の剣には興味がある。それに……。

 

あの子はやる気だ。本気の目をしてる。

だったら、こちらもそれに応えないといけない。

 

「いいよ、受けて立つ。けど、負けるつもりはないから」

 

短剣を構える。

相手は魔法を扱う。ジョブは盗賊らしいが、1番に警戒するべきはやはり魔法だろう。

 

常闇の秘術・深淵(ジ・アビス)

 

いきなり必殺級の魔法が飛んでくる。

まともにくらえば、ただでは済まないだろう。

 

当然、避け一択だ。防御とか、そんな選択肢はない。

 

とにかく背後に回る。

俺はそんなに力が強いわけじゃない。高火力な魔法を扱えるわけじゃない。

 

だから、俺が取る手段は限られてくる。

相手の背後をとって、無力化するか、ちまちま削って、スタミナ切れを起こさせるか、だ。

 

だから、とにかく背後をとりに行く。

俺は、マコちゃんの背後に行って、マコちゃんを拘束しようと、彼女に手を伸ばす。が……。

 

「うわっ!」

 

突然地面が崩れ落ち、体勢を崩してしまう。落とし穴、だと…?

そうか、彼女は……。

 

「い、一応ジョブ盗賊だから……」

 

搦手も使えるってことか。

でも、まだ負けていられない。

 

すぐさま体勢を整える。落ちた場所から軽く身を捻って這い上がり、一旦マコちゃんから距離を取る。

 

背後を取るのは難しそうだ。どんな罠があるか分からない。

だから、スタミナ切れを狙う。

強力な魔法を扱えても、魔力は有限だ。

 

連続で使っていれば、いつかは魔力は底を尽きるし、ポンポンと使用すれば当然疲れる。

 

だから、できるだけ多くの魔法をマコちゃんに使わせ、それをいなす。そっちの方向で進めていこう。

 

「ん……」

 

と、そんな風に考えていたら、マコちゃんの方からこちらに接近してきた。

どういうことだ? 魔法を扱うのが得意なら、わざわざ近接戦闘に持ち込むより、俺を近づけさせないように遠くにいた方がいいはず。なのに。

 

「っ!」

 

マコちゃんが懐から短剣を取り出し、俺に向けて振り翳してくる。

俺も同様に短剣を取り出し、マコちゃんの短剣を受け止める。

 

「観察してて、思った。何か企んでるって」

 

「それだけで接近戦に持ち込むなんて……」

 

「接近戦? 違う。私は…」

 

嫌な予感がする。

すぐに離れろと、そう直感が告げている。

 

俺は即座にマコちゃんの短剣を弾く。

一旦距離を取ろう。なにか、なにかくる!

 

「もう遅い…………。決まるよ、 常闇の秘術・深淵(ジ・アビス)

 

まずい………ま、け……。

 

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

 

負けた。

どうやら、俺が何か企んでると踏んで、長期に渡る戦闘は危険と判断し、短期決戦に持ち込もうとしたらしい。結果、至近距離で闇魔法を行使するのが、手っ取り早いと思ったのだとか。

 

一応、巻き込みとか考えると近距離で放つのは危険な魔法の使い方なんだけど、それをやってのける根性もまたマコちゃんの強みなのだろう。

 

「負けた。約束通り、宝はマコちゃんに譲るよ」

 

正々堂々戦って、ちゃんと負けたんだ。宝は素直に譲ろう、それに、いい経験になった。

伝説の剣を拝めなかったのは残念だが、まあ、仕方ないだろう。

 

「あの、そのこと……なんだけど」

 

マコちゃんは言いにくそうにしながら、自身のポケットを漁り、何かを取り出す。

 

「実は……、もう宝持ってて……」

 

「へ?」

 

「だから……あのお宝は…………その…………あげる……」

 

もしかして、俺と戦いたくて、宝を取り合うフリをしていたんだろうか?

なるほど、これは一本取られたな。

 

「そっか、じゃあ」

 

「第3試練も一緒、だね………」

 

宝の方に歩く。

宝箱を開けると、マコちゃんが持っていたのと同じような『お宝』が入っていた。俺は、その宝を手に取る。

 

『最後のお宝が回収されました。これにて、第2試練を終了します』

 

瞬間、第2試練終了のアナウンスが、響いた。

 

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

 

そんなこんなで第3試練に挑むことになった俺とマコちゃんだったが、なんと驚くべきことに第2試練の突破者は2人だけだった。

なんでだよ30人いるはずだろと思うかもしれないが、これには理由がある。

 

俺が最後に手に取った宝、それ以外の29個の宝全てを、マコちゃんが保持していたのだ。

 

ある時は人から奪い取り、ある時は優しい人から譲り受け、またある時は、他人が宝を巡って争っている間に漁夫ったと。

 

うん、この子を優しい子と形容したが、前言撤回させてくれ。

 

「傲慢すぎる……」

 

「だ、だってお宝って聞いたら………欲しくなるし」

 

なるほど、マコちゃんにも子供らしい一面があったということか。

 

にしても……。

 

「これが、伝説の剣……」

 

第3の試練、それは、伝説の剣が眠る洞窟へ行き、伝説の剣を手に入れること。

 

そして今、俺とマコちゃんは洞窟の最深部へ行き、見事伝説の剣がある場所にやってくることができたのだった。

 

「これが伝説の剣! 漆黒に輝く剣先を見れば、人々が魅了されるのも致し方なし! これがあれば私の常闇の秘術・深淵【ジ・アビス】も更なる進化を…」

 

マコちゃんが伝説の剣を見て、キラキラと目を輝かせながらボソボソと何かを喋っている。

興奮すると喋り方変わるのかな?

 

「にしても、これが伝説の剣、かー。兵士が常備してる剣となんら変わりない気がするけど……」

 

「そんなはずない! きっと素晴らしい切れ味をしているのだろう。よし! 試しにそこの岩を切ってみよう!」

 

「あんな大きな岩、切れるの…?」

 

「魔界にはあれくらいの大きな岩を簡単に切れる剣を作成する能力を持った魔族もいるらしいし、伝説の剣だってそれくらいできるはず!」

 

マコちゃんはウキウキで、大きな岩があるところに駆け寄り、伝説の剣を振りかざす。

 

カキィンっと、気持ちのいい音が洞窟中に響き渡る。

大きな岩は、伝説の剣にはよって切断され………。

 

 

「なん………だと……」

 

切断されたのは、伝説の剣の剣先の方だった。

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

「あーね、知らなかったんだ。伝説の剣のこと」

 

後でニカさんに聞いたところ、『ソードオブレジェンド』における伝説の剣はあくまでおまけで、本来は冒険者達が集って自身の実力を図りに来たりするためのイベントだったらしい。ノーモセニハンケに住んでる人にとっては、常識なんだとか。

 

なーんか、拍子抜けな話だったなー。

伝説の剣、やっぱり存在しないんだろうか。

 

「まあ、なんだかんだで楽しかったけど」

 

「あ、あのクロエ!」

 

大会も終わって、疲れたなーなんて思いながら伸びをしていると、後ろから声をかけられる。

この声は、マコちゃんのものだ。

 

「マコちゃん? どうしたの?」

 

「そ、その……私と………と、と、とととととととと」

 

「とととととととと?」

 

「ともともとも………共に歩もう!!」

 

「!? ど、どういうこと?」

 

「えっと、えっと、だから……」

 

「友達になりたいんじゃない?」

 

マコちゃんが言いたいことがわからなくて困惑していると、横からニカさんが助け舟を出してくれる。

そうか、友達になりたかったのか。

なーんだ、そんなこと。

 

「マコちゃん、もう私達、友達だよ」

 

俺はマコちゃんに手を差し出す。

今日一緒に過ごして、共に伝説の剣を求め合った仲だ。これからも仲良くしていきたい。

 

「そ、っか……へへ………。じゃあ、私のこと……マコって、呼んでほしい」

 

「うん、よろしく、マコ」

 

剣は偽物だったけど。

この日得た出会いは、確かに、本物だった。

 




Tips:今と全然別キャラなマコちゃん。この頃は慣れない環境で精一杯だったため、おとなしかった。
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