TS暗殺者、異世界で冒険する   作:布団から出られない

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羅針暗黒魔剣ドラゴンツヴァイ・グレードインフィニティ

「はっはっはっはっは! また開発してしまった! これぞ究極の闇! 名付けて『常闇の秘術・深淵【ジ・アビス】睥睨する闇夜〜深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている〜』完成だ!」

 

目の前で銀髪厨二病系ロリっ娘が騒いでいるが、俺はどうすればいいのだろう。

 

 

 

北の国イームサ、西の国トスェウに顔を出した後、東の国ムレーハに帰ったのだが、帰宅してすぐに勇者パーティで魔王軍の視察に行くことになったのだ。

 

魔王の領土は北の国イームサのさらに奥にある広大な雪原全てであるため、現在は北の国イームサの中の辺境の村、ドルーコ村で宿を取っていた。

 

「刹那に幻想を抱き暗黒竜よ、その眼を持って、この空虚な世界を正したまへ! 我、白夜の真虎なり。氷雪の大地にて古くから君臨せしーーー違う、もっとカッコよく……」

 

宿を取るにあたって、流石に男である優斗と、その他女性を同じ部屋に入れるのはまずいため、3つほど部屋を取ることにしたのだが、クロエはマコと相部屋することになった。一応アンジェも相部屋なのだが、彼女は現在優斗達と共に買い物に出掛けている。よって今この宿にはクロエとマコしかいない。

 

「愚か、浅はか、惨めなり。総て蠱毒の贄、この世の理ここにありーーー違う……あんまり人をバカにするような言葉はよくない……」

 

誰が誰と相部屋になるのか決める際、アンジェとマコがクロエと同室がいい! と即答してくれたのは素直に嬉しかった。

 

「アブソリュート・ダークネス・ビジョン! これも違う! カッコいい詠唱を……」

 

嬉しかったのだけども。

これどうしたらいいんですかね?

部屋入りたくても入れないんですけども!

 

「カモン!」

 

もしかしてドアの前で待ってるのがバレた!?

 

「暗黒竜! 来い! 我の元へ顕現せよ!」

 

なんだ詠唱か。

とにかく、いつまでもこんな調子なので部屋に入ろうにも入れない。

というか仮に入ったとして、いつまでもこのテンションでいられたら困る。

いや、流石に人がいたら自重するよね……?

 

「秘術! 『常闇の秘術・深淵【ジ・アビス】睥睨する闇夜〜深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている〜』発動!! これが発動された時ーーー」

 

いやないな。

こいつは自重しないな。

というか一応この宿俺達の他にも泊まる人いるんだけど………もう少し近所迷惑とか考えない?

 

「Shut up!」

 

それ自分に対して言ってる……?

ていうかこの子本当に大丈夫なのだろうか。

 

「何か物足りないな……やっぱり“アレ”をつけるべきか……」

 

今のところ優斗達がいる時は厨二病を表に出してないみたいだけど、そのうち眼帯とかし出しそうな勢いだ。

 

ん? 何か鞄漁り出したな……何か小道具でも……あっ

 

「私の右目がっ! 疼いてたまらないぜっ!」

 

もう既に持ってたよこの子。急に鞄漁り出したと思ったら眼帯取り出して装着し出したよこの子。

 

「最高っ! やはりこの眼帯はよく馴染む……この感触を一言で表すなら……」

 

本当に俺の存在に気づいてないのかな。

詠唱の内容と俺の考えてることがマッチしすぎてるんだが……

 

「ベストマッチ!」

 

いや本当に心でも読んでるのかってくらいのマッチ率!

マッチングアプリもびっくりのマッチング率なんだけど!?

 

これが思考盗聴ってやつですかい……

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

結局部屋に入れずに一時間程経ってしまった。

部屋の扉の前で一時間ずっと棒立ち……しかもちょっと隙間空いてるから中でマコが厨二病の権能を思う存分奮っているのが見えてしまう。

入ればよかったじゃないかという意見もわかるけど、正直入れる雰囲気じゃなかった。はっきりいうとちょっと頭にきている。

だからまぁ…もういいだろう。

 

ガチャっ

 

「お邪魔します」

 

「その声は………我が盟友にして至高のライバル…! クロエではないか!」

 

山月記かな?

 

「ふっ、クロエよ。私は……いや我はまた完成させてしまった……究極の闇魔法……その名も『常闇の秘術・深淵【ジ・アビス】睥睨する闇夜〜深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいーーー」

 

「ま、マコちゃん…?」

 

「え…?………そ、その声は………わ………ア…アンジェ…………」

 

ということで、ずっと待たされて少しマコに苛立ちが溜まった俺は、マコの厨二病をアンジェに知らせるという形でマコに精神的ダメージを与えることにした。

俺が一時間部屋の前で棒立ちしているうちに優斗達の買い物が終わったからな。

 

今のマコはさながらオタクバレして恥ずかしい思いをしている思春期のアレ状態だ。

一時間も俺を待たせた罰だ。せいぜい苦しむがいい……

 

「ま、マコちゃん! か、かっこいいと、思う、よ…?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「マコちゃん!? お、落ち着いて! 大丈夫だから!」

 

「殺せっ! 殺せぇっ! こんなっ! こんな屈辱ぅぅぅ!」

 

普段は寡黙なマコが声を上げて悶絶している。それを必死に宥めようとするアンジェ。これに懲りたら厨二病癖はもう少し抑えような!(悪魔のような笑み)

 

 

 

ん? 何かバタバタ足音が聞こえてくるぞ……? あっ

 

「マコ! どうした!」

 

「マコ! 大丈夫!?」

 

「はわわっ! ま、マコちゃん! 大丈夫ですかー!」

 

「なんだか大変なことになってるみたいだねぇ……」

 

騒ぎを聞きつけたのか、優斗、セリカ、エレナ、カカエが順にやってくる。

流石にパーティメンバー全員に厨二病バレするのは可哀想だったので、本当はアンジェだけのつもりだったんだが、マコが大声を上げたせいで予定外の4人が来てしまったみたいだ。

 

「み、みるなぁぁあぁあぁあぁぁああああぁぁぁ!」

 

「ちょっと優斗! あんまりジロジロ見るのやめなさいよ! と、とりあえずマコのことはエレナ達に任せて、ほ、ほら! 下で一緒にお茶でも……」

 

「そうだよユウト。乙女の秘密を覗くのは例え勇者であっても許されることじゃない。ここはセリカ達に任せてボクと…「はぁ!? あんたが残りなさいよ!」…」

 

セリカとカカエが優斗と2人きりでお茶する権利を奪い合っている。

君達マコが大声出したの聞いて心配して来たんじゃないの……?

仲間より男かよ! 薄情な!

ていうか優斗にそんなこと言うなら最初から連れてくるなよ………

 

 

「え? ああ……そっか。じゃあ俺はクロエと2人でお茶してくるからここはセリカとカカエに任せることにするよ」

 

え? 俺?

 

「ちょ! ダメよ! クロエはマコと1番仲いいじゃない! マコのためを思うならクロエはこの場にいるべきよ!」

 

「そうだよユウト。セリカの言う通り、ここはエレナやクロエに任せてボク達は一緒にお茶を……」

 

「う“わ”ぁ“ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ん“」

 

「ちょ、ちょっとマコ! 大丈夫!?」

 

「あれくらいの年頃ならよくあることさ。さあユウト、ボクと一緒に………」

 

「本当に大丈夫か……? 流石に俺はマコが心配なんだけど…」

 

カカエが優斗を連れ出そうとするが、マコが泣き叫んだことでその声は遮られる。

セリカも流石に泣き叫んでたら心配はするんだね……

というかカカエ姉さん薄情すぎない? 人の心とかないんか‥?

 

「う“ぇ”……ひ“っ“く”っ”………ぐすん……」

 

やばい。ちょっと赤っ恥かかせようと思っただけなのにまさか泣き叫ぶなんて……

よくよく考えたら俺精神年齢マコよりも高い癖に…ちょっとイラついたからって14歳の女の子を泣かせるか?

やばい。本当にやばいことやってしまった。

 

「マコ…!」

 

流石に可哀想だと思い、マコの元へ駆け寄りその小さな身体を抱きしめた。

 

「泣かないで……マコが悲しんでると、私も悲しいから」

 

「う“ぅ”………………て“も”あ“ん”な“の”み“ら”れ“た”ら“み”ん“な”か“ら”き“ら”わ“れ”ち“ゃ”う“!」

 

今までは厨二病を患っているちょっとおかしな子だと思っていたが、彼女にも年相応なところはあるらしい。流石にいじめすぎたかな……

 

「大丈夫だから。皆マコのこと大切に思ってるし、そういうところもマコの一面だから、きっと受け入れてくれるよ」

 

「ほ“ん”と“?」

 

マコがそう問うと、勇者パーティの面々はうんうんと頷いている。

いや、まあ多分アンジェ以外はマコの厨二病のこと分かってないだろうから元から嫌われる心配なんてしなくていいんだけども。

というかエレナさんはなんで顔真っ赤にして悶絶してるんだ?

 

「これが………尊いということですかっ!」

 

「とおとい…?」

 

あー……………。

どうやら女の子同士で抱き合っている様子を見てそちらの方向に目醒めてしまったらしい。いやこのくらい軽いスキンシップの内だと思うんですけど………。

まあエレナさん純情だしね、仕方ないね。

優斗君は尊いという言葉を知らないらしい。現代日本からの転生じゃないの?

 

「そ”っ“か”ぁ“! よ”か“っ”た“ぁ”よ“ぅ…………ぅぅ……………………zzz」

 

泣き疲れたのか、安心したからか、もしくはその両方か、マコはスヤスヤと寝息をたてだした。

こうして見ると可愛いな、この子。

 

「結局何の騒ぎだったの? まあ落ち着いたなら深くは追求しないけど……」

 

「ボク達は邪魔者だろうし、ここは2人きりにさせてあげようか」

 

「そうだな……」

 

「そうですね………」

 

そう言ってセリカ、カカエ、優斗、エレナの4人は出ていく。

気を遣ったのか、アンジェも4人と一緒に出ていった。

5人が出ていったせいか、部屋ではマコの寝息だけが音を発している。

 

「………zzz……………んぅ…………………」

 

「っ! かわいい……」

 

普段の厨二病からは想像もできないほどの可愛い寝顔だ。

なんというか庇護欲を掻き立てられるような顔をしてる。

 

「あーでも俺のせいで泣かせちゃったんだよな………」

 

流石に今回の件はいくらなんでも大人気なかったと思う。

やったことといえばアンジェを部屋に連れてきただけなのだが、それにしてもマコに与えられた精神的ダメージは相当なものだろうし、アンジェだってマコを泣かせてしまって気不味い思いをしただろう。

 

「やっぱり精神が体に引っ張られてるのかな………はぁ………」

 

結局この日はこれ以降ずっと1人反省会を繰り返したせいで中々寝付けないクロエであった。

 




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