TS暗殺者、異世界で冒険する   作:布団から出られない

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muscle× muscle=muscle

 

「ひゃく………じゅうなな………ひゃくじゅう………はち………」

 

目を覚ましたら厨二銀髪ロリっ娘が筋トレをしてた件。

どしたん急に。

やっぱり昨日のアレでおかしくなっちゃったのか。

 

「マコ…? 何してるの?」

 

「ひゃく……じゅう………きゅう…………ひゃく……にじゅう! はぁ…………これ…?…………きんとれ……はぁ…………だよ……はぁ…………」

 

しかも回数が異常だ。

なんで100越え行ってるの…?

 

「なんで急に筋トレ……?」

 

「ふっ………私は………はぁ…………思った!…………はぁ………闇魔法は………流石に………はぁ…………恥ずかしい………だから…………魔法じゃなくて…………筋肉で…………はぁ…………」

 

「息整えてからでいいよ?」

 

というかこの子一応ジョブ盗賊だったはずなんだけど……。

魔法使ったり筋肉に頼り出したりと盗賊要素がどこにもない。

某人気RPGの転職できる神殿みたいな場所で転職したほうがいいと思うよ。

 

「クロエ……見てて!」

 

しばらくして息が整ったのか、はっきりとした声でマコはそう告げる。

そして拳を握り、手を振り上げ、次の瞬間………

 

ドゴォッ!

 

轟音が鳴り響く。

マコが拳を床に向けて放ったのだ。床には穴が空いて……………はぁ!?

深っ! 一階ぶち抜いてさらに下まで穴開いてるじゃん!?

どこでこんな腕力身につけた………? 

ていうかこれ……弁償とかしないといけないやつやん……

 

「クォラァ!! 何やっとんじゃさ!」

 

宿屋のおばちゃん!?

そりゃこんだけ大きな音出したら来るよねぇ!

やばいやばい、謝罪しないと…!

 

「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! その! 宿! あ、あの……!」

 

パニックになって上手く言葉が紡げない。

まともに謝罪もできない………ていうか優斗達は来ないのか…?

流石にこれだけ大きな物音出したんだから来て欲しいんだけど……

 

「おばさん、見て!」

 

そう言ってマコは再び拳を振り上げ……………

 

「って! やめろぉぉぉぉぉぉ! これ以上問題を起こすなぁぁぁぁぁぁ」

 

慌てて叫ぶが、もう遅い。

マコは既に拳を振り終え、そこには既に底の見えない深い穴ができていた。

 

マコ、昨日のアレでこわれちゃったの…?

これ俺のせい? 俺がマコいじめたせい?

 

「ほぉ〜?」

 

宿屋のおばちゃんの目が好戦的になっている。

あ………やばいやつだ………

 

「クロエ、大丈夫。私の筋肉でおばさんも感動してるだけだから」

 

「んなわけ………」

 

「はっはっはっはっは! あんたすごい筋肉だね!

こいつぁ凄いよ。あぁ宿の修理の件はいいんだ。これだけすごい筋肉を見せてもらったんだ。宿代もタダにしておくよ」

 

「は?」

 

「やはり筋肉……! 筋肉は全てを解決する……!」

 

マコがそう言って威張っているが、意味がわからない。

 

「なんでぇぇぇぇぇぇぇ!? 

何? 宿屋のおばさんは筋肉愛好家だったの? 

にしても宿代タダっておかしいよね!? どういうこと!?」

 

勇者パーティの前では普段は取り乱さないクロエだが、今回ばかりは思わず叫び散らしてしまう。

はっきり言って状況が意味不明だ。

 

「何って、筋肉だよ? 筋肉なんだからなんでも解決できて当然」

 

「そうさね。あんたまだ若いからちゃんと筋肉の良さがわかってないんだねぇ。どうかい、わしが一つ筋肉の良さを教えてやろうかね……」

 

「そんなのいらんわぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

思わずドアを蹴り飛ばし勢いよく部屋を出る。

あぁ……ドアも弁償しなきゃなぁ。

そんなふうに思いながらも宿屋から離れる。

あそこにいると何か大切なものを失う気がする。

具体的に何とは言えない……というか分からないが、あの狂気にはもう触れたくない。

 

と、しばらく村をブラブラしていると、エレナさんを見つけた。

 

「エレナさん! はぁ……疲れた。さっきマコの様子がおかしくてさ…………」

 

「何? クロエちゃん? あっ! もしかしてクロエちゃんも体を鍛えたいの……? だったらこのダンベルを使ったら……」

 

「お前もかぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

即座にエレナの元から全力ダッシュで離れる。

ていうかエレナさん追ってきてる!?

元気にダンベル持ち上げながら追ってきてる!

こわいこわいこわい!

てかエレナさんそんなに筋肉あったの!? 

本当にエレナさん本人なのか怪しいよこれ……

 

あっ! 転んだ。

いや、ダンベル持ち上げるのはどうかと思うけど、あのドジさ加減はエレナさんらしいな…………

 

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

 

とりあえずエレナさんはまいたか。

 

というか、走ってる途中でも村の中でダンベルを持ってる人とか、プロテインを持ち歩いてる人とか、いきなりその辺で筋トレ始める人とかいたし、どう考えてもおかしい。

 

もしかして俺がおかしいのか?

世界じゃなくて、俺が間違っているのか?

筋肉って実は素晴らしいモノナンジャ……

 

「クロエちゃん!」

 

この声は……

 

「アンジェ……?」

 

「プロテインも持ってない! ダンベルも持ってない! よかったぁ。クロエちゃんは“まとも”なんだね」

 

「もしかしてアンジェも……?」

 

「うん。私も“まとも”」

 

「そっか。突然マコが筋トレとかし始めたからびっくりしたけど、やっぱりこの村の皆おかしくなってるのかな……」

 

「ちゃんと筋トレしてるんだ………。うん、そうだね。とりあえず、安全な場所があるから、そこへ行こう?」

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

「クロエも“まとも”なのね」

 

アンジェに連れて行かれた場所には、セリカ、カカエの2人もいた。

 

「ボク達も突然周りがおかしくなったから困惑してね。とりあえず皆でバラバラに別れて村の人達から逃げてたんだよ」

 

「そっか。皆無事でよかった。でもマコとエレナさんは…………」

 

「2人に関しては仕方ないよ。ねぇクロエちゃん、会わせたい人がいるんだけど、着いてきてもらっても、良い?」

 

「会わせたい人……?」

 

アンジェはまともなはずだ。

でも、なんだろう、この違和感…………

 

本当に着いて行って大丈夫なのか……?

 

俺が悩んでいると、向こうの方から誰かが歩いてくる。

 

手には………ダンベル……?

まさか………まずい!

 

咄嗟に逃げようとするが、アンジェに腕を掴まれて止められてしまう。

 

「ねぇクロエちゃん。大丈夫だよ。私達は“まとも”だから……だから安心して。クロエちゃんも“まとも”にしてあげる」

 

コツコツと足音を立てながら誰かが近づいてくる。

ダンベルを持ちながら歩いてきたのは………

 

 

 

 

「ノ……エル……?」

 

 

 

 

北の国の勇者、ノエル=エヴェリーナだった。

 

 

 

 

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●

 

 

 

 

 

優斗は現在、おかしくなった村の人達から逃れるため、村中を駆け回っていた。

 

「なんで村の人達はこんなになってるんだ…! いくらなんでもおかしい……魔王軍の仕業か…?」

 

プロテインを持ちながら筋トレを勧めてくる村人達から逃げながら優斗は考えを巡らせる。

 

(マコもおかしくなってたし、エレナの様子もおかしかった。クロエ達は大丈夫か?)

 

あれこれと考えているが、先程からずっと走りっぱなしだ。

1人の村人にずっと追いかけられているのではなく、1人村人を撒けばまた別の村人が、その別の村人を撒けばその先にいるまた別の村人が追いかけてきて……と言った具合で中々休む暇がない。村人に危害を加えるわけにはいかないため、下手に戦闘もできない。

 

(そろそろ休みたいな……)

 

正直体も大分疲れてきている。

そろそろ休みたい、そう思っていると

 

「おい! クソ勇者! こっちだ!」

 

脇から男の声が聞こえてきた。

優斗は男の声に従い脇へと逸れていく。

村人達も優斗の後を追おうとするが、優斗が脇にそれた後、既に村人達は優斗の姿を見失っていた。

 

 

 

 

 

 

「悪い、助かった」

 

「礼なんて言うな。俺はお前が嫌いだ。ハーレム野郎」

 

「別に彼女達とはそういう仲じゃない。俺はアルトと仲良くしたいと思ってるんだけど、ダメか?」

 

「気持ち悪いこと言うな。俺はノーマルだ」

 

優斗を助けたのは西の勇者であるアルト・ゲスイヤーだった。

彼は優斗のことを嫌っていたのだが、流石に周りが皆おかしくなっている状況では、1人では心細いと思った彼は、嫌いではあるが、まともではあるため、優斗を助けることにしたのだ。

 

「そういえばアルトはなんでこの村に来たんだ?」

 

「そりゃお前、愛しのノエルちゃんを追っかけてに決まってんだろ……。ていうかお前、女と話す時と態度違うんだな。なんだ? お前のハーレムパーティには男はいらねぇってか!?」

 

「それはアルトも同じだろ。女性に対する対応が変わることに関しては勘弁してほしい。流石に男友達みたいな気さくな関係っていうのは幼馴染ってわけでもないし難しいんだ。もちろん中にはそういう人もいるんだが……まあやっぱり男友達とは感覚が違うんだ」

 

「そういやお前男友達とかいるのか?」

 

「……………いない………な………。一応ユリウスとは話をするが……軽口を言い合えるような仲じゃない。アルトはいるのか?」

 

「いな……あーいや、1人いるな。とっておきの男友達が。でも俺は女にモテてるお前が羨ましいけどな!」

 

「そうか。俺も男友達が欲しいよ………なぁ……良かったら……俺と友達にならないか?」

 

「やだね……!」

 

「ガッハッハ! 勇者ともあろうものが男友達が欲しいと申すか! よかろう! ワシが友達になってやっても良いぞ!」

 

「「!?」」

 

突然の第三者の声に、優斗とアルトの2人は戦闘体制に入る。

 

(いつからいた……? 油断していたとはいえ、全く気付かなかった………)

 

「おい! お前何者だ!?」

 

アルトが問う。

視線の先には、身長2m強で巨体の大男が佇んでいる。

心なしか肌は紫がかっていて、頭の上には2本の角が生えている。

 

「ワシが何者か? じゃとぉ? 貴様、人に名を聞くときはまずは己から名乗るのが礼儀であろう。まあよい。ワシの名前はオニンニク。誇り高き魔王軍が“四天王”の1人じゃ!」

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