旧日本軍もビックリなパワハラ提督が着任しました。   作:湯タンポ

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や、皆さんお元気?

私はご機嫌斜めなの!

何故って?

だって今回はお話的に全然暴力振るえ無いもん……まぁそんなことはさておき、わたくし復活!次回以降も更新致しますわよ!

ではどうぞ〜




"あ号"作戦

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府正門前に一台の車が止まった。

 

その中から出てくるのは、当然この鎮守府の提督たる南雲秀一大将だ。

 

 

「……お待ちしておりました、お帰りなさいませ、提督。」

 

 

出迎えたのは秘書艦としての任を与えられ、出迎える必要がある大淀である。

 

 

「…先週指示した東南アジアへの攻勢計画は何処まで進んでいる」

 

「…はい、現在は装備の最終メンテナンス等を行っている段階であり、明日には整備、作戦の最終確認が完了します。

…陸軍の方からも同様の報告が届いておりますので、予定通り明明後日には出撃が可能です」

 

 

大淀は、スタスタと執務室に向かって歩く南雲の後ろに着いていきながら、口頭でその様に報告した。

 

そして執務室に着くと、南雲は椅子に腰かけて言った。

 

「……そうか、ならば明日明後日は休養を摂るように、出撃予定の者に言っておけ」

 

「……承知しました。……………提督、その、失礼を承知でひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 

大淀はその言葉を聞くと少し躊躇うような仕草を見せながらも、南雲に対して質問を投げかけた。

 

 

「何だ」

 

南雲は特に気にする様子も無く聞き返した。

 

すると、大淀は恐る恐るという感じで口を開いた。

 

 

「…その、今回の作戦の目的は一体なんなのでしょう? 無論、今の日本では石油やゴムと言った資源が足りて居らず、それらの獲得の為に東南アジアへと進出するのは分かります。

 

しかし、深海棲艦の攻撃により、国として存続出来ているかどうかも怪しい東南アジアの国々に上陸するのは些か危険が過ぎるのではと………それに、先週の"出撃"によって、あまり士気も高いとは言えませんし……」

 

 

 

 

 

 

お前がそれを知る必要があるのか?

 

 

 

 

その言葉には有無を言わせぬ迫力があった。

 

「……ッ!申し訳ありません!」

 

 

大淀は慌てて謝罪をする。

 

「……今日はもう下がれ。」

 

南雲はそれだけ言うと、机の上に積まれた書類を手に取り仕事を始めた。

 

そんな南雲の様子を見た大淀は、

「…は、失礼します」とだけ言って、ドアへと向かう。

 

 

 

「……て、提督、報告し忘れていましたが、鳳翔さんが相談があると言っていました。……あの、それだけです。」

 

 

ドアの前で立ち止まり振り返った大淀は、最後に一言告げるとそのまま部屋を出て行った。

 

 

(……全く、どいつもこいつもいちいち反逆して面倒臭い。

 

"あいつら"は俺の言う事に逆らう事など無かったと言うのに。)

 

 

南雲は心の中で悪態をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

―――時刻は0130、南雲は明後日の攻勢計画の最終チェックをしていた。

 

 

 

そんな時、コンコン……と控えめなノックが執務室に響いた。

 

 

「……入れ」

 

南雲が短く返事を返すと、「失礼致します」という声と共に、鳳翔が部屋へと入ってきた。

 

 

「何用だ、こんな時間に」

 

 

「あ、あの、少し、相談がありまして……こ、こんな時間に訪ねるのは失礼かと思ったのですが、日中は提督もお忙しいでしょうし、この時間なら―」

 

「御託はいらん、さっさと要件を話せ」

 

 

鳳翔は南雲の不機嫌そうな口調にビクっと身体を震わせた。

 

そして、意を決するように南雲の目を見つめながら言った。

 

 

「あ、あの、提督はこの横須賀鎮守府に着任されてから、殆ど軍用の携行食やインスタント食品等しか口にしていませんよね…?」

 

「それがどうした」

 

確かに南雲は基本まともなものを口にしていない。

 

理由は簡単だ、彼は効率の鬼なので自分の食事時間など無駄だとしか思っておらず、出来るだけ早く食事を済ませるようにしているからだ。

 

その為、南雲は基本カロリバーを齧りながら書類とにらめっこするか、麺をすすりながら電卓と戯れるかのどちらかだ。

 

 

「で、でしたらコレを……と思いまして……」

 

 

そう言いわれて、南雲は鳳翔が部屋に入ってきてから初めて顔を上げた。

 

そこには、お盆に載せられた湯呑と急須、それと小さな鍋が載っていた。

 

 

「あの、私は役立たずですので、せめて食事くらいは…と」

 

 

『提督、軍務は体が資本ですから、どうかまともな食事をお取りください!

…私がいくらでも作りますから』

 

 

(…忌々しい…)

 

 

(何故だ…何故同じ声で…何故同じ姿で…なぜ同じようなことを言う…)

 

南雲にとってその言葉は、かつての甘く苦々しい過去を彷彿とさせた。

 

 

「………必要無い」

 

南雲は再び書類に目を落とすと、鳳翔の方を見ること無くそう答えた。

 

しかし、そんな南雲に対して、鳳翔は更に言葉を続けた。

 

 

「し、しかし、ちゃんとした食事を取らなければ、お身体に差し支え―」

 

「それ以上喋るな、失せろ。

でなければもう一度お前に"教育"を施す。」

 

南雲は鳳翔の言葉を遮って、氷河期もかくやと言った冷酷な視線を向けて冷たく言い放った。

 

その言葉を聞いた瞬間、鳳翔の顔が青ざめた。

 

「ッ!も、申し訳御座いません、出過ぎた真似でした!し、失礼致しました!」

 

鳳翔は慌てて頭を下げると、逃げるようにして部屋を出て行った。

 

 

(……目障りだ)

 

 

南雲は心の中で毒づく。

 

 

 

 

……そして、デスクに置かれたままの先程のお盆の存在に気づいた。

 

 

…中身は、『親子丼』…だった

 

 

「………!」

 

彼は目を見開いた。

 

 

(何故だ、あいつが知っている筈がない。

 

 

 

”俺の好物”なぞ、知っている方がおかしい。)

 

南雲は一瞬動揺したが、すぐに冷静になった。

 

「……フン、俺もまだ甘さを捨てきれて無いということか」

 

南雲は小さく呟くと、再び書類と向き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の朝大淀が執務室へと来た時、お盆は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_

 

 

 

 

 

翌日、0800。

 

 

 

 

「失礼します」

 

大淀が執務室のドアを開けると、南雲は既に執務机に座っていた。

 

 

「……おはようございます、提督。本日の執務作業に参りました。」

 

 

「ああ、さっさと始めろ。」

 

 

(……そう言えば、提督はいつ寝ているのでしょうか…?寝ている姿を殆ど見た事がありませんが……)

 

「は、了解致しました。」

 

大淀はふと思った疑問を心の中に仕舞いつつ、南雲に敬礼をした。

 

そして、いつものように業務を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、0900。

 

 

コンコン…と執務室にノックが響いた

 

 

「……あの、提督、大和です、少し宜しいでしょうか」

 

「入れ」

 

「…失礼します」

 

ガチャリと音を立てて執務室に入ってきたのは、戦艦 大和だ。

 

「何用だ」

 

南雲は書類から目を離さずに言った。

 

「あ、あの、少しお話が……」

 

「手短にしろ」

 

南雲は相変わらず書類から目を逸らすことは無い。

 

「え、えっと、昨日配布されたこの攻勢計画書なのですが、私の見間違いでなければ、"フィリピンからニューギニア島、オーストラリア周辺の制海権を2週間で確保"と書いてあるのですが……な、何かの間違いですよね?」

 

大和は不安げに言った。

 

 

「全くもって事実だが、何か問題があるのか?」

 

南雲は淡々と答えた。

 

 

「そ、そんな!いくら何でも無茶が過ぎます!移動、補給、入渠の時間だけでも、単純計算で1週間は掛かります!

 

しかもそれは疲労や睡眠時間を無視し、途中で一度も深海棲艦と接敵せずに、常に最大戦速を維持し、補給や入渠も艦隊が移動出来る最低限まで絞っての理論値です!

 

確実に実現不可能な作戦です!

 

…いえ、こんなものは作戦とすら呼べる物では有りません!

私達に"纏めて沈め"と言って居るようなものです!

 

こんなもの、殆どかつての"特攻"と何ら変わりませんよ!?」

 

 

仲間の命が掛かっている大和は、必死の形相で叫んだ。

 

 

「そうか、それは良かったな」

 

 

しかし、南雲はそう言いながら書類から目を離さない。

 

 

(この人、何も聞いてない…っ!

こんな人が、海軍の大将で、次期の元帥……!?)

 

「……ッ!このっ…!」

 

そんなあまりの態度に、大和は思わず拳を握りしめると、彼に向けて振りかぶった。

 

 

しかし――

 

 

 

「がはッ……!」

 

 

大和の拳が南雲に到達するより、彼の膝蹴りが大和の顔面に突き刺さる方が速かった。

 

 

彼女は血を撒き散らしながら吹き飛んだ。

 

南雲は動けない大和に近寄ると、まるで虫ケラを踏み潰す時のように足を振り上げた。

 

 

「お前達はなぜ学習しない」

 

 

一撃、鳩尾を踏み抜き、大和が血を吐く。

 

 

「ぐぅ……っ」

 

「逆らう度に"教育"を受けると分かっていながら何故逆らう」

 

二撃、今度は蹴り上げ、彼女が壁まで吹き飛ばされてうつ伏せに倒れるなる。

 

「がはッ……!」

 

「それからお前達に拒否権など無い。

無理だろうが無茶だろうがやるのがお前たちの仕事だ。

いい加減に無駄な事をするのはやめろ。」

 

三撃目、大和の髪を引っ張り上げると、腹部に蹴りを叩き込む。

 

「がぁ……!」

 

大和はそのまま崩れ落ちた。

 

「……大淀、武蔵を呼べ、"コレ"を片付けさせる。」

 

「は、はい……」

 

 

南雲は大和に背を向けると、大淀に命令しながらデスクに戻った。

 

 

大淀は慌てて館内放送を流し、武蔵を呼び出した。

 

数分後、執務室に現れた武蔵は、床に転がっている大和を見て絶句した。

 

 

「こ、これは何だ……一体何があったと言うんだ、提督」

 

「………武蔵か、俺に逆らったツケを払わせただけだ、さっさとソレを回収しろ」

 

南雲はそれだけ言うと、再び書類に目を戻した。

 

「……ッ…了解、した」

 

武蔵は小さく呟くと、大和を抱えて執務室を出て行った。

 

 

 

「……大淀、攻勢計画の確認は何処まで進んだ」

 

「えっと、今確認中ですが……最終チェックが終われば、陸軍の方からの報告待ちです」

 

「そうか、急げ」

 

「りょ、了解しました」

 

 

南雲はそう言いつつ、既に次の資料へと目を移していた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、1200。

 

 

 

「…あの、提督、1200ですが…」

 

「…ああ、そんな時間か、大淀、もう上がっていいぞ、食事を取り休養しろ。」

 

南雲は時計を見ると、特に表情を変えること無く言った。

 

「は、はい、ありがとうございます。」

 

(いつもなら、『五分で食事を摂って戻って来い』とか『さっさと食え、時間が勿体ない。』『まだ食べ終わっていないのか、早くしろ。』等と言われるのですけど……珍しいですね。)

 

「あ、あの、提督」

 

「何だ」

 

「いえ、何でもありません、失礼致します。」

 

「ならとっとと行け」

 

「は、はい、失礼致します。」

 

ガチャリと音を立てて扉が閉まった。

 

 

 

大淀が執務室を出た瞬間、南雲の携帯に電話が掛かって来た。

 

 

相手は、『愚妹』と表示されている。

 

「……」

 

南雲は無言で通話ボタンを押し耳に当てた。

 

「……どうした」

 

 

『お兄様!山本さんは何時帰ってくるのですか!?もう半年も会っていません!お兄様からも山本さんに帰ってくるよう-』

 

「死ね愚妹が」

 

ブチッ!

 

南雲は最後まで聞くことも無く、電話を切った。

 

Prrrrrr…

 

Prrrrrr……

 

すると、またすぐに電話が掛かってきた。

 

「……要件言わねえならぶち殺すぞ」

 

『まぁまぁ、どうせお暇でしょう?別に良いでは無いですか、お兄様。』

 

「充分忙しいわ、この愚妹が」

 

南雲はイラついた様子で答えた。

 

 

『そんな事言って、どうせまた艦娘の子達を虐めているだけでしょう?あぁ、横須賀の艦娘の子達が可哀想です!!』

 

「どつき回すぞ」

 

『うふふ、そんな怖い事言わないでください、冗談です。……それよりも、先程お話しした件なのですが、そろそろ宜しいのでは?』

 

「……お前は何を言っているんだ?」

 

『山本さんの事です!』

 

「あぁ、あの芸人の?」

 

『 違 い ま す !! 日本海軍 連合艦隊司令長官山本達秀大将の事です!私の旦那様ですよ!』

 

「誰だそいつ、知らんな」

 

『知らない訳無いでしょうが!お兄様の同僚ですよ!

私の旦那様を半年も家に帰さないのはどういう事なのですか!?いい加減に帰してください!二人っきりでイチャイチャしたいんです!』

 

「知るかそんなもん」

 

南雲は興味なさそうに答えた。

 

『むぅ〜っ!!私とお兄様は兄妹なんですよ!?少しぐらい心配してくれても――』

 

「頼むから死んでくれ」

 

『ぶぅーっ、わかりました、それじゃあもう山本さんに直接聞きますよっ!いいんですね!?』

 

「勝手にしろ、お前と話していると脳が溶ける」

 

『ふん、せいぜい後悔していれば良いのです。……あっ、そうだ、言い忘れていましたけど、来月そちらに行きますからね?、よろしくお願いします♪』

 

「…………」

 

『では、そういう事で』

 

 

プツリッと音が鳴り、電話が切れた。

 

 

「愚妹が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、大淀は食堂に居た。

 

 

 

 

「そんな事を提督から言われるなんて……珍しい事もあるものですね。」

 

大淀の向かいで食事をしている翔鶴が言った。

 

「ええ、正直私には提督が何をしたいのか分かりません。」

 

大淀はそう言いながら、味噌汁を飲んだ。

 

「…それよりも大淀さん、先程大和さんがドックに運ばれていましたが……やはり先日配布された攻勢計画書について抗議しに行かれたのでしょうか?」

 

「…ええ、抗議しても相手にされなかった大和さんが激昂して、殴りかかろうとした所を返り討ちにされました。」

 

「…そう…ですか…」

 

大淀の言葉を聞き、翔鶴は沈痛そうな表情を浮かべて俯いた。

 

 

「…提督は、本当にあの作戦を実施するつもりなのですか?」

 

「はい、今日処理した書類を見る限りでは、確定と言っていいと思います。」

 

翔鶴は、その言葉を聞いてさらに暗い顔をした。

 

 

「……現場の意見や意思は無視、されど現場に無茶な要求を課し、使い捨てにする事で功績を挙げようとする………っ…"嘗て"のあの人でなしの司令官達と…何も変わらないでは無いですか……!」

 

「しょ、翔鶴姉、お、落ち着いて」

 

瑞鶴が隣に座っている翔鶴の肩に手を置いた。

 

 

「だって瑞鶴、貴女もあの計画書を見たでしょう!?あんな無謀な海戦計画に加えて、陸軍の人達は深海棲艦が屯しているかもしれない場所に強襲上陸を敢行するのよ!?

 

こんなの……こんなの……結局"あの時"と何も変わらないじゃないッ!

 

……もう私は、この国の人に死んで欲しくない……」

 

「翔鶴、姉」

 

 

翔鶴の目からは涙が流れ落ちていた。

 

それは、かつての戦争の記憶を思い出している為なのか、あるいは別の理由があるのか、誰にも分からなかった。

 

 

 

「……ですが…もし仮に、私達が提督に反対したとして、どうなるかは目に見えています。

……それこそ大和さんの二の舞になるだけでしょう。」

 

そんな中、大淀は淡々と事実だけを述べた。

 

「だからといって、このまま黙って見ていろと言うのですか!?」

 

「……もちろんそうは思いませんよ……しかし、逆にお聞きしますが何か有効な手立てはお有りですか?それからこの艦隊に何か不備があった場合、一番最初に"教育"を受けるのは私や大和さん達であることを忘れないで頂けると幸いです、私も痛みを感じない訳ではありませんので……」

 

 

大淀からハイライトを消した瞳で見つめながらそう言われ、翔鶴は言葉を詰まらせた。

 

「……ごめんなさい、少し熱くなり過ぎてしまいました」

 

「…いえ、気にしないで下さい。」

 

「……一つ気になった事があるのですけど、どうしてあの人は、あんな作戦を強行しようとしているのでしょう?

確かに南方の資源地帯を抑えれば、深海棲艦との戦いで有利に立てるかもしれませんが、単に私たちが一度制海権を取って終わり…という単純な話でも無いですし、余りにもリスクが大き過ぎます……」

 

 

翔鶴は疑問に思った事を大淀に聞いた。

 

「……詳しくは分かりませんが……提督は何か今以上に大きな事を先に見据えている気がします」

 

 

その問いに対し、大淀はそう答えた。

 

「大きな事……ですか?」

 

「はい、具体的には全く分かりませんが……でも、そんな気がするんです」

 

 

「……まぁ何はともあれ、次の作戦を成功させるしか私達が生き残る道はないってことよね……さっさと食べちゃいましょう」

 

瑞鶴はそう言うと箸を手に取り、食事を再開した。

 

翔鶴と大淀も、それ以上は何も言わずにただひたすら目の前にある食事を胃の中に詰め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_

 

 

 

 

 

 

そして、作戦日当日、作戦に従軍する艦娘全員は一度講堂に集められた。

 

 

「総員、傾注!」

 

大淀の号令で皆が一斉に整列し、直立不動の姿勢をとった。

 

相対するは、今鎮守府の提督たる南雲秀一大将。

 

全艦に一度敬礼を返すと、南雲は話し始めた。

 

 

「……では、これより東南アジア及び南方地域掌握作戦_通称"あ号"作戦を開始する。

 

開始前の最終確認であるが、攻略対象は、『旧』フィリピン、ベトナム、カンボジア、タイ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、パプアニューギニア、そしてオーストラリアだ。

 

同地周辺の制海権を2週間程で確保し、それぞれの地域に強襲上陸を敢行、現地の状況を確認しつつ速やかに制圧を行う。

 

各地を制圧後は本土から駐留部隊が移送され、同地を日本領とする。

 

以上だ、質問は5つまで許す」

 

 

「……ではまず、同地に現地人が臨時政府やそれに準ずる組織が存在する場合はどうするべきでしょうか、また現地人の保護はいかが致しましょう」

 

 

赤城が挙手をして発言した。

 

 

「敵対する組織であれば潰せ、それから陸軍にも言ってあるが、現地人が協力的でない場合は殺せ、そうでなくとも特に保護する必要は無い」

 

「……は…?」

 

その言葉を聞き、赤城の顔には明らかな動揺が見られた。

 

いや、赤城だけではなく、殆どの艦娘に動揺が広がった。

 

「……そ、それはいくらなんでも……」

 

「なにか作戦に不満があるか?」

 

「……い、いえ……」

 

「他には?」

 

 

「……その、テイトク、強襲上陸を敢行する際、砲撃支援等はするべきデスカ……?」

 

金剛は恐る恐ると言った様子で南雲に問いかけた。

 

「当然だ、現地に反抗勢力がいた場合は、上陸敢行前に対地砲撃、爆撃を、陸軍の上陸後は近接航空支援を行え。」

 

「……了解シマシタ」

 

「他に質問は、残り三つだ」

 

 

「……では提督、補給、入渠等はどの程度の頻度で行なえば宜しいですか?それから、今回の作戦はかなり長期のものになると予想されます。

その為、艦隊の指揮系統の統一化が必要と考えます。

提督は鎮守府に在留されるのですか?

それとも陸軍の方と共に揚陸艦に搭乗し、直接指揮を取られるのですか?」

 

加賀が静かに手を上げて言った。

 

 

「…今回は揚陸艦に乗り込み直接指揮を執る、上陸の事もあるからな。

 

補給は燃料、弾薬が1割を切ってからにしろ。艦載機の補充は先頭の度に許す。

 

入渠は空母と潜水艦が中破、戦艦、重巡、軽巡は大破、駆逐は航行不能直前の場合にのみ許す」

 

「……え…」

 

南雲の言葉を聞いた瞬間、蒼龍は声を漏らした。

 

そしてそれは、他の艦娘達も同様だった。

 

(補給は節約だからまだ分かりますけど……入渠のハードルが高過ぎるよ……!)

 

そのあまりにも無慈悲な要求に対し、蒼龍は顔色を青くし、その他の艦娘も絶句していた。

 

「……ッ!!」

 

「なんだ?言いたいことがあるなら聞いてやる」

 

「……いえ、何でも、有りません…」

 

 

「そうか、では想定より質問時間が長くなった為、以上とする。

 

三十分後に出撃だ、確認を怠るなよ。」

 

南雲は最後にそう言うと、部屋を出ていった。

 

 

 

そのあと、南雲が退出した後も講堂内には何とも言えない空気が流れたままだった。

 

しかし、何もしない訳には行かず、それぞれ第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七艦隊と、それぞれの旗艦が講堂に集められ、出撃前の最終打ち合わせが行われた。

 

 

ちなみに今回出撃する戦力は、戦艦8、空母6、水母2、航巡4、雷巡2、重巡12、軽巡12、駆逐34、潜水艦4、計84隻。

 

これは横須賀鎮守府に所属する主力級艦娘の約7割であり、通常六隻で一艦隊を組むのだが、南雲は十二隻で一艦隊とする連合艦隊を七艦隊編成し、同時に出撃、指揮を執ると言う、一般的な提督が聞いたらぶっ倒れそうな作戦を実行しようとしているのだ。

 

 

 

そして、出撃時刻。

 

 

『全艦出撃、作戦を完遂せよ』

 

南雲の号令の元、各艦隊は順次出港していった。

 

 

 

 

かくして史上最大級規模の作戦、"あ号"作戦が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、軍病院VIP病室。

 

 

 

 

「元帥閣下、緊急報告に参りました。」

 

「……すまない高雄君、今は紙飛行機を作るのに忙しくてね」

 

「…元帥閣下、現実逃避したいお気持ちは十分にわかるのですが、南雲大将閣下から報告があり……」

 

「……分かった、聞こう」

 

「はっ、それでは……、南雲閣下が現在進めている南方方面作戦の事なのですが…」

 

「ああ、例の"あ号"作戦だろう?インドシナ半島、フィリピンを抑えるって言ってたね。」

 

「はい、それなのですが……閣下が今あげた三地域だけではなく、東南アジア全域に加えニューギニア島、オーストラリア周辺まで作戦範囲を広げるとの事です…」

 

「……」

 

永野は無言で紙飛行機を折り始めた。

 

「……」

 

「あの……元帥閣下……?」

 

「……ねぇ高雄君、私元帥やめていいと思う?ていうか辞めたいんだが」

 

「えっ…いや、あの、駄目です…」

 

 

「…何だよもおぉぉぉぉ!!またかよおぉぉぉぉぉ!!!

 

 

 

ウッ(胃に穴が3つくらい開く音)」

 

 

「元帥閣下!?閣下!?しっかりなさってください!愛宕!早くナースコール!」

 

 

 

永野の叫び声が病室に響いた後、続いてナースコールも鳴り響いた。

 

 

 

 

ちなみに入院期間は3週間伸びた。

 

 






もう辞めて!元帥閣下のライフはもうゼロよ!


さて、何で鳳翔さんあんな事されたのに構うの?…って思うかも知れませんが、……これは私の個人的な見解というか解釈なんですが…艦娘って割と頑丈と言うか、意外とそういう耐性が有りそう…って思ったのよね。

確かに南雲さんの暴力って効いてるんですよ、痛みはしっかり感じますし、気絶だってします。

続けば恐怖が芽生えて怯えるんだけども、何も無い日が続けば自然と緩和されていきます。


そもそも軍隊とは暴力その物でありますし、彼女たちも殴れるくらい当たり前だと思っています(まぁ砲弾が飛び交う戦場に比べたら…ね?)

っていうかこんだけ言っといてなんですけど、一番の原因は前任提督がマジのクソ野郎(食事なんてほぼ有って無いようなものだったし、補給は常に出撃できるギリギリ、睡眠時間は殆ど無し、パワハラやセクハラは当たり前、それどころかクソ提督仲間を呼び夜の相手をさせる、そして巫山戯た資材の使い方、総合的に無能な指揮官である)だったせいですね。


…え?そいつはどうなったかって?……世の中知らない方がいいことも有るんだよ?


まぁそれはさておき、そんなクソ指揮官とうちの南雲さんを比べると、確かに前任以上の苛烈な暴力行為はありますが、飯や補給は基本的にありますし、睡眠時間も6時間はある上に、海軍学校出身ですから規律には従いますし(今は作る側だけど)艦隊運用の知識も有る。

指揮官としてはこの世界最高クラスに有能ですから……うん、比べるまでもありませんね。

以上、彼女たちもマシな地獄を維持するのに意外と気を使ってるということでした。

曇らせ成分って………皆足りてないよね?

  • ちょっと何言ってるか分からない(多い)
  • 塩分過多(ちょっと多い)
  • まぁ……普通ですね。
  • そうだよ(便乗)(ちょっと足りない)
  • そうだねお母さんもそう思うよ(足りん)
  • 曇らせ気持ちイィ!!(中毒者)
  • 3分間待ってやる(はよ更新しろハゲ)
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