大和「武藏?」
隣に座る武藏に、声をかけようとした、その時。
大和は、今までに感じた事の無い圧迫感と殺気を感じた。
ここは、新幹線の車内のはず。
しかし、どう見ても深海の中に居るビジョンなのだ。
そして、武藏は。
明らかに、武藏なのだが。
武藏とは違う存在感。
強いて言えば、深海棲艦の武藏が大和の眼前に居る。
大和は、大量の冷や汗が滴るのを感じる。
身動ぎも出来ない。
眼前の武藏は、身体中がボロボロで額は大きく割れて脳漿さえ見える。
武藏からの声が聞こえる。
但し、頭の中に直接的に響く様にだ。
ムサシ(大和、お前は何故?)
大和(?)
ムサシ(人間の為に戦うのだ?)
大和(何故って?)
ムサシ(奴らが、私達を戦中では使い捨て。)
ムサシ(戦後は、忘却の奥に封印するがの如く扱い。)
ムサシ(私達と共に散って行った乗組員の想いも踏みにじる様なな扱い。)
ムサシ(虚しい、悲しい。)
ムサシ(今も同じだ。)
ムサシ(護る意味が、有るのか?)
ムサシ(しかも、上層部は責任を取らずに逃げた。)
ムサシ(今の上層部も、信用出来るのか?)
ムサシ(大和、重ねて問う、お前は何の為に再び命を掛けるのか?)
ムサシ(大和、お前は誰の為に戦うのだ?)
武藏「大和、どうした?」
大和は、ハッと我に帰った。
目の前には、武藏が居る。
その顔は、蒼白く冷や汗だらけで有ったが。
武藏「大和、何が有った?」
大和「何がって、貴女の方こそ。」
時間を大和が武藏に声を掛け様とした時に戻そう。
武藏が、大和を見た瞬間で有った。
武藏は、圧倒的な迄の威圧感と恐怖を感じた。
そう、武藏の眼前には大和ではなく深海棲艦のヤマトが居たのだ。
可怪しい?
ここは、新幹線の車内のはずだ。
何だ、このビジョンは?
これは、いったい?
武藏は、一瞬思考したが。
身動きや、視線すら外せない自分を感じた。
冷や汗が止まらない。
恐怖感が全身を包み込む。
このヤマトと対峙したら、生き残れないと思った。
ヤマト(武藏、私は要らない存在なんだ。)
ヤマト(あの時の上層部は、私をいかに始末するかを考えた。)
ヤマト(それも、自分達の面子を守る為にね。)
ヤマト(3000人を超える尊い犠牲を、何だと考えたのか。)
ヤマト(上層部の人物は、1人として私に乗り込まない。)
ヤマト(安全な場所で、勝手な事を言うだけで。)
ヤマト(私は、誰の為に戦えば良いのか。)
ヤマト(貴女は、何の為に戦うの?)
武藏は、我に帰った。
目の前の大和は、呆然としていた。
武藏「大和!!」
その後の二人は、押し黙ったままとなった。
呉駅に付いて、慌てて下車する。