暗いところで絵が光るTシャツ、と聞いて目を輝かせたのは短刀ではなく、日本号さんだった。
魔法少女たちが戦うアニメのコラボTシャツである。当然、大柄な男性に合うサイズなど無い……と思いきや、国際的に人気が高く海外の男性ファンにも需要があるそうで。追加生産を待てば特別大柄な男性向けのサイズも入手できるとのことで、日本号さんは万屋で予約注文をかけていた。
ふと目が覚めた夜半。喉が渇いて寝付けないので厨に飲料水を取りに行った。厨には井戸から水道が引いてある。年に一度、時の政府が水質検査をやってくれている。
厨には灯がついていて、先客が一人いた。
「おぅ、嬢ちゃんも目が覚めたのか」
日本号さんは昨日届いたばかりの魔法少女Tシャツを着て水を飲んでいた。寝間着の代わりにしているらしい。
「どうでした?そのTシャツ」
コップに水を汲みながら聞く。
「どうよ?」
日本号さんはよくぞ聞いてくれましたとばかりにその灰色地の裾に両手を入れ、絵がはっきり見えるように引っ張った。
「えーと、かわいい、ですね……」
当たり
蛍光塗料でプリントされている絵柄がぼんやり光った。
「なるほど~」
正直あまり興味もないが感心したふりをしてうなずいていると、暗い中で日本号さんは得意そうに笑った。
「これな、ファンの間じゃギシアンって省略するらしいぜ」
イケボで聞いてはいけない語句が飛び出したが鋼の意志で噴き出すのをこらえた。
「……好きなんですか?このアニメ」
「もともと夜中に絵が光るってのを試してみたかっただけなんだがな。せっかくだからちょっとばかり観てみた。悪くなかったぜ」
華麗な衣装で地上だけではなく空中すら縦横無尽に駆け回る戦闘シーンもさることながら、いたいけな少女たちが、敵と自分たちのどちらが正義か迷いながらも仲間を信じて戦う姿に深く共感したそうだ。
そんな流れで、今度一緒にそのアニメを視聴する約束をしてしまった。日本号さんは「長谷部もつき合わせる。あんたが居りゃあ、絶対に参加するからな、あいつ」と言っていた。
布教者が爆誕する瞬間を見た。得難い経験をしたと思う。