バケガニの異常発生が続く日々に、裁鬼と斬鬼の二人の弦の使い手達は、東西南北、縦断、横断…。奮闘の毎日を送っていた。
斬鬼が、栃木~群馬の山々でのバケガニ軍団との激闘を重ね、その後茨城県久慈郡にバケガニ発生の報を受けて休息もそこそこに、茨城までの横断討伐を続け、
裁鬼とその弟子 万丈波琉兎(ばんじょう バルト)にサポーター石割一行は、横浜の海岸沿いに現れたバケガニの雨霰を一網打尽に切り裂いていた。
「サバキさん。疲れてないですか?」
「あぁ。これくらい、どうってことないよ。…オレを誰だと思ってんの?
…それよりも。 バルト、お前さっき、無理に雷撃を打とうとしただろ?あれは止めておけ!怪我するぞ。」
「あ、やっぱりバレてましたか。鬼爪を使おうと思っていたんですけど、雷撃掌で怯ませてみようって咄嗟に…。でも、ダメでした。」
「あれは、ちょっとコツがあるんだよ。
…あ、ザンキは上手いよ。そういうの。オレは、直感的な感じのはダメだけどな。」
「分かりました。…それにしても、バケガニ多いですね…。」
「あぁ。ここまで多いのは、オレも久々だな。何かの兆しなのか…。異常発生なのか…。ザンキの方も気になるところだけれど、どうだろ、石割?」
「今は、袋田の滝辺りとの一方が日菜香さんから入ってますよ。ザンキさんの方も相当数のバケガニが出てますね。
…サバキさん、DA(ディスクアニマル)達の消耗も激しいですし、立て直すためにも、たちばな へ戻るのが妥当だと思います。」
「そっか。石割がそう言うんなら、間違いないな。戻ろう。行くぞ、バルト。」
「はい。」
DA達の状態は、かなりの消耗を強いられている。応急処置程度の修理さえも間に合わない程の襲撃は、ここ最近の魔化魍の発生記録からも、異例のことだった。
一度、体制を整える為にも たちばな に帰還することにした一行は手分けをして荷物を 車内 に運び入れる。
荷物と言っても、最低限しか持ち運びしない師匠の下では、キャンプ用品ばかりで、細々としたものが殆ど無く、直ぐにざっと辺りは片付いた。
一息つく余裕があるはずも無く、横浜からのとんぼ返りを急ぐ、エンジンをフル回転させ、首都高速道を突き抜ける。
助手席では、運転教習所の教科書を広げて中の文字に目線を走らすバルト。
石割の、普段の温和な運転と違う荒々しいハンドル捌きに、途中から教科書を閉じて窓を開け放ち胃袋の中味のせり上がりに堪えた。
サバキはというと、少しでも休んでおいてもらうのに後部座席で横になってもらった。
たちばな に戻った三人は、今回の現象が単なる異常発生と違うのではないかという、 猛士 総本山である吉野の決定だと、立花勢地郎に報告を受け、自分達が体験してきたことを立花さんに報告する。
師は、立花さんと何やら他にも意見を交えていた。
猛士は、組織の役職名を将棋の駒に例えている。自分は鬼になろうとしている者という意味で「と」と呼ばれる。「歩」からの昇格という流れを組む事が多いのもあって「ときん」とも呼ばれる。
鬼である師は、「角」
鬼のサポートを務める「飛車」
鬼達のシフトや、事務業務を担当する「銀」
そして、立花さんの様に、各猛士支部局の局長を務め、吉野との連携をしているのが「王」
こんな具合に鬼を取り巻く、猛士のメンバーはそれぞれの役割が存在している。
「王」の職である立花さんと、何かと意見を交わし、一目置かれる その姿を横目に、自分はこの人の弟子である事を改めて誇らしく思うのだった。