【カオ転三次】DRUG FATE 作:石は転がる
暫く不定期更新させていただくかもしれません。
今回は私の好きなこの曲をどうぞ。
っ【9】(Armored Core)
“終わり”の始まりは、ひどく何でもない小さな知らせで始まった。
――DDSの索敵・撮影クエスト。
そのクエストで寄せられた『中国の都市内部で発見された天使』の情報が、ガイア連合が認識した“終わり”の第一報であった。
この情報自体はそう珍しいものではない。
なにせ『過激派』にしろ『穏健派』にしろ『メシア教』というものは指導者層を天使に依存している。
勿論、人間の上層部というものも居るが、それは『組織運営者』として存在するものだ。組織の方針であったり先行きを決定するのは『天使の意向』であるので、何かあれば『天使』を呼び出し伺いを立てるのは日常茶飯事であった。
そのため、都市を守る結界に覆われた内部でも『信者』に指示出しや、或いは穏健派・過激派の暗闘に呼ばれたりと、都市内部でも『天使』は前から度々索敵されていた。
情報を受け取ったガイア連合クエスト処理:東アジア担当の電霊も『何時もの事』だと処理。
いつも通り定時前に帰った
一つ、二つ…十、二十……百、千…………………
ほんの僅かな間に幾つも幾つも寄せられる通報。
一瞬で処理が間に合わなくなり積み重なる報告。
圧倒的マシンパワーによりフリーズすることの無いシステムが、機械的に無機質に次々と情報を現地から受け取っていく。
その全てが『中国国内』からの物であることを確かめ、やっとクエスト処理担当電霊はこれが『異常事態』であることに気が付いた。
「――ぇ…? ……!? き、きんきゅう~、緊~急~事~態~で~~~~~すっ?!?!」
パニックになりながら
電脳世界に鳴り響くエマージェンシーコールの多重奏に、さらに混乱を加速しながらぁゎぁゎと別の処理区画にまで無意味に走り回る。
――ガイア連合にとっても長い夜となる『中華クーデター』。
その始まりが告げる嚆矢は、こうして放たれたのである。
“終わり”は、暗く昏くやって来た。
それは陽がとうに落ちた時刻の事だ。
“決戦場”への道行き。
中国上空を我が物顔で飛ぶ
雲一つない、斑な空。
星も、月も、何も見えない。
“天界”の権勢が強まるごとに異常な『法則』の衝突が起き、歪み
『物理法則』と『異界法則』の摩擦に、空間が捩じれて光が淀んでいるのだ。
先行きの見えない航路。
文明の明かりが消え、暗闇の中に沈んだ都市。
直上を通ることで辛うじて見えた都市は、例外的にチカチカと瞬く光が人の活動を知らせているように見えるかもしれないがそれは戦闘の火の手が上がっているだけだ。
『天使』の気配が地脈から次々と噴き出している。
すでに【四神結界】も【風水結界】もボロボロだ。
【結界】を維持・修復できる人員はいない。それが出来たはずの『仙人』はもう“仙界”に逃げ込み、傍観者を気取っている。
地脈と共に結界を譲られた『多神連合』も譲られたばかりでどちらも掌握出来ていない。もし掌握して『多神連合』の物に置き換えていたのならここまで酷い事になってはいないのであろうが、『過激派』の蜂起はそれを見越してのものであったのであろう。
使い捨ての『信者』に
そんな“終端”の景色を、私は上空から俯瞰する。
ここはもう『中華人民共和国』と言う
“天使”の手に落ちるのか、それとも“悪魔”の下に降るのか。強力な覚醒者に庇護されるという例外的な事例以外、この地は人の物でなくなるのはすでに確定した事態であった。
――そんな空を、私は一人行く。
音よりも早く、紫電よりも遅く。
大気も、空に溢れた溺れそうなマグネタイトも、天使たちの指揮する聖歌すらも。何もかもを燃料に、私の翼は全てを燃やし尽くし、一条の光となって空を行く。
――そんな空を、私は一人行く。
嘆きよりも早く、救いよりも遅く。
破壊される街も、震え戦う異能者も、天使に自我を塗りつぶされる民衆すらも。何もかもを見捨て、私の体は全てを置き去りにして、一筋の流星となって空を行く。
――そんな空を、私は一人行く。
赤光よりも眩く、紅赤よりも深く。
物理法則も、異界法則も。秩序も混沌も。何もかもを“ただの薪”としての価値しか見出さず、私は破滅の導となって空を駆けて行く。
それは、異形の航空機であった。
機体全長にも匹敵するエンジンセルを上部に背負う異端の設計。航空機としてはあり得ない『翼』の無い胴から、翼の代わりにフィンが伸びる。鋭く延びた機首先端から、細く長く後ろに延びた一本の鬣。
凡そ航空力学を無視した異常の機体。
光を喰らう『黒』と輝く『赤』とで全身を彩り、推力任せに空を行く様はまさしく“燃え盛る流星”であった。
その航空機が向かう先は決まっている。
チベット高原。何時も【メルカバー】と戦う時の戦場であるヒマラヤ山脈を越えた『中華戦線』最前線のインド側――ではなく、そこから更に『多神連合』の領域に踏み込んだ地域。
メシア教過激派も……【メルカバー】も、本気も本気と言う事であろう。
自分の思考に、無意識のうちに機体が軋みを上げながら震える。
武者震い……と、格好をつけれれば良かったのだろうが、戦闘を前にした冷徹な思考が“ただの怯懦”だと無慈悲に断定してしまう。
失笑。
口角をわざとらしく吊り上げるように、わざとらしく獰猛に機体を震わせる。
すでに行動を決めて実行しているところで、今更怯えてどうするのか。
――虚勢を張れ。傲慢に笑え。胸を張って天使を見下せ!
思考とは別のより深くにある感情を激励する自分の滑稽さに、またしても失笑する意識。
――そんな私自身すら置き去りに、赤く紅く赤く紅く。
輝ける機体は、世界に残光を燃やして空を行く。
目的地は、もうすぐそこだ。
荒涼たる高原の先に見える戦闘光を隠すように、燦燦と輝く集団がいる。
人型に白い翼の生えた肉塊。
“天使”。
数は万を軽く超えるだろうか。気配が飽和し数え切れない。それなのに今この瞬間もインド方面から向かってきた個体が次々と合流してきている。
その誰もが一様にトーガを纏い指を組み、集まると伴に大地の一点に向かい『讃美歌』を歌い上げていた。
――ただ
「呉管制室、こちら『9S』。メルカバー、確認。これより戦闘を開始する。」
管制室に常時送信している映像に一言告げて戦闘へと己を駆り立てる。
<<ポッド、
<<
<<そう急かすな。>>
オーバードーズですっかり元ネタの機械生命体じみた狂騒のポッドに胸が痛む。
無理をさせている。一番
感傷。或いは恥知らずな慈愛。
それを切り捨てられない己の弱さに唾棄しつつ、それを今一度自分の奥深くに押し込める。
天使に動き。
歌劇場の舞台でも囲むかの様に【メルカバー】を規則正しく囲んでいた天使たちが崩れ、こちらを迎え撃つ様に――或いはこちらを迎え入れる様に蠢く。
こちらに気が付かれた。
まあ予定通りである。派手に空を燃やし尽くしながら向かって隠れられるとは思っていない。
僅かな逡巡。
これからのほんの一押しで、もう誰かに破滅が齎される迄止まることが無くなる。
これでいいのか、これしかなかったのか。
グルグル駆け回る思考。
それは怯えで、それは恐れで、それは憂いで。
『――“滅び”がやって来たぞ、神の戦車よ。』
ああ、しかし。
それでも、私は自分の意志で“賽を投げる”。
『待っていました、人の子よ……?! ――そんな、なぜッ、貴方は、“人”の子のはずではっ…?!』
こちらを見上げ、認識し……一瞬理解が及ばす、理解してからの愕然とした表情。
膝を泥で汚した【メルカバー】が、私を見て狼狽する声が響く。
飛行形態から人型への回帰。
ロックされていた四肢を伸ばし、鷹揚に手を広げる。
鉤爪のような手指。手には武器を握っていない。
今までの設計思想からの脱却。換装による柔軟な万能性の排除。『個』としての完全性の追求。
――支配者の保持する暴力的な“走狗”。
『私に戸惑うか。
――今の私を、貴女はどう見る? 天使か? 悪魔か?』
『馬鹿な。ありえない、
何故、お前は成り代わった――』
メルカバーの狼狽した声に、私は予想外に納得する。
――そうか、今の私はそこまで“成り果てて”いるのか。
得心がいく本能。危機感を持つ理性。
この戦いが終わったらもう一度精密検査を受けようと思い、それが未来が続くことを前提している考えだと嗤う。
『――メタトロン!?!?』
『……この言葉を言うのも久しぶりだな。
“お前らはいつも私を誰かと勘違いするな。”
――しかし、そうか。はっ、ははは、やはり貴女でも今の私が完全に機体と同化しているとそう見えるのか、【メルカバー】。』
『“人”の子、なの、か? いやだが、その有様は……。』
『――精神汚染、肉体強化、人体改造に天使混入。
自分たちに都合のいい『メシア』を求め、人を弄り回す貴様らメシア教の技術ですよ。
それだけ周りに“肉入り”を侍らせているのです、よく見知っているでしょう?』
『そんな……――っぅ……ぁ……ッ…。』
パクパクと空気を求める様に喘ぎ、しかしメルカバーの声は出てこない。
そう言えば【メルカバー】がここまで惑い驚く姿は初めて見た気がする。
十を超え、二十を超えない程度の交流の
結局、私には『彼女が天使から外れている』のか『天使が彼女から外れているのか』が分からないまま、全てが終わってしまいそうだ。
――いや、全てを終わらせるのだ。
意識が切り替わる。
破滅へのチキンレース。もう、止まることは出来ないのだ。
“恐怖”に尻を叩かれ、やっと私は覚悟を決めた。
<<
『何を戸惑う。何を悼む。これがお前たちの為している業だ。
ただ
“声”を求め、“声”に縋り、“穢れ”を恐れ、“穢れ”を嫌い――そして“穢れ”そのものになった事を嘆くのか? 馬鹿馬鹿しい。』
ポッドの歓喜の破壊衝動。
その感情の激高に合わせて私も激情を駆り立て、機体が内からの輝きを増す。
<<
『私は言ったぞ――“滅び”がやって来た、と。
ミサイルコンテナの蓋が開き、熱核融合炉が獰猛に唸る。エンジン内部の重力場がまだかまだかと強まり、“
<<
『“計画”に
力を持ちすぎるものは、全てを壊す。お前もその一人だ。』
決別を告げる。
自分に何が存在するかを分かってしまったからこそ、偽りは正さなければならない。
<<
『今日で最後だ。改めて自己紹介といこうか。
藤原財閥 総帥。
魔術結社“ナインズ” 首領。
ガイア連合 呉支部支部長。
そして――』
どれもこれも『ただ平和な世界』さえあれば必要のなかった肩書。
自分の大切な物を『誰か』が守ってくれるなんて、他人を信じる強さが無かったことの結末。
無駄に人々を振り回した証。
その全てを、私は『大切な者』の為には投げ出してしまえるから――
<<
『――そして、“ただの大工”の義父、その魂の欠片を継いだ者。
藤原 朱莉だ。』
――だから、私が継いだのは『“ただの大工”の義父』の魂に過ぎない。
それは使徒ではない。
それは聖人ではない。
それは天使ではない。
それはただの父親で――“ただの父親”である事すら奪われた、貧弱な人間の魂の欠片だった。
『そんなはずは! 貴方のその気配は、その力は!!』
『間違えるなよ、【メルカバー】。この身に宿しているのは『ただ子供を心配した』父親だ。』
だから、間違いは正さなければならない。
私は断じて
彼女の感じた友情や親愛、それを知らずの内に利用した恥知らずを、彼女は許してはいけないのだから。
『さて、もう話は終わりで良いだろう?
“終焉”の時だ。
私が滅びるか、お前が滅びるか――』
『――二人一緒に死の快楽に沈むか、よのぉ。
フフ、フフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハ!!』
居ないはずの第三者の声に、思わず舌打ち。
哄笑が場を染め上げ、ぬたりっと大地の水溜りから“邪悪”な存在が這い出てきた。
『――【マザーハーロット】ッ!!』
『チッ……メシア教に占拠された地脈でなければ出てこれないと思っていたのだがな、売女。』
『フ、ハハハハハ!! これほど楽しげな宴に妾を呼ばんとは不敬よのぉ。』
まだ風水結界が残っていたはずの大地から怪異が吹き出す。
それは、物の怪の大軍だ。人型も獣も、全て等しく色香に狂い、暴力に酔っている。
その頂に座すのは“退廃の獣”。
闇に沈んだ世界に“妖しく輝く金杯”を掲げ、中身を浴びせ呑む。
『大人しく首を差し出すのであれば、後回しにしてあげましょう。』
『フフフ、逢瀬を邪魔されてむくれるか。初々しいの。
ホゥ、そうじゃの。今の貴様は女人か……。衣を剥いで悦楽に沈めるのも愉しいかのぉ?』
『“ケガレ”がッ。お前の言葉は耳が腐る!』
『安心せえ。そこな男児の目の前で乱れさせてやろう。』
『――っっっっっ!!』
急速に臨戦態勢に入る【メルカバー】達を他所に思考を回す。
――【マザーハーロット】の出現。これは思ったよりもメシア教の地脈汚染が早いという事か?
遠くに感じる多神連合の大悪魔の防衛線。雲霞の如く挑みかかる天使たちの血肉。
現在進行形で戦いにより流れる血が大地を汚し、地脈を“天界”に近づけているのだろう。
LとCの二柱の大悪魔を無視し、計測した情報からタイミングを再算出。
行動予定の修正とともに、こっそりオービットを大地に埋めて置く。
『“ケガレ”よ、滅びなさいっ!?!?』
『死の快楽を享受せよ、女よ!!』
ヒートアップした二柱が私そっちのけで戦闘を開始し、なし崩しに私を巻き込むにあたり傍観者でいられなくなる。
<<
ポッドの歓喜の声を上げミサイルを放ち、忽ち何百と滅ぼす。
それでも、二柱はこちらに注目しないでお互いにしか目に入っている様子が無い。
苦い笑み。
“最後”であるから気を張ってみたが、私の様な運命の脇役は
『神敵を滅ぼせぇ!!』
アンニュイな私に群がる“大天使”指揮下の天使。
蔑視と侮りの気配。
――呆れた。
エンジンに“火”を入れる。圧壊した空間がくべられた熱に燃え盛り、崩壊した熱量が推力となって機体を残影と為す。
光の軌跡。
そこに隠れて振るわれたレーザーブレードの光波に、千切れ飛んだ天使から香ばしくも悍ましい臭いが漂う。
<<――弱い。ポッド、雑魚の掃討は任せる。>>
<<了解:
ミサイルを雑魚の掃討に当て、私の意識は二柱に絞る。
【メルカバー】に【マザーハーロット】。
二柱は今迄からは信じられないほど強力な存在になっている。これまで手加減されていたと言われても信じられそうだ。
まあ、そんなことはない。
二柱ともに今まで以上に本霊との繋がりを強くし、MAGをかき集め燃費度外視に自身を強化しているだけだ。
『――シィィィィィィィッ!!』』
だから踏み込む。
排気が轟くよりもなお速い一歩。
横薙ぎの斬撃。
『甘いっ!』
『Gululalaaaaaiaiaiaaaa!!』
鍔迫り合いをしていた二柱を纏めて切り捨てるつもりで放ったが、反応が早い。回避を選んだメルカバーに対し、マザーハーロットは乗騎が迎撃を選択する。
七つある首の一つがこちらを向き、吠えたてたのだ。
空間を震わせる獣の咆哮。機体が纏う光輪が剥がれ落ち、装甲がビリビリと震える。
圧が強い。
破壊力がこれまで以上だ…!
『取り合えず削れていろ!!』
気にせず圧し潰すように加速。腕力と合わせ無理弾き飛ばしつつ、逆の腕からパルスキャノンをぶちかまし離脱。
『炎の剣よ!!』
側面から攻撃がこちらを向いていることを察知。車輪の照準から外れる様に、何時もの様に回避行動。剣が解き放たれる瞬間に合わせてクイックブーストを吹かそうとし――
<<―g―u―?―!――z_ハ_ッ__√ ̄ギッ ̄ ̄>>
――直撃。フラットアウト。視界が白濁の闇に落ちる。
平衡感覚も何もなくなった世界を霊感だけで強引に把握。失速と墜落から立て直し、強引にロールしつつ距離を取る。
悲鳴も出ない痛みを手繰り、被害確認。装甲、内部電装共に一部融解。防御マグネタイト欠損。
メインカメラ復旧。破損個所:再生中。
総じて行動に支障なし。
『出し惜しみなしか!』
言葉を漏らし、直観的に急降下――してから意識が自身の行動の意味を悟る。
機体の未来位置に迸る雷光。霊感の捕捉すら瞬く高速の攻撃。
――文字通りの“雷速”!
視認では遅い。しかし、霊感でも捉えきれない。魔界魔法の速度ではない。これは物理法則に支配された自然現象に近い。
雷速――光速の三分の一と迄はいかない。おそらく先駆放電の速度。
秒速幾らだったか――
<<回答:先駆放電は秒速200㎞以上。今回の攻撃は彼我の速度差からマッハ1000と推定する。>>
――ポッドの回答。不幸中の幸いか、稲妻に痺れて薬物の狂乱が落ち着いたらしい。
無造作にブレードを振り天使も悪魔も振り払い進路を確保しながら、メルカバーと直線を結ばない様に気を付け思考時間を確保。ついでに霊脈支配の邪魔すべく手当たり次第討ち滅ぼす。
<<こちらも速くなったつもりだが百倍以上の速度差か。回避も厳しいな。>>
<<疑問:敵攻撃弾着時の減衰率が低調。プライマルアーマーの機能が阻害されているものと思われる。>>
<<……いや、そうか。メルカバーめ、考えたな。プライマルアーマーによる減衰が効き辛い物理法則の色を強くしたか。>>
<<推論:その場合、攻撃速度の向上は副次的なものだと思われる。>>
ポッドの操るチェーンガンとミサイルに射撃を任せ、ブレード範囲に入ってきた敵だけを反射的に切り倒し時間を稼ぐ。
っ、
咄嗟に吹かした瞬間、精神を揺さぶる魅惑の波動が駆け抜けた。
<<マザーハーロットは兎も角、メルカバーは今日も同士討ちしないか。>>
<<報告:メルカバーがマザーハーロットに対し、雷霆攻撃不使用。先ほどの攻撃には使用には条件があると推定される。>>
<<観察と推察を進めろ。もう一度仕掛けてみる。>>
自身のコンディションを確認。
――機体の回復は終了、生体マグネタイトの生産は自分を弄っただけあって余裕がある。この調子なら何時もの程、時間制限を意識しなくて済む。私が
メルカバーを中心とした旋回から鋭角に曲がり直進へ。
視界の中の二柱は、何時になく滾っている。ビリビリと伝わってくる戦意。彼女たちも今日で“最後”だと覚悟を決めているのだろう。
『道を開けろっ!』
うじゃうじゃと数だけはいる肉藁を破断。飛んできている攻撃を無視して開いた道に突貫。
本来なら“あまりの速度のせいで圧縮された空気に機体が燃え尽きる”という物理法則を、逆に燃やし尽くして進む。
赤く、紅く。
赤熱する身体から零れ落ちた粒子が天使に触れ、その身を浄化に焦がす。
『“バビロンの杯”よ!』
『“チャリオット”!!』
『ええい、間が悪いかっ!』
近づいた途端の攻撃に悪態を思わず吐く。
プライマルアーマーの出力上昇。両手のレーザーブレードで切り拓くように受け流す。が、運動エネルギーの衝突に撥ね跳ぶように回転しながら落下。姿勢制御の必要が出るが
『お前も喰らっておけ!』
両腕からプラズマキャノンが放射される。
太い閃光に大気を焦がすイオン臭。チャリオットの加速が弾速に追いつかれ、着弾。爆発に消えるメルカバーだが、どうせ大したダメージはあるまい。
弾の行く末は横目で見つつ、今は上空から圧し掛かってくる獣の相手が先だ。
巨大な鉤爪を自身の回転を加速させるようにパリィ。逆腕での突きは王冠と角から発生した力場に止められた。蹴り上げとブースターの加速を使った逆上がり。下から上に体勢を変えてのマザーハーロット本体への攻撃が、獣の後ろ足で蹴られることで防がれる。
『妾に夢中かえ。愛い愛い、近う寄れ。』
『せめてその化粧臭さを無くしてから冗談は言え。』
急速後退。フライトユニットが火を噴き、残されたマザーハーロットに鞭のように鋭い音ともに雷霆が轟き落ちる。
『フフフ、ハハハハハハ! この程度で妾が傷つくとでも?』
しかし、マザーハーロットは無傷。マザーハーロットの耐性を【貫通】しきれなかったようだ。
『減らず口を。すぐに滅ぼして差し上げます。』
プラズマキャノンの爆発に消えたメルカバーの向かってくる姿に傷が見当たらない。
攻撃が効いていなかったのではなく、私がマザーハーロットにかかずらわっていた間に周りの天使が傷を癒しただけだが。
『二柱とも仲間がいて羨ましいものですね。』
嘆息。
下手にどちらかに時間を掛けると周りに癒されるのは何時もの事だが、今日ほどの戦場では周りが尽きる事が期待できない。回復しきれないダメージの蓄積をチマチマやっていかないといけないのは、いくら覚悟していても気が滅入る者だ。
私と【メルカバー】、ついでに【マザーハーロット】の最後の相対。
それは何とも締まりのない、惰性の様に代わり映えのしないものとして始まった。
――それはそう……長い長い、長い夜の明ける前の事であった。
終末……ではなく、それ以前の『中華大惨事クーデター』の開始です!
戦況としては 西:『中華戦線』
東:都市部での過激派VS穏健派(+個人と契約している多神とか仙人他色々)
になってます。
結末が分かってるのでバッサリ言っちゃいますが、一夜のうちにクーデター成功してそれ以後は敗残兵が『中華戦線』にどうにか逃げ込むとかになっていきます。
主人公は直接関わらないですが。
東は東で結界の一部が壊されて天使の無限沸きが開始して地獄ですが、西は西で世界中から集められた『人間の肉体に入った天使』やら『改造兵』やら『洗脳兵』やら『巨大MAGタンク』やらが十万単位で色々投入されていて地獄ですw
支配していない地脈上で戦うために肉入りが一杯投入されているので、戦場はとてもスプラッタなものとなっております。誰も彼も慣れ切っていそうですが。
メルカバーも当然『最終戦仕様』でインドの地脈を枯らす勢いでMAGを溜め込んでおります。
そのおかげでLVが上がっていますが……ここまでくるともう誤差程度?w
周りの御付きが讃美歌を歌っているのは空間を“天界”に近づけて『維持MAG』を減らす為です。
LVが高すぎて存在するだけでどんどんMAGを消費してしまうので、それを補うためのタンクとしての役割もあります。