【カオ転三次】DRUG FATE 作:石は転がる
説明回です。
今回の話に出てくる『封印』は基本的に『地上に同一の悪魔を出現させない封印』を指しています。
上級封印とか高位封印とか書いても良いのかもしれませんが、どうにも語呂が悪い感じがしたので『封印』で通しています。
激動の夜が明けた。
未だに中華の大地では騒乱による混乱が収まらず、急遽派遣された自衛官たちが現地の協力者たちの避難に手古摺っているらしいが、本当にごく一部の人間以外日本では関りの無い事である。
そのため、ここ山梨の地は何時もと変わらない朝を迎えていた。
「おはようございます、神主。」
「おはよー、⑨ニキ。」
そんな山梨の地に、私は自家用艦のマクロス・クォーターで押しかけていた。
すでに地表に顔を見せた太陽は朝の澄んだ空気を貫き、400mにもなる巨艦に陽光を浴びせかけている。陽の光の下ではっきりと見える艦には傷なども無く、つい数刻前まで万を軽く超える天使と激戦を繰り広げていたとは露とも感じさせない。
ただ、左舷艦首側に位置する空母、その甲板に無造作に転がる赤い機体だけが土埃と破損に塗れ、艦から浮いた存在として激戦の残り香を燻ぶらせていた。
悠然と空に浮かぶ艦は、山梨支部圏域ではなく支部南東に存在する自衛隊の演習場の上空に浮かんでいる。
流石に星霊神社に直接、或いは開発の進んだ第二支部に乗り付けてしまっては、いくら隠蔽術式をかけていても転生者たちに見つかって騒ぎになってしまいそうなので、今回は演習場の上空に無断で停泊させたのだ。自衛隊が昨夜からの騒動で演習など出来ないことを織り込んでの停泊地の選定であった。
「すいません、いきなり呼びつけてしまって。」
「いいよいいよ、なんか大変だったんだって?」
人気が無い草原の遥か上空を浮かぶ甲板の上。構造物も無く平らに広がる滑走路の唯一の不純物、燻ぶりの下から紅い光沢を見せる機体の横で、私と神主は対面していた。
朝の陽ざしに照らされている神主は、普段神社で見かけるラフな格好ではなかった。
何物にも染まらぬ清浄な白の狩衣は上質な絹独特の光沢に惑星や星々の紋様が光を纏って浮かび上がり、深くも艶やかな光沢を蓄えた立烏帽子。
手に持った乳白色の笏は今では見ない象牙の物だ。おそらく先祖代々の霊装なのだろうが、その色は経年劣化を感じさせない柔らかみを帯びた白色だ。
神職として完全武装の神主は、ぞっとするほどの霊威を放射している。
事前に通信を入れていろいろ言っておいたので準備していてくれたのだろう。焚き染められた香の薫りが風に乗って場に漂ってきていた。
対する私はアリサに押された車いすの上だ。
今の時期だと少しばかり気が早いTシャツにハーフパンツの装いは、本当なら肌を曝すはずの袖や丈の先には何も存在せず、在るべき場所に在るべき物が無いため酷く物悲しい姿となっている。
車いすには通常見受けられないスイッチやらレバーやらがあるが、これはラケルが嘗て使っていた物を借りてきたからだ。改造車いすを持ってきた意味は特にない。ただ単に、すぐに用意できたのがそれであっただけの事であった。
甲板上には神主と私、そして付き添いのアリサの三人だけで、他に人影は存在しない。
艦に乗っているのはすでに私と私の式神たちだけで、転生者たちは呉の港で一足先に降りて貰っているためだ。
援軍に来てくれた転生者たちからは自分達も山梨まで付き合おうかと提案されていたが、ちょっと遠慮してもらって先に打ち上げをしてもらっている。
打ち上げは徹夜のハイテンションで酷い事になっていると思うが、私が帰るまでには終わっているだろうか。下手に半ばに帰り着いてしまえば巻き込まれてしまいそうだ。
用事を済ませたら早く家で寝たいものだ――と思い、そう言えば神主はどうだろうかと疑問に思う。
伝え聞く激務を思えば、いつ寝ていつ起きているか予想もつかない。出会った頃の生活リズムであれば、朝の修練を終え朝食を取り終わった後だと思うのだが、なにせもう十年以上前の話だ。
それに加えまだ一日と経っていない中華での騒乱を思えば、神主も仮眠をとる暇も無く徹夜していても不思議ではない。
そんな事をつらつらと考えていると、目の前の神主が不思議そうに首をかしげている姿が。
――いけない、思考が飛んでいた。疲れが出ている。
本当は色々報告とか雑感とか話すつもりであったが、これは早々に用事を済ませて後日改めて報告した方がよさそうだ。
「早速なのですが、『これ』なんですけど、どうです?」
手足が無いので顎でしゃくってその存在を指す。
私たちの横に鎮座する紅い物体――ナインボール、その残骸を。
甲板上にワイヤーで固定されたそれは、出撃前の雄姿を感じさせない痛々しい姿でそこに鎮座している。
私と同じ達磨状にこそげた胴体からは、腕の代わりに二本の結晶柱が前へと伸びている。荒々しくも壮麗に、マグネタイト結晶が群生水晶の様に生えた腕の先には、まるで掲げる様にして透明な巨大な結晶洞がある。
光を透かし七色に輝き、輝きのままに結晶自体がその色に染まり七色に変わる生きた洞穴――そして、結晶柱に支えられる様に内部に揺蕩う
「『【メルカバー】の壺』、とでも仮称しましょうか。封印をした時に出来たものなんですが。」
そう。
それは、【メルカバー】を封印した時に出来た残置物。
栄光を湛えるように眩く金の光を返す、黄金の真球であった。
「んー、見事な封印だね。中身が全然見えないよ。これは封印術を指導した僕も鼻が高いかな? ――それで? 何を見て欲しいんだい?」
「“これ”、一体何なんでしょう? 想定ではこんな残留物が出来る予測が無かったので、ちょっと確証が持てなくて。」
一睡も取らずに巨艦でもって押し掛けた理由。
それはこの良く分からない物を神主に見て貰うためであった。
「あれ? ⑨ニキ、“見”たらわからない? ⑨ニキの“眼”なら良く分かると思うんだけど?」
「“眼”は封印のための繋ぎに融かしてしまいまして。一か月ぐらいは霊視関係は無理ですね。」
「それは、また……無茶したね。」
「他にも色々融かしちゃいましたけど『終末』の予定日までには、まあ、最低限戦闘能力は取り戻しますよ。ちょい臓器の復元や手足の再生は後回しになっちゃいますけどね。」
戦闘能力は取り戻すと言っているが【移動能力】の概念は欠けたままだと思うので、本当に戦闘になると式神にでもおんぶしてもらっての戦闘になると思うが。
「それに無茶と言えば、大破壊での神主の役割もだいぶ無茶ぶりだと思いますよ?」
「おっと、藪蛇だったかな。それで、“これ”が何か、だったね。」
「ええ、説明お願いします。」
うーん、と悩んだふりをして話を誤魔化す神主を見上げながら待つ。
「そうだね、分かり易く言えば“これ”は『影』かな。天界の【メルカバー】の本霊から、封印で繋がってる⑨ニキを通して地上に落ちた『影』。『影』だから“これ”を弄っても天界の本霊には何も影響を与えられないし……そもそもこれ、⑨ニキが好きに出したり消したりできるんじゃないかな?」
「ああ、やっぱりそんな感じのもですか。何となく繋がってるなーとは思っていたんですけど、自信が無くて。――それで、封印の方はどうです? これ見て判るか知りませんがちゃんと封印出来てます?」
「ただの『影』だからはっきり言えないけど、しっかり出来てると思うよ? この出来なら百年単位で大丈夫じゃないかな。」
「……ああ、それは良かった。」
ふっと肩に入っていた力が抜ける。
力が受けて初めて気が付く。案外緊張していたようだと。
まあ、それも仕方がない。
なにせ初めは封印なんてする予定では無かったのだ。
戦力が来た事と、その事により大規模破壊が出来なくなったので急遽検討だけしていたプランをやらざるを得ない状況に追い込まれたのであって、封印は机上の空論といってもいい案だった。
普通に考えれば、そもそも封印をすること事態が選択肢に上がらないのだ。
理由はいくつかある。
一つ、『封印の楔』をガイア連合でも用意できない。
【メルカバー】の正確なアナライズは出来なかったのだが、それでも相対した体感として大体のレベルなどは把握している。
その凡その推測で最低“レベル150以上”。おそらく最終決戦時のレベルはさらに上がって“160”はあったはずだ。*1
それだけ強大な存在を封じる事が出来る『楔』は、残念ながら
そのため、封印するとなると世界各地に赴いて古代からの“遺物”を探すか、はたまた適した才能を持った人間を人身御供にするか。そんな手段を考慮しなくてはいけなかった。
二つ、『封印地』の問題。
メルカバーと相対する場所であるが、そこは必ず『過激派の支配地』または『侵略先』であった。
メルカバーほどの大物となると、地脈を利用した封印を施さなければ早晩中から食い破られてしまうのだが、その封印地自体が過激派の手に落ちてしまえば外からの解錠をされてしまう。
そのため、封印したところで破られない事を祈るか、『時間稼ぎ』と割り切ってしまうしかなかった。
他にも実現不可能と思われる要素はいくらでもあり、考えれば考えるほど『封印』という手段は現地現実的ではないとの結果が出てきていた。
――だからこそ、そこに付け入る隙があるのではないか、と私は考え検証を進めていたのだ。
「いや、ほんと良く出来てると思うよ? ボクもぱっと見だと解放の糸口が見えないし。そうだな……よく見てみれば⑨ニキにラインが繋がってるからそこを踏み台に干渉すればどうにかなる……?
って、え、これ、下手に繋がってる⑨ニキが死んだりするとどうやって解除するんだ…えぇっと……んんん?」
「その時は封印されている本霊が中から破ってくる以外には無理なように組んだつもりです。勿論、簡単に破られないように中身の弱体化も組み込んでます。」
空想論でしかないが故に意表をつけるのではないか。
そう考えた私は幾つもの案を構築し、その反証を検証することによるプッシュアップを繰り返し――ふっと発想が浮かんできたのだ。
――これ、“本霊”を封じちゃったらいいんじゃないか? と。
と言うのも普通の封印は、封印によって『高位の分霊の情報をブロックリストに追加する』ことにより、地上への『“本霊”からのアクセスを禁止する』ような仕組みなのだ。
この場合、“本霊”自体は封じられていないので、魔界から分霊以外の手段を使って地上に干渉する事が出来る。日本の神々が“俺たち”を召喚出来たのが分かり易い例だろうか。
それに対し、私が今回したのは“地上に出ている本霊クラスの高位分霊”を触媒に、繋がりを逆流させて“本霊”に直接封印をかましたのだ。
これなら地上に封印の楔が残らないので天使たちに解錠される心配も無くなった。
無論、言葉ほど簡単な術ではない。
封印の為の道具には普通に封印するよりも概念的に強固であり、尚且つ相性の良い物が必要になってくる。
ただでさえ厳しい要件が、さらに厳しくなり、おおよそ人の手で作りだすことが不可能ではないかという難物。
――そこで私が目をつけたのがマザーハーロットであった。
天使と相反関係にある“ケガレ”の象徴たる存在。信徒たちの“苦しみ”を注がれた杯の中身。
その両方が大天使たる【メルカバー】を封じるに相応しい真鍮、或いは黄金であった。
これを戦場の現地調達出来るかは、それこそ“運”としか言いようがなかった。
まずマザーハーロットが戦場に来るかが相手任せで、しかも封印のその瞬間までに討伐されないかも運任せ。下手に自発的に動けばそこから看破される可能性があるので、普通に相手をする私の攻撃から生き残ってくれるかも流れに任せるしかない他力本願。
その全てを潜り抜けても、マザーハーロットから『金の杯』を奪い、『封印の“壺”』に加工する瞬間はどうしても全霊を集中させなければならない。加工のために幾らか私自身を構成する概念も混ぜ込んでいるので、この瞬間は本当に無防備なのだ。
その瞬間にメルカバーに攻撃されないかはそれこそ
しかも、『金の杯』自体も倒された悪魔の欠片でしかない“フォルマ”ではなく、同化を利用して魔界の“本霊”と繋がったまま【生きたマザーハーロットの杯】としての存在を保った状態で『封印の“壺”』に加工しなければいけないので、ぶっつけ本番でやって失敗する可能性は大いにあった。
そこまでやって出来るのは道具の準備だけ。
この後の封印では天界の“本霊”を
そのため、最善案に近い『封印案』は検討・検証だけにして、次善として『“本霊”にダメージを与えて少なくとも数年は地上に降りてこられない』事を本来は目標にしていた。
これなら【メルカバー】を“見”据えた状態で、遠隔地脈支配*2によって搔き集めたMAGを利用した
まあ、そんな感じで綱渡りだった封印は成されたのだが、ここで予想外が起きた。
――メルカバーが居たところに残された『金色の球体』だ。
本来の予想なら“本霊”が封印されたことにより、本霊と近似値を持った『地上のメルカバー』は存在出来なくなることによる消滅が起こるのが最も確率が高く、次にメルカバー以外の適当な『天使』へと変化するとか弱体化の末にスライム化する未来が考えられていた。
それが蓋を開けてみれば天界の“本霊”の状態を写し取ったモノが残されているのだ。大事を取って神主に見て貰いたくもなるのも分かるだろう。
「この封印、本当にどうやって解けばいいんだ…?
無理やり割ると中身がやばそうだし、かといってよく見てみれば⑨ニキとの繋がりは中身からのマグネタイト収奪だけのラインだし。封印には全く影響が出ない……?」
「正解です。私との繋がり自体見せ札ですね。一応、薄皮めくる様にちょっとずつ根気よく削るのが想定している正規の解錠手段です。私を足掛かりにハッキングを仕掛けれない事も無い、かも?」
「封印の修復速度を超えて、か。…………うん、やっぱり大丈夫だと思うよ。」
神主のお墨付きに肩の荷が下りる。現在の地球上で一番といっていい術者の保証だ。これほど安心できる保証はないし、彼でも見抜けない時はもう諦めるしかない。
「それは良かった良かった……それで、これ、どうしましょう? 使っちゃっても大丈夫ですか?」
「別に大丈夫だよ? これ、どう弄っても封印には影響でないし。あ、でも悪魔合体には使わないでね。【メルカバー】が地上に唯一現界できる道になってると思うから。」
「【メルカバー】を式神にしても大丈夫ですか?」
「ちゃんと縛るなら式神でもオッケーだよー。何か使い道でも思いついた?」
「せっかくなのでデコイにでもしようかと。発言内容を縛ればいい感じに敵対者が釣れそうなので。」
本当は神主に押し付けられたらいいのだが、一度封印解除してから再封印する負担を今の神主に負わせるのは酷すぎるだろう。それならこちらでどうにか利用方法を考えた方がまだ
「危険な事はほどほどにね?」
「心配はありがたいですが、神主こそ、危険な事は“ほどほど”で、ですよ。
――中華戦線の破綻で、神主の出番までもう時間が無いんですから。」
「はっはっは、そうだね。気を付けるよ。」
中華戦線が破られたことにより、終末に向けた動きは一気に加速する。
今から慌てて準備した
諸々を考えると終末は――
「九月、十月辺りがX-dayでしょうし、後任でも引継ぎでも何でも良いですけど、万が一の準備はしっかりとお願いします。」
「大丈夫大丈夫、復活準備してるし、万が一があってもちゃんと分身式神とかに後は任せてるから。
……しっかし、⑨ニキって他のみんなみたいに『子供作れー』とは言わないんだね?」
「――……私みたいに、道具にするつもりなら言いますけどね。神主はそういう扱い、無理でしょう?」
「…………まあね?」
詳しく聞いていないが、神主は『家族』について深い拘りというか執着というか。言葉にうまく出来ないが、とても重い感情を持っていると私は感づいていた。
面白いのは遠く離れてそれ程会ってもいない私が感づいていて、逆に近くで何時も接しているはずの人たちが気付いていない点である。口やかましく子供を作れと言ってくる周りは、神主が表向き辟易としているその奥に“怯え”があることが分かっていない様なのだ。
まあ、これが分かるのは『経験』或いは『視点』の違いかもしれない。
神主の周りにいる人間は『普通』の家族を持った人間ばかりだ。
勿論仲が良い悪いはあるだろうし、私みたいに親子関係が破綻している人間もいるだろうが、それでも『道具』又は『戦力』として“生”を望まれた子供を
この辺りの葛藤については、もしかしたら転生者がバカにする現地組織の霊能者の方が神主の力になれるかもしれない。そういう意味では『恐山の長老』はちょうど良いのかもしれない。個人の恋愛事なので余計な応援はしないが。
「さて。見てもらうものは見てもらいましたし、お暇するとしますか。」
まあ、そのあたりは個人個人の問題だ。外野がとやかくいう事ではないだろう。
なので、さっさと話を切り上げ、この対面自体を終わらせことにする。もう急を要する話はない事だし。
「あれ、もう終わりなの? 報告とかあると思って時間は取ってあるけど。」
「一次報告はもう送りましたし、正式な報告は後で送ります。思ったよりも疲れたんで一休みさせてもらってからになりますが。」
「了解~、お大事に。」
「それでは片付けてっと…。」
もう警戒の必要が無くなった“メルカバーの壺”を【ナインボール】ごと自身の霊格に戻せば、甲板の上はすっきりと綺麗になる。
思ったよりも残骸が風除けになっていたようだ。だんだんと気温の上がってきた初夏の陽気が、遮られる事なく吹きすさぶようになった風に気持ちよく拭い取られていく。
「あ、忘れるところだった。お土産の『ぷよまん』です。茶請けにどうぞ。」
「おお、これが……。ありがとうね。」
「適当に食べてください。それじゃ。」
「あいあい、それじゃーまったねぇ~。」
車いすの荷物置きに置かれた包装箱をアリサに渡してもらい受け取った神主は、ごく自然に甲板の縁まで歩いていき……甲板から手を振りながら落ちていく。
艦の特性上、キャットウォークも安全柵もないので、傍から見たら投身自殺を図ったように見えるだろうか。別に神主だから危険なんて無いと分かっている私でも、足を踏み外した瞬間はヒヤリとしたものが背筋に流れる光景。
――こんな行動を平然としているから、『頭オカシイ』扱いされるんだろうなぁ……。
たまに神主が「もっと大事にしてよ!」と、仕事に溺れながら言っているらしいが、こんなのを何時も見せられていたらそりゃ扱いがぞんざいになっていくよな、と納得してしまう。
「風が体に障ります。早く艦内に戻りましょう、朱莉。」
「そうですね。」
音も軋みも無く動く車いすをアリサに押され、誰も居なくなった滑走路からエレベーターで艦内に降りていくと、それを艦橋で確認した武蔵が艦を呉支部へと発進させる。
音も無くゆったりと動き出した艦は、急ぎもせずにのんびりと帰路についていく。
どうせ帰ったら検査に原状回復処置にと病院で小夜子が手ぐすねを引いて待っている。艦内で仮眠をとって病院に押し込まれて、退院してから報告書となると時間がかかるだろうが緊急性のある情報はないし、まあ許してもらおう。
水無月の空は、その名を表すように六月にしては雲一つない空模様で、水面の様に青い碧い色を広く広く遥か彼方まで染め上げている。
そんな空を悠々と進む艦の上で、私は一つの区切りがついたとそっと荷を下ろしたのであった――。
主人公、普通にショタオジが死ぬことも想定しています。
別にショタオジを信じていないからとかではなく、ショタオジの行動を見て自分の行動との共通点を見出していることや、そろそろ主人公も【ショタオジの強さ】を正確に計れてきているからこそ、だったりします。
つまり、今までどんだけ強いのかもよく分かっていなかった、という事なのですがw
【メルカバー】の封印について、ショタオジがノータッチなのはわざとです。
と言うのも、作者の所感ですが、ショタオジの過保護って“ある程度以上の強さに達した”or“しっかりしている”転生者には適用されていない気がしています。
例えば『カオルニキ』なんかはソロでニャルの野望に立ち向かってますし、『ハム子ネキ』もソロが危険だからって攻略を止められていません。(もしかしたら頼られなかったので放任しているだけかもしれませんがw)
『狩人ニキ』は割とハラハラ見守られてそうですが、『エネルニキ』なんかは普通に海外で魔人(劣化分霊)討伐とかもしています。
そんな風に作者は思っているので、この作品では【メルカバー】の封印関係をショタオジは自分で統括せず主人公に一任してます。
――つまり、一任される程度には色々な意味で『強い』、という事になっています。
【メルカバー】の封印については、転生者にあまあまなショタオジは『出来るって分かってたよ!』って後方師匠面してるか、脳が焼かれるかしているかも……。
【小ネタ あまあま神主分身の試練】読み直して思いましたが、本霊クラスの侵攻に一人の犠牲を出すことも無く封印し返すのってショタオジにとっては最高の結末なんですよね。【ルシファー】の時は自分たちのホームなのに神主一族が人柱になりましたし。
終末後の山梨で『脳を焼かれたショタオジによる転生者たちへの無茶ぶり』小ネタとか面白いかもなぁw
あと、作中では確認できないので話題に上っていませんが、実は【メルカバー】、本霊が封印されてしまっているせいで『並行世界』とかへの降臨も出来なくなっている可能性があります。
もし近似値の世界に4とか4F的な世界があったら、急に主人公の前からメルカバーが消えてしまったりしているかもしれませんw
ついでに【マザーハーロット】も一部分捕って封印に使っているので弱体化しています。
補足:【メルカバー】の封印計画試案
*プランA。
これはそれまでの襲撃と同じ『メルカバーを消耗させる』事を目的とした消極案。
何をやるかって言うとこれまでの『襲撃』とやる事に変わりが無かったりする。
基本的に正式採用したプランBの失敗時にリカバリーする為の案として計画されている。
東京での作戦まで時間を稼ぐことだけを考えると、別にこの案でも何も問題が無かった。
*プランB。 〔主人公が実施予定だった計画〕
『メルカバーに損害を与える』事を目的とした積極案。
単純に厳戒しているメルカバーにダメージを与えて回復に手間取らせるだけの及び腰の物から、メルカバーが“本霊”との繋がりを強くすることを踏まえて『本霊』にまでダメージを与える果敢な案までを含む。
戦況の流れによってどこまで効果的に出来るかが変わるため、必要になる戦果の程度ぐらいしか決めていない。
この案では“本霊”にどれだけダメージ与えたかで稼げる時間が決まる。
一応、呉支部ロボ研の乱入が無かったら順当にメルカバーの本霊を“観測”しながら倒して『数百年間』程度の時間が稼げるはずだった。
実際何をしようとしていたのかというと、戦闘の最後に『シェリルネキの歌を利用した地脈支配』で戦場の地脈から供給を受け、地脈の出力で
【本作65話】でちょろっと出てきただけの攻撃方法ですが、実際にぶっ放したら鏡みたいに綺麗な水面の写真で有名なウユニ塩湖ぐらいの広さのカルデラ湖が出来ちゃう予定でした。
へへへ、こいつと比べたら過激派の核なんて線香花火程度なのさ……w
*プランC。
『メルカバーの“本霊”を封印する』ことを目的とした最善案。
封印といっても今出現しているメルカバーをただ封じるのではなく、メルカバーの現界すら阻止する強固な封印を為すのがこの案の目的。
とは言っても、この案は検討段階で机上の空論だと思われていた。
詳しくは今回の幕間を参照してくださいw
本編ではあっさり封印してましたけど、これ、割と無茶苦茶な方法で封印してます。
まず、【マザーハーロット】と自分からシンクロして『杯』を確保しに行ってますが、これ自体主人公は剥き出しの魂を直接汚染されながらやっています。
『杯』から『封印の壺』に加工するのも自分の魂と繋げたまま一部を混ぜ合わせて加工してますし、【メルカバー】の封印となるとそれまでの負荷に加えて【メルカバー】からの汚染まで増えます。
『封印』自体もシンクロして同化状態であるのを利用して、【マザーハーロットである自分】で【メルカバーである自分】を封印するという『自己封印』に近い形でやった上で、その二つと混じった魂をパージしてちゃっかり自分だけが退避している様な形式です。
失敗したら一緒に主人公も封印されていたでしょう……。
こんな危険な案が最善案なのは『終末後にメルカバーを考慮しなくてよくなる』事。
どくいも様の原作をお読みの皆さまは何がメリットか疑問に思うかもしれませんが、この時間軸だと
一応ショタオジなんかがその事を『推測』しているとは思うのですが、その退去に『大天使』が含まれるって自信を持って断言できる人間が居ないのです。
なので、終末直後に大陸からレベル100越えの大天使が『やっほぉ~^^』って感じで来るのを確実に防げるこの案が最善案になります。(普通に倒すだけだと再召喚の間隔が予想できない)