【カオ転三次】DRUG FATE 作:石は転がる
オリジナルを書こうとしていたら、何でかこちらが書けてしまったので投稿します。
おかしいな、作者は新作書くつもりだったのに……。
頭が、頭がカオテンに侵されきってる…ッ!
それと、今年中にこれ以上の投稿は難しいかもしれません。
なので……一足先にメリークリスマス!(ぉぃ
1.誰も知らない『お願い』
燦燦と陽が照った昼下がり。
政府機関設立に絶賛修羅場中のガイア連合員・ナインズらを尻目に、指示だけ出してとんずらこいた私は自宅の庭園の芝生の上で昼寝を愉しんでいた。
傍にいるのは2B一人。
他の皆(式神)はそれぞれ仕事に出している中、彼女だけが私の護衛として傍にいる。
青々と茂り始めたばかりの柔らかい芝生の上。片手を庇に、もう片手でそっと私の頭を撫でる2Bの膝枕。
もう、こんな穏やかな時間を過ごしたのは何時ぶりだろうか……そう思い、思い出せたのが前世の記憶だったのは我ながら呆れるというか救いようがないというか。
今生で出会い、魅かれ、愛し愛され。そうした中でもずっと怯え続け、素直に安らぎを甘受出来ていなかった私の肝の小ささには我が事ながら辟易する。
よくもまあ、こんな私を愛してくれた人がいたものだ。それも複数。
つらつらと、どうでも良い事が頭に浮かび、しかしそれも日差しの中に熔けていく。
うつらうつらと、思考が散漫になり、ひと眠りするか……と思った時。
「――そう言えば、」
ふと、2Bが声を発した。
柔らかい声。こちらを気遣う優しい声。
それに、ふわふわとした思考のまま意識が定まらず、しかして私は応えを発す。
「……ぅん~?」
落ち行く意識の縁に手を掛け出した声は、情けないぐらいに甘えた声で。
しかし私本人だけは、それに気が付かない。
「ごめん、大したことじゃない。
ただ……『初めてのお願い』は、もういいのかなって。」
『初めてのお願い』。
……ああ、それは大事なお願いだ。
思い出す。
まだ私と一緒にいる式神が、2BとA2の二人だけだった頃。
人っ子一人いなくなった集落。倒壊しかけた家屋。こびり付いて落ちない血の匂い。
噎せ返るほどの生臭さに包まれ、巣穴に籠る小動物の様に縮こまって震えた月も隠れた闇の中。
A2を警戒に出した一時に、そっと2Bだけに吐き出した『お願い』。
「……もう、いらないですかね…?」
「それを決めるのは、
主人への呼びかけの“朱莉”ではなく、戦闘者としての呼称である“9S”呼びしてくる2Bの厳しさに、微睡んだまま苦笑する。
いや、もしかして、これは当て擦りかもしれない。
大事なことを、全部全部独りで決めてしまう私への。
「ふふふ、それじゃ…………」
ふわふわと、態と微睡んだ思考のまま、理性ではなく衝動で自分の本心を探す。
『お願い』は“あってはならない感情”を抱く
長らく理由も分からず抱いてきた感情であったが、霊格が上がり
そう。
「――2B、今までありがとう。もう、あの『お願い』は必要ないかな。」
言葉を出した瞬間、ふっと枕にしていた2Bの太ももから強張りが抜けたのに気が付いた。
――あぁ、本当に、私と言う人間はダメな奴だ。
自己嫌悪。
こうして私自身を思うのは、何度目になるかも分かったものではない。
「……そうか。」
そんな私に気が付いているのかいないのか。柔らかく髪を梳く2Bの動きに変化はない。
ただただ、素っ気なく呟かれた返事だけが、私に2Bが意図して吐き出した内心を教えてくれる。
……どちらでもよかったのだと。
その心遣いに、私は自己嫌悪を捨てて素直に甘える。
無限にすら思える許容。それによる抱擁。それが、とっても温かい。
「結局、私を殺しはしてくれませんでしたね?」
「必要なかったから。」
「それは良かった……でいいのか?」
意識して軽い感じに言った言葉になんでもない様に返された返答。
それの返事に困る。
どうなのだろうか。
必要も無いのに覚悟させたことを謝るべきなのだろうか。それとも、『お願い』が果たされる時が来なかった事を誇るべきなのだろうか。
終末に怯え、悪魔に怯え。
そして、何時かガイア連合を裏切るのではないかと
抱えた怯えを隠し、言い訳ばかり繕って山梨の地に長く留まる事を無くし、絶えず各地を放浪するのに付き合わせたのは“式神”の感性でも疲弊を感じさせたと思う。
あの頃の私は彼女たちを戦力としては必要としていながらも、同時に“神主の紐が付いているのではないか”と怯えてもいた*1。
矛盾。
何もかもに怖がっていたが故に、一貫した行動をとりながらも内心は支離滅裂になっていた。
――或いは、それこそが私と言う人間らしさなのか。
「『良かった』で良いと思う。――四文字なんかに誑かされた朱莉を、私も見たくは無かったから。」
「……そうですか。」
こそばゆい頭皮の刺激。穏やかに撫ぜる指の感触。
そして、温かい沈黙。
絶えた言葉の代わりに絶えない愛撫が頭を擽り、起き出していた意識が再び眠りに落ちていく。
「そう。良かったんだ。
メシア教に奔る朱莉も、それを止めるために殺す私も、そんな事は起こらなかったのだから。『お願い』は『お願い』のまま、意味も無く朽ちていくのが一番だ。
……でも、二人だけの『秘密のお願い』は惜しいかな。」
暖かな日差し。爽やかな風の肌触り。
――そして、そっと唇に触れた柔らかな感触。
長閑な一日に相応しい、何もない平安とした時間。
それは破られる事なく、日が傾くまで二人の間を流れ続けるのであった。
Topic
主人公は何もかもに怯えていたが、その中でも大きな割合を占めるモノが三つあった。
一つは終末。いつか
一つは悪魔。より直近の脅威。
そして、最後の一つ。
『何故か感じる四文字の教えへの共感』である。
これは、主人公にとっては酷く恐ろしいものであった。
何せ主人公は最初期組。その頃の星霊神社には『拷問を受け、恩讐に燃える霊視ニキ』が存在し、彼から直接メシア教の脅威と暴虐を聴ける立場であった。
主人公は霊視ニキのその身体に残った凄惨な傷跡を見、霊視ニキから直接その悍ましい行いを聴き――それなのに
異常だ。
異常である。
主人公は前世からの感覚で、テロを行ったり行うような組織を作り出した教えには何処か偏見を持ってしまう自分を自覚していた。
それはある意味当たり前の感覚だ。ある宗教の者が宗教を掲げて非道な事件を起こした時、其の宗教全体が悪い物だと思ってしまうのは。現実でも性的虐待が蔓延してるのに隠蔽してたとかの疑いがあるし。
――なのに『今生の自分』は四文字の宗教にだけはそれが発揮されていないのだ。
主人公は恐怖した。
自分が『前世』から著しく変質してしまっていることを自覚できてしまったから。
今の自分はまだメシア教の行いに義憤を覚えられる。
しかし……何時までそう思えるのかが分からなかった。分からなかったのだ。
――故に、主人公は己の式神に一つの『お願い』をした。
もしも、己がメシア教に殉ずるような事があれば。
・・・
・・
・
尚、この『教えへの共感』は主人公が感じていたものではない。
主人公に混ざっていた『どこぞの養父』が持っていた信心が表に出ていただけである。
主人公は『天使人間化』を『前前世の養父』によって人間に繋ぎ止められていたようなものなのだが、そのせいで『養父』の影響を強く受ける事になっていた。『教えへの共感』もそれによって引き起こされていたものである。
なので、前前世を魂からさっぱり消した終末後には完全に解決済みの話である。
又、この事が理由で主人公は魂の変質による思考の変化への嫌悪感が人一倍強い。
転生者が行う安易な『現地民への式神パーツ手術』などは反対の立場であり、式神パーツの齎す魂への影響を直接視認できるようになってから*2は猶更その嫌悪感が強くなっている。
なので、『王国』では修行による覚醒が主流だし、医療は科学的な再生医療を促進している。
2.式神たちの共通点
ある日の事。
たまたま休みの重なった私とオタ社長は、なんとなく二人揃って終末前に集め積んでいたプラモデルを崩す作業を一緒にしてた。
私が念動や魔法を駆使して同時並行で組み立てから塗装までを一貫して行い、出来上がった品をオタ社長が一つずつ手直しして完成品にしていく。換気してもシンナーや接着剤の臭いが籠る室内の光景は、傍から見れば何処かの工場のような有様であった。
せっかくのプラモデルをこんな風に組み立てて楽しいのかと疑問に思われるかもしれない。
……実際、完全に作業になっていて全然楽しくない(ぉぃ
では、なんでこんな風情の無い組み立てをしているのかと言うと――
「ノリって怖いですねぇ……。」
――若気の至りである。
半終末時。
支部長として海外にえっさほっさと支援物資を送ったり、一ガイア連合員として『メルカバー』とちゃんばらしたりしていたが、別にそんな真面目な仕事だけをしてたわけではない。
むしろ、もっとふざけたような仕事の方が関わっていた時間的には多いかもしれない。
そんな仕事の一つに『映画の収録』があった。
そう、なんやかんやで主演を務めていた作品のアニメ映画である。
まあ、それ自体は特に問題があった訳ではない。
適当に空いた時間に山梨に行ってはプロの方々の邪魔にならない様にうろちょろしていただけだ。ガイアグループからの供給以外が途絶えたせいでやや突貫の仕事にはなったが、無事クランクアップして既に劇場で上映し終わっている。
私も療養で暇していた時に上映会出席し初めて通してみたが、自分が参加した作品とは思えないぐらい良く出来ていた。
上映会に呼んでいたメイド研の皆とした、上映後の二次会(?)では大層盛り上がったものだ。
でだ。
そんな二次会で誰かが言ったのだ。「今回の最終決戦の艦隊戦も忠実なジオラマ作りたいなぁ」って。
実は、アニメ放送当時も毎週アニメを見ながら気に入った戦闘シーンを皆でジオラマにして遊んでいた。それはちょっとした戦場のワンカットから全体を映した艦隊戦のシーンまで色々とだ。
なので気分良く興奮していた私もその提案に了承し――
なにせアニメと映画では掛かってる労力が違う。
アニメ当時は時間の問題で出来なかった作り込みがこれでもかと言うほどに詰め込まれていた映画では、何気なく流し見していたシーンでも登場している機体の数の桁が違う。
忘れた頃に発売された映像ディスクで艦隊の隻数と機体数を数えたメイド研からの報告に、ジオラマ製作委員会(有志)の議論は紛糾し――
――まあ、どうせ終末越えたら暇になるんでやろうって、私が言っちゃったんだよなぁ……。
短慮であった。
いや、言い訳をするなら、どうせ終末後は地獄のような有様で、そんな事を考えている余裕も無いと思っていた。それならば、せめて最後の平穏な一時ぐらいは楽しい思い出としたかったのだ。
……それが、この地獄の様な積みプラの山の原因なのだがなっ!
部屋にはプラモデルの箱が山と積まれ、作り終わった箱は片づけているのにまだ部屋の半分ぐらい占めている。反対側には戸棚が並び、オタ社長の検品待ちのプラモが一つ二つではなく何十という単位で並んでいる。
完成品は他の部屋に運ばれているので、全部合わせたら一体どれぐらいの数があるのか。
……あえて数は忘却したので思い出したくも無いが。
これでもまだましな方かもしれない。
何せ、メイド研では市販されていない1/72の各種艦艇を自作ガレキから作っているのだ。
無駄に発揮されたメイド研の技術力により忠実に再現された艦艇は、市販プラモとは比べ物にならないほどに複雑怪奇なものである。たった一つ作るだけでもどれほどの苦労があるか考えたくもない。
無駄に思考を廻しながらも、作業の手は止まらない。
殆ど独立思考と言ってもいい数十の思考が絶えず働き、プラモデルを組んで行く。
もしも各思考毎の表情を見る事が出来たら、何十もの私が死んだ目をしてプラモを組んでいた事だろう。この辺り、神主の分身よりも目に優しい光景かもしれない。
「――あっ、塗料が切れた。」
そんな事を考えていると、分割していた作業の一か所で不都合発生。買いだめしていた塗料が切れたのだ。
「なんだとっ! よっしっっっ!! 今日の作業は終了だ!!!」
無駄にイケメンな叫びが上が部屋の中で上がった。
オタ社長だ。
――……未だに慣れないんだよなぁ……。
気配だとわっほーいとでも言いだしそうな雰囲気なのに、目で見てみればきりっと鋭い眼差しで丁寧にプラモを戻す姿に未だに違和感が酷い。
今のオタ社長はメルカバーとの決戦時の姿のままの美男子だ。
成人男性の平均を大きく超えた背丈に日本人離れした長い脚。見慣れた脂肪に包まれた体躯は、細くて強固な鋼のような肉体に変じている。
顔は顔で分厚い脂と丸い伊達メガネに隠されていた瞳が鋭く光り、やや鉤鼻ながらもそれが精悍さを与えていた。
「どうした、友よ。」
「いえ、どうもその姿に慣れないな、と思いまして。」
ガイアショッピングを使えば塗料ぐらい、下手をしたらターミナルで瞬間的に送り届けられるよな、とか思ったのを誤魔化して違う話題を選ぶ*3。
結構長い事作業をしていた。そろそろ今日は切り上げるのも悪くは無いからだ。
「と言いますか、すぐに前の姿に戻るつもりだと思ていましたけど止めました?」
「ここでは食糧危機は無いが他所では生活が苦しいと聞く今の情勢で流石に一日一万キロカロリー生活は、な。」
「別に気にすることは無いと思うんですが、まあ、気になるなら仕方が無いですか。『霊薬』関係で肥満異常になるのがあったと思いますが、ああいったのは使わないので?」
「私もそれは考えたのだがな……。普通に手に入る『肥満』概念系では私自身が強すぎて効果がない。ならば、と強力なものではどうかと尋ねてみたが、体を壊すからと止められてしまったよ。
だから、しばらくは“ソルダートJ”のままだな。」
「なるほど、了解です。」
そんな話をしながら部屋を出て一緒に手を洗ってからプライベートな方の遊戯室へ向かう。
ふかふかの絨毯やクッションが敷かれ、五十インチを超える大画面テレビにパーティーゲームが完備されたそこは家族や仲間内で遊ぶときに使う一室だ。
室内に置かれたローテーブルには既にお茶菓子が並んでいる。お茶は今、用意中だろう。
そんな事を考えながら適当にゲームを引っ張り出してきて二人でプレイをする。
取り合えず定番、という事でレースゲームをしながら適当に雑談だ。
「終末過ぎても式神パーツの注文が途切れないでしんどい」だとか「今年のアニメは期待できそうに無いな……」だとか。私は主に聞き役に回っていたのだが、そのうち「そもそもメイドロボって一体…」なんて哲学的?な話を興じ始めた頃。
「そう言えば、私の式神って割と作為的に選んでましたよね?」
前々から思っていたことを直接聞いてみる事にした。
実は私の連れているガイア連合製の式神のキャラクターの選出は全てオタ社長に任せていたりする。
2B、A2、武蔵にアリサ。その全員だ。*4
一応、最初の式神だけは『私と同じ銀髪』で『保護者が出来る年上』とは指定したか。その指定も最初の一体だけで、後はオタ社長が選んできたキャラを承認しただけだったりするのだ。
「今更か。……そうだな。思惑はあった。
――軽蔑するか?」
「別に。
外面にはあんまり興味が無かったので。あの頃だと内面のキャラクター設定までは出来ませんでしたので、私を誘導する事なども不可能でしたし。」
最初期型の欠点として上げられる点である。
最初期の式神は、最初に『台詞』などを入力されていたが、その内面・性格はどいつもこいつも学習によって形成している。そのため、望んでいた性格を獲得できないといった問題が、数は少ないながらも起きていたのだ*5。
そんな仕様であったので、どんなキャラクターを選んだとしても『そのキャラクターらしさ』を使った誘導は行う事が出来ない。なので、どのような思惑があろうと、私は気にしていなかったのだ。
「ただ、どういうつもりで選んだのかな、とは気になってました。……友達の、気遣いでしたし。」
「ハハハ。小賢しく選んだ私を、それでも尚“友”と呼んでくれるか!
……そうだな、大したことではない。“
「それだと、最初に選んだキャラクターが『2B』だったのは? 元ネタだとアンドロイドですけど。」
「忘れたか、友よ。私は『アンドロイドだろうと生きている』と人生を賭けて叫ぶロマンチストだぞ?
それに、あの頃の友には2Bこそがよかった。彼らの物語を知っている友は、
息が詰る。
話しながらもずっとしていた操作を誤り、目の前のテレビでコントロールをミスった愛車が思いっきりクラッシュした。
「……誰にも漏らしたことの無い『お願い』だったんですけどね。どうして気が付きました?」
「
はぁーーーっと、深く深く息を吐く。
本当に。
そう、本当に。本当に、私には勿体無いぐらいの“友”だ、彼は。
秘密にしているつもりで、だが最初からずっとバレていたのだ。
私の恐怖――悍ましいまでの自己保身――は。
それなのにその事実を私に気取らせず、彼はずっとずっと私を見守っていてくれていた。身近な誰かを失えばそれだけで自分の世界が侵されたと痛みに叫ぶ、ただ自分が傷つきたくないだけの自己愛の化け物を。
――そんな私を“友”と呼び、そんな私が彼を“友”と呼ぶことを誇るのか。
複雑な心境のまま画面に顔を向けていると、テレビの中では私の愛車がコースに戻り、しかして彼の操作する車が一位でゴールを切る。
――……勝ち逃げされた、か。
ふっと、なんでか全然関係ないゲームの結末に心が軽くなる。
今の私の表情は、歪に歪んでいた口元から力が抜け、きっと自然な苦笑になっているだろう。
ああ、本当に参る。
“友”よ。私の数少ない“友”よ。
私は、お前に相応しい“友”で在れているだろうか。
“友”よ。私には過ぎた“友”よ。
どうか、私の事を誇ってくれ。私は“友”がそう在れる様に努力しよう。
――これは、私が“友”と友情を確かめた、なんてことの無い休日のお話。
Topic
彼の前世は何処にでもいる只のオタクであった。
人よりもちょっと太り、人よりもちょっと小柄で、人よりもちょっとだらしなく――そして、人よりもちょっと“テンプレートなオタクの姿”に似ていた。
そんな、何処にでもいるオタクであった。
今生の彼は全く違った。
何もせずとも体は引き締まり、成長と共に背はグングンと伸び、二度目の人生なので人よりも要領がよく――だから、前世の彼とは比べ物にならないほど学友からの信望を集めた。
そんな、転生物にありがちの『成功した転生者』になったのだ。
――そして、それが彼の心を傷付けた。
彼は、前世を悔いてはいない。
彼は、前世を嫌ってはいない。
彼は、どこまでも前世の自分を気に入っていた。
――なのに、今生の
だから、彼は太る事にした。
無理に無理して一日に何食も食べ、可能な限り体を動かさず、止めようとする周りを振り切って。
脂にテカリニキビの目立つ顔。ブクブクと弛んだ腹。特徴的で人に嫌悪される口調。
全ては周りの人間に見捨てられ、しかし彼にとっては待ち望んだ『ぬるま湯の平穏』を得るために。
――そうして彼は『オタ社長』となったのだ。
それからの『オタ社長』の人生は順風満帆だった。
自分のペースで遊び学び、同じ趣味を持つ同士に恵まれ、無理なくいけた日本一の大学を卒業し。
――なにより、同じ境遇の同胞たちと巡り合ったのだから。
それは覚醒者となった後でも変わらない。
ちょっと食べる量を増やさなくてはいけなくなったのは辛いが、それ以上の価値が
――なにより、彼に友達が出来た……いや、違う、正しくない。
そう、正しく言うならば……
『他の誰よりも“友”で在りたいと望む相手と、彼は出会えた』そう言うべきだ。
彼だけは知っていた。
“友”は己と同じで、“今生の自分”を
“友”は己と同じで、心に傷を負っている事を。
“友”は己と同じで、ただ『ぬるま湯の平穏』が欲しいだけな事を。
そう、彼だけは知っていたのだ。
“友”は己とは違い、“誰か”の幸福を、心の底から願える事を。
“友”は己とは違い、世界から“誰か”が居なくなる事を、嘆き悲しむ事が出来る事を。
“友”は己とは違い、己自身だけが傷つく事ならば、歯を食いしばって受け入れられる事を。
“友”は己とは違い、己の内の恐怖とずっと向き合っている事を。
“友”は己とは違い、その内でどれだけ恐怖に泣こうとも、決してその歩みを止めない事を。
――だから、彼も“友”と朋にあるために、せめて恐怖と向き合い歩む事ぐらいはしよう。
そう彼は決めたのだ。
そんな、何処にでもいたオタクが、彼であった。
現在は学習&解析済み。なので、主人公の式神は神主からの干渉を受けないように地脈との接続を断っている。
……主人公的には態々『プラモデル専用』塗料なんて物の生産を維持するぐらいな労力他に回せよ、とかちょっと思っちゃってたりする。プラスチック用の塗料は他にも色々あるので。
主人公が作成しているメイド式神については主人公が決めたと言えるのだが、元々武蔵の部下とするつもりでいたので同作品から選出した。なので実質的にはオタ社長が決めたともいえる。
問題が起きていたのは『深層心理的にはその性格を望んでいなかった』と言う場合。
今回はちょっと本編に織り込めなかったネタになります。
『7話』で主人公が『自分が9S名乗るのは皮肉だよな』みたいなこと言ってますが、その理由が今回の1.になります。自分から殺してってお願いしているの、原作からすると二重の意味で酷い話ですから。
7話前後でこのネタは入れようとは思ったんですけど、まだまだ話が始まったばかりで読者の皆様も『主人公への愛着・理解』が無く、入れても『主人公かっけー』と作者が思ってるだけになりそうなのでスッパリ切っちゃった設定になりますw
オタ社長の自分嫌いも初期からの設定。
なにせ『主人公の“友”』ですから、オタ社長も内面は相当葛藤しながら人生を謳歌してたりします。
えっ、謳歌しているじゃんって? 当然です! だってオタ社長ですから!!!
オタ社長、主人公よりもカッコいい大人だと作者は勝手に思っています(設定ではない)。
後、2.の話に式神が出てこないのは仕様。
『自宅』&『会う相手がオタ社長』ってことで主人公にはとても珍しい護衛が付かない状態での懇談となっております。
……普段から四六時中護衛付きの生活をしている三次創作主人公って、うちの主人公ぐらいしかいないっぽいのが作者には不思議です!
他の三次創作主人公って、豪胆過ぎじゃないですか???
ちなみに、主人公が“友”と想っている人間は『オタ社長』と『シェリルネキ』だけですが、この三人はメタ的には共通点があったりします。
それは容姿が『元ネタで裏切り者』な事。
主人公の『9S』は組織に不都合な物を好奇心で暴いて粛清されますし、『メリュジーヌ』も主君を裏切ります。
(一番最初の『チルノ』はあくまでも他者から与えられた衣服がそれだっただけなので例外になります。自分から着た事は無いです)
オタ社長の『ソルダートJ』もゾンダーメタルのせいとは言え一度裏切り、その後表返るキャラです。
シェリルネキの『シェリル・ノーム』の場合は本当にスパイなのは劇場版だけですけどね。
この選出、この作品が完結前にプロット組んでいたことに由来していまして、『場合によっては主人公はガイア連合を裏切るルートの可能性があった』ためです。
いや、結末が分からなかったから保険で組んでいただけのルートで実際にお目にかかる事は無いとは思っていたんですけどね。
なので、こうして舞台裏でネタバラシさせていただきます。
………終末後、裏切らないとは誰も言っていませんが(ボソッ