【カオ転三次】DRUG FATE   作:石は転がる

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幕間12

 普段は人気の多い藤原邸も、主人が居なくなると供を伴うためその住人はごっそりと減る。

 それだけ彼の式神が多いという事であるが、逆を言うと珍しく居るのが人間ばかりになったともいえる状況だ。

 

 仮住まいにしていた別荘の影響を受け、夜景を望むように設置されているバーカウンター。

 そこにこの家に残ったの住人が顔を突き合わせていた。

 

「第一回藤原家女子会の開催だ! かんぱーい!」

 

「わ~い、ぱふぱふー! かんぱ~い!」

 

 音頭をとったのは山梨支部から転籍してきている白風百仁華。

 普段は支部の事務方をまとめているが、今でも異界通いは続けているのでその実力は一角の物である。支部設立の人員移動に紛れて呉にやってきた当初からのこの家の住人だ。

 

 対して合いの手を入れたのは隠れ里の秘蔵っ子のノーバディ。

 主人に入れられた小学校で楽しく学んでいる少女だ。それまでの環境から一般的な常識などに心配されていたが、問題も起こさず逆にクラスの人気者になっている。

 

「ノーバディ! 失礼でしょ!」

 

 慌てて叱るのはそんなノーバディと一緒に学校に通うヒルダ。

 学校に通いながらも放課後は一族と一緒に働いたり、ガイア連合の技術を学んだりしている優秀な魔女の卵だ。大雑把なきらいがあるノーバディと違い細かな計量なども苦にしないヒルダは正統派の魔女として他の一族からも気に入られていた。

 

「こういった場では無礼講というのでしょう?」

 

「そうですね。私もそう思います。肩書を気にしないで良いと聞いています。」

 

 我関せず習わしを聞くのは二人の保護者兼上役のホーネット。

 個人としてこの家の主人の配下であるだけでなく、正式にガイア連合からも支部長補佐を任されて働いている女性だ。今は主に海外からの移民の魔女たちの取りまとめをしていた。

 

 天然な彼女に微笑んで自分が学んだことを答えるのはラケル。

 ガイア連合にも籍を置いているが、正式にはガイアグループ所属の研究員だ。メシア教からの紹介で来た彼女であるが研究所に所属してからは一度も教会にも寄らず、教会からの住処を処分してちゃっかり藤原邸に部屋を確保している。

 

 そんな彼女たちにそっとウェルカムドリンクを配膳しているのは百仁華の式神のヴィーラだ。

 今日は百仁華の意をくんで静かにカウンターの向こうで給仕に専念していた。

 

「そうだ! 今日は無礼講だ! 普段なかなか交流もないから、たまにはお互い腹を割って話すのもいいだろう?」

 

 普段共に暮らしているとはいえ、実はこの家の対人関係は主人に依存したもので彼女たち同士の関わりは薄い。

 彼女たちは裏方・学校・実動・研究所と活動範囲もバラバラで、しかも朝夕がそろうのが奇跡のような忙しさが続いていたので碌に私的な交流も出来ていなかった。近頃やっと落ち着いてきたので、ちょうど朱莉も居なくて都合が良いと百仁華が発案して住人をかき集めてきたのだ。

 

「確かにそうですね。奥方になる方とは一度ちゃんと話したいと思っていました。」

 

「お、おぅ! な、何でも聞いてくれ!」

 

 いきなりぶち込むホーネットに百仁華がたじたじになる。この家で奥方と言うと二人該当してしまうが住人たちに気にしている人間はいない。もう一人の奥方は滅多に泊まらないので専ら百仁華がそう呼ばれていた。

 

「あら、それはいいことを聞きました。いろいろ彼について教えていただきたいと思っていたのでよろしくお願いしますね?」

 

 そこにすかさずメシア教からの刺客がウフフとほほ笑んで追撃する。

 最初こそ警戒されていた彼女だが今では住民たちに心を許されている。しかし、主人の事となると今でも目が笑っていないと怖がられることがある女性だ。

 

「ヒルダちゃん! 修羅場ってやつだね!」

 

「ノーバディ、ちょっと声を下げてっ。」

 

 わくわくしているのとドキドキ興味津々なのと、ませた二人が大人たちのやり取りをバレバレの態度で伺う。

 

 

 藤原邸の姦しい夜はこうして過ぎていくのであった。

 なお返ってきた主人がやけに仲良くなっている住人たちに喜ぶのはまた別のお話。

 

 




住人一覧
藤原朱莉 :主人公。年齢8歳。
      11月生まれなので作中で年齢が前後して見えることがあると思います。
白風百仁華:ガイア連合所属転生者。年齢20代。前世は男。
      モニカ・ヴァイスヴィントのそっくりさん。スカウター破壊者。
ホーネット:主人公がTOPを務める魔術一族所属。年齢20代。
      主人公との“契約”の権利に基づき組織のための子供を求めている。
ノーバディ:主人公がTOPを務める魔術一族の見習い。年齢11歳。
      ホーネットの付き人扱いで住み込んでいる。霊能的には天才。
ヒルダ  :ノーバディと同じ身の上。年齢11歳。
      小学校に通い始めたせいで一族の装束が恥ずかしくなってしまった。
ラケル  :元メシア教所属。今も一応は所属になっている。年齢20代。
      トラウマを利用して家に転がり込んできた。普段は研究所でハッスルしている。

この幕間に出てこなかったもう一人の“奥方”
鶯 小夜子:ガイア連合山梨支部所属。所謂医療班。年齢40代。前世は男。
      研究ために普段は山梨にいる。外科医だが以前は転生者のカウンセラーもしていた。
      実はガイア連合に所属するにあたって自分の病院を後進に譲り渡している。
      FGOのナイチンゲールに肖って姿を真似ている。

居宅には住人以外にも使用人としてナインズが勤めています。
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