【カオ転三次】DRUG FATE   作:石は転がる

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八年目
41話


 四月。出会いと始まりの季節。

 学園の門から続く桜並木は入学式を祝うかのように折りよく満開だ。正門から真っすぐに続く並木道は、青空と暖かな日差しに白い花びらが舞う絶好のロケーションであった。

 その桜吹雪の中、張り切って先導するヒルダとノーバディに付いて行く形で私とアリサは歩を進めていた。

 

 幅10mはありそうな石畳の両側の桜はあえて不均等に植えられていて、その間にはバラや水仙などが調和をもって植えられている。鼻に香るのはモクレンやローズマリーの香りだろうか。片側の並木の間から延びる飛び石はイングリッシュガーデンの庭園へと伸びている。

 逆を見れば広々とした建屋の奥にテニスコートが見える。こちらは部活棟なのだろう。コートの他にもカラフルな的が見えるのでアーチェリー場等もありそうだ。

 視線を正面に戻せば桜の隙間から遠くに白亜の時計塔が顔を覗かせている。広く開けられた内門を手を引かれるままに潜り抜ければ、正面には象牙色に輝く校舎が見えた。白い外壁に嵌るガラスの一枚一枚に様々な意匠を施されたエッチングガラスが、単調になりかねない外観を華やかに彩っている。その建物を縁取る金色の金属細工が白ばかりの建材を引き締めていた。

 

「どう? ここがこれから通う学び舎よ。」

 

「はぁー、なかなかおしゃれですね。学校ってもっと地味なものだと思っていました。」

 

「アリサは連れてきていませんでしたっけ? 私は結界敷設に何度か来ていましたが人の気配があると趣が違いますね。」

 

 先輩風をふかしているヒルダにアリサが感嘆をもって答える。

 中高の校舎に限らず同じ敷地内にある小学校の校舎の一部には結界敷設のために訪れたことがあるが、昼の日差しの中で見る学舎は建設当初の寒々しさを感じない。若く情緒的なMAGに染まる空間はこの場所の性質をよく表していた。

 

「わったしのクッラスはどっこっかなぁ~♪」

 

 待ちきれないとばかりにぐいぐいと手を引かれた先には掲示板が臨時に設置されていた。まだ入学式には早い時間だというのに、意外と人気が多い。生徒だけではなく保護者の姿もあるからだろう。背が伸びる気配のない私では、張り出された割り振りを人ごみの後ろからでは見れそうもない。

 

 入学生の全六クラスのクラス割表。内容は実のところ知らない。学園側からクラス割を弄ろうかと忖度の話もあったのだが、下手な前例になると面倒なので平常通りをお願いしていたのだ。護衛の意味で周りからは不評だったのだが、今後の事を考えると下手にガイア連合員だからと特権のようなものを与えたくなかった。

 本当は式神を入学させることも、もっとよく考えてからしたかったぐらいなのだ。

 

「んんーー、私には無理ですね。」

 

 背伸びしてみるが人の隙間からも見れないので提示板を見るのは諦める。そんな私に気が付いた付近の知り合いが軽く頭を下げてくるが、数が多すぎるのであまりこの場に居ては保護者からの黙礼では済まなくなりそうだ。

 

「朱莉とヒルダはAクラスですね。ノーバディはCで私がDです。」

 

「えぇえー! 朱莉と一緒じゃないの!?」

 

「我がまま言わないの。休み時間にでも会えるでしょう?」

 

 着用自由の制帽のつばに手を当てて人垣の向こうを覗いたアリサの声に従って、私たちは足早に人ごみを離れて校舎に向かう事にした。

 のんびりしてしまっては周りの家族団欒を仕事の時間にしてしまいそうだ。多少子離れされてしまう年頃とは言え、子供の思い出は大切にしてほしい。

 まあ、人の家族の心配をする前に自分の家族に気を割かねば。

 諭しているヒルダも、本人が気が付いているのかは知らないが、声が少しばかり弾んでいるせいでノーバディが余計にむくれている。

 

 たかがクラス分け一つで一喜一憂。その光景を一歩離れた気分で見ながらこんなこともあったかと過去を思う。

 昔はどうであっただろうか。走ることを続けていたせいか学生時分が遠い。

 

 まだまだ真新しい靴箱に貼られた名前。話しながら通る廊下と教室の間は、温かみのある木の枠がガラスを支えている。慣れた様に向かう生徒とあたりを見渡す生徒の違いは、進級した者と外部から新たに入学してきた人間の違いだろうか。

 

「朱莉、私はこちらの教室ですのでまた放課後に。」

 

「ええ。早い方が迎えに行くという事で。」

 

「私も隣だし行くねー。イクゾー!」

 

 アリサがD組に消えるのを待たずして元気よく自分の教室に突撃するノーバディ。廊下からでも友達を見つけて騒がしくしている声が聞こえてきている。

 

「まったく。落ち着きがないんだから。」

 

「ふふ、そうですね。ま、ノーバディは問題ないでしょうし私たちも教室に向かいましょう?」

 

 ヒルダのノーバディに対する口癖を聞きながら廊下を進んで行く。

 板張りの床に幾何学模様に彫刻された柱。アラベスクが縁を彩る窓から透かし見える教室の光景は、賑やかで楽しげだ。

 ちらりと見えた黒板は、クラスごとに描かれた内容が違う。もしかしたら担任の教師たちがそれぞれ精一杯の歓迎を描いたのかもしれない。Bクラスのやたらと写実的な桜並木はチョークで書かれたものとは信じられないぐらいだ。

 廊下の一番奥。細工の一つ一つを見ていけば教室一つ分の距離などすぐについてしまった。

 

 十代の少年少女たちの活気。陽性の空気に今更ながらに場違い感を感じてしまう。

 ……歩みに迷いが入る。

 

「おはよう。」

 

「おはようー。おお、朱莉君だ! これからよろしくねー! あ、ヒルダちゃんもよろしくねー。」

 

「唯、私はついで?」

 

「えへへ。」

 

 そんな葛藤もヒルダには関係がなかった。

 当たり前に教室に入り、知り合いに挨拶をしている。手を繋がれている私もそれに引きずられていく。

 窓から差し込む日差しに、教室は明るく照らされている。クラス全員分のロッカーが後部に並び、さっそく荷物を詰め込まれているスペースがある。整然と並ぶ机と椅子は、ロッカーと同じく全て木製で金属が欠片も使われてはいない。

 普通の学校よりも余裕をもって作られたはずの教室は、度重なる生徒の増加にやや詰め込まれた印象だ。その教室の前面に大きく広がる黒板には色とりどりのチョークで書かれたポップな絵が生徒の到来を歓迎していた。

 

「藤原さん、おはよう。」

 

「おはよー、藤原さんの席そっちだって。」

 

「おはようございます。一年よろしくお願いします。」

 

 私の名前を呼ばれたことで気が付いたのか教室内の知り合いたちにも声を掛けられる。

 ガイアグループの懇談会に出てきていた従業員の子供たちだ。外の掲示板で見かけた知り合いの社員の数からすれば少ないが、懇談会に参加する中高生は少なかったのでこんなものかもしれない。

 明るい笑顔。それこそ当然だと気負いもなしに声は私に届けられる。

 

「おはようございます。こちらこそよろしくお願いしますね。」

 

 教室に入るときに感じていた戸惑いを放り捨てて笑う。少し臆病になっていたのかもしれない。自分が今まで関わってこなかった年頃のせいで身構え過ぎていた。

 たとえ私が場違いでも本気で歓迎して喜んでくれている人間が居るのだから、きっと学園生活は楽しくなると私は期待をすることにした。

 

 それが私の始業式の朝の光景であった。

 

 

 

 入学当初こそ懇談会の知り合いが学年問わず大勢挨拶に来てくれたが、しばらくすればそれも落ち着く。そうなると後に残るのは当たり前の日常だ。

 授業を受け、休み時間に騒ぎ、行事を楽しむ。お互いを多少わかり合った五月ごろには遠足があり、それが終わればすぐに中間テストと全国のどこにでも見かけられる光景がこの学園にも広がっていた。

 

 学生生活というものは転生者であろうが覚醒者であろうが平等なものである。

 それは各学年に一人二人は授業を担当するメシア教徒の教師がいても、或いは例年生徒の一割ほどはオカルト組織に属していても同じことだ。

 ガイア連合支部長として少しばかり気を張ってはいたが、学校において特定の宗教の話が出ることもなく。また教師と生徒の間にも特別な隔意は見当たらなかった。校内を見回ってみても亡命者の生徒たちが問題になっていることもなくうまく溶け込んでいた。

 

「だから言ったでしょう? 特に問題はありませんって。」

 

「報告はありましたが確認はしてませんでしたからね。体験するので気にかけていただけですよ。」

 

「心配しょーなんだよ、朱莉は。」

 

 放課後、家への送迎の車の中で話題の一つに挙げればヒルダとノーバディに笑われた。

 登下校の間は基本的に彼女たちといつも一緒だ。それは警備の問題でもあるが、二人と他愛無い話をする時間を取るためにスケジュールを合わせているためでもある。用事があったり一緒が嫌なら別々でもいいとは言っているのだが、入学から現在まで一度も分かれて動くことがなかったのは気を使わせているのか少し悩んでしまうものだ。

 

「それより今日はどうするのか決めているのですか?」

 

「んー、支部に着いたらヒルダちゃんと相談するの!」

 

「依頼も見てからになりますので、今日は準備だけになるかもしれません。」

 

「なら直接支部に向かってもいいですね。いつも通り私が仕事中でも行動を決めたら連絡を入れてください。」

 

 私が二人の予定を確認している理由。

 それは今年から二人がガイア連合に所属することを許可したからだ。

 

 今までは年齢の事もあるし表の社会で生きていくことを選んでもいいようにしていたのだが、高校生になり分別がつく年齢になったとして改めて将来を選択させたのだ。

 “表”で生きるか。“裏”で生きるのか。裏で生きるとしても戦わない選択肢も。

 二人はそれに答えた。――戦うと。

 それ故に私はナインズの長として悪魔と戦うことを許し、その監督者として指導することをガイア連合に登録した。二人に連絡をお願いするのも、私が教導官であるので二人が依頼を受ける時などは私の許可が必要であるためだ。異界進入時等も私が付き添うことになっている。

 

 制服のまま支部に到着しロビーに向かった二人の事は武蔵に任せ、アリサを連れて支部長室に向かう。

 しばらくのんびりと学校に通うとして仕事を減らしているが、それでも仕事がなくなるわけではない。そのため一日一時間ほどは書類の整理をしなければいけない。

 まあ、支部自体は二十四時間営業なので、日のある時間に無理をしないで夜中にコッソリ処理してもいいので気楽なものだ。

 手早く片付けていけばすぐに仕事が終わる。今日は特段変わった書類も無かったのでいつもより早く終われた。

 

「2B、書類の配達はお願いします。」

 

「分かった。」

 

 今日の支部担当の2Bに後を任せてアリサと共に受付へと向かう。

 自分の支部の受付を使うのは、カウンター裏ならともかく利用者としては新旧支部合わせても教導官になってからが初めてなので新鮮味があってなかなか楽しい経験だ。

 自分で制定した新人教育制度も実際に運用に立ち会っていたわけではないので、実のところ私も弟子二人と同じで新人と言ってもいいのかもしれない。師匠ぶってる二人に付いてはいるが、初心者への教育内容やガイア連合の利用者のコミュニティについて私は疎いところがあるので、知り合いにも話を聞きながらの新米師匠である。

 こういう時に話を聞きに行ける人間が居ることが私の最大の財産かもしれない。

 

 忙しそうに書類片手に廊下を走り回る式神や、逆にそれぞれの部署で暇そうに屯して雑談に興じている人影を横目に事務エリアから表に出る。

 この支部を利用できる人間はすべてガイア連合員であるため、内部ではセキュリティーランクに煩くないので町中の裏ジュネスなどとは雰囲気が違う。

 居る人間も仕事を受けに来た以外にも、ただ散歩に立ち寄ったような人間や遊びに来たような人間の数も多い。すでにシェルターで生活している人もいるため、シェルターと支部が繋がる一階ロビーは色々な意味でにぎわっていた。

 

 広いロビーは、役所とホテルを混ぜ合わせたような独特の空間だ。役割ごとに受付がいくつもあり、その逆では喫茶のためのスペースが庭を望むように広く取られている。奥に入れば多人数でも利用しやすい間取りのレストランが庭沿いに広がっていて、夕方にはまだ早い時間にもかかわらず席はそれなりに埋まっていた。

 こちら側は依頼の発注・受注などのカウンターなので、装備を身に着けている人影はほぼいない。

 依頼報告のカウンターであれば送迎サービス利用者の物々しい立ち姿か一風呂浴びてさっぱりした男女の姿が見れたことだろう。あちら寄りに配置されている大衆居酒屋風の店では今でも陽気な声が聞こえているかもしれない。

 そんなことを考えながら、足は武蔵との繋がりを頼りに、依頼受注に悩む弟子たちが居るはずのブースに向かう。

 

「お邪魔します。どんな感じですかー? ――あれ、デオン?」

 

「やあ、久しぶりだね。」

 

 ノックをして中から開けて貰ったら思わぬ知人の姿に驚いた。こちらに手を振る姿はスラックスにシャツとラフな装いで髪もまとめておらず、のんびりと休日を満喫していたらしき姿だ。

 

「関西に出張に行ったと聞いていましたが戻ってきていたんですね。」

 

「昨日ね。数日は休暇だから老婆心ながら口を挟ませてもらってるよ。」

 

「いえ、助かります。」

 

 大人しく受付と依頼を吟味している弟子たちを横目に保護者の会話をする。彼は私が弟子を育てるうえでちょくちょく助言をもらっているメインの相手だ。

 百仁華と小夜子の二人とガイア連合が出来る前からの知り合いで、初期に何度かPTを組んだのが出会いだ。

 すぐに私は一人旅を始めてしまったので組んだ回数が多いわけではないが、山梨支部の話を聞いたりするために都合をつけて会っていたのでお互いに気兼ねしない相手である。

 私が支部長になってからはすぐにこちらに来てくれたベテランで、師弟制度が出来てからは現地民を何人も育ててくれている。卒業後も慕われていて度々弟子だった現地民に掴まってる姿を見かけるが、そのおかげで現地民の繋がりも詳しいので下位のガイア連合員や外部利用者の情報を聞くために定期的に会っていた人間だ。

 

 弟子を取るとなって改めて教育について教わっているが、その彼から何度か私の依頼選びは危機管理面でだめだしされてしまっている。我流で戦闘経験を積み過ぎた結果、純粋なスペックで出来るかできないかを見ていると指摘されているのだ。

 なので弟子二人の依頼選びに目を通してもらえるのはありがたいことだ。受付も十分配慮して仕事を回してくれているが、実際に現場を知ってるだけより細やかな部分まで見てくれるからだ。

 

「まだまだ経験が少ないんで、色々な異界に行かせるつもりなのですが大丈夫でしょうか?」

 

「いいと思うよ。二人とも一般上りと違ってしっかり基礎は出来ているし、やれることも多いから。どちらかと言えば手札の選択と道具の使い方を慣れさせた方がいいかな?」

 

「それなら戦闘以外の解決策がある仕事も混ぜた方がいいですか?」

 

「そうだね。早めに何でも実力だけで対応できるわけじゃないと知るために、そちらの手管を知っていた方が良いと思うよ。見極めることが頭にないと経験を積んでも身に付かないから。」

 

「座学はしてますが体験も必要ですか。……困ったなぁ。」

 

 前でわいわいと選んでる二人にバレないようにこっそりため息をつく。転生者のスペック任せで必要ない異界は消滅させてきたので、態々封印して弱体化させる選択を自分で選んだことがないのだ。

 頼れる師匠像を維持するためにも余り情けない所は見せたくはないのだが。

 

「聞いてくれたら一緒に選ぶよ? 何なら今は面倒見ている子はいないし、一緒についていくけど?」

 

「それはありがたい。」

 

 詳しい日程は後程としてカウンターに向かう。そこでは弟子二人が選んだ依頼を見て貰いたそうにこちらを待っている。

 

「決まりましたか?」

 

「ええ、これにしようかと。」

 

「ふふふ、私の大剣が火を噴くぞぉー!」

 

 示された依頼は異界の消滅を求めるものだ。事前情報は占術と初期偵察で判明している範囲で、主などは不明。敵パターンは西洋系で彼女たちナインズのノウハウが生かせる異界だ。

 

「そうですね、問題ないかと。突入は明日から?」

 

「はい、異界の封鎖はされているようですし、何日かかけて攻略する予定です。」

 

「任せてよ! パパっと終わらせちゃうんだから!」

 

 フンスフンスと鼻息荒く気合が入っているノーバディを、冷静にヒルダが止めるいつもと変わらない光景に微笑む。こっそりデオンにも資料を渡して確認してもらっているが、特に問題が無い様で口をはさんでは来なかった。

 

「それでは依頼受理しておきますね。今のところ同じ依頼受けている人はいないですが、ブッキングすることもあるのでお早めに。」

 

「はい、わかりました。」

 

 お約束のセリフを聞いて、私たちは依頼ブースから出る。

 それほど長居をしたつもりはなかったが、外は赤く染まり、空には星が見え始めていた。ガラスの向こうに、ロビー横のレストランがさっきまでよりも席が埋まっているのが見えた。

 

「意外と長くかかりましたね。デオンはどうします? 良ければ夕飯食べていきます?」

 

「二人で食べるのも味気ないと思ってたんだ。ご相伴に与ろうかな。」

 

 うちの食事は数十人分を一気に仕入れているので、一人二人急に増えても支障がない。屋敷の寮で生活するナインズは覚醒者ばかりなので人の倍を食べる人間も多く、材料も常に余裕をもって仕入れている。急な来客だろうが対応できるようにしているから、このまま帰っても問題ないだろう。

 だからと言って後ろでアリサが一応連絡をしているのを止めたりはしないが。

 

「デオンのお姫様を迎えに行くのもありますし、一緒に歩いて帰りましょうか。涼しくなった中を散歩も良いでしょう?」

 

「朱莉がしたいならいいわよ。」

 

「あー! ヒルダちゃんずるい!」

 

「ちょっと、キミっ! ……ああ、もぅ。」

 

 どうでもいい風に言っているのに、するりと私と手を繋いで動き始めるヒルダに抗議してノーバディが腕をつかんでくる。

 ちょっと恥ずかしそうに先導するデオンの後ろを、弟子二人が騒がしいので何事だとこちらを見てくる周囲に軽く頭を下げて目で謝り、シェルターの方に向かう事にする。目立つがまあこの程度はここでは日常茶飯事だ。周りもすぐに興味を失うだろう。

 

「日が落ちきる前に帰りますよ。ほら、デオンも早く早く。」

 

「キミは割と強引なところがあるな。」

 

「デオンさんも早くー早くー。」

 

「ノーバディ、真似しないの。」

 

 しょうがない奴を見るような視線にも負けずに笑うと、デオンも表情を崩して足早に部屋に向かう。

 夜勤に向かうのかただ夜型なだけなのか知らないが、今から動き始める連合員とすれ違いながら、私たちは今日の夕飯を話題に楽しく一日が終わっていくのであった。

 

 これは日常を噛み締めている、そんな一日の記憶だ。

 

 

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