【カオ転三次】DRUG FATE   作:石は転がる

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幕間3

 オタサーの姫という者が居る。

 オタク趣味のサークルなんかに紅一点で居そうな女性の事で、ツインテールやサイドテールに髪をまとめてみたり、やたらとコルセット風の服を着てみたりするイメージを持たれている存在だ。

 

 メイド研究所に所属する辻華子はまさにそのような存在だった。

 

 本人からしても自分の事を美人とは思えていなかった厚ぼったい唇に不摂生が祟った体系。同じオタク趣味の仲間たちとわいわい遊ぶのが楽しくていつの間にかに女性らしさをなくしていた日々。

 可愛い可愛いと着ていた服が自分に似合っていない事を誰よりも自分が理解していた。

 

 そんな辻華子に転機が訪れる。

 富士山覚醒体験オフ会。その第一回目に会社の同僚と訪れた彼女は最初こそ覚醒できなかったが、無断欠勤して続けて修行をした結果覚醒。幸い会社の仲間は皆転生者であったがゆえに理解があったので有給扱いなったが、彼女は迷惑をかけた一人一人に頭を下げに行きその誰からもが驚かれることになった。

 

 彼女は変わったのだ。

 

 手入れも中途半端なぼさついた髪は濡れ羽色の美髪に、がさついた肌は朱がさし肉感的な唇が美しく弧を描く。たるんで膨れた体は引き締まり、女性にしては高めの背と合わせてメリハリのついたスレンダーな大人の女性らしさを引き立たせていた。

 服装もふんわりした柔らかなものから、きっちりと体を線を出すものに変えて印象をがらりと変えた。

 その彼女の姿がオフ会の信ぴょう性を高めオタ社長が社員総出で修行に来るのはまた別の話。

 

 

「きゃぁぁーっ! これ、これ尊い! これも買いましょう!」

 

「これなんてどうです! 今期の自信作! 次これ着てみてください!」

 

 まあなんだ。

 散々変わったや綺麗になったと言ってみても中身は俺たちでしかない。今更彼女の前世からの腐った趣味が変わるわけもなく、彼女は立派な婦女子をしていた。あ、あえて淑女として扱っているので誤字じゃないぞ?

 

 ある日の池袋。そこそこ裏路地にある小さな路面店に私は辻さんに連れられて何度目かの来店をしていた。

 ここは転生者が店主を務める個人ブランドの店だ。おいてある服はこの時期に売られていそうもないゴスロリや鎖がじゃらじゃらついたような服などが並ぶ趣味の店だ。

 この時期流行りのヴィジュアル系とも違うパンクファッションは地味に人気らしく、昼間から学校をさぼったような子供が居たりするので今日は貸し切りになっている。

 

「いやー! かわいい! 鎖骨ぺろぺろしたい! こっち、こっちみて!」

 

「うひぃっ! いい! 想像以上にいい!」

 

 学生たちもカリスマ店主のこんな姿は見たくないだろうし良かったのだろう。

 大人しく着せ替え人形になっているとまた奇声が上がる。

 

 上はキャミソールにポンチョを付けたような服だ。肩を大胆に開かれたパンク系の服は二の腕あたりも大きく開いている。ズボンは片足がショートパンツ状になっており肌を隠すのは長い靴下だ。

 指定されるまま髪に指を絡ませ、うつむき加減でレンズに目線を向ける。奇声を上げて動き回って何枚も取っているとすぐにフイルムがなくなってしまっている。辻さんは持参した荷物からフイルムを探しに少し席を外した。

 その間に店主にそろそろ本日の本命をこっそりだしてもらう。すでに何時間もいるのだ。いい加減終わりが見えてもいいだろう。

 

「これこれこれこれ! これ! 今年はこれ!」

 

 なんか語彙がなくなっている辻さんに乾いた笑いが出る。すっぽんぽんに剥がれて着直した新しい服はパンクからゴシックに変わっている。ふっわふわのフリルに頭を覆うカチューシャ。服の色はほぼ黒一色に見えるがよく見れば黒の種類を変えて立体感を出している。

 足元や袖の装飾の広がりさえ除けば地味に店主の腕はいいので、デザインを考慮しなければ着心地がよかったりする。

 

「ん゛ん゛んん゛ーーん゛!」

 

 靴に編み上げブーツを履かされているので邪魔をしないようにスカートを持ち上げると、形容しずらい声と顔をしながら辻さんがシャッターを切る。店主も心得たものでうまく写真に腕しか映らないようにしている。

 

「あのー、辻さん。そろそろお昼にして次の場所に向かわないと撮影終わりませんよ?」

 

 なんかスカートに顔を突っ込んできそうな勢いがある辻さんを止めるために予定を告げる。

 

 今日、私が辻さんに付き合っているのは降霊修業お疲れ様の打ち上げ代わりに何かしてほしいことがないか聞いての物だ。その回答としてコミケに参加とその協力を依頼されたので今日のお出かけとなっている。この後は撮影ポイントで撮影を済ませないといけない予定になっている。

 

「ん゛、んうぅぅー。し、仕方ありません。次、次までの我慢ですよ、私!」

 

 裏でテキパキ店じまいしている店主をしり目に辻さんは自分に必死に言い聞かせている。言い聞かせるのはいいのだが、私の手をさわさわ握るのはどうかと思う。

 この後の撮影に店主も同行するが、仕事などではなく彼女も辻さんのただの同好の士だからだ。着替えるときにやたらと体を触ってくるのはまあ、そういう趣味なんだろう。

 

 溜息一つ。

 ま、乗り掛かった舟だ。道を踏み外させない程度に頑張ろう。

 

 

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