【カオ転三次】DRUG FATE 作:石は転がる
『・神だけど何か質問がある?』を拝見したことにより、事前想定よりもメルカバーが丸くなっております。
一面の白雲が眼下を覆い、まるでもう一つの大地を生み出したような光景。ほんの一月前までの晴れ晴れとした空は消え去り、重く厚い雲が立ち込めている。
北の方を見れば雲から突き出した峰が見えるのは、流石世界で最も高い山だと言えるだろうか。
この風景を下で過激派を待ち構える者たちに見せれば、もしかすれば全てが枯れ果てた世界を生み直す時のことを思い出すかもしれない。
世界が巡るように、この地を巡る自然の連鎖。
『雨季』だ。
インドから現在の防衛線に余裕をもって引いたのは、この“雨季”を考慮してのものだった。
かつてガンジス川を境とした防衛線を引いていた対メシア戦線であったが、その頃も前線の後方地帯であるヒマラヤ山脈には度々浸透した過激派に襲撃を受けていた。その襲撃を撃退或いは未然に防ぎ、後方の安全を担保していたのは【龍王 ヴリトラ】だったというのがこの場合問題になった。
神話的にはこの地域の“雨季”とは【ヴリトラ】が“殺され”水が“開放”される事で降り注ぐものだと考えられていた。この伝承のせいで【ヴリトラ】は雨季にはその力を弱めてしまうのだ。
勿論、代わりにインド神話で“川”であったり“水”を司る神格の力は増すのだが、戦線が押されている状態で後方まで不安にするわけにはいかなかった。
そのため、対メシア戦線はインド国内での防衛を断念、霊地などをすぐには使えない様にしつつ後方のヒマラヤ山脈へと下がったのだ。
その選択は今のところ正解であったと言えるだろう。
弱体化しているとはいえなおも強大な力を発揮するヴリトラを中心に、神々が合力する防衛線は非常に強力な物であった。過激派も再び浸透して後方を狙おうともするが、峻厳な山脈に手間取っている間にそこを根城とする悪魔たちに狩られている。
これはヴリトラが【龍王】であったことも大きい。現在のヴリトラはアスラの王としての側面が強いおかげで配下としてアスラたちがはせ参じていたからだ。
そんな訳で対メシア戦線は消耗を強いられつつも安定していた。
――ただ一つ。【メルカバー】への対策を除いて。
上空から燦燦と降り注ぐ朝日を遮る雨雲に、私は何気なく突入する。
光から闇へ。
雨雲からの離脱。高度を落とした機体には水滴がMAGに反応して弾け飛び、霧となって後方へと跡を残していた。
<<……こっちか。>>
呼び声が聞こえる。こっちだこっちだと、私を誘う囁きが軽やかに。
幻聴だ。
音としての声はなく、思念としての導きはない。
――ただ、何となく呼ばれている実感だけは確かだった。
<<9S、前方20㎞先、【メルカバー】だ。>>
<<前線からは50㎞ぐらいですか。前と同じですね。>>
<<警戒しろよ? 前みたいに結界で囲われるかもしれない。>>
<<また吹き飛ばしてあげますよ。>>
誘いに乗って行けば、当たり前に【メルカバー】は居た。
鳶色の瞳は刺すように。金の鬣は背に流れ、背からは降り注ぐ雨を撥ね退け翼が雄々しく延びている。
何故か初めに会った時は着ていなかったナツメヤシ模様のトーガをこの前からは着ているが、そのせいで左肩の牡牛の肩当が半ば布に埋もれて迷惑そうな顔をしている。流石、悪魔の装飾というべきか。無機物に見えるのにどうやら動くようだ。
その後ろでは今までと同じように
たった一機を相手に随分と大人げないことだ。
<<アナライズ完了。敵【大天使 メルカバー】推定LV135。……またLVが上がっているな。>>
<<やはりまだマグネタイト許容量に余裕がありそうですね。推定LV120からLV150に訂正を入れておいてください。>>
<<了解。逃げ時を逃すないように。>>
心配そうな言葉に苦笑する。流石に前回は危なかったので言い返す言葉が無いからだ。
なので聞かなかったふりをして
今回の場所はガンジス川の支流らしい。傍らには普段は乾いた川底を晒す中州が増水した川に沈んだ様が見える。
雨に打たれ泥に沈む
――この構図は、蓋しくも私と
『久しいな。
『ああ、久しいな
雨雲が轟きバケツをひっくり返したような雨が降る中、メルカバーと私は奇妙なまでの静寂さをもって言葉を交わした。
四度会った時からの習慣だ。
恐らくは目標が“時間稼ぎ”で共通しているから起こった出来事だ。お互いに相手を排除したいという思いは一緒だが、同時に簡単には排除できないと考えているのだろう。そのため、その日の勝敗が付くまでの時間を伸ばし、勝っても負けても主戦場への影響を減らすために“時間を稼ぎたい”思惑が一致したのだと思われる。
『よくぞ前回は逃げ果せたものだ。余程、異邦の悪魔の寵愛が篤いようだな。――その身、その忠、悪魔に捧げたか?』
『力は借りているが従属までしたつもりはないな。その程度、お前なら分かるだろう、メルカバー。』
『……どうだか。人は弱く、醜く、堕ちた。ケガレとなりし人を、どうして私が信じられようか。』
何度も戦っていると流石大天使だけあってか彼女は私がメタトロンではない事に納得がいっているらしい。
だからこそ、だろうか。“人の子”として扱うがゆえに、他の悪魔に従うことが許せないような気配を感じる。厳しくとがめる口調は、しかしその顔の表情と合わせると拗ねている様にしか見えない。
違和感。
事前情報として閲覧した『原作』との差。それは何なのか。推察ばかりで確定できないモノが、なぜだか酷く気になる。
『この場で膝をつき、主の御心に委ねよ。さすれば、その言葉も信じようぞ。』
『私は
違和感。それは己にもある。
私はなぜ『もう』などと言ったのか。今まで一度も神に服従した覚えはないのに、当然のものとしてこの言葉を選んでいた。
メルカバーとの会話の時にだけ生じる誤差。まるで、
私がメルカバーと言葉を交わすのは、これがあるからだろうか……?
『哀れな。約束の地に入ることを拒み、今一度荒野へと戻ろうというのか。』
『たとえ地に呑まれようとも、それをしては私でない。』
『――ッ……。』
ザーッという雨音に、メルカバーの開きかけた口から洩れた声がのまれる。
違和感。
天使のくせに激高しない。理性的であるから――ではない。見上げた視線の先のメルカバーの顔に浮かぶのは、怒りではなく……苦悩?
今まで見てきた
この違いは
『……人の子よ。神の国と神の義を求めず、自分の命の事で思い悩む先に幸いはないぞ?』
『敵を愛し自分を迫害する者のために祈っていれば何をしても良い訳でもあるまい。貴様の体、一体何で出来ているか忘れたとは言わさんぞ。』
『彼らは…彼らは、肉の業を捨て去り、霊の導きに従い歩むことを選んだのです。誰も、二人の主人に仕えることは出来ないのですから……!』
お互いに言葉に意味はない。時間稼ぎのくだらないマイクパフォーマンス。
そんなもののはずなのに、どもり激高
違和感。
しかし、それを考える暇はもうなさそうだ。
戦意の高まりに応じて、天使たちが次の動きのために身構え始めている。それを統括するメルカバーも、それに背を押されるように剣の柄に手を掛けた。
ふと、雨が止む。
お互いの戦意が高まり合う。
泥の中、沈み込むように腰を落とし、機械仕掛けの羽を伸ばしていく。一つ一つ、順に開いていくハッチから顔を覗かせるブースターは陽炎の様にMAGを吐きながら、火が灯る瞬間を待ち望む。。
対して、空に佇む天使たちの動きは有機的な連動だ。私の飛びこむ予兆にすぐさま陣形を変更し、弓には矢をつがえ、口には祝詞を含ませる。
お互いに始まりの時を待つ。
どうしようもなく無駄なフェア精神の発露。或いはどこまでもやせ我慢した意地の張り合いか。不意を突いて相手に罵られることが我慢できない愚かな面子のために、準備中に襲い掛かるような浅ましい真似を双方ともにしたくないのだ。
なので、戦いの火ぶたが落とされる瞬間をじっと待つ時間だけが流れていく。
静寂。重くのしかかった雲が蠢くように流されていく。湿った風の肌触り。雨の色が過ぎ去っていく。
濁流はうねるままに揺れ動くだけで外にその内を見せない。
少しずつ空と大地を遮っていた帳が取り除かれ、夜のように暗かった大地に影を思い出させていく。
天使の輝きが、この場でただ一つの“灯り”から零落していく。まるで、世界に埋もれる様に輝きは世界に熔けていく。
そして、光がさした。
天使の梯子。それが、たった一筋の光となって、私に降り注ぐ。
着火。
『ぉぉぉぉおおぉぉおおおおおお!!!!』
『撃てええぇぇぇぇぇええっぇえ!!!!』
殺意の交差。
弾き飛ばされたように前に出る私に、メルカバーは空を塞ぐように攻撃の網を掛ける。
<<――――チッ!?>>
弾幕の帳は魔法ではなく弓矢によるものが主体だ。
すでに相対すること数度。その度にお互いの手札が一つずつ暴かれていっている。
そのため、今では私の魔法に対する耐性も周知されているのだろう。目くらましのように広がる魔法もあるが、そのほとんどは物理的に私を射抜こうと矢じりを尖らし迸る。
――もっとも、それはそれでやり易い。
一瞬で射線を把握、ルート選定。降り注ぐ雨のような矢を、傘も差さずにすり抜けていく。
物理攻撃の弱点。それは、魔法の様に空間を埋め尽くせない事だ。直線状にしか攻撃が届かないのであればそこを離れるかずらせばいいのだ。
反撃の応射。
唸りを上げて吐き出す速射は、急遽用意されたライフルの特徴だ。ばら撒かれる弾丸の後を追うように天使の集団の外縁に接触。空力を考慮したパーツであったはずが、実体剣になったカウルで天使を切り裂きそのまますれ違っていく。
せわしなく飛び回り外から順に削りに掛かるこちらに対し、天使たちは腰を据えて対応にあたっている。
前衛では
そして、【メルカバー】はそのすべてを俯瞰し、泰然と宙に座す。
お互いに様子見と相手の消耗を図る根競べだ。
私は【メルカバー】が動く前に可能な限りメルカバーに
どちらが有利とも不利ともいえない消耗戦。
果たして天使の数を減らせている私が有利なのか、それとも私の集中と体力を削れている天使たちが有利なのか。
【メルカバー】が万全である私が不利なのか、いくら攻撃しても五体満足で襲い掛かられる天使が不利なのか。
何度も、何度も。同じことの何度も繰り返し、見る者がいれば飽きるような予定調和の応酬。しかしその実、命を晒して行いに、じわりじわりと眼に見えないものがすり減っていく。
私とメルカバー。奇しくも、お互いに思う事は同じだ。
――手札の切り時。
その到来を自身の損耗と量り、じっと待っているのだ。
<<……あまり、状況は良くない。>>
<<今回は
<<後列からの回復が間に合ってしまうのは問題だ。――突入するか?>>
2Bからの提案を攻撃を仕掛けながら吟味する。
今回は前回の失敗の対策に、弱体化への対抗術式を最大出力で発揮し続けている。吹かし続けている
まだ余裕があるが、その余裕とて何時までもあるものではない。早めに勝負を決めたいのは理解できる。
<<……いえ、今回はあえて消極的に行きます。負担はかかりますが引き撃ちしつつQBで回避します。>>
<<了解した。前面のPAを厚くする。>>
一度離れた上で
――手札が、また一枚表になった。
<<無効以上の耐性持ちは居ない様なので『神の悪意』でいきます。>>
<<――呪詛属性展開完了。>>
<<さてさて、どう対応してきますかね。>>
動きを変える。
かく乱のミサイルにライフルの掃射による足止め。そして、その一瞬の隙を狙ったスナイパーライフルの狙撃が後衛を撃ち抜く。
当然、速度が落ちているので掠めたり直撃する攻撃も多くなるが、それは
丹念に、丹念に。焦燥も不安も切り捨てて機械の様に淡々と行動し続ける。
天使たちの対応は鈍い。先ほどまでと同じように戦列を維持し、攻撃を続けている。多少後衛へのカバーに力を入れて動きが硬くなったぐらいか。下手に防御を固めると、後ろからの攻撃のための射線も塞がれるので現状維持を取ったのだろう。
<<意外と一撃で殺せなかった相手への対処に手間取っているな。>>
<<雑兵を減らして質は上がったが、その代わりに手数が減ったからですね。天使だけあって誰でも回復が出来るので意識してなかったのでしょう。……2B、そろそろ【メルカバー】も動くと思います。準備を。>>
<<了解した。MAG製波装置リミッターカット。圧縮MAG起爆術式待機。>>
淡々と動きながらも次の動きの準備を始める。
攻撃への対処が散漫となるが、そちらは問題ない。
指揮系統の上位ばかりを選別して撃ち殺していたおかげで、天使の総体としての連動が鈍っている。その状態ではパターン化した今までの動きから外れる様な行動は行われない。
しかも、敢えて遠距離戦をしたことにより、天使たちの隊列は一方向からの攻撃に応じたものに固定化している。これでは射撃地点が変わらないので、目を向けるべき場所が決まっているのだ。
『――――…皆の者、私に…――』
ばら撒く銃弾と刺し穿つ一撃。それに対するは広範囲魔法と降り注ぐ矢。
私が這う大地はその尽くを抉り貫かれ、通り過ぎた後には青々とした緑は泥と砂塵の荒地へと変貌する。
炙られ射られながらも維持していた均衡。
それが今、崩れた……!
<<動いたぞ!>>
<<OB起動! AA展開準備! 突っ込むぞ!>>
それまでの全ての動きを捨てる。
回避の放棄。魔法も矢衾も突き刺さるに任せ、天使たちのど真ん中に向かって直進。
『――っぁ、迎え撃て!』
何かを為そうと声を上げ、しかしながら私の動きに阻まれ違う指示を出すメルカバー。それが天使たちの動きに一瞬の迷いを生んだ…!
MAG製波装置の伸張。機体の表層を対流するMAGがその厚みを減らしていく。
それは減衰ではない。通常の限度を超えた圧縮だ。
<<AA展開! 吹っ飛ばすぞ!>>
【アサルト・アーマー 起動します】
武装を格納保護。防護シャッター閉鎖。関節ブロック。機体強化術式オーバーロード。耐衝撃体勢。
点火。
光。
圧壊。
衝撃波。
密度を増したMAGが点火の瞬間、その構造すら崩壊させながらエネルギーを開放。
それは、まさに破滅の輝きであった。物理法則すら歪めた“現実”。異界法則ならざる異端。万物を消し飛ばす終焉。
或いは。或いは、それこそが世界の“終末”の光景か。
<<ぎいぃぃっっぁっぅぐぅうぅうう……!!>>
燃料として削られる霊体。容赦なしに吸い出されるMAGが機体を保護し、どうにか耐えきる。
消費に荒れた息。痛みに流れた汗。それに構わず、機体は自動的にロックを解除していく。
――外が、見えない。
空間中のMAGすら存在しない空白。空間の組成すら安定しない不安定さ。それに、私の気配感知では対応できない。
閉じていた瞼を開放。
差し込んだ光に目がくらむ。明度を調整。白んだ世界が色を持つ。
飛び込んできた光景は、先ほどまでとは一変していた。
刳り抜かれたようになだらかに凹んだ盆地。そこには水がたまり始め、嘗ての川の代わりに湖が生まれようとしていた。
空は覆っていたはずの雲が無くなり、遮るものが無い日差しが大地を焼く。
草木も建造物も、何もかもが吹き飛ばされ平らかな世界。
そんな世界で、
<<【メルカバー】は何処だ……?>>
乱れた次元の揺らめきに気配の感知が復活しない。
仕方が無しに五感による探査。以前結界による破壊の凝縮が起こった時でもどうにか生きていたような存在だ。開放的なこの場所ではそれほど傷を負っているとは思えない。
体勢を立て直される前に見つけなくては――
『――ぁぁぁあぁああああああ!!!!』
<<っ?!>>
直下からの襲撃。
傷つき泥に塗れた姿。その顔を彩る苦悩は……?
違和感。
しかし、その違和感を気にしている余裕はない。
ひび割れた欠けた車輪。それに雷霆を通し、その手には楽園を守る炎の剣が顕わになっている。炎の大剣。楽園を守護するために置かれた天雷が、車輪により範囲を絞られその威を曝け出しているのだ。
――あれは、生半可なものでは防げない。
思考が直感を凌駕し、悲鳴を上げているMAG放出口から更なるMAGを吐き出す。
鼓動がきしむ。
風に交じる結晶。空間を飽和するMAGを掌握。術式装填……!
『魔剣抜刀! 鋤を打ち直して剣となし、鎌を打ち直し槍となせ!』
口語補助による高速構築。無手の両腕に平和を否定する抗いの剣を顕現させる。
『ちぃぃぃいいいいぃぃぃっ!』
『はぁぁぁああああぁぁぁあ!』
意味のない雄叫びが、思念となって方々へとまき散らされる。
圧が強い。打ち負ける。
袈裟切り。弾かれる。脇をすり抜け胴。防がれた。
私もメルカバーも羽を休める暇がない。
鍔迫り合いを避けた切り合いは、お互いの武具の破壊力任せの力比べだ。何度も何度も刃こぼれする術式を補填するのに頭が痛くなる。
脳が熱く焼ける。霊格の差で追いつけないはずの思考速度を凌駕させるための無茶に、脳漿が茹る。
『――それがっ、どうしたぁあああ!』
思考が無意味に言葉となって漏れ出す。
――危険域、か。
無駄に冷静な思考の一部が己の限界を悟る。
遠距離戦ならともかく近接での応酬は、霊格の差が決定的な格差となって度々メルカバーが私の認識を振り切っている。今対応できているのはこれまでの経験による予測が上手くいっているからにすぎない。
――
<<2B! やるぞ!>>
<<また無茶をする……っ!>>
思念が意思を通じさせ、仕切り直しの一手を共有させる。
脳髄を絞り出すように術式をひねり出す。
『無駄だああぁぁあ!』
秀麗な顔を歪めメルカバーが吠えた。四つの車輪が紫電を溢し回り始める。それに応え、車輪の軸を構成する雷霆が轟き瞬く。
上段からの唐竹。それこそ落雷の様なそれに、私は両腕を突き出し鍔ぜり合う。
せっかくの四属性は余波で霧散し、剣は一刻一刻と削れていく。
――予定通りに。
<<2B! 強制点火ぁああ!>>
霧散した四属性を構築していたMAG。それを機体機能ではなく、自己技能で掻き集め脚部に圧着。
同時に2Bが臨界を越えさせたMAG製波装置が予期せぬ機能を発揮する。
蹴り上げた足から破滅が吹き出す。極小規模の崩壊がメルカバーと私を飲み込む。
<<ぅおぉぉおお?!?!>>
破裂した大気に飲み込まれ、空にもみくちゃにされながら弾け飛ばされた。
平衡感覚の消失。MAG感知による世界把握の白紙化。
それを、機体の自動制御に任せて強引に建て直す。着地。
<<――え?>>
腰を落とし踏ん張ろうとして転倒。事態を把握する前に大地を転がっていく。
どれほど転がっただろうか。機体の観測機器も私の三半規管もぐちゃぐちゃに世界が掻き回されて見える。
<<右脚部消失。外装破損多数。OBも骨組みから歪んでいるぞ。>>
<<――っぅ。機体全体を緊急回復。足も取り繕います。>>
泥を被り土に塗れた機体をどうにか見渡すと酷い有様だ。
足は右足がさっぱり消え失せ、機体表面もぼこぼこに凹んでいるかフレームが露出している。背中のOBも爆発の衝撃に反り返って背中に向かってUの字になっている。
機体の自己修復力では補いきれない破損に、私はあきらめてMAGを放出。機体自体をMAG結晶が覆いつくし、次の瞬間には新品のような外見のホワイトグリントが表出する。
<<9S、足は動くか?>>
<<霊体の損傷もありますがどうにか使えます。>>
うつ伏せの機体を機体を起こすのに使ってみるが、反応も感覚も鈍い。自傷を覚悟していた故に備えていてこれだ。まともに喰らったメルカバーはもう少し大きな傷を受けているだろう。
――今日はこれで終いだ。
<<2B、撤退します。マグネタイトの貯蓄もだいぶ減りましたしね。>>
<<了解した。メルカバーに見つかる前に帰ろう。>>
メルカバーのダメージを確認するまでも無く撤退を指示。幸いAAの影響で一帯のMAG感知は死んでいる。気づかれる前にさっさと逃げ帰るべきだろう。
周囲を警戒しつつ
私は、早々にこの場を立ち去るのであった。
これは、何度も何度も戦うことになる【メルカバー】との六度目の逢瀬の一幕である。
一度くらい真面目に戦闘シーン書こうと思ったがやっぱり難しい……と思いつつ投下です。
暫くは戦闘描写はないんじゃないかなぁ(白目
今回も蹴りを入れてますが、主人公が足癖悪いのは割と設定通りだったりw
最後、さっさと撤退してるのは『メルカバーのMAG消費』という目的は達成できているため。
強いし倒しきれないので対処療法的にMAGを使わせるのが目的なのでダメージは二の次でした。
取り巻き天使の撃墜は追加報酬枠…?
電脳異界系の技術はどこまで解放されているか分からないので完全独自設定です。
今回出てきた技術は『電脳空間への格納と展開』『電脳空間へのMAG蓄積』の二つしかできない特化型です。内部も滞在するための法則とかを適用出来ないので『異界』ではなくただの格納空間です。
傍目にはオカルトの召喚召還系にしか見えない技術になります。
……実のところDDSによるデータ化技術の応用とデータ保存ストレージぐらいの技術何でどこまで電脳異界系の技術がいるかは作者にも不明ですw
技術進歩の系統樹が理解しきれない……!(苦笑
あと、この小説どれもこれも破壊力高すぎでは?となるかもしれませんが、ニャルが独自ルール付与するのに星(異界)を犠牲にしルールを作っているので概念的にそれを壊せる威力を考えたらこうなってます。
一定LVを超えると無法になるんじゃないでしょうか…。
Q.なんで急にロボットばっかり出るようになったの?
A.三位一体による霊格の上昇とステータス補強もだが、一番は格上相手の思考速度に追従するため。
術式構築なんかに使ってた分も一切を思考速度にあてて無理やり思考速度を上げている。
銃器を使うようになってるのも術式構築する余力が無いため。
ニャルとの決戦の時にやる夫さんがどうにかサポートできるのはLVのおかげであったが、その逆でLVが足りてないのを無理やり思考を高速化して【メルカバー】に追従している。
ゲーム的には素のままだとメルカバーが『1ターン5回行動』なのが、主人公が魔法使用不可になる代わりに『1ターン1回行動』になって感じです。
Q.メルカバーが何でこんなにLV高いの?
A.天使召喚プログラムで召喚した時、『地脈のMAG』+『核による被害者(人口密集地帯)を生贄』+『終末が訪れる瞬間の召喚』と強力な悪魔が召喚される場が出来ていたから。(終末補正は『黙示録の四騎士』を呼び出す天使補正です)
尤も強大な悪魔過ぎて存在するだけでも消耗が激しいので、クトゥルフではないですが休眠と活動を繰り返しています。ちなみ、休眠中のMAG回復量は少ないとしています。
予定ではメタトロンメタトロン言って襲ってくるはずでしたが、最新話の質問スレを拝見したのでちょっと修正しました。
この作品では大天使への四文字の育児放棄宣言の後は、【メルカバー】は言葉を貰えない方の大天使だとしています。
……しっかし、どうするかなぁ。終末後の主人公がどう動くか考えないと(汗