+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー 作:ワンホットミニット
─────???
一面見渡す限り、金色の建物が立ち並び、エメラルド色の空が広がっている。
その街中には一際高く聳え立つ塔があり、頂上付近では常時巨大な光が発光され続けている。
明らかに地球にあるどの街とも異なる環境ではあるが、それも当然だ。
この世界は、"ザ・キングダム"という、別の世界にあるとある惑星である。
その街中で、その塔に次いで大きい建物、"アブソリュート宮殿"からその街並みを見下ろしている金色の巨人がいた。
金色の巨人はどこかウルトラマンに似たようなビジュアルをしているが、胸の中心部には紋章のような赤い彫刻が刻まれている。
口元もよく見てみると口角が下がっており、ウルトラマンが微笑んでいるとするならば、この巨人はムッとしているように見えるため、その顔からも、ウルトラマンとは全く異なる雰囲気を醸し出している。
「タルタロス様!」
そんな中、以前ウルトラマンが月で相手をしたアブソリューティアンと同じ姿をした兵士が走って駆け寄ってきた。
タルタロスと呼ばれた金色の巨人─────アブソリュートタルタロスは、何だ?と、冷静に、慌ててやって来た兵士に向けて声を掛ける。
「い、以前ザ・ワンを降下させた地球に・・・"ノア"が現れました!」
「何だと!?」
ノア、そう確かに兵士は告げた。
念の為、間違いないのだなと質問を投げかけると、間違いありません!とその兵士は答えた。
事実、定点観測をしていた兵士からの定期連絡がないことに疑問を感じた兵士が様子を見にその世界を訪れたところ、とある惑星で倒れており、慌てて連れて帰り詳細を聞いたところ、ノアが襲ってきたため負傷したのだという。
その報告を受けながら、タルタロスは以前、自身が起こしたある"出来事"を思い出していた。
─────遡ること、少し前
「!?ナ、ナンダ、ココハドコダ!?」
たった今まで、銀色の巨人と戦っていて、巨人のエネルギーが切れた隙を見て逃げていたところ、突如として目の前に現れた金色の穴に飲み込まれると、次の瞬間には見渡す限り金色の空間におり、はっきり言って、異次元としか言えない空間に居ることに"ザ・ワン"は一人驚いていた。
現状を全く把握出来ないザ・ワンの前に、アブソリュートタルタロスはゆっくりと現れると、こう告げた。
「─────お前の運命を変えたくはないか?」
現在、多くのウルトラマンによって様々な世界や過去から連れてきた兵士や兵器が悉く倒されている。
補充さえすればいいのだが、奴らは更に力をつけている。一度倒された兵器を持ってきても返り討ちに遭うことは目に見えている。
そのため、アブソリューティアンの戦力の補充のために目を付けたのが・・・
─────文明ハンターと呼ばれ、ウルトラマンでも対応出来る者がわずかという最悪の生命体、"スペースビースト"だった。
とはいえ、スペースビーストは攻撃と捕食しか考えていることがない。おまけに、奴らとは意思疎通を図ることも出来ない。
そのため、完全に服従させるのはアブソリューティアンでも難しかった。
そこで目を付けたのが、人間を取り込んだことである程度の知恵を付けたために、対話によるコミュニケーションが出来るようになった、始まりのスペースビーストと呼ばれる存在、"ビースト・ザ・ワン"だった。
そのザ・ワンが、ノアが弱体化していた姿と戦い、ダメージを受けて逃亡してきたところを捕えると、これから先、ザ・ワンの身に起こる未来の出来事を話し、ザ・ワンを仲間に迎え入れた。
仲間に率いれてすぐ、ザ・キングダムに連れてきて、アブソリューティアンの力の源である"アブソリュート粒子"をザ・ワンに与えようとしたのだが・・・ここで予想外の出来事が起きた。
自分達のエネルギー源であるカスケード光線。正確に言うと、その光線の中に含まれているアブソリュート粒子がよりにもよって、そのザ・ワンが取り込んだ人間の要素がそれに耐えられず、アブソリュート粒子を取り込むと逆にダメージを負ってしまうという結果となった。
つまり、ザ・ワンはアブソリュート粒子を体に取り込むことが出来なかったため、アブソリュート粒子を与えられないという時点で、はっきり言えば、自分達の戦力になるような存在ではなかったため、その場で殺しても構わなかった。
だが、今後の兵器として使える可能性も考慮し、せっかくならば文明ハンターと呼ばれるスペースビーストの力を見てみたいと考え、その場では殺さず泳がせてみることにした。
そこで、ザ・ワンたっての希望でもあった、自身にとって最大の障害であるウルトラマンがいない世界で、殺しを楽しみたいという願いを叶えるため、ウルトラマンのいないどこか別の世界へと連れて行くことにした。
そんな中、"他の世界で起きた、時空の歪みが発生した事件"が原因で、自身の細胞から生まれた存在、スペースビーストがわずかに別の世界に飛ばされ、そして現在も生きている世界の地球が観測出来た。
ここでなら文明ハンターとも呼べるスペースビーストの力をより一層見れると期待し、かつ、この地球をスペースビーストの繫殖場にでもして、それらをウルトラマンにぶつければ、奴等にとっても最悪の敵になるだろうと、タルタロスは目論んだ。
そのことについても説明すると一層喜び、自分も行けばこの世界は間違いなくビーストの楽園になるとザ・ワンは確信したため、その世界に降ろしたのだ。
自身もまた、ウルトラマンもいなければ巨大なエネルギーもない世界で自分達の力を使うことは無用と捉え、ザ・ワンをその世界に送り届けてからは、光の国への対策や、いなくなった"ベリアルとトレギアの並行同位体の捜索"、兵器の補充などを行っていた。
そのため、その世界は別のアブソリューティアンの兵士に定期観測をさせる程度にしていた。
しかし、ノアがその世界に降臨したという。それだけでなく、すでに数多くのビーストがノアに倒されたとのことだ。
加えて、ザ・ワンがノア、襲われた兵士の話からすると別の姿だったとのことだが、おそらく、"惑星バベルでティターンを襲った時と、ノアになる前に見せていたあの姿"だろう。
その状態で襲われ、かなりのダメージを負ったとのことだ。
加えて、元々偵察をさせていた兵士もまた、ダメージを受けただけでなく、そのノアの考えを植え付けられ、光の国とアブソリューティアンは分かり合える、と口にしたそうだ。
そのため、その兵士については独断専行の対応をしたことなど含め、処分することも内心、すでに決定した。
まさかあの後、どこかに消えたかと思ったらその世界に来ていたとは・・・タルタロスは口元に手を当て、一人静かに考え続ける。
ただ、惑星バベルでの一件があって以降、ノアは我々に手出しをしない。それでいて、光の国にも加担をしないという、中立の立場を取ろうとしているようだった。
それに何よりも、奴は我々と光の国は分かり合える・・・という、非常に迷惑な考え方を持ち出してきた。
事実、その考えを受けたティターンは、未だに本調子とは言えないようであった。
つまり、奴がいる限り、我々アブソリューティアンにとって、考え方に迷いをもたらす非常に迷惑な存在であり、かつ、改造したあのバット星人の置き土産であるウルトロイドゼロをあっさりと倒したそのパワーも間近で見ている。
今はただでさえ戦力が不足している中で戦力も、そして戦意も削がれるというのは避けたい。
そのため、現状としてノアは脅威なのだが、向こうから手を出してこない限り、我々もまた、奴には直接手を出さない。という方向性を以前、アブソリューティアン全体としても取り決め、目の前の最大の敵、光の国のウルトラマン達を倒すことだけに尽力しようと決めたのだ。
しかし、それとは別に─────一個人として、ノアには恨みはある。
「・・・"デビルスプリンター"はまだあるか?」
デビルスプリンター、それを聞いて兵士は早速目の前に出現させたディスプレイを操作し、不思議な形の鉱石を保管している保管庫の映像をタルタロスの前に表示さる。
「ノア・・・ティターンだけでなく、他の兵にも余計な感情を入れたこと、我々の実験の邪魔をしていること、非常に不愉快だ。ささやかだが・・・腹いせをさせてもらおうか。」
誰も知らないところで、ある悪意が動き出そうとしていた─────