+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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No pain, no gain【2/2】

「ハァ・・・疲れた・・・」

 

更衣室で着替えていると、どっと今日一日の疲れがやってきた。

すでに皆さん着替えを済ませたため、俺は一番最後に着替えを行っていた。まぁ、ここは女性ばかりだから、そりゃ順番的にはそうなるだろう。

 

あの後、なんだかんだありながらも八神さんも海藤さんも楽しそうにしてくれていた。

春川さんと乙女さんもあの後ミカさんと会話をして、チラリと下から見た程度だったが、思ったような情報が出なかったのか少し残念そうな顔をされていた。

それがおそらく、ビースト関連、そして・・・彼のことだろうと内心では思っていたが、もちろん口には出さず、業務をテキパキとこなしていた。

 

その話し合いが終わり、お会計の際も俺が対応させてもらうと・・・

 

「またな真田。次またお前がやる時にでも来てやるよ。」

 

お会計時に春川さんがそう言ってくださり、今日だけかもしれませんが・・・とは言えなかったが、相手がリコリスとはいえ、そのように評価してくれたのは嬉しかった。

後、春川さんと話していた中で、俺は初めてそう感じたのだが、女性でありながらもイケメン・かっこいい人・・・というのは、こういう人のことを指すのだろうと、ふと思った。

 

でもその後すぐに千束から二度と来んなよー!と言われており、てめぇがいるときに来るかよバーカ!とまた喧嘩しながら店を出ていったから、そんな余韻は完全に吹き飛んだのだが・・・

 

 

ただ、わからないことが増えた、というのもまた、事実だった。

 

 

八神さんもグル、なのはわかった。ただ、春川さん達もグルかと言われたら、そうではないと思う。

そもそも、ここの店員でもなければ、千束や八神さんのことを嫌っているように見えたため、おそらく、そこまでの深い繋がりはないはずだ。

だからこそ、ここと、八神さんのところだけが繋がっているだけで、春川さん達は、情報収集か何かでたまたま訪れたのだろう。

 

それ以前に、もしリコリス・DAから八神さんが受けた依頼なら、春川さんが知らないというのはおかしい。だとしたら、俺を探すという依頼は本当に、ここから受けた、ということなのだろう。

つまり、ここは自分達の正体を明かして、八神さんと接している、ということになる。

 

だからこそ・・・ここと八神さん達の目的がまるで見えてこない。

敵対するわけでもないのならば、一体、何がしたいのか・・・俺が尻尾を見せるのを待っているから、表面上仲良くしているのか、それとも・・・

 

ここでずっと考えていてもその答えは出てこず、加えて、長時間居続けるのもそれはそれで怪しまれるだろう。なので、この問題はこの店を出てから考えようと決め、身支度を整える。

 

とはいえ、仕事自体は大変だったけれど、妙に楽しかったこともまた、事実だ。

更衣室から出て店内に戻ると、改めて俺は全員に挨拶をする。

 

「光輝君、今日は本当にありがとう。おかげで助かったよ。」

 

ミカさんから感謝の言葉を言われ、気にしないでくださいと返し、こちらも今日一日の感謝を込めて頭を下げる。

頭を上げると同時に、ミカさんは目の前に一つの封筒を差し出してくれた。

 

「こちら、今日のバイト代だ。」

「あ、いえいえ!いいですよ!別にお金目的でやってたわけじゃないですし!」

「いや、これに関しては当たり前の労働の対価だ。持っていってくれたまえ。」

「ですけど・・・」

「おやぁ~?貰わないのならばこの千束さんが貰ってあげま「ありがとうございます大切に使わせていただきます。」

「おい」

 

千束が代わりに貰おうとした瞬間、素早くミカさんの元へ行き、賞状を受け取るかのように両手で受け取った。

段々とだが、警戒心なく千束と話せるようになってきており、少しだけではあるが・・・友達・・・と思えそうな気がしていた。もちろん、油断しているつもりはないが。

 

「いやー、ぜひウチでこれからも働いてほしいわー!もう千束からチェンジしたいくらい!」

「そうだな。うるさくないし真面目だしボク達にも丁寧だし、赤字待ったなしのメニューほいほい出すようなことなんて絶対しないだろうしな。」

「おいそこ、余計なこと言ってんじゃねぇぞ?」

 

顔はニコニコしているが、100%怒りの感情しかない話し方をする千束が怖い・・・苦笑いを浮かべながら、これはもう巻き込まれないように、そそくさと去った方がいいだろうと判断し、それじゃ、今日はありがとうございました。と挨拶をし、お店から出ようとする。

 

「光輝、まだ時間ある?」

 

そんな中、突然千束から声をかけられる。

時間的にも、乗るための電車は動いているため、帰るのは問題ないが・・・

 

「まだ大丈夫だけど・・・どうかしたの?」

「もしよかったら、駅まで送っていくから、散歩しない?」

 

千束の提案はまさかだったが、それと同時に、一瞬で緊張感が襲ってきた。

ひょっとして、まさかここで聞くのか・・・?そう当たりをつけると、やんわりと断ろう、そうしよう。と心の中で決めた。

 

「あー、いや、いいよ。そっちだって疲れてるだろうし早く休んだ方が・・・」

「そんなつれないこと言わないのー!さぁ行くよ!たきなも一緒に!」

 

ちょっと!と言う間もなく千束は俺とたきなの手を掴み、んじゃお疲れー!と、勢い良くドアを閉めた─────

 

 

 

「・・・青春だねぇ。」

「リア充爆発しろ。」

 

一方、残された3人は、その様子を見ながら軽口を叩いていた。

そんな中、クルミはミズキに声を掛けると、先程までとは表情を変え、真面目な顔付きに変わる。

 

「発信機、どこにつけた?」

「リュックの中。開けないような所にね。ちょうどあの子達と話してるタイミングでサッと行ってきて入れたわよ・・・あんまいい気分じゃないけど。」

「ご苦労。こっちも手の空いてる時にあいつのスマホをハッキングした。もしその発信機をどっかで落とされたとしても、場所は特定出来る。まぁ、その証拠さえ掴めれば終わりにするし、端末情報も削除もするけどな・・・もちろん、中身は見ないさ。」

「八神達にも連絡を取ってみたが、やはり感じたことは変わらなかったそうだ。彼は、普通の人間だと。」

 

八神と海藤がここに来た理由も、もちろん嘘だ。

本当は、再度顔と顔を突き合わせてみて、感じたことに変化はないかを確かめるため。加えて、八神達も仲良くなっておけば、もしどちらかが失敗した時にもリカバーが出来る存在を作るために、八神探偵事務所としても、光輝と仲良くなっておこうと話し合って決め、それで今日店に来させたのだ。

 

ただ、今日ヘルプを頼んだ理由は、本物だった。

事実、喫茶リコリコとしても困っていた中で、彼は期待以上の働きをしてくれ、100点どころか120点の働きを見せてくれたため、店員としては全員満点評価だった。

 

そんな中、クルミは2人に話し掛け、どうしても聞いてみたかったことを聞いてみた。それは、大人同士だからこそ。

 

「あいつ、どう思う・・・?ウルトラマンというより、人としてどう思ってる?」

 

クルミも一緒に仕事をしながら感じていたことだが、とにかく光輝は人が良いということだった。丁寧で、優しそうに見えた。あれこそ、人畜無害と言える。

だから、あいつがウルトラマンでも問題はないのかもしれない。むしろ、頼りになる存在になってくれるかもしれない・・・のだが、現時点では、そうは思えない。

 

今の彼は・・・"一つも心を見せている感じがない。"

上辺だけはいいが、心の奥底までは全く見せていない。丁寧に取り繕いながらも、こちらに心を許していない。光輝と今日一日一緒にいて、クルミが感じていたことはこうだった。

 

一方、その質問に対して、口元に手を当て考えていたミカは、少しした後口を開いた。

 

「確かに、彼はいい子だとは思う。私に対して一瞬気を許していた場面もあったが・・・心の奥底では今も警戒を続けている・・・私はそう感じた。」

「同~感。いい子なんだけどさ、いい子どまりっていうか、絶対に奥には入らせてくれないような感じ・・・」

「おい男として聞いてるわけじゃないぞ。」

「んなことわかってるわよ!いくらあたしだってあんな10も歳離れてるような未成年はターゲットじゃないわよ!」

 

彼が人としててどうか、について聞いていたのだが、ミズキの話を聞くとどうにも、男としてどうか・相手としてどうかという論点のように聞こえたため、そこをツッコむとミズキは日本酒の瓶を片手に持ちクルミ目掛けて怒り出した。

やれやれ・・・と思っていると、ミカはただ、と言った。

 

「ウルトラマンだとしたら、そんなこと、誰にも言えないだろうさ・・・だからこそ、誰も彼もを疑っているはずだ。私達なら、尚のこと。」

「・・・でしょうね。あの子、心の壁、めっちゃ分厚そうだもん。ちょっとやそっとじゃ壊れないでしょ。」

「だからこそ、だろ。」

 

そんな2人の心配をよそに、クルミはニヤリとしながら声を掛けた。

 

 

「後は、若い2人に任せときゃいいさ。あの2人なら、光輝の心の壁、壊してくれるかもしれないしな。なんかあったら、ボク達がサポートしてやればいいさ。」

 

 

 

一方、光輝達が店を出る少し前

日本─────どこかの山中

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・オノレ、ウルトラマン!コノ世界デモ!」

 

以前千束とたきなと対峙し、そしてあの時ウルトラマンに完膚なきまでに叩きのめされたビースト・ワン。正式名称、"ビースト・ザ・ワン"に変身した男は、どことも知れない山の中で息を切らしながら座り込んでいた。

 

以前、自分を連れ去った金色の巨人、アブソリュートタルタロスからその後に起こる、未来の出来事を教えられ、奴・・・いやウルトラマンに自分が負けること。そしてウルトラマンに倒された後、地球に広がった自身の細胞がきっかけで、スペースビーストという種族が生まれたことなど、その世界で起こる未来の出来事を聞いた。

 

そして、その未来の情報を踏まえた上で、アブソリューティアンの誘いに乗り、仲間になると、奴らのエネルギーとなっている粒子を体に取り込もうとなった時に、誤算が起きた。

自分が取り込んだ人間の要素がその粒子には耐えられず、逆に自身がダメージを負ってしまうという結果になったのだ。

 

それを見ていたタルタロスから咎められると思っていたのだが、少しすると、ビーストの力を見せてみろと言われ、ならばと、達ての願いで、ウルトラマンのいない地球に行くことを望んだ。

そんな降りる場所を探してもらっている中で、自分の細胞から生まれたスペースビーストも、他の世界、というところで起きた事件が影響し、今いるこの世界にも何体か存在していることも伝えられた。そのため、誰の邪魔も入らずに人間の殺戮を楽しめ、最終的にはこの世界の地球をビーストの星に出来る・・・はずだった。

 

しかし、どこの組織かわからないが、自分に歯向かってきた女子高生がおり、途中かなり苦戦をしてしまった。それらを後一歩のところで殺せるとなった時に、この世界にいないはずの、ウルトラマンが現れた。

おまけに、そのウルトラマンは、まさにあの時、自分が戦っていたウルトラマンであり、かつ、姿も変わっていただけでなく、あの時よりもはるかに強くなっており、手も足も出せず撤退するだけでやっとであり、未だに傷は癒えてはおらず、ようやく歩けるまでに回復した程度である。

 

そして、更にあのウルトラマンがザ・ワンに及ぼした影響がある。

 

ザ・ワンは様々な動物を取り込むことで強くなれるのだが、以前直撃を受けた光線が体全体にダメージを及ぼし、その機能が正常に働くなっていたのだ。

なので、時間が経っても一向に強くなるどころか、回復することすら出来なかったのだ。

 

おまけに、自分の細胞から生まれたスペースビーストを捕食することで少しでも早く回復を、と目論んでいたのだが、先行してウルトラマンが次々と先に倒していくため、あの戦闘以降、ビーストにも会えていなかった。

 

ハッキリ言って、このままだと自分の命は尽きるかもしれない。

今の状態なら、ウルトラマンにあっという間にやられるのも目に見えている。

 

「オノレ・・・オノレェェ!!」

 

自身の計画を全て潰したあのウルトラマンへの恨みが口から次々と零れていく。

自分はここでも奴に勝てないのか・・・!という想いが頭を駆け巡り、ウルトラマンへの憎しみが増していく。

 

 

 

「苦戦しているようだな、ザ・ワン。」

 

 

 

そんな中、突然目の前に現れた金色の空間、ナラクから、ザ・ワンをこの世界の地球に連れてきた張本人であるアブソリューティアン、アブソリュートタルタロスが現れた。

 

「タルタロス!何故ココニ!?」

「何、野暮用というやつさ。それよりも、随分とボロボロだな?ノアに手痛くやられたのか?始まりのビーストともあろうものが。」

 

まるで挑発するかのように言葉を並べ立てていくタルタロスに怒り、瞬時に腕だけをザ・ワンの姿に変化させ、タルタロスに殴りかかろうとする。

だが、それをすでに見越していたのか、突如ザ・ワンの体の周りに、見えないエネルギーで出来た拘束具のようなものが体に巻き付くと、一瞬で体を拘束された。

 

動けないことを確認した後、タルタロスは右の手の平を上に向けると、そこから何かの形を模した、赤く輝く鉱石が現れた。

 

「何ダソレハ・・・?」

「デビルスプリンター。"かつて、全宇宙を恐怖で包み込んだ最悪の存在、ウルトラマンベリアルの細胞から生まれた物質だ。これを取り込んだ怪獣は凶暴化し、宇宙各地に混乱を巻き起こす。"」

「何ヲ・・・!マサカ!?」

 

何かを察したザ・ワンだったが、一歩遅かった。

 

 

「ノアに勝ちたいのだろう?だったら、私からのささやかなプレゼントを受け取ってくれたまえ。まぁ、私の腹いせも込みだがな。」

 

 

タルタロスはザ・ワンにデビルスプリンターを押し付けると、その体にするりとデビルスプリンターが入り込んだ。

体に異物が入った影響で、ザ・ワンは大声で呻き声を上げ続け、地面をのたうち回る。その様子を、タルタロスはまるで何事もなかったかのように眺め続けている。

 

「さて、ビースト細胞とベリアル因子がどう共鳴するか、見せてもらうぞ、ザ・ワン?」

 

それだけ言い残すと、タルタロスは両腕を曲げて目の前にかざすと、先程現れた時に使用した金色の空間、ナラクを再び出現させると、そこを通った瞬間にナラクと共に姿を消した。

 

残されたのは、拘束が取れたものの、デビルスプリンターの影響で未だに地面をのたうち回りながら、声にならない絶叫を上げ続けるザ・ワンだけだった─────

 

 

 

タルタロスからザ・ワンへデビルスプリンターを取り込ませる少し前

東京、錦糸町─────

 

「いやあっっつ!もう熱帯夜じゃねぇか!」

 

千束が俺とたきなを連れ出して駅まで送る、と称した散歩が始まったのだが、夜になっても昼間の暑さは全然抜けておらず、まだ真夏でもないのに熱帯夜のような暑さだった。その暑さに千束は思わず大声で天気に対して文句を言っていた。

まぁ、気持ちはわからなくはないけど。

 

「確かにこりゃ暑いね・・・田舎もんからしたら中々キツいよ・・・おまけに、星も見えない位空も明るいし。」

 

そう言って俺は空を見上げた。

今日は曇りということもあり、この辺りの建物の明かりなどが反射し、夜でも空が全然明るいと感じた。

夜になれば真っ暗な空が広がる自分の家とはまるで大違いだと感じ、こういった所は田舎の方がやっぱりいいな、と心の中で夜景は田舎に軍配が上がった。

 

「そういえば、光輝の家は千葉の方って言ってましたよね?ここからどのくらいなんですか?」

「電車だと1時間くらいだけど、そっから家まで結構掛かるから、大抵車で送り迎えか、原付で最寄り駅まで行ったりするから、トータルで見たら片道1時間半くらいだね・・・」

 

ここまでの道中を説明すると、2人もなるほど・・・と感心しつつ、同時にそんな遠い所からわざわざ来てくれたことに申し訳なさを感じていたようだった。

 

「ごめんなさい、そんな遠いところからわざわざ・・・」

「気にしないでよ。大変だったけど、皆と働いてて楽しかったし。それに、2人とも別の仕事もやっててここもやってるんだから、その方がはるかに偉いよ。」

 

別の仕事のことはわかっているが、それでも2人ともあそこで看板娘として頑張っているのだから、そこは素直に尊敬している。

そんな中、千束からちょっと休憩してかない?と言われたため、以前俺が休んだ時に使った公園で少し休むことになった。その公園の近くにあった自動販売機でそれぞれジュースを買い、プルタブを開けると、プシュっといい音が鳴る。

 

「それじゃ、おつかれー!かんぱーい!」

 

乾杯、と千束の掛け声に合わせて、こちらも乾杯の言葉を重ねる。

 

「ぷはぁーっ!このために生きてんなー!」

「千束、ジジくさいですよ。」

 

炭酸飲料をグッと勢いよく飲んだ千束の言葉にたきながツッコミを入れる。それに対していいんだよたきなーと千束が更に言葉を重ねる。TALKでも何度か見ていたが、少しだけ、見慣れた光景になりつつあるこの2人のやり取り。

そんな2人のやり取りを見ていると可笑しく、出来れば、このままずっと、こんな時間が続けばいいな・・・と、心の中で小さく願っていた。

 

 

 

そして、少しだけ、ほんの少しだけ思っていた。

 

 

 

この2人なら、リコリスだけど、もし言ったとしても・・・俺を

 

 

 

「光輝さ、赤い流れ星の噂、どう思った?」

 

そんなことを考えている途中で、千束が今日話題に上がった赤い流れ星の噂話を振ってきた。

いきなり振られて驚きつつも、内心ではどこかでその話題は必ず触れるだろう、と思っていたので、知らないようなフリで答える。

 

「うーん・・・なんだろうね?誰かどっかの盛り上がりたい、バズりたいアホな人が流した噂なんじゃない?」

 

そんな風に答えると、そうだよね〜と千束は返したが、気持ち納得していないようにも見えた。

 

「もしかしたらさ、宇宙人なのかもね!?宇宙人侵略!地球最後の日!みたいなさ!」

 

そんなことないでしょ、と笑いながら返すも、内心では先程の楽しさはすっかりなくなり、緊張感が心を埋めつくしていた。

 

「光輝」

 

そんなことを考えていると、たきなから声を掛けられてそちらの方を向くと、真剣な目でこちらを見つめていた。

 

「・・・何か、知ってるんですか?その噂について。」

「えっ・・・?」

 

そう言うたきなの顔は真剣そのものであり、何か嘘を言えばすぐに見抜かれるようだった。

だからこそ、冷静に、落ち着け・・・と心で言い聞かせながら、変に怪しまれないように取り繕うとする。

 

「えっと・・・どうしたの?」

「あの時、赤い流れ星の噂をしていた時に、作業の手が止まってましたよね?その後、すぐにお手洗いにも行って、多分顔も洗ってましたよね。髪に水滴が付いてましたし。」

「たきな、ちょっと・・・」

 

まさかそこまで見られているとは思わなかった。心臓が大きく、バクバクと鳴っているのが聞こえるほどに、内心では焦っていた。

 

「え?そ、そう?暑かったからだけだよ・・・それに「何か・・・知ってるんですか?」

 

いつの間にかかなり近付いてきていたたきなの真剣な顔と食い気味に聞かれた質問で、瞬時に先程までの考え方を改めた。

 

 

この2人には・・・やっぱり言えない。だから、隠し通すしかない。どうあっても。

 

 

「いやいや、何も知らないよ!それに・・・」

 

 

-ドクン、ドクン、ドクン-

 

 

無理に言葉を繋げようと思っていた中で突如、俺にしか聞こえないエボルトラスターの鼓動が聞こえてきた。

それも、今までにない程強く響いてくるその鼓動に驚き、思わず言葉が出なくなる。

 

「光輝・・・?」

「どうしたの・・・なんかあったの?」

 

俺の変化に気付いたのか、たきなだけでなく、千束まで近寄ってきて声を掛けてくるが、正直全く耳に入ってこなかった。

 

何故なら、この反応はあの日以降全く感じなかった存在であり、加えて、何かもう一つ、大きな力もすぐ傍にいるようだった。

 

「(・・・ザ・ワン!?でも、なんだこの反応!?それに、これは・・・アブソリューティアン!?でも、この前のヤツより、強い・・・!?)」

 

以前戦ったザ・ワンの反応。なのだが、ザ・ワンから感じる、ビーストとは違う、けれど明らかにヤバい感覚。加えて、ザ・ワンの隣にもう一つ発生している、先日遭遇したアブソリューティアンと似たような感覚。だが、前戦ったものよりも明らかに強大なその力に戸惑い、一刻も早くその場に行かなければならないと、俺の直感が訴えかけてくる。そのため、急いでこの場を離れようと決心した。

 

「・・・あっ、ごめん!ちょっとやんなきゃいけないこと思い出したから先帰るね!それじゃまたね!」

 

2人に何も質問をさせないように慌てて缶のジュースを飲み干すと、適当な嘘をついてこの場を離れ、急いでどこか誰もいないところを探そうと、慌ててリュックを背負い後ろを振り向いた瞬間、2人から両方の腕を掴まれた。

 

「・・・あの、2人とも、ちょっと俺急いでて・・・」

 

 

「その用事って・・・そんなに大事なことなの?」

 

 

これまでに聞いたことがないような、静かに、そしてそれでいて全く動けなくなってしまうような、プレッシャーのある話し方をしてきた千束に、一瞬足がすくんだ。

 

「ねぇ光輝、私達さ、いつだって光輝の味方だよ。だからさ、なんか助けてほしいことがあったら話してよ。今日光輝がしてくれたみたいに、私達も力になるから。さっきの顔、凄く不安そうだったから・・・」

 

ただ、それも一瞬だった。

さっきのプレッシャーのある話し方から打って変わって、いつもの元気な様子と違い、本当に俺を心配してくれているかのように、優しく話しかけてくれた。

 

「光輝・・・さっきはごめんなさい。嫌なこと聞いて気を悪くさせてしまって・・・」

「・・・いや、気にしないでよ。気を悪くした訳じゃないから。ただ、急ぎの用を思い出しただけだから・・・」

「それ、私達で良かったら、手伝いますよ・・・私達には、言えないことなんですか・・・?」

 

その空気を繋ぐかのように、たきなも声を掛けてきた。先程のことを謝罪してくれたが、こちらもそんなことはもう気にしていない。

ただ、たきなもまた、俺を本当に心配してくれているのが、声を聞くだけでわかっている。

 

 

なのだが、その2人の言葉で、俺は確信した。

 

 

 

 

やっぱり、この2人は、俺を、俺のことを─────知ってる。

 

 

 

 

こうして本当に俺のことを心配してくれる2人のことを信じたい。

でも、彼女達はリコリスだ。だから、絶対に話すわけにはいかない。

そのジレンマで、心がどんどん辛くなってくる。

 

それに、俺をもし捕まえないとしても、巻き込んだら・・・また、この2人が傷つくかもしれない。

知り合ってしまったからこそ、もしそのせいでまた怪我をさせてしまったら、あの時の何倍も辛くなるのが目に見えている。その方が、はるかに嫌だ。

 

だったら・・・そう。もう、ここで・・・

 

そう思い、俺は2人の手を無理矢理振りほどこうとするが、リコリスだからか2人の握力は相当強く、もはや握られている部分が痛くなってくる。

 

「ごめん2人とも!俺ちょっと急いでて!行かなきゃいけないところあるんだけど!」

「だったら話してよ!なんであんな深刻そうな顔したの!?あんな顔見て心配しないわけないじゃん!」

「それは・・・!」

 

続きの言葉を言おうとするが、その先を言えず、言葉に詰まってしまう。

俺ももう、どんな嘘を言っても2人には通用しないとわかっていた。ただ、仮にもこんな場所で2人が銃を抜けるわけがないこともわかっている。

だから、言葉で解決出来るかもしれないというずる賢さも生まれてくるのだが、思わず振り返って見てしまった2人の顔を見たら、そんな考えは隅に追いやられた。

 

「光輝!私達は光輝の味方ですから!だから・・・」

 

 

 

「だったらこの手を離してくれよ!!俺は行かなきゃいけないっつってんだろ!!お前らと話してる場合じゃねぇんだよほっといてくれ!!」

 

 

 

急いでいる焦りからか感情的になってしまい、思わず声を荒らげ、口から強い言葉が零れてしまった。それに気付き冷静になるが、目の前の2人も驚いたのか、握る力が弱まり、するりと腕が抜けた。

押し黙る2人の顔を見て何も言えなくなってしまうが、そんな空気の中で、俺は直感で悟った。

 

 

これが─────この2人と話せる最後なんだ、と。

 

 

・・・でも、これでいいんだ。

向こうがそういうアクションをしてきた。

ならばもう、ただの高校生のフリなんて、もうやめだ。

 

 

─────この2人と、あの店との関係も、今ここで、全部終わらせる。

 

 

だから、たかが数日程度知り合ったやつのことなんて忘れてほしいし、これ以上は、関わらないでほしい。

とはいえ、そう簡単には出来ないだろう。

 

だったら、とことんまで俺が嫌われればいい。それで終わりにしよう。

顔も見たくないほど嫌われれば、こんなやつに二度と関わりたくないと自然に思うはずだ。

リコリスとはいえ、両親にまで手を出そうとすることはないはずだが・・・もしそうしてきたその時には、そうするまでだ。

 

その後にどこかで会って、そういう命の奪い合いになったとしてもいいさ。向こうから何発だって撃たれようが構わない・・・それで死んでも、別にいい。

その方が、お互いに良いんだ。

 

 

そうだよ。最初から、住んでいる場所が違ったんだ。

 

やっぱり、リコリスと関係なんて、持つべきじゃなかった・・・

 

 

友達になれそうだと思った俺が、バカだった・・・

 

 

「・・・もう、わかってるんでしょ・・・俺のことをさ。」

「それは・・・」

「光輝・・・私達は「終わりだよ。」

 

千束が何か言おうとしたが、それを言わせず、告げた。

 

 

「話すことなんて何もない。もう、お前らとの関係は、これで終わり。」

 

 

無情で、非情なことを言っているのわかってる。ただ、これくらい言わないと、嫌われ者にならないし、完璧に終われない。

一人なんて慣れてるし、この戦いは、独りでやっていかなきゃなんないんだから。嫌われて、憎まれるくらい、別にいい。

だから、心を鬼にして、2人に向かい合う。

 

「・・・ねぇ、何言ってるの・・・?」

「わかんないの?だったらもう一回言うよ。お前らとの関係は、今日で終わり。だからもう、俺に関わんないで。俺のことなんてとっとと忘れてくれ。もう、二度と連絡してこないで。」

 

自分でも何を言っているのかよくわからなくなっているのだが、ただ、次から次へと酷い言葉が、我ながらよく出てくる。

その言葉を聞いて、たきなが怒りで震えている。

 

あぁそうだ。もっと、もっと、怒って、嫌ってくれ。

二度と、会いたくないと思ってくれ。

 

「・・・何、ふざけたこと言ってるんですか!?ふざけないでくださいよ!」

「ふざけてんのはどっちだよ!!俺は・・・てめえらに助けてくれなんて一言も言った覚えはねぇんだよ!余計なお世話なんだよ!」

「光輝!話聞いてよ!!」

「言っただろ、話してる場合じゃないし、お前らとこれ以上話すことなんてない・・・偉そうに、してんじゃねぇよ・・・」

「・・・光輝・・・」

「・・・俺のことを撃っても構わねぇ。殺したきゃ殺せよ。けど、両親に手を出したその時には、俺はお前らを絶対許さないし、容赦しない。それが嫌なら、俺に二度と関わんな・・・いらねぇんだよ、お前らの助けなんか・・・」

 

心配してくれた2人を今まさに傷付けている。本当に、我ながらクズ野郎だと自覚している。

それとは裏腹に、それらの言葉を聞いて、表情がどんどん曇っていく2人の顔に、心を鬼にすると決めておきながら、どんどんぐしゃぐしゃになっていく。

 

・・・でも、これでいいんだよ。こうすれば・・・この2人だって、もう二度と俺を追ってこないはずだ。

 

「・・・これでわかったでしょ?俺なんて、中身はこんなどうしようもないクズなの。人を見る目なかったね。こんな最低なやつと関わりなんか持って。時間の無駄だったでしょ。それじゃ、俺はもう行くよ・・・」

 

自分のことを嘲笑するかのように、最後にもう一つ付け加える。

ここまで言えば、絶対に見損ない、愛想を尽かし、関わりを絶ってくれるはずだ。顔を見ずに、背を向けた。

 

「・・・いいかげんにしてよ!!ねぇ!私達は本当に光輝を助けたいんだよ!!お願いだから話聞いてよ!!」

 

千束が声を荒らげながら叫んでいるが、絶対、振り向くことはしない。

もう、二度と顔を見ないと決めてるから。

 

「待ってよ・・・」

 

そうして、走り出し始めた瞬間─────

 

 

 

 

 

「行かないでよウルトラマン!!」

 

 

 

 

 

その言葉に足が止まり、思わず振り向いてしまった。

その名前を知ってることにも驚いたが、この言葉を聞いて確信した。

 

足を止め、先程、言おうとしていたけれど、言うのを止めた言葉を口にする─────別れの言葉を。

 

 

「・・・さようなら。」

 

 

それだけ言い残して、どこか人気のない路地へ走り込むと、すぐにエボルトラスターを取り出し、鞘を引き抜いた─────

 

 

 

 

目の前にいた光輝はどこかへと走り去って行った。

 

フックのように話を振ってみて、もしそこで何か出たら、私達は味方だということを伝えようと思っていた中で、突如これまで見たことがない、緊張感や怯えなど、色々な感情が入り交じった表情に変わった。

そうしてすぐにこの場から立ち去ろうとしており、いてもたってもいられず引き止めてしまった。

 

その後の態度から、やっぱりそうだと確信し、ここで行ってしまっては止められないと思い、私は・・・私達は・・・光輝を止めたかった。

 

なのだが、あの強い言葉と、矢継ぎ早に言われた冷たい言葉に、これまで経験したことがない程、心が傷付いてしまっていた。

 

 

だから・・・無意識のうちに、私は光輝に向かって・・・ウルトラマン、と言ってしまった。

 

 

「・・・さようなら。」

 

 

先程振り向いた時の、何とも形容しがたい表情を見てしまったことで・・・体が動かなかった。

 

いつもであれば、どんな場面・状況でも体は余裕で動き、その一瞬の判断が生死にも繋がる。それが出来ないようでは、今日まで生きてこれなかった。

 

ただ、今回に限っては、体が全く動かなかった。

 

それは・・・さっきまであんなに優しかった光輝が、人が変わったように怒って、あんなに冷たく酷いことを言われ、突き放されたことで、迷いが生じてしまったから・・・正直、凄く、辛い。これまでに経験したことがないくらい、心が、痛い・・・

 

 

痛いよ・・・

 

 

でも、このことについては謝らなくちゃいけない。私はたきなに体を向けた。

 

「・・・ごめん、たきな・・・言っちゃった・・・」

「いえ・・・千束は悪くないですよ。私だって、言おうとしてましたから・・・それに、元はと言えば私が質問したことが原因ですし・・・」

 

たきなはそう言ってくれている。それがお世辞なのか、本当のことなのかはわからない。いつもだったらわかるのだが、今はもう、心がぐちゃぐちゃになっていて、一切の余裕が無くなっていた・・・

 

「ううん、たきなは何にも悪くないよ。でもさ・・・」

 

 

 

 

しばらく、千束は黙ったままだった。

一体、どれだけの時間が経ったのだろうか。おそらく、数秒程度なのだが、それ以上に長く感じてしまう。

 

 

「・・・そんなに私達のこと、信じられなかったのかな・・・?最初から、私達のことなんて・・・嫌いだったのかな・・・?」

 

 

千束も、私と同じ気持ちだ。

正直、私も辛く、すごく悲しい。

 

それはまるで、あの時DAに戻ることのみを考え続けていたあの頃に、自分はもう用済みだと言われた時に感じたような、心の痛みだった。

 

あんなに優しかった光輝が、急に怒り出し、人が変わった。ひょっとしたら、あれが本性だったのもしれないが、今となってはわからない。

 

ただ、私達を拒絶し、信頼してくれなかったことが、本当に悲しかった。何も言ってくれないだけでなく、助けなどいらないと言われたこと。そして、忘れてくれ、関わらないでくれとも言われた・・・この心の痛みは、怒りなのか、悲しみなのか、今はよくわからない。

私だって同じくらい悲しく、今にも心が張り裂けそうだ。

 

「千束・・・」

 

ただ、それでも目の前にいる千束が悲しんでいる姿を見ているのが耐えられず、千束の方へとゆっくりと近づき、悲しみを共有し、慰めようとする─────

 

「あっ・・・」

 

ただ、そんな気持ちを遮るかのように、突如空に赤い光が走った。

その赤い光は凄い速さでどこかへと飛んでいくようであり、目ではとても追い切れないほどだった。

 

それが、今日噂されていた赤い流れ星だとわかるのにはそう時間は掛からなかった。

 

 

ただ、私達はもうわかっている。

この赤い流れ星が、何なのか。

 

 

「・・・光輝のっ、バカ・・・バカ!!」

 

 

千束の声は、その赤い光に届くことはなかった・・・

 

 

 

日本─────どこかの山中

 

光に包まれた俺はとてつもない速さで例の感覚を感じていた場所へと向かい、到着した瞬間に変身を解除した。辺りはすでに何も無かったが、だからといって誰かがザ・ワンに食い殺されたというわけではなかった。

 

ただ、さっきの反応はこれまで感じたことがないほど強大で、とてつもなく嫌な予感がする。そう思い地面に手を置き、目を閉じ、この場所で何が起こっていたかを、土地に刻まれた記録を彼の力を使って読み取っていた。

 

ー何ダソレハ・・・?ー

ーデビルスプリンター。かつて、全宇宙を恐怖で包み込んだ最悪の存在、ウルトラマンベリアルの細胞から生まれた物質だ。これを取り込んだ怪獣は凶暴化し、宇宙各地に混乱を巻き起こす。ー

ーノアに勝ちたいのだろう?だったら、私からのささやかなプレゼントを受け取ってくれたまえ。私の腹いせも込みだがな。ー

 

「・・・!?」

 

ここで少し前まで起きていたことに驚く。

まさか、ザ・ワンにそんなことが起きたなんて、本当に最悪だ・・・今になって起きたことを悔いても仕方ないが、それでもついさっきまでここで起きたことを振り返ってみても、最悪、としか言えない状況であり、次にアイツと対峙した時、どうなるかが全くの未知数としか言えない。

 

辺りを散策してみて、ザ・ワンがどこかに行ったかを探すものの、痕跡もなく、完全にロストしてしまった。

更に、見落としているかもしれない痕跡を消すかのように、運悪く雨も降ってきた。

 

 

・・・ただ、今は本気で探す力は、ない。

ザ・ワンもアブソリューティアンのことも驚いたものの、正直、頭に全く入ってこなかった。

 

今はただ・・・・ああして別れてしまった2人のことで、ずっと頭がいっぱいだった。

 

 

「・・・そう、だったんだな・・・」

 

 

リコリス、だからということでずっと警戒していた。

でも、本当に嫌っていたかというと・・・そうではなかった。

 

それに、実際、少しだけ、そう思っていた。さっきだって、そう感じていた。

こうして別れてみて、俺は初めて、わかったことがあった。

 

 

「俺・・・千束とたきなと・・・本当に、友達になりたかったんだ・・・」

 

 

お互いの立場はわかっている。だからこそ、友達になるわけにはいかない。まるで、ロミオとジュリエットだ。

ただ・・・そうであっても、俺はあの2人と、友達になりたかったんだ。

今更、そんな簡単なことに気付くと、自分のバカさ加減に呆れるが、それ以上に、辛かった。

 

ああして傷付けたことや、友達になれそうだったのに自分からそれを捨ててしまったことに、ここまで後悔するとは思わなかった。

感情がぐちゃぐちゃになり、喉が、目頭が熱くなってくる。

 

 

「・・・うっ、うっ・・・うあああああああああああっ!!千束、たきな、ごめん、ごめん・・・!でも、これでいいんだよ・・・これで・・・あああああああああああっ!!」

 

 

俺のことを信じようとしてくれていた、楽しい時間を過ごした2人を傷付け、そしてあんな終わりを突きつけてしまった。

嫌われて終わろう。一人でいることなんて、そんなことはもう慣れっこだ。これからも戦っていくには、独りでいなければならないから、そうしなければならない・・・そう思ってああしたのに・・・こんなに後悔するなんて思わなかった。あれが正解だったのか、正直に話せばよかったのか、今となっては答えはわからない。

 

ただ、これが・・・あの2人にとっても良かったんだ。今はそう信じるしかないが、本当にそうなるのかは、現時点ではとても考えられそうにない。

 

誰もいないのをいいことに、大声で泣き出した俺の気持ちに合わせるかのように、雨脚はより一層強くなっていた─────

 

 

 

千葉県─────光輝の家

 

あれからかなり時間が経って泣き止んだ後、再び光になり家に帰ってきた光輝は、長時間雨に打たれたということもあって全身がびしょ濡れになっていた。

その姿を見た母親からは凄く驚かれ、呼べば迎えに行ったのにと言われたが、大丈夫と気丈に声掛けた。

疲れたからすぐに風呂入って寝るから、とだけ言うと、さっと風呂に入るとすぐに自室へと向かった。

 

何があったのかはあえて聞かず、部屋に入っていく光輝を見届けた後、光輝の母親は着ていた服や、今日の仕事で使用していた作務衣を洗濯するため、リュックを開けていた。

もちろん、リュックもびしょ濡れなため、これも洗濯しようと決めると、リュックの色々な箇所のポケットを開けていく。

 

すると、リュックからカラン、と、何かが落ちたような音がし、下を見るとボタン電池のような銀の機械が落ちていた。

 

「・・・何かしら、これ・・・?」

 

 

 

東京─────千束のセーフハウス

 

スマホの音が鳴った千束は、電話を取った。

電話の主はクルミであり、今お前だけか?と確認すると、今日は遅くなったからたきなも泊まってるよ、とあっけらかんと返す。

 

ただ、クルミも電話越しだが少し感じていた。

 

いつもの千束とは・・・少し違うと。

 

その様子に、まさか・・・と、ある一つの悪い考えが浮かび、問い詰めたいものの、一旦それは置いておき、何もわかっていないかのように要件を話し始めた。

 

『だったら話が早い。そうだな、悪い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?』

 

それ結局ただの悪い話じゃん、とツッコミを入れ、じゃあ最初の方からと選びつつ、電話をスピーカーモードに変えると、2人で聞こえるようにした。

 

『光輝だけどな、あいつももう家に帰ってるけど、ちょっとその帰り道のルート、今から共有するぞ。』

 

それを聞いた後、2人のスマホに光輝の行動ルートの画像が送られてきた。

千束のスマホは現在この電話で使っているため、代わりにたきなのスマホで確認すると、先程別れたあの場所からどこかの山中、そして、光輝の家と、総距離だけで見ると数十キロはあり、時間も1時間程度しか掛かっていない。

 

どう考えても、人間とは思えないような、ありえない移動を示していた。

 

やっぱり、と思うと同時に、そもそもどうやって居場所を?と思っている中で、クルミはそのカラクリを話した。

 

『あいつがフキとサクラと話している間に、ミズキがリュックの中に発信機を入れた。だから、あいつの行動は全部マーキング出来たってわけだ。』

 

以前にもこういった発信機を付けたこともあったため、相変わらず流石だと思いつつも、もうすでに、2人は彼の正体について確信している。

なのだが、そうとは見せないようクルミに話を合わせていく。

 

「これ・・・本当なの?」

『あぁ。ボクもバグかもしれないと思ったが、事前に何度も動作チェックはしたし、発信機も今は家のある場所で安定して動いている。つまり、動作は正常だということだ。で、次に2つ目の悪い知らせだ。』

 

そして新たな画像を2人に送った。

それは、ああして別れた後、最初に向かったどこかの山中の衛星写真の画像である。

 

曰く、衛星をハッキングしその移動ルートから行った時間を割り出し、何が起こっていたのかを衛星写真を使って調べた・・・とのことであり、その時間、その山の中に写っていたのは─────以前、自分達が対峙し、そして殺されかけた、あの男だった。

 

「ビースト・ワン・・・!?」

『あぁ。ただ、理由はわからないが、この後急に数分、バグが起きて映像が何も残っていなかった・・・で、そのバグが解消されたその少し後に映っていたのは・・・これだ。』

 

そして送られてきた画像には、ザ・ワンの男に代わり─────一人の男の子が映っていた。

それを見て、2人は何も言わず、その画像を眺めていたが、無理して千束はクルミの話に合わせた。

 

「・・・やっぱり、そうなんだね・・・」

 

この画像が最大の証拠となった。そしてこれで全員、確信した。

 

ただ、元々の目的はそうだった。彼の正体を知るために今まで動いており、最初からそうかもしれないというのは全員の共通認識として持っていた、はずだった。

 

しかし時間が経ち、触れ合うことで人間性が少しずつわかってきたことや、自分だって色々あったのにも関わらず、今日のようにリコリコのピンチに駆け付けてくれた心意気など含め、作戦のことを少しづつ忘れてきており、彼の正体がどうかなんて一切関係なく、ただの友達だと思えてきていた。

 

だからこそ、先程のあの言葉に酷く傷つき、これまでそういった、"言葉での暴力"を受けた経験が少なかったからこそ、あの時ああして受けた心の痛みは、これまでに感じたことのない痛みだった。

 

『・・・何か、あったのか?光輝と・・・』

 

電話越しの千束の様子が違うことに対し、ついにそのことをクルミは切り出したが、それに対して特に何も反応がなかったため、そうか・・・と、それ以上はあえて聞こうとはせず、大方だが、何が起きたかを察した。

 

ただ、この現状については話が別だ。

この事実を確信させるかのように、電話越しのクルミは告げた。

 

 

 

『真田 光輝。あいつが・・・ウルトラマンの正体だ。』

 

 

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