+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー 作:ワンホットミニット
(書いてるうちに2つに分けた方がいいだろうと思った結果です。本当なんです信じてください!)
まず、ちさたき至高という派閥の方々、ごめんなさい。
あそこまでボロカス言う必要はなかったかもしれませんし、あそこまで言ったのはウチくらいかもしれません。
ただ、あの描写は、今回のためにどうしても必要だったのです。
人それを愉悦と
今作もまた詰めに詰め込みすぎて前回と同じくらいの量となっておりますが、どうぞゆっくり、ご覧ください。
錦糸町─────喫茶リコリコ
あの一件から2日後、八神探偵事務所の2人も喫茶リコリコに集まり、先日のとある山中での衛星写真の画像を全員で見ていた。
本来であれば一刻も早く呼び出したいところだったのだが、急遽八神探偵事務所宛に依頼が入ったということもあり、2日後となった。
ただ、少し時間を置いて良かったのかもしれない・・・と、電話をしていたクルミも、そして昨日一緒に仕事をしていたミズキもミカも思っていた。
昨日、千束もたきなも、そうとは見せないようにしていたけれど、口には出さないが全員が感じていた─────2人の元気が無いことを。
その理由を聞きはしなかったが・・・・おそらく、そういうことだろうとは、誰しもが見当をつけていた。
そんな中、モニターに映し出されたその画像を見ながら、クルミは今までに観測していたことを改めて説明した。
「ビースト・ワンが居た少し後、この場所に光輝が現れた。千束とたきなからも聞き取りをしたが、別れた時間からしてもほぼ間違いないし、服装もボク達が最後に見たときと同じだった。これでハッキリしたな・・・光輝が、ウルトラマンの正体だ。」
隠していた発信機を頼りに位置を特定し、ビースト・ワンがそれまで居た場所に、少し経ってから光輝が現れたこと。2日前、最後に見た時の服装と同じと、もはや完全に言い逃れが出来ないほどの証拠が出揃った。
「じゃあ、これでようやく、あいつに話を聞きに行くだけになったわけだ。」
「まぁ、そうなんだけどな・・・」
クルミの含みを持たせた発言に八神と海藤は疑問を浮かべていたが、瞬時に察した。
今日入ってきた時から、あの2人の様子が少しおかしいとは思っていたが・・・そういうことだったか、と。
「・・・千束、たきな。ちょっと、外の空気吸い行こうか。」
代表して、八神は千束とたきなに声を掛け、2人を一度店外に連れ出した。
外に出てからすぐ、ごめんねと八神は軽く謝罪をすると、この2日の間に、ああして自分達が去った後に、何が起きたかを聞こうと質問をしてみた。
「・・・辛いこと聞くようで悪いんだけど・・・光輝君と、何かあったの?」
「・・・実は」
「いいよたきな、私から言うよ・・・すみません、私が言っちゃいました。光輝に・・・ウルトラマン、って。」
あぁ、やっぱりそうか・・・と、頭で考えていた最悪の想像が当たってしまったことに若干苦い顔をする。
そして、2人の口から2日前に起きた出来事の一部始終を聞くと、なるほど・・・と顎に手を当てた。
「そりゃ、まぁ向こうも動揺するか・・・」
「ごめんなさい・・・つい。」
「いいよ別に。2人は何にも悪くないよ。これについてはロクに話もせず、それで傷つけること言った向こうが絶対悪いと俺は思うよ。」
千束とたきなを責めようとはせず、同じ立場に立ち、それでいて第三者視点から状況を冷静に分析し、今回については光輝が悪い、と結論付けた。
その上で、どうしても聞きたいことがあった。
それは、この後の動きにも関わるが、それ以上に、彼女達がどうしたいか・どう在りたいかを確認したいという意味合いから、どうしても八神は知りたかった。
「ところで・・・2人はどうしたい?」
「どうしたい・・・って?」
「これで終わりでいい?」
そんなの・・・!と2人は八神に突っかかっていきそうになるが、2人の気持ちを一切無視し、言葉を重ねていく。
「そもそも、これはあくまでもウルトラマンの正体を探るっていう作戦だったし、千束もたきなも連絡先を聞き出すってことが本来の目的だっただろ?関係を作っていこうとはしていたけど、あくまでそれは、彼がウルトラマンかどうかを聞き出すための過程にしか過ぎなかった。それが早まったわけだから、この後それを聞きに行くだけだったら、俺と海藤さんだけで行ってもいい。そんな辛いことを言われたなら、行かない。っていうのも選択肢の一つだと俺は思うよ。」
八神の言うことも最もだった。確かに、あくまでウルトラマンの正体を知るための作戦であって、友達になる必要なんて、実はなかったのかもしれない。だから無理してでも行く必要はないと言い切った。
だが、本音を引き出したい・どう想っているかを知りたいという理由から、あえて神経を逆撫でさせ、挑発するかのような言葉を次々並べていく八神に対し、2人は押し黙ってしまうが、そこで一切の遠慮はせず、更に言葉を続けていく。
「というより、もうここで終わりでもいいんじゃない?行かなくたって、別に良くない?」
「・・・」
「だって、そもそもこれは俺らが勝手に始めたことじゃん。で、こっちは助けてあげようとしてたのに、向こうがもう関わんなって言ってたんだろ?だったら、ほっときゃいいじゃん。勝手にやらせときゃ。それで別に彼がどうなっても・・・」
「・・・嫌です」
話が続く中で、小声で千束が呟いた。
もちろん、八神にもその声は聞こえていたが、あえて何も聞こえていないかのように、何か言った?ととぼけて質問を返す。
「あんなこと言われたこっちの身にもなってみろよ!!謝れあのバカ!!どれだけ私達が光輝のこと本気で心配してると思ってるんだよ!!」
俯きながら大声で叫んだことに八神も一瞬驚き、体がピクリと反応するも、すぐに気持ちを戻し、その想いを焚き付けるかのように重ねて質問をしてみた。
「謝ってもらうだけで・・・いい?多分、向こうはこれまで以上に警戒してると思うよ?また辛いことを言われるかもしれないし、それこそ・・・命の奪い合いになるかもしれない。それでも・・・行く?」
こう質問してみたものの、八神ももう、わかっていた。
・・・彼はもう、これ以上2人にあんなことを言わない。そして、そんなことも絶対しない。そんなことは、とっくにわかっている。
もし、ここのことを心から嫌っているのであれば、そもそもこうして仲良くなろうともしなかったはずだ。連絡だって取ろうとしなかったはずであり、一昨日だってこの店の手伝いに来なかったはずだ。
でも、彼はした。
それは単純に、この店や、この2人に悪い印象を持っていなかったことや、自分でも知らないうちに心を許しつつあったからだろう。
だからこそ、これだけは間違いなく言える。
光輝君は・・・千束とたきなのことを、本当に大切に想っている。
だから、これ以上巻き込まないためにも、ああしてその時辛辣な言葉を言ったのだろう。
それに、自分のことをクズだなんて言ったそうだが、そんな人間なわけがない。これは自分もハッキリ言える。
断言するが、ウルトラマンとして多くの人をビーストから守るために戦い続けてきた。そして、千束とたきなの命を助け、傷まで治した彼が、クズなわけがない。それ以上のクズなら、自分はこの目で嫌というほど見てきた。だからこそ、彼はそこには絶対に当てはまらない。
そんなことはとうにわかっているものの、今はこの2人の本音を聞き出したかった。そうでなければこちらも、動くわけにはいかない。いや、動きたくなどなかった。
だからこそ、あえて重ねて質問をしてみると、堰を切るかのように、千束は想いを口にし始めた。
「絶対、絶対行きます!直接謝ってもらわなきゃ気が済まないですし、何か言われたらこっちだってケンカしてやりますよ!あんなバカ、一発くらいブン殴ってやんなきゃ!」
「・・・だろうね。俺も自分がやられたらそれくらいやんなきゃ気が収まんないよ・・・それで、終わりでいい?」
その意見に同調しつつも最後に付け加えるかのように、これまでとは違い、優しく質問を投げかけてみた。
その質問に対し、少し黙ったままだったが、それでも彼女の答えを待ち続ける。
少しすると、すすり泣くような声で、でも・・・と、小さく千束の声が聞こえた。
「・・・やだ!こんなの絶対やだ!光輝のバカ!!・・・だって、友達になったばっかりなのに・・・まだ話したいこと沢山あるもん!光輝はもう友達なんだよ!友達のこと、助けたいに決まってるじゃん!!関わるななんてそんな悲しいこと言わないでよ!!私、光輝を一人になんてさせたくないよ!!・・・それに・・・私とたきなを助けてくれたことに・・・まだ、お礼も言えてない・・・このままじゃ、嫌だよ・・・私、会いたいよ・・・光輝に会いたいよ・・・」
この2日間ずっと我慢して、抑えていた気持ちを千束は大声で口に出した。
あんな別れ方が本当に辛くて、悲しくて、そして、本当に嫌だった。
やりたいこと最優先がモットーでいたのに、それを躊躇っていた。
ただ、これまでの八神の言葉で、改めて感じている光輝に対しての想いや、今の今まで自分の中で溜まっていたモヤモヤを言語化して叫ぶと、気持ちが吹っ切れ、そして、決心した。
何があっても、どんなことが起きても、絶対にもう一度、どうしても会う、と。
そうして自分の気持ちに整理が付いたのか、言い終わる頃には目に少し涙を浮かべていた。
それに触発されてか、たきなもまた、同じように内に溜めていた気持ちを言葉にし始めた。
「私だって・・・私だってこのままじゃ嫌です!こんなの・・・こんなの嫌です!怒ってますし悲しいですしもうわけわかんないです!だから、謝ってもらわなきゃ気が済まないです!それに・・・私達の命を助けてくれた光輝を、今度は私達が助けたいんですよ!!それなのに、関わるな、忘れろなんて・・・そんなの・・・そんなの出来るわけないでしょバカ光輝!!私だって、絶対、会って話したいです・・・!こんな終わり、絶対に認めない!光輝を、友達を、絶対一人になんてさせない!!」
千束と同じように、たきなもまた感情的に、今感じている・思っていることを口に出した。
この言葉に嘘偽りはないはずだと、八神は心の中でニヤリとし、ようやく千束とたきなの光輝への想いを聞いたことで、次にやることを決めた。
2人に背を向けた八神は、多分さ・・・と切り出す。
「光輝君も、絶対2人と同じ気持ちだよ。」
えっ?と疑問を浮かべる2人に対して、よっしゃ、と一つ気合を入れるかのように小さく呟き、喫茶リコリコのドアを開けてから、2人の方に笑顔を向けた。
「それじゃ、仲直りと・・・腹割った話、しに行こうか。」
千葉県─────とある田舎道
あれから、2日が経った。
千束とたきなからの連絡もない。いや、正確に言えば、無視していた。
何故なら、この2日間、スマホの電源そのものを切っていた。
だから、何が来ているかも、俺は知らないし、今は知りたくない。
こちらももう確信した。あの2人は、俺のことを知っている。
だからこそ、もうこれ以上関わらない方がいいと思い、一切の連絡を絶っていた。
それに、母さんが見つけてくれた、謎の機械。
おそらくどこかで付けられていた、いや入れられていたのかもしれない。多分、あれは発信機か何かだ。漁ることはないだろう、と想定していた中で、その最悪の想定が当たって、完全に裏切られたような気分だった。
だからこそ、もうあそこには絶対近寄らない方がいいと心から決め、この数日はただ日々のことを淡々とこなしていた。
両親にも契約の話もやめてくれと言い、あの店との関係を終わらせるように言った。
その理由も問いつめられたが、当然言えるわけがない。
なので、大喧嘩になってしまい、今日もだが、家中険悪な空気が漂っている。
加えて、昨日バイトに向かったのだが、何かに勘付いたナツばあから、仕事終わりに休みを出された。
・・・整理がついたら、連絡してきなさい。それまでは、ここに足を運ばないことと言われ、ここからも拒絶されてしまった。
ハッキリ言って、身の回りの全てが、最悪の状況だった。
これも、戦っていく上で必要な試練だと割り切るには、もう少し時間が掛かりそうだ。
そんな状況だが、この2日間、あのことを心の中では未だに引きずっており、そのことについてずっと考えていた。
2人に謝りたいとも思ってはいるけれど、これ以上関わったら・・・だからもう二度と、彼女達には会わない。この痛みは、忘れるまで抱えていく。
そういうことが嫌だったから、俺は今まで黙ってきたのに。だから関係なんて増やしたくなかったのに・・・と、改めて自分のバカさ加減に嫌気が差す。
そんな中、俺もこの2日間で決めたことがある。
だったら、俺もこの数日間あったことを、2人のこともあの店のことも、全て忘れてしまおうと。
もう、あんなことは、全てが夢だったのだと思い込もうとしていた。
そして、いつか来るザ・ワンの襲来に備えておこう。
そう、全ては、都合のいい夢だったのだ。
だから、これまで通り、独りで戦っていこう。これまでも、ずっとそうだったように。
時間が経てば、こんな痛みも忘れるから。
・・・なのに・・・なんでこんなに・・・
「・・・くっそ、辛え・・・」
そんな俺の気持ちと、この真夏に突入しつつある日差しが重なり、つい汚い言葉が出てしまう。
週末が終わった平日一発目の学校が終わり、まだ日が高い中、家までの帰り道を歩いている・・・のだが、あんな喧嘩をしたので家にあまり帰りたくなく、寄り道をし、いつも歩かないような、誰も人が通らないような田舎の並木道を、ただただボーッと歩いていた。
ただ、暑いのも当然だ。何故ならこの夏でも、俺は学校指定のブレザーを着用しているからだ。
彼と出会って以降、エボルトラスターを隠すために指定のブレザーを着用し続けており、衣替えになってもずっと着用していることに様々な教師から度々言われてきたが、最近肌がちょっと・・・という適当な嘘をついてなんとかごまかしていた。
夏の日差しが照り付けるが、それもなんとか我慢をし、最近ではこの暑さでもブレザー姿に少し慣れつつあったが、とはいえ暑いものは暑い。
こういう時は私服の方がありがたいなと思いながら、耳につけているイヤホンからはいつも聞いているバンドの音楽が流れている。
父さんがファンだったというバンドで、家に来てから数ヶ月が経ったある時、たまたま父さんの部屋に掃除に入った際に見つけた、四角いプラスチック容器に描かれていた何かのモンスターの絵。
それがCD、そしてCDのジャケットだと気付くのにそう時間は掛からなかったが、こんな絵を見たこともなかったため、一目見た時から何故かそれがとても気になった。
その時に部屋に入ってきた父さんから、聞いてみるか?と提案されて聞いた時に・・・よく言われている、雷が落ちたような気分になった。
そのCDを聞き終えると、それからすぐに何度もリピート再生し、部屋にあったそのバンドのCDも片っ端から聞いた。それからすぐ、中古でもいいからそのバンドのCDを全て集めると、あの当時、起きてから寝るまで、ずーっとこのバンドを聞いていた。
本当に、家業以外の時間は丸っと1年このバンドしか聞いていなかったほどに夢中で、今でも一番好きなバンドだと胸を張って言える。このバンドがいなかったら楽器をやることも絶対になかった。
その結果、中学校に入学した時、周りの同学年の人とは趣味趣向がまるで合わず、それで孤立することになった。まぁそれは今もなのだが。
ただ、それは自分が望んだことだから何も気にしてなどいないし、何よりも・・・"俺は、学校で友達を作るわけにはいかない。"
だからこのバンドは、そんな独りで居続ける自分の傍に常にあった音楽で、今の自分という人間を形作った要因の一つに、間違いなくこのバンドはあるし、これを抜きにして語れない。
なのでもはや音楽というよりは、聖書・バイブル、という言い方の方が近いのかもしれない。
『たった一つのことが 今を迷わせてるんだ 誰を信じたらいいのか 気づけば楽なのに 初めからずっとわかってたことがあって そのレールはまた途中で途切れていたりするんだ』
その、俺が気になったCDの1曲目の曲が流れている。これを聞くだけであの時の衝撃を昨日のことのように思い出す。
いつもだったら大好きで、どんなに疲れている時でも一瞬でテンションが上がる歌なのに、今はまるで自分に向かって言われているかのようで、テンションが一つも上がらない。
今は何も目にしたくもないし、現実の声も聞きたくない。いつだって、独りの俺は音楽に、ロックにいつも助けられてきた。
なのに、その一番大好きな音楽からもまるで説教されているかのようで、本当に何処にも逃げ場がなくなっているかのようだった。
初めて、このバンドの曲を聞いているだけで気分が悪くなってくるようだったので、これ以上は聞くのを止めようと再生を停止したと同時に、突然誰かからトントンと肩を叩かれた。
「ん?」
音量も大きくしており、足音なども聞こえていなかった。そのため、誰が近付いていたかもわからず、呼びかけられていたなら申し訳ないな、と思いながらイヤホンを外して振り向く。
「へいへいお兄さん、シケた面して歩いてんね~。一緒にお話でもしてかない?」
「捕まえましたよ、光輝。」
「・・・ぇっ・・・」
驚きの前に、俺は混乱していた。
目の前に、ずっと思い続けていた、2人がいた。
赤い制服に白金の髪のサイドに赤いリボンを巻き付け、ジョークを交えた喋り方をする
対して、紺の制服にストレートの黒髪をなびかせながら、真面目に俺に向き合う
2日前と変わらず、同じような表情と、同じような態度をしていた。
本当に夢か?と疑ってしまいそうになるのだが、2人の顔を見たことで、思わず一歩後退りしてしまう。
「どう?驚いた?」
そんな驚いている俺に、更に後ろから声を掛けてきた人がいた。
それは2人と同じく、最近特によく名前が出てきて、それでいて2日前にも再会したお2人。
「八神さん、海藤さん・・・!?」
よっ、と軽く挨拶をしてくれるが、お2人までいることになんで・・・?と、より頭が混乱してくる。
あれこれ聞きたいことがあるのと、驚きすぎて、どこから質問すればいいかわからなかった。
「光輝君、その前にまず、やることあるんじゃない?」
「あぁ、男として、ケジメつけろよ?」
その言葉が一瞬理解出来なかったが、あっ・・・とすぐにその、ケジメ、について理解をする。
「逃げたらダメだよ。男なんだから、ちゃんと、な。もし千束とたきなにまた酷いこと言うなら、俺が君のことを本気で懲らしめるから。」
そう八神さんから声を掛けられる。おそらく、一歩下がったその様子を見ていたんだろう。
それに、そんなことを八神さんから言われ、尚のこと言えなくなった。もちろん、言うつもりなどない。
逃げ場のない状況の中で一つ覚悟を決めて、千束とたきなの方へと体を向ける。
たとえ、これで自分という人間の尊厳も自由も全て奪われて、最悪死ぬことになっても・・・今一番したかったことをしようと決めた。
「・・・あの・・・千束、たきな、この前は・・・ごめんなさい。」
深く頭を下げた俺に、2人は黙ったままだった。
ただ、別に許されなくてもいい。ここで嫌われて終わりでも、俺は別に良かった。
少しすると、顔上げてよ。と千束の声が聞こえ、ゆっくりと顔を上げた瞬間
─────パン、と、気持ちのいい音と共に、千束が頬を叩いた。更に続けて、たきなも反対の頬を叩いた。
ただ、どんなことも、どんな言葉も覚悟していたから、特に驚きはなかった。
「・・・バカ!光輝のバカ!私達は、本当に光輝を助けたいんだよ!!ちゃんと話聞いてよ!!・・・だから・・・あんなこと、言わないでよ・・・本当に、悲しかった・・・」
「・・・」
「忘れろなんて、関わるななんて、二度と言わないで・・・!あの言葉、凄く傷付きました。今だって怒ってますから・・・」
「・・・」
2人は俯いているため、前髪が垂れ下がっている。だから、2人の表情は俺からは見えない。ただ、どれだけ悲しい顔をしているのか。いや・・・俺のせいで、させてしまっているのかは、容易に想像がつく。どんどん心が苦しくなるが、黙って2人の言葉をただ聞いていた。
当たり前だが、全てこちらが悪い。あんなに傷付けたのだ。許されようだなんて微塵も思ってない。
だからこそ、2人の言葉にどう返せばいいか、その答えが見つからなかった。ただのごめんではもう済まないのはわかっている。
ならば、いっそこのまま嫌われてもう終わりに─────
「・・・ねぇ光輝、私とたきなのこと、どう思ってる?」
「・・・えっ?」
そんな考えを巡らしている中、千束が質問を投げかけてきた。その言葉の意味が、理解出来ない。
・・・いや、嘘だ。心ではとっくに理解している。
けど、それを認めてしまったら・・・そう思うと、言葉が出てこなかった。
「私達は光輝のこと、友達だと思ってるよ。」
「はい。光輝はどう思ってますか?それを知りたいんです。」
「・・・ねぇ、何、言ってるの・・・?」
正直・・・何を言っているのか、わからなかった。
2人はまだ、俺のことを友達だと、胸を張って言ってくれた。その言葉が理解出来なくて、思わず口から疑問の声が零れる。
「俺は、2人にあんな酷いこと言ったんだよ!?見損なったでしょ!?クズだって思ったでしょ!?最低なやつでしょ!?嫌いになるでしょ普通!?なのにどうして!?なんでそんなやつをまだ友達だと思ってんの!?」
俺がやった行為を思い返せば、そんな関係辞めたくなるはずだ。むしろ、それが目的だった。これ以上2人を巻き込まないためにそうしたのに・・・酷いことをこれ以上言わないようにしていたのに、気付けば思わず大声で問い詰めてしまっていた。
「ホント光輝はバカだなぁ。あんなの全部嘘だってわかってるよ。だって・・・巻き込まないようにしてくれたんだよね?私達が、また怪我しないように。」
「っ!?・・・それは・・・」
「知ってますよ、そんなことくらい。私達を危険から遠ざけるためにそういうことをしたって。光輝、優しいですから。」
「水臭いなー。友達なんだからもっと頼ってよ。」
こちらの考えは全て見透かされてしまっており、それでいてあっけらかんと、まるで何もなかったかのように話しかけてくる2人に、こちらはただ混乱している。ただ、それでも・・・
「それに私達、光輝と仲直りしようと思って来たんだよ。」
「・・・仲、直り・・・?」
「そうですよ。喧嘩したら、ごめんなさい、って言って、仲直りするじゃないですか。幼稚園児でもわかるようなことですよ?」
仲直りと、2人はさも当たり前のように言っているが、こちらは終始納得出来ていなかった。
あぁして巻き込まないように強い言葉を言った。それもすでに向こうはわかっている。勿論、こっちだって本心なわけがない。
ただ、彼女達を傷付けたことには変わりない。
だからこそ、仲直りなんて・・・向こうが言ってきても、虫が良すぎるし、俺は納得出来ない。
それなのに・・・なんで、なんで・・・?なんでこんなに、優しいの・・・?
その2人の優しさに触れたことで・・・本音が、口から零れはじめた。
「・・・でも・・・2人があんなに心配してくれてたのに、俺は、突き放して、傷付けたんだよ?・・・そんな俺は、許してもらえるわけない。だから俺は・・・千束とたきなと友達になる資格なんてないし・・・2人の前にいちゃいけないんだよ・・・」
声を震わせながら思っていることを言葉にすると、2人はまるで全てをわかっているかのような表情で、耳を傾けてくれていた。
「資格なんて、そんなの友達にいらないよ。重いって。それに、勝手に自分から捨てようとしないでよ・・・そういうところだよ、光輝の良くないところ。」
「・・・でも!俺は!それじゃ「光輝・・・私達のことなんて、最初から、どうでもよかったですか・・・?それとも、嫌い、だったんですか?」
たきなから食い気味に聞かれた、その質問。
・・・もちろん、そんなわけない。俺にとってこの2人は・・・だからこそ・・・
「・・・違うって!違う違う違う違う!!そんなつもりでこの前も言ったんじゃない!!・・・だって、それじゃあ・・・」
これ以上の言葉に詰まると、2人がそれぞれ片手をギュッと、両手で包み込むように握ってくれた。
「私達、最初からずっと、光輝の味方ですよ。だから、光輝を、友達を、助けたいんです。」
「ねぇ光輝、教えて。私達のこと、どう思ってる?一緒に過ごした時間、楽しくなかった?」
「・・・そんなの・・・そんなわけ・・・!」
2人の顔を見て、その言葉を聞いてしまった。
あんなことを言っても、それでも俺に手を差し伸べてくれたことで・・・
─────心の中で我慢していたものが、詰まっていたものが、溢れ出した。
「・・・嫌いなわけないじゃん!!2人とも凄く凄く大切だよ!!それに、2人と過ごした時間、今までにないくらい楽しかったよ!だから、これからもずっと2人と友達でいたい!いやなりたいよ!!2人がどう思ってんのか知らないし、キモイって思われても構わない!でも、でも!たった少しだけしか一緒に過ごしてないのに、こんなに大切になるなんて思わなかった!だから、絶対巻き込みたくなかった!2人が怪我するの、もう見たくなかったから、あんなこと言えば二度と関わらないでくれると思った!そうすれば、俺だけで全部済むと思ったから・・・なのにだよ!傷付けたことめちゃくちゃ後悔してさあ!あの時の2人の顔が頭から離れなくて、申し訳なくて、何度も何度も泣いた!だから、嫌われてもいいから、傷付けたことを謝りたかった!ずっとそれしか考えてなかった!それで今さ、目の前にいて本当に驚いたし、でも、それ以上に本当に嬉しかった!だから・・・千束!たきな!ごめん!ごめん!!ごめんなさい!!酷いこと言って、傷付けて、悲しい想いさせて、本当にごめんなさい!!うう、うああああああああああああっ・・・!!」
2人への想いを言葉にしたことで、気持ちに限界が来てしまい、立つ力もなくなって膝から崩れ落ち、蹲り、ついに思いっきり泣き出してしまう。
「ホント、キャラじゃないことするからそうなるんだよ・・・ばーか。友達のこと、ほっとけるわけないじゃん・・・いいよ。」
「本当、私達を巻き込まないためにそんな手段しか考えられないなんて・・・どうしようもないバカですね・・・いいですよ、もう。」
大声を出しながらずっと泣き続けている俺を引くわけでも責めるわけでもなく、優しい言葉をかけてくれながら、本当に、俺のことを友達だと言ってくれる、新しく出来た、大切な友達は許してくれた。2人もまた片膝をついて、ポンポンと俺の背中をずっと叩きながら、慰めてくれている。
その2人の優しさに改めて、一昨日自分がした行為の愚かさを身に染みて感じ、こんないい友達になんてことをしてしまったんだろうという後悔の念がふつふつと湧いてくる。
そしてもう二度と、千束とたきなを傷付けることは何があっても絶対に言わない、と心に固く誓った。
「さっ、ほら立って!行くよ!」
「いつまでも泣いてないでください!みっともないですよ!」
少し経ってから、千束とたきなから両腕を持ってもらって、まだ泣き続けているのだがなんとか立ち上がる。いや立たされた。
でも、疑問に思った。
「ぐずっ・・・行くって・・・どこに?」
「・・・どこ行った方がいい?」
「・・・へぇっ?」
八神さんの言葉に、驚きと疑問がいっぺんに来て、思わず間抜けな声が出てしまった。
「えっと・・・えっ?どこ行くの?ぇぇっ?」
「私達、光輝に会うためだけに来たから、後のことなーーんにも決めてない!」
千束のまさかの発言にはっ!?と素っ頓狂な声が出て、一瞬涙も引っ込んでしまった。
皆はただ、俺に会うためだけに来たという。俺のためだけに、わざわざこんな遠い所まで来てくれたことに驚くが、目の前にいるお世話になっている2人と、隣にいる2人の友達は笑いかけてくれている。
それが本当のことなのだとすぐに気付くと、皆の思いやりを感じているが、とはいえ、一つ確認したかった。
「・・・ねぇ、俺を捕まえて、引き渡したりとかしないの?」
「しないって。言ったでしょ、仲直りしに来たって。」
「私達は光輝を助けたいんですよ。どこかに渡すわけないじゃないですか・・・」
「・・・ねぇ光輝君、まさかさ・・・ずっとそう思ってたの・・・?」
「・・・はい・・・」
「お前・・・本当に馬鹿なんだな・・・」
その言葉に、皆さんが呆れてため息をついてしまう。なのだが、一方の俺は未だ泣いてはいるけれど、なんだか笑えてきてしまった。
そして、もう心の底から理解した。
─────この人達は、本当の本当に、俺の味方なんだ・・・って。
なんだ・・・さっき聞いてたあの曲でも言ってたし、実際そうだったよ。
最初っから、ずっと俺はわかってたじゃん。誰を信じたらいいのか、とっくに気付いていたのに・・・それら全てを見て見ぬふりをしていた。それで大好きなバンドからも説教されてるなんて勘違いしてた。
やっぱり俺は、バカだな・・・
「だからあの、光輝、話が出来る場所ないですか?人がいなさそうなところで。」
そうたきなから言われ、少し悩んだ後、それなら・・・と、ここから少し離れているが、廃校になった小学校がある。あそこなら誰もおらず、周りに民家もないためゆっくり話が出来ると思い、そこを提案してみた。
満場一致で決定となり、じゃあ行こうかと、全員で八神さんの車にへと乗り込んだ。
しかし・・・汗かいてるからせめて着替えさせてほしかった・・・後、泣きすぎたから顔も洗いたい・・・
そしてしばらく車に乗った後、目的地である、廃校になった小学校に到着した。
気付けば陽が落ち出し、空の色は金色になりつつあった。
車を降りた後、尋問ではないが、それでもやはり言わなければならないことは沢山あるため、校庭のベンチに俺と千束とたきなは横並びで座っていた。
八神さんと海藤さんも来てくださいと言ったのだが、こういう時は君達だけの方がいい。と八神さんが強く提案してくださり、それを仕方なく承諾し、八神さんと海藤さんは遠くの方で話が終わるのを待ってくれている。
念のため、俺が逃げることに備え、そういった場合の対処がすぐに行えるように・・・ということで、俺を真ん中に座らせ、右に千束、左にたきなが挟むように座っている。もちろん、そんなことするわけないが。
友達とはいえ、流石にこんな美少女2人に挟まれていることについて、いつもなら緊張するのだが、これから話すことを考えていると、そんなやましい感情は一切出てこない。
さっき沢山泣いて、心の中で溜めていた色々な物が落ちたのか、これまでにないほどすっきりと、穏やかな心持ちで目の前の景色を眺めている中で、早速、俺から切り出した。
「・・・皆はさ、どこまで知ってるの?」
「ぜーんぶ知ってる。光輝のことだったら何でも知ってるよ。あの後、どこかの山に行ってたのも。」
「・・・そっか。もう、隠す必要もないってことだね・・・」
「光輝だって・・・私達のこと、知ってるんですよね?」
向こうがもうわかってるなら、こっちも何も隠す必要はないのだろう。
それに、もうこの2人なら何を言っても、受け入れてくれる。だから、こちらも正直に言うことにした。
「うん。2人がリコリスだってことも・・・助けたから知ってる。それに、隠れてその後の様子も見てたから、ミカさん達が協力者だってことも知ってる。」
「うわ、隠れて見てたの?」
「・・・実はね。」
「・・・まぁ、過ぎたことですしいいですよ。」
「ありがとね・・・あの時のビースト、アイツ、ザ・ワンって言うんだけど・・・」
「えっ!?そうなの!?」
「ビースト・ワンじゃないんですか!?」
俺がアイツの名前を言うと、2人はとても驚いていた。というか、ビースト・ワンって・・・?と、俺も俺でその名前に疑問を持ったため、こちらがまず説明した方がいいだろうとすぐに判断した。
「そう。アイツの本当の名前、ビースト・ザ・ワンって言うんだ。ビースト・ワンってのは・・・そっちで決めた名前?」
「そうですね。でも、まさかザがあるとないだけで、ほぼ正解だとは・・・」
「楠木さんのネーミングセンスに脱帽だわ・・・」
2人が驚いているのを横目に、俺はただそうなんだね・・・としか言えなかった。
そういえば俺も、ザ・ワンの名前の由来を聞いてなかったな・・・とその話を聞いて思ったのだが、いけないいけないと気持ちを切り替え、話そうとしていたことを話し始めた。
「言いたかったのはそれじゃなくて、一昨日、ザ・ワンの感覚を感じてすぐに行かなきゃいけないと思ってね。だからあんな顔して、それですぐ行こうと急いでて・・・それで・・・あんなこと言って傷付けて・・・改めて、本当にごめん。」
「もういいって。気にしないでよ。」
「むしろ、そんな事情があったのに、私達の方こそ止めてごめんなさい。」
「いや、これは何も言わなかった俺が悪いから・・・あの日以降ザ・ワンの感覚は感じてなかったし、それに、別の大きな反応もあってね。」
「別の大きな反応?」
「うん。それはまた後でゆっくり話すね・・・あの日さ、本当に驚いたよ。ザ・ワンと戦ってたリコリスが、あの時たまたま行った喫茶店の店員さんで、めっちゃビックリしたよ。」
「それはこっちも同じ。私達もゲームじゃなくて、現実であんなモンスターと戦うなんて夢にも思わなかったよ!あの時本当に必死でさ、私達の武器が全然通用しなくて、それでもやっとの思いでダメージ与えてさ、勝った!って思ったよ。」
「・・・あのさ、マジで言いたいんだけど、ザ・ワンにそこまでしてやれるなんて、凄いよ2人とも・・・」
「でしょー!・・・たださ、アイツ全然ピンピンしてて、その後尻尾に巻かれたら死ぬほど痛くて、隣見たらたきなも死にそうでさ・・・私達、ここで死ぬんだって思ったら・・・怖かった・・・怖かったよ・・・」
「・・・私もです・・・死ぬことも怖かったですけど・・・ただ、私は千束が、千束が死ぬことの方が怖かった・・・でも、そんな時に私達を助けに来てくれましたから・・・光輝が。」
・・・こういう場合、ヒーローならば、胸を張るのが正解なのかもしれない。
でも、あの時のことを思い出して、暗く、少し怯えた表情で話す2人を見て、誇る、というような気持ちはまるで出てこず、聞いているだけで・・・罪悪感に押し潰されそうだった。
もう少し早く駆けつけていれば、そんな恐怖を覚えることもなかったはずなのに・・・そんな顔をさせてしまっていることに、自分の不甲斐なさに、情けなくなってくる。
「・・・ごめん。もう少し早く行ってたら千束もたきなもケガしなかったし、そんな怖い想いもしなくてよかったのに・・・俺に、その力があったのに・・・本当に、ごめん。」
「ううん。ザ・ワンと戦って、私達を守ってくれた。それに、傷だって治してくれたじゃん。あの日の光輝、すーっごくカッコよかったよ。何にも気にしないでよ。」
「あの時、光輝が来てくれなかったら、私達、今ここにいなかったんですよ。光輝は、私と千束の命の恩人なんですよ。だから・・・」
千束とたきなが一呼吸置いて俺の方を向いた。次に何を言われるのか、もうわかっている。
けど、もう、その名前で呼ばれることは、何にも怖くない。
「「あの日、私達を助けてくれてありがとう。ウルトラマン。」」
・・・こんな感謝は、誰からも言われることはないと割り切っていた。
独りで居続けようとしていたから、そんなこと、起こるわけがない。
そう思っていた中で初めて言われた、その名前での感謝。
それも、新しく出来た、大切な大切な、友達から。
その言葉が嬉しくて、また涙が出てきそうだったが、グッと堪える。
ありがとうと言われたんだ。
ならば、こう返すしかない。
「・・・どういたしまして。ウルトラマン、より。」
とっくに認めてはいたけれど、ついに言葉にし、告白した。
─────俺が、あの時2人を助けた・・・ウルトラマンなのだと。
「・・・やっと、お礼が言えた・・・ずっと言いたかったんだよ。助けてくれてありがとうって。」
「・・・2人は、怖くないの?俺がウルトラマンだってわかって。」
「どうしてですか?だって、私達の命の恩人ですよ。怖いわけないじゃないですか。」
「・・・宇宙人だとか、思わないの?」
「光輝みたいなバカが宇宙人なわけないでしょ。だから全然、怖くなんてないよ。」
「・・・そっか。やっぱり2人には、かなわないな・・・」
このことを言うのがずっと、怖かった。誰に対しても。
だから、怖くないのかを確認しようとした時には、少し声が震えてしまっていた。
でも、それでも2人は優しく微笑みながら俺を見てくれている。その顔を見たことで、凄く安心した。
やっぱり、最初からこの2人を信じていればよかった・・・と今になって後悔するが、今からでも絶対遅くはないはずだ。
だからこそ、断言する。
千束とたきなを、これから先何があっても絶対信じるし、彼女達の味方でずっと居続ける。たった今、そう決めた。
「・・・何も疑いを持たずに、最初から2人を信じてたらよかった・・・ごめんね。」
「だから、もう何度も謝らなくていいって!ウルトラマンだって人に言えるわけないんだから!ホント、光輝は気にしいだなぁー!」
「とはいえ、最初から信じてほしかったですけどね・・・まぁでも、いいですよ。私達だってリコリスだなんて、周りには言えないですから。」
ありがとう、と感謝を言うと、もう一つ聞いていい?と千束から質問されたため、いいよと返す。
こちらも、もう隠し事はしないと決めたから、全て答えるつもりだ。
「・・・なんであの時、私とたきなのケガ、治してくれたの?」
・・・あぁ、それか。
正直恥ずかしいけれど、言葉にしよう。
「・・・嫌だったんだよ。千束とたきなのこと、何にも知らなかったけどさ・・・あんなに傷ついてる姿見たら、我慢出来なかった。人間のケガを治すの、ウルトラマンとしてやっちゃいけないって決めてたんだよ・・・それをやったら、キリがなくなるって・・・でもさ、それでも助けたかったんだよ。2人が痛そうにしてるの、これ以上見たくなかったから・・・ここで去ったら絶対後悔するって。だから、俺の力で治せるんだったらって思って・・・」
「・・・そうだったんだね・・・自分で決めたルール破ってくれてたんだ・・・ありがとう。私大好きだよ。光輝のそういうところ。」
「やっぱり光輝は・・・本当に優しいですね。ケガ、治してくれてありがとうございました。」
ありがとうと言われているが、むしろ感謝するのはこちらの方だ。
2人に打ち明けたことで、これまでにないほど、心が軽くなっている実感がある。
そこで一つ、わかったことがある。
やっぱり俺は・・・誰かに助けてもらいたかったんだ。
いや、正確に言えば・・・ただ、話を聞いてほしかった。わかってくれる人が欲しかったんだ。
その初めての相手が、千束とたきなで本当に良かった。
まさか、あの時助けた2人のリコリスが、自分の中でこんなに大切になって、こんなにも自分を助けてくれて、隣にいてくれるなんて、思ってもみなかった。
でも・・・自分で決めたルールを破って千束とたきなを助けたことに、後悔なんて全くない。
その結果、話を聞いてくれてわかってくれる良き理解者であり、こんな素晴らしい友達が出来たのなら・・・やってよかったと、胸を張ってそう言える。
「気にしないでよ、2人が元気なのが一番だし・・・なんかさ、ウルトラマンとして感謝言われるの、嬉しいんだけどさ、自分のことなんだけど自分じゃないみたいな変な感じ・・・」
「ふふっ、なんですかそれ?もっと自信持ってもいいんじゃないですか?」
「そうそう。光輝は皆を守る正義のヒーロー、ウルトラマンなんだから!」
「正義のヒーローだなんて、大げさだよ。日本の治安を陰ながら維持するリコリスの方が、よっぽど正義のヒーローだよ。」
「いやいや、ウルトラマンも同じでしょ?」
「むしろ、女子高生の殺し屋よりウルトラマンの方が、ヒーローとしてのウケはいいと思いますよ?・・・ウルトラマン、メッチャカッコいいですし。」
「えっ!?たきなもカッコいいって思ってたの!?」
「当たり前ですよ。だって、私達の命の恩人ですから。」
「・・・ありがとね。だったら、千束とたきなのケガ治したこと、やってよかったー!」
「こーら、調子乗らないの。」
夕陽に照らされながら、俺達は全員で笑い合っている。
もう、お互いに何も隠し事は無い。お互いが全てを知って、それを互いに全て受け入れて、本当に友達になった。
ウルトラマンとリコリスという顔を持っているのに、それでもこうして一緒に笑っていられる。
この時間がまた戻ってきてくれたことに、心の底から喜びを感じている。
やっぱり、俺はこの時間が今、一番好きだ─────
「いいのかター坊?俺らは口を挟まなくて。」
一方、八神と海藤は少し離れた場所でタバコを吸いながら、その様子をじっと、保護者のように見ていた。
「いいんだよ海藤さん。ああいう時は同い年同士でいることが大事なんだと、俺は思うよ。」
ふぅーっと、肺に入れていたタバコの煙を空に向けて吐き出しながら、海藤と話を続ける。
「俺はさ、青春、っていうのを味わえなかったから、こんな状況だけど、あの3人がすごくキラキラしてて、正直羨ましいよ。」
「だな。俺も味わいたかったぜ、あんな青春をよ。」
携帯灰皿にタバコを押し付けながら、これはもう少し掛かりそうだなと思い、八神は新しいタバコに火を点けた。