+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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ヒロ〇カにACI〇MANが出てきたですって!?(ガタッ)
当方、読んでないですがそのバンドのファンで候。
それと、5月27日に一番くじティガ・ダイナ・ガイア発売。その翌週にリコリコ一番くじ発売。狙い撃ちされてるのかワシは???破産させる気か???
あの食堂のボタンを押しながらツッコミを言れたい今日この頃。


説明パート、後編です。
ビーストとは何か、そして・・・?


本編に入る前に、やはりこれに触れなければならないでしょう。

帰ってきたウルトラマンの主役である郷秀樹を演じた、団時郎さんがとうとうウルトラの星へ旅立っていきました。
いずれ、その時が来るとは思っていましたが、ただ、ついに、と言いますか・・・ウルトラマンの中からついに、ウルトラの星へ旅立つ方が出てきてしまいました。
この悲しさは、これまでのどのヒーローの訃報よりも辛いです。
この場を借りて、ご冥福をお祈りいたします。
そして郷さん、ありがとうございました。けど寂しいよ。





Like attracts like

「スペースビーストは・・・ネクサスが別の世界でザ・ワンを倒した時に空気中に流れた細胞が、その世界の地球の様々な生物・植物と結合したことで生まれた存在です。」

 

突如としてこの世界に現れたビースト、いやスペースビーストそもそもの誕生の経緯を伝えると、その事実に全員が驚き、問い詰め寄ろうとするが、待ってください、と言わんばかりに手のひらを前に突き出し抑えると、スペースビーストが誕生した経緯を説明していく。

 

「実は、ザ・ワンもネクサスと同じ、別の世界の存在です。そして・・・ネクサスが一度倒した存在なんです。ザ・ワンは、宇宙からやって来た存在で、ネクサスもそれを追って地球にやって来ました。ただ、実はその当時、ネクサスはとある事情で力の大半を失っていて、今の姿とは違う、別の姿。わかりやすく言えば、弱体化した姿でザ・ワンと戦っていたそうなんです。その時に、その世界で最初にネクサスと一体化した適能者が変身してザ・ワンと戦って倒したんですけど、力の大半を失っていたこともあって、ザ・ワンを完全には消し去れなかったんです。その結果、空気中に流れたザ・ワンの細胞が、その世界の動物や植物などと結合して生まれたものが、スペースビーストです。これが、ビーストの正体です。」

 

事細かにザ・ワンについてとその過去。そして、スペースビーストの誕生の経緯について話したが、その中で誰もが疑問に思ったことがある。それについて、代表してクルミが質問してみた。

 

「一つ聞かせてくれ。ザ・ワンの細胞から、スペースビーストが生まれたんだよな。だったら、なんでそのザ・ワンが今生きてるんだ?ネクサスが倒したのに、生きてるなんておかしいだろ。それに、ザ・ワンもスペースビーストも別の世界の存在だってのに、どうしてこの世界に現れたんだ?」

 

スペースビーストが死んだ、正確に言えば倒されたザ・ワンの細胞から生まれたものならば、ザ・ワンが生きているのは理屈としておかしい。そして、その細胞から誕生したスペースビーストも別の世界の存在だというのに、現在この世界に両方が存在している。その原因について誰もが聞きたい中、そういえば・・・と、たきなは先程、ザ・ワンと対峙した時に光輝が口にしていたある言葉を思い出した。

 

「さっき、ザ・ワンに向かって、デビルスプリンター・・・?って言ってましたよね。ひょっとして、それも何か関係があるんですか?」

「それね、関係があるようで、ないんだけどね・・・」

「ないんですか・・・」

「・・・ただ、スペースビースト以上にヤバいもの、ってのは確か・・・」

 

苦虫を噛み潰したような顔をしながらコーヒーを一口口に含み一息吐いた後、覚悟を決めたかのように、よし、と小さく口にすると、真剣な表情で全員に向き合う。

 

「今からする話でもし危険に遭うようなら、俺が、ウルトラマンネクサスとして皆さんのことを全力で守ります。ただ、あらかじめ伝えておきますね。ここからの話は、もう更にスケールがデカすぎる話なので、わかんなかったらそれでいいです。」

 

今から話す情報を聞くだけで、そのようなリスクが生じる。ということはつまり、それほどまでに危険な話だということだろう。全員が少し覚悟を決めるが、と同時に、わからなかったらそれでいい、と伝えたのはどういうことか。

 

その理由は、聞けばわかった。

 

 

ザ・ワンが今生きている理由として、地球外生命体、別の世界の生命体であるアブソリューティアンという宇宙人が、ザ・ワンをその当時の時間軸から連れてきたため、生きているということ。

彼らの言い方をすると、このザ・ワンは"並行同位体"だという。

 

デビルスプリンターとは、かつて別の世界で生まれた悪のウルトラマン、ウルトラマンベリアルの細胞の破片から生まれた因子であり、それを取り込んだ怪獣は凶暴化すること。

そして、そのデビルスプリンターをアブソリューティアンがザ・ワンに埋め込んだ。特に今回は、他の怪獣と違い、スペースビーストだけが持つビースト特有の細胞と掛け合わさったことで、異常なまでにパワーが上がり、結果あのような姿になってしまったのだろう、と。

 

ビーストがこの世界に現れた理由は、ネクサスが居た世界とは異なる、他のウルトラマンが存在している別の世界で起きた、"ギャラクシークライシス"・"ダークスパークウォーズ"・"ウルトラフレア"・・・という、時空の歪みが起きた事件がいくつかあったそうだ。

特に前2つはただ一介のウルトラマンと怪獣・侵略宇宙人との戦い、では収まらない程の大規模な戦いであり、それこそ別の世界のウルトラマンまでもが集まった、壮絶な死闘だったという。

 

それらの事件の影響は凄まじく、"それが次元の壁を越え、別の世界にまで影響を及ぼしたというのだ。"

その結果、"本来別の世界に居た怪獣がそれに巻き込まれて別の世界に飛ばされ、暴れ回る事例もあった。"

そしてそれは、ネクサスが居た世界に存在していたスペースビーストも偶発的に対象になり、別の世界にスペースビーストが何体か飛ばされた事例が、現にあったそうだ。

 

その影響がたまたまこの世界にも起きてしまったため、ザ・ワン以外のビーストがやって来てしまった・・・それが、この世界にスペースビーストが現れた理由、だということ。

 

そして、ビーストがこの世界に現れたからこそ、アブソリューティアンも同族が居るということことで、ザ・ワンを連れてきたのだろう、と。

ここに関してはネクサスでもわからないということなので、あくまで仮定でしかないが、そうだろうとも付け加える。

 

 

その全てを話し終えた後、当然ではあるが─────あまりにもスケールの大きすぎる話に、全員頭を押さえていた。

 

 

「・・・もう全てが理解不能です・・・」

「あたし、ちょっと酒持ってくるわ・・・」

「ミズキ、悪ぃ。俺とター坊にも頼むわ・・・」

「・・・ごめん、光輝君。俺もう、さっぱりついてけねぇ・・・」

「私もですよ八神さーん・・・こんなん何をどう理解しろってハナシー・・・あー聞きたくなかったー・・・」

「だからわからないんだったらそれでいいって言ったんだよ・・・」

 

全部教えるとは言ったものの、流石に別の世界の宇宙で起きた話を持ってくるなんて、事実とは言え、ウルトラマンでも何でもないただの地球人にしてみたら、ついていけなくても当然だろう・・・と一人思っている中で、クルミとミカは頭を抱えながらも、少しでも冷静にいようと努め、この後起こりうる脅威のリスクを考えていた。

 

「その、アブソリューティアンは地球には攻めてはこないのかい・・・?」

「それはないですね。ネクサス曰く、彼らが狙っているのは光の国なので、自分達から関与することはないだろう、と。」

「・・・というか、並行同位体って・・・過去からも別の世界からもその時間に存在する悪人や兵器連れて来放題とか、ヤバすぎんだろ・・・ボク達が相手にしてるやつらが全員アリんこレベルにしか思えなくなってくるぞ・・・それに、時空の歪みとか・・・そんなんネットスラングだろ・・・」

 

ザ・ワンとビーストがこの世界に現れた理由についてもわかったが、時空の歪み・別の世界・並行同位体・・・という、常識外のとんでもない単語がポンポンと飛び出し、そんなあり得ないことが現実に起こっているなど、当事者であるウルトラマンネクサス、と一心同体になっている適能者からの言葉とはいえ、到底信じられなかった。

 

流石にこんなスケールの大きすぎる話をしてしまったので、気分を変えようと、他に質問ないですか?と光輝は慌てて聞いてみるも、やはり想像していた以上の話に全員の脳内がパンクしており、これ下手に次聞くとまたえらいことになるかもしれない・・・と、誰もが遠慮しており、なかなか次の質問が出てこない。

 

「・・・あの、それなら、私からいいですか?」

 

その空気の中、恐る恐るたきなが声を掛けると、これまでの話の中で出てこなかった、とあることについて質問をしてみた。

 

 

「どうして、スペースビーストは犯罪者やテロリストが集まるところによく現れていたんですか?人を襲うだけなら、明らかに武装してない民間人を狙った方がいいと思ったんですけど。」

 

 

その指摘は、実はビーストの話をDAから聞いた当初から今まで、ずっと気になっていた。

いくらスペースビーストとはいえ、犯罪者やテロリストという、武装している集団に行って襲う、というのが、かねてより変だと気にはなっていた。

もし人を捕食するならば、そんなところにわざわざ行くより、民間人のみを狙った方が楽に済むのはもちろん、人も多いのに・・・と。

 

それに対し、そっか・・・そこも知らないんだ・・・と小さく呟くと、一人口元に手を当て、少し黙り込み考え込んだ後、たきなの方を向いた。

 

「たきな、それについてね、一個大事な情報が欠けてるんだ。」

 

どういうこと?と疑問に思うが、それを待たずに、逆にあることを質問された。

 

「ビーストって、何が餌だと思う?」

「えっ・・・?人間、じゃないんですか?これまでの事件から、その場の人間の多くが消えていましたし、あの時ザ・ワンも食べていたと言っていましたから・・・あるいは、犯罪者やテロリストですから・・・銃火器とかですか?」

「重火器は食べないけど、人間はそう。けどね・・・」

 

そこまで言うと、またも小さくため息をついて目線を下に落とす。

そして、大事な情報と言った、ビーストが捕食している、餌について答えた。

 

「ビーストが本当に捕食しているのは・・・”人間の恐怖っていう感情なんだよ。”」

「恐怖・・・?感情・・・?」

「・・・なるほど、本当に最悪の存在だな・・・」

 

恐怖、という感情を食べることについて、全員がいまいちわかっていなかったが、一人クルミは何かピンと来るものがあったのか、苦虫を噛み潰したような表情をしながら呟いた。それを横目に見ながら、まず、前提なんだけど・・・と予め伝えた上で、とある説明を始める。

 

「そもそも、ビーストが元々存在していた世界だと、そいつらを倒す地球防衛隊がいたみたいなんだよ。確か・・・"ナイトレイダー"、だったかな。」

「ナイトレイダー・・・?」

「リコリスとかリリベルみたいなもんと思ってもらえばいいよ。そのナイトレイダーは、宇宙人の技術を使った装備を持っているから、その人達でもビーストを倒すことが出来たんだよ。それこそ、"ブラストショットと同じくらいの強さの銃が普通に配備されてる。"」

「・・・は?」

 

ナイトレイダー、という別の世界の地球防衛隊。それが持つ装備は宇宙人の技術を使っているという、SF映画のような話の中で、ありえない言葉が飛び出した。

ブラストショットと同じくらいの強さの銃が、普通に配備されてる。それについて全員が思わず目を丸くすると、一方の光輝はまたも小さくため息を吐いた。

 

「・・・本当にそうなのよ。ナイトレイダーの銃火器は、ブラストショット同様、細胞レベルでビーストを完全に消滅させられる。それ以外にも、専用の戦闘機とかもあるみたい。だから、ぶっちゃけ言えば・・・ウルトラマンネクサスが要らないくらい、ナイトレイダーは強い。」

「ネクサスが不要・・・」

「えげつな・・・」

「そんなもん一般兵に配備されてるとか・・・技術力どうなってんだよ・・・」

「もう、リコリスもDAもいらないな・・・」

「というか、警察すらいらねぇって・・・」

 

ブラストショットだけでもオーバーテクノロジーなのに、そのナイトレイダーという別の世界にある地球防衛隊の装備ですら、同じレベルの能力を持つ銃火器がある。それも、配備されているということは、量産がなされている、ということだ。そして、適能者である光輝が、ネクサスが不要、とまで言い切った。

つまり・・・"人類の装備だけで、ウルトラマンに匹敵するほどの力を持っている、とも言える。"

そんなあり得ない話に、再び全員が頭を押さえていると、この話を先にした理由を口にした。

 

「そういったナイトレイダーとか、それに協力する人や応援する人々。つまり、人類一丸となってビーストと戦っていたから、"実はビースト自体、種としてその世界だとかなり弱体化してたんだ。だから、この世界に来たビーストも、来た当初はすでに弱体化した状態だったんだよ。"」

「嘘でしょ!?」

「あれで弱体化って・・・!?」

「・・・信じられん・・・」

 

この世界に現れたスペースビースト。人類外の未知の生命体であり、倒せるのかどうか未だにわかっていない中で、適能者である光輝は、それらビーストはこの世界に来た当初、弱体化していたと言い切った。とはいえ、あんな怪物がそもそも弱くなっていたなど到底信じられず、全員が呆然とする中、ようやく結論について切り出す。

 

「そんな中でこの世界にビーストが来た時に、俺も最初のビーストがどこに現れたのかわからないし、あくまで仮定、の話なんだけど・・・アイツらはこの世界に来てかなり早い段階で、犯罪者やテロリストを襲ったと思うんだ。そこで奴らは悟ったんだと思う・・・"そこに行った方が、恐怖のエネルギーのコスパが高い、ってことに。"」

 

恐怖のエネルギーのコスパ、という言葉に、全員が頭に?マークを浮かべていたが、それを見越した上で説明を始めた。

 

「犯罪者やテロリストが行動を起こした時に、もし民間人がその場にいたらその瞬間に恐怖が生まれる。でもその後に犯罪者やテロリストがまずもって勝てない、ビーストという存在が現れたら、ただの恐怖心だけじゃなくて、強者だと思っていた自分達以上の存在が出て、持っていたプライドなんかが全て壊された時に出る恐怖は、民間人をただ恐怖させるよりも恐怖の濃度が濃くなる。もしそこに民間人がいたら尚良い。恐怖、って餌がただでさえ多くなるからね。おまけに、そういう人ってのは大抵人目につかない場所で暗躍するもの。ビーストも元居た世界だと、弱体化していたからか、自分達が人間から殺される種だというのを本能的に察している。長生きしたいのなら、人目に付かないところで襲うのが生き伸びるためには一番いい手立てでしょ。だから、まさに犯罪者やテロリストはビーストにとって、絶好の餌場だったと思うんだ。まぁもし、仮に犯罪者やテロリストが一人もいなくなっても、だったら民間人を狙ってもいいっていうね。事実、そういった場所にもごく僅かに現れてたことがあった。とはいえ、秘密裏に俺が掃討してたんだけどね。」

 

ビーストが種として弱体化しているために、恐怖を食べるための効率の良い方法として、犯罪者達のところに行けば、僅かにしか人間がいなくても濃い恐怖が食べられる。そうでなくても、別に民間人を狙ってもいいという、恐怖を餌とするビーストの恐るべき習性を語るが、まだ続きがあるように、それにね・・・と付け加えると、一呼吸置き、これまで以上に苦い顔を浮かべる。

 

「言いたくないけど・・・"リコリスも、ビーストからしてみたらいい餌なんだよ。"」

「リコリスが餌!?」

「ちょっと、それどういうことよ!?」

「光輝、それはさすがにちょ~っと、冗談が過ぎるんじゃない・・・?」

「・・・いや、千束、光輝君は今まで嘘を言っていないだろう・・・ただ、とはいえ、聞かせてくれ。それは、本当なのか・・・?」

「・・・全部、事実です。」

 

リコリスが餌、という言葉に全員が驚き、中でもDAに所属している・していた喫茶リコリコ側の4人は思わず詰め寄るが、それを見越してか、苦い顔を浮かべながらもはっきり言い切ると、その理由を語り出す。

 

「さっき言ってた濃い恐怖を発生させる強い人間。つまり、犯罪者もリコリスも、ヤツらから見たらどっちも変わらない。結果、人が少なくても上質な恐怖を効率良く食べられるから、リコリスもビーストからしてみたらいい餌なんだよ・・・だから、"時にアイツらは、あえて犯罪者を残しておいて、待っていたりもしてた。餌をおびき寄せるための、餌として。"本当に、ふざけた話なんだけどね・・・!もちろん、そうなる前に叩き潰してはいたんだけど・・・」

 

リコリスさえも餌にする、その話と、ビーストのやり口を聞いて戦慄した。

自分達は犯罪者やテロリストから人々や日本の治安を守っているのだが、ビーストからしたら、そんなことどうでもいい。人間の中でも強くて濃い恐怖を出す存在として変わらないから、いい餌と思われている。ただ、それ以上に何よりも、ビーストがリコリス全てを餌として見ているということに、千束とたきなも口にはしないが、腹の底から沸々と怒りが込み上げてくるのを感じている。

 

ただ、その中でどうしても気になったことがあり、怒りが込み上げてきているというのもあるが、半ば八つ当たりのようにたきなは質問を重ねた。

 

「でも、なんでビーストはそんな巧妙なやり方が出来るんですか!?そんなこと会話でもしなければ出来ないでしょ!だったらどうして!?」

「ビーストは、"ビースト振動波"と呼ばれる特殊なテレパシーのようなものを使って、他のビーストと情報を共有するんだよ。その場にいなかったとしても・・・おそらく、最初にテロリストを襲ったビーストが全体に情報を共有したんだろうね・・・ここはいい餌場だぞ、って。で、もっと厄介なのが、その情報を元に、ビーストはどんどん利口になっていくんだよ。つまり、"人を襲えば襲うほど知性を持って、人を捕食していく。それと同時に、種全体の知性まで自動的に底上げされていく。"だから、ビーストはこうも呼ばれてるんだよ・・・"文明ハンター"、ってね・・・!」

 

最後の言葉には怒りが込められていたが、それを聞いている全員もまた、同じ気持ちだった。

ビーストの話を聞いて、どこをどう切り取っても最悪、としか言葉が出てこず、ただの怪物どころの話ではなかった。人類から見れば、スペースビーストは害悪・天敵、としか呼べない。

そんな存在と、今自分達は立ち向かおうとしているのだと、光輝以外の全員は半ば恐怖すら感じてきていた。

 

「本当、クソ最悪な存在過ぎて吐き気しそうだわ・・・こんなのが増えたらあっという間に人類は滅ぶわよ・・・」

「その通りです。だから、徹底的にこっちも叩きのめしてたんです。細胞一つまで残さないように。」

 

ミズキの唸るような呟きに同意している中でもう一つ、以前、とあるリコリスに起きていたある事件をたきなは思い出した。

 

「・・・そういえば光輝、もう1つ聞きたいことがあるんですけど、前に一度ビーストに襲われたサードリコリスがまた狙われたって事件があったんですけど、あれはどうしてですか?」

「あれか・・・多分、なんだけど・・・そのリコリスを助けた時、たまたま、俺も気付けなかったビーストが残っていて、取り逃がしたんだと思う。で、その残っていたビーストが他のビーストに情報を共有したんだと思う。一度捕食対象者を逃しても、その恐怖の記憶が消えることは無いし、逆に増長した恐怖が出ると思われて、彼女は狙われたんだと思う。」

「なるほど・・・だから。」

「でも、助けたんだよね。私知ってるよ。」

「当たり前でしょ。リコリスだろうが誰だろうが、ビーストから人々を守ることが、俺の使命だからね。」

「カーッコいい。よっ、リコリスの守護神ウルトラマンネクサス様!」

 

冗談半分・本気半分といった具合に光輝に向かって千束が茶目っ気を含んで話し掛けているそんな中、一人八神は口元に手を当てて考え込んでいた。

そして、今までの話の中で気になっていた、あることを質問してみた。

 

「光輝君、俺からも聞きたいことあるんだけどさ・・・"ビーストは一度襲った人間をもう一回つけ狙う習性って、あったり、する・・・?"」

 

その質問に対してすぐに顎に手を当てて、少し苦笑いを浮かべ、答える。

 

「それは・・・ない、ですね。そのビーストが情報を他のビーストに伝える前に俺が倒すので、何かしらでその場から取り逃したビーストがいない限りは、大丈夫です。」

「そうだったのか・・・だったら、姫矢さんにデータ削除してもらわなくてもよかったじゃん・・・」

 

姫矢さん?と突然出てきた人物の名前に疑問を持つと、こうしてDAやリコリコとも繋がるきっかけになった姫矢のことについて話すと、あぁあのどっかのビルで助けた男の人ですか!と、光輝もまたその時のことを思い出した。

そして、何故今そんな話をしたのか気になって聞いてみたところ、少し前にリコリスの司令である楠木との一連の会話を八神から聞くと、なるほど・・・と顎に手を当てた。

 

「でも、その判断は正しいです。」

 

自分達が考えていたことと違うのが明らかになったにもかかわらず、判断が間違っていない、と言い切った。何故かと思っていると、その理由を語り始める。

 

「先程も言ったように、ビーストは恐怖という感情を餌にしています。もし、ビーストの存在を多くの人が認識して恐怖を抱くと・・・"ビーストの大量発生に繋がってしまう可能性があるんです。"」

「何だって!?」

「嘘でしょ!?」

「恐怖を覚えたら増殖するって・・・いやいや!ありえないってありえないって!?そんな生物、いるわけない・・・でしょ・・・?」

「・・・全部、事実。だから、その、楠木って人の判断は、勘違いだとはいえ正しいし、不幸中の幸いだったよ。」

 

人々がビーストに対して恐怖を覚えると、ビーストが大量発生する恐れがある。とはいえまさか、生物のメカニズムとして、そんなことはあり得ない・・・と誰もが反論したいのだが、今まで光輝は一つも噓は言っていない。だからこそ、これもまた、事実なのだと、すぐに飲み込めるものではないが、何とか全員が受け止めた。

 

「抑制する方法はないのか・・・?」

「全部倒せばいいだけです。0になれば終わるので。それに「おい光輝」

 

説明をしている中で突然、クルミから呼ばれたためそちらの方を振り向くと、光輝に向けてニコニコと笑顔を浮かべていた。

だが、全員すぐにわかった。

 

 

顔は笑っているが・・・明らかにその後ろに、怒りのオーラがバリバリに出ている。

 

 

「じゃあ、お前がザ・ワンと戦った時にドローンを壊した理由も・・・それか?」

「・・・は、はい。映像を流して、それを見た誰かがビーストに対して恐怖を覚えたらマズイと思って壊したんですが・・・?まさか・・・あのドローンって・・・?」

 

その言葉に更にニコニコが抑えられなくなるクルミの顔を見て、急速に冷や汗をかきだす。そしてすぐ・・・

 

 

「発生を抑えるためとはいえ大変申し訳ありませんでした!すみませんでした!」

 

 

クルミに向かって頭を床に付けて謝罪をしていた。いわゆる、土下座。

 

確かにあの時、何故ビーストだけでなく巨人、いやウルトラマンネクサスまでしたのか。その理由が今の今まで不明確だったが、これでようやくはっきりした。

とはいえ、恐怖の抑制のため、そしてビーストの大量発生を抑えるために壊したのは百歩譲って納得出来た。が、何の説明もなく壊され、そして今まで弁償もしてもらっていないことについては、怒って然るべきだった。

 

「弁償しろ弁償ー!ウルトラマンならそんくらい出来んだろ!?」

「は、はぃぃ!大変申し訳ありませんでした!」

 

精神面はともかく、外見だけを見たら小学生程度の女の子にしか見えないクルミ。そのクルミに向かって、男子高校生が土下座をし、大慌てで頭を何度も床に打ちつけている。関係を知っている自分達はまだよくとも、傍目から見たら滑稽にしか見えないその光景に、他の全員は吹き出すのを何とか我慢している。

 

そんなクルミと光輝のやり取りを横目に、その中で一人、ミカはこれまでの話を聞いて、あることに疑問を持っていた。

 

それは、以前千束とたきなを助けた時に、ザ・ワンを撤退させた後に行っていた行動について。そして、先程説明したブラストショットのオーバーパワーとしか言えない威力。加えて、度々言っていた、細胞レベルで、という言葉。

 

─────何故彼はそこまで、そんな細かすぎるレベルで、ビーストを倒している・・・?

 

その理由を考えても、最もらしい答えが出てこない。だからこそ、怪訝な顔をしながら質問をしてみた。

 

「光輝君、もう一つ聞いていいかい?・・・何故、細胞レベルで、君はビーストを倒すんだ?倒したのならば、後はDAやクリーナーが処理を行うが・・・何故、そこまでする必要があるんだ?何故、私達にデータを・・・ビーストの死骸や残骸を残してくれなかったんだ?そうすれば、私達だって研究をし、戦うことが出来た。そうすれば、君がそこまで頑張る必要もなかっただろう。」

 

その言葉に、クルミに向かってペコペコ頭を下げていた上半身の動きを止め、足を崩し、ミカの方に体を向けた。

 

「・・・ですよね。そこ、気になりますよね。」

 

少し苦い顔を浮かべた後、これはあんまり伝えるべきじゃないと思ったんですけど・・・と予め伝えた上で、これまで以上に表情を歪める。

 

「人間の前にビーストの死骸を残すわけにはいかなかったんですよ。どうあっても、絶対に。」

「・・・何故だ?」

 

一つ深呼吸を入れると、口にした。

ビースト、最大の問題を。

 

 

「ビーストは・・・"死んでも復活するんですよ。破片一つどころか、細胞が僅かにでも残っていれば、その残った細胞から再生・増殖する性質を持ってるんです。だから、細胞レベルで消し去っていくしかないんです。"」

 

 

ビーストは復活する。それも、残った細胞があれば再生・増殖するという、大量発生同様の恐ろしい性質を言葉にすると、その性質に誰もが驚き、目を見開く。

 

「そんなバカな!?ありえない!あんな怪物が生き返って・・・増殖するだと!?」

「本当です。だから何も残せなかったんです。ザ・ワンと戦った時も、俺は念のため、ヤツの痕跡や細胞、破片から復活しないように、自分の力を周囲に分散させて細胞を消し去りました。多分、ザ・ワン以外の人間サイズのビーストなら、正直リコリスでもリリベルでも、それこそ自衛隊や警察。下手したら八神さんや海藤さんでも対処することは出来るかもしれません。けど、細胞レベルで消滅させないと再生します。なので、ビーストを完全にこの世界から消し去るなら、細胞を分子レベルで分解・消滅させる強力な力が必要です。」

 

分子レベルで敵を消滅させる。そんな超兵器、この現代にあるわけがない。それこそ核兵器でも持ち出さなければ・・・と思っている中で、誰もがある考えに行きついた。

 

そして、示し合わせたように、目の前にいる、諦めにも似た笑顔を浮かべた光輝に目線をやった。

 

 

「・・・なので、俺は細胞レベルで徹底的にビーストを叩き潰してたんですよ。ウルトラマンネクサスの力じゃなきゃ、ビーストをこの世界から完全に消し去れないので。ただ・・・」

 

 

そこから何か話そうとした矢先、斜め前に座っていた千束から、強く両肩を掴まれた。

 

「ねぇさっきから何なのそれ!?なんでそんなに光輝が一人で頑張んなきゃいけないの!?どうして!?」

「千束・・・いや、あのね、」

「あのねじゃない!おかしいって思わないの!?自分しか出来ないなんて、それじゃ、ビーストを全部倒すまで光輝がずっと戦わなきゃいけないってことじゃん!それいつまでかかるの!?ねぇ!」

「ごめん、ちょっと落ち着いて!」

「落ち着けるわけないじゃん!こんなのどう聞いたっておかしいよ!!だって・・・ウルトラマンネクサスは、光輝は、都合のいい兵器じゃないんだよ!人間なんだよ!!こんなのおかしいよ!!」

 

この話には実はまだ続きがあり、そのことについて話したいのだが、鬼気迫る様子で詰め寄る千束に、次の言葉を言い出せないでいる。

一方の千束は言い終えると、怒りや悲しみからか、顔を俯けて黙り込んでしまう。

確かに、話だけを聞けばこの世界の人間にはビーストを倒すことは出来ない。だからこそ、この先もずっとネクサスが、光輝が戦っていかなければならないことを意味しており、そう聞こえても仕方がなかった。

 

ただ、当の本人は一つ小さくため息をつくと、千束の腕を2回ほどポンポンと叩いて、肩を掴んでいた腕を握って、ゆっくり下ろした。

 

「あのね、これも言おうとしてたんだけど・・・多分、今、この世界に残っていたビーストのほとんどは、もうすでにあのザ・ワンが捕食したと思う。」

「・・・えっ?」

 

まさかの言葉に、俯いていた顔を上げて驚く。そうして顔を上げて見た光輝の表情は、いつも通り優しく笑っていながらも、その目は真剣だった。その顔を見て少し安心し、表情が少しだけ戻ったのを見て、光輝は言おうと思っていたことを話し始めた。

 

「そもそもね、この数か月俺がビーストを殲滅していたから、残っている数自体そんなに多くなかったんだ。だから、あのザ・ワンを倒せばほぼ終わると思うし、仮に残っていたとしてもごく僅かだと思う。それに、別の世界からビーストが入り込むことだってもうない。これはネクサスもそう言ってる。」

「本当に・・・?嘘言ってないよね?」

「本当にそう。信じて。」

 

その表情だけでなく、最後の信じてという言葉に、理由はわからないが、とても安心出来た。

 

 

─────あぁ、光輝は、私が思っている何倍も・・・強いんだ。

それは力が、という意味ではなく、精神性が、という意味で。

これは元々そうだったのか、あるいは戦う中で、徐々にそういう精神状態に変化していったのか。

いずれにせよ、凄く、落ち着く。やっぱり光輝は、皆を守る、ウルトラマンなんだ。

 

 

・・・でも、それじゃ・・・誰が光輝を、守ってあげるんだろう・・・

 

 

その顔を見ながら色々なことを考えていると、ただね、と光輝は切り出すと、またも真剣な表情に切り替わる。

 

「これはザ・ワンの性質なんだけど・・・アイツはどんな生物でも取り込んで、成長していくんだよ。さっき戦って感じたことなんだけど、千束とたきなを助けた時に俺はその能力を潰したはずなのに、デビルスプリンターの影響かそれが戻っていて、更に、前以上にヤツの体からビーストの反応を多く感じた。元々ヤツがいた世界でも、スペースビーストが一つに集まって、ザ・ワンに戻ろうとしたってことがあった。多分、本能的にその能力を使ったことで、この世界に残っているほとんどのビーストを集めて、取り込んだんだと思う。それだけじゃなくて、他の色々な動物も取り込んで、加えてデビルスプリンターの力も混ざった結果が、さっきのあの姿。だから、実を言うと、あの姿はまだ進化の途中だし、早くしないと、いずれ俺でも倒せなくなるかもしれない。だから・・・」

 

一呼吸置き、千束だけでなく、全員の方を一度見渡し、ネクサスとして決めた、ある覚悟を口にした。

 

 

「次が、ザ・ワンとの最後の戦いになる・・・いや、そうする。次で、終わらせる。この命に代えてでも、ザ・ワンを倒す。」

 

 

今までの話を聞いてきて、スペースビーストという存在は、想像していた何倍・何十倍も、規格外の怪物だった。常識が通用しない、という言葉はこのためにあるようなものだろう。

それとたった一人、ただの人間。それも、高校生という、大人にもなっていない子供が背負うにはあまりにも大きすぎる力がある中で、自分だって怖いだろうに、それを見せず今までずっと独りで、ビーストと戦い続けてきた。

そんな彼が遂に、そのビーストの大元とも言えるザ・ワンとの戦いを、次で最後にすると宣言した。加えて、命に代えてでもと、迷いなく言い切った。

そのあまりにも年齢不相応の、覚悟を決めた目に、思わず全員、何も声を掛けられずに黙り込む。

 

「・・・とはいえ、絶対勝ちますけどね!だから千束、大丈夫!アイツさえ倒したら、皆万々歳万事解決一件落着だから!ね!」

 

ただ、当の本人は思いのほか重くなってしまった空気に我慢が出来なくなったことや、目の前で心配してくれていた千束にも申し訳なさを感じたため、トーンを上げて気丈なよう振る舞うが、それを見透かされてか、頭をペシンとはたかれた。

 

「痛った!何すんの!?」

「・・・バカ!命に代えてもなんて言わないで!命、大事にしてよ!」

「わかってるわかってる!相討ちも負けるも絶対しないから!」

「本当!?約束する!?」

「するする!絶対に勝つ!約束する!」

「約束だからね!約束破ったら次こそ本当に絶交だから!!ついでにリコリコも出禁にするから!」

「えー・・・そこまで・・・」

 

絶交だけでなく、出禁もという言葉に思わず困り顔をしていると、少しずつ千束の肩が震え出す。

 

「・・・プッ、フフッ、アハハハハッ!いやいや、そんな困んなくてもいいじゃん!」

「いやだって、それじゃ・・・謝れないしウチのもの持ってこれないじゃん!ホント、冗談きついって!」

 

とうとう千束の方が我慢が出来なくなり、吹き出し笑い出すと、それを見た光輝もまた、いつもの調子に戻る。

その会話で空気が少し軽くなった後、ビーストについて、知っていることは全て伝えたと全員に伝えると、ようやくビーストについての話が終わった。

 

これで全員の聞きたいことがある程度聞けたので、一段落したと誰もが思っていた、そんな中・・・

 

「あっ、そうだ。それ聞こうと思ってたんだよ。」

 

海藤が何かを思い出したかのように、今となってはそこまで重要ではないかもしれないが、とはいえどうしても聞いてみたかったことを質問してみた。

 

「今更聞く必要もねぇかもしんねぇけどよ・・・"どうして、今までウルトラマンネクサスになれることを黙ってたんだ?"」

 

それは、シンプルでありながら、重要なことだった。何故、今までなれることを黙っていたのか。その理由は色々あるかもしれないが、改めて彼の口から聞いてみたかったのだ。

光輝もまた、その質問に対して聞かれると思っていたのか、ですよね・・・と苦笑いを浮かべながら、もう単純ですよ。と軽い口調で返す。

 

「さっき話したリリベルだってことと同じですよ。ここだってそう。千束もたきなもリコリスだって言えない。ミカさんもミズキさんも、クルミさんも人に言えない顔がある。要は、それと同じです。加えて、この世界に本来いないウルトラマンという存在を兵器として利用するために、捕獲されて、研究のためのモルモットにされる可能性も考えてたから。人類にウルトラマンの力なんて不用意に持たせたらえらいことになりますし、いずれ、人類同士で滅ぼし合うことになる。そんなことのためにウルトラマンの力はあるんじゃない。特にDAなんてまさにそういう組織だから、それはマズいと思った。だから言いたくなかったんです。」

「・・・もしかして、私達に言えなかったのって・・・?」

「そう。千束とたきなはリコリスで、ミカさん達も協力者だから、俺を捕まえてDAに引き渡すんじゃないかって・・・そう思ってたのが理由。だから、言いたくなかったし、心から信じられなかった。」

 

なるほど・・・と全員が納得している中、光輝の斜め前に座っていた千束とたきなはその理由を聞いて同じく納得しつつも、はぁ・・・と、同じタイミングで深いため息をついた。

 

「それが私達を信じてなかった理由だったんですか・・・」

「あのさ、私達が光輝にそんなことすると思う・・・?」

「今はもうしない、ってわかるけど、こっちも何も知らない中で信じろって言われてもそりゃ無理だって・・・だからバイト先に電話してきた時、バレたって思って本当に怖かったんだよ。でもその後も一向に捕まえようとしないから、俺も俺でずっと疑問だったんだよ・・・とはいえ、そっちもリコリスって言えなかったし、こっちもネクサスだって言えるわけなかったから、おあいこにしよっか。」

 

その説明に納得し、お互い笑い合っているため、これでこの話は終わり・・・という雰囲気の中、一人、海藤は怪訝な顔をしていた。

 

そしてボソッと、不安げに聞いてみた。

 

 

「なぁ・・・光輝、お前、本当にそんだけか?」

 

 

それまでの呼び方とは違い、名前を呼ばれたことだけでなく、重ねて聞かれた質問に、えっ?と光輝はキョトンとした顔を見せた。

 

「それだけじゃない・・・って?」

「それはよ・・・"リコリスとかDAに対して言えない理由だろ?"」

 

その瞬間、光輝はあっ、という顔を浮かべるが、予想が当たったのか、それを見て更に海藤は捲し立てていく。

 

「リコリスやDAにはそうかもしんねぇ。けど、俺やター坊。それこそ、お前の家族にだって言えなかった理由ってのはなんだ?こっちはそれが聞きてぇんだよ。人間として、秘密にしてた理由をよ。」

 

海藤は自分自身では気付いていないのだが、野生の勘、とも言える、人が見えないようなことに目が行く能力があり、それに関しては俺よりも鋭い、と探偵を始めてからすぐの頃、八神から指摘されたことがあった。

中でも聴覚や嗅覚は人間離れしているほど研ぎ澄まされており、事実、その耳や鼻が事件解決に繋がったこともかつてあった。といっても、ペット探しなどで役に立った程度なのだが。

 

ただ、それだけでなく、今回のように、誰も気付かず通り過ぎていきそうな会話の中で、例え間違っていたとしても妙に齟齬があると思った時に気付き、指摘するその洞察力は八神も一目置くほどであり、ある意味、そういった点においては八神以上の探偵かもしれない。

 

今回もまた、その野生の勘が働き、そこを指摘してみると、それは見事に当たった。

一方の光輝は痛いところを突かれたのか、それは・・・と、言葉を詰まらせ、顔を渋める。

 

「海藤さん、いくらなんでも言っていいことと悪いことありますよ。」

「もし光輝責めるんなら、私達が代わりに聞きますよ?」

 

強い口調で詰め寄ったことが癪に触ったのか、代わって千束とたきなが少し怒りを込めながら返すも、その不安をかき消すかのように、違ぇ違ぇと軽い調子で言いながら手を横に振る。

 

「千束、たきな、俺は別に責めたりなんてしねぇよ。俺達はとっくにお前の味方で、お前を助けるってこっちは決めてんだから、遠慮なく何でも言えって言ってんだ。ここまで来たらもう遠慮することもねぇだろ?」

 

最後にこの不穏な空気を吹き飛ばすようにニッと笑うと、その顔を見てホッとしたのか、千束もたきなも胸をなでおろす。

 

「もー!海藤さん冗談やめてくださいよー!顔怖いんですからー!」

「おいおい、そりゃまたずいぶん心外じゃねぇか。」

「いつも行ってる組事務所の人の何倍も海藤さんの方が怖いですよ・・・」

「海藤さん、それフォローのつもりなのかもしんないけど、さっきのあれじゃ誤解されちゃうって。流石未成年相手にあの顔見せるのは俺もどうかと思うよ・・・」

 

先程の海藤の詰め寄りを、千束とたきな、後から会話に入ってきた八神の3人でたしなめているその様子を見て、ふふっと少し笑った後、残っていたコーヒーを全て飲み終えると、光輝は目を閉じ、片手で顔の上半分を抑えた。

 

「・・・やっぱ、バレましたか・・・あ~あ、ごまかせると思ったんですけどね・・・」

 

まるで何か観念し、開き直りのようなリアクションをすると、流石に全員が不審がって光輝の方を見るが、それを見越してか、海藤は口を開く。

 

「バレバレなんだよお前は。てか、噓言わないんじゃなかったのか?」

「噓と本音は、別物ですよ・・・本音なんて言いたくなかったんですけど・・・バレてるんなら、言いますね・・・」

 

目を閉じながら再度深呼吸をし、少し黙り込んだ後、顔を俯けた。

 

そして、人間として、誰にも自分がウルトラマンネクサスだと言わなかった、言いたくなかった、本当の理由を口にする。

 

 

 

 

「・・・俺、怖かったんですよ。色んなことが。」

 

 

 

 

怖かった。その言葉に全員が疑問を持った。

 

「(まさか・・・さっきの・・・)」

 

そんな中、八神は最初の方に自分が質問をした時に感じた、笑顔を浮かべていた中に、僅かだが怯えが見えた時のことを思い出した。

 

その時した質問も・・・ウルトラマンか、人間かという、正体についてのことだった。

 

だとしたら・・・あの時見えた怯えも、そういうことだったのか─────口には出さないがそう考えている一方、どういうこと・・・?と千束が不安げに声を掛けると、光輝はそのことについて説明を始めた。

 

「ウルトラマンネクサスに変身出来る。一見したらヒーローになれるってカッコイイかもしれませんけど、人間がいきなりあんな巨人になれるなんて、ハッキリ言って不気味じゃないですか。それこそ、人間じゃなくて、宇宙人だって俺のことを見るような人がほとんどだと思うんです。」

「まぁ、確かに・・・な。」

「この世界にはそういった存在はいない。間違いなく、世界に俺だけ。こんなこと、誰も共感出来ないですし・・・誰が、わかってくれるんですか?」

 

自分のことを嘲て言うも、その向こうに見える、圧倒的な孤独。その言葉に全員が一瞬で黙り込む中で、その空気を払拭するかのように千束は慌てて声を掛けた。

 

「いやいや、私わかるよ!私もたきなもリコリスだし、先生もミズキもDA!クルミだってウォールナットだよ!誰にも言えないのは同じだって!」

「・・・ありがとう、千束は優しいね。だけどさ、責めるわけじゃないんだけど・・・もし千束がウルトラマンになったらさ、たきなに、ミカさんに、ミズキさんに、クルミさんに、そんなこと言える?八神さんとか海藤さんには?DAにそんなこと報告出来る?報告したとしても千束、モルモットにされちゃうよ?それでもし、自分のせいで身の回りの人に危害が及んだら・・・もっと言うと、殺されたりでもしたら、千束は、耐えられる?それでも、戦っていける?」

「それは・・・」

「・・・そういうことだよ・・・ウルトラマンになるって・・・ごめんね、悪く言うつもりはなかった。」

 

端を折って説明しただけなのだが、言葉の端端から漂ってくる圧倒的な責任と重圧。その言葉に千束も一瞬で黙り込んでしまうが、独白のように話は続く。

 

「気味が悪い、化け物だ、宇宙人だ、あいつは人間じゃない・・・そう言われて拒絶されることも怖かったですし、多くの人が知ったら俺は絶対、人間扱いされなくなると思います。当たり前ですけど、そんなのが居たら学校も退学になるでしょうし、もっと言うとどこも出歩けなくなるでしょうね。というか、家も出てかないといけなくなって、それこそ誰にも見つからない場所で暮らさなきゃいけなくなる。それだけじゃなくて、ウルトラマンなら死なないだろとか思われて、物も投げつけられるでしょうね。あーあ、何投げつけられるんだか。石投げつけられるくらいで済めばいいですけどね。あーでも、石1万個投げつけられたらウルトラマンになれる人間でも死んじまうか。いや、それこそ銃弾でも撃たれるのかな。警察かなぁ、自衛隊かなぁ。あるいはリコリスとかリリベルからかなぁ。ハハッ、元職場と女子高生の殺し屋から殺されんのマジウケる・・・」

「おい光輝・・・そこまで・・・」

「・・・もう話さなくていいわよ・・・それ聞いて、もうこっちは、十分よ・・・」

 

いつもの光輝とは異なり、最後の方では高校生らしい口調に変わっていたのだが、その中身は自嘲しかない。そんな諦めにも似たような言葉と乾いた笑いを浮かべているその様子に居ても立っても居られず、思わずクルミとミズキも声を掛ける。

 

「・・・すみません。もう少しだけ、喋らせてください・・・あんま、気持ちのいい話じゃないですけど・・・」

「・・・大丈夫だ。君の気が少しでも晴れるなら、いくらでも聞くさ。」

 

掛けられた言葉に対して、すぐにいつも通りの口調に戻り謝るも、ミカはそれを優しく受け止めた。その心意気にありがとうございます、と頭を下げ感謝を伝えると、更に考えていることを語り出す。

 

「それに、俺がウルトラマンだと多くの人に知れ渡ったら、責任が、期待がどんどん大きくなっていって、絶対に負けられなくなる。もし、負けた時に、俺はどんな罵声を受けるのか。スポーツ選手だって試合に負けただけで批判されるのに、ウルトラマンとなったら、世界中からどれだけのことを言われるのか・・・何かを壊した時に、被害についてはどう責任を取るんだ。誰かの大切な人を守れなかったことで、その誰かから責められたら、その言葉を、目にしたら・・・それを想像したら、とっても怖かったんです。」

「・・・そんなこと・・・そんなわけ!「あるんだよ。だってさ・・・」

 

これまでの話に遂に我慢が出来ず、たきなは遮ってそんなことないとフォローをしようとしたが、まるでそう言われることがわかっているかのように返した。

それに対して反論をするわけではなく、逆に、ある人物に向けて同意を求めるかのように、目線をそちらに向けた。

 

「目の前に、実際に経験した人がいるから・・・だからこの気持ち、わかりますよね・・・八神さんなら。」

「・・・あぁ。よくわかるよ。」

 

この言葉に、八神は大きく頷いた。

この話を聞いて・・・この中にいる誰よりも、一番その気持ちを痛いほどわかっている。

 

 

─────自分は、それを受けた、経験者だからだ。

 

 

4年前、大久保新平の事件の時に、大久保新平の恋人である絵美を、絵美ちゃんを、守れなかった。

あの事件は解決し、事件の顛末も時間が経ったが、自分で真実を見つけられた。

 

だが、あの時真実を見つけられなかったことで、絵美ちゃんの命を奪ってしまったことは、変えようもない事実だ。

 

その当時、テレビや新聞、雑誌、ネット上でも、ずっと八神は批判の対象となり、大久保新平と共にあの当時、世間から悪人扱いされた。結果、世間から大いにバッシングを受け、在籍していた源田法律事務所には、連日抗議やイタズラの電話が鳴り続け、殺害予告が投函されることも当たり前。魔女狩りかのように、八神への誹謗中傷が絶えず続いた。

だからあの当時、大久保新平の弁護の際にも、全く彼を信じられず、結果として裁判も負けた。

 

そしてその後すぐ、弁護士を辞めた。

 

源田法律事務所にこれ以上の迷惑を掛けないことや、弁護人を信じられなかったことなど、様々理由はあったのだが、辞める理由となった要因の一つには─────世間からの猛バッシングに心が疲れ果て、人として受け止められるキャパシティの限界が来てしまったから、というのもあった。

 

力よりも、言葉の暴力の時代、とはよく言ったもので、その気持ちがこの中にいる誰よりもわかるからこそ、その言葉に八神は同意することしか出来なかった。

日本の一介の弁護士だけでもこうなるのに、ウルトラマンならば世界中から注目の的となり、もし自分が受けたことと同じようなことを日本だけでなく、世界中から受けたのならば、おそらく俺でも、いやこの世界の誰も耐えられない。心なんて簡単に壊れてしまい、それこそ自ら命を絶ってしまう、と心の底から思い、憂いを帯びた、同情の目を向けた。

 

それに気付きながらも、光輝は更に言葉を重ねた。

 

「加えて、誰も彼もが、俺をネクサスになれる道具としか見なくなると思ったんです。さっきの話もそうなんですけど、ネクサスという力にだけ注目して、都合のいい兵器として利用して、頼りきって、道具として扱われ続ける。人体実験されるだろうってのも目に見えてました。でも、一番嫌だったのが・・・ウルトラマンが実は人間が変身している、なんてことが判明したら、それこそさっき言ったように、俺だけじゃなくて、家族や、皆さんのような知り合いを含めた身の周りの人に危害を加える可能性だってあり得る、いや絶対あると思ったんです。俺を従わせるために、身の周りの人を人質に取る可能性が大いにあり得る。そうやって周りに危害が及ぶことが一番恐ろしかったですし、それを考えた時が一番辛かったんです。おそらく、ビーストよりも、人間から危害を加えることの方が多いと思ってて・・・それが続いたら俺は・・・戦えなくなる・・・だから、今まで誰にも言わず、ずっと黙ってたんです。」

 

「光輝君・・・」

「お前・・・そこまで・・・」

 

先程、ああして一瞬だけ見せた怯え。その理由がわからなかったのだが、その背景にはこういった考えがあった。だが、まさか彼が、大人でもない高校生という、年齢だけで見たら子供が、それほどまでに考えているとは思わなかった。だからか、海藤もそうして質問をしてしまったことを若干後悔し、慰めのための次の言葉を言いたいのだが、何を言えばいいのかわからず、次の言葉が出てこない。

 

一方の光輝は、天井の方に首を向けて一息吐くと、更に話し始めた。

 

「それが、周りの人も傷付かないで、俺も心が壊れずやっていける一番ベストな選択だと思ってたんです。だから、知っている人を、知り合いを・・・ネクサスになって以降増やさないようにしていたんです。皆さんの思いやりを裏切るように聞こえるかもしれないですけど、そうやって関係を増やしたら、狙われる確率が高くなる。そうやって巻き込んで、自分のせいで傷付いて、最悪殺されたりなんてしたら・・・心がボロボロになって・・・いずれ、戦えなくなる。それなら、黙って独りで戦った方がいい。例えそれで多くの人から不審がられても、あいつ変なやつって後ろ指指されても構わなかったんです。自分一人傷付くだけで、誰もが幸せに暮らせるなら・・・そっちの方がいいって。それに、一度は死んだ命ですし・・・ぶっちゃけ言えば、いつだって戦いの中で死んでもいいって思ってたんですよ・・・リリベルとして役立たずだった自分が、人々を守るためにこの命使えるなら・・・それで死ねるなら、それもまた、本望だったんですよ・・・これが、誰にも言えなかった理由です・・・だから言いたくなかったんですよ、本音なんて・・・!」

 

彼がずっと口にしなかった理由。それら全ては可能性の話かもしれないが、可能性としては大いにあり得る。だからこそ、そのリスクを減らすためにも、黙って、今の今まで、独り、孤独に戦い続けてきた。

その責任と覚悟に、誰もが言葉を失い、光輝もまた、本音を口にすること自体が怖かったのか、全て話し終えると、一つため息をつき、壁を背に頭をもたれかけ、ゆっくり目を閉じた。

 

そんな中、突然誰かがギュッと両手を握ってきたため、目を開けた。

 

目の前には、顔を俯けながら、たきなが包むように両手を握っていた。

 

「なんで・・・」

「えっ・・・?」

「どうして!?どうしてそんなに色んなこと独りで背負ってるんですか!?なんですかそのふざけた使命感!?」

「別に、ふざけてるわけじゃないよ・・・」

「ふざけてるじゃないですか!リリベルだってことも言えないから友達も作れない!それでネクサスにもなって更に言えなくなってって・・・それじゃあ自分一人が何もかも我慢して、一人で平和のため犠牲になるって言ってるようなもんじゃないですか!?そんなことしてたら、いつか光輝壊れちゃいますよ!?それに、いつだって死んでもいいなんて、そんな悲しいこと言わないでくださいよ!!私達がどれだけ心配してると思ってるんですか!?」

「・・・そこについてはごめんね。でもさ、リコリスだってそうでしょ?この日本の治安維持のために戦わされてるでしょ?それと同じだよ。それに、もう一回人間として壊れてるし・・・自分でその感覚はわかってるつもりだから、壊れないようにうまくはやってるよ。でもさ、話を聞いてもらってるだけでもこっちはありがたいよ。ずっと言えなかったことを聞いてくれて、それにおかしいって言ってくれる友達がいるから・・・ありがとね。」

 

そう言う顔はいつも通り笑っているように見えるが、その顔はまるでどこか達観しており、全てを諦めているかのようにも見えた。

その顔についに我慢が出来なくなり、先程の千束同様、両肩を強く掴んで、激しく詰め寄った。

 

「ねぇ!!なんでそんな風に笑ってられるんですか!?辛くないんですか!?悲しくないんですか!?そう言ってくださいよ!!こんなのふざけてる!!だったら・・・だったら私はウルトラマンネクサスなんていらない!!もう戦わないで!!」

「たきな・・・」

「・・・だって、それじゃあ、光輝が・・・かわいそうじゃないですか・・・こんなの、あんまりですよ・・・」

 

助けたいと思っていた友達がそんな重たいものを今まで背負っていて、戦えば戦うほど体も、心も傷付いていく。あまりにも大きすぎる力を得てしまったが故の責任と重圧と、それに対して起こりうるデメリット。それだけを聞けば、もはやウルトラマンネクサスになるメリットなんて無いに等しい。

 

そして、もっと大事なこととして、リリベルだった過去があるとはいえ、光輝は今やただの一般人だ。

普通の生活もある中で、ネクサスとして戦い、平然を装わなければならないが、どうやったって不都合なことは出てくる。そんなことが続けば、時間が経てば経つほど周りからはどんどん白い目で見られていく。はっきり言って、その方が体が傷付くより辛いはずで、いじめだって受けているかもしれない。正直、いつ投げ出したくなってもおかしくはない。

 

けれど、そこに何の文句も言わないで、全てを受け入れ、自分を犠牲にして、人々の平和を守り続け、結果それで死んでもいいと平然と口にしていた。その、自身を犠牲にして平和を守りながら、死に邁進していく生き様や、達観したその態度に我慢が出来ず、つい感情的になってしまった。

 

なのだが、本人はまるで、ウルトラマンになったのだから、そんなのは当たり前だと言わんばかりの態度を毅然と取りながらも、いつも通り接してくれたのが余計に辛くなってしまい、最後の方では怒りを吐き出し、心からの本音をぶつけた。

 

 

─────千束も大概だったけど、光輝はそれ以上の・・・大バカだ・・・リコリスの何倍も、何十倍も大変なことをしているのに、どうして・・・どうしてそんな風に笑ってられるんですか・・・

 

 

「・・・心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だって・・・俺は」

 

俯いているたきなをどうにかして慰めようと光輝が何か言おうとする前に、千束は光輝とたきなを両腕を使って2人まとめて抱きしめた。

それに2人は一瞬驚くも、光輝は千束の真意を察したのか、両方の手で2人の背中をポンポンと優しく叩く。

 

「たきな、大丈夫。光輝、そんなに弱くないよ。」

「でも!・・・でも、それじゃ、光輝だけがずっと辛い目に・・・」

「だったら、私達が光輝のこと支えてあげようよ?一緒に戦うだけが、力になるってことじゃないよ・・・そうだよね、光輝?」

「うん。こうして話を聞いて受け止めてくれるだけでもすっごい心が軽くなってる。それに、さっきだって一緒に戦ってくれたじゃん。ああして2人が俺をザ・ワンから助けてくれたから俺だって今生きてるんだよ。力でも心でも助けてくれてありがとう。本当に、頼りになる味方で、最高の友達だよ。」

 

諭すかのように2人でなだめると、たきなは千束の胸に顔を埋め、それ以上は何も言わず、静かになった。やれやれ、という表情を千束は浮かべつつ、たきなを抱いている腕の力を強める中、光輝に話しかけた。

 

「・・・辛かったよね、ずっと。独りで戦い続けてきたのも、リリベルだったこともネクサスだってことも、誰にも言えなかったの。」

「・・・全然。辛くなんてないよ。過去のことなんて言わなくても優しくしてくれる人ばっかりだったし。ネクサスだってことは言えなかったけど、皆が聞いてくれたからもう十分。それに、力があるのに使わないで、その結果何の罪もない人がビーストの犠牲になる。その方が俺は辛いよ。助けられなかったことを悔やむくらいなら、自分はどうなってもいいから、この力を使って人々を守った方が気持ちがいいんだよ。だから、ネクサスの力を得た最初から今まで、俺はただ、俺がやりたいことをやってるだけだよ。」

「・・・そっか。光輝は強いね。何の報酬も見返りもなくて、色んな責任を独りで背負って、誰に命令されたわけじゃないし、自分が傷付くだけなのに、それでもビーストから皆を守るために戦うなんて、本当に偉いよ。やっぱり光輝は、ネクサスになるべくしてなったんだよ。」

「・・・ありがとう。なら、やっててよかった。それにこっちもさ、千束とたきなが俺の味方に、友達になってくれて本当に良かった。色々話したら、本当に、心が軽くなってる。俺の方こそ、助けてくれてありがとう。」

「でも・・・お願いだから、自分の命は大事にしてね・・・死んでもいいだなんてもう考えないでよ。命粗末にする人、私大嫌いだよ・・・それに、嫌だよ。光輝が死んじゃうのも、いなくなっちゃうのも。」

「・・・わかってるって。前まではいつだって死んでもいいと思ってたし、ぶっちゃけさ・・・過去のこともあってさ、早く死にたいって、ネクサスになる前からずっと思ってたんだよ。こんな奴がのうのうと生きてちゃいけない・・・って。たださ、育ててくれた恩のある両親の前で自殺するわけにはいかなかったし、したらいけないって決めてた。だからさ・・・ネクサスになった時から、この戦いを、自分の死に場所だって思ってたの。いつ死んでも構わない。むしろ早く死んでやるくらいに意気込んでたの。でもさ・・・さっきの皆の悲しんでる顔とか、千束の泣いてる顔見たら、本当に辛かった。周りの人がこんなに悲しむのも、自分が辛くなるのも知らなかった。それに、変なこと言うかもしれないけど・・・嬉しかった。俺のことでこんなに悲しんでくれる人がいるって・・・なんて幸せなんだろうって。だから、もうそんなこと考えない。」

 

いつも以上に穏やかな口調で語りかけると、光輝は千束の腕を自ら放れ、改めて向かい合った。

 

「ホント、光輝がそこまで自殺願望持ってるなんて知らなかった。バカなのは知ってたけどここまでバカだと思わなかったよ。」

「・・・でしょ?だから言ったんだよ、俺はクズだって・・・」

「そうかもね・・・でも、それ以上に自分のことなんてお構いなしで皆を守るために戦ってくれてる。でもそれじゃ、いつか痛い目見ちゃうかもよ?」

「もうさっきだってしたし、この数か月ずっとそうだよ。」

 

そう言って苦笑いを浮かべると、だからさ・・・と、千束は宣言した。

 

「リリベルだけじゃなくて、光輝をバカにしたり、ひどいことするようなやつがいたら、代わりに私がぶちのめしてあげるから。私は光輝の味方で、友達だから。」

「・・・私もです!そんなこと光輝がされたら、私達が先に怒りますから!光輝のこと、絶対に守りますから!」

「ただ、もし、その前に自分で命落とすような真似なんかしたら本当に怒るし、絶対止めるから!いい!絶対、自殺なんてしないこと!命、大事に、だからね!約束!」

 

その2人の言葉に、心が温かくなっていく感覚を覚えると同時に、ひたすらに感謝の念を光輝はずっと抱いていた。

 

守ると宣言してくれただけでなく、自ら命を絶とうしたら本当に怒って止めてくれる。それだけ、自分のことを本当に大切に想ってくれている友達が目の前にいてくれる。

 

 

だからこそ、この2人はもちろんのこと、ここにいる全員─────本当に、何があっても、絶対に守り抜く。心の底からそう決めると、照れ笑いを浮かべながら2人の方を見る。

 

 

「・・・ありがとう、そう言ってくれて。命、大事にするよ・・・本当、2人はさ・・・人の心を溶かす天才だね。」

「・・・ふふっ、人の心を溶かす天才、か。光輝にしてはいいこと言ってくれんじゃん。今度から使わせてもらおーっと。」

「うん。じゃんじゃん使ってよ。本当・・・巻き込みたくないから関わんないでって言ったのにさ・・・それでも関わってきちゃうお節介な友達が出来て嬉しいよ。」

「・・・バカ、光輝が心配ばっかりかけるからほっとけないんですよ・・・目離したら、すぐ死んじゃいそうですから・・・」

「・・・ごめんね。まだまだ心配かけるし、守ってもらってばっかりになっちゃってるけど・・・千束、たきな、これからもよろしくね。」

 

ようやく話が一段落し、3人で笑いあっていると・・・

 

 

パリッ、という音が聞こえた。

 

 

 

「おーいそろそろいいかーこの3バカ共ー?」

「「「あっ」」」

 

 

 

それは、クルミが今まさに手に持っていたおせんべいをかじった音だった。

しびれを切らしたクルミがぼりぼりという咀嚼音と共に声を掛けたことと、そのおせんべいの音が3人を現実に引き戻した。

 

同時に、今この状況を思い出した。

 

それを見ていた大人達は我慢が出来なくなったのか、ミズキは持ってきた日本酒を飲みだし、ついでに八神と海藤もご相伴に預かっている。一方のミカはやれやれ・・・と片手で頭を抱えており、いくら店内とはいえ、恥ずかしげもなく堂々と、大人達の前でそんなことをやってしまったことに気付くと、3人して顔が真っ赤になる。

 

そしてダメ押しのように、先程食べてきたおにぎりを胃腸で消化しているからか、タイミングよく光輝のお腹の虫が鳴いた。

 

「・・・ご、ごめんなさい!恥っず・・・」

 

そのことに対してより光輝の顔が赤くなるが、その音と行動に思わず皆が吹き出し、全員が笑い出す。

時計を見ると、入って来た時からもうだいぶ時間が経ち、すっかり遅い時間になっていた。加えて、光輝以外ここまで誰も食べていなかったことに気付き、遅いがご飯にしよう、という話になった。

時間も時間だし消化よくうどんにでもしようか?と話が纏まり、リコリコ側の全員は準備に入りつつ、8人もいるため足りない分を買ってくると、八神は一人買い出しに行った。

 

ちなみにミズキも同行しようとしたが、絶対にお前はダメだ!と光輝と八神以外の全員からストップを受けたのは言うまでもない。

 

 

一方、海藤と光輝は手持無沙汰でやることがなく、海藤は外へタバコを吸いに行っているその間、光輝は座敷席に座りながら、エボルトラスターを手に持って眺め続けている。

 

「・・・ネクサスがやってきた意味、か・・・」

 

先程の話を通して改めて、ネクサスが自分の元にやって来た意味を考え続けていた。

これまでであれば、ずっと後ろ向きな考えばかりをしていた。だが、今までとは違い、少しだけ前向きになれていた。もちろん、まだ明確な答えが出たわけではないが、それでもこれまでとは違い、希望を持って、この光がどうして自分に来たのか。その意味を改めて考えようとしていた。

 

 

「千束に救われましたね。」

 

 

そんな中、いつの間にか近付いてきたたきなが声を掛けてきた。じっと考え込んでいたため、近くに来ていたのにも気付かず、突然声を掛けられたため驚きの声を漏らすが、すぐにいやいや、と返した。

 

「さっきはたきなもありがとう。あの言葉、凄く嬉しかったよ。というか、俺はたきなにも助けられたよ・・・本当にたきなもさ、千束と同じくらい心を溶かすのが上手だよね。」

「・・・いえ、私も光輝と同じだったので。」

 

私もそうだった、という言葉にえっ?と、疑問の声が口から零れる。同じって・・・?そう思っていると、たきなは光輝の隣に座った。

 

「私も1年ほど前まではDAにいたんですけど、ある事件でリコリスの仲間が人質に取られて、その時に最も合理的な判断だと思って・・・無事だとわかってはいたんですけど、単独行動をして、その子ごと撃って・・・実際生きてはいたんですけど、情報を持っている犯罪者を全員殺したことで、ここに来ることになったんです。」

「そんなことが・・・それでリコリコに・・・」

「ただ、その頃の私はDAに戻りたいという一心で行動していましたし、当初来た時もここの生活のことなんて全く興味を持ってなかったんです・・・ただ、その後DAから自分が用済みだって言われて・・・居場所がなくなって、もう自分なんて価値がないんだって、絶望して・・・そんな時に手を差し伸べてくれたのが、千束だったんです。」

「そうだったんだ・・・」

「それから、ここでの生活を楽しむようになっていったんです。仕事も楽しんで、ボドゲ会にも参加して、お店がお休みの日には千束と一緒に水族館に行ったりして、時にはここの皆でカラオケにも行きましたね・・・だから、千束には色んな世界を見せてもらったんです。知らなかった世界に私を連れて行ってくれた。君と会えて嬉しいって、心の底から言ってくれた。それがあったから、私は今こうしてここにいられてるんです。」

「そうなんだね・・・たきなも、千束に助けられたんだ・・・」

 

そんなことを言っていると、ふとある考えに至った。

 

「じゃあ・・・俺を助けてくれたのって、まさか・・・?」

「・・・千束が私にしてくれたように、私も誰かを助けたいと思ったから。特に、光輝がウルトラマンだってわかった時、誰にも頼ろうとしなかった、前までの私を見ているようだったから。尚のこと、手を差し伸べたいって、そう思ったんです・・・それに、前言ってましたよね?」

「えっ?」

「"友達を助けるのに、理由なんていらない・・・って。"自分でそう言ってたじゃないですか?だから、私もそうしたまでです。」

「あっ・・・」

 

その言葉を聞いて、自分がそう言ったことを思い出し、ハッとしてそちらの方を見ると、たきなは優しく笑っている。ただ、一方の光輝はそのたきなを尊敬の目で見ていた。

 

自分にしてくれた行動の裏に、自身が以前に受けたから、その後に同じような機会が来た時に、誰かに実践した。

とはいえ、そう思っていても、実際に行動を起こすことは難しい。そんなこと、わかっているつもりだ。

 

しかし、今隣にいるこの子は、何の見返りもない中で、自分がしてもらったことを、同じように誰かに、自分に、してくれた。ありがたいことに、自分に分け与えてくれた。加えて、そこに理由なんていらない、友達だからだ、と。そう言ったのは自分だが、彼女もまた、心の底から言ってくれている。

その行動力と勇気に、尊敬と感謝の念が湧き、何度目かの涙を流しそうになったが、なんとか堪えた。

 

「・・・やっぱ、たきなもめちゃくちゃ凄いよ。絶対、俺より2人の方がよっぽどヒーローしてるよ。」

「ふふっ、ウルトラマンネクサスからヒーローって言われるなんて、光栄ですね。」

 

やめてよと軽く笑いながらツッコミを入れ、2人で笑い合っていると、おいこらイチャイチャしてんじゃねーぞガキ共その2!とカウンター越しにミズキから指摘される。それに気付き2人同時に立ち上がると、じゃあ戻りますね!とたきなは足早にキッチンの方へと戻っていく。

 

ふぅと一息吐くと、ちょうどタイミングよく、タバコを吸い終わった海藤が戻ってきたので軽く頭を下げ、座敷席に2人、横並びに座る。

八神とは話していたが、そこまで海藤とは話す機会が少なかったため、何を話せばいいのか。そう思っている中、突然海藤がおい、と光輝を呼ぶと、耳打ちをした。

 

「そういえばお前、どっちなんだよ?」

「どっち・・・というと?」

 

何を言ってるのかわからず、海藤に聞き返すと、予想だにしていなかったことを言われた。

 

 

 

 

 

「だーかーら、千束とたきな、お前はどっちを狙ってんだよ?」

 

 

 

 

 

何を言っているのかすぐに理解出来なかったが、その言葉を理解した瞬間・・・

 

 

「は、はあぁぁぁぃぃぃぃぃっ!!?」

 

 

驚きのあまり、叫びながら階段のところまで思わず後ずさる。

その声と様子を見てなんだ?と全員の視線が向くが、大丈夫ですなんでもないです!と慌てて返すが、すでに顔は赤くなっている。それを見逃すはずはなく、海藤はガシッと光輝の肩に腕を回した。

 

「お前の態度見てたらバレバレだっつーの。まぁ、あんな可愛い女だから狙いたくなる気持ちもわかるぜ。で、どっちが狙いだ?いや、もしくは2人まとめてか?お前、顔に見合わず随分大胆なことするじゃねーか?」

「だ、だから!そういうのじゃありませんって!?」

「はぁ?んな訳ねぇだろ。それともなんだ、どっちも興味なしか?他の男に取られてもいいってか?」

 

 

その海藤の煽りが、いけなかった。

 

何かの導火線に、火をつけた。

 

 

 

「バ、バカ言わないでくださいよ!千束は誰に対してもフレンドリーで常に笑顔で嘘も言わない。正面から向き合って相手の心を溶かす太陽みたいな子で、それでいて誰も彼もを否定しない、悪口も一切言わないし、欲しい言葉をくれる。こんな子世界のどこにもいないくらいの素晴らしい女の子ですよ!たきなも一見するとクールですけど、喋るととっても穏やかで優しくて、時折見せる笑顔がまた素敵で、大和撫子を具現化させたような存在ですよ!しっかりとした芯があって自分が大事だと思っていることを本気でやる力もあれば、自分にしてもらったことを他の誰かにしてあげる強さも持ってます!2人とも人として本当に素晴らしい2人で、俺なんかよりよっぽどヒーローですよ!それに、あんなドをいくら付けても足りないほどのスーパー美少女ですよ!!それで2人とも性格も素晴らしいなんて、興味ないわけないですよ!!それに、他の男に取られるとか・・・そんなもん、嫌に決まってるじゃないですか!!」

 

 

 

千束とたきなの良いところ含め、光輝は小声で言っていた─────つもりだった。

 

「・・・あー、そう、だなぁ・・・」

 

こめかみをポリポリとかきながらそっぽを向いていた海藤にあれ?と思い、これまで言ってきたことを思い出し、そしてこの反応を見て何かに気付き、背中に嫌な汗を急速にかき出す。

 

そして、まるで壊れた機械が如く、ギギギ・・・と体の中から音が鳴っているのが自分でも聞こえるほどだが、ゆっくり、ゆっくり、首を横に動かしていくと・・・

 

 

 

「・・・っっ・・・」

「・・・あ、ありが、とう・・・」

 

 

 

唐突に大声で褒められたことなどを聞かされた照れで、顔を赤くさせた千束とたきなが、じっと光輝の方を見ていた。

 

それに気付き、一瞬で顔だけでなく全身が真っ赤になり、いつ体から湯気が出てもおかしくはないほど、体温が上がっていくのを感じている。

 

「戻りましたよーっと・・・って、何?この空間?」

 

そんな中、八神がうどんが入ったレジ袋を手に下げて帰ってきたが・・・見事に、これはヤバいタイミングに帰ってきてしまった・・・と瞬時に察した。

 

「・・・そ、外の空気吸ってきますぅぅぅううう!!」

 

遂に我慢が出来なくなり、光輝は慌てて外へと飛び出した。

 

「・・・なんであいつ、ウルトラマンネクサスになれたんだ?」

「なーにが面白くてガキんちょどものラブコメなんか見せつけらんなきゃいけないのよ!!」

 

その一部始終を見守っていたクルミがボソッと、誰にも聞こえない程度に言った一人言は、宙に消えた。

最後の言葉は誰が言ったものか、特に言う必要は無い。

 

 

 

「はぁーーー・・・やっちまった・・・もう生きていけん・・・これからどうすればいいんだ・・・」

 

リコリコの店外に設置されていたベンチに座り、顔を手で覆いながら一人光輝はうなだれていた。

自分では小声で言っていたつもりだったのに、自分でも知らずのうちに声のボリュームが大きくなっていた結果、2人に完全に聞かれてしまった。これじゃ、しばらくは戻れない。それどころか、今後どう接していけばいいのか・・・そう思っていた矢先、店のドアが開いた。

 

「よっ、落ち着いた?」

 

水の入ったコップを片手に持った八神はゆっくりやって来て、光輝の隣に座った。

 

「いえ・・・まだ・・・恥ずかしすぎてどんな顔して会えばいいか・・・今後どう接していけばいいか・・・あぁぁぁ・・・」

「ハハッ、大丈夫だって。まぁ、何があったかは大方察してるよ。けど、別に悪気があって言ったわけじゃないんだし。それに、向こうももう落ち着いてるから、そこまで心配しなくていいよ。」

 

そうですか・・・と相槌を打ち、コップを受け取り、その中に入っていた水をグイっと一気に流し込んだ。その様子を見ながら、八神は深刻な顔で、あのさ、と切り出した。

 

「・・・一個、聞いてもいい?」

 

その表情から、きっとこれからあまり楽しいことは言われないのだろうと理解すると、光輝もそれまでとは打って変わり、一瞬で真剣な顔に切り替わる。

 

「・・・勝てるのか?あのザ・ワンに。」

 

数時間前、ああして戦ったが、正直、半ば劣勢だった。もし、あの時千束とたきながいなければ、今頃おそらく・・・

それに、先程語っていたが、ザ・ワンはまだ進化の途中だという。つまり、明日以降、いや今この瞬間にも、ザ・ワンは強くなっているかもしれない。

もちろん、ネクサスが負けるなど微塵も思っていないが、だからこそ、先程あえて誰も聞こうとしなかったが、2人きりになった今、男同士ということもあり、改めて尋ねてみた。

 

その質問に対して、表情を変えることはなかったが、少しすると、微かに笑みを浮かべた。

 

 

「勝てますよ。だって俺・・・ウルトラマンネクサスですから。」

 

 

その顔と目に、全くの迷いはなかった。

ハッキリと言い切ったその言葉に、八神もまた微かに笑う。

 

「・・・余計なお世話だったね。」

 

気にしないでください、と軽く会釈を返す。そしてすぐ、気分を変えるかのように、八神はタバコ吸うね?と許可を貰うと、タバコに火を点け、煙を燻らしていく。

 

「そもそも、あの日神室町で八神さんに会ってなかったら、こんな日は来なかったと思いますし、今もずっと独りで戦っていたと思います。」

「あぁ・・・言われてみたら確かにそうだね。あの時、出会ってなかったらってのもそうだったし、実はさ、言ってなかったんだけど、あの改札で別れた時の光輝君の顔が探偵のカンに引っかかってね。その後色々あってこのリコリコと繋がることになって、ウルトラマンの正体を調べるってなった中で、あの時の表情が光輝君を調べるキッカケになったんだよ。」

「そうだったんですか!?そんなに顔に出てたんですね・・・」

「そうだね。あの時めちゃくちゃ顔に出てたよ。ただ、それから繋がりに繋がって、今に至るわけだけど、不思議だよね。あの時たまたま店内に居合わせた人間達が、まさかそれぞれこんな秘密を抱えてて、今じゃ一緒にいるなんてね。」

「本当にそうですね。まさか、あの時の店員さん、ひいてはお店自体とこんなに繋がりが出来て、加えてあの有名人の八神さんともこんなに深い関係になれた。ドラマかよって話ですよね。」

 

そのジョークにお互い笑い合っていると、八神はタバコの煙を吐き出しながら、夜空を眺めた。

 

「・・・俺もさ、最初は信じられなかったけど、こんな事件めったに出会えるもんじゃないし、正直、楽しんでる自分もいるんだ。探偵としてこんなに面白い事件、最近なかったからね。それに、また新しい仲間が出来たし、光輝君にも会えた。だから、こんなこと言うと変だと思われるし不謹慎って思われるかもしれないけど、俺は今回の事件があって、良かったと本当に思ってるよ。」

「・・・俺もです。八神さんや海藤さん。千束にたきな、ミズキさんにクルミさんにミカさん。本当に頼れる心強い仲間が出来て、おまけに自分がずっと抱えていたことも全部受け止めてくれて、その上で手を差し伸べてくれる。俺も、このことがあって、本当に良かったと思ってます。」

 

その言葉にフッと微笑んだ後、八神はタバコを携帯灰皿に押し付け、改めて向かい合う。

 

 

「これからも、どうかよろしくお願いします。八神さん。」

「あぁ。こっちこそ、これからもよろしくな・・・光輝。」

 

 

契りを交わすかのように、軽くグータッチをする。

 

たまたま神室町で出会ったあの日からこんな未来が来ること、こんな深い関係になるなど、どちらも想像していなかった。加えて、一回り以上歳が離れているが、年齢なんて関係なく、互いを認め合っている。先輩・後輩のようにも見えれば、兄弟分のような関係にも見える、新しく出来上がった互いの関係を確かめるかのように、2人して笑い合う。

 

「おーい八神―光輝ー出来たぞー。早く食べこーい。」

 

そうこうしているうちに、うどんが出来たことを伝えるために、店のドアを開けてクルミが2人に声を掛ける。

それを聞いて、よっしゃ行くか。と立ち上がり、2人は店内にへと戻っていった。

 

 

決戦の時は、近い─────

 

 

 

 

 

─────だが、忘れていたことが一つある・・・

 

 

 

 

 

「千束、たきな、ごめん、さっきは・・・その・・・」

「う、ううん!大丈夫!もうなんにも気にしてなんてないから!うん!だ、だいじょうぶだから!」

「・・・あんな大声で言わないでくださいよ・・・恥ずかしいですって・・・ばか。」

「(ちょっと八神さんこの2人何にも落ち着いてないんですけどおおおおおっ!?)」

 

 

こちらは、まだぎくしゃくしていた。

 

 




というわけで、説明パート終了です。
ほぼ6万文字(ノ〇さんのツッコミで脳内再生ください。)

ウルトラマンになるリスクというか、デメリットですが、これは自分が考えていることも入れています。
きっと、今だったらこれだけやられるだろうな、と。

そして、ほんのり、ほんのり、砂糖をぶち込んでみました。
ラブコメって難しいね。


次回、もう展開はわかると思いますが・・・いよいよ、です。
ヒーローの出番です!じゃないですが、ウルトラマンネクサスの、出番です。

実質、最終回です。
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