+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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俺、これ書きあげたら、リコリココラボカフェ行くんだ・・・後結束バンドのライブに行きたい・・・


ここからはオタク特有の早口を句読点つけずに入れます。


いやまさかのハート様がウルトラマンになるなんて思わなかったやんてか何あのアシンメトリーなデザインに全身銀のフォルムに赤と青のライン入ってるのめっちゃかっこいいし隊長がウルトラマンになって所帯持ちなんて何それ斬新真木さんぶりの主人公ウルトラマン所帯持ちーーー!!
ハーウルトラマンブレーザー楽しみーーー!!


失礼しました。
というわけで、ここからは、その後の話です。

蛇足なのかもしれませんが、個人的に、ウルトラマン描くのならば、ここには触れなければならないと思い、向き合いました。


では、ご覧ください。





導き -ガイダンス-

─────メタフィールド

 

「デヤアアアアッ!!」

 

メタフィールド内にて、ウミウシのようなグロテスクなビジュアルをしたビースト、ペドレオンに対し、ジュネッスプログレスとなったネクサスはウルトラクロスレイ・シュトロームを発射する。その直撃を受けたペドレオンは、分子レベルで分解されると、青いチリとなり消滅した。

 

それを見届け、メタフィールドの解除と共に風景が現実世界に戻ると、この土地の人間がネクサスに対して歓声を上げる。

 

「Yeahhhhhhh!!」

「Fooooooooo!!」

「ULTRAMAAAAAAN!!」

 

ネクサスに対する声援が明らかに日本とは異なっているのだが、それも当然だ。

 

何しろここは、日本ではなく─────遠い海の向こう、アメリカなのだから。

 

ネクサス、いや光輝はアメリカでビーストが現れたことを察知すると、こうしてアメリカまでやって来て、そして今まさに倒したところだった。

現地の人も、SNSやネット、ニュースなどで連日話題になっていたとはいえ、初めて見る生のウルトラマンネクサスに興奮し、歓声を上げ、街中がお祭り騒ぎとなっている。

その歓声の方をチラリと見て頷いた後、ネクサスは空へと飛んでいくが、姿が見えなくなっても暫くは歓声が止むことはなかった。

 

 

 

錦糸町─────喫茶リコリコ

 

「おー!カッコいいー!」

「すげーなーウルトラマンネクサス!」

「ホントホント!日本にもまた来てほしいー!」

「いやー、やっぱ凄いよねーウルトラマンネクサス!世界中でファンアートメッチャ出てるよ!」

「ホント、怪獣は現われないでほしいけどまたウルトラマンネクサスは来てほしいよなー!」

 

一方、喫茶リコリコ内では、クルミが持っているタブレットをタブレットスタンドに掛け、映し出されていた動画サイトのライブカメラから、常連客やそこにいたお客さん全員を巻き込んでネクサスの雄姿を見ていた。

 

「全く、すげぇ人気だな。ウルトラマンネクサス。」

「あぁ。本当に、あっという間にこの世界のヒーローになったな。」

 

騒がしくなっている店内の様子を横目に、あれから神室町だけでなく、新宿で様々な復興作業などに尽力しつつ、あの日以降全然来れてなかったことや、ここの様子も気にはなっていたため、八神と海藤もこの日は神室町からリコリコへとやって来て、コーヒーと和菓子で自分達の労をねぎらいながら、その様子を眺めていた。

 

 

ザ・ワンが新宿で暴れ回り、そして、ネクサスがザ・ワンを倒した、世界が一変した事件と言えるあの日から、10日が経った。

 

 

ザ・ワンの一件で世界の情勢など、色々なことが大きく変わったが、とはいえ何故、あの時関わっていた喫茶リコリコと八神探偵事務所の7人だけでなく、それ以外の人もウルトラマンネクサスという名前を知っているのか。無論、自分達の口から世界に向けてバラしたわけではない。

 

ただ、"その名前をとある記者に提案したことで、この名前が世界中に知れ渡ったのだ。"

 

その話をするために、ネクサスがザ・ワンを倒してから2日後、今から8日前に時間を戻す。

 

 

 

時間を戻し、8日前─────

神室町─────八神探偵事務所

 

八神はこの日、八神探偵事務所内にてとある人物を待っていた。そして、事務所が入っている建物の階段を上ってくる音が聞こえると、本日待ち合わせていた人物がドアをガチャッと開けた。

 

 

「ご無沙汰しております、八神さん。」

「お待ちしていました、姫矢さん。」

 

 

株式会社東日の姫矢は、すっかり傷も治った右腕にファイルを抱え、この日八神探偵事務所にやって来た。

 

早速、事務所の備え付けのソファーに座らせると、八神と海藤も対面に設置されている複数人が座れる大きさのソファーに横並びに座り、姫矢と向かい合う形になる。早速、姫矢の持ってきたファイルの中にあった写真をテーブルに広げ、それを1枚ずつ手に取りじっくりと眺めていた。

 

「本当に、よく撮れてますね。構図もバッチリですね。」

「あぁ、本当に、これはあんただけに向けてやってくれたんだろうな。」

 

八神と海藤が見ているのは、先日ネクサスが、姫矢に向けてサムズアップした写真だった。

あの時、自分達もネクサスが何かに向けてサムズアップしたのを中継から見てはいたが、それがまさか自分も知っている人物に向けてしていたとは思っておらず、今回の依頼、いや相談のための電話を貰った時は八神も大層驚いた。

 

その姿は、まさに真正面からネクサスの姿を撮影しており、明らかにこちらに視線を向けている、と誰が見ても感じられる写真となっているため、目線も構図もバッチリだ。

SNSでネクサスの姿を撮影した写真や映像も多く見受けられたが、おそらくこの写真を越えるものはないだろうと、八神も写真を見ながら確信していたが、それは目の前に座っている姫矢の表情を見たら、同じことを考えているのか、手応えはバッチリだと言わんばかりの満足げな表情をしていた。

 

「あの時、咄嗟に私が聞いてしまったんですが、巨人が私に気付いてサムズアップを向けてくれたので・・・・これはあくまで主観なんですが、あの時、彼と私はコミュニケーションが取れたのではないかと感じました。」

「そうだと思いますよ。それに、姫矢さんは2回もこの巨人と顔を合わせているので、ひょっとしたら、向こうも顔を覚えてくれていたのかもしれませんね。」

 

そうかもしれないですね、と姫矢は小さく笑みを浮かべると、八神は今回の本題である依頼、もとい相談内容について切り出す。

 

 

「で、今回お伺いいただいた理由ですが・・・"名前が決まらない"、ということでよろしかったでしょうか?」

 

 

そう。今回姫矢が八神探偵事務所に訪問した理由とは・・・"この巨人の名前が決まらない、という理由からだった。"

 

 

この写真を撮影してすぐ社内に報告したところ、この一大スクープに対して早速特集が組まれることとなり、一刻も早く世に出そうと、社内中がその作業で大忙しとなった。とはいえ、ライフラインがバタついており中々進まなかったそうなのだが、この2日間全社員総動員で作業をし、刊行まで後一歩のところなのだが、そんな中、以前データ削除時に付き添ってくれた姫矢の直属の先輩から姫矢に向け、こう尋ねられたそうだ。

 

 

─────あの巨人の名前って、どうするの?と。

 

 

そう言われたが、自分もさっぱりその名前が思いつかなかった。

 

それこそ巨人で出していいのかもしれないが、万物どんなものにも名前はある。巨人だけではインパクトが薄い。名無しの権兵衛なんてあるものかと誰かが言っていたが、それはその通りだろう。本を出す出版社がそれでいいわけがない。

とはいえ、一つアテ、ではないが、ああして写真を撮影した後に思わず呟いた・・・ウルトラマン、という言葉はある。その言葉を自身も覚えてはいるが、とはいえ本当に、それでいいのかという不安は残る。

だからこそ改めて、姫矢もずっと考えていたそうなのだが、いい名前が一向に思いつかず、こうしてこの事件に一番関わってくれていた八神のことを思い出し、探偵として色々な経験をしているため、何かヒントでも貰えないかと思い、忙しい中わざわざ足を運んだというわけだ。

 

「えぇ。社内からはせっかくお前がこれを撮ったんだからお前が決めろ!と言われたのですが、お恥ずかしながらネームセンスもなく・・・」

 

自身にネームセンスが無いことを自覚しているのか、姫矢は思わず苦笑いを浮かべている中、八神はその写真を見て、考える"フリ"を少しすると、でしたら・・・と、ある名前を提案した。

 

 

絶対にその正体を人には言えないが、ああして自分の"後輩"とも言え、"弟分"のような仲間の、もう一つの名前を。

 

 

 

 

 

 

 

「ウルトラマンネクサス・・・なんて、いかがでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウルトラマン・・・ネクサス・・・ですか?というか、八神さんもウルトラマンという名前を知ってるんですか!?」

「えっ!?姫矢さんもウルトラマンという名前をご存じなんですか!?」

「あぁいえ、知っているというわけではなく、あの時こうして写真を撮影した際、何故かふとその名前が出てきて・・・」

 

そうなんですね・・・と少し驚きながら相槌を打つ。まさか姫矢がウルトラマンの言葉を知っているとは思わなかったが、その理由を聞くと偶然だったということがわかり、少しホッとすると、改めて八神は、それっぽく理屈を並べて説明をしていく。

 

「実は私も何故かその名前をふと思いついて・・・私もあの姿を見た時、あの巨人のことを超人だと思いました。だから、ウルトラマン・・・と思って、誰に言うわけでもなく一人そう呼んでいたんです。ただ、今の姫矢さんの話を聞いて思ったんですが、あの巨人は姫矢さんにサムズアップをして、アイコンタクトも取ってくれたんですよね?なので、これはあくまで想像なんですが・・・姫矢さんと巨人との間に、"絆"が生まれたと言ってもいいのではないでしょうか?なので、超人とコンタクトを取った姫矢さんとの絆を基に、ウルトラマンネクサス・・・と考えたのですが、いかがでしょうか?」

 

「・・・ウルトラマン、ネクサス・・・いいかも、しれませんね。」

 

 

 

そして話は戻り、現在─────

 

その八神が提案したウルトラマンネクサスという名前を姫矢が社内に持ち帰ったところ、社内でも好評となり、そのままその名前が採用され、翌日すぐに号外のように発行された。

そして、それを注目した多くのメディアもこぞってその名前を使うようになり、今では誰もがこの巨人のことを、信頼と親しみを込めて、ウルトラマンネクサスと呼んでいる。

 

なので、この名前は今では自分達だけの秘密だけでなくなったため、自分達も堂々とその名前を言えるようになった。

 

 

とはいえ、何故ビーストとネクサスが普通に報道されるようになったか。それについても、八神と海藤も、千束達も知っている。

 

 

 

再度、時間を戻し、ネクサスとザ・ワンが戦ったその日の夜─────

錦糸町─────喫茶リコリコ

 

他の4人が光輝の家まで一緒に付き添いで送りに行っているそんな中、一人店内に残っていたミカは、ある人物と電話で話していた。

 

「・・・あれはDAはどうするんだ?」

『あんなもの、どう隠蔽しろという話ですよ。結論、不可能です。もうウルトラマンもビーストも衆目に晒された。加えて、新宿にも大きな被害が出た・・・それに、言ってしまえばリコリスやDAが何か起こした事件というわけではないです。だったら、はっきり言って我々には何の害もないので・・・あのまま、世間に公開します。』

 

淡々と語る楠木に対し、ミカはそうか、と少し落ち着いて返した。

そんな中、楠木はところでと切り出し、話を変えた。

 

『フキから連絡がありましたが、ビーストについてもウルトラマンについても情報が無いとのことでしたが・・・本当に、無いのでしょうか?』

「・・・あぁ、何も無いよ。」

 

あの時、光輝はビーストの情報をうっかり世間に公開すると、それがきっかけで人々がビーストに対して恐怖を覚えた場合、ビーストの大量発生に繋がってしまうと話していた。

とはいえ、この世界に残っている全てのビーストはザ・ワンが捕食したと話していたが、あの性質を聞くと、まだ残党が残っているかもしれない。もしそうなったら・・・

 

そのことについても話したいのだが、相手はDAの司令だ。その事実を伝えたら、自分達がウルトラマンと遭遇し、コミュニケーションを取ったと話しているようなものだ。そんな重要なことを何故報告しなかったのかと問い詰められるのは勿論、ここや八神探偵事務所にも影響が出るだけでなく、あの時その正体に気付いていたけれど、黙ってくれたフキにも影響が出る可能性がある。そうなれば、いずれ光輝にDAの捜査の手が伸びるのも時間の問題だ。元DAの教官としても、教え子達にそんな思いをさせるわけにはいかない。

 

 

それに何よりも、光輝君は・・・"自分の娘達の命の恩人だ。"

 

 

父親として、自分の娘達を助けてくれた彼を、辛い目に遭わせるわけにも、裏切るわけにもいかない。

だからこそ、これに関しては立場上、板挟みとなることは重々承知し、自分が大変になることは承知しているが、黙秘を貫こうと決めた。

 

『・・・そうですか。いえ、そちらに八神達もお送りさせていただきましたが、それにしても無いものかと。』

「あぁ。あんなどこに現れるかもわからないビーストとウルトラマンの足取りを追うなんて、私達だけじゃとても手が足りないな。それこそ、リコリスを総動員でもしない限り無理だろう。」

『でしょうね。それに、あそこまでされては、ヤツを殺害するとなったら我々が社会の敵になってしまいますよ。ならばいっそ、ウルトラマンを我々のスポンサーにでもしましょうか。』

 

最後の方は半ば疲れか、はたまた呆れからか、珍しく楠木はジョークを口にした。それに対してミカも少し驚きつつ、同時に電話越しに小さく笑みを浮かべる。

 

「・・・そうだな。そっちも今回の件で疲れているだろう、今度、団子でも食べに来い。」

 

あの楠木がここまで言うとは、よほど疲れているのだろう。だからこそ、珍しくお店に来るよう提案をするが、司令が持ち場を離れるわけにはいかないですよと、いつも通りの口調に戻って言い放った、そのすぐ後・・・

 

 

『・・・ただ、デリバリーはさせてもらいましょうか。私も、一息入れたいものでして。』

「・・・事前連絡さえくれたら、大量注文も可能だよ。」

 

 

 

話を戻し、現在─────

 

あの後、光輝を送りに帰って来た4人、そして八神と海藤、そして光輝にも、ネクサスとビーストのことをそのまま報道することを伝えた。

勿論、全員があの話を思い出したが、もしそうなったとしても、少しでも光輝が楽になるよう、全員で出来る限りのサポートをしていこうと話が纏まり、その件も光輝に伝えた。

 

そうして店内のあちらこちらでネクサスを賛美する声が聞こえる中、八神はカウンターの向こうに立つ千束とたきなに話を振った。

 

「相変わらず凄いな、ウルトラマンネクサス。」

「当たり前ですよ。だって、私達のヒーローですから。」

「そうそう!我らのヒーローウルトラマンネクサスなので!」

 

誰にも聞こえないよう小声ながら、千束とたきなはネクサスへの想いを語る。

 

「・・・呼んでみる?」

「もっちろん!それじゃ連絡してきますねー!」

 

パタパタと履物の音を鳴らしながら、千束はお客様から見えない、バックヤードに入ると、スマホを取り出し、八神さん達と待ってるから来てね、とTALKの3人のグループにメッセージを送る。

 

 

「・・・あんま、無理しないでね・・・」

 

 

ただ、裏に入った瞬間、先程までの元気な様子は鳴りを潜めた。

自分が元気でない、というわけでは決してない。むしろ、自分自身はいつも通り元気だ。

 

 

 

・・・ただ、今はそれ以上に、先程まで海の向こうで戦っていた友達の方が、この1週間以上、ずっと気がかりだった。

 

 

 

話を、ネクサスがザ・ワンを倒してから2日後。

つまり、八神が姫矢にウルトラマンネクサスという名前を提案したその日、喫茶リコリコでもあることが起こっていた─────

 

 

 

あの凄惨な事件から2日が経ち、新宿近郊以外に住んでいる人々にはそれぞれの生活が戻り始めていた。

とはいえ、街は未だに自粛ムードが続いており、どこもかしこも妙に暗い空気が流れており、一体この世界はどうなってしまうのだろうと誰もが不安に思っていた。

ただ、同時にあの巨人が倒してくれたという明るいニュースもあったことで、不安も感じていたのだが、人々は同時に、希望も持っていた。そのため、不安と希望の両方が入り混じった、不思議な空気が今社会には蔓延していた。

 

喫茶リコリコもまた、錦糸町という新宿から離れた街ということもあり、その日からそうだったが、営業は再開出来ていた。だからこそ、この店の常連もまた、いつものように、いや、むしろ気持ちが落ち着かないからこそ、自然と喫茶リコリコにへと集まった。

平日の午後ということや街の空気もあってか、常連客以外は現在店内にはおらず、故に常連との会話を楽しむ時間もあり、結果、この店の中には、これまで通りの変わらない空気が流れていた。

 

『まずはこちらです。』

 

そんな中、棚に置かれている小さなテレビの流しっぱなしにしていた午後のワイドショーから、その日のトップニュースの話が始まる。

 

 

『新宿に現れた怪獣と巨人の影響で、現在までに死者が・・・』

 

 

ワイドショーの司会の声が聞こえてきた瞬間、喫茶リコリコの全員がテレビの画面に視線を向ける。

 

テレビの向こうには2日前、新宿に現れたザ・ワン、そして、ウルトラマンネクサスの映像が流れていた。この映像は連日のように報道され、おそらく世界中の誰もが、今や一度は見たことのある映像になった。

 

当初は、誰しもザ・ワンを倒したネクサスに対し、多くのメディアが手放しで賛辞の声を送っていた。だが、あの事件が起きてから3日目となると、新宿でザ・ワンが暴れ回った影響で怪我をした人、そして・・・何らかの形で巻き込まれ、亡くなった人の詳細が明らかになり出し始め、死者数や負傷者数などの報道も多く流れてくるようになった。

 

故に、当時新宿に居た人のインタビューだけでなく、ザ・ワンのせいで亡くなってしまった人の遺族のインタビューも目にするようになったのは勿論、ザ・ワンを倒したネクサスに対してのマイナスなコメントも、ネット上で少なからず見受けられるようになっていた。

 

普通の人だったら、そのことをただ悲しい事件・痛ましい事件だったと思う程度なのかもしれないが・・・喫茶リコリコの全員は、全てを知っている。

 

自分達でさえ、このニュースで心を痛めている。だとしたら・・・

 

 

─────光輝は今、どれだけの痛みを受けているのか。そのことを想像するだけでも辛くなっていた。

 

 

そんな喫茶リコリコの全員の気持ちなど知る由もなく、そのワイドショーの司会、そしてコメンテーターは思い思いの言葉を口にしている。

 

『いやーしかし凄惨な事件でしたねぇ。あの巨人が怪獣を倒してくれなかったらどうなっていたことか。』

 

ワイドショーの司会はネクサスとザ・ワンの戦いを肯定的に捉え、かつ、番組の進行を円滑に進めるために話を回していく。

しかし、番組を盛り上げようとしているのか、あるいは、それが本音なのか。とあるゲストコメンテーターは司会に対して反論する。

 

 

『いやでも、あの巨人がもっと早く来れば、犠牲者は少なかったはずですよ!だったら、もっと早く来いと私は言いたいですよ!人類をちゃんと守れあの巨人め!』

 

 

その言葉を聞いた瞬間─────千束は常連客との話を切り上げ、リモコンを奪い取るように手に取り、テレビを消した。

 

「千束ちゃん・・・?」

「どうかしたの・・・?」

 

いつも元気でニコニコしている千束が珍しく、笑顔を消し、怒ったようにテレビを消した。普段だったら気にも留めすらしないのに、この時だけはまるでこれ以上は聞きたくない、そんな様子でテレビを消したため、常連客は何か不思議なものを見ているかのように、千束の方を見ていた。

 

「・・・あっ!ご、ごめ~ん皆!いや、私あの巨人、映画のヒーローみたいでカッコよくてすっごく好きになっちゃてぇ!あーんなこと言ってるコメンテーターに腹立っちゃってさぁ!」

 

ただ、それに気付いた直後、いつも通りの表情に戻った。

確かに、彼女は映画が好きだ。それは常連客も周知の事実であり、中でもアクション映画やSF映画が好きなことも知っている。だったら、あの巨人も千束ちゃんなら好きになるはずだ。好きなものを悪く言われてたら、それは誰でも嫌になるだろう。その理由を常連客一同察すると、店内がいつも通りの空気に戻ったため、千束もつられて笑い出す。

 

そんな中で、ちょっとトイレ行ってきま~すとだけ言うと、千束は店の奥にへと入っていった。

 

「・・・」

 

それに気付き、たきなも誰にも気付かれることなく、ひっそりとまた、店の奥へと入った。

 

 

そして、廊下の壁に背をもたれかけている相棒に、語り掛けた。

 

 

「・・・あのコメンテーター、めちゃくちゃ腹立ちますね・・・撃ってもいいですか・・・?」

「たきな、それはダメ・・・ごめん、嘘。私だって一発殴りたいよ・・・!何だよあいつ・・・!何にも知らないくせに・・・!光輝がどれだけのもの背負って戦ってんのか知らないで偉そうに・・・!」

 

 

あのコメンテーターは知らなくて当然だが、こっちは全てを知っている。

ウルトラマンネクサスの正体が、ただの高校生で・・・大切な友達だということも。ああして優しく接してくれて、笑っていたその裏で、ずっと孤独に、メリットなど何一つ無く、戦えば戦うだけ、心も体も傷付きながら戦い続けてくれたことも。

 

・・・そして、彼が語った、ウルトラマンになるリスクもデメリットも。

 

ワイドショーだけでなく、テレビのニュースや新聞。そして、誰もが気軽に発信することが出来るSNSでも、ザ・ワンだけでなく、ネクサスに対しても事件以降少しずつではあるが、マイナスなコメントも見受けられるようになっていた。

それはまさに、あの時光輝が言っていた通りの状況となった。

 

自分達でさえ見ていて辛いのに、自分達の何倍、いやもはや計り知れないほど、光輝の方が今この瞬間も辛い思いをしているはずだ。

あぁして、気にしなくていいと言ったにも関わらず、こちらに怪我を負わせてしまったことや、恐怖を覚えさせてしまったことに罪悪感を感じてしまう彼が、こうして人々の言葉が多く見えるこの世の中で、大丈夫なわけがない。

 

だから、気付いた時には、スマホを取り出して光輝に電話をしていた。

とはいえ、平日の午後だから、おそらく彼は学校だろう。だから、出れなくて当たり前だ。そう思っていたため、コール音が何度か鳴った後、電話を切ろうとしたその時・・・

 

 

『・・・もしもし?どうしたの?』

 

 

意外にも、電話に出た。

それに少し驚き学校は!?と尋ねると、あぁ、今日ちょっと早かったんだよ、と光輝はあっけらかんと返した。

 

「ね、ねぇ光輝・・・大丈夫?」

『大丈夫って・・・・?』

「えっと・・・いや、その・・・」

 

珍しく言い淀んでいる千束に何かを察したのか、ふふっと電話越しに光輝は笑った。

 

『ありがとう。いつも心配してくれて・・・凄く助かるよ。でも、大丈夫。また近いうちにそっち行くから。今度は、お客さんとして。』

 

いつも通りの優しい言葉に少しだけホッとし、おうよ、と返しつつも、どうしても伝えたかったことを言おうと決めた。

 

「・・・何も悪くないからね。」

『えっ?』

「光輝は皆を守ってくれたんだから、誰がどんなこと言っても気にしないでいいよ。何があっても私が光輝のこと、守ってあげる。辛かったら言ってね。すぐに飛んでくから。ウルトラマンみたいにさ。」

 

その言葉に対する返事はすぐには来なかったが、少しすると

 

『・・・ありがと。やっぱり千束は優しいね。』

 

いつもならばジョークに何かしらの形ですぐ反応するのだが、今回はそれに何も反応せず、少し涙声で、弱々しく返事が返ってきた。

その声を聞いて次の言葉が出てこなくなり、ちょっとたきなにも替わるねと、慌ててたきなに電話を替わった。

 

「・・・光輝、辛かったら言ってくださいね。今度は、話してくれますよね?」

『もちろん。ヤバかったらいつでも話すよ。長くなるかもしれないけど。』

「・・・面倒くさくなりそうですね。」

『多分、そうなると思う・・・ただ、今は大丈夫だよ。ありがとう。』

「・・・なんでも一人で、抱え込まないでくださいね。」

『・・・ありがとう。本当に、助かるよ。ごめんね、仕事中に電話させて。』

「気にしないでください。いつでも来ていいですから。」

 

それだけ言うと、光輝は少し黙り込み、電話越しにたきなが不思議に思った矢先・・・

 

『たきな、それに千束も、忙しいとこごめん。少しだけ、話聞いてもらってもいい?』

 

少し弱々しい声で切り出すと、2人もそれを承諾し、店の奥の休憩室へと入り、その通話をスピーカーモードへと切り替える。いいよ、と千束が声を掛けると、スゥと、一つ息を吸う音が聞こえた。

 

『・・・実はさ、ちょっと昨日から寝れなくてさ・・・』

「・・・うん。」

『ずっとね、昨日から考えてたんだよ・・・』

 

しばらく、向こうからの話はなく、ただ、沈黙の時間が流れた。1分程度しか時間は経っていないのだが、それ以上に長く感じていると、光輝は呟くように言った。

 

 

 

『・・・人の命を、誰かを守ることって・・・凄く、大変だね・・・やっぱ、ウルトラマンって・・・楽じゃねぇわ・・・』

 

 

 

少し笑っているようにも聞こえるが、その向こうに見える、圧倒的な悲しみ。

 

やはり、光輝は無理をしている。そんなことはとうにわかっていたが、その言葉を聞き、2人も次の言葉が出てこず、胸を締め付けられた。

 

『・・・ああごめんね!変なこと言ったね!やっべ寝れなくて頭おかしくなってるわ!あー話したら眠くなってきたそれじゃ寝るからまたねおやすみ!』

「あっちょっと!」

 

そう言うと彼は慌てて電話を切った。最後にはいつも通り─────なわけは、なかった。

あれはどう聞いても、ただ空元気で話していた。

 

時間としては僅かだが、それなりに光輝のことはわかっている。友達だから、ああして電話の向こうの光輝が、普通じゃないことくらいわかっていた。

 

そして、最後のあの言葉は、心の底から出た・・・弱音だろう。

 

本当の部分は聞けなかったが、それでも、あの一言だけで彼に今何が起きているのか、容易に想像はつく。とはいえ、折り返し電話を掛ける勇気も、今の2人にはなかった。

 

「・・・多分、嘘ですよ。今日、休んでますよね・・・」

「・・・話してって言ったじゃん・・・バカ。もっと頼ってよ・・・そんなに私達、頼りないの・・・?」

「2人とも」

 

2人して悲しんでいるそんな中、いつの間にか裏に入って来たミカが声を掛けてきた。そちらの方を向くと、ミカは2人に対して笑みを浮かべた。

 

「光輝君なら大丈夫だ。彼なら乗り越えられるさ。」

「先生・・・でも・・・」

「光輝君は私達とは違う。依頼でもなく、ただ使命感だけで人々を守り続けている。それに、彼は日本どころか、この世界全てを守ろうとしている。私達とは在り方がそもそも違うんだ。だからこそ、その重圧は、計り知れないだろう。ただ、今の彼は、もう独りじゃない。一人で抱えきれなかったら、私達が一緒に分け合ってあげればいい・・・ただ、これからも彼が戦い続けていくために、今まさに、彼は向き合っているんだ。人間として、ウルトラマンとして・・・彼にしか解決出来ない問題に対して。」

「・・・ウルトラマンの、宿題・・・ってことですか?」

 

あぁと頷くと、千束は少し声を震わせて聞いてみた。

 

「先生は、今光輝が悩んでること、わかるの?」

「さぁ?私にもわからないさ。」

「わかんないの・・・」

「当たり前だ。ウルトラマンの悩みなんて、ただの人間に見当が付くわけないだろう。」

 

そう話す顔は少し困ったように笑っているが、本当はもう全てをわかっているかのようにも見えた。ただ、優しさからか、それ以上言うことはなかった。

それはまるで、ここにいる誰よりも、光輝のことを信じているかのようでもあった。

 

故に、ただ、と付け加えた。

 

「きっと光輝君は、その答えを見つける。だからこそ、今は信じて待ってあげればいい。その時には、笑って迎えてあげようじゃないか。」

 

大人として、人生の先輩として、この店の店長として、2人を導くかのようにアドバイスをすると、ふふっと2人は笑った。

 

「・・・そーいうのわかるの、男同士だから?」

「かもしれない、な。まぁ、伊達にお前達よりも長く生きているわけじゃないさ。それに、光輝君とは趣味が合うから、波長も合うのさ。」

「・・・店長、ズルいですよ、そういうの。」

 

先程までの悩みはどこへやら、2人の表情も目も変わり、大切な友達を信じて待つことにした。

その様子を見て、やれやれ、という表情を浮かべる。

 

「さっ、今は営業中だ。早く店内に戻りなさい。」

 

そう声を掛け、2人もまた返事をし、確認が取れたため店内へと戻っていこうとする中で、ミカは足を止めた。その様子に2人が気になっていると、そういえば・・・と切り出し、あることを相談し始める。

 

 

「最近、週末が忙しくて人手が欲しいんだ。私としてはどんな子でもいいんだ。例えば・・・"その子が色々なことをしていたとしてもこちらは問題ないんだ。むしろ、歓迎なんだが"・・・2人とも、誰か、そんないい子はいないかい?」

 

 

少しニヤリとしながら、2人の方をチラリと振り向く。

そのミカの言葉と裏にある想いに気付くと、互いに顔を見合わせ、ニッと笑った。

 

 

「いるよセンセ!最高にいいやつ!」

「めちゃくちゃ、頼りになりますよ。」

 

 

 

そして話は戻り、現在─────

 

「・・・ホント、疲れるなぁ。ウルトラマンネクサスが友達だと・・・」

 

少し困りながら、それでいて、やれやれといった諦めにも似た笑顔を浮かべる。

 

「・・・もっと頼ってね。私だって目一杯光輝のこと、頼らせてもらうから。」

 

大切な友達が、今度は頼ってくれることを信じ、千束は店内へと戻っていった─────

 

 

 

─────宇宙空間

 

「・・・相変わらず、綺麗な星だな、地球は。」

 

たった一人、宇宙から、あの青い星を眺めている。宇宙飛行士でも地球は見れるだろうし、民間人が宇宙旅行をする日も、そう遠くない未来かもしれないため、多くの人が将来的にこの光景を見れるようになるのかもしれないが、どうあれ、こんな形で見れるのは、世界で俺だけだろう。

 

1週間程前に見たこの景色が忘れられず、再びここまで来てしまった。こうしてこの光景を見るのは2回目なのだが、既にここから見る光景が俺にとって心の洗濯になり、それと同時に、使命感を思い出させてくれる景色だと感じていた。

 

先程まで、ザ・ワンが全て食い尽くし、いなくなったと思っていたビーストの残党と思われる存在が現れた。

幸い、多くのビーストが一塊になったようなやつなのであの場所に出るビーストはこれで終わりだとは思うが、やはりビーストの生命力は油断ならないと改めて感じさせられた。

いつだって、戦う準備は怠ってはならない。勿論、怠っているつもりはないが・・・・

 

とはいえ、ただこうして地球を見に来たわけじゃない。

 

 

─────今俺が抱えている悩みと、向き合うためだ。

 

 

この悩みは、誰にも相談することが出来ない悩み。友達の千束とたきなにも言えなければ、お世話になっているクルミさんやミズキさんにミカさん、同じく八神さんと海藤さんにも言えない。もっと言うと、父さんと母さんにも言えない悩みだ。

 

なのだが、正確に言うと・・・言ってもいいとは思っている。口に出せない問題というわけじゃない。

けれど、これを言ったところで、"励まされるだけ、ということがわかっているからだ。"

 

・・・けど、申し訳ないのだけれど、俺はそれじゃ、納得が出来ない。

 

だから、これに関しては誰にも言わず、俺だけで考えて、解決しなければならない悩みなのだ。

だからこそ、地球の外から、守るべきこの星を眺めながら、改めて、ずっと抱えている悩みと向き合っていた。

 

 

 

─────俺は、この地球を守れているのか?いや、守りきれていると言えるのだろうか?

 

 

 

そもそも、いつだってDAが情報を隠蔽するため、ザ・ワン以前のビーストに襲われた際の報道は、ビーストのせいだと報道されることはなかった。とはいえ、それでもそのニュースを見る度に・・・人が亡くなったというのを見て、常に罪悪感を感じていた。

殺しているのはビーストとはいえ、守れなかった俺にも当然責任はある。

 

ただ、今回のザ・ワンについてはその規模が尋常ではないほど大きくなり、あの時新宿に居たからこそ、被害に遭われた人も沢山いる。怪我をした人だけでなく、死者も大勢出た。それも、1人2人のレベルではない。何百人単位だ。

以前、ミカさんから電話も受け、流石にDAも情報の隠蔽が不可能だと判断したことや、DAやリコリスという存在がバレたというわけではないため、ザ・ワン、そしてネクサスの姿は正しく報道すると話を受けていた。

故に、ネクサスの姿もザ・ワンの姿も、そして、被害状況もまた、ありありと報道がなされた。

 

翌日はまだ学校に行けたのだが、それでも教室の中ではその話がずっとなされており、個人的には終始気が気ではなかった。

そして、時間が経つごとに、亡くなられた方の数の報道や遺族の言葉を新聞やニュース、そして、そのニュースの中に流れるSNSのコメントも・・・出来る限り見ないようにしていたのだが、否が応にも色々なところで目や耳から入ってきてしまった。

なので、その更に次の日、正確に言うとその夜から、これまで以上の罪悪感に襲われて眠ることすら出来なくなり、結果、学校を休んでしまった。

 

あの時、千束とたきなが電話を掛けてきてくれたのは、俺を心配してくれたからだろう。

そういう2人の優しさを尊敬しているし、凄く好きなところだ。

 

ただ、実際、あの日あの電話があって、2人の声を聞いて、精神的に本当に救われたのもまた、確かだ。

 

 

あの直前、俺は・・・精神的に限界が来てしまい、吐いてしまっていた。

 

 

その報道で精神がずっと不安定になって眠れなくなってしまい、眠れなかったことや罪悪感による不安などで顔が青ざめていたことを心配した両親からの提案で、その日は学校を休むことになった。

ただ、何をしても、何もしなくても全く気が休まることはなく、家の中だけでなく、気分転換にと思って外に出てもみたが、やはりずっと頭から離れず・・・限界に達して吐いてしまい、同時に涙も止まらなくなってしまった。

 

自分がもっと早く気付けていれば、最初の時にザ・ワンを倒せていたら・・・など、これまでにないほど後悔し続け、ネクサスになってから一番心が折れそうで、自信を無くし、立てなくなりそうだった。

 

そんなタイミングで2人からの電話があって・・・本当に救われた。

 

とはいえ、吐いたことだけでなく、この悩みについても心配を掛けたくないと思い言えなかったけれど、ああして支えようと気遣ってくれた言葉が本当に温かく、それがあったからこそ、本当に気が楽になった。一人だったら、絶対、二度と立てなくなっていた。

また俺は、千束とたきなに助けてもらった。あの2人は、大切な友達でありながら、同時に一番の理解者だと思っている。そんな存在がいることが本当に嬉しく、俺にとっても千束とたきなは恩人だと、心の底から思っている。

 

だから最後に、つい弱音を吐いてしまった。

情けないけど・・・あの2人だからこそ、俺は弱音を吐いた。結果それで心配を掛けてしまったのは本当に申し訳ないが・・・

 

その電話があったことで気が楽になり、そこで考えるのを一度止め、その後数日は何事もないように振る舞っていた中で、先程のビーストの騒ぎでアメリカまで飛んで行き、倒したというわけだ。

 

とはいえ、さっきだって、俺はなるべく早く駆けつけたつもりではいたけれど、ああして大きくなるまでの過程で、何人か亡くなっているかもしれない。新宿の時もそうだが、俺はその家族からは、ビーストの次に恨まれるべき存在と言えるだろう。

早く来れば家族は死ななかった・怪我をしなかった。遺族の方はそうも思っているだろう。

 

・・・だからか、数日前に、お前のせいで家族は死んだ、そう言われる夢も見た。結局それで途中で起きてからは、またもや眠れなくなった。

 

直接言われたわけではない今でもこれなのに、もし、直接言われたその日が来たのなら、俺はどうなってしまうのだろう・・・前に皆には言ったけど、俺はそれがどうしようもないくらい、怖い。

 

だからこそ、そこになるべく向き合わない、見て見ぬふりをしていたが、こうしてウルトラマンネクサスという存在が世界中に認知された今だからこそ、改めて向き合わなければならない。その答えを出すためにも、誰も立ち入ることの出来ない、静寂が包み込むこの空間までやって来たのだ。

 

 

 

俺は・・・ウルトラマンとして、正しいのだろうか?

ウルトラマンなら、全員を守れなきゃいけないんじゃないのか?

一人たりとも、命を落とすことなんてあってはならない・・・だから、全てを守り抜けないウルトラマンなんて・・・一人でも救えなかったら・・・ウルトラマン失格なんじゃないか・・・

俺は、ずっとそう考えている。

 

 

 

この問題はネクサスとして初めて戦い、そして、初めてビーストで犠牲者を出してしまった日から今までずっと考えていることなのだが、何か月経っても考えは一向に纏まることはないし、答えも出ない。割り切ることだって出来ていない。

 

そもそも、未だにこの力の意味やウルトラマンとしての在り方。もっと言えば、未だに人間としてどう生きていけばいいのか、それすらはっきりわかっていない。

ただ、考え方は少しは変わり、大切に思ってくれている皆が今はいるから、命を簡単に捨てるのはやめたものの、それでも100全部変わったかと言われたら、それは嘘だ。自分のことだからよくわかっている。

誰もがこんなことを聞いたら悲しむため、絶対口にはしないが、本音を言えばこれだ。

 

おそらく、この罪悪感は、ウルトラマンネクサスである限り、ずっと抱え続けるのだろう。俺のことを知っている皆は勿論信頼しているけれど・・・この問題に関しては、自分だけで考え、答えを出さなければならない。これを解決しなければ、ウルトラマンとは言えないと、一人勝手に思っている。もはや、使命感や義務感から、なのかもしれない。

 

 

・・・ただ、ずっと考えていたのだが、ここまで来ておいて結局、明確な答えは今日も出せなかった。そのため、また引き伸ばすことを決めた。

 

本当に、こんなやつがウルトラマンだなんて・・・ネクサス以外のウルトラマンが見たら笑うだろうし、叱られるだろうな・・・

 

とりあえず、千束とたきなにあんな弱音を吐いたことで、ずっと心配をかけているだろうから、顔を見せて大丈夫なことも伝えたいし、皆さんに顔を見せにも行きたい。

 

さて、そろそろ戻ろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スペースビーストの反応があるということで世界を渡って来てみたが、まさか、すでに君が来ているとは思わなかったよ、ウルトラマンノア。いや・・・ウルトラマンネクサス。」

「!?」

 

 

 

帰ろうとした瞬間、突然誰かが話し掛けてきた。

宇宙空間で話し掛けてくるなんて、当然ながら人間なわけがない。それも、ネクサスになっていたのに全く気配に気付けなかった。加えて、ネクサスのことをノアと言った。だからこそ、アブソリューティアンのような宇宙人。それも、ネクサスの正体を知っているということは、只者ではないと瞬時に察し、慌てて振り向いた。

 

 

「えっ・・・!?」

 

 

その姿を見て・・・驚きのあまり、俺は言葉を失い、同時に、"警戒心が完全に消えてしまった。"

 

目の前にいるのは、やはり宇宙人であり、想像していた通り、只者じゃなかった。

はっきり言うと、勝てる見込みがない。

 

だが、間違いなく言えることがある。

 

 

この宇宙人は、俺を襲うこともしなければ、地球の侵略も、絶対にしない。

 

というより・・・この人は、そういったことから、生命を守るために存在している。

 

 

何故ならこの人は─────"ネクサスと同じく、平和を守る存在だからだ。"

 

 

 

そこにいたのは─────"赤と銀の、光の戦士。"

 

 

 

勿論、直接会うのはこれが初めてだが、実はかつてネクサス、いやノアからこの光の戦士のことは聞いていた。

 

 

─────かつて共に戦ったことがあり、そして・・・"光の国から地球のために初めてやって来た、光の巨人だということを。"

 

 

でも、まさか・・・なんでここにいるのか。

驚きのあまり考えが纏まらないものの、俺はその光の巨人の名前を呼ぶ。

 

彼の名は─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウ、ウルトラマン!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐れ多くも、その名前を口にした。

 

 

 

栄光の、初代ウルトラマンを・・・

 

 

 

「おや、今喋っている君は・・・人間かい?おそらく、まだ若いのかもしれないな。ならば、すでにネクサス、いやノアから私のことを聞いているのかい?」

「は、はい・・・お、いや、私は、真田 光輝って、言います。あの、まだ高校生で・・・」

「そんなにかしこまらなくてもいい、光輝。緊張しないでくれたまえ。私もこう見えて、地球に居た時間は長いんだ。人間のことは、よく知っているつもりさ。」

 

ウルトラマンはまるで、俺のこと、いや地球人についてよく理解しているかのように優しく話し掛けてくれているのだが、一方の俺は終始緊張と驚きで頭が回っていなかった。

まさか、別の世界のウルトラマン、それも、ネクサスから聞いていた伝説の存在が目の前に現れたのだ。誰だって驚くはずだ。その驚きを隠せないままだったが、とりあえず聞きたいことはまずこれだ。

 

「あっ、あの!何でウルトラマン・・・あぁすいません!ウルトラマンさんがここに!?」

「何、ウルトラマンでいいさ。この宇宙にスペースビーストが現れた反応を光の国でキャッチし、ここまでやって来たのだ。かつて、とある宇宙でビーストと戦った際、私の光線がビーストに有効なことが発覚し、それ以降私がビースト退治で光の国から赴くことが多くてね。ただ、光の国も現在アブソリューティアンの一件があって、この宇宙に到着するまでに時間が掛かってしまった。だが、君が戦ってくれたのならば、私の出番は無かったようだな。」

 

何も言っていないのだが、ウルトラマンはまるで、この世界で起こった事の顛末を全て把握しているかのようだった。それに、アブソリューティアン・・・そう言っているということは、やはり本当に光の国を狙っているのか。そのことへの驚きもあるが、とはいえウルトラマンと何を話せばいいのかわからずにいた。

 

「それよりもどうしたんだい、こんなところで。」

「あっ、それは・・・その・・・」

 

そんな中、ウルトラマンから話を振ってきてくれた。やはりウルトラマンも、まさか宇宙にネクサスが居るとは思っていなかったはずだ。

俺としても色々聞きたいことはあるのだが・・・だったら、と、どうしても聞きたいことがあり、ウルトラマンに対してこんなお願いをしていた。

 

「あの、ウルトラマン!もし良かったら・・・少し、お話させてもらえないですか・・・お願いします。」

 

少しの沈黙の後、ウルトラマンはゆっくりと頷いた。

 

「・・・あぁ、いいとも。」

 

 

 

─────喫茶リコリコ

 

『おかけになった電話番号は、電源が入っていないか、電波が届かない所にあるためかかりません...』

 

お客さんから見えない裏に入って電話を掛けてみたが、やはり電話には出ない。

連絡を入れてから、一時間ほどが経った。先程私がTALKに連絡を入れたものの、そのメッセージにも一向に既読は付かず、何度か電話をしてみても繋がらない。念のため、自宅の方にも連絡を入れてみたが、まだ光輝は帰ってきていないという。

 

そのため、クルミに頼んで光輝のスマホをお得意のハッキングで調べ、現在地を特定しようとしてみたものの、やはり今、電源が入っていないのか、それとも・・・"この地球にいないのか"、全く場所が特定出来ないという。

 

・・・私の胸に、一抹の不安がよぎる。

 

「・・・大丈夫だよね・・・何にも、起きてないよね・・・?」

 

先程ああして戦っていたからこそ、何か起こったのではないかと不安になってしまい、電話が繋がらなかったスマホを両手でギュッと握り締めた。

そんな中、いつの間にかやって来たたきながポンと、その手を私の肩に置いてくれた。

 

「大丈夫ですよ、光輝なら。それに、いつだって光輝は心配かけてますから、もういつものことじゃないですか。」

 

そうやって優しく微笑んでくれる私の相棒に、少し安堵し、気持ちが軽くなる。本当に、どっちが年上なんだか時々わからなくなってくる。

 

「・・・そうだよね!ま~ったくあのバカはど~こほっつき歩いてんだか!来たらゲンコツかましちゃる!」

「ふふっ、だったら私もついでにしますね。一向に連絡もよこさず待たせるなんてロクでもないですから。」

 

先程までの緊張感はどこへやら、気付けばお互い笑い出してしまっていた。

 

でも、チラッと見えてしまった・・・たきなが、拳をギュッと握っていたことを。

・・・そういうところを含めて、やっぱり、私の相棒は、本当に最高だ。

 

 

・・・本当に、心配ばかり掛けさせないでほしい。いちいち彼のことで心配するのは凄く疲れる。

 

だから・・・

 

「ねぇたきな。」

「何ですか?」

「一個・・・提案なんだけどさ・・・」

 

・・・・・・

 

「・・・どう?」

「・・・いいと思いますよ。」

 

私のこの提案を、私の相棒も受け入れてくれた─────

 

 

 

─────宇宙空間

 

「・・・俺、わからないんです。俺が戦わなきゃ多くの人の命が失われてしまうから、戦わなきゃいけないことはわかってるんですけど・・・それでも、犠牲が出てしまう。それじゃあ、何のためにウルトラマンネクサスとして戦ってるんだって・・・俺は、誰も死なせたくないんです。だから、1人も死なせてしまってはならないと思ってますし・・・全ての人の命を守れないんじゃ、ウルトラマンとして・・・失格なんじゃないかって、ずっと悩んでるんです。この世界中の誰もがウルトラマンネクサスの存在を認知した今だからこそ、改めてこの問題に向き合わなきゃいけないと思っていて・・・支えてくれて、信頼している仲間はいるんですけど、この問題は自分で解決しなきゃって思ってて・・・それに、未だに、この光が来た意味もはっきりとはわかってないんです。それでこうして今ここでずっと悩んでたんです・・・だから、聞きたいんです。伝説の光の巨人と呼ばれているあなたは、ウルトラマンは、これまでどうやって戦ってきたのかを・・・」

 

俺はウルトラマンに、ウルトラマン同士だからか、これまでの自分の生きてきた人生。そして、今ウルトラマンとして抱えている悩みを打ち明けていた。

今の気持ちを例えるのならば、まるで、神や仏に会って話しているかのようだった・・・だから、もはや悩みというより、懺悔に近い。

 

正直、こんな話をして情けないウルトラマンだと思われても仕方ないと割り切っていた。当たり前だ。目の前にいるのは、今の今まで長きに渡り地球を、宇宙の平和をずっと守り続けてきたウルトラマンその人だ。そんな人から見たら、こんな情けないやつが、人の命を守れないお前が、ウルトラマンなんて名乗るな、失格だ・・・そう言われることだって覚悟していた。

 

対して、ウルトラマンはいつの間にか俺に背を向けていたのだが、何も口を挿むことなく、ただじっと話を聞いてくれていた。

 

 

「・・・かつて、君と同じような悩みを抱えたウルトラマンがいたよ。」

「えっ・・・?」

 

 

ウルトラマンは俺の考えに対して、批判も肯定もせず、かつて、自分と同じ悩みを持ったウルトラマンがいたと言うと、そのウルトラマンについて話し始めてくれた。

 

「その昔、あるウルトラマンが地球に赴任していた際、自身の倒した怪獣が、一人の少年の心に深い傷を残していることに苦悩していた。その時、彼もウルトラマンとして経験も浅く、理想と現実に打ちひしがれ、倒したその裏で悲しむ人がいることに自信をなくしかけていた・・・今の君と、同じように。」

「・・・そのウルトラマンは、どうしたんですか?」

「私は、彼にこう言ったさ・・・今の君にも、伝えよう。」

 

それだけ言うと、ウルトラマンはこちらを振り返ってくれた。

 

 

 

「ネクサス、いや光輝、忘れないでくれ。我々ウルトラマンは、決して神ではない。どんなに頑張ろうと、救えない命もあれば、届かない想いもある。」

 

 

 

ウルトラマンは神ではない。ウルトラマンははっきりとそう言い切り、加えて、救えない命もあれば、届かない想いもあるとまで言い切った。

まさか長きに渡って、多くの命を守り抜いてきたウルトラマンがそんなことを言うとは思わず、驚きと同時に何か反論を言おうとしたのを察したのか、だが、と付け加えた。

 

「それ以上に大切なのは、最後まで諦めないことだ。」

「諦めない、こと・・・?」

「そうだ。そして彼は、その後も多くの困難を乗り越えながら戦い、時には守るべき地球人から手痛く裏切られることもあった。しかし、それでも彼は諦めず、最後まで戦い抜いた。今ではウルトラ兄弟の仲間入りを果たし、多くの後輩の育成にあたっている・・・立派になったものだよ、あの"メビウス"が。」

 

その話を終えると、まるで遠い過去を懐かしむように、顔を上に向け、彼方の星を見上げている。

 

ただ、一方の俺は、その話の中でウルトラマンから言われた諦めない、という言葉に驚いていた。

 

 

実はその言葉は・・・ネクサスからも、俺に言ってくれたからだ。

"彼と一心同体になってから一番最初に、彼は、諦めるな、と俺に言ってくれたのだ。"

 

 

その言葉をウルトラマンも言ってくれたことに驚いていると、いつの間にか目線を合わせてくれていたウルトラマンは、光り輝くその瞳で真っ直ぐこちらを見つめていた。

 

「光輝、君自身の過去に辛いことがあるのもわかる。過去、悪人を殺す人間として育てられ、いざその時が来た中で何も出来ず、人間として精神が崩壊してしまった後、こうして今普通に暮らしている。それは私としてはいいことだとは思う。だが、君自身は、今生きていることに対して、自分がこうしてのうのうと生きていていいのだろうか?いつか、自分はそれらの罪を償うべきではないのか?・・・だから、ネクサスはそんな自分に与えられた、罰なのだと・・・そして、自分の命を犠牲にしてでも、地球を、人々の平和を守らなければならない。そう考えてもいるだろう?いや、いたというべきかな?」

 

自分の生い立ちについてもウルトラマンに話したのだが、当たり前だが、ネクサスになった意味についても話したわけではなかった。

だが、ウルトラマンは俺の内面全て、そして、ネクサスが俺のところにやってきた意味も全てお見通しかのように話し掛けてくれる。

とはいえ、その言葉は何一つ間違っていない。だから、はい・・・としか言えなかったが、ウルトラマンはそれを咎めることもなく、ただ・・・と付け加えた。

 

「私はこう思っているよ。その光は、決して罰ではない。ネクサスは、ノアは・・・君に変わるチャンス与えるために、やって来たのだと。」

「変わる・・・チャンス?」

 

ウルトラマンからネクサスがどうして自分の元に来たのか、そのヒントを与えるかのように話してくれると、ウルトラマンは自分自身のことを語り始めてくれた。

 

「私もかつて、一人の地球人を自身の過ちによって命を奪ってしまった。その罪滅ぼしから、私は彼と一体化し、地球の未来を守るために戦ってきた。だが、私の手で救えなかった命も数多くある。それ以上に私は、多くの怪獣の命をこの手で葬ってきた。だから私は・・・怪獣の処刑人と思われているのかもしれないな。」

「処刑人だなんて・・・そんなこと!?」

「いいや、そう見えても仕方がないさ。それだけではなく、時には・・・"怪獣へと変わり果てた人間を、この手で倒さなければならなかった。"」

「ウルトラマンが・・・人間を・・・!?」

「だが、やらなければならなかった。それだけではなく、私も多くの守り抜けなかった命がある。地球に赴任していた時も、その後も・・・私も、守れなかったことに対する罪悪感を未だに感じているよ。」

「・・・ウルトラマン・・・」

「けれど、過ぎてしまった、起きてしまったことは誰にも、ウルトラマンでも変えられない。しかし、未来は変えられる。」

「未来は・・・変えられる・・・」

「あぁ。生きている限り、誰もが間違いを犯す。時には、起こったことが原因で立ち止まってしまいそうになるかもしれない。しかし、それら全てを背負って、命ある限り、どんな生命体でも前に進む。それは人間も、ウルトラマンも同じだ。だから、人間としてどう生きていくかのヒントを、キッカケを君に与えるために、ネクサスは君の元へやって来たんじゃないだろうか。私は、そう思うよ。」

「・・・」

 

ウルトラマンの過去を聞いたことで何も言えなくなってしまっていた中で、いつの間にか近付いていたウルトラマンは、俺の肩に手を乗せてくれた。

 

 

「光輝、だからこそだ。これ以上、誰かが不幸にならないように、悲しまないように、我々はその悲しみも全て背負って、戦い続けるんだ。私もそうして、今まで戦い続けてきた。私だけではない。他の多くのウルトラマンもまた、傷付くことだってあれば、心が引き裂かれそうになるほどの悲しい出来事を何度も経験してきた。だが、それでもくじけず、立ち上がり、あらゆる困難に立ち向かい、平和を守り抜いてきた。最後まで諦めず、不可能を可能していく・・・それが、ウルトラマンだ。」

「ウルトラマン・・・」

 

 

話に聞いていた、目の前にいるウルトラマンは、何も非の打ち所が無い、完璧な存在だと思っていた。それこそ、神様とは、こういう人のことを呼ぶのだろうと。

でも、その考えは全くもって違った。

 

ウルトラマンだって、傷付き、心引き裂かれる悲しい出来事を何度も経験していた。その度に、人間と同じように、心が傷付くのだ。

けれど、何があっても必ず立ち上がり、平和を守るために戦い、不可能を可能にしてきた。

 

俺達人間と同じ、傷付き、悩み、それでも立ち止まらず、前に進んでいく、命を持った不完全な存在なんだ・・・と。

 

そのウルトラマンの言葉に、心が軽くなってくると同時に、ウルトラマンとしてどうあるべきか・・・人間、真田 光輝としてどう生きていくかの道が、少し見えたような気がした。

 

「ウルトラマン・・・ありがとうございます。何か、迷いが晴れた気がします。俺は、人間としても未熟なので・・・こんなことを聞いてしまって、それで足を止めさせてしまってすみませんでした。」

「いいや、気にすることなど何もない。むしろ、感謝するのは、私の方だ。君が戦わなかったら、この世界はビーストによって滅ぼされていた。おそらく、私でも救えなかったはずだ。だから、この世界を、人々を守ったのは君なんだ。自信を持ちたまえ。君もまた・・・不可能を可能にした、ウルトラマンなのだから。」

「・・・はい!」

 

それまでとは違い、元気良く返事をすると、気のせいか、ウルトラマンが・・・笑ってくれているように見えた。

 

「いい顔になったな。だったら・・・」

 

そう言うと、ウルトラマンは目の前に腕を突き出した。

 

「ウルトラマン、これは?」

「クロスタッチ。私達ウルトラマンが絆を結んだ相手と交わす握手のようなものだ。どうだい?」

「・・・はい!」

 

勿論、そんな提案を断るわけがなく、俺も腕を突き出して、クロスタッチをウルトラマンと交わした。

 

 

この瞬間俺は─────"この世界で唯一、ネクサスに次いで2人目の、ウルトラマンとの絆を結んだ人間となった。"

 

 

しかし、まさかこの1年の間で2人もウルトラマン、いや宇宙人と絆が生まれるなんて。1年前の自分に言ってやりたいよ・・・すげぇ未来が待ってるぞ、って!

 

「さて、では、私は行くよ。」

「もう、行かれるんですね・・・」

「あぁ。まだ、この宇宙には私達を必要としている者が沢山いる。手が届く範囲で、我々は手を伸ばし続ける。これまでも、これからも。」

 

それだけ言うと、ウルトラマンは振り返り、背中を見せた。

 

その背中はとても大きく見え、近くにあるのに、永遠に手が届かないように感じてしまう。

でも、だからこそ、こういった存在に近付けるように・・・ウルトラマンのようになりたいと、素直に、そう思った。

 

 

「さらばだ、ウルトラマンネクサス。真田 光輝。この世界は、君に託した。」

「ありがとう・・・さようなら、ウルトラマン!またいつか、会いましょう!」

 

 

その場から飛び去っていくウルトラマンの姿を、いつまでも、いつまでも、見守り続けていた─────

 

 

 

─────喫茶リコリコ

 

「・・・やっぱり、何かあったのかな・・・」

 

先程連絡をしてからもうすぐ2時間になろうとしていて、いつの間にか店内にいるお客さんは八神さんと海藤さんだけになっていた。

やっぱり何かあったのか・・・と思い、居ても立っても居られなくなってきた。

 

「ちょっと私、探し行って「ごめん遅くなった!!」

 

探しに行こうとしたちょうどその時、ドアを勢いよく開けて光輝が入ってきた。その顔を見て、安堵するよりも先に、怒りが込み上げてきた。

 

「おっそーーーい!何やってたのこのバカ!!」

 

ただ、一方の光輝は私の怒りに対して何の反応も示さず、キョロキョロと店内を見回していた。

 

「ねぇ、店内ってリコリコの皆さんと八神さんと海藤さん以外誰もいない!?」

「う、うん・・・いないよ?」

 

珍しく慌てながら質問され、怒りも忘れてそう答えると、一つ大きく息を吸うと、光輝は大声で言った。

 

 

 

「ウルトラマンに会ってたから遅くなった!!」

 

 

 

・・・は?今、なんて言った?

 

「・・・光輝、今なんて言ったの?」

「だーかーらー!ウルトラマンに会って、話してたの!!だからこんなに遅くなってごめん!」

「・・・いや、光輝がウルトラマンですよね?バカがもっと進行したんですか?」

「だー違う違う!あとホントたきな酷いことサラッと言うね!」

 

たきなが光輝に向かってツッコミを入れようとしているのだが、それを無視し、光輝は慌ててカウンターに座った。

 

 

「俺さっきまで会ってたんだよ!・・・ウルトラマンに!」

 

 

何を言っているか、何が起こっていたのかさっぱりわからないのだが、興奮したように、それでいて嬉しそうに話す光輝に、ふふっと笑い出してしまった。

 

「何があったか聞かせてよ光輝!面白そう!」

「そこまで言うなら、凄い話なんでしょうね・・・?期待してますから。」

「すべんなよー光輝?」

「いい酒の肴にしないと、怒るわよ?」

「・・・コーヒーでも入れて、ゆっくり話でも聞かせてもらおうか。」

「あぁ。何があったか、聞かせてもらおうじゃねぇか。」

「んじゃ光輝、話してくれよ。その、ウルトラマンの話。」

 

「・・・もちろんです!」

 

 

彼は語り始める。遥か昔、光の国から地球のためにやって来た、銀色の巨人がいたことを・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・いい仲間がいるじゃないか、光輝。」

 

 

その様子を、遥か遠くから、ウルトラマンは見守っていた。

 

彼ならば、もう心配いらないだろう。そう確信し、ウルトラマンは彼方の星を見上げる。

 

まだ、自分のやるべきことはこの宇宙に沢山ある。

この宇宙に真の平和が訪れるその日まで、戦い続ける。

 

 

─────平和を守る存在、ウルトラマンの名を冠する者として。

 

 

「・・・シュワッチ!」

 

 

銀色の流星は、飛び去っていく─────

 

 





というわけで、サプライズスペシャルゲスト登場回でした。
今回限りのスペシャルゲストとして、皆が大好きなこの方を出しました。



きたぞわれらの、ウルトラマン。



おそらく、ウルトラマンを出しておいて戦わせずに終わらせる、という勿体ないのか贅沢なのかわからない扱い方をしているなんて、まぁ変だと思うでしょう。
ただ、こうして出そうとは決めており、一番のヒーロー、として描きました。


ちなみに、この日曜19時に投稿した理由ですが、実はウルトラマンが当時放送していた時間帯が、まさにこの日曜の夜19時からでした。
なので、それに合わせて、今回この時間に投稿しました。
これでウルトラマンが出る!とわかった人は・・・いるわけないか(笑)

ただ、本文中、とある人が言っていたとありましたが・・・あれでひょっとしたら、出るのでは?と思われた方もいるかもしれません。
ウルトラマン第一話のイデさんの、あのセリフです。

そして次回、まだ一個、回収していないネタがありますので、それを回収します。
後2話、お待ちいただければと思います。


どうでもいい余談ですが、数日後、ウチの子が一番好きなバンドを、この目で見てまいります。
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