+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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まず、1か月も更新できず、大変申し訳ありませんでした。。。

活動報告でもお伝えさせていただきましたが、あげるぞー!と思って書いていたその矢先、新型コロナウイルスに罹患しまして、6日間は布団から出られませんでした・・・でもって、その後も完璧に復調と言いますか、体力面もそうですが精神面もなかなか戻らず、向かう気力がなくなってしまい、お時間が掛かりました。

本当にね、コロナ、なるもんじゃない。きっっついぞこれは・・・
熱や喉の痛み、加えてしばらくの間起こっていた味覚異常などもかなりきついと思ったのですが、メンタルの方にも物凄く影響を及ぼし、明らかになる前と後で、少しものの見方や受け止め方が変化したように感じています。ただ、これでも軽症と言うのですから、なってみて改めて、コロナという病気の恐ろしさを身をもって感じましたし、5類になってコロナが明けたー!という空気になってますが、決してコロナがなくなったというわけではありません。
だからこそ、改めてより一層かからないよう、感染対策を徹底していかなければならないと、なってみて心の底から思いました。
なので、皆様もお気をつけください。

コロナ闘病生活についてはここまでにして、ここからは話を変えます。


まず、前回の投稿が何だか妙に読まれてるぞ・・・?と思い、物は試しにとランキングを覗いてみたら、まさかの初日日刊ランキング16位に入ってて思わず3度見しました。
やっだ皆ウルトラマン好きじゃ~~~~~~ん!!


というのは置いておいて、本当に読んでいただきありがとうございます。

正直、ウルトラマンというのは、ここでもそこまで盛んなジャンルではないと重々承知しています。
特に、ここ数話はよりそうですが、原作リコリス・リコイルと銘打っておきながら、蓋を開けてみたら8割以上ウルトラマンSSになっており、半ば詐欺じゃねぇ―か!と怒られても仕方ないかもしれません。
ただ、そんな小説でも読んでいただき、そして目に見える形でご評価いただきありがとうございました。
やっぱり初代ウルトラマンを出して正解だった()


では、残り2話・・・大打ち上げボドゲ大会編、ご覧ください。

余談
ウルトラマンレグロス面白かった!

って書こうとしたのに


アンタがプリキュアになるのかい、マナカケンゴォ!?




Cakes and Ale and Everlasting Laugh

光輝が、光の国からやって来たウルトラマンと出会い、絆が生まれてから1週間が経った。

被害を受けた新宿の復興は順次進められており、メディアなどにおいても、報道には少し落ち着きが出始め、人々はそれぞれの、当たり前の生活に戻り始めていた。

そんな中

 

 

 

千葉県─────とある一軒家

 

「あーーうまい!うーめっ!ナツばあおかわり!」

「あいよ。本当に光輝くんの食べっぷりは、見てて気持ちいいねえ。」

「だって美味いんだもんナツばあのご飯!」

 

アルバイト先の商店を早仕舞いし、小さい平屋のナツの家にて、光輝とナツはご飯を食べていた。

気持ち良く食べている光輝の足の膝の上には、黒い毛並みの犬が気持ちよさそうに体を丸めながら、上目遣いでそのご飯を眺めていた。

 

「おープチ丸ー、欲しいかー?残念ながらやれんのだー。ごめんなー。後で犬用ジビエジャーキーやるからなー。」

 

クーン、と鳴きながら悲しい顔をするこのナツ家の犬、プチブラバンソンという犬種のプチ丸の頭を撫でると、プチ丸は仕方なさそうな顔を浮かべる。そんな膝の上に犬を乗せた状態ではあるが、ご飯を食べていく。光輝にとってみれば、この家に来たらこれが当たり前となっているため、何も気に留めることなく、冷たい麦茶を飲むと、向かい合って同じくご飯を食べているナツに話し掛けた。

 

「でも珍しいね。ナツばあがご飯食べないって聞いてくるの。」

「たまにゃあそういう日があるのよ。それに、瑞生ちゃんから聞いたわよ。明日あのお店でライブするんだってね!」

「んげ、知ってるの・・・?」

「当たり前よ!あたしの情報網なめんじゃないよ!」

「ひょっとして・・・まさかさ・・・」

「そうだよ!明日そうだってんなら、スタミナつけさせなきゃいけねぇべ!」

 

からっとした笑顔を向けられた一方、光輝は今日ご飯に誘われた理由を理解すると、苦笑いを浮かべる。

 

そう、明日、ついに、千束から以前頼まれていた・・・"閉店後のボドゲ会でのライブが明日、まさに控えているのだ。"

 

だから今日ご飯を一緒に食べようと言ってきたのか・・・それを一人納得するも、それで箸が止まることはない。

山盛りに盛られたご飯が入った2杯目の茶碗を受け取ると、目の前に置かれているアジフライに目をやる。お皿の脇に添えられているタルタルソースを乗せ、更にその上からソースをかける。そんなWソース状態のアジフライを一口齧ると、肉厚なアジの風味と脂、そして2つのソースの味わいが口いっぱいに広がったことを感じると、またもやご飯をかきこみはじめる。

 

「そういや光輝くん。」

「ん?」

「光輝くんがなってんだろウルトラマンネクサス。」

 

さらりと言われたその言葉に思わずむせ込み、ご飯を食べる手が止まると同時に、膝に乗せていたプチ丸も驚いて起き上がり、慌てて膝の上から逃げ出す。

 

「ぶえっふえっふ!ナ、ナツばあ何言ってんの!?ウルトラマンネクサスは宇宙人でしょ!?」

「噓言わない。」

「いやいや嘘なんて!?」

「それが噓だって言ってんの。答えなさい。」

 

最後の言葉は、これまでに聞いたことがないほど、真剣だった。故に、その言葉と表情に、これ以上噓はつけないと確信する。

箸を机に置き、姿勢を正座に変えると、向かいに座るナツと向き合った。

 

「・・・いつから、知ってたの?」

「3月くらいからかしらね。光輝くんがおかしいと思ったのは。伊達にずっと見てきたわけじゃないわよ。でもまさか・・・それは予想だにしてなかったわよ。」

 

まさかそんなに早くから勘付いていたとは。何とかごまかしてきたつもりだったが、それも当初からバレていたということか・・・予想だにしなかったその言葉に、これから一体何が起こるのか不安になり、次の言葉が出なくなってしまい、黙りこくってしまう。

 

 

「えらかったわね。」

「えっ?」

 

 

しかし、そんな心配は全くの杞憂となった。

そこまで言うと、ナツは体を突き出して手を伸ばし、光輝の頭を撫でていく。

 

「怖かっただろ?あんなの相手にしなきゃなんないなんて。それも、たった一人で。」

「・・・少しは、ね。けど、俺のことを信じてくれる仲間が出来たから、あの時は勝てた。だから、怖かったけど、立ち向かえた。」

「・・・すごいわねぇ。あんなのになっちまったって、それだけでビビっちまうだろうに、あんな恐ろしい怪獣に怖がらずに立ち向かうなんて、本当、よく頑張ったわね。ケガも無くて安心したよ・・・本当に、見違えるほど、男らしくなったね。」

「ナツばあ・・・」

「大丈夫。誰にも言いなんかしないよ。光輝くんはいつまでも、あたしの孫よ。手出しするやつは、あたしが全員はっ倒してあげるから。辛くなったらいつでも言いなさい。ご飯くらい、いつでも出してあげるから。だから、これからもずーっと、一緒だよ。」

 

その向けられる笑顔は、いつもと変わらない。

その顔にホッとし、またもや涙が出そうになるが、グッと堪え、笑顔を見せた。

 

「・・・うん!ありがとうナツばあ!大好き!」

「よしいい子だ!さぁもっと食べてきな!明日はライブだからスタミナ付けないとね!」

「ありがと!!炊飯器の米、なくすから!」

「いい心がけだ!さぁ思いっきり食べてきな!」

 

ウルトラマンネクサスになっても、いつもと変わらず接してくれる。これまでも、これからも、ずっとそう。やはりナツばあは、自分にとって本当に、大好きな、頼りになるおばあちゃんだ。心の底から確信し、安心する。だからこそ、今宣言した通り、炊飯器を空にするまで、思いっきり食べてやろう。そう決めると、再びご飯を食べ始めるが、あっそうだ。と何か思い出したかのように、ナツは声を掛けた。

 

「早く千束ちゃんとたきなちゃんにも会いたいわねー!早く告っちゃいな!」

「は、はぁ!!?な、何言ってんの!!?」

「バッカねぇ!光輝君が好きなのモロバレなのよ!」

「いやいやいやいや!!好きじゃない好きじゃない!!」

「噓おっしゃい!そんな顔赤くして!あんないい子嫁にしなかったら、末代まで呪い続けるからね!なんなら、重婚でもこっちは歓迎だよ!!」

「あーやっぱナツばあキラーーーい!バーーーーカ!!」

「オーッホッホッホッホッ!あーテキーラでも飲もうかしらねー!」

 

まるで本当の祖母と孫のやり取りかのように、ナツからからかわれて慌てている光輝を傍目に、この家の愛犬であり、光輝にとっては弟のように思っているプチブランバンソンのプチ丸は、呆れたように小さく、アウ、と吠えた─────

 

 

 

その翌日

千葉県、とある駅の前にて─────

 

「ごめんね、父さん、母さん。駅まで送ってきてもらっちゃって。」

 

黒のメッシュキャップに白いダボッとしたTシャツに黒のスキニーパンツ。黒を貴重に一本白いラインが入ったスニーカーという、これまでにないほどカジュアルな格好にギターケースを背負い、片手には何故かスーツケースを持った光輝は、駅の前で車に乗りながらではあるが、窓を開けてこちらを見ている両親に対し、ここまで送ってきてくれた感謝をした。

 

「なーに気にすんな!こんな楽しそうなことに巻き込んでくれる友達が出来たんだろ!だったら、俺達のことは気にしないで、思いっきり楽しんでこい!頑張ってこいよ!あー見たかったなーお前の東京初ライブ!」

「ちょっ、父さんやめてってそれは!」

「ふふっ、私も見て見たかったけど、それはまたの機会にさせてもらうわ。家のことは心配しなくていいから、思いっきり楽しんできてね。リコリコの皆さんにあんまり迷惑かけるんじゃないわよ。」

「わかってるって母さん!」

 

そこまで言うと、改札の方から、乗るためにやって来る電車が間もなく到着することを告げるアナウンスが聞こえてきたため、それじゃ!と言い残し、慌てて駅の方へと向かっていった。

その後ろ姿を、光輝の両親は微笑みながら見つめていた。

 

「光輝をこんな楽しいこと誘ってくれる友達が出来て良かったね、憐。」

「ホントにな。あいつがあんな風に笑うなんてな・・・あの頃よりは喋るようにはなったけど、いくら歳を取っても友達も作んないでさ。家のことばっかりやってくれて、こっちとしてはありがたいんだけど、もっと同い年の子みたいに楽しんでほしいと思ってたから、俺は本当に嬉しいよ。」

「そうね・・・あの子があんな楽しそうに笑うなんて、私も嬉しいよ。千束ちゃんとたきなちゃんが友達になってくれて、良かったね。」

「だな、本当にあの子達が友達になってくれて・・・あいつ、本当に幸せ者だよな~。」

 

実は少し前、この2人もまた、契約の話などを改めてするために、喫茶リコリコに2人揃って訪れていた。その際、契約の話だけでなく色々なことを話し、店を出る頃にはすっかり全員と打ち解け、今後長い付き合いになることを両者それぞれに思っていた。

 

「・・・それに、あんなヤツを倒したんだ。立派だったよ。」

「・・・そうだね。流石は、私達の息子だね。憐、私、やっぱり思うんだ。あの日、光輝に出会えたことは、運命だったって。」

「あぁ。俺もそう思うよ。あいつは、来るべくして、ウチに来たんだよ!」

 

ふふっと笑い合い、車のエンジンをかけようとする前、瑞生は再び声を掛けた。

 

「そういえばさ・・・前、リコリコさんのSNS見てたんだけど、千束ちゃんとたきなちゃんの制服が、前に延空木の事件で言われてた、リコリス、って集団と同じ制服だったんだけど・・・そう、なのかな?」

「・・・かもしれないけど、あのお店皆いい人達だし、大丈夫だよ。それに・・・そうだとしても、あの2人はきっと光輝を守ってくれる。それに、"光輝がリリベルであっても、息子には何も変わりはないからさ。"」

 

 

こう話す2人の話を、光輝は知らない。いや、そもそもが、絶対知る由もない話。

それは、この2人だけしか知らない、秘密─────

 

 

 

7年前─────

 

「よーし光輝ー、お疲れさーん!先風呂入っていいからなー。」

「えっと・・・憐さ「だから、父さんでいいって言ったろ?もう親子なんだから。」

「う、うん、あ、ありがとう・・・父、さん。じゃあ、先にお風呂、入るね・・・」

 

光輝が、シンという名前から光輝、に変わってから少しが経ったとある日。

流石にまだ学校へ行くのは難しいということもあってか、憐の家業を手伝いながら、新しい日々を送り始め、少しずつではあるが、これが日常になり始めていた。

 

そんな中、この日の作業が終わり、先にお風呂へ入るよう促されたため、一足先に光輝は家の中へと戻っていった。

その後ろ姿を眺め、家に入ったことを確認すると、憐はこの日使用していた道具などを片付け始める。

 

そして、少しすると・・・

 

 

─────手に持っていた薪の一つを、どこかの方向にへと勢い良く放り投げた。

 

 

 

「!?」

 

 

憐の様子を遠くの方から眺めていたスーツ姿の男は、突如としてこちらに向けて投げられた薪に驚き、慌てて体を動かしてそれをかわすが、山の中という場所が故、足元がすくわれ、その場で転んでしまう。

一瞬視界がよろけるも、すぐに顔を上げて前を見ると

 

─────その手に農作業用の鎌を持った憐が、目の前に居た。

 

「・・・あんたか?ずっと俺達のこと、見張ってたの?」

「・・・」

「黙秘貫くってんだったら、警察呼ぶぞ。あるいは、このまま縛り上げてハチの巣の下に持ってってもいいんだぜ?」

「・・・」

「わかった。じゃあ裸にしてハチの巣の下にでも「ま、待ってくれ!話す!だからその物騒なものを下ろしてくれ!」

 

ようやく話すことを決めたスーツ姿の男をとりあえずは信じることにし、その手に持っていた鎌を下ろすと、そのスーツ姿の男の隣に座る。

 

「・・・で、あんたの目的はなんだ?金か?」

「いや、違う・・・あの子だ。」

「・・・光輝のことか?」

 

コクリと頷くと、憐は怪訝そうな顔で聞いた。

 

「・・・知ってるなら教えてくれ。あの子は、過去に何があった?」

 

その言葉にこれ以上は黙秘を貫けないことを悟ると、私も聞いた限りだがな・・・と切り出すと、スーツ姿の男は語り始めた。

 

 

─────孤児院に入る少し前まで、日本の治安を守るために構成された秘密機関、リリベルの中に、彼が居たこと。その中のとある一件で精神を壊したため、ああなってしまっていたこと。そんな廃人状態の彼を、この家が迎え入れた中で、つい最近、名前が変わったことを知り、様子を見に来たのだと。

 

 

全てを聞き終える頃には、憐は神妙な面持ちになっていた。

 

「・・・成る程。それが、あの子の過去・・・で、こうなったからには、お前達は連れ戻そうってか?」

「いや、それはもうしない。彼は既にリリベルの中でもいなかった扱いになっている。戻ったところで居場所はない。だから、私がすることは、彼は生きている、と報告するだけだ。あんな子の命を奪ったところで、我々には何のメリットもない。多くの人にバラすとなれば話は別だが・・・先程から見ていた限り、今のところは、それもないだろう。彼自身、戻る気もないはずだ。」

 

既にいなかった扱いとなっている。そんな簡単に人をいなかったことにするなんて、子供の命を、人の命を何だと思っているのか。そのことに怒りが込み上げてくるも、この男に怒ったところで仕方ないこともわかっている。故に、冷静でいようと務め、そうか、と一つ相槌を打つと、スーツ姿の男はあることを依頼した。

 

「もし彼がリリベルだったということを自ら告げてきたらすぐに報告してほしい。連絡先はここに頼む。」

 

それだけ言うと、スーツの胸ポケットから一枚、どこかへの連絡先に繋がる電話番号が書かれた紙を渡してきた。

しかし、憐はそれを受け取ることなく、逆にスーツ姿の男を睨んだ。

 

「伝えたところで・・・どうするつもりだ?」

 

その質問に対し、その先は察しろと言わんばかりに、スーツ姿の男は黙秘を貫いた。

これ以上黙っても埒が明かないのか、憐から切り出した。

 

「・・・わかった。受け取ってはやるけど、その代わり、ぜってー連絡なんかしねぇよ。」

「・・・何故だ?」

 

予想外の言葉に驚いていると、それまでとは違い、憐は笑いながら言った。

 

 

「・・・俺達の子供の責任は、親が持つ。もう、関係ないお前らが手なんか出さないでくれよ。俺は、何があっても、あの子を守る。お前らからも、絶対に。あの子は俺達が絶対に幸せにする。それ以外で報告することとか必要なことがあったらしていくらでもやっからよ。だから・・・もう二度と、光輝には、息子には、関わんないでくれ・・・頼むよ。」

 

 

そう宣言すると、そのスーツ姿の男は少し驚きながらも、その答えを聞くと少し満足げな表情を浮かべた。

 

 

「・・・そうか。あなた方のような大人が、親がそばにいれば、大丈夫だろう。」

 

 

 

─────話は戻り、現在

 

あの後、そのスーツ姿の男はその答えを聞き、すぐに去っていった。加えて、それ以外では特に何も報告などしなくていいとのことだったので、あれ以降、憐も何も連絡はしていない。

その日の夜、寝静まったタイミングで瑞生にも話をし、光輝の過去に驚いていたが、やはり結論は同じで、何があっても、光輝には、息子には誰が来たとしても手出しはさせない、ということだった。

 

そして今この時点まで、彼の口からその話は出てこなかった。こちらも当初は気にはしていたのだが、こうして何年も口にしないというなら、それでいい。向こうが一切口にしない限りは、こちらも何も気にせず、親子の関係を続けるだけだ。

その結果、こうして親子関係はずっと良縁のままだ。加えて、以前の一件があって、その絆はより強固なものになった。

 

ただ、今こうして付き合いのあるお店の店員は、以前延空木で言われていた、あのリコリスかもしれない。それはひょっとすれば、以前光輝がいたという、リリベルとも繋がっているかもしれない。それに瑞生は少し不安になるが、憐は笑顔を浮かべて返すと、瑞生も先日会ったあの人達を信じることにし、笑顔を浮かべた。

 

「・・・そうだね。千束ちゃんもたきなちゃんもクルミちゃんもミズキちゃんもいい子だし、ミカさんのコーヒーも美味しかったし。あんな美味しいコーヒー出すお店が、悪い人なわけないよね!」

「ああ!本当に、リコリコさんとはこれから長い付き合いになりそうだな~・・・あー真面目な話したら腹減ったー!帰るか瑞生!」

「うん。ご飯にしよっか、憐・・・そういえば、光輝驚くかしら?あの"サプライズ"。」

「ぜってー驚くって!まっ、明日帰ってきてから詰め寄られても、笑ってごまかそうな!」

 

何度生まれ変わってもこの2人は結婚していると、周囲からも言われているほど、未だに愛し合っているおしどり夫婦は、車のエンジンをかけると、笑い合いながら家へと帰っていった。

きっと、今日は息子にとっていい日になると信じ・・・

 

 

 

ただ、両親は知らなかった。

そんな息子に─────今まさに、ある事件が起きていることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただいま、この先の信号機の故障により、電車の運転を一時見合わせております。お急ぎのところ大変申し訳ございませんが・・・』

「・・・マジかよ・・・」

 

 

乗り込んだ電車が走り出してから数駅先で起こった信号機の故障のため、一時電車が運転を見合わせているため、電車が動かなくなった。加えて、他の路線もない。

 

結論、100%遅刻確定。

 

そんな状況に現在置かれていることなど、憐と瑞生は到底知る由もなかった・・・

 

 

 

錦糸町─────喫茶リコリコ

 

「・・・よっしゃあ!」

 

喫茶リコリコのテーブルの卓を全て使用し、ボードゲームを興じる大人達の悲喜こもごもな様子があちらこちらに広がっている。

今日は喫茶リコリコで開催されている恒例行事の一つ、閉店後のボドゲ会が開催されていた。丁度今日は金曜日。いわゆる、華金ということもあり、いつも以上に人の集まりもいいのだが、今日人の入りがいい理由はもう一つある。

 

 

─────このボドゲ会で始めて、弾き語りライブが行われるというのだ。おまけに、この前のボドゲ会で景品となっていたあのハチミツと野菜を作っていた彼がやるというのだから、常連客としては来ないわけにはいかない。

 

 

そんな理由もあるため、本日はいつものボドゲ会の何倍も集まりが良く、大人が多く集まっているということもあってか、半ば飲み会のようにもなっていた。

そんな中に、いつものボドゲ会にはいない、見慣れない顔が何名か居るのだが、すでに馴染み、そしてとある一卓で、プレイしていたボードゲームで一番最初に上がったことに大喜びしている人物がいた。

 

「うわー、八神さん強すぎー!」

「八神さん、何でゲームまでそんなに強いんですか!?」

 

八神である。

あのネクサスとザ・ワンの戦いから少し経ち、幸いにも八神探偵事務所に被害は無かったものの、この数週間の間、被害が出た新宿の復興のためのボランティア作業やそれに付随する探偵業。加えて、この機に乗じて悪さを働こうとする厄介者達を、時には千束達と共に成敗してきた。

千束達も一緒に行動をした理由は、言わずもがな、ああして戦っていた光輝の勇気や希望を踏みにじるような行為をする、こんなタイミングで悪事を働こうとする悪い輩を許せない、というのが理由だった。

 

そんな忙しい日々を過ごしている最中ではあるが、この日ボドゲ会に誘われた八神達としても、断る理由もなかった。というより、弟分のような彼がライブをするのだ。ならばもう、OKを出すしかなかった。

というわけで今日、こうして初めて喫茶リコリコ閉店後のボドゲ大会に参加しており、別の卓では海藤もボードゲームに興じていた。

 

そんな喜びの中、八神と一緒の卓でプレイしていた千束と、このお店の常連である女子大生の北村は負けたことに項垂れていた。

 

「フッ・・・伊達に神室町で探偵してるわけじゃないんでね。こう見えても、VRすごろくとかドローンレースとか、神室町の遊びにも精通してるからね。」

「八神さん、凄いですね・・・本当に探偵さんなんですか?」

「まぁね、カナちゃんも今度やってみる?ドローンレースだったら俺知り合いいるから、そいつからドローン貸してもらうことも出来るだろうし。」

 

と、同じく一緒の卓でプレイをしていた、自身の真向かいに座っている高校生の女の子であるカナ、という女の子に話し掛ける。

この子もまた、喫茶リコリコの常連の一人であり、本来ならば夜の時間に参加することはないのだが、彼女にとって、"一年ほど前に起きた、とある出来事"において、自分の命を助けてくれた、彼女にとって命の恩人である千束から、どうしても今日来て!と言われたため、そこまで言われては断るわけにもいかなかったため、こうして彼女も今日来ているワケだ。

 

「ええっ!?いえいえそんな!」

「気にしなくていいって。意外と楽しいからさ。」

「えーっ面白そう!カナちゃんもやってみようよ!私もやるからさー!ウチからはクルミが代表で!」

「ボクはやるなんて・・・」

 

そんなドローンレースの話をしていると、いつの間にか話に巻き込まれていたクルミは、カウンターに座っていたが、すぐにそちらの方に体を向けて話し掛ける。やはり急に言われたからか、その話に少し苦い顔をするも、すぐに表情を変え、ニヤリとしてみせた。

 

「いや、面白そうだな。八神、今度やる時言え。優勝かっさらってやるからよ。」

 

前言撤回。すぐにニヤリとし、神室町で行われているというドローンレースに対して乗り気になる。そうして乗り気になっているクルミに、じゃあどうするどうすると、あっという間に千束達と話が盛り上がり出す。

その様子に対し、カナが少し呆然としながら眺めていると、それを察してか、八神は優しく微笑みながら話し掛けた。

 

「ごめんね、やっぱ迷惑だったかな?」

「いえいえ!気にしないでください!ただ、あの八神隆之さんとも今日こうして話せるなんて思わなくて・・・」

「気にしなくていいって。俺そんな有名人じゃないから。ただの探偵だよ。それとさ、もし高校でいじめられてたら言ってね。俺探偵だからそれなりのことは出来るよ?未成年のためだったら、無料でも対応するし、俺のバックには源田法律事務所もあるからさ。なんなら高校卒業したら、源田法律事務所、入っちゃう?」

 

八神の口から飛び出た突飛な提案。そこに驚くも、とはいえ、そんな簡単に就職先をポンと決められるわけがない。ましてや、法律事務所にそんな簡単に入れるなど・・・そんなことを思っていると、八神は大声で、2階にいる"ある人物"に呼び掛けた。

 

 

「源田先生ー、どうですかー?」

「あぁ、別に弁護士目指すってんだったら、俺はいいぞ。ただま、神室町でやんなら肝っ玉強くなきゃ大変だろうけどよ。どうだい?ウチで弁護士目指してみるかい?」

「えぇっ!?」

 

 

2階のテーブル席に座っていた、その源田法律事務所の所長である源田は、神室町で働く不安要素について念押しのように言うも、あっさりとOKを出した。

あっという間に自分のこれからの進路が決まっていきそうになっているため、当の本人は全くもって理解が追いつかなくなっている一方、千束をはじめとした周囲の常連は、カナの進路が決まりつつあることに大喜びとなっている。

そんな状況に一人あたふたしていると、またもや八神が声を掛けてきた。

 

「・・・まぁ、進路の一つとして考えてみてよ。なるってんなら、俺もサポートするからさ。ただ、それよりも・・・」

 

何かもったいぶるように話を切ると、レザージャケットの裏ポケットから、一つの物を指で掴むと、カナの目の前に見せた。

 

 

「何かあったらすぐ言ってね。未成年の女の子に手出すような悪いやつには、探偵だけじゃなくて、弁護士復帰だって全然するから。」

 

 

その目の前に突き出したものは、"外側にひまわりがデザインされ、中央にははかりがデザインされた、金色の、小さなバッジ。"

ただ、そのバッジはおそらく、日本で一番、と言えるほど認知されているバッジであり、誰もがそれを見たら、一目でその人が何者なのかがわかる。

日本中の誰もが知っていて、そして、絶大な権力の証明でもある身分証。

 

 

─────弁護士バッジだった。

 

 

八神は弁護士を辞めた。けれど、"弁護士という職業そのものを、完全に廃業した、というわけではない。"

今でもこうして弁護士の資格はあり、もしどこかの法律事務所に入る、あるいは自分で開業すれば、また弁護士の仕事は再開出来る。実際、大久保新平の裁判の時も、彼の無実を証明するために、弁護士として法廷に立った。

つまり、これはその証でもある。

 

それを見せると、カナをはじめとした常連客全員が一斉に驚く。

 

「そ、それ、本物の弁護士バッジですか!?」

「すっげぇ!本物なんて初めて見た!」

「八神さん!締め切りをぜひ法律の力でなんとか!」

「いやそりゃ無理だって・・・」

 

一斉に常連客の全員が駆け寄り、本物の弁護士バッジを眺めている傍ら、カナは千束に、どうしても聞きたかったことを聞いてみた。

 

「あの、千束さん。今日この後ここでやる人って、どんな人なんですか?千束さんも八神さん達も知ってるみたいですけど・・・どんな人なんですか?」

「えっ?光輝のこと?」

 

彼をどう表せばいいか。そこに対してうーん・・・と、少し悩んだ後、千束はニヤリとした。

 

 

「・・・めんどくさいけどめっちゃ頼りになるやつ!」

 

 

 

「八神さん、楽しそうですねー。」

「星野君も混ざってきたらどうですか?私はこの団子三兄弟を食べたら混ざろうかと思ってますよ。」

「さ、さおりさんもやるんですか!?」

「ハハッ、だったら、星野君もやんなきゃいけなくなったな。」

「ですが、これが意外と楽しいんですよ。」

「はぁ・・・ミカさんも、やられているんですか?」

 

えぇ、と相槌を打ちながら、2階席ではミカと、先程答えた源田。そして同じく、源田法律事務所の、星野とさおりも同じテーブルに座り、提供されたコーヒーと和菓子に舌鼓を打っていた。

 

3人もまた、今日八神から誘われ、源田法律事務所としてもまた、この数週間のザ・ワン関連のゴタゴタで少し疲れ気味だった。そんな中で、八神から今日の話を持ち掛けられ、全員が少し羽を伸ばしたかったというのもあるが、提案されたその場所は自分達、そして八神のホームである神室町・・・ではなく、墨田区の錦糸町。それも、八神だけでなく、海藤としても最近おススメの場所だという。その話を聞いてどんな場所なのか気になったため、こうして3人揃って足を運んでみたというわけだ。

 

そうしてやって来た3人を、ミカはリコリコ自家製のコーヒーと、名物の団子セットこと、団子三兄弟を振る舞うと、団子そのものの味は言わずもがな、美味だった。ただ、それ以上に驚いたのが、和菓子とコーヒーとの相性の良さだった。成程、これはあいつらも気に入るわけだ、と源田はすぐに納得すると、この店の雰囲気を含め、同じように、あっという間に喫茶リコリコを気に入っていた。

 

「しかし、まさか八神がこんな穴場みてぇな喫茶店を知ってるなんて意外だったな。あいつが神室町以外でおススメの店紹介してくるなんて初めてだったからな。」

「本当ですよ。和菓子が売りのカフェ、ってのも珍しいですし、ミカさんのような海外の方が店主を務められてるって聞いてビックリしましたよ。」

「星野君、あまり人を見た目で判断するのは良くないですよ。」

「えぇっ!?いや僕はそんなつもりで言ったんじゃ・・・」

「いえいえ、お気になさらないでください。珍しいコンセプトの喫茶店だというのは多くの方から言われますし、ましてや、私のような者が店主をしていることの物珍しさも、重々承知していますとも。」

 

さおりが星野をたしなめているのに対し、ミカがフォローを入れる中で、源田がミカに声を掛けた。

 

「あー・・・"ミカ君"、でいいか?」

「ミ、ミカ君・・・!?」

「当たり前だ。10以上歳離れてたらそりゃそうだろうよ?」

 

これまで誰にも呼ばれてこなかった、君付け。ましてやこの歳にもなって君付けをされるとは。驚きつつも、千束やミズキがこの場にいたら絶対後でからかわれていたな・・・そんなことを内心思っていると、源田はそれまでとは目の色を少し変え、とあることを質問をしてみた。

 

「どうして八神はミカ君の所と知り合いになったんだ?神室町と錦糸町、いや新宿と墨田区っちゃ、割と距離離れてんじゃねぇか。あいつは神室町周辺が専門なのに、ここと知り合うなんて・・・ちょっと気になっちまってよ。」

「あぁ、それは・・・今日来る子がきっかけなんですよ。以前、その子を探す依頼を八神探偵事務所に出して、その流れで全員が繋がったんですよ。」

「へぇ、そうなのか。その子が。」

「えぇ。つい最近ウチで契約した農家さんの一人息子なんですが、とてもいい子で皆気に入ってまして・・・だから、ある意味彼が私達を繋いでくれたんですよ。」

 

そう話をするミカの目は、噓を言っているわけではなさそうだった。

弁護士として長年、多くの人と接してきたからこそ、噓を言っているかどうかは、勘、の様なものでわかり、大抵、それが外れることはない。その勘が、この話には噓が無い、と伝えてくる。故に、そうか。と呟き一人納得すると、コーヒーを一口口に含む。

口当たりが良く、それでいて酸味や深み、苦みや香りなどのバランスがよく、自分好みの味わいのコーヒー。

これは、少し離れているが、この味を求めに、また足を運んででも飲まなきゃな・・・あるいは、ここのコーヒー豆を帰りがけに買っていこうか。そんなことを一人源田は思っていると、あの・・・と、さおりは恐る恐るミカに声を掛けた。

 

 

「・・・おはぎセットも、いただけますか?後、前に調べた時に見た、"千束スペシャル"というパフェと"ホットチョコパフェ"はまだありますか?」

「さおりさんまだ食べるんですか!?」

 

 

─────甘い物に目がないさおりから見ても、喫茶リコリコはお気に入りのお店になったようだ。

 

 

 

「まさか、八神の知り合いにあのツクモがいるなんて思わなかったぞ。」

「ヒヒ、まさかボクも、あのウォールナ・・・クルミ氏と八神氏が知り合いで、そのご縁でこうしてリアルで会えるだなんて、夢にも思わなかったですぞ〜。」

 

と、あちらこちらで話が盛り上がっている一方、カウンターではクルミともう一人、見慣れない人物がお茶を片手に話し込んでいた。

 

八神の知り合いの一人であり、コンピューターなどにとても強く、クルミの素性を知った時から、是非とも会わせたかった男、"九十九 誠一"とクルミは、他の人に素性を知られないよう、小声で話をしていた。

 

 

この日、八神がそのボドゲ会に誘われてから少しした後、そういえば・・・と、九十九のことを思い出し、予てからクルミに会わせてみたいと思っていた。故に、この機会にせっかくなら誘ってみようと決め、話に行った際、クルミことウォールナットの話をしたら、やはりその界隈では有名な人物ということもあってか・・・

 

 

「ほ、本当にウォールナット氏に会えるのでござるか!?!?マママ、マジでございますか八神氏ぃ!?!?」

 

 

と、腰を抜かし、これまで聞いたことがないほどの大声を上げて驚いていた。

 

 

一方のクルミも、八神からその話を貰った時には、そこまで気には留めていなかったが、彼自体は知っていたらしく、素性を秘密にし、お互いバラさない、ということならば、別に連れてきても問題ない。ということで、こうして今回連れてきたのだ。

 

とはいえ念のため、八神は九十九に、コイツがウォールナットだと予め写真を見せて伝えていた。

なのだが、こんな一見すると小学生にしか見えないクルミが、あの伝説のウォールナットとは思えず、写真をじっと眺めた後・・・

 

「八神氏、冗談も大概にしていただきたいものですぞ。」

「いやだから本当にそうなんだって。」

 

こんなやり取りを5度ほど経た後、しぶしぶ、といった様子ではあったが納得をした。

 

そして当日、いざ顔と顔を突き合わせてみて、話をしてみると、やはり同じような場所にお互いいるということもあってか、話が盛り上がり、こうして2人で話すまでになっていた。

 

「しかし、あのツクモが八神の仕事の手伝いを色々してて、まさか神室町の色々な事件解決のための協力者になってたなんてな・・・"ロボ太"より明らかに人のためになることしてんだから、お前も探偵になった方がいいんじゃないか?」

「おぉ、クルミ氏からそう言ってもらえるとは、ボクもそちらの道へ進んでもいいかもしれませんな!ロボ太氏については、やっちまったですからなぁ・・・ただ、探偵をやるにしても、神室町には八神氏がおりますから、難しいですのぉ。」

「だったら違うところで開業すればいいじゃないか。なんならこの辺りで開業するか?お前のそのスキル、ただの一ギークのままにしておくには惜しいぞ。」

「ヒヒ、ここだとクルミ氏達がおりますから、開業したところで仕事が来なさそうですなぁ。なら、いっそ別の県でやった方がいいかもしれませんな。」

「必要だったら言え。ボクの使ってないスペース、貸してやるから。」

 

こちらもこちらで盛り上がり、ボードゲームをするよりもはるかに盛り上がりそうだ。

 

 

 

「ねーたきなー、光輝から連絡あったー?」

「まだ・・・ですね。」

「あーもー!光輝はまーだーなーのー!あいつが主役なのにー!」

「そんなこと言っても、電車が遅延してるみたいなんですから、仕方ないですよ・・・」

 

だってー、とたきなに千束がぶうたれていると、ピコン、と2人のスマートフォンに通知が鳴り、2人同時にスマホの画面に目を向けた。

 

「あっ!もうすぐ着くみたい!」

 

3人のグループに、もうすぐ着くけどどう入ればいい?とメッセージが入っていた。それに対し、裏口に着いたら連絡して!と返信をし、今か今かと待ちわびていた。

少しすると、再びメッセージが更新され、着いたよ!とメッセージが入ったため、慌てて2人揃って裏口へと向かっていく。

 

「・・・相変わらず、仲が良いもんで。」

「めんどくさいガキどもだけどね。」

 

楽しそうに裏口に向かっていく2人の後ろ姿を見ながら、海藤とミズキは泥酔、とラベルに書かれた日本酒を共に飲みながら、呆れたように、それでいて少し楽しげに呟いた。

 

「・・・ところで海藤さん!その知り合いのイケメン君は来ないの!?」

「杉浦か?あいつも誘ってみたんだけどよ、今日は用事があるみてぇだったからなぁ・・・」

「じゃあ紹介してくださいよー!八神さんから顔見せてもらいましたけどめっちゃアリ寄りのアリなんですけど!」

「いやあいつは色々あるからなぁ・・・なんなら東でもいいぜ。俺の舎弟だけどよ。」

「あ元ヤクザはNGで。」

「いや、あいつもぶっちゃけ元窃盗団なんだけどな・・・」

 

 

 

裏口まで2人が到着すると、その戸をコンコンと2回ノックした。

 

「Thank God」

「It's?」

 

千束とたきながドア越しに声を掛ける。

 

「・・・Live」

「よし入れ。」

 

ガラッとドアを開け、若干息が上がっている光輝を迎えた。

 

「いやー、こういうのやっぱいいよねぇ!一度やってみたかったんだーこういうの!ね!そうだよね!どうだった!?」

「本当に必要だったんですかこれ・・・?」

「もーたきなはロマンがないなぁ!秘密の場所に入るには合言葉が必要なんだよ!で、光輝はどうだった!?」

「ハァハァ・・・いいとは思うけど・・・あのさぁ・・・こっちまず急いで走って来たんだから・・・ハァハァ・・・ちょっと、息、整えさせて・・・」

 

楽しそうに話す千束と、これを怪訝に思うたきな。そして、一人息を切らす光輝。

3人が口にした英単語は、つい先程、3人で決めた合言葉だった。

 

理由として、今日は入り口のドアの前で演奏をしてもらうと話を受けていた。そのため、特定の時間になったら、いつもの入り口を締め切ることにしていた。

本来ならば光輝もその時間までに入る予定だったが、こういった状況になってしまった。そこで、裏口から入ることを提案されるも、当然ながら、セキュリティ的な問題はある。

その際、映画好きの千束から、せっかくなら合言葉を言ってから入ることにしよう!という提案があり、急遽決めたのが、このフレーズだった。

 

神様ありがとう、今日は金曜日です、という意味の英単語、TGIF。正確には、Thank God It's Friday。

それをもじって、Thank God It's Live。

つまり、神様ありがとう、今日はライブです、という意味の造語だ。

 

これを思いついた時には千束はとても喜び、それを提案すると、2人も時間がないということもあってか、すぐに承諾した次第だったが、いざこうしてやってみて、思いついた本人は楽しかったのだが、思っていた反応を2人ともしなかったことにムスッとし、むー・・・と千束は頬を膨らませる。

そんな中、たきなは光輝の片方の手に持っていた、ある一つのものが気になった。

 

「ところで、なんでスーツケースなんて持ってきたんですか?"今日泊まるんだったら、そこまで必要ですか?"」

「いや、これ明日の着替えも入ってるんだけどさ、母さんから、今日やるんだからしっかりした格好してきなさい!って言われて、今日のこの後の服まで持たされたのよ・・・俺もいらないって言ったんだけどさ、アイロンがけまでされたら断るにも断れなくてさ・・・」

 

自分達も既に顔見知りとなった、光輝の母親である瑞生から持たされたというスーツケース。そして、今話した、今日のこの後の服。その中身が気になりつつも、とりあえず挨拶して!と千束から腕を引っ張られたため、話を切り上げてようやく店内へと入る。

 

「すみません!遅くなり「はい皆さん注目ー!本日の主役が来ましたよー!」

 

挨拶を済ませようと思っていると、千束が全員に伝わるよう大声を上げ、一斉に光輝に注目を集めさせる。おぉ!となる店内の反応をよそに、光輝は若干の気恥ずかしさを覚える。

 

「ち、千束、そんな主役なんてやめてって・・・」

「えー、だって本日のBGえ・・・主役だからー!」

「今BGMって言おうとしなかった?おいやんねぇぞ?」

 

そうツッコミを入れ、とりあえず荷物置かせて・・・と言おうとした中で、見えてしまった。

 

 

─────店の入り口のドアの前に置かれていた、1つの椅子と、セッティングされているマイクスタンドを。

 

 

「ちょちょちょ!?何あれ!?俺あれで歌うの!?」

「そうですよ?だって、今日ライブするって言ってましたから、町内会の知り合いにマイク借りてきました。」

「うそーん・・・」

 

まさかここまでガッチリとセッティングされているとは思わず、これ本当にライブじゃん・・・と若干苦笑いを浮かべるも、既に周りの注目を一身に受けているこの状況では、今更無理!と言える空気ではないことは重々承知している。なので、改めてだが、覚悟を決める。

そして、この後演奏するためにも、ちょっとお店の奥に荷物置かせてと言い残すと、カウンターの奥の従業員用の休憩室に本日持ってきた荷物と共に入っていく。加えて、ちょっと着替えるから、と言われたため、従業員用の更衣室を貸すことにし、スーツケースと共に入っていく。

千束とたきなも着替える、という言葉が気にはなったものの、男の着替えを覗くわけにはいかないため、終わるまで待つことにした。

 

そして、しばらくするとガラッと更衣室のドアが開く音がしたため、着替え終わったのだと思い、何に着替えたのかを確認しようと、2人は従業員用の休憩室へと向かってみることにした。

 

「「・・・っ!」」

 

だが、その格好を見て、2人は言葉を失った。

それは・・・

 

 

 

「・・・似合わない・・・よね・・・?スーツ・・・なんて、さ。」

 

 

 

まさかの、スーツだった。

夏には暑いであろう黒のスーツをジャケットまで着用し、ネクタイは黒の光沢のあるもの。一見すると喪服のようにも見えるが、いわゆるドレスコードに近い。更に左手には、この後履くであろう革靴まで持っていた。

 

しっかりとした格好、とのことだったが、それがまさかスーツだとは思わなかった。それも、普段の光輝の格好はかなりラフなものが多い。そういったものに見慣れていたということもあり、こんなかっちりとした、言わば正装と呼べる格好に対して・・・一目見た瞬間、千束もたきなも思わず、若干ドキッとしてしまう。

 

「ううん!いいと思う!めっちゃいいと思うよ!」

「・・・まぁ、いいんじゃないですか・・・ちょっと驚きましたけど・・・」

 

目を合わせずに褒める2人を見て、服装選びを失敗したか?そう思ってしまうが、今は冗談を言っている場合ではない。相当遅刻した今、一分一秒が惜しい。もはや練習どころか、公開リハーサルとして歌わなければならないことを、ここに来る道中で考えていた。

だからこそ、ありがとう!と、少し慌てたように返すと、ギターケースから自身のアコースティックギターを取り出した。

本物のギターを見慣れていないということもあってか、それを見た瞬間、おぉ・・・と、思わず千束とたきなは感嘆の声を同時に漏らす。

 

「本当に、今から歌うんですよね・・・?」

「いや本当に今から歌うんですよたきなさん?大体、元はと言えば・・・」

「はいはいそんなの後々!皆が待ってるから早く早く!」

 

急かすように千束が声を掛けるも、わかってるけどちょっと待って!と慌てて返し、ギターのチューニングをし始め、完璧な状態で演奏出来る準備を整えていく。

その間に千束はカウンターの方へと戻ると、休憩室はたきなと光輝の2人だけになった。

 

「・・・私も、楽しみにしてましたよ。」

 

チューニングをしているその様子を眺めながら、たきながそっと声を掛けた。思ってもみなかった言葉を掛けられたため、思わずチューニングの手を止め、たきなの方に顔を向ける。

 

「え?本当に?」

「ホントですよ。元は千束の提案でしたけど、私もやるって言ってくれてから、結構この日楽しみにしてたんですよ。だから、ガッカリさせないでくださいね。」

「・・・そこまで言われたら、頑張んなきゃね。あー、ザ・ワン倒す時より緊張してる・・・」

「ふふっ、なんですかそれ。そんなに緊張してるんですか?」

 

そんなに緊張してるんだよ、と軽く返すと同時に、チューニングが無事に終わる。よっしゃ、とギターのネックを掴んで持ち上げつつ、水の入ったペットボトルやタオルをポケットに入れる。

 

「期待、してますからね。」

 

そうして立ち上がった瞬間、たきなは目の前に拳を突き出してきた。一瞬意味がわからず、頭に?マークを浮かべるが、すぐにあぁ、と察し、小さく笑みが零れる。

 

「OK。練習の甲斐見せるよ。」

 

そうして、軽くグータッチを交わす。そんなやり取りを終え、もう片方の手には革靴を持ち、本日の特設ステージへと向かっていく。

 

 

「(・・・背中、やっぱり大きいですね。)」

 

 

その後ろ姿を眺めながら、ふと、たきなはそんなことを思っていた。

 

それは男性だからということや、背が自分より大きいという理由もあるが、知り合ってから今までずっと、自分はよく、彼の背中を見ることが多かった。彼がネクサスになる時には、いつも後ろから、その姿を眺めていた。

色々な物を背負っている彼だからこそ、いつの間にか、その背中が何倍も大きく見えるようになっていた。

 

 

 

─────いつからだろうか。その背中に、安心感を覚えるようになったのは。

 

 

 

「えー、皆様、大変、大変!長らくお待たせしました!本日の主役の登場です!先日よりウチで提供しているハチミツ生産者の一人息子!歌えば空が轟き大地が「長い、長いって。俺プロレスラーじゃないから。あとアコギで空轟かないからね?その空ゼリーかなんかか?」

 

従業員用の休憩室から出てきた光輝のスーツ姿に、最初は店内の全員驚いていたが、光輝を紹介する千束の喋りはまるで、プロレス選手の入場アナウンスかのように、尾ひれが沢山付いていた。その説明の長さに光輝がツッコミを入れると、店内からは笑いが起きる。

 

「えー、失礼いたしました。それでは、本日の主役の登場です!拍手ー!」

 

拍手が巻き起こる店内で、よし行くかと思い、ステージに向かおうとするそんな中、ちょいちょい、と千束から袖を引っ張られる。何?と声を掛けると、耳元に手を当てられる。

 

「どう?緊張取れた?」

 

耳打ちで話し掛けてきた内容は、他愛もないこと。けれど、先程あんなことを言ったその真意がわかると、軽く笑いながら返す。

 

「余計緊張した・・・でも、ありがとね。気遣ってくれて。」

 

感謝を伝え、にししっと悪戯っぽく笑った笑顔を背に、簡易的に作られたステージの椅子に座り、ギターストラップを肩にかけ、マイクに顔を近づけた。

 

「えー・・・は、はじめまして。真田 光輝と、も、申します。めちゃくちゃ緊張してますし、実はこれが、東京で歌う初めての機会なんですけどね・・・まぁー、緊張してますよ。」

 

ハハハと笑う会場の中で、ギターを握り締める。

 

「まぁでも、喫茶リコリコの皆様に、このような場所をいただけたことにはとっても感謝してます。なので、楽しんでやろうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!」

 

ギターを構えると、先程までの緊張していた目はどこかへ行き、真剣な目をすると、店内は再び拍手に包まれる。

 

「ただ、今日はボドゲ会ですので、ボードゲーム楽しんでくださいね!そっちがメインですから!というか、そっちの方がこちらも緊張しないので!ただ、本当だったらもう少し練習してから出る予定だったんですけど、それも出来なかったので、まず練習がてら一曲歌わせてください。もし知ってるなら一緒に歌っても大丈夫ですから!」

 

その言葉と共に、アコースティックギターを鳴らし出し、歌い始めた。緊張している、と話していたが、歌い始めると、その言葉は噓だったのではないかと誰しもが思うほど、堂々と歌い始めた。

 

「Let it be, let it be Let it be, let it be Whisper words of wisdom Let it be」

 

誰もが知っている、世界的に有名な曲を練習がてら歌うと、いつの間にかボードゲームを遊ぶ手を止め、聞き入っている人も多くいる。そして、誰もが思っていたことがある。

 

 

彼は─────意外にも、歌が上手い。いや、上手いというより、どこまでも伸びていくような、それでいて、心に入ってくるような歌声をしている。

 

 

そんなこともあってか、店内を幸せな空気が包みこんでいく。

そして一曲歌い終え、頭を下げると、温かい拍手が店内に響き渡った。

 

「・・・えー公開リハーサル兼、1曲目でした。あのー・・・ヤバい。緊張以上に、めちゃくちゃ楽しい。なんだこりゃ、ってくらい、楽しい。いや楽しいなーこれ!やっべーめっちゃテンション上がってるー!アッハッハッハ!楽しー!」

 

思わず興奮する中で持ってきた水を飲んでいると、お水美味しいー?と誰かが尋ねてきた。その誰かとは、言わずもがな。

 

「あの店員、うるさいなほんと。アハハハハ!・・・あー面白。いやほんと、楽しいです。ありがとうございます。あのー、次やる曲、というか、この後やる2曲は、個人的に、音楽を好きになったきっかけのアーティストで、今の自分を語る上では絶対に欠かせない、バンドの曲をこの後2曲やります。」

 

そう宣言し歌い始めたのは、とあるバンドの曲だった。

その曲を知らない人も多かったが、日本語の歌詞ということもあってか、全員が思わず聞き入る。

 

「雨の日には濡れて 晴れた日には乾いて 寒い日には震えてるのは当たり前だろう 次の日には忘れて 風の日には飛ぼうとしてみる そんなもんさ」

 

気付けば、多くの人がゲームをする手を止め、自然と手拍子も起きており、店内は先程以上に、温かい空気が流れていた。

 

「いい曲だね、この曲。」

「・・・本当ですね。」

 

そっとお互いに耳打ちした千束とたきなは、期待していた以上にいい演奏をしており、先程のMC含めで、本当にこれがいつもの光輝とは思えず、そのギャップに驚き、いつもの彼と違うことに・・・若干ドキドキしていた。

 

「ありがとうございます。このバンドは、まぁーその・・・自分という人間を語る上で絶対に欠かせないバンドで、人間形成にも大きく影響を与えたバンドです。初めて聞いた時の衝撃も覚えてるし、そっから1年くらいかな?このバンドしか聞いてなかった時期がある位、ずーっと大切なバンドです。で、このアコギを手にした時に最初に覚えた曲が、次の曲です。そして次が、最後の曲です。」

 

まさかの3曲で終了するということに、えーっと、残念がる声が店内に響き渡る。皆さんノリいいですね・・・と、その様子に苦笑いながら、水を口に含んだ。

 

「あの、本当に今日この場を設けてくださったリコリコの皆さんには感謝してます。ありがとうございました!あー楽しかったー!またそのうちやらせてください!」

 

本当に楽しかったのか、感謝を言葉にした後、一番最初に覚えたという曲を演奏していく。

 

「Make A Wish You'll be fine Nothing's gonna let you down Someone's there next to you holding you Along the paths you walk」

 

最後の一曲のラストのサビを歌い終えた瞬間、店内は歓声と共に再び大きな拍手に包まれる。が・・・

 

「すみません楽しいのでもう一曲追加で!ミカさんすいません!ただ3,4分で終わるので!もし知ってたら皆さん一緒に歌ってください!じゃやります!」

 

ジャッと一度ギターを鳴らし、改めてマイクに顔を近づける。

 

「くだらねえとつぶやいて 醒めたつらして歩く いつの日か輝くだろう 溢れる熱い涙」

 

とある、昔に流行ったドラマの曲。しかし、未だに多くの場所で聞く機会があり、世代でない人も知っている。そんな有名な曲を歌い始めると、店内はカラオケかと言わんばかりの大合唱が巻き起こる。

そうして歌い終わった瞬間にギターをかき鳴らし、ありがとうございました!と感謝を伝え頭を下げると、店内から歓声と共に大きな拍手が巻き起こる。

そして演奏が終わったため、ギターのストラップを肩から外し、戻ろうとすると・・・

 

「アンコール!アンコール!」

 

千束が大声でアンコールを求めると、それに合わせ、同じくアンコールが店内から起こり始める。それに特に表情を変えず、もう一度ギターストラップを肩にかけると、持ってきていたタオルで顔を拭いた。

 

「えー、アンコールありがとうございます。あのー・・・見てわかると思いますけど、スーツめっちゃくちゃ暑いです。もう背中とか汗でびっちゃびちゃです。なのでもう、意地でもジャケット脱がずに最後までやろうと思います。」

 

笑いながらそう言うと、ボードゲームだけでなく音楽も入ったことで、思いの外酒が進んだ大人達が酔っぱらい始めており、その筆頭であるミズキや常連からは、脱げー!やら色々な罵声が飛んでくるが、もうそれすら面白くなってきたのか、その罵声に対してもずっと笑っていた。

 

「あーひっどい・・・酔っ払いにはなりたくねぇなー!ブァッハッハッ!でも楽しい!最高です!今年一番、いい思い出になってます。で、そこの、アンコール求めてくれた店員さんいるじゃないですか。錦木千束さんっていうね。練習してた時からずっと、多分アンコールって言うんじゃないかなぁって思ってたんですよ・・・えー、ものの見事に、当たりました。ハハハハハッ!わっかりやすいなーあいつ!」

 

予想していたことが全部的中したのか、千束を指差しながら、普段では見せないような爆笑を千束にすると、一方の千束はイラッとした。

 

「おーいそりゃどういう意味だボケ~?電源抜いてもいいんだぞコラー!」

「アコギだから電気なくても大丈夫でーす。」

 

千束の半ば脅しのようなジョークにもさらりと返すと、夫婦漫才のようなテンポのいい返しに、店内は爆笑に包まれる。

 

「くぁームカつくー!なんだあいつー!!」

「アッハハハハ!いやそりゃそうでしょうよ!・・・はぁー面白い、涙出てきた・・・まぁ、ただね、実は、本当に最近友達になったばっかりなんですよ。千束と、それに、そこの、たきなも。まだ友達になって1ヶ月くらいしか経ってない・・・はず。ただ、そんなすぐ出来た友達なのに、ちょっと言えないんですけどとあることがあって、俺その時2人の目の前で大号泣しちゃって。で、その時2人からずーっと慰めてもらっちゃったんですよ。男なのに情けないんですけどね・・・」

 

その話が、あの時のネクサスのことだという詳細については伏せたが、その時のことを話し始めると、これまでの笑顔は鳴りを潜め、少し神妙な面持ちになりながら話し始めた。

 

「で、そん時に、俺は本当の意味で2人と友達になれた気がしてて。ただ、ここにいる人達のほとんどは知ってるとは思いますけどね、めっちゃいい子なんですよこの2人。俺にはもったいないくらいだから、なんで今も関係持てたのか時々不思議になるんですけどね・・・で、全然俺がもうすぐ死ぬとかそういうわけじゃないんですけど、なんて言うんでしょうね・・・多分、俺がいなくなっても、世界がどうなったとしても、この2人はいつまでもずっと一緒にいるような気がしてて・・・それで、今日何やろうかなって思ってた時に、この曲やろう、ってなった曲があって。この曲なんですけど、ぶっちゃけ言うと、とある2人組ユニットの片方の人が、もう一人に向けて送ったラブソングなんですよ。まぁその2人男なんですけどね。アッハハハハ!・・・ただ、なんか、改めて聞いたら、千束とたきなのことを思い出したんですよね。だから、別に愛の告白とかそういう意味じゃないんですけど!それだけは強く言っておきますね!!次に歌うこの曲だけは、こうして今日演奏するきっかけをくれた2人のために歌おうと思います。」

 

そう説明するも、やはりどう聞いても半ば告白に近い話に聞こえる。だからか、フゥー!という歓声を出して酔っ払い達がそれを茶化すが、スイッチが入っているのか一切顔付きを変えず、一つ息を吸うと、心を込めて、2人のために歌い始めた。

そして歌い始めたのは、またもや日本語の曲だった。

 

「どこへ行くも 肩を並べよう 何を飲もうか まだ夜は長いよ 誰に出会うか 君が決めたらいいさ いつも通り どこだって行ける 旅の道連れ 壊れていても 宝物だよ」

 

決して2人のことを歌っているわけではないというのはわかっている。ただ、先程の説明を聞いたが故か、その歌詞にこれまで2人に起きた様々な出来事を思い出してしまう。

 

 

気付けば─────当の2人は我慢が出来なくなったのか、目元をハンカチで拭っていた。

 

 

それに気付いていたが、それでも歌っている間は演奏に集中し、2人のために歌い続けた。

 

「・・・ありがとうございます・・・ごめん2人とも!泣かせるつもりはなかった!ごめん!だからすいません急遽もう一曲やってから帰ります!どうもありがとうございました!じゃあ最後に・・・ロックンロールを1曲!」

 

急遽更に1曲追加することにし、軽快なリズムでアコースティックギターを弾き始めた。

 

「僕らは進まなくちゃ 先を急がなくちゃ 足が言うことを聞いてくれるうちに 君らは残らなくちゃ 後を担わなくちゃ 星が闇を削ってくれるうちは」

 

最後にもう一曲、日本語の歌詞の歌を歌い終え、ありがとうございました!と改めて大きく頭を下げると、店内は再び大きな拍手と歓声に包まれた。

そしてアコースティックギターを持って、裏の休憩室に戻ろうと立ち上がった瞬間・・・

 

「・・・アンコール!アンコール!」

 

顔を俯かせながら、今度はまさかのたきなからの、アンコールを求める声が店内に響き渡る。

 

えっ!?と、予想外の人物からのアンコールに驚いていると、千束ちゃんとたきなちゃん何泣かせとんじゃコラー!や、おら男なら泣かせた責任取ってもっとやれー!など、大人達は酒も入っているのもあるが、もはや罵声・ブーイングに近いダブルアンコールを求める声に、仕方なくもう一度椅子に座り、アコースティックギターを構えた。

 

「うっわー・・・まさかたきなからアンコール言われるとは思ってなかった・・・えーと、何かすみません・・・泣かせたことは謝ります。でももう泣き止んだでしょ!けどごめんね!とりあえず、もう1回アンコールありがとうございます・・・まぁ、やってない曲まだあるので、最後はハッピーな気持ちにさせて、後は皆さんと、人生初のボードゲームを楽しもうと思います!まさに、今日みたいな日にピッタリな曲だと思ってる・・・"僕達には、バカ騒ぎと、絶えない笑いが必要だ"、っていう、大好きな曲やって本当の本当に終わります!ありがとうございましたー!」

 

ハッピーな気持ちにさせるために演奏したのは、とても明るい曲だった。

お手を拝借!と声を掛けると、全員が手拍子をしていく。

 

「Day by day, Things are all messed up All we need is cakes and ale and everlasting laugh」

 

馬鹿騒ぎと、絶えない笑いが必要という意味が込められたタイトルの曲を演奏し、最後の1フレーズを歌い終えると同時にギターをかき鳴らしながら立ち上がり、最後のコードを鳴らし終えた瞬間、ありがとうございました!とマイクを通さず感謝を伝えると、店内が大きな拍手に包まれる。長いお辞儀をした後、持ってきたものを全て持つと、先程荷物を置いた休憩室へと戻ろうとする。

 

「やるじゃねぇか光輝!」

「おい光輝、お前そんなもん持ってんなら早く言えってんだ!」

「いいライブだったぜ~光輝~」

「やるじゃな~い!いやー良かった良かった!」

「お疲れ様!」

「カッコよかったよー!」

「最高でした!」

「あっ、ああ、あ、ありがとうございます!」

 

しかし戻る途中、色々な人から褒められながら手を伸ばしてきた。そのため、手を伸ばしてきた全員とハイタッチを交わしながら戻るという、予想外の展開に光輝も驚いたが、それすらも全員が楽しそうであった。

 

 

こうして、これまでのボドゲ会でも類を見ないほどの、ハッピーな空気が残ったまま、光輝の喫茶リコリコスペシャルライブは、無事終了した。

 

 

 

「やべー・・・やべー・・・たーのしかったぁ・・・!」

 

裏の休憩室に戻ってくるも、アドレナリンが全開になっているため、感情の整理が全く追い付かなかった。ギターの手入れも後回しで、尚且つ汗を凄くかいたため、着替えをしなければいけないのだが、その気力も今は無く、タオルで顔と髪を大雑把に拭き、そのタオルを頭から掛けると、座り込んでぼーっと明かりを眺めていた。

これまで味わったことのない、少しの呆然と、それ以上の興奮を味わっている最中なので、今はこの余韻に浸っていたかった。

 

いつもであれば、知り合いのお店や、家の外、山の中で歌うことが多く、慣れたとはいえ、喫茶リコリコで、それも自分を知らない人が沢山いる中で歌うことに緊張はしていたのだが、一曲目を歌った瞬間から、あっという間にホームと言える空気感となり、最後まで気持ち良く歌えた。本当に、リコリコの空気が良すぎた。

中でも、ミズキさんをはじめ、お酒を飲んでいる大人達が、俺の歌を聞きながら酒を飲んでいる姿を目にした時には、何故かわからないが、とてつもなくいいものを見ている気分になった。酒が進んだのなら、それこそやった甲斐があるというものだ。

 

ただ、千束とたきなを泣かせちゃったのは謝んなきゃ・・・

 

「ずーーーーっごい良かっだぁ!!良かっだぁ!」

 

そんなことを思っていると、その余韻を壊すかのように、半泣き状態の千束が物凄い勢いで入ってきた。

タオルを被っていたことや、呆然としていたことで向かってきていることにも気付かず、おおっ!?と驚いてる間に、千束は勢い良く目の前に駆け寄ってくる。

 

「良かっだ良かっだ良かっだぁ!泣かせんじゃねぇよばがぁ!」

「あ、ありがとう、ございます・・・それよりも鼻水拭きなさいってば・・・」

「だっでぇー・・・」

「だっでぇじゃありません!ほら鼻かんで顔綺麗に拭く!はいティッシュ!」

「鼻チーンしでぇ・・・」

「嫌だよばっちぃ!!」

 

余韻を完全に吹き飛ばすやり取りに、やれやれ・・・という表情をしながら、たきなも休憩室に入ってくる。

 

「・・・すーっごく、良かったですよ。あんなに音楽で感動したの、初めてです。」

「本当・・・?嘘言ってない?」

「本当ですよ。でなきゃ、あんな風に泣くわけないじゃないですか。まさか、光輝に泣かされるなんて不服ですけど。」

「そりゃどういう意味で・・・?」

 

笑顔を浮かべながらも、若干の怒りも込めてたきなに向けて言ったのだが、それは完全に無視された。

そんな中、何かを思い出したかのように、たきなはそうだ。と、口にした。内心、話を変えられたと思っていると・・・

 

「あの、さっき話の中で、自分がいなくなっても、私と千束はずっといる、って言ってましたよね?」

「あぁ・・・そう言ったけど、それがどうかしたの?」

「・・・絶対、勝手にいなくならないでくださいね。そんなことしたら、今度こそ本当に絶交ですから。」

「・・・う、うん。勝手にいなくなんてならないよ・・・?ってか、ああいうのはものの例えだよ!そんな本気で勝手にいなくなるなんて俺以上のバカが・・・」

 

そんなことを言っていると、たきなはスーッと千束の方を指差す。一方、指を差された千束はゆっくり目を逸らしていく・・・えっ?

 

「・・・マジで?千束?えっ?やったの?」

「えーっと・・・」

「嘘でしょ?ほんとに?えっどういうこと?」

「あーんと・・・」

「千束・・・マジで、皆の前から勝手にいなくなったの?答えて。」

 

珍しく歯切れ悪く答えを躊躇っているので、真面目に、少し強めのトーンで千束に詰め寄ってしまった。

とはいえ、それもそうだ。なんでそんなことを千束がしたのかわからなかったし、そんなことをするなんてわけがわからない。というより、下手したら、俺がこの前2人を傷付けた時以上にひどいことしてるんじゃないの・・・?

いやでも、千束がそんなことするなんてまさかそんなことあるわけ・・・

 

 

「・・・はい。」

 

 

本当だった・・・ちょっと開いた口が塞がらないが、聞きたかったことを、本人ではなく、それを伝えてきたたきなに聞いてみることにした。

 

「ねぇたきな・・・それ、いつの話・・・?」

「今年ですよ。去年の12月から今年の3月まで。」

「はぁ!?4か月も!?てか、今年ぃ!?つい数か月前じゃん!」

 

本当に実行した人物が目の前にいることにも驚いたが、まさかの4カ月という長期間に渡って行方不明になっていたことにも驚き、正直ドン引きしてしまった。

 

でも、千束がそんなことをするとはちょっと思えなかった。だから、なんでそんなことしたんだよと、少し小馬鹿にしたように聞いてみると、少し千束は暗い表情を浮かべる。

その瞬間に、何かまずいことを言ってしまったのか、彼女にとって辛い記憶を思い出させることになってしまったのかなど、色々な可能性を考え、一気に頭が落ち着いてくる。

 

「・・・あのさ。」

「ん?」

「私まだ、言ってなかった秘密があるんだよね。」

 

千束が何か覚悟を決めたような表情に変わる一方、秘密?と俺が聞き返すと、千束は胸のところで、指でハートマークを作った・・・っ!?

 

「うぉっ!ちょっと何!?そういうサービスだったらいらないよ!?」

「ちーがーうー!そうじゃないー!」

「じゃあ何!?」

 

 

「・・・私のココ(心臓)、機械なんだ。」

 

 

えっ?と聞き返すも、その目は真剣だった。ちらりとたきなの方も見ると、コクリと首を小さく縦に振った為、これは本当のことなのだろう。

 

・・・千束の心臓が、機械・・・?

 

 

「私ね、実は、"アランチルドレン"なんだ。」

 

 

そのことに驚いている中で、更に千束の口から衝撃の事実が告げられる。

 

アランチルドレン、それはテレビを見ていれば一度は目にしたことがある名前だ。

 

世界各国で優秀な人物に無償の支援を施す謎の組織、"アラン機関"。

そのアラン機関の施しを受けた子供は、アランチルドレンと呼ばれている。

そのアランチルドレンは、芸術やスポーツなど、様々な分野で活躍しているため、傍から見ている分にはいい組織・・・のように思える。

 

でも・・・千束がそうとは知らなかった。

 

「えっと・・・本当に?」

「うん。もうその証は捨てたけどね。」

 

そうなんだ・・・と驚きつつも、何故そのアラン機関に千束が選ばれたのか、そこは少し不思議だったため、思わず聞いてしまった。

 

「・・・なんで、千束は、アラン機関に選ばれたの?」

「・・・人殺しの、才能・・・殺しの天才・・・ってことで、選ばれた。」

「殺しの・・・天才・・・?」

 

人殺しの才能、殺しの天才。そんな物騒な言葉が千束の口から出たことに驚きつつも、千束は自分のことを話してくれた。

 

「私さ、人の何倍も目がいいんだ。動体視力って意味で、なんだけどさ、相手の服や筋肉の動きを見て次の行動を予測出来る。だから、どんな弾でも基本当たんない。今光輝の距離から私を撃ったとしても、当たんない。」

「えっ・・・そんなこと出来るの・・・?」

「うん、本当にそう。」

 

そのことを言うのは、千束にとって当たり前なのかもしれないが、一方の俺は驚いていた。相手の行動を予測して、銃弾をかわせるなんて、そんなの・・・そんなやつ・・・

 

 

「・・・キッショ。」

 

 

ストレートに、思ったことが口に出た。

 

「それどの口が言ってるんですか?」

「よーし殴るぞこのボケトラマン。」

 

思わず口から零れたその言葉に、2人の目が一瞬にして、俺を何らかの形で懲らしめようという目に変わる。それに恐れおののき、ごめん続けて。と催促すると、改めて、千束はその続きを話し出した。

 

「・・・ただ、私さ、心臓に重い病を抱えてて、本当ならもっと早くにこの世を去ってて、今まで生きられなかったんだ。そんな時にヨシさ・・・アラン機関から子供の頃に人工心臓に付け替えられたんだ。アラン機関が、この私の能力に興味を持ったから、私は生かされることになった。けど、私は、この命を与えてくれた人みたいに、救世主になろうとしたんだ。」

「救世主・・・?」

「"私を助けてくれた救世主さんみたいに、私も、誰かの命を助けようって。その時にそう決めたんだ。"だから先生が、私専用のゴム弾を作ってくれて、それを今も使ってる。それだと、当たると死ぬほど痛いんだけど、絶対に誰も死なない。私は、誰かの時間を奪うのは好きじゃないし、命を奪うなんて、気分が良くないからさ。命、大事にも、そういうこと。」

 

そう話す千束の目は、一切の迷いがない。

というより、今までずっと、そんな信念を持ちながら、今までリコリスとしてやってきたのか・・・ただ、それを貫き通し続けることの大変さも、話を聞くだけで、容易に想像がつく。リコリスにもかかわらず人の命を奪わないなんて、色々な人からずっと何かしら言われ続けてきたはずだ。それなのに、一切そんな感情を見せず、いつだって彼女は、太陽のように眩しい。そう思うと、やはり千束は、本当に強いし、人間としては、絶対にかなわないと、素直に思ってしまう。

 

 

「・・・ただ、あの延空木の事件の少し前にさ、心臓、壊されちゃったんだ。」

 

 

・・・えっ?

 

「・・・えええっ!?心臓壊されたって!?はい!?ねぇそれ大丈夫なの!?」

「大丈夫大丈夫。その後さ、何があったかはわかんないんだけど、新しい心臓になったから大丈夫。」

「そうなんだ・・・よかった・・・」

 

そこで一安心していると、あることに気が付いた。

 

「・・・でさ、いつ、千束は皆の前からいなくなったの?」

「その新しい心臓になった手術の直後です。」

「なんで!?」

 

皆の前からいなくなったのが、その、新しい心臓になった直後にいなくなったのだとたきなが伝えた。驚く一方、その逃げた張本人は、あはは・・・と苦笑いしながら、頭を搔いている。

 

「あのね、実は私、新しい心臓になったこと知らなかったんだよ。その直前にとある事件があって気絶しちゃっててね。で、起きたら手術された後で、おまけに心臓のとこに何かされてたから、あぁこれは私死ぬんだーって思って、病室から抜け出して黙って一人で石垣島まで行っちゃったんだよね。湿っぽいのやだったから誰にもわかんないとこ行こうと思ってね。」

「石垣島!?また凄い遠いところに・・・ってかさ千束・・・自分が何をされたのかっていう手術の内容、誰にも、聞かなかったの?」

「・・・お恥ずかしながら・・・」

 

前言撤回。やっぱこいつ、強いけどアホだ。俺以上のアホだ。

 

機械の心臓が壊されて新しい心臓になった、というだけでも驚いているのに、その手術内容を誰にも聞かずに、逃げ出して石垣島まで行ったという、スケールの大きな脱走劇に若干ついていけなくなっていると、ただね、と千束は付け加えた。

 

「インターネットも監視カメラもない場所にしたのにさ、あることがきっかけでリコリコの皆が私を見つけて、それでたきなが捕まえに来たんだ。」

「・・・もしかして、その後に、ハワイ、行ってたの?」

「そうそう。だから、逃げ出してどっか行ったとしても、たきなと先生とミズキとクルミに絶対に見つけられちゃうから。それから今だと、八神さんと海藤さんの手も借りれるからもっと早く見つかっちゃうかもね。後、私もいるから!」

 

は、はぁ・・・と、勝手にいなくなることに怒ることや、千束がいなくなった理由についてはわかったが、だけど、あんなMCで言ったことをそんなに重く受け止める?とも思っていた。

2人は相棒だからわかるし、俺が勝手にいなくなったら2人が悲しむということももうわかっている。あの時、俺が死にそうになっている時に見せた顔は、もう二度と見たくないと、心の底から思っている。

 

 

ただ、友達をこれまで作ってこれなかった、という理由があるからかもしれないが、心の中では未だに・・・なんで俺に対してそこまで真剣に言ってくれるのか、正直、少し理解が出来なかった。

2人なら、別に俺がいなくても生きていけるのに・・・俺がいなくなっても大丈夫なはずなのに・・・

 

 

「大体、あれは千束がいけないんですからね。勝手にいなくなって・・・あの時どれだけこっちが大変でどれだけ心配してたのかわかってるんですか!?」

「だからあの時はごめんってば~!もう何度も謝ったじゃーん!」

 

そんなことを考えている横で、2人はその時のことを思い出して一悶着起こしている。その顔は悲しそうで、怒っていて、困っていて・・・それでいて、どこか、楽しそうに見えて。

そうやって話している2人を見て、なんとなくだが、わかったことがあった。

 

 

─────あぁ、本当に、たきなは千束が大好きで、大切なんだ。隣にいなかったら、本当に嫌なんだ。

こんな誰の心も溶かしてくれる、太陽みたいな存在な千束だから、本当に何も言わずに勝手にいなくなるのが、心の底から嫌だったんだ。

 

でもって、千束の方も、そんなたきなが大好きなんだ。

自分が助けたと思っていたら、いつの間にか自分が助けられてた。俺も貰ったけど、そんなたきなの強さや意志に、いつの間にか千束も惹かれてるんだろう。

 

やっぱり本当に、お互い、かけがえのない大切な存在で、どっちがいなくなってもいけない。

本当にこの2人は、2人でひとつの、相棒なんだろうな─────と。

 

 

だからまぁ、勝手にいなくなりはしないけど、最悪、俺がなんかあっていなくなっても、この2人なら・・・きっと大丈夫だろう。ミカさんもミズキさんもクルミさんもいるしね。八神さんも海藤さんもいるし、春川さんや乙女さん、常連さんもいるから、色んな人が、この2人をサポートしてくれるはずだ。

 

 

そんなことを考えていたら、いつの間にか顔が綻んでしまっていたのか、それに気付いた2人がこちらを見ていた。

 

「な~に笑ってんの?」

「えっ?いや別に・・・いや、うん、そうだな・・・今日は言うわ。」

 

それだけ言うと、一つ深呼吸して、2人に向けて笑顔で言う。

 

 

「やっぱり2人は、最高に素敵な、相棒なんだなって思った!それだけ!」

 

 

その言葉に2人は一瞬頭に?マークを浮かべていたが、すぐにニッと笑った。

 

「あったりまえじゃ〜ん。今知ったの?私とたきなが揃ったら、無敵なんだぜ?」

「ホント、光輝は人を見る目がないですね。」

「まぁ俺・・・ウルトラマンになってから人間不信になってるからね。人を見る目だって曇るよそりゃ。」

 

半分はジョーク、半分は本当のことだが、あえて砕けた口調で返す。全員で笑いあっている中で、もう1つだけ、どうしても言いたいことがあった。

 

「それとさ千束。」

 

ん?とこちらを見る彼女に、どうしても言いたかった。

 

千束は─────

 

「殺しの天才なんて言葉、捨てていいよ。そんなの千束には似合わない。千束は、人の心を溶かす天才だよ。絶対、俺が保証する。何せ・・・」

 

そこまで言うと、自分の親指を自分に向けた。

 

 

「"この、ウルトラマンネクサスの心を溶かしたんだよ。これ以上の保証人、この世界にいる?"」

 

 

少しにやりとして、半分、いや少しだけジョークを混ぜた上で、心から思っていることを口にすると、千束は少し驚いていたが、ふふっと笑うと

 

「カッコつけんなこのバーカ!」

 

思わず、ハグしてきた・・・!?

 

「ちょ、ちょっと千束!?」

「・・・ありがとう光輝。ううん、ありがとう、ウルトラマンネクサス。そう言ってくれて・・・すっごく嬉しい。ウルトラマンが言うなら、間違いないね。だったら私、これからは堂々と、そう言ってくね。」

「・・・ならよかった。どういたしまして。」

 

それだけ言うと、こちらもハグをし返し、頭を2度ほどポンポンと優しく叩き、ハグを終えた。

・・・いいにおいでドキドキした・・・というか、俺、また千束とハグを・・・

 

「うーわ本当に背中めっちゃ汗かいてるきったな!早く手洗い行きたいんだけど!」

「誰が汚い汗だるまだ!!」

「そこまでは言ってないですよ・・・」

 

余韻を壊す千束の言葉にすぐにツッコんでしまい、全く・・・と思いつつも、確かにそろそろ着替えなければならない。その言葉通り、体も汗でベタベタだ。そのため、先に部屋から出ようとするが、ちょっと待って!と千束から呼び止められる。

 

「3人で写真撮ろうよ!せっかくスーツ着てるんだし!」

 

千束から写真を撮ろうと声を掛けられ、せっかくの機会だしいいかと思い、俺もたきなもOKを出す。

そして、千束のスマホの画面をこちらに向け、インカメラで全員が入るようにスマホを動かしていく。

 

「それじゃ撮るよー!はい!」

 

そして、友達になってから初めて、3人だけで写真を撮った。いわゆる、3ショット。こうしたことで改めて、友達になったことを強く実感する。

俺はそんなことを普段しないからちょっと不思議だったが、でも、楽しい時に自分の顔が入った写真を残しておくのも、振り返ってみた時に大事なことなのかもしれない。そう気付けたため、こうして写真を撮ったことは、俺にとっては新たな発見だった。

 

後でTALKに送っとくねー!と言われたので、よろしくとだけ言い残し、改めて更衣室へ向かおうと背を向ける。

 

「ねぇ光輝」

 

しかし、再び千束から声を掛けられ振り向くと、2人が優しく笑っている。何だろう、と思っていると─────

 

 

 

 

 

 

「私とたきなは相棒だけどさ・・・光輝だってもう、私達のパートナーだし、これからは3人でチームだからね!」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・えっ?」

 

その言葉に理解が出来なかった。パートナー?チーム?俺を入れて・・・?

 

「・・・なんで?」

「だって光輝、目離すとすぐ死んじゃいそうだもん。心もめっちゃ繊細だし。」

「うぐっ」

「周りにも迷惑すぐかけますし誰に対しても警戒心ありますし自殺願望ありますし。」

「うぐぐぐぐっ」

「どっか行ったらすぐ連絡取れなくなるしー。」

「私達に心配ばっかりかけてそれなのに何も言わない。」

「困ってるのに助けても言わない。心配してんのにほっとけとか突き放す。」

「自分だけが傷付けばいいと思ってボロボロになって、周りが心配してることを一切考えようとしない。」

「・・・ひぃ・・・」

「「本当に迷惑ばっかりかけるな、このバカ光輝。」」

 

その理由を聞いていたら、いつの間にか俺への罵倒に切り替わっていた。どれもこれもが身に覚えがあるため、いつの間にか正座に姿勢を変える。それでも2人の罵倒は止まることなく、みそっかすのように言われ続けているため、正座をしているということもあるが、どんどん体が小さくなる気がしている・・・やっぱりリコリス、怖い・・・・

 

「・・・ごめんなさい。」

「・・・もうしない?」

「はい、絶対しません・・・というか、2人してそこまで言わなくても・・・」

「自業自得だよ。少しは反省しろよ~。」

「・・・ちなみに、このチームになることに対して、NOと言う権利は?」

「光輝に拒否権なんてあるわけないじゃないですか。」

「嘘でしょ・・・拒否権もないの・・・」

「当たり前です。私達にどれだけ迷惑かけてきたと思ってるんですか?」

「・・・はい。すみませんでした・・・」

 

困惑し、何度も何度も謝っていると、鼻で笑うようにこちらを見た。

ただ、その顔は、それまでとは違い、少し呆れたように、それでいて、楽しそうなように見えた。

 

「でも、私達が一緒にいれば、光輝も安心出来ますよね?」

「・・・まぁ、そりゃね。」

「それに、前言ったでしょ?光輝を支えてあげるって!だから、一緒にチームになろうって、たきなと決めたの!」

「・・・いいの・・・?」

「当たり前ですよ。友達なんですから。」

「それに、友達を助けるのに、理由なんていらない・・・でしょ!」

「・・・そうだね。」

「だから、勝手にいなくならないでくださいね?黙っていなくなるなんて、ありえないですから。忘れろ、なんてもっとありえないですから!」

「関わるななんてもっと言わないこと!それから、私達に酷いこと言わないこと!次言ったら本当に撃つから!」

「そ、それは本当にごめん・・・もう二度と言わないから・・・」

 

そんな2人の勢いにタジタジになっていると、ふふっと少し笑った後、これまで見たことがないほどの、笑顔を見せてくれた。

 

 

「そうそう!それと、もう友達なんだから、これからは辛いことがあったら私達を頼ること!力になるから!それに、私達も光輝を頼るから!よろしくね!」

「今度からは、ちゃんと話してくださいね。だから・・・これからも、よろしくお願いしますね。光輝。」

「もしどっか行ったとしても、私達が全力で探し出して、ぜーったい、連れ戻してあげるから!」

「・・・勝手にどっか行かれたら、寂しいですし、悲しいですよ。これからは、リコリコも、光輝の帰る場所ですからね。」

 

 

思わず次の言葉が出なくなるほど、その言葉に、凄く心が温かくなる。

 

 

あーあ。さっき、最悪、俺がなんかあっていなくなっても、この2人ならきっと大丈夫だろう・・・と思ってたら、違った。

というか、そもそもの考え方が違った。

 

 

 

─────"俺の方が、この2人がいなかったら、ダメなんだ。"

 

 

 

こんな自然に、人の心を溶かしてくれて、どこまでも手を差し伸べてくれる2人の手を握ってしまったから、俺はもう、これから先、絶対独りで戦うことは出来ない。

何があっても、絶対、帰りたいって思える場所が出来た。

 

 

本当に俺は─────"優しくて、可愛くて、強くて、カッコよくて、時々口が悪くて、それでも・・・絶対に困っている人を見捨てない、お節介が過ぎる、最高の友達に出会ってしまった。"

人生の運を全て使い果たしたと言ってもいいくらい、幸運な出来事が起きた。

 

 

「・・・俺、宇宙まで行けちゃうよ?そこまで追いかけてこれる?」

「ぜーったい、追いかけて、捕まえるから。」

「私達のこと、なめないでくださいよ?」

「・・・本当に来れそうだね・・・もちろん、行かないよ。それに、俺、3分もあれば地球一周出来ちゃうから、2人が逃げようとしたって、あっという間に捕まえるから。」

「だったら、もっと逃げなきゃね、たきな。」

「ネクサス相手だって、巻いてやりますよ。」

「へぇ、リコリスがウルトラマン相手に、ねぇ・・・1万年早ぇよ?」

「おいおい、ずいぶん言ってくれんじゃねぇかよ?」

 

バチバチに喧嘩しているように聞こえるが、お互いの表情は、ずっと笑っている。

勿論、全てが冗談だ。俺達は、どこにも逃げないし、行きたくない。

ここが、俺達の居場所だからだ。

 

改めて2人に向き合うと、手を差し出す。

 

 

「・・・これからもよろしくね!パートナー、さん!」

「うん!よろしく!」

「頼りにしてますからね。」

 

 

その言葉に、2人はより優しく笑ってくれながら、俺の手に手を重ねてくれた。

こうして、俺達3人は、リコリスとウルトラマンという、やることも種族も異なっているが、それでも、同じ方向を向いた、チームを結成することになった。

 

 

「・・・後さ」

 

 

ただ、こんなこと、余計なお世話なのかもしれないけど、言っておこう。

2人がそこまで信頼してくれたんだ。なら、俺も言おう。

 

手をどけると、心臓の部分を、親指で2,3回叩いた。

 

「ごめんね。ライブやった後でアドレナリン駄々漏れだから、バカだと思って聞いてね・・・俺の命、千束とたきなに預けるから。なんでも使って。2人のためなら、この命くらいやるからさ・・・もちろん、死ぬつもりはないけど。」

 

ここまで信頼してくれた2人には、俺の命を預けることにした。自分の生死を任せるなんて、重すぎると言われるかもしれないが、これが、俺の覚悟の決め方だ。

その言葉に2人ともポカンとしていたが、すぐにふふっと笑うと、近付いて顔の前までやって来ると・・・

 

「えいっ」

「バカ」

 

2人から同時に、おでこに綺麗にデコピンをされた。

 

「痛った!何すんの!?」

「カッコつけてんじゃねーよバーカ。それに、私達のモットーは、命、大事にだから!そんなのいらないよ!」

「そうですね。自分の命を大事にしない人、嫌いですよ。またお得意の自殺願望ですか?」

「いやいや、そうじゃないってば・・・」

 

カッコよく決めたつもりだったのにこれかよ・・・内心一人落ち込み、はぁと小さくため息を吐く。

 

「・・・でも、チームになったからには、俺もそのモットー第一にするよ。命、大事に、をさ。」

 

それだけ言うと立ち上がり、ようやく着替えようと、更衣室へ向かおうとする。

 

 

 

「でも・・・本当に私達がヤバい時にはさ、私とたきなのこと、守ってね。信じてるよ。」

「私達が本当にピンチの時には、絶対、光輝が助けに来てくれるって、信じてますから。」

 

 

 

あんなに強い2人が初めて、弱音のようなものを見せた。

それに驚き足が止まるも、2人が頼ってくれることが、嬉しかった。

 

向こうは、俺を命の恩人だと思ってるけど、俺にとっても、千束とたきなは恩人だ。絶対に、死なせない。

 

それに・・・何よりも、この2人を、俺は・・・だったら、そんなこと当たり前だ。

 

振り返らずに、言った。

 

 

「・・・当たり前でしょ。千束とたきなは俺を助けてくれた恩人だし、何よりも、大切な友達なんだよ。その2人が本当にピンチの時には、どこにいても絶対駆けつける。2人を死なせなんかしない。約束する。だって・・・」

 

 

そこまで言うと、振り返って、宣言した。

こんなに強い2人を守れる、その理由を。

 

 

 

 

 

 

 

「─────俺は、ウルトラマンネクサスだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで俺は、千束とたきなと友達になり、パートナーとしてチームを組むことになり、そして・・・"彼女達の、ウルトラマン"という、大役を担うことになった─────

 

 

 

更衣室に入ると、俺は着替え・・・ることをせず、ロッカーに体をもたれかけ、またしても床に座り込んでいた。

 

「・・・そうだったんだな・・・」

 

目を手で覆いながら、俺はあの日、千束とたきなと連絡先を交換した夜のことを思い出していた。

布団に入っている間、俺はずっと、その日の2人のことを思い出していた。

ただ、幸せを感じる時には必ずと言っていいほど、あの時の事件の記憶を思い出してしまうのが、自分にとっては当たり前だった。

 

けれど、何故かあの日は、その記憶を思い出すことはなかった。

それがその時は何故かわからなかったが・・・今ならわかる気がする。

 

そもそもあれは、俺が無意識のうちに、自分のようなリリベルの落ちこぼれが、今もこうしてのうのうと生きている。生きているだけで、罪なのだ。だから、幸せになんかなっちゃいけないんだという罪の意識から、あれを思い出すことで、自分にブレーキをかけていたんだ。こうして、罪を抱えて、皆の幸せのために自分を犠牲にして生きていくのが、俺に相応しいのだと。

 

だけどあの時、そのブレーキが壊れてたんだ。

 

その理由は、今ならよくわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────恋の前には、そんなブレーキ、いとも簡単にぶっ壊れるんだな・・・と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直、わかってはいた。でも、それを認めたらいけないとは思ってた。

何故なら、幸せになったらいけないと思ってたから。死にたいと思っている人間だったから。

そして、ウルトラマンネクサスになったからには、尚のことそんなことしちゃいけないんだ。

人並みの幸せを求めるなど、あってはならないのだ。俺は一人ボロボロになって、皆の平和のために尽くすのだと。

もし誰かを好きになってしまったとしたら、その人を傷付けることになる。だから、そんなことは真っ先に、切り捨てようとしていた。

 

 

でも、今なら、認める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やっぱ、好きになっちゃったんだな・・・千束とたきなのこと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々な人から言われ続け、その度違うと言っていたが・・・やっぱり、そうだった。

 

 

 

─────俺は、千束とたきなのことが、好きなんだ。人としても、異性としても。どっちが、じゃなくて、どっちも、好きなんだ。

 

 

 

子供かお前は、アホか、2人好きになるなんてバカかと思われるかもしれないが、それでも無理なものは無理だ。

どっちかを選ぶなんて、俺には絶対出来ない。

もし選んでしまった結果、どちらかが悲しい想いをするなんて、俺の恩人にはそんなこと、絶対出来ない。

 

千束とたきなには、沢山のものを貰った。死ぬまでに返しきれないほど、色々な気持ちをくれた。そんな2人には、何があっても幸せになってもらいたい。

その幸せのためだったらいくらでも力になるし・・・その幸せの傍に、自分が居れるのならば、こんなに嬉しいことは無い。

それは、友達としてでもいいし、パートナーとしてでもいいが・・・彼氏彼女の関係になれたら、それが一番嬉しい・・・俺の本心は、そう。

俺はこれからも、この先もずーっと、千束とたきなと一緒に居たいんだ。

そのための障害は色々あるが、クルミさんをはじめ、色々な人を巻き込んでなんとかしてやる。

そんなアホなことを考えてしまうくらい、こんなアホになるとは思わなかったけど、それでも俺は・・・2人が、欲しい。彼女に、なってほしい。あわよくば・・・その、先も・・・

 

・・・やっと、自分の気持ちに正直になった。

 

とはいえ、流石にいきなりアタックなんてしない。それで撃沈し、勘違いしていると思われたら死ぬほど恥ずかしいし、その後が気まずすぎる。

と言いつつ、既に前に、2人に対して、興味ないわけないって言ってるし、他の男に取られるなんて嫌だとも言ってしまった。だから、向こうからは、意識されてると思われているのかもしれない・・・あれは今思い出しても恥ずかしい。

 

それに、あの2人はあの2人で関係がある。それも俺のせいで壊したくはない。

だから、いつか言うその日のためにも、今はもう少しだけ、この関係でいたい。とはいえ、この関係になれただけでも、もう十分なのだけど。

 

 

そう決めると、スーツの胸ポケットからエボルトラスターを取り出して眺め、聞こえているのかどうかもわからないのだが、それでも、彼に向かって語り掛けていた。

 

「・・・ネクサス、いや・・・ウルトラマンノア。まだ、俺の元にいてくれて、ありがとうございます・・・この前、ああしてウルトラマンから、あなたが俺の元に来た意味についてアドバイスはしてもらったけど、自分としての答えは、もう少しだけ、考えさせてください。」

 

そのうえで、と付け加え、何も反応しないエボルトラスターに向かって話し続けた。

 

「今は、俺にとって大切な人達の幸せを守るために・・・千束とたきなが、いつまでも笑っていられるために・・・いつかあなたが去るのはわかってますけど・・・それまで、力、貸してください。お願いします。」

 

そんなことをエボルトラスターに向け話していたが、当然ながら、エボルトラスターは特に反応することはなかった。

 

「光輝何してるのー!」

「早くしてくださーい!」

 

そうこうしていると、店内から千束とたきなが呼びかけてきたため、今行く!と慌てて返し、エボルトラスターをカバンにしまい、慌てて着替えをはじめた。

 

 

 

 

─────そのカバンの中で、ネクサス、いやノアが、わかったと言わんばかりに、エボルトラスターが一度だけ点滅したことを、光輝は知らない。

 

 

 

 

俺達は生きている。

過去に何があっても、それを変えることはできない。

そこに対して、立ち止まってしまう人もいるかもしれない。

その苦しさが、その先の日々にずっと影響することだってある。

でも、それでも、未来は変えられるし、未来に何が待っているかわからない。

例え過去に何があっても、未来には可能性があるんだ。

だから、決して立ち止まらず、その希望に向かって歩き出すことが大事なんだ。

そのためにも、俺達は今、この手の中にある、今日を全力で生きていくんだ。

でも、人は一人では決して輝くことは出来ない。時には前に進めなくなることだってある。

そんな時に、大切な人達がそばにいてくれるから、人は輝け、前に進んでいけるんだ。

だからこそ、ネクサスは最初にこの言葉を俺にかけてくれたんだと、今は理解している。

 

 

 

「・・・諦めるな、か。」

 

 

 

あの日、ネクサスから最初に言われたその言葉。大分時間が掛かったが、ようやく、その意味を理解する。

 

着替えを済ませると、更衣室から飛び出し、大切な人達が待つ店内へと向かって行く。

 

─────よっしゃ、皆のところ、行くか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ光輝!」

 

店内に戻り、拍手と歓声と共に迎えられ照れていると、千束が声を掛けてきた。どうしたの?と尋ねてみると、彼女はとっても嬉しそうな顔をしていた。さっきのライブの感想は貰ったし、チームになるとも言ってくれた。ただ、俺としては、それ以外に他に何かしたっけ?そう思っているものの、こんなに千束が笑っている理由について、皆目見当がつかなかった。

 

「実は~、光輝にプレゼントがあるんだ。」

「プレゼント?」

「光輝君。」

 

いつの間にか後ろにいたミカさんの両手には、少し大きな、木箱がある。こんな木箱に入ったプレゼントなんて、これは相当な金額なものかもしれないと思うと、少しワクワクしてくる。

 

とはいえ、誕生日だってまだまだ先だ。ライブをやったからってこんなモノを貰えるなんてありえない。むしろうるさくして迷惑を掛けた側だ。なので、そもそもこうしてプレゼントを貰う理由についてあれこれ考えてみても、全く身に覚えがなければ、貰う理由も見当たらない。

 

あれこれ考えている中で、開けたまえ、とミカさんから言われたため、受け取り、座敷席のところにその木箱を置き、蓋を開けてみた。

 

「・・・えっ?」

 

その中に入っていたものは・・・

 

 

 

 

 

 

 

─────光の当たり方によっては、銀色のようにも見える、灰色の和服だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あの、ミカさん。これ、何ですか?」

「ここの制服だよ。」

「リコリコの制服?・・・誰のですか?」

 

そう聞き返すと、ミカさんをはじめとしたリコリコの皆。もっと言うと、今ここにいる全員が俺の方を見ている。

 

・・・つまり、これは、まさか・・・

 

 

「・・・まさか、俺のなの・・・?」

「おいおい聞いてなかったのか~?プレゼントって言ったじゃ~ん!」

 

 

一番、ありえない予想が当たってしまった。

これは、俺の制服・・・だという。

おまけに、この色は・・・口には出さないが、一目見てわかった。

 

・・・この色、ネクサスじゃん・・・

 

「・・・なんで?」

 

ただ、こんなものを貰う理由が全くもってわからず、呆然としていると、全員からはっ?という顔をされた。

その顔を見て、今ここでその理由をわかってないのは自分だけなのだとすぐに察すると同時に、先程、パートナーになった2人から、これをプレゼントしたその理由を告げられた。

 

 

 

 

 

「「だって光輝、来週からウチで働くんだよ(ですよ)?」」

「・・・へっ?」

 

 

 

 

 

何と、言った?What did you say?

ウチ、というのは、リコリコのことだろう。

つまり、来週から、リコリコで、俺が、働く・・・働く・・・?

 

 

・・・働く!?

 

 

「・・・はあぁぃぃいいいいいっ!!?えっちょっと待って待って!!?えっ聞いてない聞いてない!?えっどういうこと!!?」

「何言ってんだ。もうお前は6人目の店員だろ?だったら制服支給してやんなきゃいけないだろ?」

 

あまりの驚きに全く理解が追い付いていない中で、クルミさんが冷静に説明をしてくる。確かに何度かそう言われたのを覚えているけれど、けど!ああいうのはリップサービスだろう!

おまけに、もっと言いたいことはある。

 

「いやいやいやいやクルミさん大体こっちはOKって一言も言ってないですよ!?それに親にだって「光輝くーん、これ。」

 

そう慌てていると、ミズキさんが一枚の紙を渡してきた。

 

そこには、雇用契約書と書かれており、下の方には、保証人として・・・父さんと母さんの名前がまさかの連名で書かれていた。無論、印鑑も押してある。

 

「・・・な、何ですかこれ!?」

「雇用契約書。もちろんご両親から書いていただいたものよ。」

「いつの間に!?」

「まぁ、サプライズでしたからね。」

 

一つも理解が追い付いていない中で、たきなが近寄って声を掛けてきた。サ、サプライズ・・・?

 

「この前、光輝のご両親がウチに来たことは知ってますか?」

「あ、あぁ・・・父さんと母さんからリコリコ行ったってのは聞いたよ。」

「その時に、ウチで光輝の家で作っているものを使わせてもらうという契約を交わすのと併せて、クルミがマーケティングで、光輝の家で作っているものを通販サイトにて購入出来るようにしました。」

「・・・はっ!?そんなの聞いてない聞いてない!?えっもうやってんの!?」

「はい。で、その代わりとして、光輝をウチでも使わせてもらうことになりました。もちろんご両親からは契約書含め全て承諾済みです。だから、週末はウチで働いてくださいね。」

「はあぁ!!?意味わかんねぇ!?」

 

たきなからべらべらと説明されるが、一つも理解が追い付かない。しかしちょっと待ってくれ!もっと大事なことがある。

 

「いやいやいやいやたきな!ちょっと待って!そもそも俺養蜂家で農家だけど、何よりももう一つバイトしてんだよ!向こうの方にも言わないと!」

「それなら心配いらないよ!」

 

満面の笑みを浮かべながら、千束が声を掛けてきた。この根回しからして、まさか・・・

 

「光輝の地元のバイト先にももう話付けてあるから!週末お借りしますねー!って言ったらあっさりOK出してくれたよ!」

「はあああああっ!?ナツばああああっ!?」

「だから、週末どっちかは必ず出てね!まぁ、ウチで作ってくれるものの収穫量も大事だから、とりあえず今はそっち優先で、収穫が終わったらもっと多く出てね!冬場はじゃんじゃん働いてもらうよ~?」

「千束、店の売上が悪い時には光輝には出てもらわない予定ですから。」

「あーんたきな冷たいー!いいじゃーん光輝も入れてワイワイやろーよー!」

 

何だか2人は楽しそうな話をしているが、俺は全ての理解が追い付かないため、口をあんぐりと開け、呆然とし続けている。

 

高校生でもあり、養蜂家でもあり、農家でもあり、ナツばあの店のバイトでもあり、ウルトラマンネクサスでもあり・・・と思っていたら、喫茶リコリコの店員という顔まで持ってしまった。

もはや何足の草鞋を履いてるんだ・・・過労死するって・・・

 

八神さんの方をチラッと見て、助け船を出してもらおうと思ったら、ビール片手にいい笑顔でサムズアップしていた。ダメだこれは頼れない。というより、多分この顔、八神さん達も一枚噛んでる・・・というか、ひょっとして・・・

 

「あの、八神さん・・・まさかと思いますけど・・・知ってました?」

「・・・悪いね。頑張って。」

「まっ、時々遊びに来てやるよ。」

「八神さん海藤さん!!ひどすぎませんそれ!?」

「八神氏、ずいぶん面白い後輩が出来ましたな。」

「だろ?九十九、こいつ、めっちゃ面白いだろ。」

「あっ、どうも、はじめまして・・・真田 光輝と言います。」

「ヒヒッ、九十九ですぞ。若いのに大変ですなぁ。まぁ、頑張ってくだされ。」

「あっ、ありがとうございます・・・ってそうじゃなくて!」

 

そんな話をしていると、同じ卓にいた見慣れない老人の方も話し掛けてきた。

 

「まぁ頑張んな、若いの。これもいい経験だ。」

「あっ、は、はい・・・えーっと・・・」

「源田先生。俺の弁護士時代の事務所の所長だよ。」

「そうなんですね!?あっ、はじめまして。真田 光輝と言います。」

「おう、源田だ。まぁ事情はよくわかんねぇけどよ、頑張んな。あの子達の期待に応えなきゃ、男も廃れるってもんだぜ?」

「いやいやそんな!というかすみません、いきなりこんなこと言って申し訳ないですけど、これこそ法律の力でなんとか・・・」

 

八神さんの弁護士時代の所長という源田さんに、これこそ法律の力で何とかならないか相談しようとしたその時、誰かから両肩に手を置かれた。

 

後ろをゆっくり見てみると・・・満面の笑みを浮かべた、パートナーの2人がいる。

 

 

 

「リコリコでもよろしくね!期待してるよ~!」

「頼りにしてますよ、6人目の店員さん?」

 

 

 

2人のこの笑顔が・・・今は怖い。まるで借金取りのようだ。

やっぱ俺、この2人実はそんな好きじゃないのかもしれないし、そんな色々な人の手を使ってでも欲しい女の子じゃなかった。

さっきの甘酸っぱい恋心は、とうに吹き飛んだし崩壊した。

 

 

そして、1つ確信したことがある。

 

 

・・・俺の安寧は、もう完全になくなったようだ・・・

 

 

「・・・なんで、こうなるのおおおおおおおおお!!」

 

 

どうやら、俺が幸せを感じられるのは、まだ先かもしれない・・・俺の絶叫は、虚空に消えた─────

 

 

 

「さおりさん、いいんですかねこれ本当に・・・?」

 

一方、その様子を源田の隣で眺めていた星野は、その光輝の様子に対して、少し困ったようにさおりにこれでいいのかと声を掛けてみると、さおりは星野君、と小さな声で呼び掛けると、チラリと視線を、千束とたきなに向けた。それはまるで、この状況を見てみなさい、と言っているかのようでもあった。

そちらの方を見てから少しすると、星野もあぁ、と納得し、それ以上は自分も疑問に持つことをやめた。

 

「・・・こんなに嬉しそうな女の子達に、私達がこれ以上言えることなんて無いですよ。」

「・・・ですね。」

 

この状況を楽しんでいると、一目見てわかるほどの笑顔を浮かべている千束とたきなの表情を見ては、弁護士としても、大人としても、これ以上は何も言えなかった、いや、言う必要は無かった。

 

この騒がしい状況を横目に、同じタイミングで番茶を啜った。

 

 

 

 

─────営業終了後

 

「「「「乾杯」」」」

 

本日のボドゲ会終了後、誰もいなくなった店内で、光輝とミズキ、ミカ、クルミの4人はカウンターで乾杯をしていた。

 

何故、この時間まで光輝がいるかというと、実はかねてより、"とあることを新宿でしたいと考えていた。"

その話を以前した際、だったらこうしてライブをした翌日に行けばいいということになった。とはいえ、ここからわざわざ、家のある千葉まで帰る手間を考えていた時にミカから提案されたのが、"だったらリコリコに泊まっていけばいい"、ということだった。

 

事実、クルミはとある前科や理由があり、この喫茶リコリコで寝食を過ごしている。トイレは勿論、何故か風呂もある。ちなみに風呂は元からあったという。

つまり、一晩過ごすなら、ここでも全然過ごせることや、クルミもまた、光輝が泊まったところで特に不満や問題があるというわけでもなかったため、OKを出した。

 

その話を受けた時には喜び、是非と承諾した次第だった。だが、その話をした際、だったら皆で泊まる!と千束が言い出したのだが、そんなには無理だ!など、諸々の理由が重なった為、結局は当初の予定通り、光輝だけが泊まることになった。

そして、千束とたきなも帰った今、こうして今リコリコに残っているのは、リコリコ側の大人達と、光輝のみだけだった。

 

「しっかし、今日は大活躍だったな。いいライブだったぜ~。」

「いえいえ、こちらこそ楽しい時間をありがとうございました。ただ、まさかここで働かされるのは予想外でしたけど・・・」

「当たり前じゃない。こんないい人材、私の結婚相手探しのために手放すなんて勿体ない!」

「だからそれ犠牲じゃないですか・・・」

 

ミズキに苦笑いを浮かべながら、コップに入ったコーラをグイッと一気飲みし、近くにあった大きなペットボトルから再度注いでいると、カウンターに座っていたミカから声を掛けられた。

 

「すまないね。光輝君には悪いことをしたと思っているよ。ただ・・・この方が光輝君にとっても良いと思ったからなんだ。」

「・・・俺にとって?」

 

あぁ。と頷くと、ミカは光輝を従業員の一人として迎えた理由について語り始めた。

 

「君は一人だと無茶をするだろう。それに、世界中を守らなければならないから、何でも抱え込んでしまう。ずっとそうしなければならない状況下にあったから仕方ないのかもしれないが・・・ただ、ずっとそうしていると、いつかパンクしてしまう。それに、ずっとそうされ続けると、周りにいる人間も心配し、不安になるものなんだよ。」

「・・・」

「だから、これからはどうか、私達にも頼ってほしい。どんな些細なことでも、話してほしい。その訓練ではないが、君がそれを出来るようになるためにも、私は君を仲間に迎えたかったんだ。」

「・・・ミカさん・・・」

 

ミカから語られた、喫茶リコリコの従業員として迎え入れた理由。その言葉を聞くと、ただ働かせたかったというわけではなく、様々な理由が込められていた。

こんなにも、リコリコの全員が、本当に自分のことを大切に思ってくれている。それに一人静かに感激し、言葉が出なくなっていると、ミカは手を差し出した。

 

「だから・・・改めて、ウチで働いてくれるかい?」

 

これまでの理由を聞いて、目の前に差し伸べられたその手を・・・

 

 

「・・・ご迷惑をおかけしますが、こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 

─────握り返さないわけが、なかった。

 

 

この瞬間、改めて正式に、喫茶リコリコに、光輝が6人目の従業員として加わることになった。

 

 

ようやく話が一段落したそんな中、あっ、とミズキが何かを思い出したかのように声を上げると、光輝のことを呼んだ。

 

「そういえばさ、ネクサスのことで聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「・・・はい、何でしょうか。」

「そんなに肩肘張らなくても大丈夫よ。私の好奇心で、ってだけよ。」

 

そこまで言うと肩肘張るのをやめると、改めてミズキは尋ねた。

 

「・・・"何でいっつも、メタフィールドでビーストを倒した後に、毎回人前にもう一回現れてから去るの?"手間じゃないの?」

「それ、ボクも気になってた。あんなことするくらいなら、メタフィールドと共にとっとと消えた方が楽だろ。お前の安全においても。」

 

ミズキだけでなく、クルミからも同様のことを尋ねられた。

何故、メタフィールドで戦ってからまた人前に出るのか。そのことについて尋ねると、あぁ・・・と、光輝は少し神妙な面持ちになると、継ぎ足していたコーラを一口飲むと、その理由を語り出した。

 

「・・・これ、言ってなかったんですけど・・・ビーストが元いた世界だと、その恐怖の記憶を封印するための技術や装置があったそうなんです。それも、宇宙人からもたらされた技術だそうなんですけど・・・」

「いやいや記憶の封印って・・・マジでリアルSF映画の世界だな・・・」

「相変わらずヤバすぎでしょその世界・・・」

「で、"レーテ"っていう、その記憶を封印している大元のサーバーみたいなのがあって、それを使って、その昔、ザ・ワンと戦ったネクサス・・・正確に言うと、当時はネクサスじゃない別の姿だったんですけど、その記憶を、世界中の人々から奪ったそうなんです。」

「・・・ビーストの大量発生を防ぐため、にかい?」

 

はい。とミカに頷くと、ただ・・・と、何かもったいぶるように、付け加えた。

 

「それを研究している中で、ビーストの因子を消滅させる、"抗体"があったそうなんです。」

「抗体?」

「はい。ただ、その抗体の正体を突き止める前に、実はレーテが壊されたので終わってしまったんですけど・・・」

 

そこまで言うと、ずっと握っていたコップをより強く握りしめた。

 

「・・・これは、ネクサスもあくまで想像の話と語っているんですが・・・その抗体、っていうのは、"希望"や"勇気"のことだったんじゃないかって。」

「希望?勇気?」

 

抽象的な言葉を繰り返したミカに頷くと、更にその続きを話し始めた。

 

「そのレーテには、ビーストの記憶。それこそ、ザ・ワンから始まったビーストの記憶ばかり集積されていたそうなんですけど、同時にその中には、先程お話した、"ザ・ワンと戦った、ネクサスの記憶もあったんです。"」

「ネクサスの、記憶?」

「はい。で、その記憶を調べている中で、ビーストの因子を消滅させる抗体が生まれたそうなんです。その時の記憶は、この前みたいにテレビでも報道されるほどだったので、多くの人がザ・ワンとネクサスを認知していたそうなんです。で、そのレーテというのが壊れた際に、その当時の記憶が人々に戻って、同時に、人々は思い出したんです。」

「思い出したって・・・何を?」

 

ミズキが思わず聞き返すと、光輝は全員の方を向くと、少し微笑みながら、その思い出したことについて語った。

 

 

「"悪い怪獣を、ウルトラマンがやっつけてくれたこと。守ってくれたこと。人々のために戦ってくれたこと。どんなに恐ろしいものが現れても、ウルトラマンがいるから大丈夫。怖くない。"人々は、そのことを思い出したんです。そうやって、人々が勇気や希望を持って、乗り越えたことで、その世界でビーストが弱体化し、かつ、抑制されていったんです。」

「・・・まさか・・・?」

「お前・・・そのために?」

 

そこまで聞いて、何かに勘づいたのか、ミカとクルミが少し驚いたような表情を浮かべる。

その反応を見て、コクリと頷く。

 

そして改めて・・・何故、ビーストを倒した後、再び人前に現れるのか。その理由を口にした。

 

 

「この世界には、ウルトラマンネクサスがいる。ウルトラマンネクサスがいれば、ビーストなんて、怪獣なんて怖くない。恐れることなく、人間が自分の力で乗り越えることが出来る。そう人々に思わせることが、ビーストを生まない最大の抗体になる。だから、回りくどいかもしれないですけど、いちいち倒した後に、俺は人々の前に現れているんです。」

 

 

ビーストを生み出さない最大の抗体が、人々が希望や勇気を持つこと。ウルトラマンネクサスがいるから怪獣をやっつけてくれる。怖くない。そう思わせようとしているために、彼は自分の危険を顧みず、わざわざ、倒した後に人々の前にもう一度現れているのだ、と。

その理由を聞くと、3人は少し厳しい表情を浮かべるが、すぐに何かを納得したかのように、若干呆れたような顔に切り替わった。

 

「・・・あんた本当、子供のくせにいっちょまえに頑張りすぎよ。やること多すぎて、そのうち過労死するわよ?」

「ははは・・・まぁ、これは俺にしか出来ないことなんで・・・」

「まさか、人々の心のアフターケアまでバッチリとはな。恐れ入ったぜ、ウルトラマンネクサス。」

「・・・とはいえ、無理は禁物だ。何か手伝えることがあったら言ってくれ。もう私達は、仲間なんだから、ね。」

「・・・ありがとうございます。色々ご迷惑掛けることあると思いますし、手伝ってほしいことがたくさんあるかもしれませんけど・・・これからも、よろしくお願いします!」

 

改めて3人に向け頭を下げると、全員、同意と言わんばかりの笑顔を浮かべた。

 

こうして、喫茶リコリコの、温かい夜は更けていった─────

 

 




タイトルからお察しいただいていたかと思いますがそうです。あのバンドの曲からそのまま取りました。

そして、色々なところをクロスオーバーさせて書きまくった結果、4万字を越えました()
これで一ヶ月のロスがチャラに(ry

そして次回、本当の本当に、最終回です。
終わる終わる詐欺ではなく、マジです。
どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。


で、今回の話で使用させていただいた楽曲と、楽曲コードについてこの後紹介させていただきますが、少しお話形式で書かせていただければと思います。
Ordinary Daysを読んだ人ならわかると思いますが、あの最後のボーナストラックのような感じです。
では、もう少しだけ、お付き合いください。






Afterglow・帰り道

閉店後─────

ボドゲ会終了後、お店の片付けや清掃などを手伝っている中で、千束から声を掛けられたため、光輝はそちらの方を振り向いた。

「今日やった曲教えて!いい曲ばっかりだったから聞いてみたい!」

自分の好きな曲を、好きな人が聞いてくれると言ってくれるのは、こんなに嬉しいものなのか・・・頑張ってニヤニヤを抑えようと光輝は必死になりながら、その気を紛らわすためにも、取り急ぎ、その辺りにあったチラシの裏に、今日演奏していた曲順、いわばセットリストを書いていく。



(アーティスト名と曲名)
1曲目:The Beatles/Let It Be(使用楽曲コード:0L1-5310-0)
2曲目:ELLEGARDEN/風の日(使用楽曲コード:100-5574-6)
3曲目:ELLEGARDEN/Make A Wish(使用楽曲コード:115-8709-1)
4曲目:エレファントカシマシ/今宵の月のように(使用楽曲コード:051-4167-2)
5曲目:the LOW-ATUS/いつも通り(使用楽曲コード:N01039587)
6曲目:ストレイテナー/ROCKSTEADY(使用楽曲コード:104-9403-1)
7曲目(タイトルにも使用):ELLEGARDEN/Cakes and Ale and Everlasting Laugh(使用楽曲コード:112-1813-4)




「はいこれ。まさか7曲もやるとは思わなかった・・・」
「いやーでも良かったよー!ホントまたやってね!ところでこの楽曲コードって何?」
「あぁそれは気にしないで。書かなきゃいけないやつだから。」
「???」

一部気になるワードはあったが、なんだか聞くとややこしいことになるかもしれない。そう思いそれ以上は聞かないようにし、片付けを再開していく。
そして片付けを終えると、光輝は千束とたきなを見送るため、リコリコのドアの前にいた。

「今日は本当にありがとね!めっちゃ楽しかった!」
「こっちこそ、こんな楽しい時間をくれてありがとね。」
「明日は新宿から帰ってきたら着付け教えますからね・・・それじゃ、また明日。」
「うん。また明日。ゆっくり休んでね!」
「光輝もね!おやすみ!」

また明日と約束を交わし、千束とたきなは店を後にする。



「あー楽しかったー!いつも楽しいけど今日は今までで一番楽しかったかもしんない!」
「ですね。私もそう思いますよ。」

その帰り道、家までの道を歩きながら、2人で今日のボドゲ会兼、光輝のライブについて話し合っていた。
あの曲が良かった、あの光輝へのドッキリに対して、驚いた顔が最高に面白かった、その後一緒にプレイしたボードゲームで、光輝が悉くコテンパンにやられ、常に最下位だったこと・・・思い返してみても、どれもこれもが笑えてきてしまう。

そんな中、千束がたきなに声を掛けた。

「・・・良かったね、光輝と知り合えて。」
「ええ。お店の新しい仕入れ先ですし、忙しい時の欠員要因ですし。」
「いやいや、それもそうだけどさー!もっとこう・・・」
「冗談ですよ・・・また、頼りになる味方が出来るとは思いませんでしたよ。それも、ウルトラマンっていう。」
「だね!リコリスにウォールナット、そしてウルトラマンネクサスを仲間に引き入れたリコリコに敵なし!」
「何でもかかってこい、ですね。」

彼女達に、新しい友達であり、世界一頼りになる、頼もしい仲間が出来たことを心の底から喜んでいた。

そんな中、ふと、同意を求めるわけではないが、千束はボソッと呟いた。


「・・・なんか、光輝の話ばっかだね。」
「・・・ですね。不思議ですけど。」


今日は初めて会った人も多かった。色々な人と話をし、それこそ源田法律事務所の3人や、クルミがウォールナットとして活動する中で、インターネット上でだがよく見かけたという九十九とも会話をし、仲良くなった。

けれど、2人の話題は先程からずっとそうだったのだが・・・"何故かは自分達でもわからないが、この帰り道の話題は、終始光輝のことだけだった。"
他の人の話題を出そうというわけでは決してなく、自然と、彼のことしか浮かばず、彼について話をしていたかった。



ただ、今2人が抱えているこの感情を、何という言葉で呼ぶのか。
それに類する言葉は、ある。

この感情を表す言葉に気付くのは、もう少し先


─────かもしれない。


使用楽曲コード:05141672,0L153100,10055746,10494031,11218134,11587091,N01039587

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