+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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(これはCMです)



夏はリコリコ展!
大迫力の展示や千束とたきなのガイドで、リコリコの世界へ、飛び込もう!

ウルトラマンブレーザーはもちろん、様々なウルトラヒーローがステージに毎日登場!
俺達、SKaRDのメンバーもステージに登場!

池袋サンシャインシティ松屋銀座で、待ってるぞ!



※ウルトラヒーローズEXPO 2023 サマーフェスティバルは池袋サンシャインシティ 文化会館ビル4F 展示ホールB
リコリス・リコイル展 ~seize the day~は松屋銀座8階イベントスクエア
同じ場所で開催されてはいないためご注意ください。
リコリス・リコイル展にウルトラマンブレーザーもSKaRDメンバーもウルトラマンネクサスもですが、ウルトラヒーローは出ません。逆も然りです。








働く喫茶リコリコの昼ごはん。それが─────リコメシ


おー美味しそうなお弁当!彩りも華やか!
聞けばこのお弁当、なんでも最近このお店に入った新人さんが作ったまかないなんですって!

「いやホント、めっちゃ美味しいです!」

このお店の看板娘だという女の子も大絶賛!いやしかし凄い髪色・・・


で、このお弁当を作っている子というのは・・・


「いやホント、量多くて凄い大変でしたよ。朝からてんてこまいです。」


なんと、高校生の男の子!
こんな子が作るお弁当、気になりません?

というわけで本日は、錦糸町にある、この、隠れ家的喫茶店のお昼を、覗き見しちゃいまーす!


喫茶リコリコに、昼が来た!




My Summer Vacation
リコメシ シーズン1


とある日─────

午前5時30分

 

夏場ということもあり、太陽が昇るのも早い。

毎日暑くて嫌になるが、この夏場の早朝の空気というのは、意外と嫌いじゃない。

夏ならではの空気を鼻で吸い込みながら、ジャーと、水道から水を流し、先程まで農作業という名の、土いじりをしていた手を指先までしっかりと洗う。人にご飯を出すということにおいて、衛生環境は最も大事だ。だから事前にシャワーも浴びた。とはいえ、汗をかいてるからサッパリしたいという目的があるからなのだが。

 

土いじりからシャワー、それからの・・・お弁当作り。

この早朝の一連のルーティーンワークも、もう3年目だ。

 

1度目は石鹸をつけて。2度目はアルコール消毒液を手に念入りに揉み込んでから、水洗いで流す。

シャワーも浴びて手も綺麗になっているため、必要十分かもしれないが、これまでお弁当を作り出してから食中毒を出したことは一度もない。

なので、この手洗いが、人の体調を左右するかもしれない・欠かすことは出来ないと勝手に思っている。

 

もちろん、お弁当を作り終わった後でハンドクリームを塗るアフターケアも欠かさない。なのでウチは俺が一番ハンドクリームの消費が早いという余計な情報も追加しておこう。

 

だが、今回のお弁当作りは違う・・・何しろ、今から作るのは、親の分のお昼と俺の分・・・だけでない。

 

 

新しいバイト先のお世話になっている大人の皆さん方。そして、少し口が悪いけど、心の底から信頼している友達にも持ってくため、今回は全8人前だ。

 

 

いったい俺はいつから仕出し弁当業者になったのか?そして、これからこれが毎週1回は起こってくると思うと頭が痛くなってくるのだが、一旦それは置いておこう。

何しろこれが、あのお店に持っていく、初のまかないだ。そりゃ、気合いも入るというもんだ。

けれど、作るものはとてもシンプルなものなのだが。

 

早速本日のお弁当を作るため、戸棚から大鍋を取り出し水を張り、コンロに置き火にかける。沸くまでには少し時間が掛かるから、その間に昨日作っておいたゆで卵の殻でも剥いて飾り切りをしよう。それが終わったらさっと薬味を切ってしまおう。

こうした、料理の手順を考える時間は、実は意外と嫌いではない。急いでいる時には尚のことこれが重要になる。

とはいえ、あまりにも時間が無い時は冷凍牛丼の具をチンしてご飯にかけてはいこれ弁当!って渡すこともあるんだけれど・・・でも言う。市販の牛丼はめちゃくちゃ美味い。大正義。

 

「・・・喜んでくれりゃいいけどね。」

 

逸る気持ち3割、どのような評価を下されるかわからないという不安7割のお弁当作りがスタート。

今か今かと沸騰するのを待ちながら、冷蔵庫からボウル一杯のゆで卵を取り出そうとする。

 

と、その前に・・・

 

「・・・イヤホンイヤホン、っと。」

 

机に置いてあるワイヤレスイヤホンを手に取り、スマホに接続する。

有線・無線共に持ってはいるが、料理の時には有線より無線の方がいい。ただ、有線でなければパソコンに繋がらないなどあるので、どちらもどちらで欠かすことが出来ないアイテムだ。

 

さて、今日の朝のBGMは何にしようか。いつも通りストレートなうるさいロックにしようか。いやインストもいいな、カントリーも悪くない。アコースティックなのにでもしようかな。なんならよくあるMorningなんちゃらみたいな、サブスクリプションサービスによくある洋楽ばかり並んだプレイリストでもいいかもなと、朝のBGM選手権を脳内でスタートさせる。

 

「・・・あっ、そうだ。」

 

そんな中、あることを思い出した。

以前、これイイよ!と、彼女がよく聞いているというアーティストさんをオススメされていたのだ。

それを聞いてみるのもいいかもなと思い、サブスクリプションサービスでそのアーティスト名を検索して、たまたま一番上にあった楽曲を再生してみる。

 

 

 

『願った 勇敢な選択の 未来を今照らしてく』

 

 

 

「・・・いい曲じゃん。」

 

普段は聞かないアーティストの音楽をお共に、弁当作りを始めていく。

メニュー含め、今日はいつもと違う一日になりそうだ。

 

 

 

錦糸町─────喫茶リコリコ

 

「ありがとうございましたー!」

 

すっかり真夏、という日々が続き、30度越えの日も多くなってきた。

そんな今日、喫茶リコリコは活気に溢れていた。

 

特に、新作のはちみつレモンのソーダが、この猛暑の8月ということもあってか、飛ぶように売れていく。おまけにここでは初となる炭酸飲料とのことだ。やはりこの季節、スカっとしたいからか、炭酸が飲みたくなる気持ちはよくわかる。

 

それに、レパートリーも増やし、普通のものからイチゴ・ブルーハワイ・レモン・グリーンアップル・カシスという全6バリエーションも作ってみた。言わずもがな、ノーマル以外は、皆さんの制服の色モチーフだ。銀のシロップなんてあるわけないから俺はなし。

 

シロップだからそこまでお店のコストにもならないし、ファーストフード店でもこういった色違いの飲み物を出していると思い出して提案してみて、作ってみた。そしてたまたま店内にいた常連さんにも試作品として見せたところ・・・これが、エッらいウケ、そして、映えた。

おかげさまで、毎日作っても、お店が閉まる頃にはストックが無くなるくらいには、出せば出すだけ売れるレベルだ。

 

ウチで作っているものが形を変えているとはいえ、これだけ売れ、そして多くの人に喜んでもらえるのは、一重に作った人間として嬉しい・・・のだが、道の駅よろしく、顔写真付きで私が作りました!というのをメニューに入れるのはどうかと思った。いや今も思っている。恥ずかしいったらありゃしないし、正直、今だって嫌だ。何度も何度もダメだと言いまくった。

 

では何故、そうして散々NOを叩きつけた俺が許したのか。その決め手は・・・

 

 

―ぐすっ・・・喜んでくれると思ったのに・・・ひどいよ・・・光輝のばか・・・うえぇん・・・―

 

 

・・・99%嘘だと思う。いやそうなのだが。

 

あんな業務中に泣くポーズを店内で見せるのは、店内全体を味方にしているようなものだ。

これではもう、一人俺が敵となってしまった。なのでダメだと到底言える空気感ではなく、渋々OKを出した。これが、OKを出した理由だ。

 

 

ちなみにわかったと言った数秒後すぐ顔が戻ったのでより腹が立ったのは言うまでもない。

 

 

「いやー!さすがウチの契約先農家!喫茶リコリコの売上の救世主!よっ日本一!」

 

そんなことを思い出していると、腰をバシバシと叩く、例の主犯である千束に、痛い痛いとツッコミを入れる。

 

「・・・試作飲んだ時も美味しかったけどさ、まさかこーんなに売れるとは思わなかった・・・それに、まさかこーんなにここで働かされると思わんかった・・・」

「夏休みなので駆り出すのは当たり前じゃないですか?」

「たきなさん、何度も言ってますけど、こちとら農家で養蜂家で別のバイトもしてるからね・・・?忙しいのよこちらも・・・」

「まぁまぁそう言わないの!お店は繁盛するし、光輝の家の売上にもなる!お互いウィンウィンでしょ!それに何よりも!光輝は私達にも会える!こんなに素晴らしいことないし、どっちにとっても、ありがたいことですねぇ!って思わないの!?」

「・・・怒られそうだから、はいそうです。とだけ言っておくわ・・・」

 

 

銀、いや先日貰った灰色の・・・この喫茶リコリコ仕様の制服に身を包んだ俺、真田 光輝は、準レギュラーレベルでこの8月、喫茶リコリコで働かされていた。

 

 

この時期の高校3年生は夏期講習でそれどころではないのはわかっているが、すでに家業を継ぐ、というか父親と共にやっていこうと高校に入る前から決めていたため、ハナから大学進学する気はなかった。だから、受験戦争とは全く無縁だ。

周りの皆大変だとは思いつつも、その神経を逆撫でさせないよう、学校では大人しくしていた。まぁぼっちがうるさくすることなんてないんだけど。

 

そんな夏休み期間、養蜂家や農家としてやることも沢山あり、かつ、ナツばあのバイトもあればもちろん宿題もある。そんな中で、この喫茶リコリコというバイト先が増えた。

 

ただ、それらもあるが、それ以上に何よりも俺は・・・今や世界中の誰もが知っている、ウルトラマンネクサスその人でもある。もちろん周りに言いふらすなどしないが。

ザ・ワンを倒してからしばらく経ち、ビースト出現の頻度も大幅に減ったが、まだネクサスは俺の元にいる。

 

 

ということは・・・"この先また何かが起きるかもしれない。”そんな予感を感じさせる。

 

 

そんな不安や諸々やらなければならないことが沢山あり、この夏はやることが多いな・・・そう思っていた中でふとある時、TALKのグループでたきなからこうメッセージが来た。

 

 

"夏休みですから、リコリコ、もっと出れますよね?この時期は学生も平日来るので、少し忙しくなるのでお願いしますね。"

”Pardon?”

 

 

理由を説明して断ろうとしてもこういう時の2人の押しの強さは半端じゃない。おまけに、OK言わなきゃネクサスだということをバラすぞ!という脅迫もされた。

こいつらマジなんなん・・・?本当にこの2人俺の恩人なんだっけ?というか俺好きなんだっけ?いややっぱ違ったかもなぁ・・・パートナー関係辞めてぇ・・・と、口には出さないがずっと頭を抱えていた。

 

というわけで、リコリスからの脅迫

 

 

「光輝何か言った~?」

「何か言いましたよね?」

 

 

・・・失礼。喫茶リコリコの看板娘のお願いに負けてしまい、向こうの金銭面の負担にならないことや、行き帰りの交通費などを考え、多くても週3回までならまぁ、入れる・・・とOKを出してしまった結果、更に大車輪のように毎日が目まぐるしくなった。

 

それとこの制服、完全にジャストフィットしててびっくりしたのだが、俺の身体情報をクルミさんお得意のハッキングで取り出し、それを基にここの制服を作っているという知り合いの店に頼んで作ってもらった・・・というのだ。

ありがたいことに、エボルトラスターを収納出来る裏ポケット付き。さすがにブラストショットは入れるわけにはいなかったが・・・とはいえ、カバンにブラストショットを持ち込めるようになっただけ良しとしよう。

 

なので・・・あの日限りのヘルプから、完全に喫茶リコリコ6人目の店員となってしまった俺の安寧はこの夏、ほぼない。朝から晩までフル稼働だ。夏休み以降も、毎週末はここに出向する未来が見えている。

ミカさんをはじめとした皆さんの気持ちは重々承知しているとはいえ、往復3時間はなんだかんだヘビーだ。

というより、ストーンフリューゲルあんだからそれで帰れ!ネクサスになって帰れ!とも言われた・・・そんなポンポン使えるかい。

 

 

ただ、とはいえ、制服を貰った翌週、正式に働くとなったその日の開店前、念の為、ね・ん・の・た・め、聞いてみたのだ。

 

 

もうやるし、わかってはいるけどさ、本当に働くんだよね?俺本当にいるんか?と。

 

 

そのワードに対して、まだそんなこと言うかー!と、カチンときた千束から思いっきり両頬をつねられた後

 

「だって光輝はウチに必要なんだよ!ほらこれ!」

 

そう言って目の前にスマホを突きつけて見せてきたのは、喫茶リコリコ公式SNSアカウント。

そのアカウントの説明文を見たら、ちょっとそこまでのお届け物から心細い夜道の送り迎えにゾンビ退治・・・ゾンビ退治?

 

それと・・・

 

 

 

 

 

「巨大怪獣・・・?」

 

 

 

 

 

巨大怪獣、とも書かれていた。

 

 

ゾンビ退治からよくわかんなかったが、その後に取って付けたように書いてある、巨大怪獣の4文字。それがビーストのことを指しているのか何なのかよく分からないが、少なくとも、言えることはある。

 

「ねぇ・・・巨大怪獣ってまさか・・・」

「当たり前じゃないですか。光輝はネクサスなんですから。」

「これはネクサスになれる光輝にしか出来ないことでしょ!だからもうリコリコに絶対必要なの!わかった!?」

「そんなゴキブリ退治みたいに言わないでよ・・・ホント、ウルトラマンネクサスを何だと思ってるのよ・・・」

「頑張れよ~、リコリコの怪獣退治の専門家。」

「あっクルミさん、その2つ名実はもうウルトラマンさんが使われてるので・・・僕が使うのはおこがましすぎて・・・」

「・・・そもそも、怪獣もビーストも出ない方がいいのだが・・・」

「右に同じ。」

「ウルトラマンネクサスとして、ミカさんとミズキさんの意見に完全に同意します・・・」

 

 

というわけで、この店の─────対巨大怪獣要員 -ウルトラマンネクサス- として、絶対俺は必要不可欠な存在となってしまった。いや誰に頼まれなくてもやるんだけれども。

 

 

強いて、ナツばあの店のバイトがそこまで人が多くないことや、地元が故癒しになってる・・・のだが、ナツばあがここと少し関係を持って仲良くなり、ここの皆さんの顔を知ってしまった。そのため、千束とたきなとの関係を行く度にやたらと聞かれ、更に店に来る常連のおばあちゃん方もその話を聞いてしまい、最近は日々の様子をひたすら詰められる毎日だ。

いつ付き合うんだだのはよ告白しなだの結婚式は呼びなさいだの早く子供の顔が見たいだなどなど・・・その押し問答で最近は疲れているのが正直なところだ。おばあちゃんパワーは本当に凄い。あんな喋ってたらそうそう簡単には死にやしないだろう。だからこそ、本当に疲れる・・・

 

なので最近の俺は、尽くヘトヘトで、一日が終わる頃には充電が切れるような日々だ。

 

とはいえ、どこも楽しいのもまた、事実だ。

もちろんここも大変だが、もはや第2の家みたいなもので、なんだかんだ楽しいのだが・・・

 

そんなことを思っていたら、その働く初日の仕事中、千束よりこんなことを言われたのだ。

 

 

 

次からまかない、作ってね・・・と。

 

 

 

なんでもリコリコは、定休日以外のお昼は交代制でまかないを各自が作っているとのことだそうだ。

なので、準レギュラーに昇格してしまった俺も、必然的にまかない作り当番の一人に加えられてしまった。

作るものはなんでもいいとのこと。ここのキッチンを使うでも、冷凍食品でもいいとのこと。

 

ただ、その言葉を聞いて、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

だったらお弁当作る、と。

 

 

 

 

 

 

 

そもそも、毎日の高校生活のお昼のお弁当。加えて、母さんのお弁当作りは俺が当番だ。

農家だから毎朝早い。というより、俺が今高校生なので、日中ずっと学校なので作業が出来ないため、代わりにやれるところを早朝に起きてやっているだけなのだが。

 

ただ、朝の作業が終わってから学校行くまでの間、2時間は空きが出る。体も動かしているから2度寝も出来やしない。だったら宿題でもやればいいのかもしれないと思ったが、これが本当に集中出来なかったからすぐにやめた。

つまりその朝の時間、本当に暇だった。

 

だったら・・・と、お弁当を作ればいい時間潰しになるなと思った。そうすることで、時間も潰せる。おまけに、母さんも公務員で大変なので、俺がやればその分寝ていられる。

 

それに、今となっては不純な動機なのだが・・・睡眠時間が削れれば、ぽっくり死ぬ可能性も高くなるのでは、と当時は思ったのだ。でも死ねなかったから今に至る。

 

だから、高校に上がる時にその話をし、もうお弁当作りは3年目になる。

当初は失敗も多かったが、逆に失敗したからこそ、自分のためではなく、母さんと父さんの為に次はいいものを作りたい・上手くなりたいという意識がどんどんと働き、夕飯の手伝いをすることや、自分で料理をする。加えて、お弁当の本などを読み、そして実践・・・でメキメキ上達し、今では母さんが一番の俺のお弁当のファンだ。

なお、父さんは基本家にいるので、そのお弁当の残り物を自分で食べてもらってる。しかし時折要望がある時にはお弁当箱に入れたりはしている。

 

なので、お弁当と、ついでの朝ご飯担当はこの数年、ずーっと自分だった。

だからこそ、この厨房を使うより、勝手知ったる我が家でそのまかないの弁当を作った方がいい。

何よりも、母さんの弁当があるとはいえ、夏休みは俺の分を作る必要がなくなるため、必然的に一食分減る。そのため、この時期の朝は、暇な時間が多くなりがちなのだ。

 

なので、時間を潰す名目も込めてそう言ったところ、お弁当、という言葉に目をキラキラさせ、光輝のお弁当めっちゃ楽しみにしてる!と鼻息荒く近寄ってきた千束の顔と目は今も忘れられない。最初にここに来てハチミツを作っていてそれを持ってくると約束した時と同じくらい、目が輝いていた。

ちなみに、千束だけではなく、他の皆さんも割と期待してくれたので、尚のこと頑張らなきゃならなくなった。

 

 

しかし、一つ問題がある─────距離だ。

 

 

俺はここまで片道1時間半程度。おまけに、リコリコ自体駅からの距離も地味にある。

つまり、この暑さだと、お弁当を持ってきても、腐ってしまう可能性が高い。

 

そう考え、だったら、かねてよりあのレシピ本を見て気になっていた、"アレ"を作ってみようと計画した。

もちろん保冷剤も入れるが、アレならば、合法的に氷も保冷剤も入れられる。というか、保冷剤を入れても全然問題ない。むしろ、冷たきゃ冷たいほど、あいつはいい。

だから、大鍋で大量のお湯を沸かしていたのだ。

 

 

 

そうして時計の短針が1を指して、長針が12を少し回った頃、我慢出来なくなった千束がついに吠えた。

 

 

「光輝ーお腹すいたー!お弁当出せーーー!」

 

 

腹ぺこの看板娘の声が店内に響き渡る。今日のためになんでも朝はコーヒーだけにしたという。そこまで期待されても・・・と、期待に驚いたが、まぁそうするか、とも思えた。

千束のことは、この1か月程度ですでにわかりきっていて、お互い気心知れた仲で、全幅の信頼を置いている、頼りになるパートナーだ。というより、千束だけでなくここの皆さん全員、お互いの表も裏も全部知っているから、気心もへったくれもないっちゃないのだが。

 

「まぁ、時間もちょうどいいだろう。光輝君、頼めるかい?」

 

ミカさんからそう言われ、わかりましたと俺は厨房の冷蔵庫を開け、少し大きい重箱を6つ取り出した。

一つずつ中蓋が付いているタイプなので、セパレートで冷蔵庫にも入れやすく、おまけに少し大きい。

 

実はこれは、ナツばあから使わなくなったからと譲り受けたものだった。少し前のバイトでこの話をした際、少し店空けるよ!と家まで戻って探してくれたのだ。

いっぱい作ってあげな!胃袋からハート掴んできな!と言って渡してくれたのだが、最後の一言は余計なお世話だ!と突っ込んだとも付け加えておく。

 

・・・とはいえ、そりゃ俺だって重箱6つは多いと思った。

しかし、この人数分のまかないを作るとなったら、これくらいは必要だと思った。実際、ものの見事にその予想は当たった。大は小を兼ねる、とはよく言ったものだ。

 

ただ、電車内で高校生が3段の重箱を2つ、手提げバッグに入れているとはいえ、両手にそんなものを持ってるのは他の乗客から不思議がられたが、もうそこは我慢した。

後はなんとかラッシュの時間に巻き込まれさえしなければと思っていたが、幸いすぐに座れたため、ご飯の安全も確保出来たのは救いだった。

 

と、話が逸れたが、それを取り出し、更に奥からタッパーを人数分取り出した。100円ショップで買った、少し小さめのタッパー。そのどれもが冷え冷えで、中には"赤茶色の液体が半分以上入っている。"

ここに来る前に溶けはじめているのもバッグの中から確認したのだが、今こうして確認してみても、まだ少し凍っているところもあるが、それでもいい。期待通りすぎて内心喜んでしまった。

 

とはいえ、果たしてこれで喜んでくれるかは未知数だが、朝味見もした。味は問題ないはずだ。

 

 

「お待たせしましたー・・・本日の、まかないでーす・・・」

 

恐る恐る持っていくと、すでに座席席には千束、そしてミズキさんとクルミさんが座して待っていた。そこまで期待されても・・・と思ったが、それまでこの店にいなかった奴が作るご飯だ。期待もされるか。

 

「キターーーー!!きたきたきたきたきましたよー!とんでもねぇ待ってたんだ!」

 

まだ中身を見せていないにもかかわらず、千束は大喜びしているが、もう途中からおかしくなっている・・・いや多分映画のセリフか何かだろう。とりあえずテンションMAXの千束をどうどうと落ち着かせる。

 

とりあえず重箱6つをちゃぶ台に乗っけるが、それだけでテーブルは渋滞だ。そんなことはわかりきっていたが、それもやむなしだ。

 

それに、実は作る前から考えていた。

ここは、まかないを常連さんもおこぼれ的にいただく。というか千束のお遊び的なまかないを常連さんにあげるということをしているの、以前クルミさんからチラリとそんな話を聞いていた。

 

 

だから言うと─────”6人前と言いつつ、その実もう少し量は多いし、そのためのつゆも少し多めに用意した。”

 

 

そんなことを思いながら、つゆの入ったタッパーを3人に配膳していく。

 

「・・・これ何?つゆ?」

 

タッパーの中身を疑問に思っていた千束にそうだよ、と返し、重箱の蓋を開けた。瞬間・・・

 

「おおおおおおおえええええええっ!?」

 

千束の絶叫が店内に響いた。それもそのはずだろう。俺だってわかっていた。

これ、弁当で持ってきたら驚いてくれるだろうな・・・と。

 

「うっそだろ・・・?」

「これ、弁当に出来るの!?」

 

ミズキさんもクルミさんも驚いている。当たり前だ。何しろ・・・"米じゃない。麺類だからだ。"

 

そんな今日のまかないのお弁当を、千束が目をキラキラさせながら、俺の代わりに答えてくれた。

 

 

「そうめんだーーーー!すごーーい!」

 

 

そう、俺が作っていたお弁当は─────そうめんだった。

 

 

 

何を作ってくるか、ちょっとしつこいくらいに聞いてみたけど当日まで内緒、とずっと言われ続けていた。

だからまず、店内に入ってきた時驚いて、思わず聞いてしまった。

 

「それ・・・お弁当?」

「そうだよ?めっちゃ疲れた・・・」

 

重箱を両手に抱えて入ってきたので、ピクニック行くんじゃねぇぞ?と一瞬思ったが、私達のためにわざわざこんな量を作ってきてくれたのは、本当に嬉しかった。

中身はお昼までのお楽しみと言われ絶対に見せてくれなかったが、こんなに作ってくれたのだ、きっとこの中身は凄いものが入っているはず!いや間違いない!と確信した。

 

そして満を持してやってきたランチタイム。今か今かと心待ちにしていた中で、まず手渡されたタッパーに入った赤茶色の・・・麺つゆにえっ?となっている中で、蓋を開けてくれた瞬間、思わず叫んでしまった。

 

「そうめんだーーーー!すごーーい!」

 

中には十割そばのように綺麗に一束ずつにまとめられたそうめんがぎっしりと並び、その上にはゴマや茗荷、刻み生姜に大葉にしその実。小さく切られたミニトマトや、黄色が鮮やかな錦糸卵がランダムに乗っているため、見ようによっては、まるでちらし寿司のようにも見えてくる。

更にその脇には飾り切りされたゆで卵も鎮座している。黄色い丸々とした黄身はそのままに、白身部分がジグザグに飾り切りされたゆで卵の隣には、その残り半分であろう白身の真ん中に、ポンと赤い黄身・・・ではなく、プチトマトが黄身の代わりに収まっている。

映えというのはこのことだと素直に思ってしまうほどに、こんなキレイなそうめんは初めてだった。

 

「あ、ちなみにトマトと大葉はウチのやつね。」

 

さらっと言っているが、まさかそこまで自家製だとは思わず、おおー!と思わず声が漏れてしまった。

次々蓋を開けていき、4箱開けた段階で全て同じようなそうめんであり、6人も食べるので量があるに越したことはなく嬉しいが、まさか全部そうめん・・・?と思っていたら、残り2つの重箱の蓋を開けると、またもやサプライズが飛び込んできた。

 

「えっ!?なにこれ!」

 

2つの内の一つは、緑色の丸いものが重箱一杯に並んでおり、もう一つは、ベージュ色のペーストが塗られた丸いものが所狭しと並べられていた。これはまさか・・・!?と期待を込めて、光輝に聞いてみた。

 

「これ、おはぎ!?」

「そう、おはぎ。もちろん手作りだよ。ただ、おはぎは各種一人一個までね。その代わり、少し大きく作ったから。」

 

残りの2段は、おはぎがずらっと並んでいた。

 

そうめんとおはぎ。

これが、光輝の初のまかないであり、私が初めて食べた、彼のご飯だった。

 

 

 

よかった、とりあえず驚いてくれた。まずは見た目からのサプライズ成功だ。心の中でホッと一息。

 

ミズキさんもクルミさんも驚いてくれてるし、千束の声を聞いてたきなとミカさんもこちらまでやって来た。加えて、常連さんもぞろぞろと集まり出してきた。

内心、でしょうなぁ・・・と苦笑いしていると、たきなが声を掛けてきた。

 

「光輝・・・これ、全部自分で作ったんですか?」

「そうだよ。どうせ朝は毎日時間あるし、今は夏休みだから余計時間もあるから。とはいえ、おはぎは昨日のうちから仕込んでたけど。」

 

はぁ・・・と、たきなもポカーンとしている。まぁそりゃそうだ。そうめんなんて普通弁当にするとは思えんよなぁ・・・そう思っていると、常連さんの方々が次々に声を掛けてきた。

 

「ねぇ光輝君!このおはぎ何!?」

「あっ、はい。緑色の方はずんだのおはぎ。ベージュの方はその・・・クルミさんがいるので、くるみのおはぎ、です。」

「へぇ~、ボクがいるから、ねぇ。共食いさせようってかー?いいぞーその心遣い。最高だ。」

 

箸をこちらに向けるクルミさんにあはは・・・と苦笑いを浮かべながらも、ささ食べて食べて!と声を掛け、食べるよう催促させる。食べてもらうために出したのだ。見た目は良くても味の感想を言われなければこちらも落ち着かない。

 

 

 

 

「待ってましたー!いただきまーす!」

 

催促され、早速私は一束のそうめんを箸で掴んだ。

一束ごとに纏められているため、そうめんにありがちな麺がひとかたまりになって取りずらい、ということがない。逆にこうして一束ずつになってまとまっているから、むしろ取りやすい。お弁当箱、まぁ今回は重箱だけど。そのようなものに入れるということで、麺をほぐすことが難しいから一束ずつにしてるんだろうなぁと思いながらも、本日の朝ご飯はコーヒーだけだった空腹の体の前にはそんなあれこれ考える余裕もなく、麺つゆに入れてほぐすと、つるっと小気味いい音と共に口に流し込んだ。

 

程よい麺つゆの塩味。暑い今日にピッタリの軽いのどごしと食感。上に載っていたゴマとしその実、そして噛むとやってくる錦糸卵の甘さ。何よりも、酸味よりも甘みの方が強く感じるトマト。

暑い中で空腹で朝から働いていたから、いつもより疲れていた体に全てがちょうど良い。

 

「ん~!美味しいー!やっぱ夏はこれだねー!後トマトめっちゃ美味しい!あっっっまいよこれ!これ光輝作ったの!?」

「そうだよ。あのね、これはトマトの習性なんだけど、水を与えないほどトマトって甘いものが出来るんだ。ただ、その分収穫まで色々と大変なんだけど、どっか出荷するわけじゃないし、あくまでウチで食べる用にしか作ってないから失敗してもいいんだけどね。」

「へーそうなんだ!ただめっちゃ美味しいよ!これウチにも送って!」

 

いっぱい獲れたらねと苦笑いを浮かべていると、いつの間にか手に持っていた紙皿をこちらに渡してくれた。

 

「光輝君、わざわざ紙皿まですまない・・・店のものを使ってくれても構わないんだよ?」

「いえいえ、この方がすぐに捨てられると思いますし、洗い物も増えないかと思いまして・・・あっ、今日ウチから持ってきたものは全部帰ってから洗いますので。」

 

センセと光輝が紙皿を持ってきたことについて喋っている。洗い物が増えることを見越して、あえてパッと捨てられる紙製の容器の方が、時間も削減出来ると思いわざわざ持ってきてくれたのだろう。

おまけに、自分の持ってきたものはちゃんと持って帰って洗うと言っている。そういった迷惑をかけないようにするところが、いかにも光輝らしいが、そこまで気を遣わなくてもいいのに。

 

 

 

でも、そういうところが、私は好きなのだけど。もちろん人として。

 

 

 

そんなことを思いつつ、ずんだとくるみのおはぎを一つずつ紙皿に乗せ、まずはずんだのおはぎから食べることにした。

 

粗めに刻まれた枝豆の食感と、旬の食材ならではの新鮮でフレッシュな味わい。大げさでもなく、控えめでもない甘さながら、そうめんという塩っ気のあるものの後に食べることで、単品で食べるよりも一層甘さを感じられる。あるいは、冷たいからこそ、より甘さが引き立っているのかも。

そして、少し柔らかめに炊かれたもち米の食感も良い。つまり・・・

 

「おいしーーー!」

 

このおはぎの感想を一言で言うならば、この言葉に尽きる!

 

さらに箸の手を止めず、くるみのおはぎも一口かじってみる。

枝豆とは違う、木の実ならではの濃厚なくるみの味わい。ねっとりとペースト状になったくるみを纏ったおはぎの上には、荒く刻まれたくるみも乗っている。

こちらもまた、控えめすぎず、くどすぎない適度な甘さながら、くるみ自体の本来の味わいも残そうとしているのか、先ほどよりは甘さは控えめに感じる。

だが、それが絶妙なバランスであり、加えて上に乗っているくるみの香ばしさも相まって、こちらもまた美味しい。

 

 

いつもの皆が作ってくれるご飯も好きだが、こうして新しく出来た友達が作ってくれるご飯。最初はお弁当と言われた時は意外だったけど、こうして作ってくれたものを食べてみてわかった。

 

 

私は・・・たった数口で、胃袋を掴まれた。

 

 

「最高!どっちのおはぎもおいしい!もうずっとこれでいい!」

「ありがと。まぁでも、何度もは飽きるだろうから、また次は違うものにするよ。」

 

そうやってはにかみながら微笑む光輝を見ていて、やっぱり友達になってよかったと思う。

 

こんなおいしいものを作ってくれて、お店に使える食材まで作ってくれてて、それを提供してくれる。

加えて、こうして店にも問題なく馴染んで、おまけに売上にも貢献してくれる。業務中でも他の皆よりもからかいがいがあるし、何よりも、一緒にいると楽しいし落ち着く。たきなも落ち着くけど、こちらはまた違う。何というか・・・まぁいいや。

 

それもあるけれど、何よりも・・・光輝は、私とたきなの命の恩人だ。その恩は絶対に忘れない。

けど、皆を守るヒーローなのに、いやだからか。誰よりも繊細で、心を痛めやすいから、ほっとけない。

 

だからこそ、全てひっくるめて、そんな人間、逃すのは惜しいし、逃してはならない。

あの時、絶対に別れない判断した私、グッジョブ!

 

それに、光輝だけじゃなくて、食材を作ってくれるご両親の憐さんと瑞生さんもとってもいい人だ。まだ一度しか会ってないが、もう仲良くなったし、あんな人柄だからか、早くまた会いたいと思っている。

あんな素晴らしいお父さんとお母さんに拾われたから、光輝はこんないいやつになったんだろう。そういう意味でも、感謝しかない。

 

そんなことを考えながら、飾り切りされたプチトマトが黄身の代わりに入ったゆで卵に箸を伸ばした・・・ら、ヒョイとそれは取られた。

 

「・・・確かにこれ、めっちゃ甘いですね・・・」

「あーーー!たきなそれ私が食べようとしてたやつーー!!」

「早い者勝ちです。」

 

 

 

よかった、味の方も喜んでくれたみたいだ。

ミズキさんもクルミさんも美味しいと言ってくれ、いつの間にかたきなとミカさんも座って食べてくれている。

おまけに、かなりな頻度で皆さん美味しいと言ってくれ、リコリコの皆にも好評なようで一安心しつつ、周りにいる常連さんにも紙皿と割り箸を配っていく。

 

「あの・・・もしよろしければ、おはぎどうぞ!多めには作ってありますので!それに、少しだけですし、2人で一つとかになっちゃいますけど・・・つゆの余りもありますので、よかったらそうめんもどうぞ!」

 

そう声を掛けると、常連さんも待ってました!と言わんばかりに、おはぎやそうめんに手を伸ばす。

元々これを見越して多めに作っていた。というより、多分皆気になるだろうとも思っていた。ならば、多めに作って皆で食べた方が、楽しいだろうと思って、おはぎもそうめんも少し多めに作っていた。

あちらこちらから箸が重箱にへと伸びていき、口に入れた方々の多くが、お世辞抜きに美味しい!と口を揃えて行ってくれている。この喜びは、何にも代えがたい。料理というのは、本当に最高なコミュニケーションだと思う。だからこそ、料理にこんなハマったのかもしれないな。

 

「光輝君!これどうやって作ったんだい?こんなお弁当初めて見たよ!自分で考えたの?これ、どうやって作ったんだい?」

 

常連さんの一人である山寺さんからの質問に対し、いえいえ、そんなわけないですよと苦笑いを浮かべながら、このお弁当について説明していく。

 

「これ、俺が買ったお弁当のレシピ本に載ってたんです。まず、そうめんをちょっと固めに茹でて、しっかり洗う。そうすることで麺同士がくっつかなくなるんですけど、それでも塊になるのを防ぎたかったら、少し油を垂らして混ぜれば尚のことくっつかなくなります。今回は念の為そうめんに亜麻仁油かけて混ぜてます。」

「亜麻仁油・・・何お前?女子なのか?OLか?」

 

ただの男子高校生です・・・後亜麻仁油はお中元の貰い物で使い道がなかったからです・・・とクルミさんにツッコミを入れた後、更に作り方を説明していく。

 

「それでフォークを使って1つずつ束を作ってお弁当箱に並べたら、刻んだ薬味を一束ずつ乗せて、後は飾り切りしたゆで卵を袖に置いたら完成です。で、麺つゆはあらかじ冷凍室で凍らせといて、持ってく前にタッパーとかに入れとくことで、液体もこぼれないでかつ氷代わりにもなるから、この暑い夏でも腐らないし、食べる頃・・・まぁ今回は着く頃なんですけど、その頃にはちょうど氷が溶ける・・・っていう。」

 

まさかそこまで計算されてやっているとは思われなかったのか、常連からもおぉっ・・・!という驚きの声が口から零れる。

 

「えっねぇねぇ光輝君!いつも自分でお弁当作ってるの!?」

 

さらに話を遮るかのように、常連さんの一人である北村さんも話しかけてくる。

 

「あっ、はい。そうですね。農家なんで朝早くて、朝の作業終わってから学校行くまでの間暇で、だったらお弁当作ればいい時間潰しになるなと思って。母さんも公務員で大変なので、だったら俺がやればその分寝てられるよな?って思って、いつも2人分作ってます。父さんは基本家にいるので、まぁそのお弁当の残り物を食べてもらってますけどね。なので、お弁当と、ついでの朝ご飯担当はこの数年ずーっと自分ですね。」

 

えっっっら!いい子すぎない!?息子にこんな子いたら泣いちゃうんだけど!と、またもや常連さんが盛り上がる中、同じくミズキさんも話しかけてくる。

 

「女子力たっっっっか!家庭力たっっっっか!楽器も弾けて歌えて料理も出来てお弁当まで作ってくれるって・・・光輝君、今のところモテ要素しかないわよ?」

「ミズキさん、それでモテるほどこの世は甘くないです・・・俺がモテるのは農業組合のおじさんと向こうの常連のおばば様方だけです・・・」

 

その話に苦笑いを浮かべていると、あの・・・とたきなが恐る恐るといった様子で、声を掛けてきた。

 

 

「光輝、食べないんですか?」

 

 

えっ?とその言葉に疑問を持ち、テーブルを見てみたら・・・ものの見事に、完売御礼、という立札が付くほどに、重箱はキレイに空っぽだった。

 

「・・・あー・・・まぁいいよ。朝っぱら味見したし朝ごはんも食べたし。」

 

味見は本当のことなのだが、まぁ食べれなかったのは仕方がない。とはいえ、正直なことを言えば少しおなかは空いているが、まぁ、なんとかなるだろう。最悪、ここにあるプロテインでも・・・

 

「光輝」

 

と、そんなことを考えていると千束から呼ばれ、ん?と振り向いた瞬間

 

 

「あーん」

 

 

ぱくっと、口に何か入れられた。味からしておはぎなのはわかる。

驚く俺の目の前には、紙皿を片手に持って箸を俺の口元に近付けている千束がにししっと、いたずらっぽく笑っている。

 

ただ、咀嚼しながらではあるが、あることに気付く。

 

今こうして食べているおはぎ・・・これは・・・つまり・・・

 

「お、おま!?」

「ちゃんと食べなきゃダメだよ?あ、これは新しい箸だからねー!それと、おしゃべりに夢中になってて食べないかもって思って一個持ってったおはぎだから!おいおい光輝、まさか間接キスとか期待したのか~?スケベなやつだな~?」

 

まるで悪ガキのように口元に手を当て、悪そうな笑顔を浮かべる千束。本当に・・・こいつは・・・!

 

「えーちょっと千束ちゃん!そんなことするなんてやっぱ光輝君彼氏じゃーん!」

「違う違うー!こんなバカが彼氏とかまっぴらごめんでーす!だったら私はたきなが嫁か旦那に欲しいでーす!」

「ちょっと千束!?」

 

飲み込んでから怒ろうと思ったのだが、そんな気持ちを知ってか知らずか、相も変わらず、いつものにぎやかな会話が続いていた・・・口いっぱいに入ったおはぎを飲み込むと、苦虫を嚙み潰したように呟いた。

 

 

「・・・こいつ、ほんとにきれぇだわ・・・!」

 

 

 

そしてまかないという名の、慌ただしいお昼が終わり、いいと言っていたのだが、そのくらいはやっていきなさいとミカさんから言われたため、家から持ってきた重箱とタッパーを、ちさ・・・いやからかい上手の錦木さんと洗っていた。もうこいつは今後これで呼ぶくらいでちょうどいい!

俺が重箱を洗っている隣で、からかい上手の錦木さんは洗ったものを専用の食器拭き用の布で拭いている。

 

「光輝、何か怒ってる?」

「別に?」

「怒ってんじゃ~ん。おいおいこのこの~。」

「うるさいこのからかい上手の錦木さんめ!」

「おっ、褒めてんのか~?」

 

褒めてない!と怒りながら返すと、俺は洗い物を再び再開した。おのれこの・・・

 

 

「でも、すっごく美味しかったから、また作ってね!」

 

 

・・・先程まで怒っていた一瞬で、気持ちが落ち着く。

なんだかんだとからかわれながらも、とはいえ、そんなことを言われて、嫌なわけはない。友達から・・・

 

 

・・・"好きな子から、俺が作ったものを美味しいと言われたら、そんなの当然、嬉しいに決まってる。嫌なわけがない。"

 

 

「・・・まぁ、持ち回り制だからね。そりゃまた作るよ・・・で?」

 

で?と聞かれたからか、千束は頭に?マークを浮かべている。

 

「・・・リクエストあれば、作るよ。まぁ、ちょっと今の時期距離的に温かいものとかご飯は難しいからあれだけど、なんか食いたいものあったら頑張るよ。」

 

その言葉を理解すると、パァッと顔が綻んでいき、満面の笑みを浮かべながら、やったー!と叫んだ。

 

「さっっっすが!それでこそ私の友達!えーどうしよっかなー何にしよっかなー・・・」

 

隣で食べたいもののリクエストを考え始める千束にやれやれ・・・と思いながら、今日使っていた重箱とタッパーを洗うのを再開していると、たきなもまた、仕事が一段落付いたのか、裏に入ってきた。

 

「あの、聞きたかったんですけど、今日そうめんとおはぎにした理由って?」

「まかないでもパッと食べられるから。暑い時期には食欲も落ちちゃうし、こんな時期だしそうめんはピッタリだと思ってね。でも、それだけじゃお腹空くと思って、だったらおはぎなら冷たくても美味しく食べられるし、腹持ちもいい。それに、冷やしとけばより保冷剤代わりにもなると思ってね。それに、そうめんだけよりも見た目も華やかになるし。」

 

そう。俺が今日この2つをメニューに選んだのはそれが理由だ。

 

そうめんはこの時期にピッタリだし、つゆを凍らせれば保冷剤代わりになる。おまけに、おはぎは冷たくても美味しい。ご飯だから腹持ちもいいし、しょっぱいと甘いのバランスもいい。

それに、2色別のものが入ることで、見た目もより華やかになる。

 

正直、ここにおはぎを持ってくるなんてナメてんのか?とレシピを考えながら思ったが、お店と家庭で違うから・・・と自分で落とし所をつけたのだが。まぁ皆さん、お世辞抜きで美味しいと言ってくれたのは嬉しかったけれど。

それに何より、まかないとはサッと食べるようなものだと思っている。おはぎもそうだが、そうめんも一束状にしているので、これならパパっと食べられると考えたからだ。

 

そんな話をしている中、こちらも実は個人的に気にはなっていた。もう一人の友達でありパートナーの、たきなからの評価だ。

 

「その・・・たきなはどうだった?美味しかった?」

 

そうですね・・・と言いながら、目をつぶった。え、何言われるの?怖いんだけど。

 

 

「美味しかったですよ。味もそうでしたけど、私達のためを思って、時間をかけて作ってきてくれたんだって思ったら、その気持ちと思いやりが一番嬉しかったですよ。」

 

 

しかし、そんな心配は杞憂だった。

 

優しく微笑みながら、今日のまかないの感想を語ってくれる彼女。正直、この笑顔が毎度毎度凄い。何度見ても見慣れないほどの破壊力がある。こんなもん見せられたら耐性のない男は死ぬし、絶対勘違いされるやつ。友達になってわかったことだけど、これ、絶対無意識だよな・・・

 

そんなことを毎度思うのだが、今や友達でありパートナーであり、そして・・・"もう1人の、好きな子からも美味しかったと褒められるのは、とってもとっても、嬉しい。"

 

ただ、ニヤニヤすると怒られるから、なんとか感情を抑えつつ、優しく微笑み返した。

 

「そっか。ありがとう。だったら作った甲斐があるよ。」

 

そう返すと、ただ、と付け加え、たきなは、最も大事なことを言った。

 

「自分が食べる分も・・・次からは考えてくださいね?」

「・・・気をつけます。」

 

・・・そんなこと言われたら、お腹減ってくるって・・・

 

「自分の食べるものくらい、ちゃんと用意しないと。」

「はい・・・次からはちゃんと食べるようにするから。」

「というか、まかないなんですから本来お客さんが食べる用じゃないんですけど・・・こんなとこでも自分より他の人優先にしなくてもいいんですから・・・」

「そうだね・・・ごめん・・・」

「・・・まぁ、それが光輝らしくていいと思いますよ。」

 

最後にたきなが何か言っていたが、水道を流していたことや、小声すぎて聞き取れず聞き返したが、何にも言ってないですよ。と言われたため、気にはなったが納得した。これ以上踏み込んで怒られるのも怖いし。

 

洗い物をしながら、これは、もう一つ重箱を自分で買うべきかな?そうじゃないと、食べれない人多くなるかも。

そんなこの先の楽しいまかないのことを、考えながら─────

 

 

そんな、8月のとある一日の話。

リコリコのお昼、ごちそうさまでした。

 

 

 

 

 

 

 

ただ、実はまだここで終わらなかった。

 

この、空腹で終わってしまった、俺のこのコンディションが、この夜に繋がることを、俺はまだ、知らなかった─────

 

 




おまけ

お昼終了後・・・

「買い出し行かなきゃいけないですね。」
「こんな暑い日にボクはパース。」
「じゃあ光輝よろしく!」
「いやそこまでもかい!俺だって暑い中行くのやだよ!それならジャンケンとかで」
「あーやめた方がいいわよ光輝君。ジャンケンだと千束の一人勝ちになるから。」
「???ど、どういうことで・・・?」
「・・・じゃあこうしようか・・・昨日、この中でカレーを食べた者はいるか?」
「・・・は、はい、食べました・・・えっ?」
「すまない光輝君、頼んだ。」
「なんですかその方法!?」






というわけで、お久しぶりです。リコリコ展とウルサマのスタートと共に、恥ずかしながら帰って参りました。

宣言通り、夏休み編、開幕です。
そしていきなり、あの番組のパロディです。なので投稿時間もこの時間です。
冒頭はぜひ、あの俳優さんのナレーションで脳内再生してください。
なので、まかない編、というわけです。

そして実際、このお弁当、本当にあります。そして、これが載っているレシピ本というのも、本当にあります。
その本に関しては・・・次回より詳細が出てくるかも・・・?


で、この曲の歌詞を使わせていただきましたので、以下、引用元です。
言わずもがなですが、必要なので。


アーティスト名:Claris/楽曲名:ALIVE
使用楽曲コード:756-2356-1



そして、どうしてもぶつかりたいネタ、と前回書きましたが・・・そこ?ってなったでしょう(笑)

ALIVE、ではなく、リコラジのあの決めゼリフ・・・でもなく、使いたかったものというのは、公式Twitterの説明文でした(笑)

あれがOrdinary Daysからのネタなのはわかっていますが、ただ、あの説明文を見た瞬間から、こんなもんウルトラマン出してるウチがぶつからないわけにはいかんだろ!と思い、ぶつかっていきました。
ここに対して真正面から、真正直にぶつかっていくリコリコ二次創作、絶対ウチだけだと思います(笑)



そしてここからは毎度毎度の余談パートです。

というわけで、のっけからCM、いや宣伝です。ハー・・・ゲント隊長の声で脳内再生してください。
夏の東京では池袋はウルサマ・銀座ではリコリコ展と、双方のファンからしたら忙しい夏になるでしょう。


え?もちろん私ははしごしますが???


リコリコ展も楽しみですけど、なんと言ってもウルサマですよウルサマ。
いやまさかねぇ・・・25年経ってウルトラマンガイアに更なる強化形態出るなんて本当に驚いたよ!!!
スーパー・スプリーム・ヴァージョン生で早く見たい!!!はよソフビ!!!ついでにスプリームも出して!!!(ノシ 'ω')ノシ バンバンバンバンバンバン
アクキー欲しい!!!指人形欲しい!!!ウルトラマンういろう欲しい!!!物欲がオーバーヒートしています。


そして、どの日とは言いませんが、たまたま取っていたチケットのその日のウルトラショット、誰が来るかと思っていたら・・・運命なんでしょうね・・・





ウルトラマンネクサスクル━━━━(゚∀゚ )━━━━!!!!


やっぱり俺は適能者(ry


テンション爆上がりしておりますので、もちろん、子供たちに交じって撮影してきます。
何周しようかなwktkwktk

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