+LycorisーNEXUS JUDGEMENTー   作:ワンホットミニット

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にへへ・・・ウルサマでネクサスとツーショ撮っちゃった・・・ウルトラクロスもしちゃった・・・ウルトラマンいっぱいだった・・・ウルトラマンガイアSSVかっこよかった・・・令和のTDG揃い踏み見れちゃった・・・ゼットさんの名前ご唱和出来ちゃった・・・
(ちなみに作者はシ〇ニでは樹里ちゃんのPです)


色々感想を言うとキリがなくなりそうなので、とりあえず、ウルサマもリコリコ展も最高でした。
そんな中、リコリコ展の時隣でやってたS〇Y×FA〇ILY展との年齢差がありすぎて・・・S〇Y×FA〇ILY展、子供が多いこと多いこと。
むしろウルサマより子供がおおk(ry

そして、ロストジャッジメントがPS PLUSで配信がスタートという嬉しいニュースも飛び込んできましたね!
ぜひとも入会している方はプレイしてほしいです!
何と言っても、メフィ・・・桑名の活躍を是非見てほしいです。
あれをダークヒーローと捉えるか、悪役と捉えるか。そして、最後はどちらに感情輸入するか。それはぜひプレイされたご自身で考えてください。
正直、ジャッジアイズよりもスカッとしない終わり方なのは間違いありませんが、それでも、プレイする価値は大いにあるゲームです。
ユースドラマも非常に面白いので、そちらをメインにプレイしてみるのもおススメです。



ここからは、少し真面目に。

前回、話としてはほぼ2か月ぶりの更新でしたが、それに対して感想でありがとうと言われた際、感想をくれるのは凄く嬉しいのですが、ふと、不思議に思ったのです。
正直、感謝するのはむしろこちらの方なんですよね。

何度も言いますが、こちらは書きたいものを書いていて、それでいて読んでくれる方が大勢いて、リコリコと原作銘打っておきながらその実濃厚ウルトラマン小説なこれが、ありがたいことに7以下の評価がついてないなんて、本当に奇跡だなと、毎度毎度思っているわけです。

なので、掲載ありがとうございますと言われるのが嬉しいではなく、本当に不思議で、そこまで楽しんで読んでいただけているのだと思うと、書いてて良かったと思うわけです。

当たり前ですが、一位を取ってやる!なんて微塵も思ってないですし、他にも面白い小説は山のようにあるので、無理だとわかりきってます。
ただ、それでも読んでいる方のお気に入りの一つになっていて、寝る前に読めてよかったーと思っていただけたのならば、是幸い、というわけです。


長くなりましたが、ではどうぞ本編、ご覧ください。




リコメシ シーズン1【晩ごはん編】

「あー!たきなそっちお願い!」

「わかりました!」

 

私と、私の相棒は本日の業務終了後、座敷の席に大きなテレビを持ってきて、ゲームに勤しんでいた。

 

まだまだ暑さは厳しいが、そんな中、6人目の店員が今日も忙しなく働いてくれた。

おかげで、いつも楽しいが、イジりがいがあって頼りになる友達が出来て、ウチの仲間になってくれたことで、より喫茶リコリコの毎日が楽しい。

おまけに、今日のまかないのお昼がとっても美味しくて、早くも次のまかないが楽しみで仕方なくなっていた。

 

・・・そんな、その日の夜の話。

 

 

 

私、錦木千束と、私の愛しの相棒であるたきなと2人、仕事終わりにゲームを楽しんでいた。

いわゆる、協力型のオンラインゲーム。ジャンルで言えばFPSで、もう何度もプレイしていて、慣れている・・・はずなのだが、さっきからちょくちょくマッチングする対戦相手が妙に強く、苦戦を強いられていた。ここまでボロ負けするなんて・・・ホントムカつくー!現実世界じゃこうじゃないのにー!でもFUKI、って名前じゃないのが唯一の救い。

 

「この、"99"と”∞GOD”って人強いなぁ・・・」

「ですね・・・ところでなんか、この名前、聞いたことある気がするんですけど・・・」

「まーったく、ガキんちょ共は相変わらずゲームにお熱なことで。」

「そんなことを言ってる暇があるなら飲む手を止めて婚活でもしたらどうだ?」

「うっさいおっさん!してるわよ!なんならマッチングアプリも登録したわよー!!」

 

思い思いの感想を言い合っている中、カウンターの方ではミズキとセンセが言い争っている。とはいえ、一方的にミズキが突っ込んでいるだけなのだけど。まぁミズキはそうした方がいいだろ。うん、そうだ。

 

「まーったくお前らリコリスのくせにだらしないな。ほら、ボクに貸してみ。」

「むー・・・仕方ない。クルミ、頼んだ!」

「任せとけ。たきな、足引っ張るなよ?」

「言われなくてもやってやりますよ!」

 

クルミにコントローラーを渡し、たきなとクルミのプレイ画面を見ているそんな中、最後に着替えていた光輝が更衣室から出て来た。

 

実は、これは誰にも言ってないのけれど、"光輝の今日の私服がどうなのか、というのを見るのが、最近の私の楽しみだ。"

 

前はエボルトラスターを隠す必要があったという事情から、同じ服を着るというのが多かったが、もうお互い全てを知ったからか、光輝も安心して色々な服を着るようになった。

リコリスである私達は、任務や依頼があるから、ここに来る時は毎回リコリス指定の制服を着るが、その制約がない光輝は、毎回違う服を着てくる。

中々同世代の男の子とここまでの関係を持つことが無かったから、男の子の服をまじまじと見るという機会はこれまでなかった。

 

ただそれだけではなく、おまけに光輝は、服のセンスが、他の子とは違う。いい意味で、独特だ。

かといって、だらしないというわけではなく、他の子とは違うものを着ていて、それでいて、服に着せられている、というわけでもない。

そのため、物珍しさもあるから、これが最近の私のちょっとした楽しみになっている。

 

 

今日は、というと、白いワイシャツのようなシャツに、ボタンを挟むように左右に2本、独特の模様が金の糸で刺繍された、他では見たことがない、珍しいシャツを着ている。

なんでも、"グァジャベーラ"という服の種類であり、クルミが調べてくれたが、キューバをはじめとした、カリブ諸国で着用されている代表的なシャツだという。

そんな服見たこともなかったため、どこで買ったの?と聞いたら、なんでも地元の知り合いのお店で取り扱っているお店があり、どうやら少し模様の刺繍が変だということで、知り合い価格、ということで、ワケアリで安く購入したのだという。おまけに、そのお店は多少だが古着も取り扱っているということなので、そこから服を基本は仕入れているのだという。

それがこのファッションセンスに起因しているのだと思うと、その話を聞いてますます、そんな物が買えるという光輝の街へ行ってみたくなったのだが。

 

そうして今日のお仕事が終わって帰ろうとする光輝に対して、お疲れー!と言おうとした矢先・・・

 

「(・・・ん?)」

 

口には出さなかったが一瞬、違和感を覚えた。

 

それは、更衣室を出た瞬間に感じたことだったのだが・・・”ゲッ、といったような、何かまずいものを見たような顔を一瞬した。”

私の動体視力は、それを見逃さなかった。

 

そういえば、だが、私は光輝がゲームをやっている姿を見たことがない。というより、スマホもそんなにいじろうとしない。

まだリコリコで光輝が働き始めて3回目なのだが、大抵彼は、休憩時間は寝てる。朝早いから仕方ないのかもしれないが、とにかく僅かでも、寝てる。イタズラしよっかなーと思ったけど、光輝も疲れてるから、とセンセから優しくストップを受けたため、仕方なくやめてあげた。それでいて、ちゃんと休憩時間が終わる3分前にアラームをセットしてあるので、寝過ごすということもない。

 

ちなみに、お昼を食べたらすぐ仮眠をとるというこの一連の流れ、学校でも同じだという。理由は朝いつも早起きだから、ご飯を食べると眠くなってしまい、授業中に寝てたら教師に怒られるから。ということだそうだが、もう一つの理由として・・・

 

 

 

「どうせ俺学校だとぼっちだから誰からも声もかけられないしそれなら寝てた方が周りの目気にする必要もないし。」

「・・・その理由、あんま人前で言わない方がいいよ・・・」

 

 

 

という寂しい理由も込みだが・・・

 

 

だから、そういったこと含め、ふと気になったのだ。

 

光輝のゲームの腕は、いかほどなのかと。

 

そして・・・何故そんな、ゲッという顔をしたのか。

 

 

「光輝待って!」

 

気付き大慌てで止めてみると、ビクッ!と体が反応していた。それはまるで、何か悪さをしているのを見られたかのようだった。

 

「ど、どしたの・・・?」

「ゲームやろゲーム!時間まだあるでしょ!遊ぼうよ!」

「い、いや、大丈夫!ちょっと忙しいから!」

「いーじゃーん!なんなら私送ってくからさー!遊ぼーよー!」

「いやいやイヤイヤ、ワタシ、コレカラカエルノデー・・・アシタモ、アタス、トテモ、イソガシー。チバトオイー。ネムイー。カエルー。オツカレー。」

「なんでカタコトなんですか光輝?」

「・・・どしたのアンタ?」

「あたすてお前いつからそんなキャラなったんだよ。」

「だ、大丈夫かい・・・?」

 

途中から様子がおかしくなった光輝に私だけでなく、全員がツッコミを入れる。

どこからどう見ても、明らかに、おかしい。何か、悪いことをしているかのようだった。

 

「だ、ダイジョブデスー!お疲れ様でしたー!マター!」

 

そう慌てて、入り口の戸に手をかけ、外へ出た・・・

 

 

 

「・・・あぶなか」

 

 

 

ガシッ

 

「へっ?」

「待ってって言ったじゃん?」

 

慌てて私も外へと飛び出し、ガシッ、と、漫画のような効果音が出たのではないかと思うほど、帰ろうとする光輝の腕をしっかりと掴んでいた。

 

「チ、千束、サン・・・?」

「こーら、さん付けしたな。罰として、ちょっと遊ぼ。愛しのパートナーからのお・ね・が・い♡」

「オナカスイタノデ、ワタシ、帰リマス」

「としうえのめいれいは、ぜったい、だぞ♡」

 

彼の腕を両手でしっかり掴み、帰るのを引き留め、全力で店内まで引きずっていく。

 

「あー!アー!アァー!ダメダメダメダメー!いやいやいやいやホント俺帰るのー!!今テレビ見たくないのー!!てか痛い痛い痛い!!」

 

あまりの大慌てっぷりに驚くが、その発言からして、テレビ・・・つまり、今このゲーム画面に何か問題があるということだ。

だとしたら、考えられることとして・・・ははーん、そういうことですかそういうことですか。

 

「光輝、ゲーム苦手なの~?」

 

私が煽ってみせると、だー違う違う違うー!と、またもや大慌てだった。こんなに慌てる理由が一体何かはわからないが、ここまで来たら後はもうやらせるだけだ。

 

「さぁ光輝!腕の見せ所だよ!レッツプレイ!」

 

そうしてたきなが使っていたコントローラーを持たせた瞬間・・・

 

 

「ごめん無ーー理ーー!!サノバビーーーッチ!!」

 

 

とんでもない単語と共に、大慌てでコントローラーを床に置き、テレビ画面に背を向けた。

流石にこの様子に全員驚き、恐る恐る聞いてみた。

 

「ど、どうしたの・・・?もしかして、本当に嫌だった・・・?」

「というか、サノバビッチって・・・」

「いや、ごめん。嫌とか、ゲームが苦手とか、そうじゃないんだよ・・・」

 

どうやら、ゲームが苦手ではないということだった。

ただ、光輝は変わらず、渋そうな顔をずっとしている。何が原因なのかわからないでいると、何かあったのかを私に代わってたきなが聞いてくれると、一つ大きくため息をついた後、意外な答えが返ってきた。

 

 

 

「・・・俺、ダメなんだよ。ひどいゲーム酔い持ちなんだよ・・・」

 

 

 

・・・ん?

 

 

「「「「「ゲーム・・・酔い?」」」」」

 

 

思わず、ここにいる全員の声が見事にシンクロした。

 

 

"ゲーム酔い"、光輝はそう言った。

 

 

その症状を調べると、"ゲームや映画などの3Dコンテンツで作られたものの視聴中やプレイ中に発生する、乗り物酔いに類似する症状"・・・だという。

 

そして、光輝は自分のことを説明をしてくれた。

 

 

その昔、家族で3Dで作られたアニメ映画がテレビで放送されていた時に見ていたら、30分程度で気持ち悪くなり、その後数時間立てなくなったという。

更に、それから少し経った後、とある家電量販店に家族で行った際、やることがなく、試しにそこに置かれていたゲームの試遊機をプレイしたところ、こちらはもっとひどく、10分もしないうちに酔ってしまい、慌ててベンチに座って回復までにかなりの時間を要したという。

 

その理由を当初は瑞生さんも憐さんもわからず困り果てていたそうなのだが、調べていくと、このゲーム酔い、という症状に行きついたという。で、その兆候がまさにピッタリ当てはまってしまったそうで、それ以降ゲーム酔いだと自認し、そういった3Dで出来た映像作品やゲームをなるべく避けるようになったという。

 

つまり、光輝は本当に3D全般が、ダメだということ。それが、さっきあんなゲッ、という顔をし、あんなに慌てふためいた理由だったんだとわかると、その話を聞いて、強要してしまったことに少しの罪悪感を覚えた。

 

「ごめんね、そうとは知らずに・・・」

「気にしないでよ。そもそも、言ってなかったのが悪いんだし・・・だってこれ、恥ずかしい話だもん・・・ゲーム出来ないとか、今時の子供かよ?って感じでしょ?」

「まぁ・・・確かに。」

「それにさ、割と皆よくゲームの話するじゃん。でもさ、俺出来ないから、それで盛り上がってるところに出来ないって言って気まずくさせんのも嫌で・・・だから言いたくなかったんだよ・・・」

 

そんなところにまで気を遣うなんて、光輝は本当に気にしいだ・・・もう友達なんだからそんなこと、いちいち気にしなくていいのに。

 

「・・・だからお前のスマホ、まるで老人用スマホみたいに何にも入ってないんだな。」

「ですね・・・だから俺のスマホは写真撮るかレシピ調べるか音楽聞くか地図見るかTALKやるくらいだけですよ。というかなんで入れたアプリのことまで知ってるんですか?」

「それは秘密さ。」

「いやハッキングですよね?俺の個人情報・・・」

 

確かに、言われればそうだった。

スマホでアプリゲームをやるところも、SNSを見るということも見たことがなかったが、その理由を聞けばそれも大いに納得出来る。それならば、そんなにアプリを入れる必要もないのも頷ける。てかクルミ、光輝のスマホの中身覗くなし。

 

と、そんな中、今の話で気になったことがある。

 

「写真って、何撮ってるの?」

「あっ・・・えーっと・・・」

 

その答えを聞く前に、ぐぅぅ~、と、光輝のお腹が鳴った。

 

あっと、恥ずかしがる光輝を見て笑うが、よくよく考えたら、さっきお腹空いたと言っていたが、それはそうだ。何しろ、今日のお昼に光輝はおはぎ一個しか食べていない。これはいけない。

長い道のりをかけて来てくれて、お昼まで作ってくれた友達を、お腹を空かせたまま、またも長い道のりを帰らせるなど、あってはなりません。私の直感がそう伝えてくる。

 

だったら・・・

 

 

「ねぇ光輝、ここで晩ご飯一緒に食べてかない!?」

「・・・リコリコで?」

 

 

そう!と笑顔で答えると、うーん・・・と少し悩んだものの、光輝はニッコリと笑った。

 

「いいよ。俺もお腹空いたまんまこっから1時間半はちょっと辛いし。ちょっと待ってて、母さんに連絡入れるから。」

「ヤッター!何作る何作る!?」

 

私がワクワクしながら話しかけると、だったらさ・・・と、ある提案をしてくれた。

 

 

「俺、作っていい?」

 

 

 

「さって、と・・・」

 

お店にあった紺色のエプロンを掛けて、俺はリコリコの戸棚を開けていた。

取り急ぎ、ここで食べるということでご飯をありがたく頂戴し、すでに速炊きモードで炊飯をかけている。

皆は全員で作った方がいいと言ってくれたが、ここにはたくさん迷惑をかけてきたから、借りを返さないと。それに、画面は見れないが、3人であんなにゲームを楽しそうに遊んでいる中で、ご飯を作るということでそれを邪魔するのも野暮だろう。

 

そういった理由もあるが、皆が納得してくれた最大の理由は・・・"今日の、まかない当番は、俺だ。"

今日はまだ終わっていないから、そのルールには従います。という理由を伝えると、皆が納得してくれた。

 

 

というわけで、夜も喫茶リコリコの皆さんのご飯を作る、お腹を空かせた従業員の一人で、少し前に、ここの対巨大怪獣要員としても必要だと言われた店員は、一体誰でしょう?

 

・・・そう、ウルトラマンネクサスになれる、私です。

 

 

なんだかどこかの作品でこんなような言い回しを言っていた気がする・・・そんなことを思いながら戸棚を開けていると、いいものが見えた。

 

「ツナ缶・・・それと、海苔・・・」

 

その2つを見て、ピン、と閃いた。

だとしたら、後は冷蔵庫を見て、必要な材料がなかったらサッと買いに行こうか。それに、補充も必要かもしれない。そんな思いで冷蔵庫を開けてみると、2つの食材はあった。それに、今日ウチから持ってきた野菜もある。おまけに、ここは割と調味料も豊富だ。ならば、これを使わせてもらって、後はササっと買いに行こうか。

 

「光輝、何か足りないものある?買いに行くけど?」

「いいの?」

「いいっていいって!ご飯作ってくれるんだから!」

 

そんな俺の様子を見てか、いつの間にかこちらに来ていた千束が声を掛けてくれた。遊んでいた手を止めさせて悪いな、と思っているものの、せっかくそう言ってくれたのならば、頼りにしようかな。

 

「もしよかったら、玉子とカニカマと・・・それと、もしあれば、どの肉でもいいんだけど、少しだけひき肉買ってきてくれない?お金は出すから。」

「オッケー!まっかせてー!高いアイスも買って光輝にお金出してもらおーっと!行こーたきな!」

「はい。いいお財布ですからね。」

「おい誰が財布だって?」

 

聞き捨てならない言葉があって止めようとするも、いつも通り無視され、あっという間に千束はたきなを連れて外へと出て行った・・・本当にやりそうだから困る。

とはいえ、まぁおつかいをしてもらうのだ。そのくらいは許そうか・・・いや物には限度ってもんがあるが。というか、リコリスなんだからあいつの方が金あんだろ・・・

 

「光輝君、あっという間に慣れたわね~。」

「いやいやミズキさん、ここだと本当に貧乏くじの役割で・・・それに、元々はヘルプだった・・・もう今更ですね・・・あ、飲んでますしせっかくならご飯炊けるまでに何かおつまみ作りますね。」

「えっマジ!?いいの!?うっはー期待しちゃうわー!ホント気が利くわねあれと違ってー!」

 

あれて・・・と思いながら、早速おつまみ作りに取り掛かっていく。

実は今日、重箱を入れてきたバッグの中にウチでその日に獲れたばかりの、きゅうりをはじめとした夏野菜も入っていたのだ。それを皆にどうぞとお裾分けで持ってきていたのだが、どうせきゅうりなんてまたすぐ生えてくるし、ここで夕飯を食べるのであれば、今使ってしまおう。

 

というわけで、きゅうりを冷蔵庫から取り出し、手早く一口大に切っていく。叩きにしても美味しいのだが、今日はこっちで。それをジッパー付きポリ袋へ入れる。これでもう半分出来た。

そこにきゅうりと併せてウチで採れた大葉を千切りにしたものと、ここにあった塩昆布と少しの塩、それとごま油とかつお節、白ごまも入れ、手で揉む・・・以上。後は、和食器にその中身を移し替えれば、我が家の夏の定番小鉢である、きゅうりの塩昆布和えの完成だ。

 

「お待たせしました。ミカさんもクルミさんもどうぞ。」

 

こういうのは見た目が命なのかもしれないが、こういったものなのでどうしようもないところはあるかもしれない。

ただ、間違いなく言えることはある。

 

 

「うっま!」

「おお・・・うまいな・・・」

「ほぅ・・・たったこれだけで・・・」

 

 

味は、間違いないということだ。

 

俺も一つつまようじに刺して口に運ぶと、きゅうりのポリポリとしたいい咀嚼音に、塩昆布とかつお節のうまみにごま油が絡み、大葉の風味もやってくる。やっぱりこれは何度作っても美味い。いいレシピを見つけたと自分を褒めてあげたい。ご飯も進むしあっという間に作れるからお弁当にももってこいだ。

ちなみに大葉がなかったらおろしにんにくとコチュジャンを入れて韓国風にしてもこれまた美味だと付け加えておく。

 

もう一つつまんでから再びキッチンに戻ると、冷蔵庫から玉子を取り出す。この後にも必要だから、少し多めに使わせてもらう。

ボウルに割り入れ、顆粒出汁とお砂糖とほんの少しの醤油、そして水を入れる。砂糖は少し多めで。

しょっぱい玉子焼きの人もいるが、ウチは元来甘い玉子焼きだ。もうこれに慣れてしまっては、今更しょっぱい玉子焼きを食べることは出来ない。

 

これをサッと、砂糖が若干溶ける程度まで混ぜたら、後は玉子焼きパンに油をひいて、キッチンペーパーで拭く。そして卵液を流し込んで、完全に焼けないところで、巻く。

後はまた油を吸わせたキッチンペーパーで空いている箇所に油をひいて、また卵液を流し込んで、焼いたものと合体させ・・・を繰り返していく。後は成型し、皿にポン、と乗せて、6つに切り分ける。

 

もう、何百回作ってきただろうか?少なくとも300は越えてる。酷い時は朝も作って昼も作るくらい練習した。それである時、玉子を使いすぎて母さんから怒られたこともある。ちなみに玉子が一日一個までというのは迷信だということはとっくに理解している。

そのくらい、俺にとって定番料理であり、一番作ってきたと間違いなく言える。そこまでして、体に叩き込ませた。シンプルだからこそ一番難しい。だからこそ、究めたかった。

 

この、黄色い、焼き目すらない、絵に描いたような、玉子焼きというものを。

 

「どうぞ。本当だったら大根おろしも付けたかったんですが・・・」

「えっちょっ!?ハイセンスすぎない!?」

「クオリティたっか・・・」

「おぉ・・・」

 

このいつもの玉子焼きに3人が驚いていると・・・

 

「たっだいまーあーーーーっ!!ちょいちょいちょいちょーーい!?何先に食べてんの!?」

「おうお疲れ。いやなに、光輝が先におつまみとして出してくれたからな。先にご相伴に預かってたってわけさ。」

「はあああっ!?ちょっと光輝どういうこと!?」

「私達におつかいさせといて先に作って食べてたんですか!?買ってきたものあげませんよ!」

「あるから!2人の分もちゃんとあるから!この玉子焼きは今作ったやつだから!そう怒らないで!」

 

慌ててもう一つ別のお皿に2人に取っておいた分のきゅうりの塩昆布和えを乗せ、先程買ってきた食材が入ったエコバッグと交換に、それが乗った小皿と箸を渡す。

2人もそれぞれ箸を持つと、早速皆、焼き立ての玉子焼きを口に運ぶ。

 

「ふぁっつ・・・!んー!おいしいーーー!!」

「・・・!おいしい・・・!」

「・・・光輝君がここまで出来るのは予想外だったな・・・うん、うまい。」

「今まで食ってきた玉子焼きの中で一番うまいぞこれ・・・」

「やっば、これだけで酒飲めるんだけど・・・!大将もう一皿!」

「すいません、これからメインディッシュなんでまた後日・・・」

 

俺も慌てて玉子焼きを一つ口に運んだと同時に、ピピーッというアラーム音が鳴り響く。ご飯が炊けた合図だ。さぁいかんいかん、メインディッシュの用意もしないと。

後いつも通り完璧。美味い玉子焼きだ。ここがガスコンロで助かった。IHだったら間違いなく失敗してた。

 

「やっばこのきゅうりもうま!」

「これも美味しいですね・・・どうやって作ったんですか?」

「後で教えるねー!」

 

慌てて受け答えをし、エコバッグから指定の食材を取り出そうと袋の口を開けると、食材の上に、一枚のメモが貼ってあった。

 

 

"ありがと!楽しみにしてる!"

 

 

レシートの裏に書いた、殴り書きのような、それでいて、愛情が込められた一言。

チラリと、それを書いたであろう人物に目を向けると、いたずらっぽく笑っている。

 

 

・・・そういうとこなんだよな。

こういうことを自然とやれるんだから、やっぱりこの2人は皆に好かれるんだろう・・・そんなことしたら、また惚れてま・・・いやちょっと待て。あのヤロウ、本当にアイス買ってやがる。おまけにちょっとええカップアイスのヤツ・・・若干イラッとしながらではあるが、買ってくれたものをパッパッと台所に並べていき、慌ててメインディッシュの準備を始める。

 

もう一つ新たに出したボウルに炊けた白米をよそうと、サッとお酢と砂糖と塩を入れてしゃもじでかき混ぜていく。

これだけで、もう何を作るのかわかったのか、千束がワクワクしながら声を掛けてくる。

 

「えっ!?お寿司!?」

「海苔巻きだよー。俺生もの駄目だから。」

 

そう、俺が本日の夕飯に作ろうとしていたのは、"海苔巻き"だった。

海苔を見た瞬間、台所に置いてあった巻き簾があったことを思い出し、これならばササっと作れて、それでいてそこまで手間も無く作れるからいいだろうと閃いたのだ。

とはいえ、今から作るのは3種類なのだが。

 

そんな中、他の皆が座っているカウンターの方では意外な話題で盛り上がっていた。

 

「生ものダメなんですか光輝?」

「ダメ。どうあってもダメ。焼いたらどんな魚でもなんでも食べられるんだけど生だけは絶対無理。だから寿司も絶対ダメ。」

「うわー、光輝君、そりゃ人生の半分損してるわよ・・・」

「いやいやいやいや!火さえ通ってればどんな魚でも食べられますから!その半分の更に半分の半分ですよ!大体、刺身なんて醤油とわさびの味しかしねぇじゃねぇですか!あれはつまり醤油食ってるようなもんですよ!だから、刺身が美味いんじゃなくて、美味いのは醤油なんですよ!!」

「何もそこまで言っているわけでは・・・」

「どこぞの誰かを敵に回すぞ・・・」

「はぁー!?光輝ないわー!最悪ー!それは魚に失礼だわー!これから先たきなとしかお寿司食べ行かなーい!リコリコでもお寿司取る時には光輝にはあげなーい!これ確定ー!」

「別にいいよ!それは皆で美味しく食べてくれ!てか、そもそもの味があるのに醤油の味にされるなんて、その方が魚に失礼でしょ!寿司食うならそば食べ行くわい!それに、なんかこの辺りにぶっといそばあるって聞いたから、そっち食べ行くよ!」

 

やれやれ・・・と思いつつも、俺の手は止まらない。本日の夕飯である海苔巻きの準備を着々と進めていく。

と、そんな中・・・

 

 

「それではここでー!光輝さんへの質問タイムに移りまーす!」

「はっ?」

 

 

唐突に千束が言い出したその一言に、思わず料理の手が止まる。他の皆さんも、何を言ってるんだ?という顔をしているが、千束はその理由を語った。

 

「だって私達、光輝がネクサスと元リリベルってこと以外全然知らないじゃーん!」

「・・・確かに。」

「というか、順番逆だよね・・・何で一番知られたくない秘密を知っててパーソナルな部分を知らないのかって話だよね。」

「いやそれ自分で言ったからじゃないですか・・・」

「ごもっともです・・・」

「・・・というか、ネクサスに飯作ってもらってるんだな、ボク達・・・」

「世のゴシップ聞いたら卒倒もんよ・・・」

「いや、ネクサスじゃない時はただの人間ですってば・・・」

 

というわけで急遽、俺への質問コーナーが始まった。なーぜー・・・

 

「光輝趣味はー!?」

「音楽・楽器。野外で飯を食う。」

「嫌いなものはー!?」

「生もの、3D、人に悪口言うやつ、食べ物を大切にしないやつ、害獣被害、虫被害、台風、悪天候、異常気象、猛暑、冷夏、長雨、日照不足、竜巻、強風。」

「半分以上気象関係じゃねぇか。」

「流石は農家だ・・・」

「好きな食べ物はー!?」

「あーんとね・・・お餅。」

「「お餅」」

 

思わず千束とたきなの言葉が重なる。

いや、とはいえ、大好きなんだもん、お餅。

 

「・・・なんで?」

「いや、美味いじゃん。のびるし腹持ちもいいし甘いもしょっぱいも受け入れて、和洋中何に入れても成立して邪魔しない。最高じゃんお餅!」

「・・・変わってるわね~。」

 

お餅の良さを熱く語っていると、あっそうだ。とクルミさんが思い出したかのように声を出すと、質問をしてきた。

 

「そういえば光輝、さっき写真撮ってるって言ってたけど、何撮ってるんだ?」

 

あー、忘れててほしかったのに・・・正直、恥ずかしくて言いたくない・・・

 

「えーっと・・・それは・・・」

「おっなんだ?ひょっとして、"アツアツの彼女との写真か?"」

 

その言葉に思わず吹き出していると、はあぁ!?と千束とたきなの声が重なる。なんで2人が怒るんだよ!?

 

「はームカつくわー!おいイチャついてんじゃねーぞコラクソガキがよー!」

「いやいやいやいや!!」

「おっ、その反応、図星か?」

「クルミ、やめなさ「いやいやクルミないないないない。」

「光輝が彼女なんているわけないですって。」

「なんで2人が言うんだよ!?あぁそうだよいねぇよ!」

 

もちろんいるわけなどないから否定しようとしたら、代わりに千束とたきなから否定されたため、思わずツッコミを入れる。それに、さっきとは違い、めっちゃ冷めたリアクション・・・ひょっとしなくても、多分、2人からはそういう意味では眼中にないのかもしれない・・・さっき怒ってたから少しは気があるのかと一瞬期待したが、まぁやっぱ、そうだよな・・・心の中で小さく落ち込むも、気を取り直して、いつも通り話をしていく。

 

「だから女の子の写真なんてないですから!それだけはないって絶対言っときます!」

「じゃあ何撮ってるの!?」

「光輝、何撮ってるんですか!?」

「そこまで詰め寄らないで!言うから!」

 

クルミさんに代わって千束とたきなから詰め寄られたため、ここまで来たら、もう言わないと終わらないと察し、覚悟を決めた。撮っているものが、笑われないと信じて。

 

「・・・ま、」

「ま?」

 

 

「・・・毎日の、弁当・・・」

 

 

それを言うと、時が止まったかのように全員が黙り込んだ。

 

「・・・ん?」

「・・・えっもう一回言って?」

 

思わず聞き返されたため、もう半ばやけっぱちになり、顔を赤くしながら大声で叫んだ。

 

「・・・あーもう!俺が自分で作った弁当!作ったら必ず撮ってるの!!それを撮ってるの!」

 

そう、スマホの中に色々写真はあるが、俺の写真の大部分を占めているもの。

それは・・・"自分の作った弁当の写真だ。"

 

最初の頃に母さんから、自分の作ったものを見直すことも大事だから、作ったら必ず撮っておきなさい。そうすることで、翌日のお弁当のメニュー決めや、これ美味しかったなど、挑戦や定番、被らないなどを自分でもわかるようになるから、と言われたことが理由で、必ず撮影するようになった。

 

だから、高校一年の作り始めた初期から今日まで、俺の写真フォルダの一部には、これまでに作ってきたお弁当の写真がズラっと並んでる。その上手くなっていく過程を時折見返し、こんなに上手くなったんだ・・・と自分で感慨深くなる。

 

だから、言いたくなかった。

 

「・・・見せてーーー!!」

 

千束からこう言われることが、目に見えてわかっていたから。

 

「やーだよー!」

「なんでだよケチー!」

「いやだってそんなの「だったら勝手に見てやるよー。」ゑ?」

 

そんないつも通りの問答を千束としていると、クルミさんが声を掛けてきた。その手にはいつの間にかタブレットが・・・ま、さ、か・・・?

 

「よーし光輝のスマホにアクセス完了。さぁのぞくぞー。」

「ナーイスクルミー!」

「あァーーー!!ちょ待っ!?」

 

俺のスマホを勝手にハッキングし、俺の許可も取らず、勝手に写真フォルダを眺め始めた・・・慌てて料理の手を止めカウンターへ向かうも、既に全員がじっとタブレットを食い入るように見ている。千束にたきなにクルミさんだけでなく、ミズキさんも、もっと言えばミカさんまでもが画面に釘付けになっている。もうこうなってしまっては誰にも止められない・・・恥ずかしい・・・帰りたい・・・

 

「・・・美味そうだなどれも。」

「うわこれめっちゃ美味しそう!」

「・・・色どりもいいですね・・・」

 

・・・と思っていたら、意外と皆さんの反応がいい。

それに驚いていると、ミズキさんがタブレット画面を指さしながらこちらを向いた。

 

「・・・これ、マジで全部作ってんの?」

「は、はい。全部、自分で・・・」

「・・・冷凍食品とかは?」

「冷凍野菜とかミックスベジタブルみたいなのは使いますけど・・・それ以外は基本、頑張って自力です・・・時間なさすぎる時は冷凍牛丼の具そのままドン、ですけど・・・」

 

そんな問答をしているその後ろで、ミカさんはいつの間にかメガネを外してよりじっと見始めた・・・あれが、もしや噂に聞く・・・老眼・・・とは口が割けても言えない。

 

「・・・いや、凄いなこれは。君のような男の子がここまで。」

「あっ、ありがとうございますミカさん!ただ、これもまぁ、母さんのためなので。逆に今じゃ、色々挑戦してやろう!って感じで楽しんでますよ。変わり種もありますし。」

 

変わり種?と全員が思っていると、んん!?と千束があるものに反応した。

 

「これ、何!?」

 

俺の方にタブレットを向けて見せた1枚の画像。それを見ると、すぐにわかった。

それこそまさに、俺が今言った変わり種。俺はこれを"挑戦シリーズ"と呼んでいる。

 

写真には2つのタッパーがあり、片方には1枚の食パンを斜め切りしたパンが計4枚。その脇には納豆のパックに付属しているからしが一つ。もう片方のタッパーには、茶色い揚げ物の下に千切りキャベツが敷き詰めてある。そう、これは・・・

 

「・・・それねぇ、カツサンド。」

「カツサンド。」

「食べる時に自分で作ってもらうスタイル。からしは納豆に付いてるやつ取っておいて、脇に添えてあるから作ったらそれ塗ってもらう方式にした。ちなみにカツは薄切りの豚肉重ねたミルフィーユカツとハムカツの2種類。」

「ヤバ・・・美味そう・・・」

 

そのカツサンドの弁当に驚いていると、更にたきなが見つけ、見せてきた。

 

「・・・これ、なんですか・・・」

 

若干引きながらまたもやタブレットをこちらに向けて見せてきた、挑戦シリーズの一つ。

スープジャーに並々入った、色々な野菜やひき肉といった具が入ったスープ。そして、タッパーの中には、黄色い太い麺。

 

「それはね、味噌ラーメン。」

「味噌ラーメン。」

「スープジャーって保温容器なのよ。で、並々入れれば保温効果が冷めることはないから、物は試しにってやってみた。ちょうど冬の期末テスト終わりの日に作って、帰り適当な野っぱらで食べたんだけど、すっげー美味かった。」

「まぁ・・・確かに美味いわな。」

「というか、なーんでこんな変な弁当作ろうと思い立ったのよ・・・」

 

ミズキさんが半ば呆れたように質問をしてくる。まぁ確かに変な弁当を自分でも作っていると重々自覚はしているため、その理由を語り始めた。

 

「そもそも、コンビニ弁当だって麺とかあるじゃないですか。なのに、家で弁当作るときにそれが出来ない。ご飯のみの弁当だけって・・・変じゃない?って思ったんですよ。そう思ってたある日、俺が買ったとあるお弁当の本があって、好きなバンドのボーカルの人が息子に作ったお弁当をまとめた本なんですけど、そこには色んなアイデアお弁当が沢山あって、それこそ今日のそうめんとか、後ホットドッグとか、つけ麺とか。」

「つけ麺!?」

「つけ麺を弁当・・・!?」

 

皆やはり、つけ麺、というワードに驚いている。確かに俺も、あの本を初めて見た時につけ麺の弁当とあって、同じように驚いたことを覚えているけど。

 

「もっと言うと、市販の牛丼チェーン店のテイクアウトの牛丼をそのまま弁当箱に詰め替えただけ!みたいなのもあって、それを見て、あぁお弁当ってこんなに自由でいいんだ、って思って。だからご飯だけのお弁当にこだわらずに、月に1回くらいこういう、挑戦的な弁当やってますね。時々ご飯炊くのも面倒な時ってあるので。」

「確かに・・・こんなお弁当作ってくれる旦那も、アリね・・・」

 

ミズキさんが旦那候補のアップデートが出来たのか、ボソりと呟いたが、それに対してどうリアクションすればいいのかわからず無言を貫き、とりあえずは一旦スルーし、気を取り直して改めてお弁当の話をし出した。

 

「・・・ただ、もう少し涼しくなったら、皆さんにもちゃんとしたお弁当、作ってきますね。」

「期待してるぞー光輝。どうする?曲げわっぱでも買っとくか?」

「なんでもいいですよ、作るのは変わらないので。どうします?中華丼でも作りますか?」

「おっ、いいなそれ。」

 

そんなことを話しながら台所へ戻り、作業を再開していき、ようやく中に入れる具材と準備が出来た。

後はこれを巻き簾で巻くだけ・・・

 

「えーー何このワンちゃんカワイイーーー!!ねぇ光輝何このイッヌ!!?」

「バカ野郎犬じゃねぇ俺の弟だ!!」

 

そう思っていると、千束が大声でとある犬の画像に食いついていたため、反射で突っ込んでしまった。というかおい、そこまで見るなし。

 

「それはプチ丸。ナツばあの飼ってる犬だから俺ん家の犬じゃないよ。」

「そうなんだー!えーでもめっちゃ可愛いー!今度会わせてー!」

「ダーメ。こっから1時間半なんて連れてこれないから。電車にも乗せられないし。会いたいんならナツばあのとこまで来てくれ。」

「何だよケチー!だったら今度ナツさんにアポイントメント取るから!」

「というか、犬が弟って・・・」

「たきな、会ったらわかるよ。絶対そう言いたくなるから。」

 

はぁ・・・となっているたきなを横目に、改めて具材の準備を終え巻こうと準備をする。さぁてここから巻いていきま

 

「はいはいはいはーーい私やるよーーー!!さぁたきなもクルミもご一緒にー!」

「えぇっ!?私もですか!?」

「なんでボクまでー!」

「えっマジ!?」

 

巻こうとしたその時、千束が手を挙げてたきなとクルミさんの手を引っ張ってキッチンの方へとやって来た。

正直、4人もいるので半ば渋滞しているが、でも、やりたりって言うかもなぁとも思っていたため、ある意味では予定通りになったのだが。

 

「うはー!美味しそー!早く食べたーい!」

「早く食べたいのは俺も同じ。それじゃ、レクチャーした方がいいよね。」

「待ってください今動画で!」

「教えるって言うんだから見なくてもいいだろ・・・」

 

キッチンは若干バタバタしているが、とはいえやると言うのだから、マンツーマンでレクチャーしていく。というか、俺はいつから料理の先生に・・・?

 

「まずご飯を敷き詰めて海苔が5センチくらい残るようにして、それで奥の方に土台を作って・・・そうそうそんな感じそんな感じ。」

「こう?」

「そうそう。で、食感が固い具材を真ん中に乗せて・・・」

 

3人が来てくれたものの、巻き簾は一つしかないため、一人一人丁寧にレクチャーをしながら進めていくしかないのだが、やはり千束は料理のセンスがある。正直教えなくても出来そうな雰囲気があるのだが、それでもしっかり学ぼうという姿勢があるのが本当に凄い。それに、今の横顔は、いつものおちゃらけた感じとは違い、少し真剣だ。そのギャップにも、内心ドキッとしてしまう。

 

「で、後はギュッと押さえて・・・はい出来た。」

「おー!出来た出来たー!ありがとー光輝!」

 

手を伸ばしてきたため、小さくハイタッチを交わすと、次に取り掛かる。千束と来たら、次はたきなだろう。

 

「ほいじゃ次たきなね。んじゃこっちのやつを・・・」

「いえ、光輝に教わらなくても出来ますし。」

 

・・・ん?

 

「あ、あぁ・・・作ったこと、あるの?」

「ないですよ。」

 

作ったことがない。教わらなくても出来る。

 

 

その言葉に、カチン、ときた。

 

 

「大体、海苔巻きなんて「お前は何を言っている!?お前なんだ!?銃の撃ち方学ばないで銃撃てるのか!?車の運転の練習しないで車運転出来んのか!?」

「いやそれは教わらないと出来ませんけど・・・」

「ほーら教わらないと出来ないでしょ!?作ったことないやつはすーぐそう言う!作ったことないならその通りやるのがまず一番!わかった!?」

「なんでそこまで・・・」

「その顔は何だ!その目は何だ!その涙は何だ!お前のその顔で、海苔巻きが巻けると思っているのか!?」

「泣いてなんかないですよ!!あーもうわかりました!その通りやりますよそれでいいんでしょ!?」

「スパルタだ・・・」

「こっわ・・・」

 

この剣幕に千束とクルミさん、だけでなく、カウンターに座っていたミズキさんとミカさんまでも若干引いている。一方のたきなはここまで言われたから不機嫌になっているが、とはいえ、こう言ったのには理由がある。

少し冷静になり、いやね、と切り出すと、そうまでして言った理由を説明する。

 

「俺は養蜂業も農業やってるから、食材を無駄にしたくないし、捨てるのも嫌なの。で、お弁当を上手く作れなかった時に、周りは美味しいって言ってくれても、とはいえ上手く作れなかったって思いのまま食べるものって、あんまり美味しいと思えないんだよ。そんな気持ちでご飯を食べたくないから、それなら美味しく、上手に出来たものを食べた方が、心身の健康にもいいと思ってて。そのためなら、手順とか作り方をしっかり見て作る、そのわずかな手間くらい、厭わないでほしいな、って。それだけなんだよ。だからこんなに強く言ったんだけど・・・とはいえ、たきな、ごめんね。」

 

俺が料理に対して思っていることを語ると、皆少し驚いていたけど、その話を聞いて、全員がふふっと笑い出した。

 

「やっぱり光輝はヘンだね。」

「なっ!?」

「そんな食に対して真面目に考えてる高校生・・・見たことないですよ。」

「ホント、リコリコのやつはどいつもこいつもヘンだな。」

「一番見合ってないあんたが言うな!」

「まぁ、色々な個性が集まっているこれが、リコリコなんだろう。それに、こんなに食事に対して真剣な思いを持っている子までいる。飲食店をやっている身として言わせてもらえば・・・本当に、光輝君がウチに来てよかったと思うよ。」

 

俺の言葉に皆さんがそれぞれ納得し、笑ってくれている。

そして、ミカさんが言ってくれた、ウチに来てくれてよかった。そう言ってくれたことがたまらなく嬉しく、思わず笑顔になる。

 

・・・求められているというのは、こんなにも嬉しいんだな。

 

その喜びを噛み締めていると、トントンと肩を叩かれ我に返ると、たきながこちらを見つめていた。

 

「さっ、早く教えてくださいよ。そこまで言ったんですから・・・ちゃんとしたもの、作らせてくださいよ?」

「・・・オッケー!」

 

そう言うと、たきなにも手ほどきをしながら、海苔巻きを完成させていき、そしてクルミさんにも手ほどきをしていく。

 

そして最後に、俺もひとつ完成させてから、それらを全て一度ラップにくるむ。こうやって切ることで、切る時に潰れずに綺麗に切ることが出来る。

そうして小さく6~7個ずつに切っていけば、本日の夕飯が無事、出来上がった。

 

「お待たせしました。」

 

切り分けた海苔巻きがのった大皿を、皆さんの前に出す。

 

いわゆる、シンプルなカニカマときゅうりと卵焼きだけのこれぞ海苔巻きといった海苔巻きに、ウチから持ってきたサニーレタスとツナマヨ、きゅうりと卵を入れたツナマヨ海苔巻き。

そして、肉そぼろと炒り卵の簡易的な親子丼、いや他人丼風海苔巻き。

皆で協力して作り上げた、夕ご飯だ。

 

そして、手を合わせる。

 

「それじゃあ・・・」

 

 

"いただきます。"

 

 

全員の声が重なった後、早速、一つシンプルな海苔巻きを一つ箸で取り、お醬油にちょっとつけて口に運ぶ。

酢飯に様々な具合の味が口の中で混ざり合い、一つの味になっていく。

そして何よりも、俺はお昼もほぼなかった。限界まで空腹だったこの状態では、どんなものでも美味しいのだが、より美味しく感じる。空腹は最高の調味料と誰かが言っていたが、その通りだ。

 

「・・・あー美味しい・・・!」

「ん~~~!美味しい!」

「あぁ、よく出来てるよ。光輝君に教えられた甲斐があったな。」

「あんたもやるじゃな~いちびっ子。」

「うるさい。ボクにかかりゃこのくらい余裕さ。」

 

美味しいと言いながら横を向くと、皆さんも美味しそうに食べてる。

やっぱり、人とご飯を囲んで食べる、というのは、本当にいいことだ。

それも、俺のことを助けてくれた、第2の家とも呼べるこの場所で食べるから、尚のこと幸せを感じる。

 

でもまさか、数か月前にザ・ワンから千束とたきなを助けた時には、勘違いもあって二度と行かないでおこうと思ったこのお店と、今では家族ぐるみの深い関係になるとは思わなかったし、まさか、店員にもなるとは思わなかったな・・・

 

「光輝」

 

そんなことを考えていると、たきなから呼ばれたためそちらの方を向くと、優しそうな笑顔を浮かべていた。

 

「ありがとうございました。教えてくれて。」

「どういたしまして。たきなが作ったやつも、めっちゃ綺麗に巻けてるし、とっても美味しいよ。」

「中身作ったの光輝じゃないですか。自画自賛ですか?」

「いやいやいやいや、中身基本味付けしてるやつそんなにないから。それに、食材が美味しくてもちゃんと巻けなかったら美味しくなくなるから、これは、巻いたたきなの功績だよ。それに、俺なんて最初に作った時全然上手く出来なかったから、初めてでここまで作れるの本当に凄いよ。」

 

向こうにはお世辞を言っていると思われているかもしれないが、これはお世辞抜きでそうだ。

事実、俺が初めて作った時にはとても失敗した。巻き方も切り方も失敗し、父さんと母さんは美味しいと言ってくれたものの、俺としては苦い思い出になったことをよーく覚えている。

それがきっかけで作れるようになろうと思ったから練習したのだが、とはいえ教えるだけでここまで作れたのだ。やっぱりたきなも料理のセンスがある。

 

「・・・やったぜ。」

 

そんなことを思っていると、小さくガッツポーズをする。そんな言葉遣いをすることに少し驚くが、すぐにふふっと小さく笑みが零れると、つられてたきなも笑い出した。

 

「・・・またここで皆で食べましょうね、夕ご飯。」

「・・・いいの?」

「いいに決まってるじゃないですか。もう光輝だってウチのメンバーなんですから。」

「・・・ありがと。じゃあ次は、たきなのご飯かな。」

「えぇ、光輝よりも美味しいもの、作ってあげますから。」

 

期待してる、とだけ言い残し、笑顔を浮かべながらまたもや一つ掴むと、口に運ぶ。

皆さんにとっても、今日のこの夕飯が楽しい思い出になったならいいな。そんなことを思っていると、千束から呼ばれると、とあることを聞いてきた。

 

「光輝ってお餅さ、どうやって食べてる?」

「えっ?焼いて食べるよ?まぁ後はお汁粉とかお雑煮入れたりもするけど、でもその前に必ず一度焼くね・・・」

 

更に続けて、たきなまで話しかけてきた。

 

「焼いたお餅、何つけて食べますか?」

「きな粉とかあんことかごまとか・・・後、"醤油"もだね。醤油つけて海苔巻いて磯辺焼き・・・」

 

・・・そこまで話すと、千束の言わんとしてることがわかり、言葉が出なくなる。なるほど、たきなは瞬時に察したわけか・・・流石は相棒だ・・・

 

 

そして、千束は悪そうな笑顔を浮かべながら、ちょっと嫌味っぽく質問をしてきた。

 

 

「今食べてる海苔巻き、何つけて食べてる?」

「・・・醤油だねぇ!」

 

 

 

本日の結論─────美味いのは、醤油。

 

 

 

一方─────

 

「うい勝ちー。」

「ヒヒ、またボク達の勝ちでございますなぁ。」

 

神室町のとあるネットカフェの一室。

その中で、八神と九十九はコンビニで買ったお弁当をつまみに、小さい部屋に男2人横並びでゲームに興じていた。パソコンに繋ぎながらプレイという形ではあるが、先程からずっと、ではあるが、連勝を積み重ねていた。

 

「いやしかしすげぇな九十九。よくこんなゲーム機当たったじゃん。」

「たまたまでございますぞ八神氏。ちょうどキャンペーンで応募したから当たっただけですぞ。ただ、八神氏にそれを受け取っていただいたのは申し訳なかったですが。」

「気にすんなって。お前には何度も助けられてるし、受け取るくらい別にどうってことないから心配すんなよ・・・そういえば、この前依頼あった人から、ウチに置いてある古いゲーム機いらないからって、タダで譲ってもらったんだよなぁ・・・何だったっけな、マスター・・・」

 

そのゲーム機をプレイしながら思い思いの話をしつつ、買ってある幕の内弁当の中のコロッケを一口かじり、缶チューハイで一気に胃へと流し込むと、どうしても聞きたかったこと、いや不安を九十九に尋ねた。

 

「てか、俺もお前もそうだけど、名前もろじゃね?99と∞GODって・・・これ名前でバレねぇ・・・?」

「ヒヒ、まさかこれだけでボクだとわかる人なんていないでございますよ。それに、八神氏の8も∞のマークですし、こう書けば人によっては、とあるアイドルグループが好きとしか思われないでござるよ。」

「そういうもんかねぇ・・・ところでよ・・・」

 

何かもったいぶるように話を切った八神が気になり、どうしたでござるか?と九十九は声を掛けるが、少しの逡巡の後、いや何でもないと話を切り上げ、手に持っていた缶チューハイをまたも一口胃に流し込んだ。

 

 

ただ、言おうとしたことは実はあるのだが、まだそこまで九十九はあまり関係がないから、あえて言わなかったが、それでも、ずっと気になっていたことがある。

 

 

それは・・・先程まで対戦していたゲームの、とある対戦相手の、ユーザーネーム。

 

 

「(・・・"CHISATO"に、"TAKINA"・・・まさか、な・・・?まっ、これはあいつらには言わないでおくか。とはいえ、そうだとしても、ゲームでもあいつらにやられるほど、ヤワじゃないんでね。)」

 

 

先程までプレイしていたゲーム。その画面の向こうの対戦相手が、自分達も良く知る存在だったということを、千束とたきなが知る由はない・・・

 

 




夜ごはん編も、完結です。
お付き合いいただきありがとうございました。

というわけで、ウチの子の弱点をあげました。
ゲーム酔い持ち、なんてキャラ、アニメでもそうですが、中々二次創作しても見たことがないので、こういうキャラ居てもいいだろうと思い、弱点をそうしました。
ただ、もうこれはかなり社会的な病気となっていますし、わかりやすいところで言えば、ウルトラマンエックスの声を務められている中村悠一さんもご自身がゲーム酔いだと自認しておられます。

逆に言うと、ウチの子の趣味が全てアナログなのも、そういうことです。

そして、対戦相手は、そういうことでした(笑)
リコリコの4話のパ・・・ゲームをしているシーンから発想を飛ばし、こういうオチにするのも悪くないかと思い、そうしました。

料理について、ですが、割と真面目にきゅうりの塩昆布和えは、実際に自分も今の時期に作ってます。
手軽に作れますので、料理初心者の方にもおススメです。
玉子焼きも慣れればきれいなのが出来ますので、頑張ってみてください。


ちなみに前回と今回の2話は、個人的に、ですが、脳内EDには三月のパンタシアさんのコラージュを流していただければと思っています。
(いつまでも二期待ってるからな今日のごはんよぉ・・・!)

ではまた、次回がいつになるかはわかりませんが、またその時に、お会いしましょう。


















そんな妙なすれ違いから少しした後、ネットカフェを出て事務所にへと戻ろうと歩を進めていた。
まだ夜も暑く、これまで着ていたレザージャケットをこの夏場には到底着てなんかいられないため、この時期は八神もTシャツ1枚で日々を過ごしている。

「っと」
「あ、お兄さんすいませ~ん。」
「あぁ大丈夫。こっちことボーッとしてて悪かった。でも気をつけてね。」

と、そんな帰り道、珍しく女性と肩がぶつかった。
しかし特に何か飲み物が服にかかったというわけでもなく、勿論ケガもしていない。
故にそこまで気にも留めず軽く流した。

「は~いど~も~ありがと~ございました~。」

ただ、その女性も酔っ払っているのか、そちらも全く気にせず、ご機嫌な様子で、ふらふらと千鳥足でどこかへと歩いていった。
その様子を後ろから眺めながら、一人思っていた。

「(・・・すげぇ酔っ払いだったな。女があれでいいのかよ・・・?)」

あの年齢の女性があそこまで酔っ払うなんて、何かあったのだろうかと疑問に思いつつも、とはいえ馴れ馴れしく声を掛けたらナンパと通報される可能性もある。
それに、もっと言うと・・・"あんな酔っ払いに自分から絡みに行ったら、この後が面倒くさくなることこの上ない。"
それを直感で察したからこそ、八神も自分から声を掛けることはなかった。


ただ、そんな中、一つ気になったことがある。
それは・・・


「(背負ってたの・・・ギターか?てことは、バンドかなんかやってるってことか?だとしたら、苦労してんのかもな・・・)」


先程の女性は背にギターケースを背負っていた。以前、とあるミュージシャンを目指している女の子と知り合い、"友達以上恋人未満"の関係になったことがある。
最近は連絡を取っていないのだが、ただ、そういった経験があるからこそ、ミュージシャンを目指す大変さも知っているつもりなので、心の中で頑張れよ、とだけ応援し、その女性について考えるのはそこまでにすると、事務所の方へ向かってまた歩き始めた。



─────そう遠くない内に、この女性と再会することを、八神はまだ、知る由もない・・・

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